(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013777
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】複数のグリッドを有するX線源
(51)【国際特許分類】
H01J 35/06 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
H01J35/06 E
H01J35/06 B
H01J35/06 H
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021104291
(22)【出願日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】20183282
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521276412
【氏名又は名称】ブイイーシー イメージング ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ホウマン ジャファリ
(72)【発明者】
【氏名】ボ ガオ
(72)【発明者】
【氏名】モハメド ザザ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンス ロビンソン
(72)【発明者】
【氏名】コルトン ウッドマン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】X線源内での放電およびイオンボンバードメントを低減し、電界エミッタの損傷を抑制する。
【解決手段】電界エミッタX線源100aは、ナノチューブエミッタなどの電界エミッタ104と、電界エミッタ104からの電界放出を制御するように構成された第1のグリッド106と、第1のグリッド106とアノード112との間に第2のグリッド108および中間電極110を備える。1つ以上の追加のグリッドがアークまたはイオンを遮断する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
電子ビームを生成するように構成された電界エミッタと、
前記電界エミッタからの電界放出を制御するように構成された第1のグリッドと、
前記第1のグリッドと前記アノードとの間に配置された第2のグリッドと、
前記第1のグリッドと前記アノードとの間に配置された中間電極であって、前記第2のグリッドが、前記中間電極と前記アノードとの間に配置される、前記中間電極と
を備える、X線源。
【請求項2】
前記第1のグリッドに第1の電圧を印加し、前記第2のグリッドに第2の電圧を印加するように構成された電圧源をさらに備える、請求項1に記載のX線源。
【請求項3】
前記第1の電圧と前記第2の電圧とが同じである、
前記第1の電圧と前記第2の電圧との少なくとも一方がグランドである、
前記第1の電圧と前記第2の電圧とが異なる、または
前記電圧源が可変電圧源であり、前記可変電圧源が、前記第1の電圧及び前記第2の電圧のうちの少なくとも一方を変化させるように構成される、請求項2に記載のX線源。
【請求項4】
前記第1のグリッドと前記アノードとの間に配置され、かつ前記電界エミッタから前記第2のグリッドと同じ距離に配置された第3のグリッドをさらに備え、
前記電圧源が、前記第3のグリッドに第3の電圧を印加するように構成され、かつ前記電圧源が、前記第3の電圧と前記第2の電圧とを独立して印加するように構成されている、請求項2または請求項3に記載のX線源。
【請求項5】
前記第1のグリッドと前記アノードとの間に配置されたスペーサと、
前記第1のグリッドと前記アノードとの間に配置された第3のグリッドと、
をさらに備え、
前記第2のグリッド及び前記第3のグリッドが前記スペーサ上に配置されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のX線源。
【請求項6】
前記スペーサが複数の開口部を備え、
前記電界エミッタが、複数の電界エミッタのうちの1つであり、各電界エミッタが、前記複数の開口部のうちの対応する1つに位置合わせされており、
前記開口部のそれぞれについて、前記第2のグリッドが、前記開口部の第1のエッジに沿って配置され、前記第3のグリッドが、前記第1のエッジの向かい側にある前記開口部の第2のエッジに沿って配置される、請求項5に記載のX線源。
【請求項7】
前記第1のグリッドと前記アノードとの間に配置された第4のグリッドと、
前記第1のグリッドと前記アノードとの間に配置された第5のグリッドと、
をさらに備え、
前記複数の開口部のそれぞれについて、前記第4のグリッドが、前記第1のエッジに直交する前記開口部の第3のエッジに沿って配置され、前記第5のグリッドが、前記第3のエッジの向かい側にある前記開口部の第4のエッジに沿って配置される、請求項6に記載のX線源。
【請求項8】
前記第2のグリッドがメッシュグリッドである、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のX線源。
【請求項9】
前記電界エミッタと前記第1のグリッドとの間の距離が300マイクロメートル(μm)未満であり、
前記第1のグリッドと前記第2のグリッドとの間の距離が1ミリメートル(mm)より大きい、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のX線源。
【請求項10】
前記第2のグリッドと前記アノードとの間に配置された第3のグリッドをさらに備える、請求項1から請求項3及び請求項8から請求項9のいずれか1項に記載のX線源。
【請求項11】
前記第1のグリッド及び前記第2のグリッドのそれぞれが単一の開口部の列を含む、請求項1から請求項3及び請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のX線源。
【請求項12】
前記第1のグリッドの開口部が、前記第2のグリッドの開口部から横方向にずらされている、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のX線源。
【請求項13】
前記第1のグリッドの開口部が、前記第2のグリッドの開口部とは異なる幅を有する、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のX線源。
【請求項14】
前記電界エミッタが、真空外囲器内に配置された複数の別個の電界エミッタのうちの1つである、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のX線源。
【請求項15】
前記第1のグリッドと前記アノードとの間に配置されたスペーサをさらに備えており、
前記第2のグリッドが前記スペーサ上に配置されている、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のX線源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線源に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管では、アーク放電及びイオンバックボンバードメントが発生することがある。例えば、X線管の真空中または誘電体中においてアークが発生することがある。アークは、カソードなどのX線管の内部構成要素を損傷させる可能性がある。さらに、アークが真空外囲器内の残留原子をイオン化することにより、及び/または原子が電子ビームによってイオン化されることにより、荷電粒子が形成され得る。このような荷電粒子はカソードに向かって加速され、場合によってはダメージをもたらし得る。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、請求項1に定義するX線源を提供する。任意選択の特徴が、従属請求項に定義されている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1A】いくつかの実施形態による、複数のグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【
