(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137737
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】皮膚状態改善剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20220914BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220914BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220914BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037382
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】321006774
【氏名又は名称】三井製糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 耕平
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC122
4C083AC342
4C083AC442
4C083AC542
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD092
4C083AD152
4C083CC02
4C083DD31
4C083EE12
4C083EE16
(57)【要約】
【課題】バガス由来ポリフェノール組成物の新たな用途を提供すること。
【解決手段】バガス由来ポリフェノール組成物を有効成分として含有する、皮膚状態改善剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バガス由来ポリフェノール組成物を有効成分として含有する、皮膚状態改善剤。
【請求項2】
前記バガス由来ポリフェノール組成物は、
水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びアンモニア水溶液からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ溶液を用いてバガスを前処理し、前処理液を得る工程と、
前記前処理液のpHを塩酸で酸性に調整してからろ過し、ろ液を回収する工程と、
前記ろ液を、芳香族系合成吸着剤が充填されたカラムに通液し、前記芳香族系合成吸着剤に吸着した成分をエタノール及び水の混合溶媒で溶出して溶出画分をポリフェノール組成物として得る工程と、
を備える方法により得られるものである、請求項1に記載の皮膚状態改善剤。
【請求項3】
前記アルカリ溶液の温度は60~100℃である、請求項2に記載の皮膚状態改善剤。
【請求項4】
前記アルカリ溶液は水酸化ナトリウム水溶液である、請求項2又は3に記載の皮膚状態改善剤。
【請求項5】
前記水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、0.1~1.0質量%である、請求項4に記載の皮膚状態改善剤。
【請求項6】
前記芳香族系合成吸着剤はスチレン-ジビニルベンゼン系樹脂からなる、請求項2~5のいずれか一項に記載の皮膚状態改善剤。
【請求項7】
皮膚の滑らかさ向上用、皮膚のシワ低減用、皮膚の色素沈着抑制用、又は皮膚の水分量増加用である、請求項1~6のいずれか一項に記載の皮膚状態改善剤。
【請求項8】
バガス由来ポリフェノール組成物を有効成分として含有する、皮膚の滑らかさ向上剤。
【請求項9】
バガス由来ポリフェノール組成物を有効成分として含有する、皮膚のシワ低減剤。
【請求項10】
バガス由来ポリフェノール組成物を有効成分として含有する、皮膚の色素沈着抑制剤。
【請求項11】
バガス由来ポリフェノール組成物を有効成分として含有する、皮膚の水分量増加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚状態改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷軽減の観点から天然物由来のバイオマスの活用が検討されており、様々な分野において研究が進められている。