(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137664
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/33 20170101AFI20220914BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220914BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
G06T7/33
G06T7/00 612
A61B6/00 390A
A61B6/00 350D
A61B6/00 360Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037253
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】391010116
【氏名又は名称】EIZO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山本 諒英
(72)【発明者】
【氏名】東 正史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕
【テーマコード(参考)】
4C093
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA26
4C093CA23
4C093CA36
4C093FC13
4C093FD09
4C093FD11
4C093FF12
4C093FF16
4C093FF22
4C093FF28
4C093FF37
4C093FG04
4C093FG13
4C093FH02
4C093FH06
4C093FH07
4C093GA05
5L096AA03
5L096AA06
5L096BA06
5L096BA13
5L096DA02
5L096EA12
5L096EA13
5L096EA43
5L096FA25
5L096FA36
5L096GA07
5L096GA34
5L096HA08
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】放射線撮像装置の点検時における作業時間を抑制するとともに、点検の精度を向上させることができる、情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的としている。
【解決手段】ずれ量取得部と、位置取得部とを備え、前記ずれ量取得部は、基準ファントム画像と点検ファントム画像との間のずれ量を取得するように構成され、前記基準ファントム画像は、別体である複数のファントムが撮像されて取得され、前記点検ファントム画像は、前記基準ファントム画像と同じファントムが撮像されて取得され、前記基準ファントム画像には、関心領域が予め設定されており、前記位置取得部は、前記ずれ量と、前記基準ファントム画像の前記関心領域の位置とに基づいて、前記点検ファントム画像の関心領域の位置を取得するように構成される、情報処理装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ずれ量取得部と、位置取得部とを備え、
前記ずれ量取得部は、基準ファントム画像と点検ファントム画像との間のずれ量を取得するように構成され、
前記基準ファントム画像は、別体である複数のファントムが撮像されて取得され、
前記点検ファントム画像は、前記基準ファントム画像と同じファントムが撮像されて取得され、
前記基準ファントム画像には、関心領域が予め設定されており、
前記位置取得部は、前記ずれ量と、前記基準ファントム画像の前記関心領域の位置とに基づいて、前記点検ファントム画像の関心領域の位置を取得するように構成される、情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記複数のファントムは、第1及び第2ファントムを有し、
前記第1及び第2ファントムは、平面上に互いに並ぶように配置され、
前記基準ファントム画像及び前記点検ファントム画像のそれぞれは、複数の画像領域を有し、
前記複数の画像領域は、第1及び第2画像領域を有し、
前記第1及び第2画像領域は、第1及び第2ファントムがそれぞれ撮像されて取得され、
前記基準ファントム画像の前記第1及び第2画像領域のそれぞれには、前記関心領域が予め設定されている、情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記複数のファントムは、第3ファントムを更に有し、
第3ファントムは、第1ファントムに重なるように配置され、
前記複数の画像領域は、第3画像領域を有し、
第3画像領域は、第3ファントムが撮像されて取得され、
前記基準ファントム画像の第3画像領域には、前記関心領域が予め設定されている、情報処理装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の情報処理装置であって、
特徴画素抽出部を更に有し、
前記基準ファントム画像の第1及び第2画像領域のそれぞれ及び前記点検ファントム画像の第1及び第2画像領域のそれぞれは、特徴画素を有し、
前記特徴画素抽出部は、前記基準ファントム画像の第1及び第2画像領域の前記特徴画素及び前記点検ファントム画像の第1及び第2画像領域の前記特徴画素を抽出するように構成され、且つ、前記特徴画素抽出部は、第1及び第2画像領域の画素の輝度値に基づいて、前記特徴画素を抽出し、
前記ずれ量取得部が取得する前記ずれ量は、前記基準ファントム画像内の第1及び第2画像領域の前記特徴画素の位置と、前記点検ファントム画像内の第1及び第2画像領域の前記特徴画素の位置との間のずれ量である、情報処理装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載の情報処理装置であって、
位置設定部を更に備え、
前記位置設定部は、前記基準ファントム画像の前記関心領域を設定可能に構成され、
前記位置取得部は、前記ずれ量と、前記位置設定部で設定された前記基準ファントム画像の前記関心領域の位置とに基づいて、前記点検ファントム画像の前記関心領域の位置を取得する、情報処理装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載の情報処理装置であって、
前記複数のファントムは、ACR(American College of Radiology)ファントムを有する、情報処理装置。
【請求項7】
請求項2又は請求項3に記載の情報処理装置であって、
領域決定部を更に備え、
前記領域決定部は、前記基準ファントム画像内及び前記点検ファントム画像内の各画素を第1及び第2値に二値化処理し、且つ、前記領域決定部は、第2値画素領域の画素数に基づいて第1及び第2画像領域を決定し、
前記第2値画素領域は、第2値を有する画素又は第2値を有する画素の集合である、情報処理装置。
【請求項8】
