IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ミライズテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特開-アライメントマーク 図1
  • 特開-アライメントマーク 図2
  • 特開-アライメントマーク 図3
  • 特開-アライメントマーク 図4
  • 特開-アライメントマーク 図5
  • 特開-アライメントマーク 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137773
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】アライメントマーク
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20220914BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037439
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若杉 幸宏
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197EB08
2H197EB09
2H197EB10
(57)【要約】
【課題】本明細書は、基板の位置決めに要求される計測精度を満足するアライメントマークを実現する技術を提供する。
【解決手段】本明細書が開示するアライメントマークは、<0001>c軸が主面の法線方向から<11-20>方向に所定の角度だけ傾いている炭化珪素基板に設けられる。このアライメントマークは、主面の法線方向からみて、<11-20>方向と<1-100>方向のそれぞれで線対称である。また、アライメントマークは、法線方向からみて、<11-20>方向で互いに逆方向を向いている一対の凹角を有するとともに全ての辺が<1-100>方向と交差する凹多角形である。アライメントマーク位置計測に要求される精度であって、<11-20>方向と<1-100>方向の計測精度差dXY(単位は[ナノメートル])と、凹角の大きさAG(単位は[度])が、AG≧{360-(dXY+1298)/27}の関係を満たす。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
<1-100>方向が主面(3)に平行であり、<0001>c軸が前記主面の法線方向から<11-20>方向に所定の角度だけ傾いている炭化珪素基板(2)に設けられるアライメントマーク(10、20、30)であり、前記アライメントマークは、
前記法線方向からみて、前記<11-20>方向と<1-100>方向のそれぞれで線対称であり、前記<11-20>方向で互いに逆方向を向いている一対の凹角(17、19、39)を有するとともに全ての辺が前記<1-100>方向と交差する凹多角形であり、
アライメントマーク位置計測に要求される精度であって、前記<11-20>方向と前記<1-100>方向の計測精度差dXY(単位は[ナノメートル])と、前記凹角の大きさAG(単位は[度])が、AG≧{360-(dXY+1298)/27}の関係を満たしている、アライメントマーク。
【請求項2】
前記アライメントマークは、前記法線方向からみて、
前記<11-20>方向で並んでいる第1頂点(11)および第2頂点(12)と、
前記<1-100>方向で前記第1頂点と並んでいる第3頂点(13)と、
前記<1-100>方向で前記第2頂点と並んでいるとともに、前記<11-20>方向で前記第3頂点と並んでいる第4頂点(14)と、
前記<1-100>方向にて前記第1頂点と前記第3頂点の間に位置する第5頂点(15)と、
前記<1-100>方向にて前記第2頂点と前記第4頂点の間に位置する第6頂点(16)と、
を有しており、
前記第1頂点と前記第5頂点と前記第3頂点がなす角、および、前記第2頂点と前記第6頂点と前記第5頂点がなす角が、一対の前記凹角に相当する六角形である、請求項1に記載のアライメントマーク。
【請求項3】
