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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013782
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】集学的陽子線療法の治療計画システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A61N5/10 H
A61N5/10 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021104502
(22)【出願日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】20183082
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519373626
【氏名又は名称】イオン・ビーム・アプリケーションズ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラバルベ,ルディ
(72)【発明者】
【氏名】ホトイウ,ルシアン
(72)【発明者】
【氏名】ピン,アルノー
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC05
4C082AE01
4C082AN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】陽子線療法の治療計画システムを提供する。
【解決手段】腫瘍細胞及び/又は健康な細胞を含む体積を、線量率CDR<1Gy/秒として規定される従来線量蓄積率で照射、線量率HDR≧1Gy/秒として規定される超高線量蓄積率で照射することを含むN回の分割を組み合わせることを含み、合計Dmhij=Dchij+αDhhijとして規定される等価健康分割線量(Dmhij)は、各分割j後、健康な細胞を保護するための最大等価健康分割線量(Dmh0ij)を超過せず、Dchijは、従来健康分割線量であり、及びDhhijは、高率健康分割線量(Dhhij)であり、DmhTi=ΣDmhij=Σ(Dchij+αDhhij)として規定される、N回の分割の終了時、健康な組織(3hi)の体積に送達され且つ積算される総等価健康線量(DmhTi)は、健康な細胞を保護するための最大等価健康線量(DmhT0i)を超過しない。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
健康な細胞によって取り囲まれ、及び/又は同様に健康な細胞を包囲する外周表面内に包囲された腫瘍細胞を含む標的組織(3t)を荷電粒子ビーム、好ましくは陽子ビームで治療するための計画を生成するための治療計画システム(TPS)であって、前記健康な細胞は、健康な組織(3hi)を形成し、添字iは、健康な組織(3hi)の種類を示し、前記計画は、照射のN回の分割からなり、ここで、N≧1であり、及び前記計画は、以下の基準、
(C1)前記N回の分割の終了時、前記標的組織(3t)の全ての腫瘍細胞は、各分割において受けられる標的分割線量(Dmtj)の合計に等しい総標的線量(DmtT)を受けている必要があり(すなわちDmtT=ΣDmtj)、前記総標的線量は、前記腫瘍細胞を死滅させるための最小標的線量(DmtT0)に少なくとも等しい、すなわちDmtT=ΣDmtj≧DmtT0であること、
(C2)前記N回の分割の終了時、前記外周表面を取り囲むか又はその中に包囲された前記健康な組織の全ての健康な細胞(3hi)は、
(C2.1)各分割jにおいて受けられる健康分割線量(Dhij)が、前記分割jの終了時、前記健康な細胞を保護するための所定の閾値を超過せず、及び
(C2.2)前記N回の分割の終了時に受けられ且つ積算される総健康線量(DhTi)が、N回の分割の治療の終了時、前記健康な細胞を保護するための所定の閾値を超過しない
ように、各分割jにおいて受けられる前記健康分割線量(Dhij)の合計と等しい前記総健康線量(DhTi)を受けている必要があること(すなわちDhTi=ΣDhij)
を満たすことを含み、
前記TPSは、腫瘍細胞及び/又は健康な細胞を含む体積を、線量率CDR<1Gy/秒として規定される従来線量蓄積率(CDR)で照射することを含むN回の分割を規定するように構成される、治療計画システム(TPS)において、
・前記N回の分割において、健康な細胞及び好ましくは腫瘍細胞を含む体積を、線量率HDR≧1Gy/秒として規定される超高線量蓄積率(HDR)で照射することも含めること、
・N回の分割の終了時、前記標的組織(3t)の体積に送達され且つ積算される前記総標的線量(DmtT)が、各分割において前記標的組織(3t)に送達される標的分割線量(Dmtj)の前記N回の分割jにわたる合計DmtT=ΣDmtj=Σ(Dctj+Dhtj)≧DmtT0として基準(C1)を満たすことを確実にすることであって、分割j中に送達される前記標的分割線量(Dmtj)は、
○前記分割j中に従来線量蓄積率(CDR)で前記体積に送達される従来標的線量(Dctj)と、
○前記分割j中に超高線量蓄積率(HDR)で前記体積に送達される高率標的線量(Dhtj)と
の合計として規定される、確実にすること
を行うように構成され、
・分割j中に健康な組織(3i)の健康な細胞の体積に送達される前記健康分割線量(Dhij)は、
○従来線量蓄積率(CDR)で前記体積に送達される従来健康分割線量(Dchij)と、
○超高線量蓄積率(HDR)で前記体積に送達される高率健康分割線量(Dhhij)と
の合計Dhij=Dchij+Dhhijと等しいことと、
前記TPSは、
・前記従来健康分割線量(Dchij)と、
・等価係数(α)及び前記高率健康分割線量(Dhhij)の積と
の合計Dmhij=(Dchij+αDhhij)として規定される等価健康分割線量(Dmhij)が、各分割j後、前記健康な細胞を保護するための最大等価健康分割線量(Dmh0ij)を超過せず(すなわちDmhij≦Dmh0ij)、且つ従って基準(C2.1)を満たすことを確実にするように構成され、前記最大等価健康分割線量(Dmh0ij)は、従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積される線量に対応し、且つ前記健康な細胞(3hi)の所定の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす最大健康従来分割線量(Dch0ij)以下である(すなわちDmh0ij≦Dch0ij)ことと、
