IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エッペンドルフ アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特開-マルチチャネル・ピペット・ヘッド 図1
  • 特開-マルチチャネル・ピペット・ヘッド 図2
  • 特開-マルチチャネル・ピペット・ヘッド 図3
  • 特開-マルチチャネル・ピペット・ヘッド 図4
  • 特開-マルチチャネル・ピペット・ヘッド 図5
  • 特開-マルチチャネル・ピペット・ヘッド 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013767
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】マルチチャネル・ピペット・ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
B01L3/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021102610
(22)【出願日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】20183723.4
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591121683
【氏名又は名称】エッペンドルフ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf AG
【住所又は居所原語表記】Barkhausenweg 1, D-22339 Hamburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ヴィルテ
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・リンク
【テーマコード(参考)】
4G057
【Fターム(参考)】
4G057AB18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ネックやチャネル間の距離を調整することができ、より正確で精密なピペット操作が可能なマルチチャネル・ピペット・ヘッドを提供する。
【解決手段】上部境界部40、下部境界部41、および側部開口部42を備えた少なくとも1つの溝39を有する水平プランジャ・アクチュエータ38と、プランジャ・アクチュエータを垂直方向に移動させるドライブ・ロッドと、中空シリンダ12とその中に係合する、頂端部でプランジャ・ヘッド30によって側部開口部を通して溝39に係合するプランジャ26を有するプランジャ-シリンダ・ユニット13と、中空のネック11が接続され、水平軸に沿って移動可能なガイドとを備え、各プランジャ・ヘッドは、頂面で上部境界部40に隣接する突出した上部当接領域と、下部境界部41に隣接し、底面で上部当接領域に対して横方向にずれている突出した下部当接領域とを有するマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチチャネル・ピペット・ヘッドであって、
・ 上部境界部(40)、下部境界部(41)、および側部開口部(42)を備えた少なくとも1つの溝(39)を有する水平プランジャ・アクチュエータ(38)と、
・ 前記プランジャ・アクチュエータ(38)を垂直方向に移動させるドライブ・ロッド(43)と、
・ 中空のシリンダ(12)と上からその中に係合するプランジャ(26)をそれぞれ有し、前記プランジャ(26)は前記シリンダ(12)から密封され、その頂端部でプランジャ・ヘッド(30)によって前記開口部(42)を通して前記溝(39)に係合する、複数のプランジャ-シリンダ・ユニット(13)と、
・ 水平軸(5)に沿って移動可能な複数のガイド(6)であって、1つのシリンダ(12)と前記シリンダ(12)の下端部にある貫通孔(15)に接続されている下方へ突出している1つの中空のネック(11)とがそれぞれのガイド(6)に保持されている、複数のガイドと(6)、を備え、
・ 各プランジャ・ヘッド(30)は、頂面で前記上部境界部(40)に隣接する突出した上部当接領域(32)と、前記下部境界部(41)に隣接し、底面で前記上部当接領域(32)に対して横方向にずれている突出した下部当接領域(33)とを有し、その結果、前記水平軸(5)に沿って前記ガイド(6)が側方に移動する間、前記プランジャ・ヘッド(30)は、前記溝(39)内で傾斜することによってクランプ力を回避することができ、前記プランジャ-シリンダ・ユニット(13)内で傾斜するときに生じる復元力のために、前記上部当接領域(32)が前記上部境界部(40)と当接した状態で保持され、前記下部当接領域(33)が前記溝(39)の前記下部境界部(41)と当接した状態で保持される、マルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項2】
