(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137691
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
F02M 61/18 20060101AFI20220914BHJP
F02M 51/06 20060101ALI20220914BHJP
F02M 61/16 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
F02M61/18 320C
F02M51/06 L
F02M61/18 360J
F02M61/16 A
F02M61/18 330B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037299
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡井 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】三宅 威生
(72)【発明者】
【氏名】早谷 政彦
(72)【発明者】
【氏名】古舘 仁
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AB02
3G066BA32
3G066CC27
3G066CC32
(57)【要約】
【課題】先端部の表面に燃料が付着することを抑制し、燃焼の安定性の向上を図ることができる燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】燃料噴射装置は、ノズル本体と、噴射孔形成部材12と、弁体20と、を備えている。噴射孔形成部材12は、シート面124aを有するシート部124と、シート部124における先端部に形成され、シート面124aから先端部側に向けて凹んだ凹部であるサック室125と、を有している。そして、サック室125には、燃料を点火プラグに向けて噴射するサック室噴射孔18が形成されている。サック室噴射孔18におけるシート部124の内側の開口は、サック室125の中心Q1からオフセットされた位置に形成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火プラグが配置された内燃機関のシリンダに設置されるノズル本体と、
前記ノズル本体の先端部に設けられた噴射孔形成部材と、
前記噴射孔形成部材に設けたシート面に接触及び離反する弁体側シート面が形成された弁体と、を備え、
前記噴射孔形成部材は、
前記シート面を有するシート部と、
前記シート部における先端部に形成され、前記シート面から先端部側に向けて凹んだ凹部であるサック室と、を有し、
前記サック室には、燃料を前記点火プラグに向けて噴射するサック室噴射孔が形成されており、
前記サック室噴射孔における前記シート部の内側の開口は、前記サック室の中心からオフセットされた位置に形成される
燃料噴射装置。
【請求項2】
前記サック室は、前記シート部の中心に形成される
請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記サック室噴射孔の中心軸線は、前記ノズル本体の中心軸線に対して傾斜している
請求項2に記載の燃料噴射装置。
【請求項4】
前記サック室噴射孔は、前記サック室の中心から前記シリンダの壁面方向に沿ってオフセットされた位置に形成される
請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項5】
前記サック室噴射孔における前記燃料を噴射する方向である噴射軸は、前記点火プラグにおいて火花が発生する点火領域を向いている
請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項6】
前記サック室噴射孔は、
前記サック室の内壁面から前記噴射孔形成部材の外周面に向けて延在するオリフィス孔と、
前記外周面から前記オリフィス孔に向けて凹んだ凹部であるザグリ穴と、
を有する請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項7】
前記ザグリ穴の開口径は、前記オリフィス孔の開口径よりも大きく設定されている
請求項6に記載の燃料噴射装置。
【請求項8】
前記ザグリ穴における前記外周面から前記オリフィス孔までの長さは、前記オリフィス孔における前記サック室の内壁面から前記ザグリ穴までの長さよりも短く設定されている
請求項6に記載の燃料噴射装置。
【請求項9】
前記シート面には、前記燃料を噴射するシート部噴射孔が形成されている
請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項10】
前記シート部噴射孔は、前記シート面に複数形成され、
複数の前記シート部噴射孔は、前記サック室噴射孔の周囲のうち少なくとも一部には、配置されない
請求項9に記載の燃料噴射装置。
【請求項11】
前記サック室噴射孔は、前記噴射孔形成部材において前記シート部噴射孔よりも前記点火プラグ側に配置される
請求項10に記載の燃料噴射装置。
【請求項12】
前記サック室噴射孔及び前記シート部噴射孔は、複数段形状に形成されており、