請求項2又は請求項3に記載の情報処理装置であって、
領域決定部を更に備え、
前記領域決定部は、前記基準ファントム画像又は前記点検ファントム画像を入力して前記複数の画像領域を決定する学習モデルに基づいて、前記複数の画像領域を決定する、情報処理装置。
【請求項9】
請求項3に従属する請求項7に記載の情報処理装置であって、
前記領域決定部は、第3ファントムの形状を検出する処理を実行することで第3画像領域を決定するように構成されている、情報処理装置。
【請求項10】
ずれ量取得ステップと、位置取得ステップとを備え、
前記ずれ量取得ステップでは、基準ファントム画像と点検ファントム画像との間のずれ量を取得し、
前記基準ファントム画像は、別体である複数のファントムが撮像されて取得され、
前記点検ファントム画像は、前記基準ファントム画像と同じファントムが撮像されて取得され、
前記基準ファントム画像には、関心領域が予め設定されており、
前記位置取得ステップでは、前記ずれ量と、前記基準ファントム画像の前記関心領域の位置とに基づいて、前記点検ファントム画像の関心領域の位置を取得する、情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに情報処理方法を実行させるコンピュータプログラムであって、
前記情報処理方法は、ずれ量取得ステップと、位置取得ステップとを備え、
前記ずれ量取得ステップでは、基準ファントム画像と点検ファントム画像との間のずれ量を取得し、
前記基準ファントム画像は、別体である複数のファントムが撮像されて取得され、
前記点検ファントム画像は、前記基準ファントム画像と同じファントムが撮像されて取得され、
前記基準ファントム画像には、関心領域が予め設定されており、
前記位置取得ステップでは、前記ずれ量と、前記基準ファントム画像の前記関心領域の位置とに基づいて、前記点検ファントム画像の関心領域の位置を取得する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医用の放射線撮像装置の日常の点検作業には、放射線画像の画質の校正等の目的で、ファントムと呼ばれる試験体の撮像をするものが挙げられる(例えば、特許文献1の段落0026参照)。ここで、放射線撮像装置の管理者は、基準となるファントム画像(基準ファントム画像)を予め取得しておき、基準ファントム画像の関心領域の輝度等のデータを取得しておく。そして、放射線撮像装置の点検作業時において、管理者は、ファントムを放射線撮像装置に配置してファントム画像(点検ファントム画像)を取得し、点検ファントム画像の関心領域の輝度等のデータと、基準ファントム画像の関心領域の輝度等のデータとを比較することで、放射線撮像装置に校正等が必要であるか否かを判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開号公2020-173267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線撮像装置の点検にあたり、ファントム撮像は、単体のファントムを使用するとは限らず、複数のファントムを並べた状態で撮像する場合がある。複数のファントムを用いる場合においては、放射線撮像装置の管理者が、複数のファントムを放射線撮像装置に並べる必要がある。ここで、管理者が手動でファントムを放射線撮像装置へ配置することになるため、ファントムを配置するたびにファントムの配置にずれが生じ得る。つまり、基準ファントム画像の撮像時におけるファントムの配置と、点検ファントム画像の撮像時におけるファントムの配置とがずれる可能性がある。このため、管理者は、点検ファントム画像の関心領域の位置を設定するにあたって、基準ファントム画像の関心領域の位置をそのまま流用すると、精度が確保されたデータを得ることができない。したがって、管理者は、点検ファントム画像を目視しながら、点検ファントム画像の関心領域を設定する必要がある。
【0005】
このように、従来の放射線撮像装置の点検作業では、点検ファントム画像の関心領域の位置の設定を管理者自身で全て実施する必要があるため、点検作業に時間がかかる。加えて、点検ファントム画像の関心領域の設定を人間の目視のみに頼ると、校正等に必要な輝度等のデータの精度を確保しにくい。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、放射線撮像装置の点検時における作業時間を抑制するとともに、点検の精度を向上させることができる、情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ずれ量取得部と、位置取得部とを備え、前記ずれ量取得部は、基準ファントム画像と点検ファントム画像との間のずれ量を取得するように構成され、前記基準ファントム画像は、別体である複数のファントムが撮像されて取得され、前記点検ファントム画像は、前記基準ファントム画像と同じファントムが撮像されて取得され、前記基準ファントム画像には、関心領域が予め設定されており、前記位置取得部は、前記ずれ量と、前記基準ファントム画像の前記関心領域の位置とに基づいて、前記点検ファントム画像の関心領域の位置を取得するように構成される、情報処理装置が提供される。
【0008】
本発明では、ずれ量取得部と、位置取得部とを備えており、位置取得部は、ずれ量取得部が取得するずれ量と、基準ファントム画像の関心領域の位置とに基づいて、点検ファントム画像の関心領域の位置を取得するように構成される。このように、本発明では、点検ファントム画像の関心領域を情報処理装置が自動取得するので、放射線撮像装置の点検時における作業時間を抑制するとともに、点検の精度を向上させることができる。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記複数のファントムは、第1及び第2ファントムを有し、前記第1及び第2ファントムは、平面上に互いに並ぶように配置され、前記基準ファントム画像及び前記点検ファントム画像のそれぞれは、複数の画像領域を有し、前記複数の画像領域は、第1及び第2画像領域を有し、前記第1及び第2画像領域は、第1及び第2ファントムがそれぞれ撮像されて取得され、前記基準ファントム画像の前記第1及び第2画像領域のそれぞれには、前記関心領域が予め設定されている、情報処理装置が提供される。
好ましくは、前記複数のファントムは、第3ファントムを更に有し、第3ファントムは、第1ファントムに重なるように配置され、前記複数の画像領域は、第3画像領域を有し、第3画像領域は、第3ファントムが撮像されて取得され、前記基準ファントム画像の第3画像領域には、前記関心領域が予め設定されている、情報処理装置が提供される。
好ましくは、特徴画素抽出部を更に有し、前記基準ファントム画像の第1及び第2画像領域のそれぞれ及び前記点検ファントム画像の第1及び第2画像領域のそれぞれは、特徴画素を有し、前記特徴画素抽出部は、前記基準ファントム画像の第1及び第2画像領域の前記特徴画素及び前記点検ファントム画像の第1及び第2画像領域の前記特徴画素を抽出するように構成され、且つ、前記特徴画素抽出部は、第1及び第2画像領域の画素の輝度値に基づいて、前記特徴画素を抽出し、前記ずれ量取得部が取得する前記ずれ量は、前記基準ファントム画像内の第1及び第2画像領域の前記特徴画素の位置と、前記点検ファントム画像内の第1及び第2画像領域の前記特徴画素の位置との間のずれ量である、情報処理装置が提供される。