前記プランジャ-シリンダ・ユニット(13)が弾性変形できない剛性のシステムである場合、前記プランジャ・ヘッド(30)および前記溝(39)が締まりばめ部を形成するように設計されている、請求項1に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項3】
各プランジャ・ヘッド(30)が、その頂面に上部当接点または上部当接線の形をした上部当接領域(32)を有し、かつ/または、各プランジャ・ヘッド(30)が、その底面に下部当接点または下部当接線の形をした下部当接領域(33)を有する、請求項1または2に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項4】
各プランジャ・ヘッド(30)が、その頂面の球状キャップ(34)に上部当接点(32)、および/または底面の下方を向くシリンダ(35)の下縁部に下部当接点(33)を有する、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項5】
前記ガイド(6)が前記水平軸(5)に回転可能に装着されている、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項6】
前記下部当接点(33)が前記上部当接点(32)よりも前記水平軸(5)からさらに側方にずれている、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項7】
前記溝(39)が、前記下部境界部(41)と反対側に上部境界部(40)を有し、前記上部境界部(40)は前記開口部(42)の側部から水平方向にさらに突出している、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項8】
各シリンダ(12)が、上部に弾性パッキン(46)を備え、これを介して前記プランジャ(26)に接続されたプランジャ・ロッド(27)が上方にシールされた状態で案内される、請求項1から7のうちのいずれか一項に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項9】
各プランジャ(26)が、弾性シール要素(29)を外周に備え、前記弾性シール要素(29)は前記シリンダ(12)の内面にあるプランジャ走行面にシール効果をもたらす、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項10】
前記ネック(11)が圧縮ばね(48)に反して前記ガイド(6)に対して上方に移動可能となるように、各ネック(11)が前記圧縮ばね(48)を介して前記ガイド(6)に支持されている、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項11】
各プランジャ(26)が、弾性的に外方へ湾曲するプランジャ・ロッド(27)を備える、請求項1から10のうちのいずれか一項に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項12】
各ガイド(6)が制御機構によって水平方向に移動可能である、請求項1から11のうちのいずれか一項に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項13】
前記機構が、調整ホイール、ギアホイール、歯付きのスライドおよびグリッドを有するハサミ状のレバー機構である、請求項1から12のうちのいずれか一項に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項14】
各ガイド(6)が前記グリッドの頂部および底部で懸垂されている、請求項13に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【請求項15】
各ガイド(6)が、孔および垂直縦スロットを介して、または2つの垂直の縦スロット(24,25)を介して、前記グリッドから突出するネックに懸垂されている、請求項14に記載のマルチチャネル・ピペット・ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペット・チップを締着するために互いに移動可能なネックを備えたマルチチャネル・ピペット・ヘッドに関する。