前記サック室噴射孔の段数は、前記シート部噴射孔の段数よりも少なく設定されている
請求項9に記載の燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関として、燃料噴射装置によりシリンダ内に燃料を直接噴射する筒内噴射型の内燃機関が用いられている。従来の燃料噴射装置に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。
【0003】
特許文献1には、弁体と弁体の先端側において燃料を噴射する複数の噴射孔が形成された噴射孔形成部とを備えた燃料噴射装置に関する技術が記載されている。そして、特許文献1では、噴射孔形成部には、噴射孔形成部の中心軸線と第1噴射孔軸線との交差角度がθ1となる第1噴射孔と、噴射孔形成部の中心軸線と第2噴射孔軸線との交差角度がθ1よりも大きいθ2となる第2噴射孔と、が形成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、噴射中または噴射後の燃料は、燃料噴射装置の先端部に付着しやすい。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、先端部に付着した燃料について考慮されていなかった。その結果、特許文献1に記載された技術では、先端部に付着した燃料が煤となることで、輝炎が発生しやすくなり、排ガス性能が悪化する、という問題を有していた。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、先端部の表面に燃料が付着することを抑制し、燃焼の安定性の向上を図ることができる燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、燃料噴射装置は、ノズル本体と、噴射孔形成部材と、弁体と、を備えている。ノズル本体は、点火プラグが配置された内燃機関のシリンダに設置される。噴射孔形成部材は、ノズル本体の先端部に設けられる。弁体は、噴射孔形成部材に設けたシート面に接触及び離反する弁体側シート面が形成されている。
噴射孔形成部材は、シート面を有するシート部と、シート部における先端部に形成され、シート面から先端部側に向けて凹んだ凹部であるサック室と、を有している。そして、サック室には、燃料を点火プラグに向けて噴射するサック室噴射孔が形成されている。サック室噴射孔におけるシート部の内側の開口は、サック室の中心からオフセットされた位置に形成される。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の燃料噴射装置によれば、先端部の表面に燃料が付着することを抑制し、燃焼の安定性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態例にかかる燃料噴射装置を示す断面図である。
【
図2】実施の形態例にかかる燃料噴射装置を内燃機関に搭載した状態を示す模式図である。
【
図3】実施の形態例にかかる燃料噴射装置の先端部を拡大して示す断面図である。
【
図4】実施の形態例にかかる燃料噴射装置の先端部を示す正面図である。
【
図5】実施の形態例にかかる燃料噴射装置における噴射孔形成部材のシート部を内側から見た平面図である。
【
図6】噴射孔形成部材のシート部を内側から見た平面図であり、サック室噴射孔をサック室の中心に配置した例を示す図である。
【
図7】実施の形態例にかかる燃料噴射装置から噴射される噴霧を示す外観斜視図である。
【
図8】実施の形態例にかかる燃料噴射装置におけるサック室噴射孔及びシート部噴射孔から燃料が噴射される応対を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、燃料噴射装置の実施の形態例について、
図1~
図8を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0011】
1.実施の形態例
1-1.燃料噴射装置の構成
まず、実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる燃料噴射装置の構成について
図1を参照して説明する。
図1は、燃料噴射装置を示す分解斜視図である。
【0012】
図1に示す燃料噴射装置は、内燃機関として、入行程、圧縮行程、燃焼(膨張)行程、排気行程の4行程を繰り返す4サイクルエンジンに用いられるものである。また、燃料噴射装置 は、各気筒のシリンダの中に燃料を噴射する筒内噴射型の内燃機関に適用されるものである。
【0013】
図1に示すように、燃料噴射装置1は、ノズル本体10と、弁体20と、可動コア30と、固定コア40と、コイル50と、ハウジング70と、接続部80と、フィルタ90と、を備えている。また、燃料噴射装置1は、第1ばね61と、第2ばね63と、調整部材62とを備えている。
【0014】
[ノズル本体]
ノズル本体10は、筒状に形成されている。ノズル本体10の中心軸線AX1に沿う軸線方向Da(以下、単に「軸線方向Da」という)の一端部である先端部には、第1内部空間130が形成されている。また、ノズル本体10の軸線方向Daの他端部である後端部には、先端部よりも外径が大きい大径部14が形成されている。この大径部14には、第2内部空間140が形成されている。第1内部空間130と第2内部空間140は、ノズル本体10の軸線方向Daに沿って形成された連通孔16によって連通している。