前記治療計画システムは、前記等価健康分割線量(Dmhij)の前記N回の分割jにわたる合計DmhTi=ΣDmhij=Σ(Dchij+αDhhij)(ここで、α<1、好ましくはα>0.5である)として規定される、N回の分割の終了時、健康な組織(3hi)の体積に送達され且つ積算される総等価健康線量(DmhTi)が、
・前記N回の分割の終了時、前記健康な細胞を保護するための最大等価健康線量(DmhT0i)を超過せず(すなわちDmhTi≦DmhT0i)、且つ従って基準(C2.2)を満たすことを確実にするように構成され、前記最大等価健康線量(DmhT0i)は、従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積される線量に対応し、且つ前記健康な細胞(3hi)の所定の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす最大健康従来線量(DchT0i)よりも小さく(すなわちDmhT0i≦DchT0i)、
前記等価健康分割線量(Dmhij)及び前記総等価健康線量(DmhTi)は、前記健康分割線量(Dhij)及び前記総健康線量(DhTi)が、それぞれ従来線量蓄積率(CDR)のみで前記健康な細胞に蓄積された場合よりも低い健康な細胞(3hi)の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす等価線量であることとを特徴とする、治療計画システム(TPS)。
【請求項2】
分割j中、
・健康な組織(3i)の体積が従来線量蓄積率(CDR)のみで照射される場合、前記TPSは、前記分割における前記体積についてDmhij=Dchij≦Dch0ijを確立するように構成されるか、又は
・健康な組織(3i)の体積が超高線量率(HDR)のみで照射される場合、前記TPSは、前記分割における前記体積についてDmhij=αDhhij≦Dch0ij及びDhhij≦Dhh0ijを確立するように構成され、ここで、Dhh0ijは、前記健康な組織(3i)の前記健康な細胞を保護するために超過してはならない、単一の分割jにおいてHDRのみで送達される前記最大高率健康分割線量であるか、又は
・健康な組織(3i)の体積が従来線量蓄積率(CDR)及び超高線量蓄積率(HDR)の両方で照射される場合、前記TPSは、Dmhij=Dchij+αDhhij≦Dch0ij及びDhij=Dchij+Dhhij<Dhh0ijを確立するように構成される、請求項1に記載のTPS。
【請求項3】
前記等価係数αは、
・定数であり、好ましくは1/kと等しく、ここで、k=1.2~1.5(すなわちα=1/k、k=1.2~1.5)であり、好ましくはα<0.9、より好ましくはα<0.85、最も好ましくはα<0.7であるか、又は
・超高率(HDR)で蓄積された線量のHDR比率xH=Dhhij/(Dchij+Dhhij)に依存し、且つxH=1(すなわちHDRのみ)の1/kと、xH=0(すなわちCDRのみ)の1との間で変動するか
のいずれかである、請求項2に記載のTPS。
【請求項4】
・Dch0ij及びDchT0iが、医療従事者によって予め規定されるか又は文献において規定され、及び
・Dhh0i及びDhhT0iが、
○前記HDRの所与の値に関して、医療従事者によって予め規定されるか若しくは文献において規定されるか、又は
○前記HDRの所与の値に関して、それぞれDhh0ij=k Dch0i及びDhh0Ti=k DchT0iとして規定され、ここで、kは、1.2~1.5に含まれる(すなわちk=1.2~1.5)か、又は
○線量及び線量率の関数として、前記健康な組織の正常組織障害発生確率(NTCP)の予め確立された曲線によって規定され、Dhh0ij及びDhhT0iは、それぞれCDRのみで送達された前記線量Dch0ij及びDchT0iと同じNTCPを有するHDRのみで送達された前記線量として規定されるか
のいずれかである
ことを考慮するように構成される、請求項2又は3に記載のTPS。
【請求項5】
前記N回の分割中、前記外周表面の上流に位置する全ての健康な組織が従来線量蓄積率のみで照射されるように、治療のための前記計画を生成するように構成され、
・各分割jにおいて前記健康な組織に蓄積された前記健康分割線量(Dhij)は、前記最大健康従来分割線量(Dch0ij)を超過せず、及び
・前記N回の分割の終了時、前記健康な組織に蓄積された前記総健康線量(DhTi)は、前記最大健康従来線量(Dch0Ti)を超過せず、
健康な細胞は、前記TPSにおいて規定される荷電粒子ビームが、前記外周表面を透通する前に前記健康な細胞を横断するとき、前記外周表面の上流に位置している、請求項2~4のいずれか一項に記載の治療計画システム。
【請求項6】
前記外周表面の下流に位置する全ての健康な組織が超高線量蓄積率のみで照射されるように、治療のための前記計画を生成するように構成され、
・各分割jにおいて前記健康な組織に蓄積された前記健康分割線量(Dhij)は、前記最大高率健康分割線量(Dhh0ij)を超過せず、及び
・前記N回の分割の終了時、前記健康な組織に蓄積された前記総健康線量(DhTi)は、前記最大健康従来線量(Dch0Ti)を超過せず、
健康な細胞は、前記TPSにおいて規定される荷電粒子ビームが、前記外周表面から出た後にのみ前記健康な細胞を横断するとき、前記外周表面の下流に位置している、請求項2~5のいずれか一項に記載の治療計画システム。
【請求項7】
前記計画の前記分割の1回以上が、以下の実行される工程、
・各々が様々なビームレットによって形成される、第1の方向に対して平行な第1の荷電粒子ビーム又は荷電粒子ビームの群により、
○前記1回以上の分割の各々又は一部において、前記標的組織(3t)の前記腫瘍細胞の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%に従来標的分割線量(Dctj)が送達され、及び
○前記1回以上の分割の各々又は一部において、前記外周表面を取り囲み且つその中に包囲された前記健康な組織(3hi)に、前記最大健康従来分割線量(Dch0ij)よりも低い従来健康分割線量(Dchij)(すなわちDchij<Dch0ij)が送達される
ように、従来線量を従来線量蓄積率(CDR)で送達する第1の工程と、
・前記第1の工程後、前記第1の方向と同じ又は異なる第2の方向に対して平行な第2の荷電粒子ビーム又は荷電粒子ビームの群により、
○前記標的組織(3t)の前記腫瘍細胞の100%が従来及び/又は超高率(CDR、HDR)で分割線量を受けているように、前記1回以上の分割の各々又は一部において前記標的組織(3t)に高率標的分割線量(Dhtj)が送達され、及び