図1B】いくつかの実施形態による、複数のグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【
図1C】いくつかの実施形態による、複数のグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【0005】
【
図2】いくつかの実施形態による、複数のメッシュグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【0006】
【
図3A】いくつかの実施形態による、複数のメッシュグリッドを有する電界エミッタX線源のメッシュグリッドの例の上面図である。
【
図3B】いくつかの実施形態による、複数のメッシュグリッドを有する電界エミッタX線源のメッシュグリッドの例の上面図である。
【0007】
【
図4】いくつかの実施形態による、複数のアパーチャグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【0008】
【
図5A】いくつかの実施形態による、複数のオフセットメッシュグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【
図5B】いくつかの実施形態による、複数のオフセットメッシュグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【0009】
【
図6A】いくつかの実施形態による、複数のオフセットメッシュグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【
図6B】いくつかの実施形態による、複数のオフセットメッシュグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【0010】
【
図7】いくつかの実施形態による、複数の分割グリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【0011】
【
図8】いくつかの実施形態による、メッシュグリッド及びアパーチャグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【0012】
【
図9A】いくつかの実施形態による、複数の電界エミッタを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【
図9B】いくつかの実施形態による、複数の電界エミッタを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【0013】
【
図10A】いくつかの実施形態による、複数の分割グリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【0014】
【
図10B】いくつかの実施形態による、
図10Aの電圧源118lのブロック図である。
【
図10C】いくつかの実施形態による、
図10Aの電圧源118lのブロック図である。
【0015】
【
図10D】いくつかの実施形態による、複数の分割グリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【0016】
【
図11A】いくつかの実施形態による、複数の分割グリッドと複数の電界エミッタとを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【0017】
【
図11B】いくつかの実施形態による分割グリッドのブロック図である。
【0018】
【
図11C】いくつかの実施形態による、複数の分割グリッドと複数の電界エミッタとを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【0019】
【
図11D】いくつかの実施形態による分割グリッドのブロック図である。
【0020】
【
図11E】いくつかの実施形態による、複数の分割グリッドと複数の電界エミッタとを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
【0021】
【
図11F】いくつかの実施形態による分割グリッドのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
いくつかの実施形態は、複数のグリッドを有するX線源、特に、複数のメッシュグリッドを有するX線源に関する。
【0023】
電子ビームがX線を発生させる際に、アーク放電及びイオンバックボンバードメント事象によりナノチューブエミッタなどの電界エミッタがダメージを受ける可能性がある。アーク放電は、X線管によく見られる現象である。真空または他の何らかの誘電物質が高電位勾配を維持できない場合にアークが発生し得る。非常に高いエネルギーの荷電粒子(電子及び/またはイオン)のパルスが、真空または誘電体スペーサを一時的に短絡させる。高エネルギーのアークパルスが起こされると、近接する全ての残留ガス種がイオン化され、イオン化された種の大部分は正に帯電したイオンになり、ナノチューブ(NT)エミッタを含む負に帯電したカソードに引き付けられる。NTエミッタが、このような高エネルギーイオンパルスにさらされるならば、NTエミッタは大きなダメージを受ける可能性がある。
【0024】
イオンボンバードメントは、X線管によく見られるもう1つの現象である。電子ビームが活性化され、真空ギャップを経てアノードに到達すると、電子ビームは、管内の残留ガス種、またはターゲットからスパッタリングされたタングステン原子をイオン化し得る。それらが一般には正極性でイオン化されると、そのイオンは、NTエミッタを含むカソードに向かって加速される。
【0025】
本明細書に記載されている実施形態は、アーク放電及び/またはイオンボンバードメントの影響を低減させ得る。1つ以上の追加のグリッドが、アークまたはイオンを遮断し、電界エミッタが損傷する可能性を減らし得る。
【0026】
図1Aから
図1Cは、いくつかの実施形態による、複数のグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
図1Aを参照すると、いくつかの実施形態では、X線源100aは、基板102、電界エミッタ104、第1のグリッド106、第2のグリッド108、中間電極110、及びアノード112を含む。いくつかの実施形態では、基板102は、セラミック、ガラス、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ケイ素もしくは石英(SiO
2)、またはその種の他のものなどの絶縁材で形成されている。
【0027】
電界エミッタ104は、基板102上に配置されている。電界エミッタ104は、電子ビーム140を生成するように構成されている。電界エミッタ104としては、様々なタイプのエミッタがあり得る。例えば、電界エミッタ104としては、ナノチューブエミッタ、ナノワイヤエミッタ、スピントアレイ、またはその種の他のものがあり得る。慣例的に、ナノチューブは、中空である構造の少なくとも一部分を有するものであり、これに対してナノワイヤまたはナノロッドは、実質的に中実のコアを有するものである。用語の使用を簡単にするために、本明細書で使用するとき、ナノチューブは、ナノワイヤ及びナノロッドをも意味するものとする。ナノチューブとは、アスペクト比が少なくとも100:1(長さ:幅または直径)であるナノメートルスケール(nmスケール)の管のような構造のことをいう。いくつかの実施形態では、電界エミッタ104は、不純物を加えない形態または加える形態のいずれかで、炭素、金属酸化物(例えば、Al2O3、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、または酸化マンガン(MnxOy、ただしx及びyは整数))、金属、硫化物、窒化物、及び炭化物、またはその種の他のものなどの高抗張力及び高熱伝導性を有する導電性材料で形成される。