例えば、特許文献1には、バガスからのポリフェノール組成物の製造方法であって、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びアンモニア水溶液からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ溶液を用いてバガスを前処理し、前処理液を得る工程と、前記前処理液のpHを塩酸で酸性に調整してからろ過し、ろ液を回収する工程と、前記ろ液を、芳香族系合成吸着剤が充填されたカラムに通液し、前記芳香族系合成吸着剤に吸着した成分をエタノール及び水の混合溶媒で溶出して溶出画分をポリフェノール組成物として得る工程と、を備える、製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、バイオマスのより有効な活用を目指し、バガス由来ポリフェノール組成物の新たな用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、バガス由来ポリフェノール組成物は、皮膚の滑らかさ向上作用、皮膚のシワ低減作用、皮膚の色素沈着抑制作用、及び皮膚の水分量増加作用を有することを見いだした。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0006】
本発明は、一態様として、バガス由来ポリフェノール組成物を有効成分として含有する、皮膚状態改善剤を提供する。上述のとおり、バガス由来ポリフェノール組成物は、皮膚の滑らかさ向上作用、皮膚のシワ低減作用、皮膚の色素沈着抑制作用、及び皮膚の水分量増加作用を有するため、本発明に係る皮膚状態改善剤は、皮膚の滑らかさ向上作用、皮膚のシワ低減作用、皮膚の色素沈着抑制作用、及び皮膚の水分量増加作用から選ばれる少なくとも1つの作用に基づき皮膚状態を改善することができる。
【0007】
上記バガス由来ポリフェノール組成物は、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びアンモニア水溶液からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ溶液を用いてバガスを前処理し、前処理液を得る工程と、上記前処理液のpHを塩酸で酸性に調整してからろ過し、ろ液を回収する工程と、上記ろ液を、芳香族系合成吸着剤が充填されたカラムに通液し、上記芳香族系合成吸着剤に吸着した成分をエタノール及び水の混合溶媒で溶出して溶出画分をポリフェノール組成物として得る工程と、を備える方法により得られるものであってよい。これにより、皮膚の滑らかさ向上作用、皮膚のシワ低減作用、皮膚の色素沈着抑制作用、及び皮膚の水分量増加作用がより効果的に発揮される。
【0008】
上記アルカリ溶液の温度は60~100℃であってよい。
【0009】
上記アルカリ溶液は水酸化ナトリウム水溶液であってよい。
【0010】
上記水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、0.1~1.0質量%であってよい。
【0011】
上記芳香族系合成吸着剤はスチレン-ジビニルベンゼン系樹脂からなるものであってよい。
【0012】
本発明に係る皮膚状態改善剤は、皮膚の滑らかさ向上用、皮膚のシワ低減用、皮膚の色素沈着抑制用、又は皮膚の水分量増加用であってもよい。
【0013】
本発明は、他の態様として、バガス由来ポリフェノール組成物を有効成分として含有する、皮膚の滑らかさ向上剤、皮膚のシワ低減剤、皮膚の色素沈着抑制剤、又は皮膚の水分量増加剤を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バガス由来ポリフェノール組成物の新たな用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】滑らかさ(SEsm)の評価結果を示すグラフである。
【
図2】シワ(SEw)の評価結果を示すグラフである。
【
図3】メラニンレベルの評価結果を示すグラフである。
【
図4】経表皮水分喪失量の評価結果を示すグラフである。
【
図5】顔面表皮の水分量の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本実施形態に係る皮膚状態改善剤は、バガス由来ポリフェノール組成物を有効成分として含有する。バガス由来ポリフェノール組成物は、皮膚の滑らかさ向上作用、皮膚のシワ低減作用、皮膚の色素沈着抑制作用、及び皮膚の水分量増加作用を有するため、本発明に係る皮膚状態改善剤は、皮膚の滑らかさ向上作用、皮膚のシワ低減作用、皮膚の色素沈着抑制作用、及び皮膚の水分量増加作用から選ばれる少なくとも1つの作用に基づき皮膚状態を改善することができる。
【0018】
皮膚状態の改善は、皮膚状態を美容的に改善することを含む。皮膚状態の改善には、皮膚状態を若返らせること、皮膚状態の若さを保つこと等が含まれる。より具体的には、皮膚状態の改善には、例えば、皮膚の滑らかさの向上、皮膚のシワの低減、皮膚への色素沈着の抑制、及び皮膚の水分量の増加が含まれる。したがって、本実施形態に係る皮膚状態改善剤は、例えば、抗老化(アンチエイジング)のために使用することもできる。
【0019】
