IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽誘電株式会社の特許一覧

特開2022-137818弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサ
<>
  • 特開-弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサ 図1
  • 特開-弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサ 図2
  • 特開-弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサ 図3
  • 特開-弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサ 図4
  • 特開-弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサ 図5
  • 特開-弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサ 図6
  • 特開-弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサ 図7
  • 特開-弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサ 図8
  • 特開-弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサ 図9
  • 特開-弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137818
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20220914BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20220914BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20220914BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H3/08
H03H9/64 Z
H03H9/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037496
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】栗原 倫之
(72)【発明者】
【氏名】川原 尚由
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋平
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 諭
(72)【発明者】
【氏名】小西 洋輔
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA30
5J097BB15
5J097EE08
5J097GG03
5J097GG04
5J097HA04
5J097KK09
5J097KK10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小型化することが可能である支持基板上に圧電層が設けられた弾性波デバイス、フィルタ及びマルチプレクサを提供する。
【解決手段】弾性波デバイスは、支持基板10と、ビア配線22と、金属層18と、圧電層14と、弾性波素子15と、を有する。ビア配線22は、支持基板10を貫通している。金属層18は、支持基板10上に設けられ、ビア配線22を覆っている。弾性波素子15は、圧電層14上に設けられている。圧電層14は、支持基板10との間に金属層18の一部の領域27を挟み、平面視においてビア配線22の少なくとも一部と重ならない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板を貫通するビア配線と、
前記支持基板上に設けられ、前記ビア配線を覆う金属層と、
前記支持基板との間に前記金属層の一部の領域を挟み、前記支持基板上に設けられ、平面視において前記ビア配線の少なくとも一部と重ならない圧電層と、
前記圧電層上に設けられた弾性波素子と、
を備える弾性波デバイス。
【請求項2】
前記支持基板と前記圧電層との間に設けられた絶縁層と、
前記金属層の一部の領域は前記支持基板と前記絶縁層との間に挟まれる請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記金属層上から前記圧電層上にかけて設けられ、前記ビア配線と前記弾性波素子とを電気的に接続する配線を備える請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記配線は、平面視において前記ビア配線の少なくとも一部に重なる請求項3に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記ビア配線は銅、銀または金を主成分とし、前記金属層はチタンまたはチタンタングステンを主成分とする請求項1から4のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記ビア配線は銅、銀または金を主成分とし、前記金属層はチタンまたはチタンタングステンを主成分とし、
前記配線は、銀または金のうち前記ビア配線の主成分でない金属を主成分とする層を備える請求項4に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の弾性波デバイスを含むフィルタ。
【請求項8】
請求項7に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
【請求項9】