【0028】
第1のグリッド106は、電界エミッタ104からの電界放出を制御するように構成される。例えば、第1のグリッド106は、電界エミッタ104から約200マイクロメートル(μm)の所に位置付けられ得る。他の実施形態では、第1のグリッド106は、約2μmから約500μmまで、または約10μmから約300μmまでなどの異なる距離に配置され得る。上記にかかわらず、第1のグリッド106は、電子の放出を引き起こすのに十分な強さの電場を電界エミッタ104で形成するために使用され得る電極である。電界エミッタ104の中には、他のグリッド、電極、またはその種の他のものを有するものもあるが、電界放出を制御する構造を、第1のグリッド106と呼ぶことにする。いくつかの実施形態では、第1のグリッド106(または電子抽出ゲート)は、電界エミッタ104からの電界放出を制御するただ1つのグリッドであってもよい。一例では、第1のグリッド106は、導電性メッシュ構造または金属メッシュ構造であってもよい。
【0029】
グリッドは、一般にカソードのエミッタとアノードとの間に設置される導電材料で作られた電極である。グリッドに電圧電位が印加されて電場に変化を生じさせ、それによって電子及び/またはイオンへの集束効果または制御効果をもたらす。第1のグリッド106は、カソードとアノードとの間の電子の流れを制御するのに用いられ得る。グリッドは、カソード、アノード、及び他のグリッドと同じかまたは異なる電圧電位を有することができる。グリッドは、カソード及びアノードとは絶縁され得る。グリッドは、電子ビームがエミッタからアノードに通過することを可能にするために、少なくとも1つの開口部で電子ビームを少なくとも部分的に取り囲む構造を含み得る。開口部がただ1つのグリッドをアパーチャグリッドと呼ぶことがある。一例では、アパーチャグリッドは、電子ビームの主要部分の経路を妨げることがない。複数の開口部を有するグリッドは、支持構造物が開口部の間にあって、メッシュグリッドと呼ばれる。メッシュは、金属、繊維、またはその他の接続材料の接続されたストランドで作られたバリアであり、接続されたストランド間には開口部がある。接続されたストランド(または棒体)は、電子ビームの経路内にあり、電子ビームの一部を遮断し得る。遮断の加減は、開口部の幅、深さ、または直径と、開口部間のメッシュの接続されたストランドまたは棒体の幅または深さとによって決まり得る。いくつかの例では、メッシュの遮断は、メッシュの開口部を電子が通過するのに比べて小規模にしてもよい。代表的には、アパーチャグリッドの開口部は、メッシュグリッドの開口部よりも大きい。グリッドは、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、ステンレス鋼、または高熱伝導率(例えば、>10ワット/メートル*ケルビン(W/m*K))、及び/または高溶融温度(>1000℃)を有するものを含む他の導電性剛体材料で形成することができる。複数のエミッタを有する例では、各グリッドを単一の電界エミッタ104に関連付けられた電極とすることができ、グリッドの電圧電位を、カソード内の電界エミッタ104ごとに個々に制御する、または調整することができる。
【0030】
アノード112は、電界エミッタ104から放出された電子ビーム140を受けるためのターゲット(図示せず)を含み得る。アノード112は、入射電子ビーム140に応答してX線を発生させることができる任意の構造を含み得る。アノード112には、固定アノードまたは回転アノードがあり得る。アノード112は、電圧源118から電圧を受けてもよい。アノード112に印加される電圧は、(カソードまたはグランドに対して)約20キロボルト(kV)から230キロボルト(kV)、約50kVから100kVなどであり得る。
【0031】
第2のグリッド108は、第1のグリッド106とアノード112との間に配置されている。いくつかの実施形態では、第2のグリッド108は、電界エミッタ104から、約1ミリメートル(mm)から2ミリメートル(mm)の所に配置され得る。すなわち、第2のグリッド108は、電界エミッタ104からの電子の放出を効果的に生じさせない位置に配置されている。他の実施形態では、第2のグリッド108は、1mmから2mmよりもさらに離れて配置され得る。例えば、第2のグリッド108は、電界エミッタ104から、10mmから50mmなど、電界エミッタ104から数十mmの所に配置され得る。いくつかの実施形態では、第2のグリッド108は、第1のグリッド106からの最小離隔距離が約1mmである。
【0032】
X線源100aは、電圧源118を含む。電圧源118は、複数の電圧を生成するように構成され得る。この電圧を、X線源100aの様々な構造に印加することができる。いくつかの実施形態では、この電圧は、異なる電圧、一定(すなわち、直流(DC))の電圧、可変の電圧、パルス状の電圧、依存する電圧、独立した電圧、またはこれらに類する電圧であり得る。いくつかの実施形態では、電圧源118には、この電圧を設定可能な電圧に一時的に設定することができる可変電圧源が含まれ得る。いくつかの実施形態では、電圧源118には、パルス電圧、任意に変化する電圧、またはこれらに類する電圧などの時間的に変化する電圧を生成するように設定可能な可変電圧源が含まれ得る。破線114は、電界エミッタ104、グリッド106及び108、ならびにアノード112を収容している真空外囲器114aの壁を表す。フィードスルー116により、電圧源118からの電圧が真空外囲器114aを透過することが可能になり得る。フィードスルー116からの直接接続を例示したが、抵抗器、分圧器、またはその種の他のものなどの他の回路を真空外囲器114a内に配置してもよい。電圧源118によって印加される電圧の例として絶対電圧が用いられ得るが、他の実施形態では、電圧源118は、いずれかの1つの電圧の絶対値に関係なく、相対的に同じ分離を有する電圧を印加するように構成され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、電圧源118は、電界エミッタ104に対して、最低-3キロボルト(kV)の電圧、または0.5kVと-3kVとの間の電圧を生成するように構成される。第1のグリッド106の電圧は、約0ボルト(V)またはグランドであり得る。第2のグリッド108の電圧は、約100V、80Vと120Vとの間、または約1000Vなどであり得る。第2のグリッド108の電圧は、負電圧にも正電圧にもすることが可能である。
【0034】