有効成分であるバガス由来ポリフェノール組成物は、バガスを原料として抽出、精製及び/又は単離等の処理により得られる、1種以上のポリフェノールを含む組成物である。本明細書におけるポリフェノールは、フォーリン-チオカルト法で測定できるフェノール性化合物である。ポリフェノールは、より具体的には、p-クマル酸又はフェルラ酸のようなフェニルプロパノイド、カテキン又はアントシアニンのようなフラボノイド等であってよい。
【0020】
本明細書において、バガスとは甘蔗の搾りかすであり、典型的には製糖工場における製糖過程で排出されるバガスをいう。なお、製糖工場における製糖過程で排出されるバガスには、最終圧搾機を出た最終バガスだけではなく、第1圧搾機を含む以降の圧搾機に食い込まれた細裂甘蔗も含まれる。好ましくは、製糖工場において圧搾工程により糖汁を圧搾した後に排出されるバガスを用いる。圧搾工程より排出されるバガスは、甘蔗の種類、収穫時期等により、その含まれる水分、糖分、及びその組成比が異なるが、これらのバガスを任意に用いることができる。バガスは、黒糖工場において排出される甘蔗圧搾後に残るバガスであってもよい。また、実験室レベルの小規模な実施では、甘蔗から糖液を圧搾した後のバガスを用いてもよい。
【0021】
バガス由来ポリフェノール組成物は、一実施形態において、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びアンモニア水溶液からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ溶液を用いてバガスを前処理し、前処理液を得る工程(前処理工程)と、得られた前処理液のpHを塩酸で酸性に調整してからろ過し、ろ液を回収する工程(ろ過工程)と、回収したろ液を、芳香族系合成吸着剤が充填されたカラムに通液し、芳香族系合成吸着剤に吸着した成分をエタノール及び水の混合溶媒で溶出して溶出画分をポリフェノール組成物として得る工程(溶出工程)と、を備える方法により得られるものであってよい。
【0022】
前処理工程は、一実施形態において、アルカリ溶液をバガスに接触させる処理であってよい。アルカリ溶液を接触させる方法としては、例えば、アルカリ溶液をバガスに振りかける方法、バガスをアルカリ溶液に浸漬させる方法等が挙げられる。バガスをアルカリ溶液に浸漬させる方法においては、バガス及びアルカリ溶液の混合物を撹拌しながら浸漬させてもよい。
【0023】
アルカリ溶液は、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びアンモニア水溶液からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。アルカリ溶液は、安価であるという観点から、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液である。
【0024】
アルカリ溶液の濃度は、使用するアルカリ溶液の種類によって適宜設定してよいが、前処理の処理時間を短縮する観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上である。アルカリ溶液の濃度は、抽出効率を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1.0質量%以下である。
【0025】
前処理工程時におけるアルカリ溶液は加熱されていることが好ましい。アルカリ溶液の温度(液温)は、前処理の処理時間を短縮する観点から、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは60℃以上であり、更に好ましくは80℃以上である。アルカリ溶液の温度は、前処理液に多糖類を残存させないようにする観点から、好ましくは110℃以下であり、より好ましくは105℃以下であり、更に好ましくは100℃以下である。
【0026】
アルカリ溶液の添加量は、バガス100質量部に対して、50質量部以上、100質量部以上、又は1000質量部以上であってよく、また、前処理工程における処理時間は、アルカリ溶液の種類、温度及び添加量によって適宜調整してよいが、例えば、1~5時間であってよい。
【0027】
前処理液のpHは、8以上、又は9以上であってよく、13以下、又は12以下であってよい。
【0028】
本実施形態に係る前処理工程では、上述したアルカリ処理を行った後、不溶分と液分を分離してもよい。その場合、分離後の液分を前処理液とすることができる。不溶分と液分を分離する方法は、ストレーナー、ろ過、遠心分離、デカンテーション等による分離であってよい。
【0029】
次いで、前処理工程で得られた前処理液のpHを塩酸で酸性に調整してからろ過し、ろ液を回収する(ろ過工程)。
【0030】
ろ過工程では、まず、前処理液に塩酸を添加して前処理液のpHを酸性に調整する。塩酸の濃度は、pHが調整できれば適宜設定されてよく、例えば0.1~35質量%であってよい。
【0031】