前記法線方向からみて、前記<11-20>方向と<1-100>方向のそれぞれの長さが10[ミクロンメートル]以下である、請求項1または2に記載のアライメントマーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、炭化珪素基板に設けられるアライメントマークに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造過程で基板の位置を正確に計測するのにアライメントマークが用いられる。アライメントマークは、半導体素子の製造過程で基板の上に形成される。アライメントマーク形成後にも、基板の表面に結晶層を成長させることがある。<0001>c軸が主面の法線方向から<11-20>方向に所定の角度だけ傾いている炭化珪素基板の場合、結晶層の成長速度に異方性が生じる。この異方性により、アライメントマークが変形してしまい、アライメントマークを用いた基板の位置計測に誤差が生じる。誤差を小さくするアライメントマークの形状が、特許文献1-3で提案されている。結晶層の成長速度に異方性が生じるメカニズムについては、特許文献1-3を参照されたい。
【0003】
特許文献2、3によれば、アライメントマークは、基板の主面の法線方向からみて、<1-100>方向と平行な辺を有さないことが好ましいとされている。また、特許文献3によれば、アライメントマークは、主面の法線方向からみて、正三角形、ひし形、正六角形、正十二角形、円形であることが望ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-77846号公報
【特許文献2】特開2013-343565号公報
【特許文献3】特開2017-168599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
<0001>c軸が主面の法線方向に対して傾斜している炭化珪素基板では、<11-20>方向の結晶成長速度が<1-100>方向の結晶成長速度よりも顕著に早い。そのため、アライメントマークが形成された基板の表面で結晶を成長させると、<11-20>方向におけるアライメントマークの形の変形が、<1-100>方向の変形よりも顕著になる。そのため、基板の位置計測において、<1-100>方向の計測精度に比較して<11-20>方向の計測精度が低下する。本明細書は、<1-100>方向の計測精度と<11-20>方向の計測精度の差に着目し、アライメントマークを用いた基板の位置決めに要求される計測精度を満足するアライメントマークを実現する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するアライメントマーク(10、20、30)は、<1-100>方向が主面(3)に平行であり、<0001>c軸が主面の法線方向から<11-20>方向に所定の角度だけ傾いている炭化珪素基板(2)に設けられる。このアライメントマークは、主面の法線方向からみて、<11-20>方向と<1-100>方向のそれぞれで線対称である。また、アライメントマークは、法線方向からみて、<11-20>方向で互いに逆方向を向いている一対の凹角(19、29、39)を有するとともに全ての辺が<1-100>方向と交差する凹多角形である。アライメントマーク位置計測に要求される精度であって、<11-20>方向と<1-100>方向の計測精度差dXY(単位は[ナノメートル])と、凹角の大きさAG(単位は[度])が、AG≧{360-(dXY+1298)/27}の関係を満たす。
【0007】
計測精度差とは、<11-20>方向の計測精度と、<1-100>方向の計測精度の差である。アライメントマークの凹角の大きさAGが上記の関係を満たしていれば、<11-20>方向と<1-100>方向の計測精度差は、計測に要求される計測精度差dXY以下となる。なお、計測装置自体の計測精度が<11-20>方向と<1-100>方向で同じであれば、計測精度差は、結晶成長によって生じるアライメントマークの形状変形に起因する計測誤差を意味する。
【0008】
本明細書が開示するアライメントマークの具体的な形状の一例は、第1~第6頂点を有する六角形であり、次の特徴を有する。第1頂点と第2頂点は、<11-20>方向で並ぶ。第3頂点は、<1-100>方向で第1頂点と並ぶ。第4頂点は、<1-100>方向で第2頂点と並ぶとともに、<11-20>方向で第3頂点と並ぶ。第5頂点は、<1-100>方向において、第1頂点と第3頂点の間に位置する。第6頂点は、<1-100>方向において、第2頂点と第4頂点の間に位置する。そして、第1頂点と第5頂点と第3頂点がなす角と、第2頂点と第6頂点と第5頂点がなす角が、一対の凹角に相当する。なお、上記の説明にて「頂点」に付した序数はそれぞれの頂点を区別するための便宜上のものである。
