(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137755
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】発電量推定装置
(51)【国際特許分類】
G01W 1/12 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
G01W1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037410
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後川 知仁
(72)【発明者】
【氏名】武田 隆
(72)【発明者】
【氏名】市川 晴久
(72)【発明者】
【氏名】横川 慎二
(72)【発明者】
【氏名】中里 諒
(57)【要約】
【課題】発電される電力量の推定精度を高めやすい発電量推定装置を提供する。
【解決手段】構造物の形状情報が含まれた3次元建物モデルを作成または取得するモデル部11と、3次元建物モデルに基づいて建物の沿面を抽出する沿面抽出部12と、抽出した沿面における太陽光パネルが設置可能な領域を求める領域算出部13と、3次元建物モデルおよび取得した気象データに基づいて抽出した沿面への日射量を推定する日射量推定部14と、推定された日射量、および、設置可能な領域に設置される太陽光パネルの発電効率に基づいて、当該太陽光パネルにおいて発電される発電量を推定する発電量推定部15と、が設けられたことを特徴とする。領域算出部13により太陽光パネルが設置可能な領域が求められ、求められた領域に太陽光パネルを設置した場合に発電される発電量が推定されるため、発電される電力量の推定精度を高めやすい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の形状情報が含まれた3次元建物モデルを作成または取得するモデル部と、
前記3次元建物モデルに基づいて前記建物の沿面を抽出する沿面抽出部と、
抽出した前記沿面における太陽光パネルが設置可能な領域を求める領域算出部と、
前記3次元建物モデルおよび取得した気象データに基づいて抽出した前記沿面への日射量を推定する日射量推定部と、
推定された前記日射量、および、前記設置可能な領域に設置される前記太陽光パネルの発電効率に基づいて、当該太陽光パネルにおいて発電される発電量を推定する発電量推定部と、が設けられたことを特徴とする発電量推定装置。
【請求項2】
前記領域算出部は、前記沿面の属性情報に基づいて、前記太陽光パネルが設置可能な領域を求めることを特徴とする請求項1記載の発電量推定装置。
【請求項3】
前記領域算出部は、さらに前記属性情報に基づいて設置可能な前記太陽光パネルの種類を求め、
前記発電量推定部は、求められた前記太陽光パネルの種類における前記発電効率に基づいて発電される発電量を推定することを特徴とする請求項2記載の発電量推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電量推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家屋やビルなどの構造物に、太陽光を電力に変換する太陽光パネルを設置する検討が進められている。太陽光パネルを設置する場所でどの程度の日射量を受けることができるのかを事前に見積もることができれば、設置した太陽光パネルで発電される電力量や太陽光パネル量あるいは太陽光パネルコストを予測できる。そのため、所定の構造物に対する日射量を計算する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、日射量計算の対象とする構造物に対する日射量、例えば壁面などに対する日射量の導出精度を高めることができた。しかしながら、壁面などに対する日射量の導出精度を高めることができても、構造物に配置された太陽光パネルで発電される電力量の予測精度を高めることは難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、発電される電力量の推定精度を高めやすい発電量推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の発電量推定装置は、建物の形状情報が含まれた3次元建物モデルを作成または取得するモデル部と、前記3次元建物モデルに基づいて前記建物の沿面を抽出する沿面抽出部と、抽出した前記沿面における太陽光パネルが設置可能な領域を求める領域算出部と、前記3次元建物モデルおよび取得した気象データに基づいて抽出した前記沿面への日射量を推定する日射量推定部と、推定された前記日射量、および、前記設置可能な領域に設置される前記太陽光パネルの発電効率に基づいて、当該太陽光パネルにおいて発電される発電量を推定する発電量推定部と、が設けられたことを特徴とする。