塩酸添加後の前処理液(以下、「酸性前処理液」ともいう。)のpHは、ポリフェノールの凝集沈殿の抑制及び合成吸着剤の吸着を両立させる観点から、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2.0以上であり、更に好ましくは2.5以上であり、また、好ましくは4.5以下であり、より好ましくは4.0以下であり、更に好ましくは3.5以下である。酸性前処理液のpHが1.5以上であると、ポリフェノールが凝集沈殿しにくいため、pH調整後にろ過を実施してもポリフェノールがろ過により除去されにくくなる。一方、酸性前処理液のpHが4.5以下であると、後述する溶出工程において、芳香族系合成吸着剤へポリフェノールを吸着させやすくすることができる。すなわち、酸性前処理液のpHが上記の範囲内であると、ポリフェノールの凝集沈殿を抑制しつつ、芳香族系合成吸着剤への吸着を促進させることができる。
【0032】
酸性前処理液のpHを上記の範囲に調整することにより、酸性前処理液に不溶な成分が析出する。ろ過工程では、析出した不溶性成分をろ過により除去する。ろ過は、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過等により行われてよく、好ましくは加圧ろ過により行われる。加圧ろ過は、加圧ろ過機(フィルタープレス)により行われてよい。
【0033】
ろ過の際には、酸性前処理液にろ過助剤を添加してもよい。ろ過助剤としては、珪藻土、パーライト、及びセルロース等を挙げることができる。ろ過助剤を添加する場合、ろ過助剤の含有量は、酸性前処理液全量を基準として、0.2~2.0質量%であってよい。
【0034】
次いで、ろ過工程で得られたろ液を、芳香族系合成吸着剤が充填されたカラムに通液する。芳香族系合成吸着剤に吸着した成分を、エタノール及び水の混合溶媒で溶出して、溶出画分を得ることにより、ポリフェノール組成物を製造することができる(溶出工程)。
【0035】
芳香族系合成吸着剤は、ろ液に含まれるポリフェノール組成物を効率よく吸着させる観点から、芳香族系樹脂からなる合成吸着剤である。芳香族系樹脂としては、スチレン-ジビニルベンゼン系の芳香族樹脂が好ましい。スチレン-ジビニルベンゼン系の芳香族樹脂としては、例えば、疎水性置換基を有する芳香族系樹脂、無置換基型の芳香族系樹脂、無置換基型に特殊処理を施した芳香族系樹脂等の多孔性樹脂等が挙げられる。スチレン-ジビニルベンゼン系の芳香族系樹脂としては、無置換基型の芳香族系樹脂、又は無置換基型に高比表面積化の特殊処理を施した芳香族系樹脂が好ましく、無置換基型に高比表面積化の特殊処理を施した芳香族系樹脂がより好ましい。
【0036】
芳香族系合成吸着剤の比表面積は、吸着率を向上させる観点から、乾燥質量として、好ましくは500m2/g以上であり、より好ましくは700m2/g以上である。芳香族系合成吸着剤の比表面積は、ガス吸着法の測定値をBETの式に当てはめることより算出することができる。芳香族系合成吸着剤の最頻度細孔直径(最頻細孔径)は、高分離性及び高吸着性の観点から、好ましくは600Å以下であり、より好ましくは300Å以下であり、更に好ましくは200Å以下である。最頻度細孔直径は、ガス吸着法により測定することができる。
【0037】
このような合成吸着剤は市販されており、例えばダイヤイオン(商標)HP-10、HP-20、HP-21、HP-30、HP-40、HP-50(以上、無置換基型の芳香族系樹脂、いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);SP-825、SP-800、SP-850、SP-875、SP-70、SP-700(以上、無置換基型に特殊処理を施した芳香族系樹脂、いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);SP-900(芳香族系樹脂、商品名、三菱ケミカル株式会社製);アンバーライト(商標)XAD-2、XAD-4、XAD-16、XAD-18、XAD-2000(以上、芳香族系樹脂、いずれも商品名、株式会社オルガノ製);ダイヤイオン(商標)SP-205、SP-206、SP-207(以上、疎水性置換基を有する芳香族系樹脂、いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製);HP-2MG、EX-0021(以上、疎水性置換基を有する芳香族系樹脂、いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製)などが挙げられる。その中でも、ダイヤイオン(商標)SP-850が好ましい。これらの合成吸着剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
カラムに充填する芳香族系合成吸着剤の量は、カラムの大きさ、合成吸着剤の種類等によって適宜決定することができる。