支持基板上に、前記支持基板を貫通するビア配線を覆うように金属層を形成する工程と、
前記支持基板および前記金属層上に圧電層を形成する工程と、
前記圧電層上に弾性波素子を形成する工程と、
前記支持基板と前記圧電層との間に前記金属層の一部の領域を挟むように、平面視において前記ビア配線の少なくとも一部と重なる領域の圧電層を除去する工程と、
を含む弾性波デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記金属層上から前記圧電層上にかけて設けられ、前記ビア配線と前記弾性波素子とを電気的に接続する配線を形成する工程を含む請求項9に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサに関し、例えば支持基板上に圧電層が設けられた弾性波デバイス、フィルタおよびマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の通信機器に用いられる弾性波デバイスとして、支持基板上に圧電層が設けられた構造が知られている。支持基板と圧電層との間に金属層を設けることが知られている(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-214782号公報
【特許文献2】特開2017-022501号公報
【特許文献3】国際公開第2016/068003号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
支持基板上に、支持基板を貫通するビア配線と平面視において重なる金属層を設けることがある。この場合、ビア配線と金属層との位置合わせ精度が悪いため、金属層をビア配線より平面視において大きく形成する。このため、弾性波デバイスが大型化する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持基板と、前記支持基板を貫通するビア配線と、前記支持基板上に設けられ、前記ビア配線を覆う金属層と、前記支持基板との間に前記金属層の一部の領域を挟み、前記支持基板上に設けられ、平面視において前記ビア配線の少なくとも一部と重ならない圧電層と、前記圧電層上に設けられた弾性波素子と、を備える弾性波デバイスである。
【0007】
上記構成において、前記支持基板と前記圧電層との間に設けられた絶縁層と、前記金属層の一部の領域は前記支持基板と前記絶縁層との間に挟まれる構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記金属層上から前記圧電層上にかけて設けられ、前記ビア配線と前記弾性波素子とを電気的に接続する配線を備える構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記配線は、平面視において前記ビア配線の少なくとも一部に重なる構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記ビア配線は銅、銀または金を主成分とし、前記金属層はチタンまたはチタンタングステンを主成分とする構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記ビア配線は銅、銀または金を主成分とし、前記金属層はチタンまたはチタンタングステンを主成分とし、前記配線は、銀または金のうち前記ビア配線の主成分でない金属を主成分とする層を備える構成とすることができる。
【0012】
本発明は、上記弾性波デバイスを含むフィルタである。
【0013】
本発明は、上記フィルタを含むマルチプレクサである。
【0014】
本発明は、支持基板上に、前記支持基板を貫通するビア配線を覆うように金属層を形成する工程と、前記支持基板および前記金属層上に圧電層を形成する工程と、前記圧電層上に弾性波素子を形成する工程と、前記支持基板と前記圧電層との間に前記金属層の一部の領域を挟むように、平面視において前記ビア配線の少なくとも一部と重なる領域の圧電層を除去する工程と、を含む弾性波デバイスの製造方法である。
【0015】
上記構成において、前記金属層上から前記圧電層上にかけて設けられ、前記ビア配線と前記弾性波素子とを電気的に接続する配線を形成する工程を含む構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図である。
図2図2は、実施例1における弾性波素子の平面図である。
図3図3(a)から図3(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。
図4図4(a)から図4(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。
図5図5は、比較例1に係る弾性波デバイスの断面図である。
図6図6(a)から図6(c)は、比較例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。
図7図7(a)および図7(b)は、比較例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。
図8図8(a)および図8(b)は、それぞれ比較例1および実施例1に係る弾性波デバイスの平面図である。
図9図9は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイスに係る断面図である。
図10図10(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図、図10(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例0019】
