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2022-137716集塵方法、集塵装置、レーザ加工方法、およびレーザ加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137716
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】集塵方法、集塵装置、レーザ加工方法、およびレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/142 20140101AFI20220914BHJP
【FI】
B23K26/142
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037353
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】馬場 崇史
(72)【発明者】
【氏名】小林 恭子
(72)【発明者】
【氏名】前川 優太
(72)【発明者】
【氏名】二宮 孝文
(72)【発明者】
【氏名】川原 公介
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168AD11
4E168AD18
4E168FB03
4E168FB05
4E168FC04
4E168JA01
4E168JA14
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】発生した加工飛散物を安定して回収(集塵)できる集塵方法、集塵装置、レーザ加工方法、およびレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】ワークの加工面に対して所定第1角度で傾斜した方向に沿って流体を吹き付ける。ワークの加工面に対して所定第2角度で傾斜した方向に沿って流体を吹き付ける。所定第1角度で傾斜した方向からの流体流に、所定第2角度で傾斜した方向からの流体流をぶつける。これにより、ボックス内に巻き上げ、この巻き上げた加工飛散物を集塵ボックス内に集塵する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークからの加工飛散物を集塵する集塵方法であって、
ワークの加工面に対して所定第1角度で傾斜した方向に沿って流体を吹き付け、ワークの加工面に対して所定第2角度で傾斜した方向に沿って流体を吹き付けて、所定第1角度で傾斜した方向からの流体流に、所定第2角度で傾斜した方向からの流体流をぶつけて、加工飛散物を集塵ボックス内に巻き上げ、この巻き上げた加工飛散物を集塵ボックス内に集塵することを特徴とする集塵方法。
【請求項2】
ワークにレーザ光を照射するレーザ照射器と、ワークを受けるテーブルと、ワークに対してレーザ照射器からのワークへのレーザ照射によって生じる加工飛散物を集塵する集塵ボックスとを備えたレーザ加工装置を用いるレーザ加工方法であって、
前記請求項1に記載の集塵方法を含むことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項3】
ワークに対して反対側に設けられた各第1・第2吹き出し口を有する第1・第2の送風機と、ワークからの加工飛散物を集塵するための集塵ボックスとを備えた集塵装置であって、
前記第1の送風機の第1の吹き出し口は、ワークに対して所定第1角度で傾斜した方向に向かって流体を吹き付け、前記第2の送風機は、ワークに対して所定第2角度で傾斜した方向に向かって流体を吹き付け、第1の送風機の第1吹き出し口からの第1流体流に第2の送風機の第2の吹き出し口からの第2流体流をぶつけて、加工飛散物を前記集塵ボックス内に巻き上げ、この巻き上げた加工飛散物を集塵ボックス内に集塵することを特徴とする集塵装置。
【請求項4】
第1の送風機からの第1の流体流に第2の送風機の第2の流体流がぶつけられることによって生じる第3の流体流の方向は、ワークの加工面と、この加工面と直交する垂直面との間の斜め方向であることを特徴とする請求項3に記載の集塵装置。
【請求項5】