【0002】
マルチチャネル・ピペットは、複数の液体試料を同時にピペット操作するために、特に、実験室で使用される。液体試料は、マイクロタイター・プレート内の一列のレセプタクルや他の容器から、マルチチャネル・ピペットに解除可能に接続されているピペット・チップに採取され、この液体試料はピペット・チップから容器に吐出される。マルチチャネル・ピペットは、複数のネックまたは軸を備え、この上にピペット・チップを締着することが可能である。1つ以上の変位装置が、液体試料をピペット・チップに吸引したり、ピペット・チップから液体試料を排出したりするため設けられており、この変位装置は、液体試料と変位装置との間でエア・クッションを移動させることができる。この装置は、シリンダと、その中をスライド可能なプランジャとを備えるプランジャ-シリンダ・ユニットとして設計されることが多い。変位装置は、チャネルまたはラインを介して、ピペット・チップが置かれているネックの端部にある開口部に接続される。ピペット操作が終了すると、エジェクタを用いてピペット・チップをネックから押し離すことが可能である。さらなるピペット操作手順のために、新品のピペット・チップをネックに締着することが可能である。その結果、さまざまな液体試料の繰越し汚染や、液体試料とマルチチャネル・ピペットの汚染を防ぐ。
【0003】
マルチチャネル・ピペットは、駆動装置を含むピペット上部を備え、略円柱形であり、片手で把持可能である。マルチチャネル・ピペットはまた、マルチチャネル・ピペット・ヘッドとも呼ばれる、少なくとも1つの変位装置を備えたマルチチャネルの下部を備え、底面にネックを備え、ドライブ・ロッドを用いて駆動装置に連結されている。この駆動装置は、手動で動作する機械式駆動装置であってもよく、電気機械式駆動装置であってもよい。
【0004】
隣接するレセプタクルの中心軸間の距離が9mmである行列の96個のレセプタクルを有するか、隣接するレセプタクルの中心軸間の距離が4.5mmである行列の384個のレセプタクルを有する標準マイクロタイター・プレート(ANSI SLAS 4-2004 2012)が特に知られている。固定位置に配置されたネックを有するマルチチャネル・ピペットは、2つのプレートタイプのうちの1つにおいて1行または1列のレセプタクルすべてから液体試料を採取し、液体試料を分配することしかできない。
【0005】
欧州特許公開第1 875 966A1号は、垂直のプランジャ作動ロッドが、プランジャ・ヘッドのために互いに隣接して配置されている複数のレセプタクルを含む水平の交差部材から上方に突出する、マルチチャネル・ピペット・ヘッドを記載している。プランジャ・ヘッドによってレセプタクルの固定位置に配置されているプランジャは、複数の平行シリンダに案内される。各プランジャ・ヘッドは、プランジャ・ロッドに対向する底面を介してレセプタクルの基台に載置されており、弾性的に圧縮されないように、または遊びを補うために部分的に弾性的に圧縮されるように、頂面から突出し、レセプタクルの当接面に隣接する弾性体を備える。
【0006】
ネック間の距離をレセプタクル間のさまざまな距離に調整可能なマルチチャネル・ピペットもまた、知られている。固定式に配置された変位装置に対するネックの動きを補うため、ネックはチューブを介して少なくとも1つの変位装置に可撓式に接続されている。この種類のマルチチャネル・ピペットは、特に、米国特許第5,057,281B1号、米国特許第5,061,449B1号、米国特許第8,029,742B2号、独国特許10 2005 030 196B3号、および欧州特許2 231 335B1号に記載されている。
【0007】
ネック間の距離が調整可能である既知のマルチチャネル・ピペットでは、中央の変位装置までの個々のチャネルのチューブの長さが異なることによって、チャネルのデッド・ボリュームが異なる。このことによって、ピペット操作の手順の正確さや精度を損なう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ネックやチャネル間の距離を調整することができ、より正確で精密なピペット操作が可能なマルチチャネル・ピペット・ヘッドを提供することである。
【0009】
本目的は、請求項1の特徴を有するマルチチャネル・ピペット・ヘッドによって達成される。マルチチャネル・ピペット・ヘッドの有利な実施形態は、従属請求項において特定されている。
【0010】
本発明によるマルチチャネル・ピペット・ヘッドは、
・ 上部境界部、下部境界部、および側部開口部を備えた少なくとも1つの溝を有する水平プランジャ・アクチュエータと、