【0039】
ろ液をカラムに通液する際、ろ液の温度は、25~45℃であってよい。ろ液をカラムに通液する時の通液量及び通液速度は、芳香族系合成吸着剤の種類等によって適宜決定することができる。
【0040】
溶出工程においては、通液終了後、カラムに吸着された成分を、エタノール及び水の混合溶媒により溶出する。混合溶媒の混合体積比(エタノール/水)は、50/50~99/1であってよく、溶出効率を向上させる観点からは、好ましくは、50/50~70/30の範囲内である。溶出速度は、カラムの大きさ、芳香族系合成吸着剤の種類等によって適宜決定することができる。なお、カラムに吸着された成分を効率的に溶出させるために、ろ液をカラムに通液する前に、カラム内を水洗することが好ましい。
【0041】
溶出工程において溶出画分を得ることにより、バガス由来のポリフェノール組成物を製造することができる。
【0042】
溶出工程の後、必要に応じて溶出画分(ポリフェノール組成物)を濃縮する工程(濃縮工程)を更に設けてもよい。濃縮工程は、例えば、遠心式薄膜真空蒸発装置を用いて、5~20倍に濃縮すればよい。これにより、ポリフェノール組成物を含む濃縮液を得ることができる。
【0043】
本実施形態の方法によって製造できるポリフェノール組成物は、主にクマル酸、フェルラ酸を含有してよい。ポリフェノール組成物がポリフェノールを含有することは、フォーリン-チオカルト法による測定によって確認することができる。また、ポリフェノール組成物の組成は、得られたポリフェノール組成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定性定量分析することによって確認することができる。
【0044】
本実施形態に係る皮膚状態改善剤は、例えば、化粧品、医薬品又は医薬部外品として用いることができる。
【0045】
本実施形態に係る皮膚状態改善剤は、有効成分であるバガス由来ポリフェノール組成物のみからなってもよく、化粧品、医薬部外品又は医薬品に使用可能な素材を更に配合してもよい。化粧品、医薬部外品又は医薬品に使用可能な素材としては、特に制限されるものではないが、例えば、油剤類、界面活性剤、保湿成分類、増粘剤、粉体類、無機顔料類、有機色素類、有機粉体類、紫外線吸収剤類、低級アルコール類、ビタミン類、タンパク質、脂質等が挙げられる。
【0046】
油剤類としては、例えば、オイル、炭化水素類、高級脂肪酸類、高級アルコール、エステル油類、シリコーン油が挙げられる。また、オイルとしては、例えば、ミネラルオイル、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウが挙げられる。炭化水素類としては、例えば、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類が挙げられる。高級脂肪酸類としては、例えば、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸が挙げられる。高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコールが挙げられる。エステル油類としては、例えば、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット、安息香酸アルキルが挙げられる。シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサンが挙げられる。
【0047】
界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤類、カチオン界面活性剤類、両性界面活性剤類、非イオン界面活性剤類が挙げられる。また、アニオン界面活性剤類としては、例えば、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテルが挙げられる。カチオン界面活性剤類としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイドが挙げられる。両性界面活性剤類としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリンが挙げられる。非イオン界面活性剤類としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタントリオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシドが挙げられる。
【0048】
保湿成分類としては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウムが挙げられる。
【0049】