【0015】
第1内部空間130は、ノズル本体10の先端部から軸線方向Daの内側に向けて凹んだ凹部である。この第1内部空間130には、噴射孔形成部材12が挿入又は圧入により取り付けられている。また、噴射孔形成部材12は、ノズル本体10における先端部の開口部の内周縁において全周に亘って溶接されることで、ノズル本体10に固定される。噴射孔形成部材12には、燃料を噴射する複数の噴射孔18、19が形成されている。なお、噴射孔形成部材12及び噴射孔18、19の詳細な構成については、後述する。
【0016】
また、ノズル本体10における先端部側の外周面には、複数(本例では2つ)の溝131が形成されている。溝131は、ノズル本体10の外周面の周方向に沿って連続して形成されている。溝131には、シール部材15がはめ込まれている。シール部材15は、燃料噴射装置1が内燃機関のシリンダ301(
図2参照)に取り付けられた際に、シリンダ301と燃料噴射装置1との隙間を密閉する。
【0017】
第2内部空間140は、大径部14の後端側が開口し、軸線方向Daの先端側に向けて凹んだ有底の凹部である。第2内部空間140には、後述する可動コア30と、固定コア40の一部が配置される。第2内部空間140における底部の中央部には、第2内部空間140と同心円上に形成されたばね収容部141が形成されている。ばね収容部141は、第2内部空間140の底部から先端部に向けて円筒状に凹んだ凹部である。このばね収容部141には、第2ばね63の一端部が収容される。
【0018】
[弁体]
このノズル本体10の内部には、弁体20が軸線方向Daに沿って移動可能に配置されている。弁体20は、円柱状に形成されている。弁体20は、後端部21と、先端部23と、後端部21と先端部23の中間を示す中間部22とを有している。先端部23は、弁体20の軸線方向Daの先端側に形成され、後端部21は、弁体20の軸線方向Daの後端側に形成されている。
【0019】
先端部23は、ノズル本体10の先端部に設けた噴射孔形成部材12に収容されている。先端部23は、弁体20が軸線方向Daに沿って移動することで、噴射孔形成部材12に設けた噴射孔18、19を開閉する。なお、先端部23の詳細な構成については、後述する。
【0020】
中間部22は、先端部23における軸線方向Daの後端側から連続して設けられている。中間部22は、ノズル本体10の連通孔16に配置される。中間部22の外周面221と、連通孔16の内周面との間には、間隙G1が形成されている。中間部22における軸線方向Daの後端側からは、後端部21が連続して設けられている。
【0021】
後端部21は、ノズル本体10における第2内部空間140に配置される。後端部21は、中間部22の外径よりも大きな略円柱状に形成されている。後端部21は、後述する固定コア40の筒孔内に内挿される。後端部21には、後端側摺動部211と、複数の流路形成部212と、係合部213が設けられている。
【0022】
後端側摺動部211は、後端部21における外周面に形成されている。後端側摺動部211は、後述する固定コア40の内周面41に摺動可能に支持される。これにより、弁体20は、固定コア40により軸線方向Daに沿って移動可能に支持される。
【0023】
複数の流路形成部212は、後端部21の外周面を軸線方向Daに沿って複数切り欠くことで形成されている。そして、流路形成部212は、後述する固定コア40の内周面41との間に燃料が通過する流路FCを形成する。
【0024】
係合部213は、後端部21に設けた流路形成部212よりも軸線方向Daの先端部側に設けられている。そして、係合部213は、後端部21の外周面から径方向の外側に向けて張り出している。この係合部213は、弁体20の開閉弁動作時に後述する可動コア30と係合する。
【0025】
また、後端部21における軸線方向Daの後端部側の端面には、第1ばね61の一端部が当接されている。弁体20は、第1ばね61により軸線方向Daの先端部側(閉弁側)に向けて付勢されている。
【0026】
上述した構成を有する弁体20は、SUS等の金属材料等で形成されている。
【0027】
[可動コア]
次に、可動コア30について説明する。可動コア30は、ノズル本体10の第2内部空間140において、弁体20の後端部21と第2内部空間140の底部との間に配置されている。また、可動コア30の外周面と第2内部空間の内周面との間には、微小な間隙G3が形成されている。そのため、可動コア30は、第2内部空間140内において軸線方向Daに沿って移動可能に配置される。
【0028】
可動コア30は、円筒状に形成されている。可動コア30には、挿通孔31と、偏心貫通孔32が形成されている。挿通孔31及び偏心貫通孔32は、可動コア30における軸線方向Daの一端部から他端部にかけて貫通する貫通孔である。挿通孔31は、可動コア30の中心軸上に形成されている。そして、挿通孔31には、弁体20の中間部22が挿通している。
【0029】
