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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137734
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】ドーザを備えた建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/815 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
E02F3/815 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037379
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 良昭
(72)【発明者】
【氏名】西 洋一郎
(57)【要約】
【課題】建設機械を支障無く輸送できるようにする。
【解決手段】ドーザ20は、排土板21と、一対のドーザアーム22,22と、排土板21を上下動させる油圧シリンダ23とを有している。少なくとも一方の軸支部28の上部に、ピン孔32が形成されている固定用ブラケット31が設けられるとともに、固定用ブラケット31に対応して、支持ブラケット40の上部にブラケット拡張部45が設けられている。ブラケット拡張部45に、油圧シリンダ23が収縮して排土板21が所定位置に上げられたときにピン孔32と重なる受ピン孔32が形成されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体にドーザを備えるとともに、前記下部走行体の上に搭載した上部旋回体にアタッチメントを備えた建設機械であって、
前記ドーザは、
車幅方向に延びるように前記下部走行体の前方に配置されている排土板と、
前記排土板の背面から平行して延びて、各々の突端に設けられている軸支部が、前記下部走行体の前端部に設けられている一対の支持ブラケットに回動自在に支持された一対のドーザアームと、
前記排土板の背面と前記下部走行体の前端部との間に設けられて、前記排土板を上下動させる油圧シリンダと、
を有し、
少なくとも一方の前記軸支部の上部に、ピン孔が車幅方向に延びるように形成されている固定用ブラケットが設けられるとともに、当該固定用ブラケットに対応して、前記支持ブラケットの上部にブラケット拡張部が設けられていて、
前記ブラケット拡張部に、前記油圧シリンダが収縮して前記排土板が所定位置に上げられたときに前記ピン孔と重なる受ピン孔が形成されている、建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記ブラケット拡張部に、更に、前記油圧シリンダが伸長して前記排土板が所定位置に下げられたときに、前記ピン孔と重なる第2受ピン孔が形成されている、建設機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械において、
前記支持ブラケットに、前記ピン孔および前記受ピン孔に挿入される固定ピンの収納が可能な固定ピン収納部が設けられている、建設機械。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の建設機械において、
前記所定位置が前記ドーザアームの回動限界となる位置に設定されている、建設機械。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の建設機械において、
前記ドーザアームが、前記排土板の背面に一端が固定される支柱状の部材の他端に、前記軸支部を構成する軸支部材を溶接することによって形成されている、建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、ドーザを備えた油圧ショベルなどの建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルは、大略、下部走行体と、その上に搭載された上部旋回体とで構成されている。その上部旋回体の前側には、ブーム、アーム、バケットなどで構成されたアタッチメントが備えられている。そのアタッチメントを操作して動かすことで、土砂をバケットで掻き取ったり移送したりする様々な作業が行える。