【0007】
本発明の発電量推定装置によれば、領域算出部により太陽光パネルが設置可能な領域が求められ、求められた領域に太陽光パネルを設置した場合に発電される発電量が推定される。例えば、沿面における太陽光パネルの設置が不可能な領域については、太陽光パネルによる発電が行われないため、発電量の推定には用いられない。
【0008】
上記発明において前記領域算出部は、前記沿面の属性情報に基づいて、前記太陽光パネルが設置可能な領域を求めることが好ましい。
【0009】
このように沿面の属性情報に基づいて太陽光パネルが設置可能な領域を求めることにより、属性情報を用いない場合と比較して、設置可能な領域をより正確に求めることができる。属性情報には、沿面の形状情報や、沿面における壁部の領域および窓部の領域を示す情報などが含まれる。
【0010】
上記発明において前記領域算出部は、さらに前記属性情報に基づいて設置可能な前記太陽光パネルの種類を求め、前記発電量推定部は、求められた前記太陽光パネルの種類における前記発電効率に基づいて発電される発電量を推定することが好ましい。
【0011】
このように設置可能な太陽光パネルの種類に基づいて発電量を推定することにより、太陽光パネルの種類に基づかないで発電量を推定する場合と比較して、発電される発電量をより正確に推定することができる。例えば、沿面の壁部に設置される太陽光パネルと、窓に設置される太陽光パネルの種類を求めることができる。これら2種類の太陽光パネルの発電効率は異なる。そのため、それぞれの発電効率を用いて発電される発電量を推定することで、より正確な推定が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発電量推定装置によれば、領域算出部により太陽光パネルが設置可能な領域が求められ、求められた領域に太陽光パネルを設置した場合に発電される発電量が推定されるため、発電される電力量の推定精度を高めやすいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発電量推定装置の構成を説明するブロック図である。
【
図2】発電量推定装置における日射量の導出および発電される電力量の予測処理を説明するフローチャートである。
【
図3】3D建物モデル作成の処理を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4(a)は、DTMおよび建物枠を説明する模式図であり、
図4(b)は、3D建物モデルを説明する模式図である。
【
図5】壁面の抽出処理を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6(a)は壁面抽出を説明する模式図であり、壁面座標の抽出を説明する模式図である。
【
図7】
図7(a)はグリッド作成を説明する模式図であり、
図7(b)は傾斜地に建物が配置されている場合におけるグリッド作成を説明する模式図である。
【
図8】壁面日射量の推定処理を説明するフローチャートである。
【
図9】
図12(a)は壁面における日射量の総和を求める処理の一例を説明する模式図であり、
図12(b)は壁面における日射量の総和を求める処理他の例を説明する模式図である。
【
図10】壁面属性の判定処理を説明するフローチャートである。
【
図11】グリッド内で窓部および壁部が定義された状態を説明する模式図である。
【
図12】発電量の推定処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の一実施形態に係る発電量推定装置について、
図1から
図12を参照しながら説明する。本実施形態の発電量推定装置10は、家屋やビルなどの建物に、太陽光を電力に変換する太陽光パネルを設置する際のシミュレーション、検討に用いられるものである。例えば、所要の発電量を得るために必要な太陽光パネルの設置コストを最小化する検討、より具体的には太陽光パネルの設置場所の検討を容易にするものである。