好ましくは、位置設定部を更に備え、前記位置設定部は、前記基準ファントム画像の前記関心領域を設定可能に構成され、前記位置取得部は、前記ずれ量と、前記位置設定部で設定された前記基準ファントム画像の前記関心領域の位置とに基づいて、前記点検ファントム画像の前記関心領域の位置を取得する、情報処理装置が提供される。
好ましくは、前記複数のファントムは、ACR(American College of Radiology)ファントムを有する、情報処理装置が提供される。
好ましくは、領域決定部を更に備え、前記領域決定部は、前記基準ファントム画像内及び前記点検ファントム画像内の各画素を第1及び第2値に二値化処理し、且つ、前記領域決定部は、第2値画素領域の画素数に基づいて第1及び第2画像領域を決定し、第2値画素領域は、第2値を有する画素又は第2値を有する画素の集合である、情報処理装置が提供される。
好ましくは、領域決定部を更に備え、前記領域決定部は、前記基準ファントム画像又は前記点検ファントム画像を入力して前記複数の画像領域を決定する学習モデルに基づいて、前記複数の画像領域を決定する、情報処理装置が提供される。
好ましくは、前記領域決定部は、第3ファントムの形状を検出する処理を実行することで第3画像領域を決定するように構成されている、情報処理装置が提供される。
【0010】
本発明の実施形態の別の観点によれば、ずれ量取得ステップと、位置取得ステップとを備え、前記ずれ量取得ステップでは、基準ファントム画像と点検ファントム画像との間のずれ量を取得し、前記基準ファントム画像は、別体である複数のファントムが撮像されて取得され、前記点検ファントム画像は、前記基準ファントム画像と同じファントムが撮像されて取得され、前記基準ファントム画像には、関心領域が予め設定されており、前記位置取得ステップでは、前記ずれ量と、前記基準ファントム画像の前記関心領域の位置とに基づいて、前記点検ファントム画像の関心領域の位置を取得する、情報処理方法が提供される。
【0011】
本発明の実施形態の別の観点によれば、コンピュータに情報処理方法を実行させるコンピュータプログラムであって、前記情報処理方法は、ずれ量取得ステップと、位置取得ステップとを備え、前記ずれ量取得ステップでは、基準ファントム画像と点検ファントム画像との間のずれ量を取得し、前記基準ファントム画像は、別体である複数のファントムが撮像されて取得され、前記点検ファントム画像は、前記基準ファントム画像と同じファントムが撮像されて取得され、前記基準ファントム画像には、関心領域が予め設定されており、前記位置取得ステップでは、前記ずれ量と、前記基準ファントム画像の前記関心領域の位置とに基づいて、前記点検ファントム画像の関心領域の位置を取得する、コンピュータプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係る情報処理装置1を含む医用の放射線撮像装置100の概要構成例図である。
【
図2】
図2は、基準ファントム画像設定モードにおけるデータの流れの説明図である。
【
図3】
図3は、点検ファントム画像設定モードにおけるデータの流れの説明図である。
【
図4】
図4は、第1~第3ファントムp1~p3の模式図である。
【
図5】
図5Aは、基準ファントム画像を撮像するときにおける第1~第3ファントムp1,p21,p22,p3の配置例を示している。
図5Bは、
図5Aに示す第1~第3ファントムp1~p3を撮像装置で撮像することで取得される基準ファントム画像の模式図である。
【
図6】
図6は、
図5Bに示す基準ファントム画像に対して二値化処理を実行した画像の模式図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す二値化処理した画像に対して、画素数処理を実行した画像の模式図である。
【
図8】
図8Aは、
図5Bに示す基準ファントム画像における第2画像領域R21の特徴画素pxの一例を模式的に示している。
図8Bは、
図5Bに示す基準ファントム画像における第1画像領域R1の特徴画素pxの一例を模式的に示している。
図8Cは、
図5Bに示す基準ファントム画像における第2画像領域R22の特徴画素pxの一例を模式的に示している。
【
図9】
図9Aは、点検ファントム画像を撮像するときにおける第1~第3ファントムp1~p3の配置例を示している。
図9Bは、
図9Aに示す第1~第3ファントムp1~p3を撮像装置で撮像することで取得される点検ファントム画像の模式図である。
【
図10】
図10は、
図9Bに示す点検ファントム画像に対して二値化処理を実行した画像の模式図である。
【
図11】
図11は、
図10に示す二値化処理した画像に対して、画素数処理を実行した画像の模式図である。
【
図12】
図12Aは、
図9Bに示す点検ファントム画像における第2画像領域R21の特徴画素pxの一例を模式的に示している。
図12Bは、
図9Bに示す点検ファントム画像における第1画像領域R1の特徴画素pxの一例を模式的に示している。
図12Cは、
図9Bに示す点検ファントム画像における第2画像領域R22の特徴画素pxの一例を模式的に示している。
【
図13】
図13Aは、基準ファントム画像上に設定された関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3を模式的に示している。
図13Bは、実施形態に係る情報処理装置によって、点検ファントム画像に設定された関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3を模式的に示している。
【
図14】
図14は、実施形態に係る情報処理装置の制御フローチャートである。
【
図15】
図15は、
図6に示す二値化処理された画像に対してヒストグラムを作成したことを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0014】
1 全体構成説明
実施形態に係る情報処理装置1を含む医用の放射線撮像装置100の全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態の放射線撮像装置100は、
図1に示すように、撮像装置20と、画像表示装置30と、情報処理装置1とを備えている。本実施形態に係る情報処理装置1は、手動での撮像手法を変えず、また、所定のマーカーも用いず、ROI位置を自動検出可能に構成されている。
【0015】