【0003】
アタッチメントだけでなく、下部走行体の前側に、ドーザを備えた油圧ショベルもある(例えば、特許文献1)。ドーザは、下部走行体の前方に位置する排土板を有している。排土板は、油圧シリンダが伸縮することによって昇降するように構成されている。油圧シリンダを油圧制御して排土板を動かすことで、土砂を除けたり土砂を均したりする作業が行える。
【0004】
このようなドーザを備えた油圧ショベルを、トラックの荷台に積載して輸送する場合がある。そのような場合、通常、油圧ショベルは、ワイヤロープで荷台に縛って固定されている。従来、このようなワイヤロープの固縛方法については、特に規定はなかったため、状況に応じて様々な固縛方法が採用されていた。
【0005】
それに対し、近年、図1に示すように、下部ボディ100に取り付けたワイヤロープ101を、左右のクローラ102,102の間で交差させ、その状態でワイヤロープ101を張る固縛方法(以下、この固縛方法をクロス固縛法と呼ぶ)が標準化されることとなった。
【0006】
ところが、このクロス固縛法を用いた場合、排土板を下げた状態ではワイヤロープを張ることができないので、排土板を上げた状態にしておく必要がある。
【0007】
そうした場合に、油圧ショベルの輸送中に油密漏れが発生すると、油圧シリンダが伸びて排土板が降下する。排土板が降下すると、ワイヤロープに接触して、ワイヤロープが破損するおそれがある。
【0008】
そのような問題に対して、ドーザとワイヤロープとの接触を回避できるようにした油圧ショベルが提案されている(特許文献2)。
【0009】
特許文献2には、排土板を左右一対のドーザアームでロワフレーム(下部走行体)に支持した油圧ショベルが開示されている。その油圧ショベルでは、ドーザアームの各々の上方に、ドーザシリンダ(油圧シリンダ)が配置されている。ドーザシリンダの各端部は、シリンダピンを介して、ロワフレームに設けられたドーザ支持部と、ドーザアームに設けられたシリンダ支持部とに連結されている。
【0010】
そして、この油圧ショベルでは、各シリンダピンの端部に第1ブラケットと第2ブラケットとが設けられている。輸送時に、これら第1ブラケットと第2ブラケットに、所定の固定冶具を連結することで、排土板を上げた状態に維持できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009-35957号公報
【特許文献2】特開2020-133287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2の方法は、油圧ショベルが上述したような構造のドーザを備える場合には有効である。しかし、ドーザの構造によっては、このような方法が採用できない場合がある。更に、輸送時のみに使用する2つの固定冶具を別途備えておく必要があり、利便性の点では改良の余地がある。
【0013】
開示する技術の目的は、本件技術を採用することで、油圧シリンダから油密漏れが起きたとしてもドーザが下がることを防止することが出来、結果として、輸送が支障なく行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
開示する技術は、下部走行体にドーザを備えるとともに、前記下部走行体の上に搭載した上部旋回体にアタッチメントを備えた建設機械に関するものである。
【0015】
前記ドーザは、車幅方向に延びるように前記下部走行体の前方に配置されている排土板と、前記排土板の背面から平行して延びて、各々の突端に設けられている軸支部が、前記下部走行体の前端部に設けられている一対の支持ブラケットに回動自在に支持された一対のドーザアームと、前記排土板の背面と前記下部走行体の前端部との間に設けられて、前記排土板を上下動させる油圧シリンダと、を有している。
【0016】
そして、少なくとも一方の前記軸支部の上部に、ピン孔が車幅方向に延びるように形成されている固定用ブラケットが設けられるとともに、当該固定用ブラケットに対応して、前記支持ブラケットの上部にブラケット拡張部が設けられていて、前記ブラケット拡張部に、前記油圧シリンダが収縮して前記排土板が所定位置に上げられたときに前記ピン孔と重なる受ピン孔が形成されていることを特徴とする。