○全ての健康な細胞に従来及び超高率(CDR、HDR)の両方で送達される前記等価健康分割線量(Dmhij=Dchij+αDhhij)が前記最大従来健康分割線量(Dch0ij)を超過しない(すなわちDmhij≦Dch0ij)ように、前記1回以上の分割の各々又は一部において、前記外周表面を取り囲み且つその中にある前記健康な組織(3hi)に高率健康分割線量(Dhhij)が送達される
ように、超高線量蓄積率(HDR)で高率線量を送達する第2の工程と
を含むように、治療のための前記計画を生成するように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の治療計画システム。
【請求項8】
前記外周表面を取り囲むか又はその中にある任意の健康な組織(3hi)において、前記第2の荷電粒子ビーム又は荷電粒子ビームの群が前記第1の荷電粒子ビーム又は荷電粒子ビームの群と重ならないように、治療のための前記計画を生成するように構成される、請求項7に記載の治療計画システム。
【請求項9】
・前記標的組織(3t)の前記標的細胞の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%に従来標的分割線量(Dctj)が送達され、
・前記外周表面を取り囲み且つその中に包囲された前記健康な組織(3hi)に、前記最大健康従来分割線量(Dch0ij)よりも低い従来健康分割線量(Dchij)(すなわちDchij<Dch0ij)が送達され、
・前記標的組織(3t)の前記腫瘍細胞の100%が従来及び/又は超高率(CDR、HDR)で分割線量を受けているように、前記1回以上の分割の各々又は一部において前記標的組織(3t)に高率標的分割線量(Dhtj)が送達され、及び
・全ての健康な細胞に従来及び超高率(CDR、HDR)の両方で送達される前記等価健康分割線量(Dmhij=Dchij+αDhhij)が前記最大従来健康分割線量(Dch0ij)を超過しない(すなわちDmhij≦Dch0ij)ように、前記1回以上の分割の各々又は一部において、前記外周表面を取り囲み且つその中にある前記健康な組織(3hi)に高率健康分割線量(Dhhij)が送達される
ように、ビームレットによって形成される、第1の方向に対して平行な単一の荷電粒子ビーム(PB)又はビームの群を含むように、治療のための前記計画を生成するように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療計画システム。
【請求項10】
前記外周表面に含まれる不確定体積を規定し、且つ腫瘍細胞と健康な細胞との両方を異なる比率で混在して含む領域として規定される不確定領域(3z)を規定するように構成され、
・前記総健康線量(DhTi=DchTi+DhhTi)が、前記最小標的線量(DmtT0)よりも大きく、且つ前記最大高率健康線量(DhhT0i)よりも低く(すなわちDmtT0<DhTi<DhhT0i)、及び
・N回の分割の終了時に送達される総等価健康線量(DmhTi=DchTi+αDhhTi)が、前記不確定領域に存在する前記健康な組織(3hi)の前記最大健康従来線量(DchT0i)よりも低く(すなわちDmhTi<DchT0i)、及び
・各分割jにおいて送達される等価健康分割線量(Dmhij=Dchij+αDhhij)が、前記不確定領域に存在する前記健康な組織(3hi)の前記最大健康従来分割線量(DchT0ij)よりも低い(すなわちDmhTi<DchT0i)
ように、前記N回の分割の終了時に前記不確定体積の全域に総健康線量(DhTi)を送達するように構成される、請求項2~9のいずれか一項に記載の治療計画システム。
【請求項11】
健康な組織(3hi)を選択するために、前記N回の分割の終了時の前記最大健康従来線量(DchT0i)を、以下に規定されるように考慮するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の治療計画システム。
【表1】
【請求項12】
健康な組織(3hi)を前記選択するために、前記N回の分割の終了時の前記最大高率健康線量(DhhT0i)を、以下に規定されるように考慮するように構成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の治療計画システム。
【表2】
【請求項13】
前記荷電粒子ビームを、単一散乱モード若しくは重散乱モードにおいて又はペンシルビームスキャン(PBS)によって送達される陽子ビームとして考慮するように構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の治療計画システム。
【請求項14】
健康な細胞によって取り囲まれ、及び/又は同様に健康な細胞を包囲する外周表面内に包囲された腫瘍細胞を含む標的組織(3t)を荷電粒子ビーム、好ましくは陽子ビームで治療するための計画を生成するためのコンピュータ実装方法であって、前記健康な細胞は、健康な組織(3hi)を形成し、添字iは、健康な組織(3hi)の種類を示し、前記計画は、照射のN回の分割からなり、ここで、N≧1であり、及び前記計画は、以下の基準、
(C1)前記N回の分割の終了時、前記標的組織(3t)の全ての腫瘍細胞は、各分割において受けられる標的分割線量(Dmtj)の合計に等しい総標的線量(DmtT)を受けている必要があり(すなわちDmtT=ΣDmtj)、前記総標的線量は、前記腫瘍細胞を死滅させるための最小標的線量(DmtT0)に少なくとも等しい、すなわちDmtT=ΣDmtj≧DmtT0であること、
(C2)前記N回の分割の終了時、前記外周表面を取り囲むか又はその中に包囲された前記健康な組織の全ての健康な細胞(3hi)は、
(C2.1)各分割jにおいて受けられる健康分割線量(Dhij)が、前記分割jの終了時、前記健康な細胞を保護するための所定の閾値を超過せず、及び
(C2.2)前記N回の分割の終了時に受けられ且つ積算される総健康線量(DhTi)が、N回の分割の治療の終了時、前記健康な細胞を保護するための所定の閾値を超過しない
ように、各分割jにおいて受けられる前記健康分割線量(Dhij)の合計と等しい前記総健康線量(DhTi)を受けている必要があること(すなわちDhTi=ΣDhij)
を満たすことを含み、
前記方法は、以下の工程、
・前記N回の分割において、腫瘍細胞及び/又は健康な細胞を含む体積を、線量率CDR<1Gy/秒として規定される従来線量蓄積率(CDR)で照射することを含める工程
を含む、コンピュータ実装方法において、以下の工程、