撮像装置20は、例えば、放射線発生部21、配置部22、検出部23及び画像処理部24を備えている。放射線発生部21は、配置部22及び検出部23へ向けて放射線を放射可能に構成されている。また、配置部22は、ファントムや人体等のように、放射線の被放射体を配置する部分である。検出部23は、配置部22に配置された被放射体を透過した放射線を受け付ける部分であり、当該放射線をデジタル信号に変換する機能を有する。画像処理部24は、検出部23から取得したデジタル信号に基づいて、ファントム画像を生成する機能を有する。また、画像処理部24は、ファントム画像に対して前処理を行う機能を有し、具体的には、画像処理部24は、サイズ合わせ部と、ウィンドウレベル調整部とを備えている。
【0016】
ファントム画像の解像度は、撮像装置20の構成によって変わる。このため、ファントム画像は、1画素あたりの実サイズ(mm)が変わっている可能性がある。そこで、画像処理部24のサイズ合わせ部は、ファントム画像のサイズ合わせを行う。画像処理部24のウィンドウレベル調整部は、ファントム画像のウィンドウレベル調整を行う。ウィンドウレベル調整とは、幅広いレンジの階調値を持った画像のある特定の階調域のコントラストを向上させる処理である。ウィンドウレベル調整を行うことによってファントム画像の視認性を向上させることができる。
【0017】
画像表示装置30は、撮像装置20で撮像し、画像処理がなされたファントム画像等の各種医用画像を表示するディスプレイである。
【0018】
情報処理装置1は、領域決定部2と、特徴画素抽出部3と、ずれ量取得部4と、位置取得部5と、項目値算出部6と、モード設定部7と、位置設定部8と、記憶部9とを備えている。また、領域決定部2は、領域分割部2Aと、第2決定部2Bとを備えている。更に、領域分割部2Aは、二値化処理部2A1と、ラベリング部2A2と、第1決定部2A3とを備えている。
【0019】
上記の情報処理装置1の各構成要素及び撮像装置20の画像処理部24の各構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよく、ハードウェアによって実現してもよい。ソフトウェアによって実現する場合、CPUがコンピュータプログラムを実行することによって各種機能を実現することができる。プログラムは、内蔵の記憶部に格納してもよく、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。また、外部の記憶部に格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。ハードウェアによって実現する場合、ASIC、FPGA、又はDRPなどの種々の回路によって実現することができる。本実施形態においては、様々な情報やこれを包含する概念を取り扱うが、これらは、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低によって表され、上記のソフトウェア又はハードウェアの態様によって通信や演算が実行され得るものである。
【0020】
情報処理装置1は、領域決定機能及び関心領域の自動設定機能を有する。領域決定機能は、ファントム画像に写っているファントムがファントム画像のどの領域に位置しているかを検出する機能である。また、関心領域の自動設定機能は、後述の基準ファントム画像の関心領域に基づいて、後述の点検ファントム画像の関心領域の位置や大きさを自動的に設定する機能である。
【0021】
また、情報処理装置1は、2つの設定モードを選択的に実行可能に構成されている。一方の設定モードは、基準ファントム画像設定モードであり、基準ファントム画像に対して関心領域を予め設定するためのモードである。他方の設定モードは、点検ファントム画像設定モードであり、点検ファントム画像の関心領域を自動的に取得するためのモードである。
上述の領域決定機能は、基準ファントム画像設定モード及び点検ファントム画像設定モードの両方で用いられる。また、上述の関心領域の自動設定機能は、点検ファントム画像設定モードで用いられる。
【0022】
2 ファントムについて
2-1 ファントムの構成例
実施形態では、ファントム画像がマンモグラフィー用のファントム画像であるものとして説明する。このため、使用されるファントムpも、マンモグラフィー用のファントムである。
図4に示すように、実施形態のファントムpは、第1ファントムp1と、第2ファントムp21,p22と、第3ファントムp3とを有する。つまり、実施形態では、撮像装置20に、別体である複数のファントムを同時に配置し、ファントムを撮像する。
【0023】
第1ファントムp1は、矩形状の板材であり、図示省略のパターンが形成されている。第1ファントムp1は、第2ファントムp21と第2ファントムp22との間に配置される。第2ファントムp21,p22も、矩形状の板材であり、図示省略のパターンが形成されている。第2ファントムp21,p22は、第1ファントムp1と同じ平面上に互いに並ぶように配置される。第2ファントムp21,p22には、濃淡が段階的な陰影が形成されている。第3ファントムp3は、円形の板材であり、第1ファントムp1上に重なるように配置される。
第1ファントムp1及び第2ファントムp21,p22に形成されるパターンは、例えば、腫瘤陰影を模したパターン、微小石灰化陰影を模したパターン、乳腺等を示す線状陰影を模したパターンである。
【0024】
2-2 ファントム画像について
上述のように、情報処理装置1は、関心領域の自動設定機能を有するが、管理者がこの機能を使用するにあたり、情報処理装置1が基準となるファントム画像(基準ファントム画像d1)を取得しており、関心領域が基準ファントム画像d1に対して予め設定されている必要がある。ここで、基準ファントム画像d1及び点検ファントム画像D1と、これらの画像に対応するファントムpのレイアウトについて説明する。
【0025】
例えば、管理者は、
図5Aに示すようなレイアウトで、ファントムpを撮像装置20に配置し、ファントムpを撮像する。これにより、情報処理装置1は、
図5Bに示すような基準ファントム画像d1を取得する。そして、
図13Aに示すように、管理者は、この基準ファントム画像d1に対して、手動で関心領域を設定する。
【0026】
点検時には、ファントムpが基準ファントム画像d1に対応するファントムpの配置(
図5Aの配置)と同様に配置されるとは限らない。つまり、点検時におけるファントムpの配置は、基準ファントム画像の撮像時におけるファントムpの配置からずれる可能性がある。実施形態では、一例として、
図9Aに示すようなレイアウトで、ファントムpが撮像装置20に配置されたものとする。
図5Aのレイアウトと比較したときにおいて、
図9Aに示す第1ファントムp1は、時計回りに2度程度回転している。また、
図5Aのレイアウトと比較したときにおいて、
図9Aに示す第2ファントムp21は、時計回りに3度程度回転し、
図9Aに示す第2ファントムp22は、左側に水平移動している。管理者が、
図9Aに示すようなレイアウトで、ファントムpを撮像すると、情報処理装置1は、
図9Bに示すような点検ファントム画像D1を取得する。
【0027】
3 情報処理装置1の詳細構成説明