【0017】
すなわち、この建設機械によれば、少なくとも一方の軸支部の上部(つまり、一方の軸支部の上部であってもよいし、両方の軸支部の上方であってもよい)に、ピン孔が車幅方向に延びるように形成されている固定用ブラケットが設けられている。そして、この固定用ブラケットに対応して、支持ブラケットの上部には、ブラケット拡張部が設けられている。そのブラケット拡張部に、油圧シリンダが収縮して排土板が所定位置に上げられたときにピン孔と重なる受ピン孔が形成されている。
【0018】
それにより、排土板が所定位置に上げられたときには、互いに重なるピン孔および受ピン孔の双方に、ピンを差し込むことができる。そして、差し込んだピンにより、排土板をその位置に保持できる。
【0019】
従って、クロス固縛法によって建設機械を輸送しても、ピンで排土板の位置を保持すれば、油密漏れが発生しても、油圧シリンダが伸びて排土板が降下するおそれはない。排土板が降下して、ワイヤロープに接触することを防止できる。油圧シリンダの構造には関係なく構成できる。従って、様々な構造のドーザに適用できる。ピンを抜き差しするだけなので、作業性にも優れる。
【0020】
前記建設機械はまた、前記ブラケット拡張部に、更に、前記油圧シリンダが伸長して前記排土板が所定位置に下げられたときに、前記ピン孔と重なる第2受ピン孔が形成されている、としてもよい。
【0021】
ドーザを備えた建設機械では、ドーザとアタッチメントを利用し、機体を浮上させてクローラの洗車作業が行われる場合がある。その際、上部旋回体を半回転させ、アタッチメントを後方とし、ドーザと同時に下向きに操作して地面と接地させることで機体を浮上させる。そうすることで、定位置でクローラを空転させることが可能となり、効率よくクローラの洗車作業を行うことが出来る。
【0022】
このような洗車作業時には、上部旋回体後端に装着されるカウンタウエイトがドーザ支持側となるので、油圧シリンダ負荷圧力が高くなることから、油圧シリンダで油密漏れが発生し、ドーザアームが上向きに回動して、下部走行体が降下する。それに対し、本件技術に記載するピンの取り付けによってドーザアームを固定保持すれば、下部走行体の降下を防止できる。従って、安定かつ安全に洗車作業が行える。
【0023】
前記支持ブラケットに、前記ピン孔および前記受ピン孔に挿入される固定ピンの収納が可能な固定ピン収納部が設けられている、としてもよい。
【0024】
固定ピン収納部を設けることで、固定ピンの置き場所に困ることがなくなる。固定ピン専用の置き場所ができるので、固定ピンの紛失を防ぐことができる。
【0025】
前記建設機械はまた、前記所定位置が前記ドーザアームの回動限界となる位置に設定されている、としてもよい。回動限界は、ドーザを持ち上げた状態が、シリンダが最も縮小した状態であり、またはドーザを一番下までおろした状態が、シリンダが最も伸長した状態に相当する。
【0026】
そうすれば、ドーザアームを回動限界まで回動させるだけで、ピン孔は、受ピン孔または第2受ピン孔に重なるので、これらの位置合わせが容易にできる。従って、作業性に優れる。2つの受ピン孔が大きく離れた位置に形成されるので、ブラケット拡張部の剛性を確保できる。
【0027】
前記建設機械はまた、前記ドーザアームが、前記排土板の背面に一端が固定される支柱状の部材の他端に、前記軸支部を構成する軸支部材を溶接することによって形成されている、としてもよい。
【0028】
そうすれば、従来の軸支部材を交換するだけで、開示する技術をドーザアームに適用できる。従って、開示する技術を安価かつ速やかに実現できる。
【発明の効果】
【0029】
開示する技術によれば、様々な構造のドーザに適用できる。そして、クロス固縛法を採用した場合でも、建設機械を支障無く輸送できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】建設機械の固縛方法を説明するための図である。
図2】実施形態の建設機械を示す概略図である。
図3】下部走行体の前部の主な構造を例示する概略斜視図である。
図4】ドーザの主な構造を示す概略図である。
図5】ドーザに関連した下部走行体の構造を上方から見た概略図である。
図6】ドーザに関連した下部走行体の構造を側方から見た概略図である。
図7】ドーザに関連した下部走行体の構造を前方から見た概略図である。