・ プランジャ・アクチュエータを垂直方向に移動させるための、プランジャ・アクチュエータから上方に突出しているドライブ・ロッドと、
・ 中空のシリンダと上からその中に係合するプランジャをそれぞれ有し、プランジャはシリンダから密封され、その頂端部でプランジャ・ヘッドによって開口部を通して溝に係合する、複数のプランジャ-シリンダ・ユニットと、
・ 水平軸に沿って移動可能な複数のガイドであって、1つのシリンダとシリンダの下端部にある貫通孔に接続されており下方へ突出している1つの中空のネックとがそれぞれのガイドに保持されている、複数のガイドと、を備え、
・ 各プランジャ・ヘッドは、頂面で上部境界部に隣接する突出した上部当接領域と、下部境界部に隣接し、底面で上部当接領域に対して横方向にずれている突出した下部当接領域とを有し、その結果、水平軸に沿ってガイドが側方に移動する間、プランジャ・ヘッドは、溝内で傾斜することによってクランプ力を回避することができ、プランジャ-シリンダ・ユニット内で傾斜するときに生じる弾性復元力のために、上部当接領域が上部境界部と当接した状態で保持され、下部当接領域が溝の下部境界部と当接した状態で保持される。
【0011】
マルチチャネル・ピペット・ヘッドでは、各ネックがガイド(ホルダ)でプランジャ-シリンダ・ユニットのシリンダとともに保持され、ネックは水平軸に沿ってプランジャ-シリンダ・ユニットとともに移動可能である。このことによって、ネックとそれに接続されているプランジャ-シリンダ・ユニットそれぞれの間のデッド・ボリュームを小さく一定にすることができる。プランジャ-シリンダ・ユニットが軸に沿って移動する間、プランジャ・ヘッドがプランジャ・アクチュエータの溝内を移動する。この目的を達成するために、従来の設計のプランジャ・ヘッドおよびプランジャ・アクチュエータでは、プランジャ・ヘッドをプランジャ・アクチュエータのレセプタクルに隙間を開けて配置する必要がある。このことは、マルチチャネル・ピペット・ヘッドの正確さや精度を損なうことになる。本発明によると、プランジャとプランジャ・アクチュエータとを連結することによって、プランジャ・ヘッドと溝との間を遊びがなく調整可能となる。具体的には、プランジャ・ヘッドが、互いに側方へずれている1つの上部当接領域および1つの下部当接領域によって、溝の上部境界部および下部境界部に常に隣接している。その結果、プランジャ・ヘッドが、水平方向に対してわずかに傾斜しているか、わずかな角度となるように溝内に配置されているため、製造公差を補うことができる。このことによって、溝内を横方向に変位する間にプランジャ・ヘッドがわずかに傾斜し、その結果、溝内でのプランジャ・ヘッドの変位を妨げるクランプ力を防止することができる。この過程において、プランジャ-シリンダ・ユニット内で傾斜するときに生じる復元力のために、溝の上部当接領域および下部境界部と当接した状態でプランジャ・ヘッドが保持される。弾性復元力は、弾性シール要素の変形、および/またはプランジャ-シリンダ・ユニットの弾性プランジャの湾曲によって生じ得る。さらに、プランジャとプランジャ・アクチュエータとの連結によって、これらの要素を製造する間の許容差を補うことができる。すなわち、製造によるプランジャ・ヘッドおよび溝部の寸法差は、溝内でのプランジャ・ヘッドの傾斜度を変化させることによって補うことができる。この過程において、プランジャ-シリンダ・ユニット内の復元力のために、溝の上部境界部および下部境界部と当接した状態でプランジャ・ヘッドが絶えず保持される。デッド・ボリュームが小さく一定であることと、溝内でプランジャ・ヘッドが隙間なく配置されているため、ネック間の距離を調整することができ、より正確で精密なピペット操作が可能なマルチチャネル・ピペット・ヘッドが得られる。
【0012】
本発明の一実施形態によると、プランジャ-シリンダ・ユニットが弾性変形できない剛性のシステムである場合、プランジャ・ヘッドおよび溝が締まりばめ部(圧入部)を形成するように設計されている。その結果、公差範囲内のすべての寸法に対して、プランジャ-シリンダ・ユニット内の弾性変形の結果としてプランジャ・ヘッドが溝で傾斜し、上部境界部および下部境界部と当接した状態で上部支持領域および下部支持領域で保持される。その結果、製造公差が包括的に補われる。軸の方向に移動させる間、プランジャ・ヘッドをさらに傾斜させることでクランプ力の増加を避けることが可能である。
【0013】
別の実施形態によると、各プランジャ・ヘッドは、その頂面に上部当接点または上部当接線の形をした上部当接領域を有する。別の実施形態によると、各プランジャ・ヘッドは、その底面に下部当接点または下部当接線の形をした下部当接領域を有する。これによって、プランジャ・ヘッドの傾斜を容易にする低摩擦で小さな当接領域が可能になる。