偏心貫通孔32は、可動コア30の中心軸から偏心した位置に形成されている。偏心貫通孔32は、流路形成部212と固定コア40の内周面41によって形成された流路FCに連通している。そして、偏心貫通孔32は、燃料が通過する流路FCを形成する。
【0030】
可動コア30における軸線方向Daの先端側の端面には、第2ばね63の他端部が当接している。そのため、第2ばね63は、可動コア30とノズル本体10のばね収容部141の間に介在される。また、可動コア30における軸線方向Daの後端側の端面には、固定コア40が当接している。
【0031】
[固定コア]
次に、固定コア40は、可動コア30を磁気吸引力によって吸引する部材である。固定コア40は、外周面に凹凸を有する略円筒状に形成されている。固定コア40における軸線方向Daの先端部は、ノズル本体10の大径部14の内側、すなわち第2内部空間140内に圧入されている。そして、ノズル本体10と固定コア40は、溶接により接合される。これにより、ノズル本体10と固定コア40との間の隙間が密閉され、ノズル本体10の内部の空間が密閉される。
【0032】
また、固定コア40の先端部は、第2内部空間140に配置された可動コア30における軸線方向Daの後端側の端面と対向する。固定コア40における可動コア30の対向する先端部を、硬質クロムメッキや無電解ニッケルメッキ等のメッキによって被覆してもよい。これにより、可動コア30が衝突する固定コア40の先端部の耐久性及び信頼性を向上させることができる。
【0033】
同様に、可動コア30における固定コア40と対向する後端部を、硬質クロムメッキや無電解ニッケルメッキ等のメッキによって被覆してもよい。これにより、可動コア30として比較的柔らかい軟磁性ステンレス鋼を適用した場合でも、可動コア30の耐久性及び信頼性を確保することができる。
【0034】
なお、固定コア40における軸線方向Daの後端部側は、ノズル本体10の第2内部空間140から軸線方向Daの後端に向けて突出している。
【0035】
固定コア40には、貫通孔42が形成されている。貫通孔42は、中心軸線AX1と同軸上に形成されている。そして、貫通孔42は、燃料が通過する流路FCを形成する。また、固定コア40における軸線方向Daの後端部には、貫通孔42に連通する開口部43が形成されている。この開口部43から貫通孔42に向けて燃料が導入される。また、開口部43から貫通孔42にかけてフィルタ90が挿入されている。
【0036】
さらに、貫通孔42における軸線方向Daの先端部側には、第1ばね61及び調整部材62が配置されている。第1ばね61は、調整部材62よりも貫通孔42の先端部側に配置されている。調整部材62は、貫通孔42に圧入されて、固定コア40の内部に固定されている。また、貫通孔42の先端部から、弁体20の後端部21が挿入される。第1ばね61は、調整部材62と弁体20の後端部21の間に介在される。そして、第1ばね61は、弁体20をノズル本体10の先端部に向けて軸線方向Daに付勢している。
【0037】
また、調整部材62における固定コア40に対する固定位置を調整することで、第1ばね61における弁体20の付勢力を調整することができる。これにより、弁体20の先端部23がノズル本体10の後述する噴射孔形成部材12に設けたシート面124aに押し付ける初期荷重を調整することができる。
【0038】
ここで、第1ばね61が弁体20をノズル本体10の先端部に向けて付勢する付勢力は、第2ばね63が可動コア30を固定コア40に向けて付勢する付勢力よりも大きく設定されている。
【0039】
[コイル]
次に、コイル50について説明する。コイル50は、円筒状のコイルボビン51に巻回されている。そして、コイル50は、コイルボビン51に巻回されて、ノズル本体10における大径部14の外周面の一部及び固定コア40の先端部の外周面の一部を覆うようにして配置される。コイル50の巻き始めと巻き終わりの端部は、不図示の配線を介して後述する接続部80のコネクタ81の電力供給用の端子811に接続されている。コイル50及びコイルボビン51の外周には、ハウジング70が固定されている。
【0040】
[ハウジング]
ハウジング70は、有底の円筒状に形成されている。ハウジング70における軸線方向Daの先端部である底部には、貫通孔71が形成されている。貫通孔71は、底部の中央部に形成されている。この貫通孔71には、ノズル本体10の大径部14が挿入される。そして、貫通孔71の開口縁とノズル本体10の外周面との間は、例えば、全周にわたって溶接されている。これにより、ノズル本体10は、ハウジング70に固定される。
【0041】
また、ハウジング70は、固定コア40の先端部側、コイルボビン51及びコイル50の外周を囲むようにして配置される。そして、ハウジング70の内周面は、ノズル本体10の大径部14及びコイル50と対向し、外周ヨーク部を形成する。このように、コイル50の周りには、固定コア40、可動コア30、ノズル本体10及びハウジング70を含むトロダイル状の磁気通路が形成されている。
【0042】
[接続部]