前記ボックスは、加工飛散物を下流側の集塵方向に流す筒状飛散物流路を備え、前記筒状飛散物流路の上流側には、前記集塵ボックス内に巻き上げられた加工飛散物を含む第3の流体流を筒状飛散物流路の周方向渦流とするために渦流発生部を備えることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の集塵装置。
【請求項6】
前記筒状飛散物流路の上流端には、渦流発生部で発生した渦流を筒状飛散物流路の下流側である集塵方向への流れに促進するためのエア流入口を設けたことを特徴とする請求項5に記載の集塵装置。
【請求項7】
ワークにレーザ光を照射するレーザ照射器と、ワークを受けるテーブルと、ワークに対してレーザ照射器からのワークへのレーザ照射によって生じる加工飛散物を集塵する集塵ボックスとを備えたレーザ加工装置であって、
前記請求項3~請求項6のいずれか1項に記載の集塵装置を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レーザ加工には、レーザ光をワークに照射することで、ワークを瞬時に溶融・蒸発させるアブレーション加工がある。しかしながら、アブレーション加工では、加工時にデブリ(加工飛散物)が発生する。
【0002】
このようにデブリが発生すれば、デブリがレーザ光を遮断したり、デブリがワークに付着したりして、高精度の加工の妨げとなっていた。そこで、従来では、レーザ加工で生じた加工飛散物を集塵するレーザ加工機用集塵装置(特許文献1)及び加工飛散物を回収するための回収機構を備えたレーザ加工装置(特許文献2)がある。
【0003】
特許文献1に記載のレーザ加工機用集塵装置は、図4に示すように、加工対象物Wの表面W1と隙間Sを開けて配置される筐体1と、この筐体1に斜め方向から挿入される加工ガス供給ノズル2と、筐体1の内部に配置された整流板3とを備える。
【0004】
また、筐体1の上壁1aにレーザ透過孔4が設けられ、筐体1の下方は底壁が設けられていない開放部1bとされている。筐体1の長手方向の一方の端部は開放部6とされ、筐体1の長手方向の他方の端部には吸引ノズル7が配置されている。
【0005】
このため、加工ガス供給ノズル2からレーザ加工部位Pに向けて加工ガスが斜め下方に噴き付けられる。すなわち、筐体1の上流側の開放部側上方から下流側下方へ噴きつけられる。この際、吸引ノズル7からエアが吸引され、筐体1内を矢印のような気流の流れが発生する。これによって、加工飛散物は、その急流に乗って、吸引ノズル7側へ搬送され、デブリがレーザ光Lを遮断したり、デブリが加工対象物(ワーク)Wに付着したりするのを防止する。
【0006】
特許文献2に記載のレーザ加工装置は、図5に示すように、デブリ回収機構10と、送風機11と、集塵機12とを備え、また、デブリ回収機構10は、ダクト15と、噴出部材16とを有する。ダクト15は箱体からなり、フレキシブルホース17を介して集塵機12に接続されている。
【0007】
また、送風機11は高圧のエアを送風するものであり、集塵機12は、送風機11の高圧のエアとともに塵を吸引する。また、噴出部材16は送風機11に接続管18を介して接続される。これにより、噴出部材16は送風機11から送風されたエアをダクト15の内部に噴出する。
【0008】
ダクト15の上壁15aに開口部15a1が設けられ、ダクト15の下壁15bに上壁15aには開口部15a1に対向する開口部15b1が設けられている。これによって、レーザ照射器20からのレーザ光Lは、開口部15a1を介してダクト15内に入り、このダクト15を通過して、開口部15b1を介してワークWの加工部に照射される。
【0009】
このようにレーザ光を加工対象物(ワーク)Wに照射してレーザ加工している際には、集塵機12が動作され、各開口部15a1、15b1、15cからエアA1、A2,A3がダクトに流入する。また、噴出部材16からはエアB1がダクトに流入する。
【0010】
これらのエアA1、A2,A3、B1にて、レーザ加工にて生じた加工飛散物が集塵機12に流入させることができ、デブリがレーザ光Lを遮断したり、デブリがワークに付着したりするのを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第3143457号公報