【0014】
別の実施形態によると、各プランジャ・ヘッドは、その頂面の球状キャップに上部当接点、および/または底面の下方を向くシリンダの下縁部に下部当接点を有する。
【0015】
別の実施形態によると、ガイドが水平軸に回転可能に装着されている。その結果、軸を中心にわずかに枢動させることによって軸に沿ってガイドを移動させる間に、そのシステムはクランプ力の増加を回避することができる。
【0016】
別の実施形態によると、下部当接点は上部当接点よりも水平軸からさらに側方にずれている。その結果、プランジャ・ヘッドを傾斜させるときに生じる復元力のために、ガイドはプランジャ・アクチュエータと当接するようになるまで枢動し、プランジャ・ヘッドは溝に当接した状態になる。
【0017】
別の実施形態によると、溝が下部境界部と反対側に上部境界部を有し、上部境界部は開口部の側部から水平方向にさらに突出している。上部境界部はガイドの当接部を兼ねていてもよい。
【0018】
別の実施形態によると、各シリンダは上部に弾性パッキンを備え、これを介してプランジャに接続されたプランジャ・ロッドが上方にシールされた状態に案内される。弾性パッキンは、容積の少ないプランジャ-シリンダ・ユニットの細いプランジャで使用可能である。
【0019】
別の実施形態によると、各プランジャが弾性シール要素を外周に備え、弾性シール要素はシリンダの内面にあるプランジャ走行面にシール効果をもたらす。弾性シール要素は装着されるか固締されてもよい。
【0020】
別の実施形態によると、各ネックが圧縮ばねを介してガイドに支持されているので、ネックは圧縮ばねに反してガイドに対して上方に移動可能である。その結果、複数のピペット・チップが様々なネックに均一に固着可能である。
【0021】
別の実施形態によると、各プランジャが、弾性的に外方へ湾曲するプランジャ・ロッドを備える。プランジャ-シリンダ・ユニットの弾性復元力は、比較的細いプランジャ・ロッドを曲げる結果として生じ得る。
【0022】
別の実施形態によると、各ガイドが制御機構によって水平方向に移動可能である。このことによって、ネックを水平軸に沿った様々な位置に再現可能に設定することができる。別の実施形態によると、制御機構が、手動操作可能である機械的制御機構、または電動モータによって駆動する電気機械的制御機構である。別の実施形態によると、電気機械的制御機構が、ボタン、スイッチ、および/または他のインターフェースを介してユーザによって制御可能な電子制御装置に接続されている。
【0023】
別の実施形態によると、手動操作可能である機械的制御機構が、調整ホイール、ギアホイール、歯付きのスライドおよびグリッドを有するハサミ状のレバー機構である。その結果、ネックおよびプランジャ・シリンダ装置の垂直方向を変えずに、特に精密に調整することができる。この目的のために、別の実施形態によると、各ガイドがグリッドの頂部および底部で懸垂されている。これに関連して、別の実施形態によると、各ガイドが、孔および垂直縦スロットを介して、または2つの垂直の縦スロットを介して、グリッドから突出するネックに懸垂されてもよい。
【0024】
別の実施形態によると、マルチチャネル・ピペット・ヘッドが、4個、6個、8個、または12個のネックまたはチャネルを備える。別の実施形態によると、マルチチャネル・ピペット・ヘッドが、以下の容積から選択される容積を有するピペット・チップを備えるように設計されている:20μL、100μL、300μL、1200μL。
【0025】
例示的実施形態の添付の図面を参照しつつ、本発明を以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】前部ハウジング部が除去されているマルチチャネル・ピペット・ヘッドの正面図である。
図2】同じマルチチャネル・ピペット・ヘッドの、ネックを備えたガイドとプランジャ-シリンダ・ユニットとを示す、図1に対して垂直な縦断面図である。
図3図2のIIIの拡大詳細図である。
図4】ガイドを貫通しているマルチチャネル・ピペット・ヘッドを示す、図1に対して垂直な縦断面図である。
図5】別のマルチチャネル・ピペット・ヘッドの、ネックを備えたガイドとプランジャ-シリンダ・ユニットとプランジャ・アクチュエータとを示す縦断面図である。
図6図5のVIの拡大詳細図である。
【0027】
本出願において、「頂部」および「底部」ならびに「側部」または「側方」という用語は、プランジャ-シリンダ・ユニットと垂直に配向され、かつドライブ・ロッドがネックの上に配置されるマルチチャネル・ピペット・ヘッドに関する。