増粘剤としては、例えば、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム,サクシノグルカン、カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、アクリル酸/アクリルアミド共重合体、ベントナイトが挙げられる。
【0050】
粉体類としては、例えば、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウムが挙げられる。これらは表面を処理されていてもよい。
【0051】
無機顔料類としては、例えば、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられる。これらは表面を処理されていてもよい。
【0052】
有機色素類としては、例えば、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号が挙げられる。これらは表面を処理されていてもよい。
【0053】
有機粉体類としては、例えば、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマーが挙げられる。
【0054】
紫外線吸収剤類としては、例えば、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタンが挙げられる。
【0055】
低級アルコール類としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類が挙げられる。
【0056】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノンが挙げられる。
【0057】
タンパク質としては、例えば、小麦タンパク質、大豆タンパク質及び大豆イソフラボン等の植物由来のタンパク質、ケラチン、ケラチン加水分解物及びスルホン系のケラチン、ラクトフェリン、コラーゲン及びエラスチン等の動物由来のタンパク質、及びこれらの誘導体、並びにこれらの塩類が挙げられる。
【0058】
脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、卵黄レシチン、水添卵黄レシチン、大豆レシチン及び水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質類、スフィンゴエミリン、セラミドホスホリルエタノールアミン及びセラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質類、プラスマローゲン類、及び糖脂質がジガラクトシルジグリセリド及びガラクトシルジグリセリド硫酸エステルであるグリセロ脂質類、ガラクトシルセラミド、ガラクトシルセラミド硫酸エステル、ラクトシルセラミド、ガングリオシドG7、ガングリオシドG6及びガングリオシドG4等のスフィンゴ糖脂質類、及びこれらの混合物、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、スフリンゴ脂質、テルペン、ステロイド、並びにプロスタグランジンが挙げられる。
【0059】
本実施形態に係る皮膚状態改善剤が他の素材を配合する場合、有効成分であるバガス由来ポリフェノール組成物の含有量は、後述する皮膚状態改善剤の形態、使用目的等に応じて適宜設定すればよいが、皮膚状態改善効果をより一層有効に発揮する観点から、好ましくは、固形分として0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下である。
【0060】
本実施形態に係る皮膚状態改善剤の形状は制限されず、固体(粉末、顆粒等)、液体(溶液、懸濁液等)、ペースト等のいずれの形状であってもよく、散剤、丸剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤等のいずれの剤形であってもよい。
【0061】
本実施形態に係る皮膚状態改善剤が化粧品として用いられる場合、化粧品は、化粧水、乳液、ローション、クリーム、美容液、オイル、パック、リップクリームなどの基礎化粧料、ヘアートニック、ヘアーリキッド等の整髪料、育毛・養毛料等の頭髪化粧品、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、アイブロウライナー等のメークアップ化粧料等であってよい。
【0062】