接続部80は、樹脂により形成されている。そして、接続部80は、固定コア40、コイル50、コイルボビン51及びハウジング70との間に充填される。また、接続部80は、ハウジング70よりも軸線方向Daの後端側において、固定コア40の後端部を除く外周面を覆う。そして、接続部80は、電力供給用の端子811を有するコネクタ81を形成するようにモールド成形されている。端子811は、不図示のプラグの接続端子に接続される。これにより、燃料噴射装置1は、高電圧電源又はバッテリ電源に接続される。そして、不図示のエンジンコントロールユニット(ECU)によってコイル50に対する通電が制御される。
【0043】
1-2.燃料噴射装置の動作例
次に、上述した構成を有する燃料噴射装置1の動作例について
図1及び
図2を参照して説明する。
図2は、燃料噴射装置1を内燃機関に搭載した状態を示す模式図である。
【0044】
図2に示すように、燃料噴射装置1は、内燃機関を構成するシリンダ301の壁面に設置される。そして、燃料噴射装置1は、燃料を噴射する先端部であるノズル本体10の先端部が、シリンダ301の内壁面とピストン302で形成される燃焼室310内に配置される。また、燃料噴射装置1におけるノズル本体10の先端部は、点火プラグ300に向けて配置される。
【0045】
上述したように、第1ばね61の付勢力は、第2ばね63の付勢力よりも大きく設定されている。そのため、後述するコイル50が通電されていない状態では、弁体20の先端部23は、後述する噴射孔形成部材12のシート面124aに押し付けられる。その結果、噴射孔18、19に至る流路FCは、弁体20に閉じられて閉弁状態となる。
【0046】
次に、ECUによってコイル50に通電されると、固定コア40、可動コア30、ノズル本体10及びハウジング70を含む磁気回路に磁束が流れる。そして、固定コア40には、可動コア30を吸引する磁気吸引力が発生する。固定コア40の磁気吸引力が、第1ばね61の付勢力、すなわち設定荷重を超えると、可動コア30は、固定コア40へ向けて移動する。可動コア30は、固定コア40と対向する端面、すなわち後端側端面が固定コア40の先端側端面に衝突するまで移動する。
【0047】
可動コア30が移動する際に、弁体20の後端部21に設けた係合部213と可動コア30が係合する。そのため、弁体20は、可動コア30と共に固定コア40に向けて軸線方向Daに沿って後端側に向けて移動する。
【0048】
弁体20が固定コア40へ向けて移動することで、弁体20の先端部23が噴射孔形成部材12から離反する。そのため、弁体20と噴射孔形成部材12との間に形成された噴射孔18に至るまでの流路FCが開通し、噴射孔18、19が開いた開弁状態となる。
【0049】
弁体20が開弁位置(開弁状態)にあるとき、フィルタ90を介して、燃料が固定コア40の開口部43に導入される。そして、燃料は、固定コア40の貫通孔42を通ってノズル本体10に向けて流れる。また、燃料は、貫通孔42に配置された調整部材62及び第1ばね61を通過し、弁体20の流路形成部212と固定コア40の内周面41との間に形成された流路FCを流れる。そして、燃料は、可動コア30の偏心貫通孔32を介して、ノズル本体10の第2内部空間140に流入する。
【0050】
第2内部空間140に流入した燃料は、弁体20とノズル本体10の連通孔16との間に形成された間隙G1を通過し、ノズル本体10の第1内部空間130に流れる。そして、燃料は、弁体20の先端部23と噴射孔形成部材12との間に形成された流路FCを流れて、噴射孔18、19を介して燃焼室310内へ噴射される。
【0051】
また、ECUによってコイル50の通電が中断されると、固定コア40、可動コア30、ノズル本体10及びハウジング70を含む磁気回路を流れる磁束が消滅する。そして、可動コア30を吸引する固定コア40の磁気吸引力も消滅する。そのため、第1ばね61における弁体20をノズル本体10の噴射孔形成部材12に向けて付勢する弾性力が、第2ばね63における可動コア30を固定コア40に向けて付勢する弾性力よりも大きい初期状態に戻る。
【0052】
これにより、弁体20は、第1ばね61によってノズル本体10の噴射孔形成部材12に向けて付勢されて、軸線方向Daに沿って先端部へ移動する。また、弁体20の係合部213と係合する可動コア30は、弁体20と共に軸線方向Daに沿って先端側に向けて移動する。これにより、弁体20の先端部23が後述する噴射孔形成部材12のシート面124aに押し付けられ、噴射孔18、19に至る流路FCは、弁体20に閉じられて閉弁状態となる。その結果、燃料噴射装置1による燃料の噴射が停止される。
【0053】
2.噴射孔、噴射孔形成部材、及び弁体の先端部の詳細な構成
次に、噴射孔18、19、噴射孔形成部材12及び弁体20の先端部23の詳細な構成について
図1、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、燃料噴射装置1の先端部を拡大して示す断面図、
図4は、燃料噴射装置1の先端部を示す正面図である。
【0054】
図1、
図3に示すように、噴射孔形成部材12は、ノズル本体10の第1内部空間130の内壁面に圧入される筒部122と、筒部122の軸線方向Daの先端部側から連続するシート部124とを有している。
【0055】
筒部122の内周面121には、弁体20の先端部23に設けた先端側摺動部231が摺動する。また、筒部122には、複数の切り欠き部123が形成されている。複数の切り欠き部123は、筒部122の内周面121の周方向に等間隔に形成されている。そして、切り欠き部123と先端側摺動部231との間には、燃料が通過する流路FCが形成される。そして、流路FCは、シート部124に向けて延在している。