【0015】
ここで、太陽光パネルは、太陽光を電力に変換するセルを複数有する単位であるモジュールであってもよいし、複数のモジュールを有する単位であるストリングであってもよいし、複数のストリングを有する単位であるアレイであってもよい。
【0016】
本実施形態では発電量推定装置10が、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するパーソナルコンピュータやサーバなどの情報処理機器である例に適用して説明する。また発電量推定装置10は、LiDARデータベース21、建物データベース22、天候データベース23および壁面データベース24と有線または無線による公知の情報通信網を介して、情報通信可能に接続されている。
【0017】
上述のROM等の記憶装置に記憶されているプログラムは、
図1に示すように、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースを協働させてモデル部11、沿面抽出部12、領域算出部13、日射量推定部14および発電量推定部15として機能させるものである。
【0018】
モデル部11は、建物の形状情報が含まれた3次元建物モデル(以下「3D建物モデル」とも表記する。)を作成するものである。3D建物モデルを作成する具体的な演算処理の内容は後述する。本実施形態では、モデル部11が3D建物モデルを作成する例に適用して説明するが、モデル部11が外部から3D建物モデルを取得してもよい。
【0019】
沿面抽出部12は、3D建物モデルに基づいて建物の沿面を抽出するものである。本実施形態では、建物の側面である壁面を抽出する例に適用して説明する。壁面を抽出する具体的な演算処理の内容は後述する。なお、壁面は、建物における側面であってもよいし、建物における上端面である天面以外の面であってもよい。
【0020】
領域算出部13は、抽出した壁面における太陽光パネルが設置可能な領域を、壁面の属性情報に基づいて求めるものである。また、領域算出部13は、属性情報に基づいて設置可能な太陽光パネルの種類を求めるものでもある。領域算出部13における具体的な演算内容は後述する。
【0021】
日射量推定部14は、3D建物モデルおよび取得した気象データに基づいて抽出した壁面への日射量を推定するものである。日射量推定部14における具体的な日射量の推定方法は後述する。
【0022】
発電量推定部15は、推定された日射量、および、設置可能な領域に設置される太陽光パネルの発電効率に基づいて、太陽光パネルにおいて発電される発電量を推定するものである。発電量推定部15における具体的な発電量の推定方法は後述する。
【0023】
次に、上記の構成からなる発電量推定装置10における日射量を導出する演算および発電される電力量を予測する演算について
図2から
図12を参照しながら説明する。
演算が開始されると発電量推定装置10は、
図2に示すように、3D建物モデルを作成する演算処理を行う(S100)。
【0024】
演算処理S100が開始されると、発電量推定装置10のモデル部11は、
図3に示すように、LiDARデータベース21から航空LiDARデータを取得する演算処理を行う(S101)。
【0025】
航空LiDARデータは、航空機を用いて測定された地形データであって、レーザ光を用いて測定するLiDAR(Light Detection And Ranging)により測定された地形データである。なお、本実施形態では航空LiDARデータを取得する例に適用して説明するが、LiDAR以外の技術を用いて測定された地形データを用いてもよい。
【0026】
航空LiDARデータを取得すると、モデル部11は数値地形モデル(Digital Terrain Model,以下「DTM」とも表記する。)31を作成する演算処理を行う(S102)。本実施形態では、モデル部11が航空LiDARデータに含まれる点群から地面に分類される点を抽出し、点群の間を補完してDTM31を作成する例に適用して説明する(
図4(a)参照。)。
【0027】
また、本実施形態では、モデル部11はGIS(Geographic Information System:地理情報システム)ソフトウェアを用いて演算処理を行う例に適用して説明する。なお、モデル部11はGISソフトウェアとは異なるもので演算処理を行ってもよい。