【特許文献2】特開2017-100170公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、図4で示される特許文献1では、加工ガス供給ノズルから加工ガスが加工部位に吹き付けられた場合、筐体とワークとの間に隙間があり、この隙間から筐体外に加工飛散物が飛散することになる。これによって、加工飛散物がワーク上面に付着するおそれがある。また、筐体の吸引ノズル側に内部コーナ部乃至端面に加工飛散物が付着して、吸引ノズルに吸引されない加工飛散物が生じるおそれがあった。
【0013】
図5で示される特許文献2においても、ダクトとワークとの間に隙間があり、この隙間に加工飛散物が飛散するおそれがあり、加工飛散物がワーク上面に付着するおそれがある。また、この場合のダクトとしても箱型であり、内部の角部を有し、この角部に加工飛散物が溜まるおそれがあり、長期にわたって、加工飛散物の回収が困難である。
【0014】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、発生した加工飛散物を安定して回収(集塵)できる集塵方法、集塵装置、レーザ加工方法、およびレーザ加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の集塵方法は、ワークからの加工飛散物を集塵する集塵方法であって、ワークの加工面に対して所定第1角度で傾斜した方向に沿って流体を吹き付け、ワークの加工面に対して所定第2角度で傾斜した方向に沿って流体を吹き付けて、所定第1角度で傾斜した方向からの流体流に、所定第2角度で傾斜した方向からの流体流をぶつけて、加工飛散物を集塵ボックス内に巻き上げ、この巻き上げた加工飛散物を集塵ボックス内に集塵するものである。
【0016】
本発明の集塵方法によれば、所定第1角度で傾斜した方向からの流体流に、所定第2角度で傾斜した方向からの流体流をぶつけて、加工飛散物を集塵ボックス内に巻き上げるものであるので、加工飛散物が集塵ボックス外への流出を防止できる。
【0017】
本発明のレーザ加工方法は、ワークにレーザ光を照射するレーザ照射器と、ワークを受けるテーブルと、ワークに対してレーザ照射器からのワークへのレーザ照射によって生じる加工飛散物を集塵する集塵ボックスとを備えたレーザ加工装置を用いるレーザ加工方法であって、前記集塵方法を含むものである。
【0018】
本発明のレーザ加工方法によれば、加工飛散物を集塵ボックス内に巻き上げるものであるので、レーザ加工によって生じるデブリ等の加工飛散物の集塵ボックス外への流出を防止できる。
【0019】
本発明の集塵装置は、ワークに対して反対側に設けられた各第1・第2吹き出し口を有する第1・第2の送風機と、ワークからの加工飛散物を集塵するための集塵ボックスとを備えた集塵装置であって、前記第1の送風機の第1の吹き出し口は、ワークに対して所定第1角度で傾斜した方向に向かって流体を吹き付け、前記第2の送風機は、ワークに対して所定第2角度で傾斜した方向に向かって流体を吹き付け、第1の送風機の第1吹き出し口からの第1流体流に第2の送風機の第2の吹き出し口からの第2流体流をぶつけて、加工飛散物を前記集塵ボックス内に巻き上げ、この巻き上げた加工飛散物を集塵ボックス内に集塵するものである。
【0020】
本発明の集塵装置によれば、加工飛散物の集塵ボックス外への流出を防止できる。
【0021】
第1の送風機からの第1の流体流に第2の送風機の第2の流体流がぶつけられることによって生じる第3の流体流の方向は、ワークの加工面と、この加工面と直交する垂直面との間の斜め方向であるように設定できる。このように設定することによって、加工飛散物の集塵ボックス外への流出を安定して防止できる。また、加工飛散物がレーザ光照射によるアブレーション加工で生じるデブリであれば、第3の流体流の方向は、ワークの加工面と、この加工面と直交する垂直面との間の斜め方向であるので、デブリがレーザ光照射の妨げにならない。
【0022】
集塵ボックスは、加工飛散物を下流側の集塵方向に流す筒状飛散物流路を備え、前記筒状飛散物流路の上流側には、前記集塵ボックス内に巻き上げられた加工飛散物を含む第3の流体流を筒状飛散物流路の周方向渦流とするために渦流発生部を備えるように構成できる。このように構成することによって、筒状飛散物流路の渦流発生部にて加工飛散物を含む第3の流体流を周方向渦流とすることができ、この周方向渦流を筒状飛散物流路内で下流側の集塵方向に流すことができる。このため、加工飛散物が筒状飛散物流路内で溜まることを有効に防止できる。すなわち、加工飛散物が筒状飛散物流路のコーナ部等に溜まることなく、安定して、筒状飛散物流路の下流側へ搬送することができる。