図8】ドーザを回動上限位置に保持した状態を示す概略図である。
図9図8の矢印A-A線における概略断面図である。
図10】ドーザを回動下限位置に保持した状態を示す概略図である。
図11】建設機械の洗車作業時の状態を示す概略図である。
図12】応用例の建設機械を示す概略図である。要部を上方から見た図である。
図13】応用例の建設機械を示す概略図である。固定ピンを収容した状態で、図12における矢印Y1から見た図である。
図14】応用例の建設機械を示す概略図である。図12の矢印線Y2-Y2で示す方向における固定ピンを収容した状態での概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。説明で用いる前後、左右、及び、上下の方向は、図に示す矢印に従うものとする。
【0032】
図2に、開示する技術を適用した建設機械として、油圧ショベル1を例示する。この油圧ショベル1は、比較的小型の後方小旋回型の機種であり、トラック等の荷台に積載して輸送することができる。
【0033】
油圧ショベル1は、大略、下部走行体2と、その上に旋回自在に搭載された上部旋回体3とで構成されている。上部旋回体3の後部には、カバーで覆われたエンジンルーム4が設けられている。エンジンルーム4の内部には、エンジン等の機器が収容されている。
【0034】
上部旋回体3の右側部には、カバーで覆われた側部機械室が設けられている。側部機械室には、燃料タンクや作動油タンク等が設置されている。そして、上部旋回体3の左側部には、上方のみがキャノピ6aで覆われた操作スペース6が配置されている。操作スペース6には、オペレータが着座する運転シート6bや、オペレータが操作する操作レバー6c等が設置されている。尚、操作スペース6は、その全周を覆う箱型のキャブであってもよい。
【0035】
上部旋回体3の前部には、アタッチメント7が取り付けられている。アタッチメント7は、ブーム7a、アーム7b、バケット7c、油圧シリンダ7dなどで構成されている。この機種の場合、ブーム7aは、その基端部分が、左右に揺動可能なスイングブラケット8を介して上部旋回体3の車幅方向の中央部に回動可能に軸支されている。アーム7bは、ブーム7aの先端部分に回動可能に軸支されている。バケット7cは、アーム7bの先端部分に回動可能に軸支されている。
【0036】
上部旋回体3の後部には、アタッチメント7とのバランスを確保するために、高重量なカウンタウエイト9が設置されている。
【0037】
ブーム7a、アーム7b、及び、バケット7cには、それぞれに対応して油圧シリンダ7dが設けられている。これら油圧シリンダ7dが油圧制御によって伸縮することで、ブーム7a、アーム7b、及び、バケット7cは、その回動軸回りに回動する。それにより、アタッチメント7は、掘削等の作業を行う。
【0038】
下部走行体2は、上部旋回体3を旋回自在に支持している下部ボディ10と、下部ボディ10の左右に設けられた一対のクローラ11,11とを有している。左右のクローラ11,11が回転することで、下部走行体2は自在に走行する。
【0039】
(ドーザ)
下部走行体2の前部には、排土や整地等の作業に用いられるドーザ20が設けられている。開示する技術では、輸送時にクロス固縛法を採用した場合における不具合を解消するため、後述するように、ドーザ20を軸支している軸支部28および支持ブラケット40の構造が工夫されている。
【0040】
図3に、下部走行体2の前部の主な構造を例示する。下部ボディ10は、ロワフレーム12と、ロワフレーム12の左右に設けられた一対のクローラフレーム13,13とを有している。ロワフレーム12の中央には、旋回ベアリングを介して上部旋回体3を支持する支持ベース12aが設けられている。
【0041】
便宜上、図示は省略しているが、各クローラフレーム13の前後の端部には、受動輪および駆動輪が設置されている。これら受動輪および駆動輪の間における上下には、複数のガイドローラが設置されている。クローラフレーム13の後端部には、駆動輪を回転させる走行モータが設置されている。そして、クローラ11が、ガイドローラに支持された状態で、受動輪および駆動輪に巻き掛けられている。
【0042】
ドーザ20は、排土板21、一対のドーザアーム22,22、油圧シリンダ23などで構成されていて、ロワフレーム12の前端部に設置されている。