【0028】
モデル部11は、
図3に示すように、建物データベース22から建物データを取得する演算処理を行う(S103)。建物データには、3D建物モデルの作成に用いられる建物の位置や外周などの2Dポリゴン情報が含まれる。
【0029】
本実施形態では、建物データが国土地理院の基盤地図情報から取得されるデータである例に適用して説明する。なお、建物データは、国土地理院の基盤地図情報から取得してもよいし、基盤地図情報以外の建物の位置や外周などの2Dポリゴン情報が含まれる情報から取得したものであってもよい。
【0030】
建物データを取得すると、モデル部11は、建物データから建物の2Dポリゴン情報を含む建物枠32を抽出する演算処理を行う(S104)。建物枠32は、
図4(a)に示すように建物の外枠を表すものである。
【0031】
なお、航空LiDARデータを取得する処理S100およびDTM31を作成する処理S101と、建物データと取得する処理S102および建物枠32を抽出する処理S104とは、一方を先に行い、他方を後に行ってもよいし、両者を並行して行ってもよい。
【0032】
次にモデル部11は、
図3に示すように、DTM作成処理S101で作成されたDTM31および建物枠抽出処理S104で抽出された建物枠32に基づいて、3D建物モデル40を作成する演算処理を行う(S105)。具体的には、DTM31および航空LiDARデータに含まれる屋上に分類された点群に基づいて建物の標高を推定する。推定した標高および2Dポリゴン情報が含まれる建物枠32に基づいて、3D建物モデル40を作成する。
【0033】
3D建物モデル40は、
図4(b)に示すように、地形および建物枠を表すモデルである。所定の地域に所在する建物に対して上述の3D建物モデル40を作成する処理を繰り返し行うことで、所定の地域の3D都市モデルを作成することができる。
【0034】
3D建物モデル40を作成すると、発電量推定装置10の沿面抽出部12は、
図2に戻り、壁面45を抽出する演算処理を行う(S200)。演算処理S200が開始されると、
図5に示すように、沿面抽出部12は壁面45を選択する演算処理を行う(S201)。
【0035】
本実施形態では、沿面抽出部12が建物データから建物外周を利用して壁面45を抽出する例に適用して説明する。抽出された壁面45の中から日射量を導出および発電する電力量を推定する壁面45を選択する処理を行う。
【0036】
壁面45の選択は、発電量推定装置10の操作者がマウスなどの入力デバイスを用いて選択してもよいし、南に面した壁面45を選択するなど事前に定めた規則に基づいた選択を行ってもよい。本実施形態では、
図6(a)において点線の円で示す壁面45を選択した例に適用して説明する。
【0037】
壁面45が選択されると、
図5に示すように、領域算出部13は壁面座標46を抽出する演算処理を行う(S202)。本実施形態では、
図6(b)に示すように壁面座標46を抽出した例に適用して説明する。具体的には、選択された壁面45から所定距離dだけ離れた位置であって、壁面45の角に対応した場所の座標を壁面座標46として抽出する。本実施形態では所定距離dが2mである例に適用して説明する。なお、所定距離dは2mよりも短い距離であってもよいし、長い距離であってもよい。
【0038】
壁面45から所定距離dだけ離れた位置を壁面座標46として抽出することにより、壁面45上に壁面座標を設定する場合と比較して、後述する日射量の推定や発電量の計算の際に、グリッドgの高さを指定しやすくなる。さらに、建物の影の影響を考慮しやすくなる。
【0039】
壁面座標46が抽出されると、
図5に示すように、領域算出部13は壁面45を水平方向および垂直方向に分割する演算処理を行う(S203)。本実施形態では、
図7(a)に示すように、水平方向に1m間隔、および、垂直方向に1m間隔でメッシュに切り分ける例に適用して説明する。
図7(b)に示すように地表標高の変化が大きな傾斜地に建物が配置されている場合には、下辺の最高所から水平方向に延びる下限線よりも上側の領域を水平方向および垂直方向に分割する演算処理を行う。
【0040】
また、領域算出部13は、
図5に示すように、壁面45における太陽光パネルを設置可能な面を決定する演算処理を行う(S204)。具体的には、地表標高から太陽光パネルを設置可能な面を決定する処理を行う。