情報処理装置1は、上述した点検ファントム画像D1に対して、自動的に関心領域を設定することが可能に構成されている。なお、実施形態では、点検ファントム画像D1に対して、自動的に設定した関心領域の位置を微調整することも可能となっているが、情報処理装置1がこの微調整の機能を有するか否かは任意である。
【0028】
3-2 領域決定部2
領域決定部2は、画像処理部24からファントム画像(基準ファントム画像d1及び点検ファントム画像D1)を取得し、ファントム画像中の各ファントムの領域を決定する機能を有する。つまり、領域決定部2は、第1ファントムp1に対応する領域、第2ファントムp21,p22に対応する領域及び第3ファントムp3に対応する領域を決定する機能を有する。領域決定部2は、領域分割部2Aと、第2決定部2Bとを備え、領域分割部2Aは、二値化処理部2A1と、ラベリング部2A2と、第1決定部2A3とを備えている。これらの構成について説明する。
【0029】
3-2-1 領域分割部2A
領域分割部2Aは、ファントム画像中における、第1ファントムp1に対応する領域及び第2ファントムp21,p22に対応する領域を決定する機能を有する。なお、第3ファントムp3に対応する領域については、領域分割部2Aではなく、第2決定部2Bによって決定される。
実施形態において、第1ファントムp1は、第2ファントムp21,p22の間に挟まれるように配置されている。このため、第1ファントムp1の領域が決定されれば、残りの領域が第2ファントムp21,p22にそれぞれ決定される。また、第1ファントムp1は、第2ファントムp21,p22と比較すると、輝度の高い領域の面積が広いことが予め分かっている。このように、事前に分かっている情報を利用して、領域分割部2Aは、第1ファントムp1の領域を決定することができる。
【0030】
3-2-1-1 二値化処理部2A1
二値化処理部2A1は、ファントム画像に対して、二値化処理を行うように構成されている。この二値化処理では、ファントム画像中の画素が当該閾値未満である場合に、第1値(実施形態では、0)とし、黒で示される。また、ファントム画像中の画素が予め定められた閾値以上の輝度を有する場合に、第2値(実施形態では、1)とし、白で示される。第2値(白)で示される各領域は、第2値画素領域と称する。二値化処理部2A1が、例えば、基準ファントム画像d1に対して二値化処理を行うと、二値化処理部2A1は、
図6に示す二値化処理画像を生成する。同様に、二値化処理部2A1が、例えば、点検ファントム画像D1に対して二値化処理を行うと、二値化処理部2A1は、
図10に示す二値化処理画像を生成する。
【0031】
3-2-1-2 ラベリング部2A2
ラベリング部2A2は、二値化処理したファントム画像のうち、第2値画素領域に対して、ラベリングする機能を有する。例えば、
図5A、
図6に示すように、ラベリング部2A2は、基準ファントム画像d1が二値化処理された画像に対して、領域g1、領域g21、領域g22及び領域g3をラベリングする。領域g1は、第1ファントムp1に対応する領域であり、領域g21は第2ファントムp21に対応する領域であり、領域g22は第2ファントムp22に対応する領域であり、領域g3は、第3ファントムp3に対応する領域である。
【0032】
3-2-1-3 第1決定部2A3
第1決定部2A3は、ラベリングされた第2値画素領域(領域g1、領域g21、領域g22及び領域g3)の画素数に基づいて第1及び第2画像領域を決定する。実施形態では、第1決定部2A3は、第2値画素領域のうち最大の領域を判定し、当該判定結果に基づいて、第1ファントムp1に対応する領域を決定する第1機能を有する。ここで、
図7に示すように、第1ファントムp1に対応する領域は、第1画像領域R1と定義される。また、第1決定部2A3は、第1画像領域R1を決定することで、第2ファントムp21,p22に対応する領域を決定する第2機能を有する。第2ファントムp21,p22に対応する領域は、それぞれ、第2画像領域R21,R22と定義される。
【0033】
まず、第1機能について説明する。
領域g1、領域g21、領域g22及び領域g3のうち最大の領域は、領域g1である。このため、第1決定部2A3は、領域g1を最大の領域であると判定する。ここで、第1決定部2A3は、領域g1に外接する矩形を設定する。具体的には、領域g1を包含する矩形のうち最小の矩形を設定する。この最小の矩形は、基準ファントム画像においては、
図7に示すように、上下の仮想線L1の間に挟まれる領域に対応する。また、点検ファントム画像においては、
図11に示すように、上下の仮想線L1の間に挟まれる領域に対応する。実施形態では、上下の仮想線L1の間に挟まれる領域を、第1画像領域R1とはせず、仮想線L1に対して所定の画素数だけ離れた仮想線L2の間に挟まれる領域を、第1画像領域R1とする。
なお、二値化処理における閾値が適切な値に設定されていない場合には、領域g1の端部分は、第2値と判定されることが期待されるが、第1値と判定されてしまう可能性がある。そうすると、第1決定部2A3が第1機能に係る処理を実行したとき、領域g1の端部分が、2本の仮想線L1よりも外側の領域に属することになり、領域g1が仮想線L1によって分断されてしまう。そこで、実施形態では、上下の仮想線L1の間に挟まれる領域を、第1画像領域R1とはせず、仮想線L1に対して所定の画素だけ離れた仮想線L2の間に挟まれる領域を第1画像領域R1としている。なお、所定の画素の値は、実施形態では一例として100pixelであるものとして説明しているが、特に限定されるものではない。所定の画素の値は、例えば、実サイズの5(mm)に相当するpixel数に設定することができる。
【0034】
なお、点検時におけるファントムpのレイアウトは、
図9Bに示すように、第1ファントムp1が時計回りに2度程度回転したものとなっている。このため、点検ファントム画像における最小の矩形は、基準ファントム画像における最小の矩形よりも大きい。換言すると、点検ファントム画像における仮想線L1に挟まれる領域は、基準ファントム画像における仮想線L1に挟まれる領域よりも大きい。したがって、点検ファントム画像における仮想線L2に挟まれる領域(第1画像領域R1)は、基準ファントム画像における仮想線L2に挟まれる領域(第1画像領域R1)よりも大きい。このように、第1画像領域R1の位置や大きさについて、大まかに把握することができれば、精度上問題がないため、実施形態では、第1画像領域R1の大きさの相違を許容している。
【0035】
次に、第2機能について説明する。
第1決定部2A3は、ファントム画像のうち、第1画像領域R1によって上下に分割される領域を、それぞれ、第2画像領域R21,R22と決定する。ここで、基準ファントム画像の全体のサイズ及び点検ファントム画像の全体のサイズは、同じである。その一方で、上述の通り、点検ファントム画像における第1画像領域R1は、基準ファントム画像における第1画像領域R1よりも大きい。したがって、点検ファントム画像における第2画像領域R21,R22は、それぞれ、基準ファントム画像における第2画像領域R21,R22よりも小さい。上記と同様の理由で、実施形態では、第2画像領域R21,R22の大きさの相違を許容している。