特定の電圧を例として用いてきたが、他の実施形態では、電圧が異なっていてもよい。例えば、第2のグリッド108に印加される電圧を、第1のグリッド106に印加される電圧よりも、高くしてもよく、または低くしてもよい。第1のグリッド106及び第2のグリッド108に印加される電圧を同じにしてもよい。いくつかの実施形態では、第2のグリッド108の電圧が、第1のグリッド106に印加される電圧よりも高い場合に、イオンが放出され得る。いくつかの実施形態では、第2のグリッド108を使用して、焦点サイズを調整し、及び/または焦点位置を調整することができる。焦点とは、カソード内の電界エミッタ104から飛来する電子ビーム140がアノード112に当たる領域をいう。電圧源118は、第2のグリッド108に印加される電圧が、所望の焦点サイズを達成するように調整され得るように、焦点サイズに関連したフィードバックを受け取り、そのようなフィードバックに基づいて、第2のグリッド108に印加される電圧の電圧設定値を受け取り、またはその種の他のものを受け取るように構成され得る。いくつかの実施形態では、電圧源118は、アークが検出された場合などに、負電圧を第1のグリッドまたは第2のグリッド106及び108に印加し、及び/または電界エミッタ104の電圧を上昇させて、電子ビーム140を遮断するように構成されてもよい。正電圧及び負電圧、グランドなどの特定の電位に関連する電圧を例として用いてきたが、他の実施形態では、種々の電圧が、特定の基準電圧に従って異なっていてもよい。
【0035】
真空外囲器114a内にアークが発生することがある。アークは、電界エミッタ104に衝突する可能性があり、電界エミッタ104を損傷させまたは破壊し、突発故障をもたらし得る。第2のグリッド108に印加される電圧が、アノード112よりも電界エミッタ104の電圧に近い電圧である場合に、第2のグリッド108は、電界エミッタ104以外の経路をアークに提供し得る。結果として、電界エミッタ104に損傷を与える可能性は、低減または排除され得る。
【0036】
さらに、イオンは、アーク放電によって、及び/またはアノード112上の蒸発したターゲット材のイオン化によって、生成され得る。これらのイオンは正に帯電しており、したがって電界エミッタ104などの最も負に帯電した表面に引き寄せられ得る。第2のグリッド108は、そのようなイオンに対する物理的バリアを提供し、電界エミッタ104の上に影を投じることにより、電界エミッタ104を保護することができる。さらに、第2のグリッド108は、電界エミッタ104に入射しまたは衝突するイオンによる損傷を、低減させまたは排除することができるように、イオンを十分に減速させることができる。
【0037】
上記のように、第2のグリッド108は、およそ1mmから30mmまたはそれ以上であるなど、電界エミッタ104に比較的近い所にあり得る。電界エミッタ104などの電界エミッタを使用することで、電界エミッタ104が従来のタングステンカソードよりも低い温度で動作するので、第2のグリッド108を、このより近い距離の所に配置できるようになり得る。そのような従来のタングステンカソードからの熱は、第2のグリッド108を反らせ、及び/または歪ませ、したがってX線源100aの集束またはその他の動作パラメータに影響を与える可能性がある。
【0038】
X線源100aは、中間電極110を含み得る。いくつかの実施形態では、中間電極110は、集束電極として動作し得る。中間電極110は、高電圧破壊事象などの間じゅうに、電界エミッタ104のための何らかの保護を提供することもできる。複数のエミッタを有する例では、中間電極110は、カソードの電界エミッタ104に共通の電圧電位を有し得る。一例では、中間電極110は、第2のグリッド108(または第1のグリッド106)とアノード112との間にある。
【0039】
図1Bを参照すると、いくつかの実施形態において、X線源100bは、
図1AのX線源100aに類似し得る。ただし、いくつかの実施形態では、第2のグリッド108の位置が異なり得る。ここでは、第2のグリッド108は、中間電極110とアノード112との間に配置されるように、中間電極110の反対側に配置されている。
【0040】
図1Cを参照すると、いくつかの実施形態において、X線源100cは、上記のX線源100aまたは100bに類似し得る。ただし、X線源100cは、複数の第2のグリッド108(または追加のグリッド)を含む。ここでは、第2のグリッド108-1及び108-2を例として用いているが、他の実施形態では、第2のグリッド108の個数は異なっていてもよい。
【0041】
追加の1つまたは複数の第2のグリッド108を、イオンボンバードメント及びアーク放電からのより多くの保護を得るために用いることができる。いくつかの実施形態では、1つの第2のグリッド108が十分な保護を提供しない場合には、1つ以上の第2のグリッド108を設計に加えてもよい。第2のグリッド108またはそれ以上を追加すると、アノード112に到達するビーム電流を減少させる可能性があるが、減少したビーム電流は、アーク放電またはイオンボンバードメントからの保護が良好になることで埋め合わされ得る。さらに、第2のグリッド108の個数を多くすることにより、電圧源118から電圧を印加する中で付加的な柔軟性が提供される。追加の電圧により、一方の第2のグリッド108-1が、いくらかの保護を提供することが可能になり得、その一方で、他方の第2のグリッド108-2が、電子ビーム140の焦点を調整するのに使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、第2のグリッド108-1と第2のグリッド108-2とに印加される電圧は同じであるが、他の実施形態では、電圧は異なる。
【0042】
図に示すように、第2のグリッド108-2は、第2のグリッド108-1と中間電極110との間に配置されている。また一方、他の実施形態では、第2のグリッド108-2は、
図1Bに示すように、中間電極110の反対側など、第2のグリッド108-1とアノード112との間の他の位置に配置されてもよい。いくつかの実施態様では、第2のグリッド108の一部または全部が、中間電極110の一方の側または他方の側に配置される。
【0043】
いくつかの実施形態では、第2のグリッド108-2は、電子の伝播に対する第2のグリッド108-2の影響を減らすために、第2のグリッド108-1から間隔をおいて配置され得る。例えば、第2のグリッド108-2は、第2のグリッド108-1から1mm以上の間隔を空けられてもよい。他の実施形態では、第2のグリッド108-2は、焦点サイズの制御に作用するように、第2のグリッド108-1から間隔を空けて配置されてもよい。
【0044】
様々な実施形態では、上記のように、様々なグリッド106及び108を示すために破線が使用された。以下に記載されている他の実施形態は、特定のタイプのグリッドを含む。それらのタイプのグリッドは、上記のグリッド106及び108として用いることができる。
【0045】
図2は、いくつかの実施形態による、複数のメッシュグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
図3Aから
図3Bは、いくつかの実施形態による、複数のメッシュグリッドを有する電界エミッタX線源のメッシュグリッドの例の上面図である。
図2及び
図3Aを参照すると、いくつかの実施形態では、グリッド106d及び108dはメッシュグリッドである。すなわち、グリッド106及び108は、それぞれ複数の開口部206及び216を含む。図示のように、開口部206及び216は、単一の開口部の列に配置されてもよい。特定の数の開口部206及び216が例として使用されているが、他の実施形態では、いずれかまたは両方の数は異なっていてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1のグリッド106dの開口部206の幅W1は、約125μmであり得る。いくつかの実施形態では、幅W1は、第1のグリッド106dと電界エミッタ104との離隔距離よりも小さくてもよい。例えば、幅W1は200μm未満であってもよい。棒体204の幅W2は、約10μmから約50μm、約25μmなどであり得る。第2のグリッド108dの開口部216の幅W3は、約225μmであり得る。第2のグリッド108dの棒体214の幅W4は、約10μmから約50μm、約25μmなどであり得る。したがって、いくつかの実施形態では、開口部206及び216は、異なる幅を有する場合があり、整列しない場合がある。いくつかの実施形態では、グリッド106d及び108dの厚さは、約10μmから約100μm、約75μmなどであり得る。しかし、他の実施形態では、グリッド106d及び108dの厚さは、互いに異なることを含めて、異なっていてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、第1のグリッド106d及び第2のグリッド108dの幅W1からW4または他の寸法は、第2のグリッド108dが第1のグリッド108dよりも電子ビーム140に対して透明であるように選択され得る。