図1は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図である。図1に示すように、支持基板10上に圧電層14が設けられている。支持基板10と圧電層14との間に絶縁層13が設けられている。絶縁層13は、支持基板10上に設けられた境界層11と、境界層11上に設けられた温度補償膜12と、を有する。圧電層14上に金属膜16が設けられている。金属膜16は、弾性波素子15を形成する。弾性波素子15を覆うように保護膜17が設けられている。支持基板10を貫通するビア配線22が設けられている。ビア配線22は、支持基板10を貫通する貫通孔21内に埋め込まれている。支持基板10上にビア配線22を覆うように金属層18が設けられている。支持基板10の下面にビア配線22に電気的に接続される端子24が設けられている。
【0020】
領域26において圧電層14および絶縁層13が除去されている。領域26は平面視においてビア配線22と重なる。金属層18のうち一部の領域27上の圧電層14および絶縁層13は除去されておらず、金属層18の一部の領域27は支持基板10と絶縁層13との間に挟まれている。領域26内の金属層18上から圧電層14および絶縁層13の側面を介し圧電層14上に配線20が設けられている。配線20は、密着層20aと密着層20a上に設けられ密着層20aより抵抗率の小さい低抵抗層20bを有する。配線20の一部は金属膜16上に設けられている。配線20は、弾性波素子15とビア配線22とを電気的に接続する。
【0021】
支持基板10は、一例として厚さが75μmのサファイア基板であり、例えば厚さが50μm~500μmのアルミナ基板、スピネル基板、水晶基板またはシリコン基板である。絶縁層13は、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化アルミニウム膜等の単層または複合層の無機絶縁層である。境界層11は、一例として厚さが1.1μm~1.35μmの酸化アルミニウム膜であり、温度補償膜12より音速の速い膜である。温度補償膜12は、一例として厚さが450nm~660nmの酸化シリコン膜であり、例えばフッ素等の不純物を含む酸化シリコン膜または無添加の酸化シリコン膜である。温度補償膜12の弾性定数の温度係数の符号は圧電層14の弾性定数の温度係数の符号と反対である。圧電層14は、一例として厚さが0.75μm~1.1μmの42°回転YカットX伝搬単結晶タンタル酸リチウム基板であり、例えば回転Yカット伝搬タンタル酸リチウム基板または回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である。圧電層14は絶縁層13を介さず支持基板10に直接設けられていてもよい。支持基板10と絶縁層13との界面は鏡面でもよいが凹凸面でもよい。温度補償膜12と圧電層14との間に、温度補償膜12と圧電層14とを接合する接合層が設けられていてもよい。接合層は、一例として厚さが10nmの酸化アルミニウム膜である。
【0022】
金属膜16は、例えばアルミニウム膜、アルミニウム合金膜またはモリブデン膜である。保護膜17は、例えば酸化シリコン膜または窒化シリコン膜等の絶縁膜である。金属層18は、一例として厚さが0.1μmのチタン膜であり、例えばチタンタングステン膜であり、配線20とビア配線22との間の相互拡散防止のバリア層である。密着層20aは一例として厚さが200nmのチタン膜であり、例えばチタンタングステン膜である。低抵抗層20bは一例として厚さが1000nmの金膜である。ビア配線22は例えば上面の径が40μmの銅層であり、例えば銀層または金層である。端子24は、一例として支持基板10側から厚さが2μmの銅膜、厚さが5μmのニッケル膜および厚さが0.3μmの金膜である。
【0023】
図2は、実施例1における弾性波素子の平面図である。図2に示すように、弾性波素子15は弾性表面波共振器である。圧電層14上にIDT(Interdigital Transducer)40と反射器42が形成されている。IDT40は、互いに対向する1対の櫛型電極40aを有する。櫛型電極40aは、複数の電極指40bと複数の電極指40bを接続するバスバー40cとを有する。反射器42は、IDT40の両側に設けられている。IDT40が圧電層14に弾性表面波を励振する。弾性波の波長は一対の櫛型電極40aの一方の櫛型電極40aの電極指40bのピッチにほぼ等しい。すなわち、弾性波の波長は一対の櫛型電極40aの電極指40bのピッチの2倍にほぼ等しい。IDT40および反射器42は例えばアルミニウム膜またはアルミニウム合金膜により形成される。圧電層14上にIDT40および反射器42を覆うように保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。
【0024】
[実施例1の製造方法]
図3(a)から図4(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。図3(a)に示すように、支持基板10に貫通孔21を形成する。なお、この時点では貫通孔21は支持基板10を貫通してなくてもよい。貫通孔21は例えばレーザ光を照射することにより形成する。貫通孔21内にビア配線22を形成する。貫通孔21内および支持基板10の上面に金属層を例えばめっき法を用い形成する。支持基板10上の金属層を例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い除去する。これにより、ビア配線22が貫通孔21内に埋め込まれる。
【0025】
図3(b)に示すように、支持基板10上にビア配線22を覆うように金属層18を形成する。金属層18の形成は、真空蒸着法およびリフトオフ法、またはスパッタリング法およびエッチング法を用いる。
【0026】
図3(c)に示すように、支持基板10上に絶縁層13を形成する。絶縁層13の形成には例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いる。絶縁層13上に圧電基板を接合する。絶縁層13上に絶縁層と圧電基板とを接合する接合層を形成してもよい。圧電基板の接合には例えば表面活性化法を用いる。圧電基板の上面を例えばCMP法を用い研磨することで所望の厚さの圧電層14を形成する。
【0027】