【0041】
図7(a)に示すように、地表標高の変化が小さな平地に建物が配置されている場合には、壁面45の全面に太陽光パネルが設置可能と決定される。
図7(b)に示すように、地表標高の変化が大きな傾斜地に建物が配置されている場合には、壁面45の一部を太陽光パネルが設置可能な面として決定する。
図7(b)に示す場合では、下辺の最高所から水平方向に延びる下限線よりも上側の領域(メッシュに切り分けられた領域)を太陽光パネルが設置可能な面として決定する。
【0042】
なお、分割の演算処理S203と、設置可能面決定の演算処理S204との一方を先に行い、他方を後に行ってもよい。また、分割の演算処理S203と、設置可能面決定の演算処理S204とを並行して行ってもよい。
【0043】
その後、領域算出部13は、
図5に示すように、壁面45でグリッドgを作成する演算処理を行う(S205)。グリッドgは、
図7(a)や
図7(b)に示すように切り分けられたメッシュの交点であって、日射量の推定を行うポイントである。
【0044】
グリッドgを作成すると、
図2に戻り、発電量推定装置10は壁面日射量を推定する演算処理(S300)と、壁面属性を判定する演算処理(S400)を行う。推定処理S300および判定処理S400は、一方を先に行い、他方を後に行ってもよいし、両者を並行して行ってもよい。
【0045】
推定処理S300が開始されると、
図8に示すように、日射量推定部14は天候データベース23から天候データを取得する演算処理を行う(S301)。本実施形態では天候データベースが気象庁のデータベースである例に適用して説明する。取得する天候データには、日射量の推定を行う建物を含む地域付近の過去5年分の雲量情報が含まれている。
【0046】
天候データを取得すると、日射量推定部14は取得した天候データから雲量情報を抽出する演算処理を行う(S302)。
雲量情報を抽出すると、日射量推定部14は各グリッドgにおける日射量を推定する演算処理を行う(S303)。具体的には、抽出した雲量情報に基づいて各月における平均の雲量を決定し、決定した雲量に基づいて各グリッドgにおける日射量を推定する。例えば、各グリッドgにおける1日間の総日射量を推定する。
【0047】
図9(a)に示すように、地表標高の変化が小さな平地に建物が配置されている場合には、日射量推定部14は、まず下辺の水平方向にならぶ複数のグリッドgについて1日間の総日射量を推定する。その次に、上側に隣接する水平方向にならぶ複数のグリッドgについて1日間の総日射量を推定する。これを壁面45に設けられた全てのグリッドgについて1日間の総日射量を推定するまで繰り返し行う。
【0048】
図9(b)に示すように、地表標高の変化が大きな傾斜地に建物が配置されている場合には、日射量推定部14は、まず下辺の端に配置された1つのグリッドgについて1日間の総日射量を推定する。その次に、上側に隣接する1つのグリッドgについて1日間の総日射量を推定する。最上端に配置されたグリッドgに到達するまで繰り返し1日間の総日射量を推定する。
【0049】
次いで、水平方向に隣接し、かつ、下辺に配置された1つのグリッドgについて1日間の総日射量を推定する。以後、同様に1つずつグリッドgの1日間の総日射量の推定を繰り返し、壁面45に設けられた全てのグリッドgについて1日間の総日射量を推定する。
【0050】
その一方で判定処理S400が開始されると、
図10に示すように、領域算出部13は壁面データベース24から壁面データを取得する演算処理を行う(S401)。壁面データには、壁面45内の窓部48および壁部49の位置および形状などの情報が含まれている。
【0051】
壁面データを取得すると、領域算出部13は壁面データから壁面45内の窓部48および壁部49の位置および形状などの情報を抽出する演算処理を行う(S402)。
窓部48および壁部49の位置および形状などの情報を抽出すると、領域算出部13はグリッドg内で窓部48および壁部49の位置を定義する演算処理を行う(S403)。本実施形態では、
図11に示すように、窓部48および壁部49が定義された例に適用して説明する。
【0052】
推定処理S303で日射量が推定され、定義処理S403で窓部48および壁部49の位置および形状が定義されると、
図2に戻り、発電量推定装置10発電量を推定する演算処理を行う(S500)。
【0053】