【0047】
図3Bを参照すると、いくつかの実施形態では、第1のグリッド106及び第2のグリッド108のうちの少なくとも1つは、各列が複数の開口部を含む複数の列を含み得る。例えば、第1のグリッド106d'が2列の複数開口部206'を含み、第2のグリッド108d'が2列の複数開口部208'を含む。例として2つの列を用いてきたが、他の実施形態では、列の個数は異なっていてもよい。第1のグリッド106d'と第2グリッド108d'とでは同数の列を例として用いているが、他の実施形態では、第1のグリッド106d'と第2のグリッド108d'との列数が異なっていてもよい。
【0048】
図4は、いくつかの実施形態による、複数のアパーチャグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。いくつかの実施形態では、X線源100eは、本明細書に記載されているX線源100に類似し得る。ただし、X線源100eは、アパーチャグリッドであるグリッド106e及び108eを含む。すなわち、グリッド106e及び108eはそれぞれ、単一の開口部を含む。以下にさらに詳細に説明するように、他の実施形態では、グリッド106eはメッシュグリッドであってもよいが、グリッド108eがアパーチャグリッドである。いくつかの実施形態では、アパーチャグリッド106eまたは108eは、取り扱い及び製造がより容易であり得る。
【0049】
図5Aから
図5Bは、いくつかの実施形態による、複数のオフセットメッシュグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
図5A及び
図5Bを参照すると、X線源100fは、本明細書に記載されている他のX線源100に類似し得る。いくつかの実施形態では、X線源100fは、互いに(電界エミッタ104の表面に対して)横方向にずらされた第2のグリッド108f-1及び108f-2を含む。第2のグリッド108f-1及び108f-2のそれぞれに、異なる電圧を印加してもよい。結果的に、電圧を用いて電子ビーム140の向きを操作し得る。例えば、
図5Aでは、第2のグリッド108f-2に100Vを印加することがある一方で、第2のグリッド108f-1に0Vを印加することがある。
図5Bでは、第2のグリッド108f-2に0Vを印加することがある一方で、第2のグリッド108f-1に100Vを印加することがある。それに応じて、電子ビーム140の方向に影響を与えることができる。第2のグリッド108f-1及び108f-2に印加される電圧の特定の例を例として用いているが、他の実施形態では、電圧は異なっていてもよい。
【0050】
図6Aから
図6Bは、いくつかの実施形態による、複数のオフセットメッシュグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
図6A及び6Bを参照すると、X線源100gは、X線源100fに類似し得る。ただし、X線源100gは、グリッド108g-1及び108g-2としてアパーチャを含む。アパーチャグリッド108g-1及び108g-2は、
図5A及び
図5Bのメッシュグリッド108f-1及び108f-2と同じようにして使用することができる。
【0051】
図7は、いくつかの実施形態による、複数の分割グリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。X線源100hは、
図4のX線源100eに類似し得る。ただし、X線源100hは、分割グリッド108h-1及び108h-2を含み得る。グリッド108h-1及び108h-2は、電界エミッタ104から同じ距離の所に配置してもよい。また一方、電圧源118は、分割グリッド108h-1及び108h-2に独立した電圧を印加するように構成することができる。電圧を、同じにしてもよいが異ならせることもできる。結果的に、電子ビーム140hの方向を制御し、グリッド108h-1及び108h-2に印加される電圧に応じて、電子ビーム140h-1または140h-2をもたらし得る。
【0052】
図8は、いくつかの実施形態による、メッシュグリッド及びアパーチャグリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。X線源100iは、本明細書に記載されているX線源100に類似し得る。ただし、X線源100iは、アパーチャグリッド108i-1及びメッシュグリッド108i-1を含む。いくつかの実施形態では、メッシュグリッド108i-1は、電子ビーム140の焦点サイズ、形状を調整する、電子ビーム140のエッジを鮮明にするか、もしくは他の形でより良く画定する、またはこれらに類することのために使用することができる。良好に画定された電子ビーム140のエッジは、画定されていないエッジに比べて、エッジでの短い距離のうちに、ビーム電流束がより大きく変化するエッジであり得る。メッシュグリッド108i-2は、イオンを収集すること、及び/または第1のグリッド106i、電界エミッタ104、またはその種の他のものに保護を提供することのために使用されてもよい。例えば、メッシュグリッド108i-1に約-100Vの負のバイアスを印加することにより、電子ビーム140を集束させることができる。
【0053】
図9Aから
図9Bは、いくつかの実施形態による、複数の電界エミッタを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
図9Aを参照すると、いくつかの実施形態では、X線源100jは、本明細書に記載されている他のX線源100に類似し得る。ただし、X線源100jは、複数の電界エミッタ104j-1から104j-n(nは1より大きい任意の整数)を含む。アノード112は、
図9Aから
図9Bでは角度が付けられていないように示されているが、いくつかの実施形態では、アノード112は、角度が付けられていてもよく、複数の電界エミッタ104j-1から104j-nは、アノードの斜面に垂直な線上に配置されてもよい。すなわち、
図9Aから
図9Bの図は、
図1Aから
図2及び
図4から
図8の図に対して90度回転させたものであり得る。
【0054】
電界エミッタ104jのそれぞれは、対応する電界エミッタ104jからの電界放出を制御するように構成されている第1のグリッド106jに関連付けられている。結果的に、電界エミッタ104jのそれぞれは、対応する電子ビーム140jを生成するように構成されている。
【0055】
いくつかの実施形態では、単一の第2のグリッド108jが、電界エミッタ104jの全体にわたって配置される。第2のグリッド108jは、第1のグリッド106jと中間電極110jとの間に配置されるように示されているが、第2のグリッド108jは、上記の様々な場所に配置されてもよい。結果的に、第2のグリッド108jは、上記の追加の保護、向きの操作、及び/または集束を提供することができる。さらに、複数の第2のグリッド108jを、電界エミッタ104jの全体にわたって配置してもよい。
【0056】
図9Bを参照すると、いくつかの実施形態において、X線源100kは、X線源100jに類似し得る。ただし、各電界エミッタ104jは、対応する第2のグリッド108kに関連付けられている。したがって、上述の保護、向きの操作、及び/または集束は、電界エミッタ104kごとに個々に実行することができる。