【0036】
3-2-2 第2決定部2B
第2決定部2Bは、ファントム画像(基準ファントム画像及び点検ファントム画像)に対して第3ファントムp3の形状を検出する処理を実行することで、ファントム画像のうち第3ファントムp3に対応する領域を決定する機能を有する。ここで、第3ファントムp3に対応する領域は、第3画像領域R3と定義する。第3画像領域R3は、第1画像領域R1内に配置されている。実施形態では、第3ファントムp3の形状は、円形状である。そこで、第2決定部2Bは、円形状を検出するにあたり、ファントム画像に対してHough変換を実施することで、第3画像領域R3を決定している。なお、第2決定部2Bは、このHough変換を実施することで、基準ファントム画像及び点検ファントム画像のそれぞれに対して、第3画像領域R3の中心座標を取得する。
【0037】
3-3 特徴画素抽出部3
特徴画素抽出部3は、特徴画素抽出処理を実施することで、ファントム画像(基準ファントム画像及び点検ファントム画像)中の特徴画素を抽出する。特徴画素抽出処理は、第1及び第2画像領域R1,R21,R22の画素の輝度値に基づいて、ファントム画像中の画素から特徴画素を抽出する処理である。ここで、特徴画素は、基準ファントム画像と点検ファントム画像との間のずれ量を取得するために用いられる。実施形態において、特徴画素抽出部3は、例えば、ファントム画像中の画素のうち、隣接する画素の輝度の差が予め定められた閾値を超えている画素を、特徴画素として抽出することができる。
【0038】
特徴画素抽出部3は、
図8A~
図8Cに示すように、基準ファントム画像d1の第1画像領域R1、第2画像領域R21,R22及び第3画像領域R3のそれぞれに対して、特徴画素抽出処理を実施する。同等に、特徴画素抽出部3は、
図12A~
図12Cに示すように、点検ファントム画像の第1画像領域R1、第2画像領域R21,R22及び第3画像領域R3のそれぞれに対して、特徴画素抽出処理を実施する。これにより、特徴画素pxが、第1画像領域R1、第2画像領域R21,R22及び第3画像領域R3から抽出される。なお、実施形態において、第3ファントムp3は、濃淡が一様なファントムであるため、対応する第3画像領域R3の輝度は一様である。そこで、実施形態では、特徴画素抽出部3が、第3画像領域R3の縁の部分を特徴画素としている。なお、特徴画素の抽出方法は、ここで述べた内容に限定されるものではない。つまり、基準となる画素の位置を特定することができればよい。
【0039】
3-4 ずれ量取得部4
ずれ量取得部4は、基準ファントム画像と点検ファントム画像との間のずれ量を取得するように構成されている。実施形態では、ずれ量取得部4は、基準ファントム画像の特徴画素と点検ファントム画像の特徴画素とを対応づけ、これらの特徴画素の移動量及び回転量に対応するアフィン行列を取得する。ずれ量に対応する情報は、アフィン行列に加味されている。
【0040】
実施形態では、下記の通り、各画像領域に対して、アフィン行列を取得する。
ずれ量取得部4は、基準ファントム画像の第1画像領域R1の特徴画素データd3と、点検ファントム画像の第1画像領域R1の特徴画素データD3とに基づいて、アフィン行列を取得する。なお、特徴画素データd3は、
図8Bに示すような基準ファントム画像の第1画像領域R1の特徴画素pxの位置の情報や、当該特徴画素pxの特徴量情報(例えば、強度等)を含む。特徴画素データD3も同様である。また、
図8Bに示すように、第1画像領域R1内には、第1ファントムに対応する特徴画素pxだけでなく、第3ファントムに対応する特徴画素px(
図8Bの第3画像領域R3の部分の円形をなす複数の特徴画素)も存在している。第3ファントムに対応する特徴画素pxは、第1画像領域R1に関するアフィン行列を取得するにあたって、外乱となるため、ずれ量取得部4は、第3ファントムに対応する特徴画素pxは除外してアフィン行列を算出する。
【0041】
また、ずれ量取得部4は、基準ファントム画像の第2画像領域R21の特徴画素データd3と、点検ファントム画像の第2画像領域R21の特徴画素データD3とに基づいて、アフィン行列を取得する。なお、特徴画素データd3は、
図8Aに示すような基準ファントム画像の第2画像領域R21の特徴画素pxの位置の情報や、当該特徴画素pxの特徴量情報(例えば、強度等)を含む。特徴画素データD3も同様である。
【0042】
また、ずれ量取得部4は、基準ファントム画像の第2画像領域R22の特徴画素データd3と、点検ファントム画像の第2画像領域R22の特徴画素データD3とに基づいて、アフィン行列を取得する。なお、特徴画素データd3は、
図8Cに示すような基準ファントム画像の第2画像領域R22の特徴画素pxの位置の情報や、当該特徴画素pxの特徴量情報(例えば、強度等)を含む。特徴画素データD3も同様である。
【0043】
なお、ずれ量取得部4は、第3画像領域R3に関しては、アフィン行列を取得しない。ずれ量取得部4は、第2決定部2Bの取得した第3画像領域R3の中心座標を用いて、第3画像領域R3の移動量(ずれ量)を取得する。具体的には、ずれ量取得部4は、基準ファントム画像の第3画像領域R3の中心座標と、点検ファントム画像の第3画像領域R3の中心座標とに基づいて、第3画像領域R3の移動量(ずれ量)を取得する。すなわち、実施形態において、第3ファントムp3は円形状であるため、第3ファントムp3のずれ量を取得するにあたって、ずれ量取得部4は、回転量の情報を取得する必要がない。換言すると、ずれ量取得部4は、第3画像領域R3の平行移動のみを加味して、第3ファントムp3のずれ量を取得する。
【0044】
3-5 位置取得部5
位置取得部5は、上述したずれ量と、後述する位置設定部8で設定された基準ファントム画像の関心領域の位置とに基づいて、点検ファントム画像の関心領域の位置を取得する。
【0045】
実施形態では、位置取得部5は、下記の通り、各画像領域に対して、アフィン変換を行うことで、点検ファントム画像の関心領域の位置を取得する。
図13A及び
図13Bに示すように、位置取得部5は、基準ファントム画像の第1画像領域R1の関心領域Ra1の位置に対し、ずれ量取得部4で取得したアフィン行列を用いたアフィン変換をすることで、点検ファントム画像の第1画像領域R1の関心領域Ra1の位置を取得する。
また、位置取得部5は、基準ファントム画像の第2画像領域R21の関心領域Ra21の位置に対し、ずれ量取得部4で取得したアフィン行列を用いたアフィン変換をすることで、点検ファントム画像の第2画像領域R21の関心領域Ra21の位置を取得する。
また、位置取得部5は、基準ファントム画像の第2画像領域R22の関心領域Ra22の位置に対し、ずれ量取得部4で取得したアフィン行列を用いたアフィン変換をすることで、点検ファントム画像の第2画像領域R22の関心領域Ra22の位置を取得する。