【0023】
前記筒状飛散物流路の上流端には、渦流発生部で発生した渦流を筒状飛散物流路の下流側である集塵方向への流れに促進するためのエア流入口を設けたものであってもよい。このようなエア流入口を設けることによって、このエア流入口から外気が流入して、筒状飛散物流路内での、加工飛散物の下流側の流れを促進することができ、より安定して、加工飛散物を集塵方向下流側へ搬送できる。
【0024】
本発明のレーザ加工装置は、ワークにレーザ光を照射するレーザ照射器と、ワークを受けるテーブルと、ワークに対してレーザ照射器からのワークへのレーザ照射によって生じる加工飛散物を集塵する集塵ボックスとを備えたレーザ加工装置であって、前記集塵装置を備えたものである。
【0025】
本発明のレーザ加工装置によれば、前記集塵装置を用いるので、レーザ加工にて生じた加工飛散物を集塵ボックス外へ流出させることなく、集塵方向下流側へ搬送できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、加工飛散物が集塵ボックス外への流出を防止できるので、加工飛散物がワークに付着(堆積)せず、ワークの加工を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の集塵装置を備えたレーザ加工装置の簡略断面正面図である。
図2】レーザ加工装置の簡略断面平面図である。
図3】第1の送風機からの流体流と第2の送風機からの流体流との関係を示し、(a)は第1の流体流がP点に衝突する場合の簡略図であり、(b)は第1の流体流の衝突範囲及び第2の衝突範囲を示す簡略図である。
図4】従来のレーザ加工機用集塵装置の簡略図である。
図5】従来のレーザ加工装置(レーザ加工機)の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明の実施の形態を図1図3に基づいて説明する。
【0029】
図1図2とは、本発明に係る集塵装置を備えたレーザ加工装置を示し、この集塵装置は、一対の第1・第2の送風機31,32と、ワークWからの加工飛散物を集塵するための集塵ボックス33を備える。集塵ボックス33は、加工飛散物50(この場合、デブリD)を下流側に流す筒状飛散物流路35を備え、この筒状飛散物流路35には加工飛散物50を吸引する図示省略の集塵機が連設されている。
【0030】
また、レーザ加工装置は、筒状飛散物流路35の上流側の上方に配置されるレーザ照射器36を備え、筒状飛散物流路35の上流側上部に設けられたレーザ透過孔35aを介して、筒状飛散物流路35に入光したレーザ光Lの上流側下部に配置されたワークWにレーザ照射器36からのレーザ光Lを照射することになる。この場合、ワークWはテーブル40に載置され、ワークWが筒状飛散物流路35の上流側下部の孔部35bを介して筒状飛散物流路35に侵入状となっている。テーブル40は、例えば、XYZθテーブル等で構成することができる。
【0031】
ところで、レーザ加工装置は、レーザ光LをワークWに照射することで、ワークWを瞬時に溶融・蒸発させるアブレーション加工である。このため、本レーザ加工装置では加工時にデブリD(加工飛散物50)が発生する。本レーザ加工装置では、樹脂を含む高分子材、半導体材、ガラス材、金属材等からなる被加工物Wを加工(孔明けや切断等の加工)することができる。レーザLとしては、アブレーション加工が可能なパルスレーザ等を用いることができる。
【0032】
第1の送風機31は、ワークW(具体的には、ワークWの加工部位P)に対して所定第1角度θ1で傾斜した方向に向かって流体(エア)を吹き付ける吹き出し口31aを有し、第2の送風機32は、ワークW(具体的には、ワークWの加工部位)に対して所定第2角度θ2で傾斜した方向に向かって流体(エア)を吹き付ける吹き出し口31aを有するものである。各吹き出し口31a、32aとしては、扁平矩形状の一つの吹き出し孔で構成しても、多数の小孔を併設したものであってもよい。このため、後述する各流体流F1,F2として、一つの吹き出し孔で吹き出し口31a(32a)を構成した場合、幅方向(流体流の流れ方向と直交する方向)に連続したものとなり、多数の小孔を併設したもので吹き出し口31a(32a)を構成した場合、非連続なものや連続したものとなる。