【0043】
図4にも示すように、排土板21は、下部走行体2の車幅と同程度の長さを有する細長い板状の部材からなる。排土板21は、その前面で土砂を受け止めて、土砂を除けたり土砂を均したりできるように構成されている。排土板21は、下部走行体2の前方に位置して左右の車幅方向に延びるように配置されている。
【0044】
排土板21の背面における車幅方向の中央部分には、中空リブ24および一対の板リブ25,25が設けられている。中空リブ24は、断面U形状の金属部材からなり、その開口側を排土板21の背面に向けた状態で排土板21に溶接して固定されている。
【0045】
一対の板リブ25,25は、中空リブ24の左右の開口を塞いだ状態で、排土板21の背面から後方に平行して延びるように配置されている。これら板リブ25,25は、排土板21および中空リブ24に溶接することによって固定され、一体化されている。中空リブ24には、油圧シリンダ23を軸支する前側ブラケット26が設けられている(前側ブラケット26については後述)。
【0046】
各ドーザアーム22は、腕部27と軸支部28とを有している。腕部27は支柱状の部分であり、中空角柱状の金属部材によって形成されている。各腕部27は、各板リブ25の外面に沿った状態で排土板21の背面から後方に平行して延びるように配置されている。そして、排土板21の背面に、各腕部27の一端が溶接して固定されるとともに、各板リブ25にも溶接して固定されている。
【0047】
排土板21の背面における各腕部27よりも車幅方向外側の外面と、各腕部27の側面との間には、斜めに延びる補強支柱29が設けられている。補強支柱29は、排土板21の背面および各腕部27の側面に溶接して固定されている。
【0048】
軸支部28は、各腕部27の突端に一体に設けられている。各軸支部28は、鋳造品である軸支部材を、各腕部27の端部に溶接して固定することによって形成されている。従って、排土板21とドーザアーム22に従来のまま、本技術を適用したことで、安価かつ速やかに実現できる。
【0049】
各軸支部28には、支持ブラケット40に回動自在に支持するため、軸支部28を貫通して車幅方向に延びるように、アーム軸孔30が形成されている。そして、これら軸支部28の各々の上部には、図4に示すように、輸送時にクロス固縛法を採用した場合における不具合を解消するため、固定用ブラケット31が設けられている。
【0050】
固定用ブラケット31は、軸支部28と一体に設けられている。固定用ブラケット31は、軸支部28から上方に延びるように設けられている。そして、各固定用ブラケット31の突端部分には、固定用ブラケット31を貫通して車幅方向に延びるように、ピン孔32が形成されている。
【0051】
(支持ブラケット)
図5図6図7に、簡略化した下部ボディ10の前部を例示する。ロワフレーム12の前端部には、一対の支持ブラケット40,40、後側ブラケット41などが設けられている。
【0052】
図5図7に示すように、ロワフレーム12の前端部の左右両側には、ワイヤロープを固定するために、一対のワイヤ取付部42,42が設けられている。油圧ショベル1の輸送時には、これらワイヤ取付部42,42にワイヤロープが取り付けられる。そのワイヤロープにより、油圧ショベル1は、クロス固縛法によって荷台に固定される。
【0053】
一対の支持ブラケット40,40は、一対のドーザアーム22,22に対応して、ロワフレーム12の前端部の左右に間隔を隔てて左右対称状に配置されている。各支持ブラケット40は、左右に対向した一対の金属プレート40a,40aで構成されている。図6に示すように、各支持ブラケット40は、ロワフレーム12の前端部から僅かに下り傾斜した状態で、斜め前方に延びるように形成されている。
【0054】
そして、各支持ブラケット40の突端部分には、支持ブラケット40を貫通して車幅方向に延びるように、アーム軸受孔43が形成されている。各支持ブラケット40の外面には、アーム軸受孔43を延長させるように円筒状の軸受ボス44が取り付けられている。
【0055】