・前記N回の分割において、健康な細胞及び好ましくは腫瘍細胞を含む体積を、線量率HDR≧1Gy/秒として規定される超高線量蓄積率(HDR)で照射することも含める工程
も含み、それにより、
・N回の分割の終了時に前記標的組織(3t)の体積に送達され且つ積算される前記総標的線量(DmtT)は、各分割において前記標的組織(3t)に送達される標的分割線量(Dmtj)の前記N回の分割jにわたる合計DmtT=ΣDmtj=Σ(Dctj+Dhtj)≧DmtT0として基準(C1)を満たすように規定され、分割j中に送達される前記標的分割線量(Dmtj)は、
○前記分割j中に従来線量蓄積率(CDR)で前記体積に送達される従来標的線量(Dctj)と、
○前記分割j中に超高線量蓄積率(HDR)で前記体積に送達される高率標的線量(Dhtj)と
の合計として規定され、
分割j中に健康な組織(3i)の健康な細胞の体積に送達される前記健康分割線量(Dhij)は、
○従来線量蓄積率(CDR)で前記体積に送達される従来健康分割線量(Dchij)と、
○超高線量蓄積率(HDR)で前記体積に送達される高率健康分割線量(Dhhij)と
の合計Dhij=Dchij+Dhhijと等しいことと、
前記方法は、
○前記従来健康分割線量(Dchij)と、
○等価係数(α)及び前記高率健康分割線量(Dhhij)の積と
の合計Dmhij=(Dchij+αDhhij)として規定される等価健康分割線量(Dmhij)が、各分割j後、前記健康な細胞を保護するための最大等価健康分割線量(Dmh0ij)を超過せず(すなわちDmhij≦Dmh0ij)、且つ従って基準(C2.1)を満たすことを確実にすることを含み、前記最大等価健康分割線量(Dmh0ij)は、従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積される線量に対応し、且つ前記健康な細胞(3hi)の所定の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす最大健康従来分割線量(Dch0ij)以下である(すなわちDmh0ij≦Dch0ij)ことと、
N回の分割が終了時、健康な組織(3hi)の体積に送達され且つ積算される総等価健康線量(DmhTi)は、前記等価健康分割線量(Dmhij)の前記N回の分割jにわたる合計DmhTi=ΣDmhij=Σ(Dchij+αDhhij)(ここで、α<1、好ましくはα>0.5である)として規定され、前記総等価健康線量(DmhTi)は、前記N回の分割の終了時、前記健康な細胞を保護するための最大等価健康線量(DmhT0i)を超過せず(すなわちDmhTi≦DmhT0i)、且つ従って基準(C2.2)を満たし、前記最大等価健康線量(DmhT0i)は、従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積される線量に対応し、且つ前記健康な細胞(3hi)の所定の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす最大健康従来線量(DchT0i)以下であり(すなわちDmhT0i≦DchT0i)、
前記等価健康分割線量(Dmhij)及び前記総等価健康線量(DmhTi)は、前記健康分割線量(Dhij)及び前記総健康線量(DhTi)が、それぞれ従来線量蓄積率(CDR)のみで前記健康な細胞に蓄積された場合よりも低い健康な細胞(3hi)の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす等価線量であることとを特徴とする、コンピュータ実装方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の治療計画システム(TPS)は、前記方法を実行するために使用される、請求項14に記載のコンピュータ実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、荷電粒子ビーム、好ましくは陽子ビームにより、腫瘍細胞を含む標的組織を治療するための計画を生成するための治療計画システム(TPS)に関する。この計画により、治療が終了した時点で腫瘍細胞に隣接する健康な細胞を保護しながら、腫瘍細胞を破壊又は死滅させることを確実にするための所定の臨床基準が満たされる。TPSは、本発明に特有の基準に従い、従来線量蓄積率(CDR)及び/又は超高線量蓄積率(HDR)でのセッション又は分割照射を組み合わせることによって計画を構築する。このように生成された計画により、腫瘍細胞に隣接する健康な細胞への損傷の割合を低減し、腫瘍細胞を効果的に治療することが確実なものとなる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
電子ビーム、陽子ビーム、重イオンビーム、X線、γ線等などの粒子又は波動による放射線療法は、腫瘍を患う患者を治療するために不可欠な手段となっている。このような放射線は、腫瘍細胞及び健康な細胞の両方に損傷を与えるため、健康な細胞、特に腫瘍細胞と隣接する健康な細胞を可能な限り温存しつつ、腫瘍細胞を効果的に破壊又は死滅させることを確実にする計画を規定することが癌治療における主要な課題となる。このような計画は、複数の、多くの場合に競合するパラメータを満たさなければならず、そのために極めて複雑である。そのため、治療計画システムは、一般に、コンピュータで生成される。
【0003】
治療計画が満たすべき第1の基準は、治療の終了時、腫瘍細胞を破壊/死滅させるのに有効な最小標的線量(DmtT0)以上の総標的線量(DmtT)が、標的を形成する腫瘍細胞に送達されていることを確実にすることである。
【0004】
治療計画によって満たされるべき第2の基準は、腫瘍細胞に隣接する健康な細胞の崩壊を最小限にすることである。腫瘍細胞を含む体積における線量蓄積がいかに正確であろうとも、この腫瘍細胞を含む体積に到達する放射線ビームは、ほとんど必然的に健康な細胞を通過し、そこにある、その体積に取り囲まれた又はその体積に含まれた健康な細胞にも線量を送達する。異なる放射線は、異なるパターンでそれらのエネルギーを蓄積させる。例えば、図1に図示されるように、X線は、表皮のレベルの近くでそれらのエネルギーの大部分が蓄積し、蓄積したエネルギーは、深度と共に減少する。従って、腫瘍細胞の標的体積の上流に位置する健康な組織は、標的体積の腫瘍細胞よりも高い線量を受ける。これに対して、陽子は、それらのビーム経路の末端近くでそれらのエネルギーの大部分を蓄積させ、いわゆるブラッグピークを形成する。深度が不揃いのそれぞれのブラッグピークを有する多数のビームレットを重ね合わせることにより、腫瘍細胞の体積の深度全体又はその体積の部分に及ぶ個々のブラッグピークの合計(SOBP)を規定することができる。従って、陽子ビームが通過した腫瘍細胞の体積の上流に位置する健康な細胞は、この体積内の腫瘍細胞よりも低い線量を受ける。結果的に、陽子線療法は、深在性腫瘍に高線量を蓄積させるのに適している。