【0057】
他の実施形態では、電界エミッタ104のいくつかは、
図9Aの第2のグリッド108jと同様の単一の第2のグリッド108と関連付けられていてもよいが、他の電界エミッタ104は、
図9Bの第2のグリッド108kと同様の個々の第2のグリッド108と関連付けられていてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、複数の電界エミッタ104は、それぞれが個別に電圧を制御可能である個別の第2のグリッド108に関連付けられ得る。また一方、中間電極110は、各電界エミッタ104に関連付けられている単一の中間電極110を含むことができる。いくつかの実施形態では、中間電極110-1から110-nは、別個の構造であってもよいが、電圧源118、別の電圧源により、または筐体、真空外囲器などに取り付けられているために、もしくは筐体、真空外囲器の一部であるために、同じ電圧を受け取ってもよい。
【0059】
図10Aは、いくつかの実施形態による、複数の分割グリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。X線源100lは、
図7のX線源100hに類似し得る。いくつかの実施形態では、基板102上に絶縁体150-1が配置され得る。第1のグリッド106lは、絶縁体150-1上に配置され得る。第1のグリッド106l上に、第2の絶縁体150-2が配置され得る。第2のグリッド108lは、電気的に絶縁された2つの分割グリッド108l-1及び108l-2を含み、第2の絶縁体150-2上に配置され得る。第2のグリッド108l上に、第3の絶縁体150-3が配置され得る。中間電極110は、第3の絶縁体150-3上に配置され得る。説明のために特定の寸法の絶縁体150を用いてきたが、他の実施形態では、絶縁体150は異なる寸法を有し得る。絶縁体150は、セラミック、ガラス、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ケイ素もしくは石英(SiO
2)、またはその種の他のものなどの絶縁材から形成され得る。絶縁体150は、同じ材料または異なる材料で形成され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、分割グリッド108l-1及び108l-2は、異なる電圧を分割グリッド108l-1及び108l-2に印加することができるように、互いに絶縁されている。これらの異なる電圧を用いて、アノード112上の焦点の位置を移動させることができる。例えば、等しい電位が分割グリッド108l-1及び108l-2の両方に印加される場合、焦点は、電子ビーム140l-1が示すアノードの中心内またはその近傍に配置されるはずである。分割グリッド108l-2にプッシュ(正)電位が印加され、分割グリッド108l-1にプル(負)電位が印加される場合、焦点は、電子ビーム140l-2が示す左側に移動する。分割グリッド108l-2にプル(負)電位が印加され、分割グリッド108l-1にプッシュ(正)電位が印加されると、焦点は、電子ビーム140l-3が示す右側に移動させることが可能である。
【0061】
いくつかの実施形態では、分割グリッド108l-1及び108l-2に印加される電圧を制御することで、アノード112表面上の焦点を走査または移動させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、非常に小さな焦点サイズを有する固定焦点の代わりに、はるかに大きな面積を有する焦点軌跡においてアノード112に電力が分配され得、それによってX線管の電力限界を大幅に改善することができる。すなわち、軌跡に沿って焦点を走査することにより、電力をより広い領域にわたって分配させることができる。焦点を図の平面内の方向に移動させることを例として用いているが、他の実施形態では、焦点の移動は、第2のグリッド108lを電子ビーム140lの周りの適切な位置に配置して、異なる方向、複数の方向などにしてもよい。いくつかの実施形態では、分割グリッド108l-1及び108l-2の使用により、焦点の幅、集束、焦点外れなどを調整することができる。
【0062】
図10Bから
図10Cは、いくつかの実施形態による、
図10Aの電圧源118lのブロック図である。
図10Aから
図10Cを参照すると、いくつかの実施形態では、電圧源118l-1及び118l-2は、電子制御システム(ECS)210、トグル制御電源(TCPS)212、及びメッシュ制御電源(MCPS)216を含み得る。ECS210、TCPS212、及びMCPS216は、それぞれ、約+/-1kV、+/-10kVなどの電圧を含む、本明細書に記載されている様々な電圧を生成するように構成された回路を含み得る。ECS210は、電界エミッタ104用の電圧を生成するように構成され得る。ECS210は、TCPS212及びMCPS216のうちの1つ以上を制御して、第1のグリッド106lならびに分割グリッド108l-1及び108l-2のための電圧を生成するように構成され得る。
図10B及び
図10C中の破線は、様々なシステム間の制御インタフェースを表す。
【0063】
いくつかの実施形態では、電圧源118l-1のTCPS212は、
図10Bに示される第1のグリッド106l用の電圧を基準として、分割グリッド108l-1及び108l-2用の電圧を生成するように構成され得、一方、他の実施形態では、電圧源118l-2のTCPS212は、
図10Cに示されるグランド216を基準として、分割グリッド108l-1及び108l-2用の電圧を生成するように構成され得る。例えば、TCPS212がMCPS214を基準とする場合、分割グリッド108l-1及び108l-2と第1のグリッド106lとの間の電位差(電場)を同じに保つように、分割グリッド108l-1及び108l-2の電圧の絶対値が自動的に変調される。TCPS212が主グランド216を基準とする場合、分割グリッド108l-1及び108l-2に印加される電圧の絶対値は固定され得、分割グリッド108l-1及び108l-2と第1のグリッド106lとの間の電位差(電場)は、第1のグリッド106l上の電位の変動に伴って変化し得る。いくつかの実施形態では、電界エミッタ104用の電圧は、第1のグリッド106lの電圧を基準として、ECS210によって生成され得る。他の実施形態では、ECS210は、グランド216を基準として、電界エミッタ104用の電圧を生成するように構成され得る。
【0064】
図10Dは、いくつかの実施形態による、複数の分割グリッドを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
図10DのX線源100mは、
図10AのX線源100lに類似し得る。ただし、いくつかの実施形態では、第1のグリッド106mの上部にゲートフレーム152mが追加され得る。ゲートフレーム152mは、第1のグリッド106mに、その機械的安定性を向上させるために構造的支持を提供し得る、金属、セラミック、または他の材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、ゲートフレーム152mは、第1のグリッド106mよりも厚くてもよい。例えば、ゲートフレーム152mの厚さは約1mmから2mmであってもよく、一方、第1のグリッド106mの厚さは約50μmから100μmであってもよい。いくつかの実施形態では、ゲートフレーム152mは、電子ビーム140mが通過する開口部内に延在し得る。他の実施形態では、ゲートフレーム152mは、開口部の周辺部にのみあってもよい。
【0065】