各ドーザアーム22は、アーム軸受孔43を介して、各支持ブラケット40に回動自在に支持されている。すなわち、各ドーザアーム22の各軸支部28のアーム軸孔30、および、各支持ブラケット40のアーム軸受孔43の双方に軸支ピン64を挿通することにより、各ドーザアーム22は、各支持ブラケット40に回動自在に軸支されている(図9参照)。
【0056】
そして、これら支持ブラケット40の上部には、図6に示すように、各固定用ブラケット31に対応して、ブラケット拡張部45が設けられている。各ブラケット拡張部45には、ピン孔32と同径の、2つの受ピン孔46,47が形成されている。具体的には、相対的に後方に位置する第1受ピン孔46と、相対的に前方に位置する第2受ピン孔47とが形成されている。
【0057】
図8に、ドーザアーム22の回動限界となる位置まで、排土板21を持ち上げた時の状態を示す。第1受ピン孔46は、ドーザアーム22をその回動限界となる位置(回動上限位置)まで回動させた時に、ピン孔32と重なるように形成されている。
【0058】
図10に、ドーザアーム22の回動限界となる位置まで、排土板21を降ろし下げた時の状態を示す。第2受ピン孔47は、ドーザアーム22をその回動限界となる位置(回動下限位置)まで回動させた時に、ピン孔32と重なるように形成されている。
【0059】
(油圧シリンダ23)
図3に示すように、排土板21の背面とロワフレーム12の前端部との間に、排土板21を上下動させる油圧シリンダ23が設けられている。油圧シリンダ23は、前側ブラケット26および後側ブラケット41によって支持されている。
【0060】
図3図4に示すように、前側ブラケット26は、中空リブ24に設けられている。前側ブラケット26は、左右に対向した一対の金属プレートで構成されていて、中空リブ24から後方に延びている。そして、前側ブラケット26の突端部分には、前側ブラケット26を貫通して車幅方向に延びるように、前シリンダ軸受孔48が形成されている。前側ブラケット26の外面には、前シリンダ軸受孔48を延長させるように円筒状の前軸受ボス49が取り付けられている。
【0061】
図5図6図7に示すように、後側ブラケット41は、ロワフレーム12の前端部における車幅方向の中央部分に配置されている。後側ブラケット41は、左右に対向した一対の金属プレートで構成されていて、ロワフレーム12から前方に延びている。そして、後側ブラケット41の突端部分には、後側ブラケット41を貫通して車幅方向に延びるように、後シリンダ軸受孔50が形成されている。後側ブラケット41の外面には、後シリンダ軸受孔50を延長させるように円筒状の後軸受ボス51が取り付けられている。
【0062】
後側ブラケット41の上部には、補強プレート52が設けられている。補強プレート52は、後側ブラケット41の上縁およびロワフレーム12の上面に至る範囲に設けられていて、これら範囲に溶接して固定されている。
【0063】
図3図4に示すように、油圧シリンダ23は、シリンダ本体60とピストンロッド61とを有している。油圧シリンダ23は、油圧制御によってピストンロッド61がシリンダ本体60の突端から出入りすることで、伸縮する。油圧シリンダ23は、シリンダ本体60の基端部分と、ピストンロッド61の先端部分とに、それぞれ軸孔が形成された軸止部62を有している。
【0064】
シリンダ本体60の基端部分に設けられている軸止部62は、図4に示すように、前側ブラケット26の前シリンダ軸受孔48に挿通したピンPを介して回動自在に軸支されている。ピストンロッド61の先端部分に設けられている軸止部62は、図5に示すように、後側ブラケット41の後シリンダ軸受孔50に挿通したピンPを介して回動自在に軸支されている。
【0065】
油圧シリンダ23が伸縮動作することにより、ドーザアーム22は、回動限界となる位置、つまりその回動上限位置と回動下限位置との間で回動し、それによって排土板21が上下動する。
【0066】
詳細には、油圧シリンダ23が収縮することにより、ドーザアーム22は上向きに回動する。そして、ドーザアーム22が回動上限位置(油圧シリンダ23が最も縮小した状態)に達すると、排土板21は、図8に示す、その上限位置まで持ち上げられる。油圧シリンダ23が伸長することにより、ドーザアーム22は下向きに回動する。そして、ドーザアーム22が回動下限位置(油圧シリンダ23が最も伸長した状態)に達すると、排土板21は、図10に示す、その下限位置まで降ろし下げられる。
【0067】