【0009】
基板の位置決めは、要求される計測精度が比較的に大きい粗位置決めと、要求される計測精度が粗位置決めのそれよりも厳しい微細位置決めの2段階で行われる場合がある。本明細書が開示するアライメントマークは、微細位置決めに好適であり、主面の法線方向からみたときの<11-20>方向と<1-100>方向のそれぞれの長さが10[ミクロンメートル]以下であるとよい。
【0010】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例のアライメントマークを備えた基板の断面図である。
図2】アライメントマークを備えた基板の平面図である。
図3】アライメントマークの平面図である。
図4】凹角の角度と許容値の関係を示すグラフである。
図5】第1変形例のアライメントマークの平面図である。
図6】第2変形例のアライメントマークの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して実施例のアライメントマーク10を説明する。図1に、実施例のアライメントマーク10を備えた基板2の断面図を示す。基板2は、炭化珪素を主材料とする半導体基板(炭化珪素基板)である。基板2は、炭化珪素の四層周期六方晶(4H-SiC)の基板であり、主面3にn型炭化珪素エピタキシャル層が積層されている。基板2を構成する炭化珪素の結晶構造の<0001>c軸CAは、基板2の主面3の法線NLに対して角度REだけ傾いている。角度REは、1度から10度程度である。基板2の炭化珪素の結晶構造の<1-100>方向は、基板2の主面3に平行である。
【0013】
基板2には、例えばチャネル領域やドリフト領域など、いくつかの半導体層と、絶縁膜などが形成されているが、図では、アライメントマーク10以外の構造は図示を省略してある。基板2には、不図示の半導体層などにより、スイッチング素子や半導体レーザ素子などの半導体素子が形成されている。
【0014】
基板2に半導体素子を形成する際、基板2の主面3に設けられたアライメントマーク10の位置を計測装置で計測し、基板2の位置を特定する。なお、基板2には不図示のオリエンテーションフラットが設けられており、位置計測に先立って、オリエンテーションフラットを用いて基板2の回転方向を計測する。
【0015】
アライメントマーク10は、主面3の表面に設けられた窪みであり、エッチングなどの加工工程で形成される。アライメントマーク10の窪みの深さは0.2~1.0ミクロンメートル程度であるが、図1では窪みの深さを強調して描いてある。また、アライメントマーク10のX方向の長さは10ミクロンメートル程度であるが、図1ではアライメントマーク10の大きさを強調して描いてある。
【0016】
後に説明するように、実施例の基板2では、X方向に6個のアライメントマーク10が並んでおり、図1では3個のアライメントマークのみが描かれており、残りのアライメントマークは図示を省略した。
【0017】
図中の二点鎖線は、炭化珪素の結晶構造の<11-20>方向を表している。また、図の紙面手前-奥方向が、炭化珪素の結晶構造の<1-100>方向に相当する。説明の便宜上、基板2の主面3の法線NLの方向をZ軸にとり、炭化珪素の結晶構造の<1-100>方向をY軸にとり、Y軸とZ軸の双方に直交する方向をX軸にとる。X軸とY軸は、基板2の主面3に平行である。X軸は、法線NLの方向から基板2を平面視したときの<11-20>方向に相当する。別言すれば、X軸は、基板2の結晶構造の<11-20>方向を主面3に投射した方向に相当する。先に述べたオリエンテーションフラットを用いた基板2の向きの特定により、基板2の<1-100>方向をY軸に一致させ、<11-20>方向を主面3に投影させた方向をX軸に一致させることができる。基板2に対する座標系の各軸の方向は、以降の図でも同じである。
【0018】
図2に、基板2を法線NLの方向からみた平面図を示す。基板2の位置を計測する計測装置は、予め定められた形状に配置された複数のアライメントマーク10を検知し、基板2の位置を特定する。なお、図2では、右下の1個のアライメントマーク10にのみ、符号を付し、他のアライメントマークに対しては符号を省略した。図3に1個のアライメントマーク10を拡大した平面図を示す。1個のアライメントマーク10のX方向の長さMXは、概ね5~10ミクロンメートルであり、Y方向の長さMYは、概ね1から5μメートルである。1個のアライメントマーク10の大きさは、X方向とY方向のそれぞれにおいて、長さが10[ミクロンメートル]以下であればよい。