本実施形態に係る皮膚状態改善剤は、皮膚へ施用されるように投与されるのが好ましい。皮膚への施用量としては、例えば、バガス由来ポリフェノール組成物が1回当たり0.5ng/cm2以上となるように施用されるのが好ましく、1ng/cm2以上となるように施用されるのがより好ましく、3ng/cm2以上となるように施用されるのが更に好ましい。また、バガス由来ポリフェノール組成物が1日当たり1ng/cm2以上となるように施用されるのが好ましく、2ng/cm2以上となるように施用されるのがより好ましく、6ng/cm2以上となるように施用されるのが更に好ましい。また、バガス由来ポリフェノール組成物が、1回当たり50ng/cm2以下となるように施用されるのが好ましく、30ng/cm2以下となるように施用されるのがより好ましく、10ng/cm2以下となるように施用されるのが更に好ましい。また、バガス由来ポリフェノール組成物が1日当たり100ng/cm2以下となるように施用されるのが好ましく、60ng/cm2以下となるように施用されるのがより好ましく、20ng/cm2以下となるように施用されるのが更に好ましい。この範囲であれば、皮膚状態改善効果をよりよく発現することができる。
【0063】
本実施形態に係る皮膚状態改善剤は、皮膚の滑らかさ向上作用、皮膚のシワ低減作用、皮膚の色素沈着抑制作用、及び皮膚の水分量増加作用を有するため、例えば、皮膚の滑らかさ向上用、皮膚のシワ低減用、皮膚の色素沈着抑制用、又は皮膚の水分量増加用として使用することもできる。
【0064】
上述した本発明は、バガス由来ポリフェノール組成物を有効成分として含有する、皮膚の滑らかさ向上剤、皮膚のシワ低減剤、皮膚の色素沈着抑制剤、又は皮膚の水分量増加剤と捉えることもできる。皮膚の滑らかさ向上剤、皮膚のシワ低減剤、皮膚の色素沈着抑制剤、又は皮膚の水分量増加剤における具体的な実施形態としては、皮膚状態改善剤で説明した具体的な実施形態を適用することができる。
【実施例0065】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
<バガス由来ポリフェノール組成物の製造>
(前処理工程)
ステンレス製寸胴鍋に、サトウキビの搾りかすであるバガス3.2kg(含水率50質量%)及び90℃の0.5%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液20Lを添加し、2時間混合することによって、前処理を行った。前処理後の混合液を不溶分と液分に分離して、液分を約20L得た。これを2回繰り返し、40Lの液分(前処理液)を得た。
【0067】
(ろ過工程)
上記の前処理液全量に対して、35%(w/w)塩酸を475mL添加し、pHを3.0に調整した。これを酸性前処理液とした。酸性前処理液に、ろ過助剤として珪藻土を395g(前処理液全量基準で1%(w/w)になるように)添加し、フィルタープレスでろ過することにより、不溶性成分を除去し、ろ液を38kg得た。
【0068】
(溶出工程)
ろ過工程により得られたろ液を、芳香族系合成吸着剤(ダイヤイオンSP-850、三菱ケミカル株式会社製)383mLを充填したカラム(カラム容量:1L)に、流速7.6L/h(SV=20)の条件で通液した。その後、合成吸着剤の体積の10倍量の水で洗浄し、60%(v/v)エタノール水溶液をSV=2で766g通液して溶出し、溶出画分を得た。溶出画分を、48%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6.7に調整し、ロータリーエバポレーターにより10倍の濃度に濃縮したのち、一晩凍結乾燥して、ポリフェノール組成物として、茶褐色の粉末を23g得た。
【0069】
<クリームの製造>
表1に示した処方に従い各成分を混合し、クリームベースを調製した。表1中、「%」は「w/w%」を意味する。調製したクリームベース100重量部に対してバガス由来ポリフェノール組成物1重量部を添加及び混合したものを試験クリームとした。また、クリームベースそのものを対照クリームとした。
なお、使用した成分は以下のとおりである。
Finsolv Tn(Innospec Performance Chemicals Europe Limited製):安息香酸アルキル
Pemulen(登録商標) TR-1(Lubrizol製):ゲル化・増粘剤/ポリマー、高分子乳化剤
Silsense(登録商標) DW-18(Lubrizol製):シリコーン、乳化剤
Novemer(登録商標) EC-1(Lubrizol製):アクリル酸/アクリルアミド共重合体、ミネラルオイル、POEソルビタントリオレエート
Germaben(登録商標) II-E(Ashland製):静菌剤
【0070】
【0071】
<試験方法>
健康な18~60歳の被験者112名(平均年齢:43.36±10.24歳)に対して、二重盲検無作為化比較試験を実施した。被験者は、サトウキビ抽出物,ポリフェノール及びフェルラ酸に対するアレルギー歴がなく、皮膚疾患がなく、レーザー,ボトックス又は顔面への化学薬品注入を2週間以内に実施しておらず、免疫抑制剤又はステロイド剤を2週間以内に服用しておらず、免疫不全疾患がなく、かつ事前にインフォームドコンセントを得たものである。また、被験者数(112名)は、非特許文献(J.Cosmet.Dermatol.,2020年,19巻,671-676頁)を参考にして、有意水準95%及び検定力90%とし、被験者20~25%が脱落すると仮定して、決定した。