図4(a)に示すように、圧電層14上に金属膜16を形成することで弾性波素子15を形成する。金属膜16は、例えば真空蒸着法およびリフトオフ法、またはスパッタリング法およびエッチング法を用い形成する。圧電層14上に弾性波素子15を覆うように保護膜17を形成する。保護膜17は、例えばCVD法を用い形成する。
【0028】
図4(b)に示すように、平面視においてビア配線22と重なる領域26における圧電層14および絶縁層13を除去する。圧電層14および絶縁層13の除去には例えばドライエッチング法またはウェットエッチング法を用いる。例えば圧電層14がタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムを主成分とし、絶縁層13が酸化シリコン、窒化シリコンおよび/または酸化アルミニウムを主成分とする場合、フッ素系のガス(例えばSF、CF、CHF等)を用い圧電層14および絶縁層13をドライエッチングする。金属層18の材料としてフッ素系ガスによるエッチング速度が圧電層14および絶縁層13のエッチング速度より遅い材料を選択する。このような材料として、チタンまたはチタンタングステンがある。これにより、金属層18はほとんどエッチングされない。金属層18の一部の領域27は支持基板10と絶縁層13および圧電層14との間に挟まれる。
【0029】
図4(c)に示すように、金属層18上から圧電層14および絶縁層13の側面を介し圧電層14上にかけて配線20を形成する。配線20は、例えば密着層20aと密着層20a上のシード層(不図示)をスパッタリング法を用い形成し、シード層上に低抵抗層20bを電解めっき法を用い形成する。その後、支持基板10の裏面を研磨または研削する。支持基板10の下面にビア配線22と接続する端子24を形成する。これにより、図1の弾性波デバイスが製造される。
【0030】
[比較例1]
図5は、比較例1に係る弾性波デバイスの断面図である。図5に示すように比較例1では、平面視において金属層18は領域26と重なる。すなわち、金属層18は、支持基板10と圧電層14および絶縁層13との間に挟まれていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0031】
図6(a)から図7(b)は、比較例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。図6(a)に示すように、支持基板10内にビア配線22を形成する。図6(b)に示すように、支持基板10上に絶縁層13を形成する。絶縁層13上に圧電基板を接合し、圧電基板を薄膜化し圧電層14を形成する。
【0032】
図6(c)に示すように、領域26の圧電層14および絶縁層13を除去することで、ビア配線22が露出する。このとき、圧電層14および絶縁層13を除去するエッチングにより、ビア配線22の上面に凹凸50(例えばディッシング)が形成される。例えばビア配線22が低抵抗の銅、金または銀を主成分とするとき、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ビア配線22の上面に凹凸50が形成される。
【0033】
図7(a)に示すように、支持基板10上にビア配線22を覆うように金属層18を形成する。図7(b)に示すように、圧電層14上に弾性波素子15および保護膜17を形成する。その後、配線20を形成し、支持基板10の下面を研磨または研削し、支持基板10の下面に端子24を形成する。これにより、図5の比較例1に係る弾性波デバイスが製造される。
【0034】
図8(a)および図8(b)は、それぞれ比較例1および実施例1に係る弾性波デバイスの平面図である。図8(a)に示すように、比較例1では、平面視においてビア配線22と重なりかつビア配線22より大きく金属層18が設けられている。金属層18は例えばビア配線22と配線20内の低抵抗層20bとのバリア層である。金属層18は、ビア配線22の金属元素(例えば銅)と低抵抗層20bの金属元素(例えば金)が相互拡散または反応することを抑制する。配線20の密着層20aを厚くすることで、密着層20aをバリア層とすることも考えられる。しかし、密着層20aを厚くすると配線20の抵抗が高くなってしまう。そこで、配線20とは別に金属層18を設けている。貫通孔21は図6(a)のようにレーザ光等により形成する。このため、ビア配線22の平面形状はバラツキやすく、ビア配線22と金属層18との合わせ精度は高くない。このため、金属層18とビア配線22とのマージンを大きくする。圧電層14を除去する領域26は、金属層18より大きくする。金属層18とビア配線22とのマージンは、一例として7.5μmであり、例えば5μm~20μmである。比較例1では、領域26が金属層18より小さいと、図7(a)において、金属層18の一部が圧電層14上に形成され、他の配線等とショートする。
【0035】
図8(b)に示すように、実施例1では、金属層18の一部の領域27と圧電層14とが重なる。これは、実施例1では、図3(b)のように、絶縁層13および圧電層14を形成する前に金属層18を形成するためである。これにより領域26の大きさを比較例1に比べ矢印51分小さくできる。よって、弾性波デバイスの小型化が可能となる。なお、金属層18として、配線20とビア配線22とのバリア層として機能する例に説明したが、金属層18は他の理由によりビア配線22を覆ってもよい。
【0036】
実施例1によれば、圧電層14は、支持基板10との間に絶縁層13を介し金属層18の一部の領域27を挟み、支持基板10上に設けられ、平面視においてビア配線22と重ならない。これにより、図8(b)の矢印51のように、弾性波デバイスを小型化できる。また、金属層18により、支持基板10と圧電層14および絶縁層13との密着性を向上できる。なお、圧電層14は平面視においてビア配線22の一部と重なってもよい。
【0037】