【0005】
腫瘍細胞に隣接する健康な細胞の崩壊を最小限にするには、健康な細胞(i)が受ける総線量(DhTi)が最大許容線量を超えないようにしなければならない。健康な細胞が1セッションで(比較的)安全に受けることができる最大許容線量は、腫瘍細胞を破壊するのに必要となる最小標的線量(DmtT0)よりも実質的に低くなり得るため、総標的線量(DmtT)を1回以上の分割(又はセッション)で腫瘍細胞に送達することができる。
【0006】
従って、治療計画は、放射線の所定の総標的線量(DmtT)をN回のセッション又は分割jで全ての腫瘍細胞に送達することを含むことができ、ここで、N≧1であり、各分割jで標的分割線量(Dmtj)を腫瘍細胞の体積に送達する。N=1である場合、単一セッションで所定の総標的線量の全てが送達される。N>1である場合、所定の総標的線量は、全ての腫瘍細胞が、N回目のセッションの終了時に全ての腫瘍細胞を死滅させるのに必要とされる所定の総標的線量(DmtT)と等しい積算標的線量を受けるように、いくつかの分割回数で場合により異なる腫瘍細胞の体積に送達される。分割の回数Nは、健康な組織の性質に依存し、この性質によってそれらが安全に分割において受けることが可能となる最大分割線量が決定される。これは、使用される放射線の種類及び腫瘍細胞に対する健康な細胞の位置にも依存する。これらのパラメータは、腫瘍細胞を含む体積に標的分割線量(Dmtj)を蓄積させることを意図した放射線ビームが通過する、健康な細胞に蓄積する線量を少なくとも部分的に決めるためである。
【0007】
腫瘍細胞は、照射分割後に被った損傷から回復するのに、健康な細胞よりも長い回復時間を有することが観察されている。これにより、治療計画はいくつかの分割に及び、数日及び数週間の期間にわたって分散させることが可能となり、
(a)健康な細胞が、それらを保護するのに十分な低い分割線量を受け、
(b)腫瘍細胞が、最小標的線量(DmtT)と少なくとも等しい、N回の分割にわたって積算された総標的線量を受け、
(c)2つの連続した分割間における回復時間は、健康な細胞が実質的に回復することが可能となるのに十分であるが、腫瘍細胞に十分でないこと
を確実なものにする。治療計画により、治療の終了時、大部分の健康な細胞を温存しつつ、全ての腫瘍細胞が破壊されていることを確実にすることができる。
【0008】
健康な細胞に許容可能な最大分割線量及び最大総線量は、放射線に被ばくした際に所定の組織が障害を発症する確率を規定するものである、正常組織障害発生確率(NTCP)と関連して規定することができる。臓器を選択するためのNTCPの所与の値をもたらす放射線の境界線量の値は、文献において入手可能である。例えば、(非特許文献1)は、171ページの表3において、いくつかの臓器に関して最後の欄で規定されているように、治療症状の5年後に発症する50%のNTCPをもたらすいくつかの線量を列挙している。表3における体積1/3~3/3は、照射された対応する臓器の総体積の一部を示している。代わりに、医療従事者は、境界線量を決定するために、個人的な経験又は他の実験データを参照するなどの他のソースを有し得る。
【0009】
歴史的に、放射線療法による治療計画には、治療を受ける細胞に1Gy/秒未満の従来線量蓄積率(CDR)で放射線線量を送達することを含んでいた。稀な例外はあるが、現在の放射線療法の施設では、0.1Gy/秒近辺の線量率を送達しており、大部分の臨床プロトコルでは、積算して総標的線量(DmtT)に到達するような、2~15GyのN回の標的分割線量(Dmtj)を毎日送達することを伴うが、これは、照射野に位置する正常組織の許容限度を上回ることが多く、これにより腫瘍細胞と共に正常組織が損傷を受ける。近年、従来線量蓄積率(CDR)又は超高線量蓄積率(HDR)で蓄積される場合、同一線量(D)で健康な細胞に対して異なる効果を有するが、腫瘍細胞に対してそうでないことが観察されている。HDRは、1桁以上である場合があり、通常適用される従来線量蓄積率(CDR)よりも大きい。例えば、(特許文献1)は、放射線療法を必要とする患者を治療するための体外ビーム放射線療法に使用される治療計画を発生させるコンピュータ実装方法及びシステムを記載している。(特許文献1)に記載される治療計画は、超高線量蓄積率は言うまでもなく、線量蓄積率を考慮に入れていない。
【0010】
超高線量蓄積率(HDR)での電荷の蓄積は、FLASH放射線療法(=FLASH-RT)とも称される。HDRでの超高線量の蓄積は、CDRでの同一線量の従来の蓄積と比較して健康な組織を大幅に温存することができ、それと同時に、腫瘍細胞がCDRの蓄積よりもHDRの蓄積に対して同等又は更により良好に応答することが動物及び様々な臓器で実験的に立証されている。例えば、FLASH-RTは、抗腫瘍効果を変化させずに維持しながら、肺線維症、脳照射後に起こる記憶喪失及び小腸の壊死の発現率の劇的な減少をマウスにおいて誘発することが報告されている。このように特定の正常組織を温存することは、すでにFLASH-RTで治療を受けた大型動物及び皮膚リンパ腫患者において確認されている。しかしながら、多くの治療センターでは、ミリ秒若しくは秒のオーダーの時間内でHDRでの線量を送達することができる機材を配置するか、又は非常に限られた照射野のサイズでHDRのみで送達するように改変することが可能な機材を配置していない。
【0011】
既存の機材を使用して、可能な限り健康な組織を温存しながら腫瘍細胞を死滅させることが強化された、これまでにないより効果的な治療計画を生成するという課題が未解決のままとなっている。超高線量率(HDR)で蓄積された放射線線量に対して、腫瘍細胞と健康な細胞とで生体反応が異なるという発見により、治療計画の有効性を高めるための更なるツールがもたらされる。例えば、(特許文献2)は、癌患者に超高線量蓄積率で放射線を施し、且つ治療薬を投与することによる、腫瘍を治療するための治療計画を記載している。治療計画は、癌患者を治療するために、治療薬と超高線量蓄積率での放射線を組み合わせるとき、抗腫瘍活性に加えて正常組織の保護という二重の恩恵をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0136194号
【特許文献2】国際公開第2019018813号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Kehwar, J. Cancer Res. Ther., Sept. 2005, 1 (3), 168