【0019】
図2に示すように、基板2の場合、8個乃至9個のアライメントマーク10がY方向に列をなしている。X方向に6列のアライメントマーク列が形成されている。アライメント列のピッチは概ね20ミクロンメートルである。複数のアライメントマーク10は、X方向の幅WXが概ね100ミクロンメートル、Y方向の幅WYが概ね30ミクロンメートルの矩形内に分散配置される。
【0020】
基板2の位置を計測する計測装置は、幅WX、WYの矩形内に配置された一群のアライメントマーク10を検知し、幅WX、WYの矩形の中央CPの位置を特定する。計測装置の計測精度は、アライメントマーク10の形状に依存する。基板2に半導体素子を形成する過程にて、主面3で結晶を成長させることがある。結晶を成長させるとアライメントマーク10が変形する。より正確には、主面3にて結晶を成長させると、アライメントマーク10のエッジの位置が変化する。
【0021】
基板2は、X方向(<11-20>方向)の結晶成長速度がY方向(<1-100>方向)の結晶成長速度よりも速いため、結晶を成長させるとアライメントマーク10のX方向における変形はY方向における変形よりも顕著になる。それゆえ、アライメントマーク10の位置計測(すなわち、基板2の位置計測)において、X方向の計測精度がY方向の計測精度よりも低下する。実施例のアライメントマーク10は、アライメントマーク位置計測に要求される精度であって、X方向とY方向の計測精度差dXYを満足する。X方向とY方向の計測精度差dXYは、「X方向の計測精度」-「Y方向の計測精度」で表され、Y方向の計測精度に対してX方向の計測精度がどのくらい低下していてもよいかを示す指標(許容値)である。
【0022】
計測装置自体の計測精度がX方向(<11-20>方向)とY方向(<1-100>方向)で同じであれば、計測精度差dXYは、結晶成長によって生じるアライメントマークの形状変形に起因するX方向の計測誤差を意味する。この場合、計測精度差dXYは、アライメントマークの形状変形に起因するX方向の計測誤差の許容値を意味する。
【0023】
図3を参照しつつ、アライメントマーク10の形状を説明する。図3に示すように、主面3の法線方向からみたアライメントマーク10は、一対の凹角19a、19bを有する六角形である。「凹角」(Reflex angle)とは、180よりも大きく、360度よりも小さい範囲の角度を意味する。
【0024】
アライメントマーク10は、主面の法線方向からみて、X方向で線対称(左右対称)であり、Y方向でも線対称(左右対称)である。
【0025】
アライメントマーク10は、第1頂点11、第2頂点12、第3頂点13、第4頂点14、第5頂点15、および、第6頂点16を備える。第1頂点11と第2頂点12は、X方向で並んでいる。第3頂点13は、Y方向で第1頂点11と並んでいる。第4頂点14は、Y方向で第2頂点12と並んでおり、かつ、X方向で第3頂点13と並んでいる。第5頂点15は、Y方向で第1頂点11と第3頂点13の間に位置する。第6頂点16は、Y方向で第2頂点12と第4頂点14の間に位置する。そして、第1頂点11と第5頂点15と第3頂点13がなす内角と、第2頂点12と第6頂点16と第5頂点15がなす内角が、一対の凹角19a、19bに相当する。一対の凹角19a、19bは、X方向で互いに逆方向を向いている。
【0026】
図3に示すように、アライメントマーク10のいずれの辺も、Y方向と交差する。別言すれば、アライメントマーク10のいずれの辺も、Y方向に対して平行ではない。また、アライメントマーク10は、Y方向に平行な直線に対して線対称であるため、凹角19a、19bの内角AGは等しい。
【0027】
本願の発明者は、異なる大きさの内角AGを有するアライメントマーク10を試作し、内角AGの大きさと、アライメントマーク10のX方向及びY方向の位置の計測値を比較した。説明の都合上、アライメントマーク10のX方向の計測精度とY方向の計測精度の差の計測精度差dXY差と称する。
【0028】