推定処理S500が開始されると、
図12に示すように、発電量推定部15は壁面45の日射量推定結果を取得する演算処理を行う(S501)。日射量推定結果は、日射量を推定する演算処理S303により推定された結果である。
【0054】
発電量推定部15は、発電量の変換式を壁面属性ごとに決定する演算処理を行う(S502)。本実施形態では、下記の変換式を用いる例に適用して説明する。この場合、発電量推定部15は、壁面属性ごとにKおよびPの値を決定する演算処理を行う。
【0055】
言い換えると、壁面属性ごとに設置される太陽光パネルの種類を決定し、決定した太陽光パネルの種類に基づいてKおよびPの値を決定する演算処理を行う。本実施形態では、壁面45の壁部49に多結晶太陽光パネルを設置し、窓部48に可視光を透過する透過型太陽光パネルを設置する例に適用して説明する。KおよびPの値も、多結晶太陽光パネルおよび透過型太陽光パネルの値が用いられる。
【0056】
【0057】
ここで、Cは設置面(壁面45)の1日当たりの発電量(kWh)であり、Hは設置面(壁面45)の1日当たりの日射量(kWh/m2)であり、Kは損失係数であり、Pはシステム容量(kW)であり、Dは標準状態における日射強度(kW/m2)である。
【0058】
また、発電量推定部15は、壁面属性をグリッドgに反映させる演算処理を行う(S503)。取得処理S501、決定処理S502および反映処理S503は、1処理ずつ順番に行ってもよいし、複数の処理を必要に応じて並列に行ってもよい。
【0059】
取得処理S501、決定処理S502および反映処理S503を行うと、発電量推定部15は各グリッドgで日射量を発電量へ変換する演算処理を行う(S504)。具体的には、S502の演算処理で決定された発電量の変換式を用いて演算処理を行う。
【0060】
変換処理S504を行うと、発電量推定部15は総和から壁面45の発電量を計算する演算処理を行う(S505)。発電量の総和を計算する方法は、日射量の推定を行う演算処理S303で用いた方法と同じ方法であってもよいし、他の方法であってもよい。壁面45の発電量が計算されると、
図2に戻り、日射量を導出する演算および発電される電力量を予測する演算は終了する。
【0061】
上記の構成の発電量推定装置10によれば、領域算出部13により太陽光パネルが設置可能な領域が求められ、求められた領域に太陽光パネルを設置した場合に発電される発電量が推定される。例えば、壁面45における太陽光パネルの設置が不可能な領域については、太陽光パネルによる発電が行われないため、発電量の推定には用いられない。そのため、発電量推定装置10を用いることにより、発電される電力量の推定精度を高めやすい。
【0062】
壁面45の属性情報に基づいて太陽光パネルが設置可能な領域を求めることにより、属性情報を用いない場合と比較して、設置可能な領域をより正確に求めることができる。
【0063】
設置可能な太陽光パネルの種類に基づいて発電量を推定することにより、太陽光パネルの種類に基づかないで発電量を推定する場合と比較して、発電される発電量をより正確に推定することができる。例えば、壁面45の壁部49に設置される太陽光パネルと、窓部48に設置される太陽光パネルの種類を求めることができる。
【0064】
これら2種類の太陽光パネルの発電効率は異なる。そのため、それぞれの発電効率を用いて発電される発電量を推定することで、より正確な推定が可能となる。さらに、発電量推定装置10を用いることにより、所要の発電量を得るために必要な太陽光パネルの設置コストを最小化する検討、より具体的には太陽光パネルの設置場所の検討が容易になる。
【0065】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施の形態においては、1台の発電量推定装置10がモデル部11、沿面抽出部12、領域算出部13、日射量推定部14および発電量推定部15として機能する例に適用して説明したが、情報通信可能に接続された複数台の情報処理機器が協働して、モデル部11、沿面抽出部12、領域算出部13、日射量推定部14および発電量推定部15として機能してもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…発電量推定装置、 11…モデル部、 12…沿面抽出部、 13…領域算出部、 14…日射量推定部、 15…発電量推定部