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、荷電粒子ビーム、好ましくは陽子ビームにより、腫瘍細胞を含む標的組織を治療するための計画を生成するための治療計画システム(TPS)を提案するものである。計画は、N回の分割(N≧1)を組み合わせることを含み、各分割は、
・腫瘍細胞及び/又は健康な細胞を含む体積を、線量率CDR<1Gy/秒として規定される従来線量蓄積率(CDR)で照射すること、及び/又は
・腫瘍細胞及び/又は健康な細胞を含む体積を、線量率HDR≧1Gy/秒として規定される超高線量蓄積率(HDR)で照射すること
を含む。
【0015】
腫瘍細胞及び/又は健康な細胞にCDR及びHDRで蓄積される線量の選択を慎重に組み合わせることにより、腫瘍細胞を効率的に死滅させ、健康な組織を多く温存する最適な計画を達成することができる。本発明のこれら及び他の利点を以下の項で更に詳細に説明する。
【0016】
発明の概要
本発明の目的は、健康な組織を形成している健康な細胞によって取り囲まれ、及び/又は同様に健康な細胞を包囲する外周表面内に包囲された腫瘍細胞を含む標的組織を荷電粒子ビーム、好ましくは陽子ビームで治療するための計画を生成するための治療計画システム(TPS)によって達成される。計画は、照射のN回の分割からなり、ここで、N≧1であり、及び計画は、以下の基準を満たすことを含む。
(C1)N回の分割の終了時、標的組織(3t)の全ての腫瘍細胞は、各分割において受けられる標的分割線量(Dmtj)の合計に等しい総標的線量(DmtT)を受けている必要があり(すなわちDmtT=ΣDmtj)、総標的線量は、腫瘍細胞を死滅させるための最小標的線量(DmtT0)に少なくとも等しい、すなわちDmtT=ΣDmtj≧DmtT0であり、
(C2)N回の分割の終了時、外周表面を取り囲むか又はその中に包囲された健康な組織の全ての健康な細胞(3hi)は、
(C2.1)各分割jにおいて受けられる健康分割線量(Dhij)が、分割jの終了時、健康な細胞を保護するための所定の閾値を超過せず、及び
(C2.2)N回の分割の終了時に受けられ且つ積算される総健康線量(DhTi)が、N回の分割の治療の終了時、健康な細胞を保護するための所定の閾値を超過しない
ように、各分割jにおいて受けられる健康分割線量(Dhij)の合計と等しい総健康線量(DhTi)を受けている必要がある(すなわちDhTi=ΣDhij)。
【0017】
TPSは、腫瘍細胞及び/又は健康な細胞を含む体積を、線量率CDR<1Gy/秒として規定される従来線量蓄積率(CDR)で照射することを含むN回の分割を規定するように構成される。
【0018】
本発明によれば、治療するための計画は、健康な細胞及び好ましくは同様に腫瘍細胞を含む体積を、線量率HDR≧1Gy/秒として規定される超高線量蓄積率(HDR)で照射することも含めるように構成される。
【0019】
N回の分割の終了時、標的組織の体積に送達され且つ積算される総標的線量(DmtT)は、各分割で標的組織に送達される標的分割線量(Dmtj)のN回の分割jにわたる合計DmtT=ΣDmtj=Σ(Dctj+Dhtj)≧DmtT0として基準(C1)を満たすように規定され、ここで、分割j中に送達される標的分割線量(Dmtj)は、
・分割j中に従来線量蓄積率(CDR)でその体積に送達される従来標的線量(Dctj)と、
・分割j中に超高線量蓄積率(HDR)でその体積に送達される高率標的線量(Dhtj)と
の合計として規定される。
【0020】
分割j中に健康な組織(3i)の健康な細胞の体積に送達される健康分割線量(Dhij)は、
・従来線量蓄積率(CDR)でその体積に送達される従来健康分割線量(Dchij)と、
・超高線量蓄積率(HDR)でその体積に送達される高率健康分割線量(Dhhij)と
の合計Dhij=Dchij+Dhhijと等しい。
【0021】
本発明の趣旨は、
・従来健康分割線量(Dchij)と、
・等価係数(α)及び高率健康分割線量(Dhhij)の積と
の合計Dmhij=(Dchij+αDhhij)としての等価健康分割線量(Dmhij)が、各分割j後、健康な細胞を保護するための最大等価健康分割線量(Dmh0ij)を超過せず(すなわちDmhij≦Dmh0ij)、且つ従って基準(C2.1)を満たすことを確実にするようにTPSが構成されることであり、ここで、最大等価健康分割線量(Dmh0ij)は、従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積された線量に対応し、且つ健康な細胞に所定の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす最大健康従来分割線量(Dch0ij)以下である(すなわちDmh0ij≦Dch0ij)。
【0022】
本発明の趣旨は、N回の分割の終了時、健康な組織の体積に送達され且つ積算される総等価健康線量(DmhTi)が、等価健康分割線量(Dmhij)のN回の分割jにわたる合計DmhTi=ΣDmhij=Σ(Dchij+αDhhij)(ここで、α≦1、好ましくはα>0.5である)として規定されることを確実にするようにTPSが構成されることでもあり、ここで、総等価健康線量(DmhTi)は、N回の分割の終了時、健康な細胞を保護するための最大等価健康線量(DmhT0i)を超過せず(すなわちDmhTi≦DmhT0i)、且つ従って基準(C2.2)を満たし、最大等価健康線量(DmhT0i)は、従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積された線量に対応し、且つ健康な細胞(3hi)に所定の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす最大健康従来線量(DchT0i)以下である(すなわちDmhT0i≦DchT0i)。
【0023】
等価健康分割線量(Dmhij)及び総等価健康線量(DmhTi)は、あたかも健康分割線量(Dhij)及び総健康線量(DhTi)が、それぞれ従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積されているように、健康な細胞に同等又はより低い傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす等価線量として規定される。
【0024】
本発明の一実施形態では、分割j中、