更に、位置取得部5は、ずれ量取得部4で取得した第3画像領域R3の平行移動量に基づいて、点検ファントム画像の第3画像領域R3の関心領域Ra3の位置を取得する。
【0046】
3-2 項目値算出部6
放射線撮像装置100は、予め定められた項目の値を算出することで、点検が実施される。項目は、放射線撮像装置100の種類等に応じて任意に定めることができる。例えば、(1)関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3内の画素の輝度の平均値、(2)関心領域Ra1内の画素の輝度の標準偏差、(3)関心領域Ra1内の画素の輝度の平均値の関心領域Ra3内の画素の輝度の平均値との差、といった項目を採用することができる。項目値算出部6は、これらの(1)-(3)の値を算出するように構成されている。
【0047】
3-2 モード設定部7
モード設定部7は、情報処理装置1が実施するモードとして、基準ファントム画像設定モード及び点検ファントム画像設定モードの一方を設定可能に構成されている。モード設定部7は、例えば、情報処理装置1に付設される操作部(例えば、マウスやキーボード)を介して、モードの設定を受け付ける。
基準ファントム画像設定モードでは、基準ファントム画像と、基準ファントム画像の第1画像領域R1、第2画像領域R21,R22及び第3画像領域R3と、これらの画像領域の特徴画素pxと、これらの画像領域の関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3とを取得するためのモードである。
点検ファントム画像設定モードでは、点検ファントム画像と、点検ファントム画像の第1画像領域R1、第2画像領域R21,R22及び第3画像領域R3と、これらの画像領域の特徴画素pxと、これらの画像領域の関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3とを取得するためのモードである。
【0048】
3-8 位置設定部8
基準ファントム画像設定モードでは、管理者が、情報処理装置1に付設される操作部を介して、手動で基準ファントム画像上に、関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3を設定する必要がある。位置設定部8は、この操作部を介して、関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3の位置の設定を受け付ける。
なお、点検ファントム画像設定モードでは、情報処理装置1が、自動的に点検ファントム画像の関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3を取得する。このため、管理者は、操作部を介して、点検ファントム画像の関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3の位置を設定する必要はない。しかし、位置設定部8は、取得された点検ファントム画像の関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3の位置を微調整できるように構成されている。これにより、点検に万全を期すことができる。
【0049】
3-9 記憶部9
記憶部9は、種々のデータやプログラムを記憶する。記憶部9には、例えば、基準ファントム画像及び点検ファントム画像に関連するデータ(各画像領域のデータ、特徴画素のデータ、関心領域のデータ)が格納される。
【0050】
4 動作説明
図2及び
図3に示す各種データの流れと共に、
図14に示す放射線撮像装置100の動作フローを説明する。
【0051】
3-1 ステップS1:ファントム撮像
管理者は、ファントムpを撮像装置20の配置部22に配置する。そして、管理者は、放射線発生部21を予め定められた条件で動作させて、撮像装置20でファントムpを撮像する。なお、基準ファントム画像を取得する場合における撮像装置20の動作条件と、点検ファントム画像を取得する場合における撮像装置20の動作条件は、同じである。
【0052】
3-2 ステップS2:前処理
画像処理部24は、前処理を実施する。すなわち、画像処理部24は、取得したファントム画像に対して、サイズ合わせや、ウィンドウレベル調整を実施する。基準ファントム画像の前処理の内容と点検ファントム画像の前処理の内容は、同じである。
【0053】
3-3 ステップS3:各画像領域の決定
領域決定部2は、画像処理部24からファントム画像を取得する。
設定モードが基準ファントム画像設定モードに設定されている場合には、ファントム画像は、基準ファントム画像d1である。また、設定モードが点検ファントム画像設定モードに設定されている場合には、ファントム画像は、点検ファントム画像D1である。
【0054】
そして、領域決定部2の領域分割部2Aは、第1画像領域R1及び第2画像領域R21,R22を決定する。決定にあたっては、上述した二値化処理、ラベリング処理、第1及び第2機能に対応する処理が行われる。また、領域決定部2の第2決定部2Bは、上述した第3ファントムp3の形状を検出する処理を実行することで、第3画像領域R3を決定する。
【0055】
3-4 ステップS4:特徴画素の抽出
特徴画素抽出部3は、領域決定部2から画像領域データを取得する。
具体的には、
図2に示す基準ファントム画像設定モードにおいて、特徴画素抽出部3は、領域分割部2Aから、基準ファントム画像d1の第1画像領域R1及び第2画像領域R21,R22の位置を含むデータ(第1及び第2画像領域データd21)を取得する。加えて、特徴画素抽出部3は、第2決定部2Bから、基準ファントム画像d1の第3画像領域R3の位置を含むデータ(第3画像領域データd22)を取得する。そして、特徴画素抽出部3は、基準ファントム画像d1の各画像領域(第1画像領域R1,第2画像領域R21,R22、及び第3画像領域R3)の特徴画素px(
図2に示す特徴画素データd3に対応)を抽出する。
【0056】
また、
図3に示す点検ファントム画像設定モードにおいて、特徴画素抽出部3は、領域分割部2Aから、点検ファントム画像D1の第1画像領域R1及び第2画像領域R21,R22の位置を含むデータ(第1及び第2画像領域データD21)を取得する。加えて、特徴画素抽出部3は、第2決定部2Bから、点検ファントム画像D1の第3画像領域R3の位置を含むデータ(第3画像領域データD22)を取得する。そして、特徴画素抽出部3は、点検ファントム画像D1の各画像領域(第1画像領域R1,第2画像領域R21,R22、及び第3画像領域R3)の特徴画素px(
図3に示す特徴画素データD3に対応)を抽出する。
【0057】
3-5 ステップS5:設定モードの判定
モード設定部7は、設定されているモードが、基準ファントム画像設定モードであるか、それとも、点検ファントム画像設定モードあるか否かを判定する。基準ファントム画像設定モードである場合には、ステップS6に進む。また、点検ファントム画像設定モードである場合には、ステップS7に進む。
【0058】
3-6 ステップS6:基準ファントム画像の関心領域の設定