【0033】
この場合、第1・第2の送風機31、32は、図2に示すように、筒状飛散物流路35の軸心を通る鉛直面を挟んで、反対側に配設されるものであって、図3(a)に示す、所定第1角度θ1としては、例えば、0°~90°に設定され、図3(a)に示す、所定第2角度θ2としては、0°~90°に設定される。この場合、θ1≧θ2であっても、θ1≦θ2であってもいい。例えば、θ1=45°のときに、θ2=10°とし、θ1=60°のときに、θ2=90°としたりできる。なお、各送風機31・32は、遠心送風機、軸流送風機、斜流送風機、及び横流送風機等の公知公用の既存の送風機で構成できる。また、この実施形態では、第1角度θ1は、加工面W1に対して、時計まわりに開く角度であり、第2角度θ2は、加工面W1に対して、反時計まわりに開く角度である。
【0034】
また、筒状飛散物流路35の上流端側開口部は、端壁35cにて塞がれているが、この端壁35cにはエア流入口(窓部)41が形成されている。この場合、第1・第2の送風機31・32が、端壁35cよりも下流側に設けられ、筒状飛散物流路35の上流部には、短筒部からなる渦流発生部42が形成される。
【0035】
次に、上述のように構成された集塵装置を備えたレーザ加工装置にて、ワークWを加工する方法を説明する。この場合、図1に示すように、テーブル40上に加工するワークWをセットする。そして、ワークWの加工部位に、レーザ照射器36からレーザ光Lを照射する。この場合、テーブル40をXY平面上を移動させたり、Z軸方向に沿って、上下動させたり、テーブル軸心回りに回転させたりできる。
【0036】
そして、このレーザ加工時には、第1の送風機31及び第2の送風機32から流体(エア)が加工部位Pに向かって吹き付けられる。すなわち、第1の送風機31の吹き出し口31aからの所定第1角度θ1(加工面W1に対して、時計まわりに開く角度θ1)で加工部位に向かって吹き付けられ、第2の送風機32の吹き出し口32aからの所定第2角度θ2(加工面W1に対して、反時計まわりに開く角度θ2)で加工部位に向かってエアが吹き付けられる。
【0037】
このため、第1の送風機31の吹き出し口31aからの第1の流体流(エア流)F1と、第2の送風機32の吹き出し口32aからの第2の流体流(エア流)F2が衝突して、この衝突部位から下流側に傾いた上昇流である第3の流体流(エア流)F3が形成される。すなわち、この第3の流体流F3は、所定第3角度θ3(加工面W1に対して反時計まわりに開く角度θ3)をなす。θ3としては、例えば、0°<θ3≦90°に設定される。
【0038】
また、図3(a)では、第1の流体流F1をP点に衝突させているが、図3(b)に示すように、このP点より下流側の範囲H1内であればよく、第2の流体流F2も、このP点よりも上流側の範囲H2内であればよい。このため、第3の流体流F3は、仮想線で示すように、範囲H2のいずれかから立ち上がることになる。この立ち上がる位置は、F1の角度とF2の角度と、流体流の流量比等で変わる。
【0039】
ところで、第1の流体流F1に第2の流体流F2を衝突させない場合、図3(a)の仮想線で示すよう、第1の流体流F1が、第1の送風機31の吹き出し口31aからそのまま、斜め下方に向かって流れ、図2及び図3の仮想線で示すよう、流体流FSが発生して、加工飛散物50が筒状飛散物流路35から外部へ排出されるおそれがある。
【0040】
しかしながら、この集塵装置では、レーザアブレーション加工にて形成されたデブリDが、この上昇流(エア流)F3に乗って、筒状飛散物流路35に舞い上がる。この場合、筒状飛散物流路35の下流側の短筒部からなる渦流発生部42において、図2のVで示す周方向渦流が発生する。
【0041】
この際には、筒状飛散物流路35の下流側には、図示省略の集塵機が配置され、この集塵機によって、筒状飛散物流路35のエアが下流側へ流れることになる。このため、第3の流体流F3に乗って、筒状飛散物流路35内に舞い上がったデブリDは、筒状飛散物流路35の下流側へ搬送される。また、筒状飛散物流路35内に舞い上がって、周方向渦流Vに乗って、渦流発生部42で浮遊しているデブリも筒状飛散物流路35の下流側へ搬送される。
【0042】