・健康な組織の体積が従来線量蓄積率(CDR)のみで照射された場合、その分割におけるその体積に対してDmhij=Dchij≦Dch0ijとなるか、又は
・健康な組織の体積が超高線量率(HDR)のみで照射された場合、その分割におけるその体積に対してDmhij=αDhhij≦Dch0ij及びDhhij≦Dhh0ijとなり、ここで、Dhh0ijは、健康な組織(3i)の健康な細胞を保護するために超過してはならない、単一の分割jにおいてHDRのみで送達される最大高率健康分割線量であるか、又は
・健康な組織の体積が従来線量蓄積率(CDR)及び超高線量蓄積率(HDR)の両方で照射された場合、Dmhij=Dchij+αDhhij≦Dch0ij及びDhij=Dchij+Dhhij<Dhh0ijとなる。
【0025】
等価係数αは、必ずしも定数である必要はない。例えば、αは、
・定数であり、好ましくは1/kと等しく、ここで、k=1.2~1.5(すなわちα=1/k、k=1.2~1.5)であり、好ましくはα<0.9、より好ましくはα<0.85、最も好ましくはα<0.7であるか、又は
・超高率(HDR)で蓄積された線量のHDR比率、xH=Dhhij/(Dchij+Dhhij)に依存し、xH=1(すなわちHDRのみ)の1/kと、xH=0(すなわちCDRのみ)の1との間で変動するか
のいずれかであり得る。
【0026】
健康な細胞を保護するために超過してはならない境界線量Dch0ij及びDhh0ij並びにDchT0i及びDhhT0iの値は、異なる方法で決定することができる。Dch0ij及びDchT0iは、医療従事者(臨床医)によって予め規定することができるか又は文献において規定することができる。他方で、Dhh0i及びDhhT0iは、
・HDRの所与の値について、医療従事者によって予め規定されるか若しくは文献において規定されるか、又は
・HDRの所与の値について、それぞれDhh0ij=k Dch0ij及びDhh0Ti=k DchT0iとして規定され、ここで、kは、1.2~1.5に含まれる(すなわちk=1.2~1.5)か、又は
・線量及び線量率の関数として、健康な組織の正常組織障害発生確率(NTCP)の予め確立された曲線によって規定され、ここで、Dhh0ij及びDhhT0iは、それぞれCDRのみで送達された線量Dch0ij及びDchT0iと同じNTCPを有するHDRのみで送達された線量として規定されるか
のいずれかであり得る。
【0027】
例えば、N回の分割の終了時の最大健康従来線量(DchT0i)及び最大健康高率線量(DhhT0i)は、健康な組織を選択するために、以下のように規定することができる。
【0028】
【表1】
【0029】
一実施形態では、N回の分割中、外周表面の上流に位置する全ての健康な組織が従来線量蓄積率のみで照射され、ここで、
・各分割jにおいて、前記健康な組織に蓄積された健康分割線量(Dhij)(従来健康分割線量(Dchij)と等しい)が最大健康従来分割線量(Dch0ij)を超過せず、
・N回の分割の終了時、前記健康な組織に蓄積された総健康線量(DhTi)(従来健康線量(Dchi)と等しい)が最大健康従来線量(Dch0Ti)を超過せず、
TPSにおいて規定される荷電粒子ビームが、外周表面を透通する前に前記健康な細胞を横断するとき、健康な細胞は、外周表面の上流に位置している。
【0030】
一実施形態では、外周表面の下流に位置する全ての健康な組織が超高線量蓄積率のみで照射され、ここで、
・各分割jにおいて前記健康な組織に蓄積された健康分割線量(Dhij)(高率健康分割線量(Dhhij)と等しい)が最大高率健康分割線量(Dhh0ij)を超過せず、
・N回の分割の終了時、前記健康な組織に蓄積された総健康線量(DhTi)(高率健康線量(DhhTi)と等しい)が最大健康従来線量(Dch0Ti)を超過せず、
荷電粒子ビームが、外周表面から出た後にのみ前記健康な細胞を横断するとき、健康な細胞は、外周表面の下流に位置している。
【0031】
好ましい実施形態では、計画の分割のうちの1つ以上は、任意の順番で実行される以下の工程、
・各々が様々なビームレットによって形成される、第1の方向に対して平行な第1の荷電粒子ビーム又は荷電粒子ビームの群により、
○1回以上の分割の各々又は一部において、標的組織(3t)の腫瘍細胞の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%に従来標的分割線量(Dctj)が送達され、
○1回以上の分割の各々又は一部において、外周表面を取り囲み且つその中に包囲された健康な組織(3hi)に、最大健康従来分割線量(Dch0ij)よりも低い従来健康分割線量(Dchij)(すなわちDchij<Dch0ij)が送達される
ように、従来線量を従来線量蓄積率(CDR)で送達する第1の工程と、
・第1の工程後、第1の方向と同じ又は異なる第2の方向に対して平行な第2の荷電粒子ビーム又は荷電粒子ビームの群により、
○標的組織の腫瘍細胞の100%が従来の率(CDR)及び/又は超高率(HDR)で分割線量を受けているように、1回以上の分割の各々又は一部において標的組織に高率標的分割線量(Dhtj)が送達され、
○全ての健康な細胞に従来の率(CDR)及び超高率(HDR)の両方で送達される等価健康分割線量(Dmhij=Dchij+αDhhij)が最大従来健康分割線量(Dch0ij)を超過しない(すなわちDmhij≦Dch0ij)ように、1回以上の分割の各々又は一部において、外周表面を取り囲み且つその中にある健康な組織に高率健康分割線量(Dhhij)が送達される
ように、超高線量蓄積率(HDR)で高率線量を送達する第2の工程と
を含む。
【0032】
第2の荷電粒子ビーム又は荷電粒子ビームの群は、外周表面を取り囲むか又はその中にある任意の健康な組織において第1の荷電粒子ビーム又は荷電粒子ビームの群と重ならないように選択され得る。
【0033】
代替的な好ましい実施形態では、計画は、
・標的組織の腫瘍細胞の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%に従来標的分割線量(Dctj)が送達され、
・外周表面を取り囲み且つその中に包囲された健康な組織(3hi)に、最大健康従来分割線量(Dch0ij)よりも低い従来健康分割線量(Dchij)(すなわちDchij<Dch0ij)が送達され、
・標的組織の腫瘍細胞の100%が従来の率(CDR)及び/又は超高率(HDR)で分割線量を受けているように、1回以上の分割の各々又は一部において標的組織に高率標的分割線量(Dhtj)が送達され、