図11Aは、いくつかの実施形態による、複数の分割グリッドと複数の電界エミッタとを有する電界エミッタX線源のブロック図である。X線源100nは、
図9A及び
図9Bのシステム100j及び100kなどの本明細書に記載されているシステム100に類似し得る。いくつかの実施形態では、X線源100nは、スペーサ156nを含む。スペーサは、絶縁体150に類似したもの、絶縁体150の材料と同じような材料を使用したもの、異なる材料を使用したもの、異なる厚さを有するもの、またはその種の他のものであってよい。分割グリッド108n-1及び108n-2は、スペーサ156n上に形成されていてもよい。スペーサ156nは、電界エミッタ104n-1から104n-nのそれぞれに共通していてもよい。
【0066】
図11Bは、いくつかの実施形態による分割グリッドのブロック図である。
図11A及び
図11Bを参照すると、いくつかの実施形態では、分割グリッド108n-1及び108n-2は、スペーサ156n上に形成され得る。例えば、分割グリッド108n-1及び108n-2は、スクリーン印刷、熱蒸着、スパッタリング堆積、または他の薄膜堆積プロセスによって形成することができる。分割グリッド108n-1及び108n-2の電極は、スペーサ156nの複数開口部158を挟んで両側に配置されてもよい。分割グリッド108n-1を、互いに電気的に接続することができる。同様に、分割グリッド108n-2を、互いに電気的に接続することができる。ただし、分割グリッド108nが独立して動作し、異なる電位を発生させることを可能にするために、分割グリッド108n-1と分割グリッド108n-2との間に電気的接続が存在しない場合がある。分割グリッド108n-1及び108n-2に異なる電位が印加されると、スペーサ156nの開口部158にわたって電場が発生し得る。それによって、上記のように、開口部158を通過する電子を偏向させることができる。
【0067】
図11Cは、いくつかの実施形態による、複数の分割グリッドと複数の電界エミッタとを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
図11Dは、いくつかの実施形態による分割グリッドのブロック図である。
図11C及び
図11Dを参照すると、X線源100oは、
図11AのX線源100nに類似し得る。ただし、分割グリッド108o-1及び108o-2は、スペーサ156nと比較して、スペーサ156oの開口部158の直交する両側に配置されている。結果的に、電子ビーム140o-1から140o-nを、直交する方向に調整することができる。説明を容易にするために、
図11Cでは分割グリッド108o-2は(
図11Cでは分割グリッド108o-2は分割グリッド108o-1の背後にあるため)示されていない。
【0068】
図11Eは、いくつかの実施形態による、複数の分割グリッドと複数の電界エミッタとを有する電界エミッタX線源のブロック図である。
図11B、
図11D、及び
図11Eを参照すると、X線源100pは、上記のシステム100n及び100oに類似し得る。特に、X線源100pは、分割グリッド108o-1及び108o-2に類似する分割グリッド108p-1及び108p-2と、分割グリッド108n-1及び108n-2に類似する分割グリッド108p-3及び108p-4とを含む。それに応じて、X線源100pは、上記のように焦点を複数の方向に、同時に、独立してなど、調整するように構成されてもよい。分割グリッド108p-1及び108p-2の順序または重ね方を例として用いてきたが、他の実施形態では、順序または重ね方が異なっていてもよい。
【0069】
図11Fは、いくつかの実施形態による分割グリッドのブロック図である。いくつかの実施形態では、
図11B及び
図11Dの分割グリッド108o及び108nが、同じスペーサ156n上で組み合わされてもよい。例えば、分割グリッド108oは、スペーサ156nを間にして分割グリッド108nと向かい合って配置されてもよい。分割グリッド108oの電極は、スペーサ156nの裏側にある分割グリッド108oを示すために破線で示されている。いくつかの実施形態では、分割グリッド108oの電極は、ビア、金属化された穴、または他の電気的接続をスペーサ156nに通過させて、分割グリッド108nと同じ側にあってもよい。
【0070】
いくつかの実施形態は、アノード112と、電子ビーム140を生成するように構成された電界エミッタ104と、電界エミッタ104からの電界放出を制御するように構成された第1のグリッド106と、第1のグリッド106とアノード112との間に配置された第2のグリッド108であって、第2のグリッド108がメッシュグリッドである、第2のグリッド108とを備えるX線源を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、電界エミッタ104は、真空外囲器114内に配置された複数の別個の電界エミッタ104のうちの1つである。
【0072】
いくつかの実施形態では、電界エミッタ104は、ナノチューブ電界エミッタ104を備える。
【0073】
いくつかの実施形態では、本X線源は、第1のグリッド106とアノード112との間に配置されたスペーサをさらに備えており、第2のグリッド108が、スペーサ152m上に配置されたメッシュグリッドを備えている。
【0074】
いくつかの実施形態では、本X線源は、第1のグリッド106に第1の電圧を印加し、前記第2のグリッド108に第2の電圧を印加するように構成された電圧源118をさらに備える。
【0075】
いくつかの実施形態では、第1の電圧と第2の電圧とが同じである。
【0076】
いくつかの実施形態では、第1の電圧と第2の電圧とがグランドである。
【0077】
いくつかの実施形態では、第1の電圧と第2の電圧とが異なる。
【0078】
いくつかの実施形態では、電圧源118は可変電圧源であり、可変電圧源は、第1の電圧及び第2の電圧のうちの少なくとも一方を変化させるように構成されている。
【0079】
いくつかの実施形態では、本X線源は、第1のグリッド106とアノード112との間に配置され、かつ電界エミッタ104から第2のグリッド108-1と同じ距離に配置された第3のグリッド108-2をさらに備え、電圧源は、第3のグリッド108-2に第3の電圧を印加するように構成され、第3の電圧が第2の電圧とは異なる。
【0080】
いくつかの実施形態では、本X線源は、第1のグリッド106とアノード112との間に配置され、かつ電界エミッタ104から第2のグリッド108-1と同じ距離に配置された第3のグリッド108-2をさらに備え、電圧源は、第3のグリッド108-2に第3の電圧を印加するように構成され、かつ電圧源が、第3の電圧と第2の電圧とを独立して印加するように構成されている。
【0081】
いくつかの実施形態では、本X線源は、第1のグリッド106とアノード112との間に配置されたスペーサと、第1のグリッド106とアノード112との間に配置された第3のグリッドとをさらに備えており、第2のグリッド108-1及び第3のグリッド108-2がスペーサ156上に配置されている。
【0082】
いくつかの実施形態では、スペーサ156は開口部を備えており、第2のグリッド108-1が、開口部の第1のエッジに沿って配置され、第3のグリッド108-2が、第1のエッジの向かい側にある開口部の第2のエッジに沿って配置される。
【0083】
いくつかの実施形態では、スペーサ156が複数の開口部を備え、電界エミッタ104が、複数の電界エミッタ104のうちの1つであり、各電界エミッタ104が、開口部のうちの対応する1つに位置合わせされており、開口部のそれぞれについて、第2のグリッド108-1が、開口部の第1のエッジに沿って配置され、第3のグリッド108-2が、第1のエッジの向かい側にある開口部の第2のエッジに沿って配置される。
【0084】