比較例1の図6(c)のように、領域26における圧電層14および絶縁層13を除去するときに、ビア配線22の上面が露出すると、エッチングガスまたはエッチング液によりビア配線22の上面に凹凸50が形成される。これにより、図5のように、金属層18の上面および配線20の上面に凹凸が形成される。よって、ビア配線22と金属層18との接続性または信頼性が劣化する、および/または金属層18と配線20との接続性または信頼性が劣化することがある。実施例1では、図4(b)のように、領域26における圧電層14および絶縁層13を除去するときに、ビア配線22の上面が金属層18により保護され露出しない。よって、金属層18の上面および配線20の上面に凹凸が形成されることを抑制できる。よって、ビア配線22と金属層18との接続性または信頼性が向上する、および/または金属層18と配線20との接続性または信頼性が向上する。
【0038】
絶縁層13は、支持基板10と圧電層14との間に設けられ、金属層18の一部の領域27は支持基板10と絶縁層13との間に挟まれる。このように、絶縁層13が設けられていてもよい。
【0039】
配線20は、金属層18上から圧電層14上にかけて設けられ、ビア配線22と弾性波素子15とを電気的に接続する。配線20が平面視においてビア配線22の少なくとも一部に重なる場合、金属層18を設けることで、金属層18をビア配線22と配線20との間のバリア層として機能させることができる。
【0040】
ビア配線22は銅、銀または金を主成分とし、金属層18はチタンまたはチタンタングステンを主成分とする。これにより、図4(b)のように、圧電層14および絶縁層13を除去するときに、金属層18がエッチングされない。よって、比較例1の図8(b)のようなビア配線22の上面の凹凸50を抑制できる。
【0041】
さらに、配線20は、銀または金のうちビア配線22の主成分でない金属を主成分とする低抵抗層20bを備える。例えば、ビア配線22は銅を主成分とし、低抵抗層20bは金を主成分とする。このとき、金属層18は、低抵抗層20bとビア配線22とのバリア層として機能する。なお、ある層がある元素を主成分とするとは、ある層に主成分以外の意図的または意図しない不純物が含まれることを許容する。ある層におけるある元素の濃度は例えば50原子%以上であり、例えば80原子%以上である。チタンタングステンのように、2つの元素を主成分とする場合、チタンの濃度とタングステンの濃度の合計が例えば50原子%以上であり、例えば80原子%以上であり、チタンの濃度およびタングステンの濃度は各々例えば10%原子%以上である。
【0042】
[実施例1の変形例1]
図9は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイスに係る断面図である。図9に示すように、支持基板10の周縁の圧電層14および絶縁層13が除去されている。支持基板10の周縁上に環状封止層30が設けられている。環状封止層30は、金属層であり、例えば支持基板10側から厚さが20μmの銅層、厚さが2.5μmのニッケル層である。リッド31は、例えば厚さが30μmのコバール板である。リッド31の下面に金属層34が設けられている。金属層34は例えば金膜である。環状封止層30と金属層34とは半田層32により接続されている。半田層32は例えば厚さが4μmのAuSnである。環状封止層30とリッド31により弾性波素子15は空隙38に封止される。環状封止層30は金属層18aおよびビア配線22aを介し端子24aに電気的に接続される。
【0043】
実施例1の変形例1のように、支持基板10上に弾性波素子15を封止する環状封止層30およびリッド31等の封止部が設けられていてもよい。
【実施例0044】
実施例2は、フィルタおよびデュプレクサの例である。図10(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図である。図10(a)に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の直列共振器S1からS4が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の並列共振器P1からP3が並列に接続されている。実施例2のフィルタの共振器の少なくとも1つを実施例1およびその変形例の弾性波素子15で形成してもよい。直列共振器および並列共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタとしてラダー型フィルタを例に説明したが、フィルタは多重モード型フィルタでもよい。
【0045】
図10(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。図10(b)に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ52が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ54が接続されている。送信フィルタ52は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ54は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ52および受信フィルタ54の少なくとも一方を実施例2のフィルタとすることができる。
【0046】
マルチプレクサとしてデュプレクサを例に説明したがトリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0047】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 支持基板
11 境界層
12 温度補償膜
13 絶縁層
14 圧電層
15 弾性波素子
18 金属層
20 配線
20a 密着層
20b 低抵抗層
22 ビア配線
26、27 領域
52 送信フィルタ
54 受信フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10