【0072】
被験者の顔の両側(左側及び右側)をランダムに割り付け、試験クリーム又は対照クリームをそれぞれ塗布した。各クリームは、1日2回、朝夕のクレンジング後に被験者自身が塗布し、これを4週間継続した。1回あたりの塗布量は0.2gとした。各クリームの塗布を開始する前(Before)、塗布開始から2週間後(After 2weeks)、及び塗布開始から4週間後(After 4weeks)の時点で、被験者の顔の両側に対して、滑らかさ、シワ、メラニンレベル、経表皮水分喪失量、及び顔面表皮の水分量を研究助手が測定した。
【0073】
滑らかさ、及びシワは、Visioscan(登録商標)VC98(Courage+Khazaka electronic GmbH製)を用いて測定した。
【0074】
メラニンレベル、経表皮水分喪失量、及び顔面表皮の水分量は、Cutometer(登録商標)(Courage+Khazaka electronic GmbH製)を用いて測定した。
【0075】
<統計処理>
データの統計解析は、SPSSバージョン17.0(SPSS Co.,Ltd.,Bangkok,Thailand)を用いて行った。対応のあるt検定(p<0.05)を用いて、試験群(試験クリームを塗布した側)と対照群(対照クリームを塗布した側)とを比較した。
【0076】
<結果>
図1は、滑らかさ(SEsm)の評価結果を示すグラフである。SEsmの値が小さいほど、皮膚が滑らかであることを意味する。各クリームの塗布を開始する前(Before)、滑らかさ(SEsm)に有意差はなかったが、塗布開始から4週間後(After 4weeks)の時点では、試験クリームを塗布した顔の皮膚のSEsmの値(148.85±78.46)は、対照クリームを塗布した顔の皮膚のSEsmの値(159.32±86.88)よりも有意に低かった(p=0.014)。すなわち、試験クリームを塗布した顔の皮膚は、対照クリームを塗布した顔の皮膚よりも滑らかになった。
【0077】
図2は、シワ(SEw)の評価結果を示すグラフである。SEwの値が小さいほど、シワが少ないことを意味する。各クリームの塗布を開始する前(Before)、シワ(SEw)に有意差はなかったが、塗布開始から4週間後(After 4weeks)の時点では、試験クリームを塗布した顔の皮膚のSEwの値(90.26±60.68)は、対照クリームを塗布した顔の皮膚のSEwの値(102.27±68.46)よりも有意に低かった(p=0.0004)。すなわち、試験クリームを塗布した顔の皮膚は、対照クリームを塗布した顔の皮膚よりもシワが少なくなった。
【0078】
これらの結果から、バガス由来ポリフェノール組成物を4週間適用することで、皮膚の平滑性が増加し、シワが減少したことが分かる。
【0079】
図3は、メラニンレベルの評価結果を示すグラフである。メラニンレベルが高いほど、色素沈着が多いことを意味する。各クリームの塗布を開始する前(Before)、メラニンレベルに有意差はなかったが、塗布開始から4週間後(After 4weeks)の時点では、試験クリームを塗布した顔の皮膚のメラニンレベル(249.44±75.46)は、対照クリームを塗布した顔の皮膚のメラニンレベル(257.02±87.45)よりも有意に低かった(p=0.023)。すなわち、試験クリームは、皮膚の色素沈着を減少させた。
【0080】
図4は、経表皮水分喪失量の評価結果を示すグラフである。
図5は、顔面表皮の水分量の評価結果を示すグラフである。経表皮水分喪失量が低く、顔面表皮の水分量が高いと、より水和した皮膚(水分量の多い皮膚)であることを意味する。各クリームの塗布を開始する前(Before)、経表皮水分喪失量に有意差はなかったが、塗布開始から4週間後(After 4weeks)の時点では、試験クリームを塗布した顔の皮膚の経表皮水分喪失量(19.07±15.53)は、対照クリームを塗布した顔の皮膚の経表皮水分喪失量(20.51±16.81)よりも有意に低かった(p=0.004)。各クリームの塗布を開始する前(Before)、顔面表皮の水分量に有意差はなかったが、塗布開始から4週間後(After 4weeks)の時点では、試験クリームを塗布した顔の皮膚の顔面表皮の水分量(67.28±18.21)は、対照クリームを塗布した顔の皮膚の顔面表皮の水分量(65.27±17.94)よりも有意に高かった(p=0.018)。すなわち、試験クリームは、皮膚の水分量を増加させた。
【0081】
これらの結果から、バガス由来ポリフェノール組成物を4週間適用することで、皮膚の色素沈着が減少し、皮膚の水分量が増加したことが分かる。
【0082】
なお、被験者から皮膚反応(発疹、浮腫、丘疹、かゆみ)は報告されなかった。すなわち、各クリームともに安全に適用できることが分かる。