ドーザアーム22は、これら回動上限位置および回動下限位置の双方において、固定ピン63の取り付けにより、これら位置に保持できるようになっている。図8は、固定ピン63の取り付けにより、回動上限位置に保持した状態を示している。図10は、固定ピン63の取り付けにより、回動下限位置に保持した状態を示している。
【0068】
図9に、図8の矢印A-A線における概略断面図を示す。前述したように、各ドーザアーム22の各軸支部28のアーム軸孔30、および、各支持ブラケット40のアーム軸受孔43の双方に軸支ピン64が挿通されている。そして、軸受ボス44の内部に位置するその軸支ピン64の一端には、径方向に貫通する横孔65が形成されている。その横孔65に挿通した固定ボルト66を、軸受ボス44に締結して固定することにより、軸支ピン64は、各支持ブラケット40に抜け止めされた状態で固定されている。
【0069】
一方、ドーザアーム22を回動上限位置まで回動させた時には、前述したように、支持ブラケット40に設けられたブラケット拡張部45に形成されている第1受ピン孔46は、軸支部28に設けられているピン孔32と重なるように設定されている。従って、回動上限位置では、重なり合ったこれら第1受ピン孔46およびピン孔32に、固定ピン63を挿入することができる。
【0070】
図9に示すように、固定ピン63は、ピン孔32および第1受ピン孔46と略同径の軸部63aを有し、その基端部分に、ピン孔32および第1受ピン孔46よりも外径が大きい鍔部63bを有している。重なり合ったこれら第1受ピン孔46およびピン孔32に、軸部63aの先端部分から固定ピン63を挿入する。
【0071】
第1受ピン孔46から突出する固定ピン63の先端部分には、径方向に貫通する貫通孔67が形成されている。その貫通孔67に抜け止めピン68を挿入し、止め環69を取り付ける。それにより、固定ピン63は、ブラケット拡張部45に着脱可能な状態で固定することができる。
【0072】
そうすることにより、ドーザアーム22は、回動上限位置に保持されるので、排土板21を持ち上げた状態で保持できる。従って、油圧ショベル1を輸送する際に、クロス固縛法でワイヤロープを張る場合でも、固定ピン63によってドーザアーム22を回動上限位置に保持すれば、排土板21を持ち上げた状態で保持できる。
【0073】
油圧シリンダ23で油密漏れが発生しても、排土板21が降下するおそれはない。結果、排土板21とワイヤロープとの接触を防止できる。
【0074】
これと同様に、ドーザアーム22を回動下限位置まで回動させた時には、ブラケット拡張部45に形成されている第2受ピン孔47が、ピン孔32と重なるように設定されている。従って、回動下限位置では、重なり合ったこれら第2受ピン孔47およびピン孔32に、固定ピン63を挿入して、ブラケット拡張部45に固定ピン63を着脱可能な状態で固定することができる。
【0075】
ドーザ20を備えた油圧ショベル1では、ドーザ20を利用した洗車作業が行われる場合がある。すなわち、アタッチメント7およびドーザ20が、互いに前後方向において逆向きになるように、下部走行体2に対して、図2の状態から、上部旋回体3を逆向きに旋回させる。そうして、アタッチメント7およびドーザ20を同時に操作し、油圧ショベル1の機体全体、つまり上部旋回体3および下部走行体2を持ち上げる。
【0076】
具体的には、アタッチメント7は、バケット7cおよびアーム7bを略垂直にした状態で、バケット7cを地面に押し付けるように、ブーム7aを回動させる。ドーザ20は、ドーザアーム22を下向きに大きく回動させる。そうすることにより、図11に示すように、左右のクローラ11を地面から浮上させた状態で機体を支持する。
【0077】
そうすることで、これらクローラ11,11は空転させることが可能になる。空転させたクローラ11に向けて定位置で水を噴射し、クローラ11に固着した泥などを洗い落とす。従って、効率よく洗車作業が行える。
【0078】
このような洗車作業時にも、油圧シリンダ23で油密漏れが発生すると、ドーザアーム22が上向きに回動して、下部走行体2が降下する。特に、このとき、ドーザ20は、カウンタウエイト9がある高重量な上部旋回体3の後部の側を持ち上げるので、特に降下しやすい。それに対し、固定ピン63の取り付けにより、ドーザアーム22を回動下限位置に保持すれば、そのような降下を防止できる。安定かつ安全に洗車作業が行える。