【0028】
図1から図3によると、マルチチャネル・ピペット・ヘッド1が、2つの部分のハウジング3から形成されている支持構造体2を備える。図1では、前部ハウジング部が除去され、後部ハウジング部のみが示されている。代替として、支持構造体がハウジングで被覆されたシャーシで形成されてもよい。
【0029】
ハウジング3は、略箱形である。ピペット上部に接続するための締着ネック4が、ハウジング3の上縁部で垂直方向上方へ突出している。
【0030】
断面が円形の水平軸5がハウジング内に保持されている。複数のガイド6(たとえば4個)が、水平方向に可動であり、かつ軸5を中心に枢動するように、軸5上に保持されている。
【0031】
図2によると、各ガイド6は、水平な第1のベアリング内径部8を含む略立方形のベアリング部7を下端部に備える。図1によると、このガイドは軸方向に可動であり、かつ軸5を中心に枢動するように、第1のベアリング内径部8を用いて軸5上に装着されている。
【0032】
図4によると、ベアリング部7は、垂直スロット9を備え、垂直スロット9は第1のベアリング内径部8から最も遠い面から始まり第1のベアリング内径部8の直前で終わる。
【0033】
ピペット・チップを固着するための中空のネック11の上部ネック部10が、スロット9に挿入されている。このネック11は、プランジャ-シリンダ・ユニット13の中空のシリンダ12に頂部で接続されている。ネック11内の中空の空間14がシリンダ12内の中空の空間16に貫通孔15を介して接続されている。シリンダ12の内面が、プランジャ用の走行面を形成する。
【0034】
ネック11は、上部ネック部10の下端部に下部ショルダ17を備え、シリンダ12は、上部ネック部10の上端部に上部ショルダ18を備える。下部ショルダ17はベアリング部7の底面に隣接し、上部ショルダ18はベアリング部7の頂面に隣接するので、ネック11およびシリンダ12は上下方向に移動できないようにベアリング部7内に保持される。上部ネック部10は、ピン19によってスロット9内に固定され、ピン19はスロット9と直交するベアリング部7の水平ピン内径部20に挿入されている。
【0035】
底部に、ネック11は円錐部11.1と、その上に円柱部11.2とを備える。円錐部11.1はシール・リングを挿入するための円周環状溝21を備えている。
【0036】
図2および図4によると、スリーブ状ガイド部22がベアリング部7の頂面から垂直方向上方へ突出している。シリンダ12がガイド部22の第1の接触領域22.1および第2の接触領域22.2の異なる面の外側に支持されている。平坦なU字輪郭の保持部23が第1のベアリング内径部8の上のスリーブ状ガイド部22から垂直方向上方へ突出している。
【0037】
図1および図4によると、ガイド6がそれぞれ、頂部と底部に縦スロット24、25を備える。縦スロット24,25は、ガイド6を互いに水平方向に移動させるためのハサミ状のレバー機構(グリッド)の上下ベアリング・ボルトを係合するために使用される。
【0038】
ガイド6は、好ましくは、たとえば射出成形によってプラスチック材料から一体的に製造される。
【0039】
ネック11およびシリンダ12は、プラスチック材料(たとえば射出成形によって)、および/または金属(たとえば旋削によって)から一体的にまたは複数個で製造される。
【0040】
図2および図4によると、各プランジャ-シリンダ・ユニット13がプランジャ26を備え、プランジャ26は上からシリンダ12に押し込まれる。プランジャ26は、下端部に肉厚のプランジャ部28を有するプランジャ・ロッド27を備え、プランジャ部28の上に円周シール要素29が載置されている。プランジャは、プランジャ・ロッド27の上端部にプランジャ・ヘッド30を備える。プランジャ・ヘッド30は、平坦な、たとえば円板状部31を備え、その円板状部31は、頂面に上部当接領域32と底面に下部当接領域33とを有する。上部当接領域32は円板状部31の頂面にある球状キャップ34の頂点に配置されている。下部当接領域33はシリンダ36の下縁部35に配置されており、プランジャ・ロッド27に隣接する円板状部31の底面から、プランジャ・ロッド27の隣で下方へ突出している。より正確には、下部当接領域33がシリンダ36の下縁部の半径部37に配置されている。
【0041】
プランジャ26は、好ましくは射出成形によって、プラスチック材料から一体的に製造されることが好ましい。シール要素29はまた、プランジャ26と一体に製造されてもよく、あるいはその上に固着されてもよい。
【0042】