いくつかの実施形態では、本X線源は、第1のグリッド106とアノード112との間に配置された第4のグリッド108-3と、第1のグリッド106とアノード112との間に配置された第5のグリッド108-4とをさらに備え、開口部のそれぞれについて、第4のグリッド108-3が、第1のエッジに直交する開口部の第3のエッジに沿って配置され、第5のグリッド108-4が、第3のエッジの向かい側にある開口部の第4のエッジに沿って配置される。
【0085】
いくつかの実施形態では、本X線源は、第1のグリッド106とアノード112との間に配置された中間電極110をさらに備える。
【0086】
いくつかの実施形態では、第2のグリッド108は、中間電極110とアノード112との間に配置される。
【0087】
いくつかの実施形態では、第2のグリッド108は、集束電極と第1のグリッド106との間に配置される。
【0088】
いくつかの実施形態では、電界エミッタ104と第1のグリッド106との間の距離が300マイクロメートル(μm)未満であり、第1のグリッド106と第2のグリッド108との間の距離が1ミリメートル(mm)より大きい。
【0089】
いくつかの実施形態では、本X線源は、第2のグリッド108-1とアノード112との間に配置された第3のグリッド108-2をさらに備える。
【0090】
いくつかの実施形態では、第1のグリッド106及び第2のグリッド108のそれぞれが、単一の開口部の列を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、第1のグリッド106及び第2のグリッド108のうちの少なくとも1つは、各列が複数の開口部を含む複数の列を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、第2のグリッド108はアパーチャである。
【0093】
いくつかの実施形態では、第1のグリッド106の開口部が、第2のグリッド108の開口部から横方向にずらされている。
【0094】
いくつかの実施形態では、第1のグリッド106の開口部が、第2のグリッド108の開口部とは異なる幅を有する。
【0095】
いくつかの実施形態は、真空外囲器114と、真空外囲器114内に配置されたアノード112と、真空外囲器114内に配置された複数の電界エミッタ104であって、各電界エミッタ104が電子ビーム140を生成するように構成されている、複数の電界エミッタ104と、複数の第1のグリッド106であって、各第1のグリッド106が、電界エミッタ104のうちの対応する1つに関連付けられ、かつ対応する電界エミッタ104からの電界放出を制御するように構成される、複数の第1のグリッド106と、第1のグリッド106とアノード112との間に配置された第2のグリッド108とを備えるX線源を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、第2のグリッド108が複数の第2のグリッド108を備えており、各第2のグリッド108が、第1のグリッド106のうちの対応する1つに関連付けられ、対応する第1のグリッド106とアノード112との間に配置されている。
【0097】
いくつかの実施形態では、本X線源は、第1のグリッド106及び第2のグリッド108に電圧を印加するように構成された電圧源をさらに備える。いくつかの実施形態では、本X線源は、電界エミッタ104とアノード112との間に配置された第2のグリッド108とは別の集束電極をさらに含む。
【0098】
いくつかの実施形態は、場から電子を放出するための手段と、場から電子を放出するための手段からの電子の放出を制御するための手段と、入射電子に応答してX線を生成するための手段と、場から電子を放出するための手段からの電子の放出を制御するための手段と、入射電子に応答してX線を生成するための手段との間の複数の場所で電場を変化させるための手段とを備える、X線源を含む。
【0099】
場から電子を放出するための手段の例には、電界エミッタ104が含まれる。場から電子を放出するための手段からの電子の放出を制御するための手段の例には、第1のグリッド106が含まれる。入射電子に応答してX線を生成するための手段の例には、アノード112が含まれる。場から電子を放出するための手段からの電子の放出を制御するための手段と、入射電子に応答してX線を生成するための手段との間の複数の場所で電場を変化させるための手段の例には、第2のグリッド108としてのメッシュグリッドが含まれる。
【0100】
いくつかの実施形態では、場から電子を放出するための手段は、対応する場から電子を放出するための複数の手段のうちの1つであり、電場を変化させるための手段は、対応する場から電子を放出するための複数の手段のそれぞれにわたって電場を変化させるための手段を備える。
【0101】
いくつかの実施形態では、電場を変化させるための手段は、電子を放出するための手段にわたって複数の場所で電場を変化させるための手段を備える。電子を放出するための手段にわたって複数の場所で電場を変化させるための手段を備える、電場を変化させるための手段の例には、第2のグリッド108としてのメッシュグリッドが含まれる。
【0102】
いくつかの実施形態では、本X線源は、場から電子を放出するための手段からの電子の放出を制御するための手段と、入射電子に応答してX線を生成するための手段との間の電場を変化させるための手段をさらに備える。場から電子を放出するための手段からの電子の放出を制御するための手段と、入射電子に応答してX線を生成するための手段との間の電場を変化させるための手段の例には、第2のグリッド108が含まれる。
【0103】
構造、デバイス、方法、及びシステムを、特定の実施形態に従って説明してきたが、当業者であれば、特定の実施形態に対する多くの変形が可能であり、それゆえに、いかなる変形も本明細書に開示される趣旨及び範囲の内にあるものと考えられなければならないことを容易に認識するであろう。したがって、多くの修正は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって行われ得る。
【0104】
この書面による開示に続く請求項は、本明細書により、本書面による開示に明示的に組み込まれ、各請求項は別個の実施形態として独立している。本開示は、独立請求項とその従属請求項についての全ての変形例を含む。さらに、以下の独立請求項及び従属請求項から派生することが可能である追加の実施形態も、本書面での説明に明示的に組み込まれる。これらの追加の実施形態は、所与の従属請求項の依存関係を語句「請求項[x]で始まり、この請求項の直前の請求項で終わる請求項のいずれか」に置き換えることによって決定される。ここで、括弧付きの用語「[x]」は、直近に記載された独立請求項の番号に置き換えられる。例えば、独立請求項1で始まる第1の請求項の組について、請求項4が請求項1及び3のいずれかに従属し、これらの別々の従属関係によって2つの異なる実施形態を得ることができ、請求項5が請求項1、3、または4のいずれか1項に従属し、これらの別々の従属関係によって3つの異なる実施形態を得ることができ、請求項6が請求項1、3、4、または5のいずれか1項に従属し、これらの別々の従属関係によって4つの異なる実施形態を得ることができ、以下同様である。
【0105】
特徴または要素に関する「第1の」という用語の特許請求の範囲における記載は、必ずしも第2または追加のそのような特徴または要素の存在を意味するものではない。手段と機能の形式で具体的に記載されている要素は、もしあれば、米国特許法第112条(f)に従って、本書に記載されている対応する構造、材料、または行為、及びそれらの均等物をカバーするように解釈されることが意図されている。排他的財産または特権が主張される本発明の実施形態は、以下のように定義される。
【外国語明細書】