【0079】
ドーザアーム22を回動限界まで回動させることにより、ピン孔32は、第1受ピン孔46または第2受ピン孔47と重なるように設定されているので、これらの位置合わせが容易である。固定ピン63を抜き差しするだけで、ドーザアーム22を、回動上限位置または回動下限位置に保持できるので、作業性に優れる。従って、作業性に優れる。第1受ピン孔46と第2受ピン孔47とが大きく離れた位置に形成されるので、ブラケット拡張部45の剛性を確保できる。固定ピン63を抜き差しするだけで、ドーザアーム22を、回動上限位置または回動下限位置に保持できるので、更に作業性に優れる。
【0080】
(応用例)
支持ブラケット40に、固定ピン63の収納が可能な固定ピン収納部70を設けてもよい。固定ピン収納部70を設けることで、固定ピン63を操作スペース6に持ち込むなど、固定ピン63の置き場所に困ることがなくなる。固定ピン63の専用の置き場所ができるので、固定ピン63の紛失を防ぐことができる。
【0081】
その具体例を、図12図13図14に示す。本具体例の固定ピン収納部70は、左右の支持ブラケット40,40の内側、つまり左右方向において後側ブラケット41が有る側の側面に配置されている。
【0082】
固定ピン収納部70をこのように配置することで、固定ピン収納部70の両側は、支持ブラケット40と後側ブラケット41とで覆われた状態となることから、クローラ11から跳ね上がる石や泥などを避けることができ、固定ピン収納部70の破損や汚れを抑制できる。
【0083】
左右の固定ピン収納部70,70は、いずれも同じ構造である。各固定ピン収納部70は、一枚の金属板材を曲げることによって形成された、横断面が「コ」の字形の金属部材で構成されている。すなわち、各固定ピン収納部70は、間隔を隔てて互いに対向した一対の支持片71,71と、これら支持片71,71の一端に連なる取付片72とを有している。
【0084】
支持片71の各々には、固定ピン63が挿入可能な貫通孔73が同軸に形成されている。取付片72の背面側が支持ブラケット40の内側面に溶接して固定されている。
【0085】
固定ピン63を、固定ピン収納部70に収納する場合、図13に示すように、固定ピン収納部70の上方から、固定ピン63を貫通孔73に挿入する。そうして、図14に示すように、下側の支持片71の貫通孔73から突出する固定ピン63の先端部分に、抜け止めピン68および止め環69を取り付けて、固定ピン63を固定する。
【0086】
なお、固定ピン収納部70の構造は、仕様に応じて変更できる。例えば、一対の支持片71,71の部分だけを支持ブラケット40の内側面に固定して、固定ピン収納部70を構成してもよい。固定ピン収納部70の支持ブラケット40への固定は、溶接に限らず、ボルト止め等であってもよい。固定ピン63が1本だけの場合は、固定ピン収納部70も左右いずれか一方だけでよい。
【0087】
なお、開示する技術にかかる建設機械は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、実施形態では、固定用ブラケット31およびブラケット拡張部45を2つ設ける場合を例示したが、いずれか一方の軸支部28および支持ブラケット40にだけ設けてもよい。
【0088】
実施形態ではまた、第1受ピン孔46および第2受ピン孔47を、それぞれ、ドーザアーム22の回動限界となる位置に設定した。作業性の面からはそうすることが好ましいが、必須ではない。第1受ピン孔46および第2受ピン孔47は、回動限界よりも手前に設定してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
6 操作スペース
7 アタッチメント
10 下部ボディ
11 クローラ
12 ロワフレーム
20 ドーザ
21 排土板
22 ドーザアーム
23 油圧シリンダ
27 腕部
28 軸支部
31 固定用ブラケット
32 ピン孔
40 支持ブラケット
42 ワイヤ取付部
45 ブラケット拡張部
46 第1受ピン孔
47 第2受ピン孔
63 固定ピン
70 固定ピン収納部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14