【0056】
シート部124は、筒部122における軸線方向Daの先端部側の開口を塞ぐようにして筒部122に連続して形成されている。シート部124は、軸線方向Daの先端側に向けて突出する略半球状の凹部である。シート部124における内部には、後述する弁体20の球面部230が接触及び離反するシート面124aが形成されている。シート面124aは、軸線方向Daの先端側に向かうに従い縮径する円錐台形状に形成されている。
【0057】
また、シート部124における軸線方向Daの先端部には、サック室125が形成されている。サック室125は、シート面124aにおける軸線方向Daの先端部に形成され、シート面124aからさらに軸線方向Daの先端部側に向けて略半球状凹んだ凹部である。また、サック室125は、燃料噴射装置1の中心軸線AX1上に形成されている。このサック室125には、後述する弁体20における球面部230の凸部233の少なくとも一部が挿入される。
【0058】
弁体20の先端部23は、球面部230と、先端側摺動部231とを有している。先端側摺動部231は、噴射孔形成部材12における筒部122の内周面121を摺動する。先端側摺動部231よりも軸線方向Daの先端部側には、球面部230が連続して形成されている。
【0059】
球面部230は、略半球状に形成されている。球面部230は、弁体側シート面232と、凸部233とを有している。弁体側シート面232は、シート部124のシート面124aに対向し、シート面124aに対して接近及び離反する。そして、弁体側シート面232がシート面124aに接触した際に、後述する噴射孔18、19に至る流路FCが閉じられる。また、弁体側シート面232がシート面124aから離反すると、弁体側シート面232とシート面124aとの間に燃料が通過する流路FCが形成され、後述する噴射孔18、19から燃料が噴射される。弁体側シート面232とシート面124aが接触した際に、凸部233の一部は、サック室125に挿入に挿入される。
【0060】
また、サック室125には、サック室噴射孔18が形成されており、シート面124aには、複数(本例では、5つ)のシート部噴射孔19が形成されている。
【0061】
サック室噴射孔18は、噴霧を形成するオリフィス孔18aと、平面形成用のザグリ穴18bの2段形状に形成されている。オリフィス孔18aは、サック室125の内壁面から外周面120に向けて延在している。
【0062】
また、
図2及び
図3に示すように、サック室噴射孔18における燃料を噴射する方向であるオリフィス孔18aの軸方向(以下、「噴射軸」という)Faは、点火プラグ300を向いている。より詳細には、サック室噴射孔18の噴射軸Faは、点火プラグ300において火花が発生する点火領域300aに向けられている。そのため、サック室噴射孔18から噴射される(以下、「サック室噴霧」という)噴霧F1は、点火領域300aに向かう。
【0063】
ザグリ穴18bは、外周面120からオリフィス孔18aに向けて凹んだ凹部であり、オリフィス孔18aの周囲を囲むようにして形成される。ザグリ穴18bの開口径は、オリフィス孔18aの開口径よりも大きく設定されている。また、ザグリ穴18bにおける外周面120からオリフィス孔18aまでの長さは、オリフィス孔18aにおけるサック室125の内壁面からザグリ穴18bまでの長さよりも短く設定される。
【0064】
シート部噴射孔19は、噴霧を形成するオリフィス孔19aと、ザグリ穴19bと、平面形成用の面押し穴19cの3段形状に形成されている。オリフィス孔19aは、シート面124aから外周面120に向けて延在している。ザグリ穴19bは、オリフィス孔19aを囲むようにして形成されており、オリフィス孔19aにおける外周面120側の端部から外周面120に向けて延在している。また、面押し穴19cは、外周面120からザグリ穴19bに向けて凹んだ凹部であり、ザグリ穴19bの周囲を囲むようにして形成されている。
【0065】
なお、シート部噴射孔19は、噴射孔形成部材12における曲面部に形成されている。そのため、シート部噴射孔19には、オリフィス孔19aの長さを調整するために、ザグリ穴19bを設けている。これに対して、サック室噴射孔18は、噴射孔形成部材12における先端部に形成されている。そのため、シート部124におけるサック室125での厚さを調整することで、サック室噴射孔18におけるオリフィス孔18aの長さを容易に調整することができる。
【0066】
これにより、サック室噴射孔18では、オリフィス孔18aの長さの調整用の穴を設ける必要がなくなる。その結果、サック室噴射孔18を形成するための加工時間を削減することができる。
【0067】
さらに、ザグリ穴18bは、平面を形成できればよいため、その長さを最小化することができる。その結果、サック室噴射孔18から噴射された噴霧F1がザグリ穴18bの壁面に付着することを抑制することができる。
【0068】