図1および図4によると、マルチチャネル・ピペット・ヘッド1は、保持部23の横でシリンダ12の上に配置されている水平プランジャ・アクチュエータ38を備える。プランジャ・アクチュエータ38は、水平溝39を保持部23の反対側に備える。溝39の上部境界部40が下部境界部41よりも保持部に向かって遠くに突出している。溝39は、保持部23の側に開口部42を備える。プランジャ・ヘッド30の一部が開口部42を介して溝39に挿入されるので、球状キャップ34が上部支持領域32によって上部境界部40に隣接し、シリンダ33が下部支持領域33によって下部境界部41に隣接する。
【0043】
保持部23は、プランジャ・アクチュエータ38に軸支されている。
【0044】
締着シリンダ4に入り込んでいるドライブ・ロッド43が、プランジャ・アクチュエータ38の頂面から上方に突出している。
【0045】
プランジャ・アクチュエータ38およびドライブ・ロッド43は、好ましくは射出成形によって、プラスチック材料から一体的に製造されることが好ましい。
【0046】
締着シリンダ4は、ピペット上部にスナップ接続によって接続可能であり、ドライブ・ロッド43の上端部は、ドライブ・ロッド43を垂直移動させるためのピペット上部内の駆動装置にクランプ接続によって接続可能である。
【0047】
プランジャ-シリンダ・ユニット13が剛性でありかつ弾性的に変形可能でない場合にはプランジャ・ヘッド30が上部当接点32および下部当接点33で溝39と干渉して嵌合するように、プランジャ・ヘッド30および溝39が寸法決めされている。特に、プランジャ-シリンダ・ユニット13のプランジャ・ロッド27およびシール要素29が弾性を有するように設計されているので、プランジャ・ヘッド30は、プランジャ-シリンダ・ユニット13の弾性変形により溝39内で傾斜可能である。
【0048】
プランジャ・ヘッド30とプランジャ・アクチュエータ38とが接合されると、プランジャ・ヘッド30が溝39よりも大きいことによって、プランジャ・ヘッド30が垂直方向に対して傾斜(たとえば0.5度)する。この位置では、プランジャ・ヘッド30を用いてプランジャ26をプランジャ・アクチュエータ38内で軸方向に容易に移動することができる。プランジャ・ヘッド30の傾斜により生じるプランジャ-シリンダ・ユニット13内の予圧によって、プランジャ・ヘッド30が傾斜位置に保持される。ガイド6およびシリンダ12は、ガイド7がプランジャ・アクチュエータ38に当たって内向き回転を阻止するため、プランジャ・ヘッド30の傾斜A(図4参照)に沿うことができない。プランジャ26はプランジャ・アクチュエータ38内の上部支持点44に加えて、シリンダ12内のシール要素に下部支持点45を含むので、可撓ばねBのように変形する(図4参照)。その結果、プランジャ26をプランジャ・アクチュエータ38の当接点32、33に常に隙間なく当接させ、溝39内でのプランジャ・ヘッド26の遊びを防ぐ反力が発生する。
【0049】
図5および図6の例示的実施形態は、下部プランジャ部がプランジャ・ロッド27の下端部である点で、上述のものとは異なる。さらに、プランジャ26は、シリンダ12のプランジャ走行路にあるシール要素によってシールされるのではなく、シリンダ12の上端部に締着されシリンダ12の外側にあるプランジャ・ロッド27の外側に位置するパッキン46によってシールされる。プランジャ・ヘッド30は、プランジャ・ロッド27の上端部に載置される。
【0050】
この実施形態では、プランジャ・ロッド27は、スチール針によって好ましくは形成され、プランジャ・ヘッド30はプラスチック材料からスチール針の上端部に成形される。プランジャ・ヘッドを溝39に当接させる反力は、パッキン46とスチール針との弾性変形により生じる。
【0051】
さらに、ネック11がガイド6のベアリング部7にある垂直な第2のベアリング内径部47に保持される。ネック11は、圧縮ばね48を介してガイド6のベアリング部7に支持されている。圧縮ばね48は、上部ネック部10に案内され、底部で上部ネック部10の下部ショルダ17に支持され、頂部でベアリング部7の底面に支持されている。さらに上方では、上部ネック部10は、ベアリング部7の水平ピン内径部20に挿入されたピン19を係合するための、接線方向平坦部49を円周上に有する。その結果、ネック11とそれに一体的に接続されているシリンダ12とがベアリング部7に固定され、ベアリング部7におけるネック11の上下移動が制限される。
【0052】
ネック7がばね荷重でガイド6に保持されているので、ピペット・チップは種々のネック7にほぼ等しい高さで固着される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】