評価試験の結果、内角AGが294度のとき、計測精度差dXYは480ナノメートルであり、内角AGが307度のとき、計測精度差dXYは110ナノメートルであった。この結果を図4に示す。ポイントP1が、内角AG=293度のときの計測精度差dXY=480ナノメートルの結果、ポイントP2が、内角AG=308度のときの計測精度差dXY=110ナノメートルの結果を示している。
【0029】
ポイントP1、P2を通る直線は、AG={360-(dXY+1298)/27}という式で表すことができる。ここで、凹角19a、19bの角度(内角AG)の単位は「度」であり、計測精度差dXYの単位は「ナノメートル」である。
【0030】
試験の結果から、アライメントマーク10(基板2)の位置計測に要求される計測精度差が値dXYの場合、アライメントマーク10の凹角の大きさAG(単位は[度])が、AG≧{360-(dXY+1298)/27}の関係を満たせば、アライメントマーク10(基板2)の位置は、要求される計測精度差dXY以下の誤差で計測される。なお、当然ながら、凹角の大きさAGは、360度未満である。
【0031】
アライメントマーク10の形状は、図3の形状に限られない。例えば、図5に示すように、矩形がクロスした形状(アライメントマーク20)や、図6に示すように、図3のアライメントマーク10がY方向につながった形状(アライメントマーク30)であってもよい。
【0032】
アライメントマークは、次の条件を満足するものであればよい。アライメントマーク20(30)は、基板の主面の法線方向からみてX方向とY方向のそれぞれで線対称(左右対称)である。アライメントマーク20(30)は、X方向で互いに逆方向を向いている一対の凹角29(39)を有するとともに全ての辺がY方向と交差する凹多角形である。アライメントマーク位置計測に要求される計測精度であって、X方向の計測精度とY方向の計測精度の差(計測精度差dXY、単位は[ナノメートル])と、凹角29(39)の大きさAG(単位は[度])が、AG≧{360-(dXY+1298)/27}の関係を満たす。
【0033】
実施例で説明したアライメントマークに関する留意点を述べる。アライメントマーク10は、X方向(<11-20>方向を主面に投影した方向)で互いに逆方向を向いている一対の凹角を有するとともに全ての辺がY方向(<1-100>方向)と交差する凹多角形である。全ての辺がY方向と交差する凹多角形であるとは、別言すれば、Y方向に平行な辺を有さない多角形である。
【0034】
本明細書が開示する技術は、「アライメントマークを用いた基板の位置計測工程を含んでいる半導体装置の製造方法」と表現することもできる。アライメントマークの形状は上記した通りである。この製造方法の特徴は、次の通りである。すなわち、アライメントマーク位置計測に要求される<11-20>方向の計測精度と、<1-100>方向の計測精度の差(計測精度差dXY、単位は[ナノメートル])と、アライメントマークの凹角の大きさAG(単位は[度])が、AG≧{360-(dXY+1298)/27}の関係を満たす。
【0035】
一般に、基板の位置決めは、位置計測の精度が概ね500ナノメートルを超える粗位置決めと、位置計測の精度が概ね500ナノメートル未満の微細位置決めの2段階で行われる。粗位置決めでは、X方向とY方向の長さがそれぞれ100ナノメートル程度のアライメントが用いられる。微細位置決めでは、X方向とY方向の長さがそれぞれ10ナノメートル程度のアライメントが用いられる。微細位置決めでは、図2に示したように、特定の範囲に特定の相対位置関係で分散配置されたアライメントの一群が用いられる。本明細書が開示する技術は、微細位置決め用のアライメントに好適であり、X方向とY方向のそれぞれの長さは概ね10ナノメートル以下であることが好ましい。
【0036】
一般に、計測装置自体の計測精度は、X方向(<11-20>方向)とY方向(<1-100>方向)で同じである。その場合、計測精度差dXYは、結晶成長によって生じるアライメントマークの形状変形に起因するX方向(<11-20>方向)の計測誤差を意味する。この場合、AG≧{360-(dXY+1298)/27}の不等式は、アライメントマークの形状変形に起因する計測誤差の許容値(計測誤差dXY)と凹各の大きさAGの関係を与える。
【0037】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
2:基板 3:主面 10、20、30:アライメントマーク 11、12、13、14、15、16頂点 19a、19b、29、39:凹角
図1
図2
図3
図4
図5
図6