このため、本発明の集塵方法によれば、所定第1角度θ1で傾斜した方向からの流体流F1に、所定第2角度θ2で傾斜した方向からの流体流F2をぶつけて、加工飛散物50を集塵ボックス33内に巻き上げるものであるので、加工飛散物50の集塵ボックス33外への流出を防止できる。このため、加工飛散物50がワークWに付着(堆積)せず、ワークWの加工を安定して行うことができる。
【0043】
また、本発明のレーザ加工方法によれば、加工飛散物50を集塵ボックス33内に巻き上げるものであるので、レーザ加工によって生じるデブリD等の加工飛散物50の集塵ボックス33外への流出を防止できる。
【0044】
本発明の集塵装置によれば、加工飛散物50の集塵ボックス33外への流出を防止できる。
【0045】
第1の送風機31からの第1の流体流F1に第2の送風機32の第2の流体流F2がぶつけられることによって生じる第3の流体流F3の方向は、ワークWの加工面W1と、この加工面W1と直交する垂直面との間の斜め方向であるよう設定できる。このように設定することによって、加工飛散物50の集塵ボックス33外への流出を安定して防止できる。また、加工飛散物50がレーザ光照射によるアブレーション加工で生じるデブリDであれば、第3の流体流F3の方向は、ワークWの加工面W1と、この加工面W1と直交する垂直面との間の斜め方向であるので、デブリDがレーザ光照射の妨げにならない。
【0046】
また、集塵ボックス33は、加工飛散物50を下流側の集塵方向に流す筒状飛散物流路35を備え、前記筒状飛散物流路35の上流側には、集塵ボックス33内に巻き上げられた加工飛散物50を含む第3の流体流を筒状飛散物流路35の周方向渦流とするために渦流発生部42を備えるように構成できる。このように構成することによって、筒状飛散物流路35の渦流発生部にて加工飛散物50を含む第3の流体流F3を周方向渦流とすることができ、この周方向渦流を筒状飛散物流路35内で下流側の集塵方向に流すことができる。このため、加工飛散物50が筒状飛散物流路35内で溜まることを有効に防止できる。
【0047】
さらに、筒状飛散物流路35の上流端には、渦流発生部42で発生した渦流を筒状飛散物流路35の下流側である集塵方向への流れに促進するためのエア流入口41を設けたものであってもよい。このようなエア流入口を41設けることによって、このエア流入口42から外気が流入して、筒状飛散物流路35内での、加工飛散物50の下流側の流れを促進することができ、より安定して、加工飛散物50を集塵方向下流側へ搬送できる。
【0048】
また、本発明のレーザ加工装置によれば、本集塵装置を用いるので、レーザ加工にて生じた加工飛散物50を集塵ボックス33外へ流出させることなく、集塵方向下流側へ搬送できる。
【0049】
本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、第1の送風機31からのエア流(流体流)の傾斜角度θ1及び第2の送風機32からのエア流(流体流)の傾斜角度θ2、各送風機31、32の吹き出す流体の流速、及び各送風機31、32の吹き出す流体の流量等は、加工飛散物50を集塵ボックス内に巻き上げることが可能な、第3の流体流F3を形成できる範囲で、種々変更できる。
【0050】
また、各送風機31、32の吹き出す流体として、エアに限るものではなく、レーザ加工に影響を与えない窒素(N2)やアルゴン(Ar)等の不活性ガスであってもよい。また、実施形態のように、筒状飛散物流路35の上流端の端壁にエア流入口(窓部)41を設けているが、このようなエア流入口41を設けないものであってもよい。エア流入口41を設ける場合、エア流入口41の大きさ、形状、及び数等は任意に設定できるが、エア流入口41から加工飛散物50が外部に流出させない必要がある。このため、エア流入口41に、エアの流入を許容し、加工飛散物50の外部への流出を防止するフィルター等を設けてもよい。
【符号の説明】
【0051】
31,32 送風機
31a、32a 吹き出し口
33 集塵ボックス
35 筒状飛散物流路
36 レーザ照射器
40 テーブル
41 エア流入口(窓部)
42 渦流発生部
50 加工飛散物
F1,F2,F3 流体流
L レーザ光
P レーザ加工部位
S デブリ
V 周方向渦流
W ワーク(加工対象物)
W1 加工面
θ1、θ2、θ3 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5