図13Aに示すように、管理者は、情報処理装置1の操作部を介して、各画像領域に対して、それぞれ関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3の位置(
図3に示す関心領域データdRに対応)を設定する。
【0059】
3-7 ステップS7:ずれ量の取得(アフィン行列の取得及び平行移動量の取得)
ずれ量取得部4は、第1画像領域R1及び第2画像領域R21,R22に関して、基準ファントム画像中の各画像領域の特徴画素の位置と、点検ファントム画像中の各画像領域の特徴画素の位置とに基づいて、ずれ量に対応する情報を加味している各アフィン行列(
図3に示すずれ量データD4に対応)を取得する。
また、ずれ量取得部4は、第3画像領域R3に関して、基準ファントム画像中の第3画像領域R3の中心座標と、点検ファントム画像中の第3画像領域R3の中心座標とに基づいて、第3画像領域R3の平行移動量(
図3に示すずれ量データD4に対応)を取得する。
【0060】
3-8 ステップS8:点検ファントム画像の関心領域の位置取得
位置取得部5は、基準ファントム画像d1の関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3の位置(関心領域データdR)と、アフィン行列(ずれ量データD4)及び平行移動量(ずれ量データD4)とに基づいて、点検ファントム画像D1の関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3の位置(
図3に示す関心領域データD5)を取得する。
【0061】
3-9 ステップS9:管理者による微調整
管理者は、必要に応じて、取得された点検ファントム画像の関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3の位置を微調整する。つまり、位置設定部8は、操作部を介して微調整の指示を受け付けた場合には、点検ファントム画像の関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3の位置を変更する。
【0062】
3-10 ステップS10:項目値算出・表示・記録
項目値算出部6は、関心領域Ra1,Ra21,Ra22,Ra3に関する所定の項目値を算出する。算出結果は、画像表示装置30に表示され、記憶部9に記憶される。
【0063】
4 変形例
4-1 画像領域の決定1
実施形態では、領域決定部2の領域分割部2Aの第1決定部2A3は、ラベリング部2A2にラベリングされた領域(領域g1、領域g21、領域g22及び領域g23)のうち最大の領域を判定する等の処理を行うことで、第1画像領域R1及び第2画像領域R21,R22を決定するものとして説明したが、これに限定されるものではない。
第1決定部2A3は、二値化処理された画像(
図6及び
図10参照)に対してヒストグラムを作成し、当該ヒストグラムを用いて、第1画像領域R1及び第2画像領域R21,R22を決定してもよい。
図15に示すように、ヒストグラムは、2軸で表される。なお、
図15では、
図6に示す画像に対して、ヒストグラムを作成した例を示している。
図15の縦軸は、
図6に示す二値化処理された画像の縦方向に対応し、
図15の横軸は、
図6に示す二値化処理された画像の画素のうち輝度が第2値となっている画素の総数(頻度)に対応している。そして、縦軸の中央(走査開始位置)から走査を開始して、ヒストグラムの頻度が初めて閾値を下回った位置を、第1画像領域R1と決定してもよい。
図15において、ヒストグラムの頻度が初めて閾値を下回った位置は、上限位置及び下限位置に対応している。そして、実施形態で説明したように、第1画像領域R1が決定されると、残りの第2画像領域R21,R22も決定することができる。
【0064】
4-2 画像領域の決定2
領域決定部2は、機械学習によって、画像領域を決定するものであってもよい。つまり、領域決定部2は、基準ファントム画像d1又は点検ファントム画像D1を入力して画像領域(第1画像領域R1、第2画像領域R21,R22及び第3画像領域R3)を決定する学習モデルに基づいて、画像領域を決定するように構成されていてもよい。なお、入力となる画像は、ファントム画像そのものであってもよいし、二値化処理された画像であってもよい。
【0065】
4-3 ずれ量について
実施形態では、各画像領域の特徴画素を抽出することで、ずれ量を取得する形態について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、領域決定部2は、テンプレートマッチングを利用して、ずれ量を取得してもよい。つまり、領域決定部2は、基準ファントム画像の各画像領域を上下左右にずらしながら、基準ファントム画像の各画像領域と点検ファントム画像の各画像領域との絶対画素差分和(SAD)を算出してもよい。そして、領域決定部2は、SADが最小になるような、基準ファントム画像の各画像領域の移動量を、ずれ量として用いてもよい。
【0066】
4-4 ファントムについて
放射線撮像装置100は、ACR(American College of Radiology)ファントムに適用することもできる。つまり、ファントムpが、ACRファントムを有していてもよい。
【0067】
4-5 特徴画素の抽出手法
実施形態では、特徴画素抽出部3は、ファントム画像中の画素のうち、隣接する画素の輝度の差が予め定められた閾値を超えている画素を、特徴画素として抽出するものとして説明したが、これに限定されるものではない。特徴画素抽出部3には、SIFTやKAZEといった公知の特徴検出器を採用し、特徴画素を抽出してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 :情報処理装置
2 :領域決定部
2A :領域分割部
2A1 :二値化処理部
2A2 :ラベリング部
2A3 :第1決定部
2B :第2決定部
3 :特徴画素抽出部
4 :ずれ量取得部
5 :位置取得部
6 :項目値算出部
7 :モード設定部
8 :位置設定部
9 :記憶部
20 :撮像装置
21 :放射線発生部
22 :配置部
23 :検出部
24 :画像処理部
30 :画像表示装置
100 :放射線撮像装置
D1 :点検ファントム画像
D21 :第2画像領域データ
D22 :第3画像領域データ
D3 :特徴画素
D4 :ずれ量データ
D5 :関心領域データ
d1 :基準ファントム画像
d21 :第2画像領域データ
d22 :第3画像領域データ
d3 :特徴画素
dR :関心領域データ
L1 :仮想線
L2 :仮想線
R1 :第1画像領域
R21 :第2画像領域
R22 :第2画像領域
R3 :第3画像領域
Ra1 :関心領域
Ra21 :関心領域
Ra22 :関心領域
Ra3 :関心領域
g1 :領域
g21 :領域
g22 :領域
g3 :領域
p :ファントム
p1 :第1ファントム
p21 :第2ファントム
p22 :第2ファントム
p3 :第3ファントム
px :特徴画素