なお、本例では、サック室噴射孔18を2段形状とし、シート部噴射孔19を3段形状とした例を説明したが、サック室噴射孔18及びシート部噴射孔19の段数は、これに限定されるものではない。例えば、サック室噴射孔18を3段以上に形成し、シート部噴射孔19を4段以上に形成してもよく、サック室噴射孔18及びシート部噴射孔19を、オリフィス孔18a、19aのみの1段形状としてもよい。なお、サック室噴射孔18の加工時間を削減させるために、サック室噴射孔18の段数は、シート部噴射孔19の段数よりも少なく設定することが好ましい。
【0069】
図4に示すように、複数のシート部噴射孔19は、サック室噴射孔18の周囲における一部を除いて略等間隔に形成される。具体的には、複数のシート部噴射孔19は、噴射孔形成部材12においてサック室噴射孔18よりも点火プラグ300側に形成されていない。すなわち、サック室噴射孔18は、複数のシート部噴射孔19よりも点火プラグ300側に配置される。
【0070】
図5は、噴射孔形成部材12のシート部124を内側から見た平面図である。
図5に示すように、サック室噴射孔18は、シート部124の中心であるサック室125に設けられる。ここで、サック室125の中心Q1を通り、軸方向の一方がピストン側を向き、軸方向の他方が点火プラグ側を向く軸線をY軸とする。そして、サック室125の中心Q1を通り、かつY軸と直交する軸線をX軸とする。なお、サック室125の中心Q1は、ノズル本体10の軸線方向Da上に配置される。また、上述したように、サック室125は、略半球状に凹んだ凹部であるため、中心Q1は、凹部の頂点に位置する。
【0071】
サック室噴射孔18の内側の開口は、
図5に示すように、Y軸から外れた位置に形成されている。そして、サック室噴射孔18におけるシート部124の内側の開口は、X軸に沿ってサック室125の中心Q1からずらした(オフセットした)位置に形成される。すなわち、サック室噴射孔18は、サック室125の中心Q1から燃焼室310(
図2参照)の壁面方向にオフセットされた位置に配置される。そのため、サック室噴射孔18の中心軸線は、燃料噴射装置1の中心軸AX1に対して傾斜している。
【0072】
このように、サック室噴射孔18をサック室125の中心Q1からずれた位置に形成することで、サック室125に流れ込む燃料は、
図5に示す流線Fsのようにサック室噴射孔18にスムーズに流れる。その結果、サック室噴射孔18から噴射される噴霧が左右に波打つ現象、すなわち噴霧のゆらぎを低減させることができる。
【0073】
図6は、サック室噴射孔180をサック室125の中心Q1に配置した例を示す図である。
図6に示す例においても、シート部124にシート部噴射孔190が形成され、サック室125にサック室噴射孔180が形成されている。
【0074】
ここで、流体は、圧損の少ない方向、すなわち流体抵抗が少ない方向に流れる。そのため、
図6に示すように、サック室噴射孔180をサック室125の中心Q1上に配置した場合、サック室125に流れ込む燃料は、
図6に示す流線Fsのように、サック室125の側面に沿って流れる。これにより、サック室125の中心Q1、すなわちサック室噴射孔180の両側で渦が発生する。そして、この渦の発生と消滅を繰り返すことで、サック室噴射孔180に流れる一定のフローパターンが崩れる。その結果、サック室噴射孔180から噴射される噴霧にゆらぎが発生し、噴射孔形成部材12の先端部に燃料が付着するおそれがある。
【0075】
したがって、
図5に示すように、サック室噴射孔18をX軸に沿ってサック室125の中心Q1からオフセットした位置に形成することで、噴霧のゆらぎを抑制することができる。その結果、噴射孔形成部材12の先端部に燃料が付着することを抑制することができ、燃焼の安定性の向上を図ることができる。
【0076】
また、
図5に示すように、サック室噴射孔18にシート部124の360°全方位から燃料が流れ込む。そのため、シート部噴射孔19に流れる込む燃料の量を減少させることができ、シート部噴射孔19に燃料が過剰に流れ込むことを抑制することができる。
【0077】
これにより、シート部噴射孔19から噴射される噴霧(以下、「シート部噴霧」という)F2の噴霧の長さが長くなることを抑制できる。その結果、シート部噴霧F2がシリンダ301の壁面に到達し、シリンダ301の壁面やピストン302に燃料が付着することを防止することができる。
【0078】
また、シート部124の360°全方位から燃料が流れ込むサック室噴射孔18では、噴霧初期でのサック室噴霧F1(
図2参照)の噴霧の長さが、シート部噴霧F2よりも長くなる。さらに、上述したように、サック室噴射孔18の噴射軸Faは、点火プラグ300の点火領域300aに向けられている。そのため、シート部噴霧F2(
図2参照)の噴霧の長さが短くなっても、始動したばかりのエンジンで暖機を早めるためアイドリングの回転数を高める状態、いわゆるファストアイドルでの燃焼安定性を維持又は向上させることができる。
【0079】
また、シート部噴射孔19は、サック室噴射孔18よりも点火プラグ300側に配置されていない。そのため、シート部噴霧F2が内燃機関のシリンダヘッドや吸気バルブ、排気バルブ等に到達し、シリンダヘッドや吸気バルブ、排気バルブに燃料が付着することを防ぐことができる。
【0080】
図7は、燃料噴射装置1から噴射される噴霧を示す外観斜視図である。
上述したように、サック室噴射孔18の噴射軸Faは点火プラグ300の方向を向いており、サック室噴射孔18は、複数のシート部噴射孔19よりも点火プラグ300側に配置される。そのため、
図2及び
図7に示すように、サック室噴霧F1は、複数のシート部噴射孔19から噴射されるシート部噴霧F2よりも点火プラグ300に最も接近する。
【0081】
さらに、複数のシート部噴射孔19は、サック室噴射孔18を周囲の全てを囲まないように配置されている。そのため、サック室噴霧F1と複数のシート部噴霧F2が互いに干渉する、いわゆる噴霧シュリンクの発生を防止することができる。これにより、互いに噴霧F1、F2が互いに干渉して、噴射孔形成部材12の外周面120から噴霧の液滴が到達するまでの長さである噴霧の長さ(ペネトレーション)が増加することを防止できる。
【0082】
なお、サック室噴射孔18の噴射軸Faと、複数のシート部噴射孔19の噴射軸との角度を大きくすることができれば、複数のシート部噴射孔19をサック室噴射孔18における周囲の全てを囲むように配置してもよい。すなわち、サック室噴射孔18よりも点火プラグ側にシート部噴射孔19を配置してもよい。
【0083】
しかしながら、ベルヌーイの定理により、複数のシート部噴霧F2が、サック室噴霧F1に引き寄せられるおそれがある。そのため、本例の燃料噴射装置1のように、複数のシート部噴射孔19は、サック室噴射孔18を周囲のうち一部には、配置されないようにして、サック室噴射孔18の周囲の全てを囲まないように配置することが望ましい。
【0084】
図8は、サック室噴射孔18及びシート部噴射孔19から燃料が噴射される状態を拡大して示す説明図である。
ここで、噴射中または噴射後の燃料は、噴射孔形成部材12の外周面120において中心軸線AX1上に集結する。そのため、噴射孔形成部材12の外周面120における中心軸線AX1上は、燃料が最も付着しやすい箇所である。これに対して、本例の燃料噴射装置1では、噴射孔形成部材12における中心軸線AX1上にサック室噴射孔18を形成している。
【0085】
そして、サック室噴射孔18から燃料が噴射されると、ベルヌーイの定理によりサック室噴霧F1付近の気体の圧力が下がる。そのため、外周面120に付着した燃料には、サック室噴霧F1に引き寄せられる力が働く。これにより、外周面120に付着した燃料は、サック室噴霧F1に引き寄せられ、サック室噴霧F1と共に外周面120から除去される。その結果、噴射孔形成部材12の先端部に燃料が付着することを抑制し、燃焼の安定性の向上を図ることができる。
【0086】
さらに、サック室噴射孔18は、オリフィス孔18aとザグリ穴18bの2段形状となっており、ザグリ穴18bの開口径をオリフィス孔18aの開口径よりも大きく形成している。さらに、ザグリ穴18bの長さをオリフィス孔18aの長さよりも短く形成している。これにより、上述したベルヌーイの定理によりサック室噴霧F1が外周面120に付着した燃料を引き寄せる力を大きくすることができ、外周面120から燃料をより効率的に除去することができる。
【0087】
さらに、流路FCを燃料が通過する際に、燃料にキャビテーションと呼ばれる気泡S1が発生する。なお、気泡S1は、流路FCが狭くなることで流速が早くなり、燃料の飽和蒸気圧以下まで低下することで発生する。また、弁体側シート面232とシート面124aとの間の流路FCは、燃料噴射装置1において最も狭くなる箇所である。そのため、気泡S1は、噴射孔形成部材12におけるシート部124の近傍から先端部側である弁体側シート面232とシート面124aとの間に形成された流路FCで発生する。
【0088】
この気泡S1は、燃料と共に流路FCを通過して、燃料噴射装置1の中心軸線AX1上にあるサック室125まで流れる。そして、気泡S1は、サック室125内で崩壊する。この気泡S1の崩壊によって生じる崩壊エネルギーT1によって、サック室125内の燃料の微粒化を促進させることができる。その結果、サック室125に設けたサック室噴射孔18から燃料をより微粒化した状態で噴射させることができる。
【0089】
なお、上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0090】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…燃料噴射装置、 10…ノズル本体、 12…噴射孔形成部材、 18…サック室噴射孔(噴射孔)、 18a、19a…オリフィス孔、 18b、19b…ザグリ穴、 19…シート部噴射孔、 19c…面押し穴、 20…弁体、 23…先端部、 30…可動コア、 40…固定コア、 50…コイル、 70…ハウジング、 80…接続部、 120…外周面、 121…内周面、 122…筒部、 123…切り欠き部、 124…シート部、 124a…シート面、 125…サック室、 230…球面部、 231…先端側摺動部、 232…弁体側シート面、 233…凸部、 300…点火プラグ、 300a…点火領域、 301…シリンダ、 302…ピストン、 310…燃焼室、 AX1…中心軸線、 Da…軸線方向、 F1…サック室噴霧、 F2…シート部噴霧、 Fs…流線、 Q1…中心、 S1…気泡、 T1…崩壊エネルギー