・全ての健康な細胞に従来の率(CDR)と超高率(HDR)との両方で送達される等価健康分割線量(Dmhij=Dchij+αDhhij)が最大従来健康分割線量(Dch0ij)を超過しない(すなわちDmhij≦Dch0ij)ように、1回以上の分割の各々又は一部において、外周表面を取り囲み且つその中にある健康な組織に高率健康分割線量(Dhhij)が送達される
ような、ビームレットによって形成される、第1の方向に対して平行な単一の荷電粒子ビーム(PB)又はビーム群を含む。
【0034】
外周表面は、不確定領域を規定し、異なる比率で混在する腫瘍細胞と健康な細胞との両方を含む領域として規定された不確定体積を含み得る。この場合、TPSは、
・総健康線量(DhTi=DchTi+DhhTi)が最小標的線量(DmtT0)よりも大きく、且つ最大高率健康線量(DhhT0i)よりも低く(すなわちDmtT0<DhTi<DhhT0i)、
・N回の分割の終了時に送達される総等価健康線量(DmhTi=DchTi+αDhhTi)が、不確定領域に存在する健康な組織(3hi)の最大健康従来線量(DchT0i)よりも低く(すなわちDmhTi<DchT0i)、
・各分割jにおいて送達される等価健康分割線量(Dmhij=Dchij+αDhhij)が、不確定領域に存在する健康な組織(3hi)の最大健康従来分割線量(DchT0ij)よりも低い(すなわちDmhTi<DchT0i)
ように、N回の分割の終了時に不確定体積の全域に総健康線量(DhTi)を送達することを含み得る。
【0035】
本発明のTPSは、単一散乱モード若しくは重散乱モードにおいて又はペンシルビームスキャン(PBS)によって送達され得る陽子ビームを荷電粒子ビームとして規定することができる。
【0036】
本発明は、健康な組織(3hi)を形成し、添字iが健康な組織(3hi)の種類を示す、健康な細胞によって取り囲まれ、及び/又は同様に健康な細胞を包囲する外周表面内に包囲された腫瘍細胞を含む標的組織(3t)を荷電粒子ビーム、好ましくは陽子ビームで治療するための計画を生成するための、好ましくは上記で規定された治療計画システム(TPS)を使用することによって実装されたコンピュータ実装方法にも関する。計画は、照射のN回の分割からなり、ここで、N≧1であり、及び計画は、以下の基準を満たすことを含む。
(C1)N回の分割の終了時、標的組織(3t)の全ての腫瘍細胞は、各分割において受けられる標的分割線量(Dmtj)の合計に等しい総標的線量(DmtT)を受けている必要があり(すなわちDmtT=ΣDmtj)、総標的線量は、腫瘍細胞を死滅させるための最小標的線量(DmtT0)に少なくとも等しい、すなわちDmtT=ΣDmtj≧DmtT0であり、
(C2)N回の分割の終了時、外周表面を取り囲むか又はその中に包囲された健康な組織の全ての健康な細胞(3hi)は、
(C2.1)各分割jにおいて受けられる健康分割線量(Dhij)が、分割割jの終了時、健康な細胞を保護するための所定の閾値を超過せず、
(C2.2)N回の分割の終了時に受けられ且つ積算される総健康線量(DhTi)が、N回の分割の治療の終了時、健康な細胞を保護するための所定の閾値を超過しない
ように、各分割jにおいて受けられる健康分割線量(Dhij)の合計と等しい総健康線量(DhTi)を受けている必要がある(すなわちDhTi=ΣDhij)。
【0037】
方法は、以下の工程を含む。
・N回の分割において、腫瘍細胞及び/又は健康な細胞を含む体積を、線量率CDR<1Gy/秒として規定される従来線量蓄積率(CDR)で照射することを含み、
・N回の分割において、健康な細胞及び好ましくは腫瘍細胞を含む体積を、線量率HDR≧1Gy/秒として規定される超高線量蓄積率(HDR)で照射することも含み、それにより、
・N回の分割の終了時、標的組織(3t)の体積に送達され且つ積算される総標的線量(DmtT)は、各分割において標的組織(3t)に送達される標的分割線量(Dmtj)のN回の分割jにわたる合計DmtT=ΣDmtj=Σ(Dctj+Dhtj)≧DmtT0として基準(C1)を満たすように規定され、ここで、分割j中に送達される標的分割線量(Dmtj)は、
○分割j中に従来線量蓄積率(CDR)でその体積に送達される従来標的線量(Dctj)と、
○分割j中に超高線量蓄積率(HDR)でその体積に送達される高率標的線量(Dhtj)と
の合計として規定される。
【0038】
分割j中に健康な組織(3i)の健康な細胞の体積に送達される健康分割線量(Dhij)は、
○従来線量蓄積率(CDR)でその体積に送達される従来健康分割線量(Dchij)と、
○超高線量蓄積率(HDR)でその体積に送達される高率健康分割線量(Dhhij)と
の合計Dhij=Dchij+Dhhijと等しい。
【0039】
方法は、
○従来健康分割線量(Dchij)と、
○等価係数(α)及び高率健康分割線量(Dhhij)の積と
の合計Dmhij=(Dchij+αDhhij)として規定される等価健康分割線量(Dmhij)が、各分割j後、健康な細胞を保護するための最大等価健康分割線量(Dmh0ij)を超過せず(すなわちDmhij≦Dmh0ij)、且つ従って基準(C2.1)を満たすことを確実にすることを含み、ここで、最大等価健康分割線量(Dmh0ij)は、従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積された線量に対応し、且つ健康な細胞(3hi)に所定の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす最大健康従来分割線量(Dch0ij)以下である(すなわちDmh0ij≦Dch0ij)。
【0040】
方法は、N回の分割の終了時、健康な組織(3hi)の体積に送達され且つ積算される総等価健康線量(DmhTi)が、等価健康分割線量(Dmhij)のN回の分割jにわたる合計DmhTi=ΣDmhij=Σ(Dchij+αDhhij)(ここで、α<1、好ましくはα>0.5である)として規定されることを確実にすることも含み、ここで、総等価健康線量(DmhTi)は、N回の分割の終了時、健康な細胞を保護するための最大等価健康線量(DmhT0i)を超過せず(すなわちDmhTi≦DmhT0i)、且つ従って基準(C2.2)を満たし、最大等価健康線量(DmhT0i)は、従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積された線量に対応し、且つ健康な細胞(3hi)に所定の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす最大健康従来線量(DchT0i)以下である(すなわちDmhT0i≦DchT0i)。
【0041】
等価健康分割線量(Dmhij)及び総等価健康線量(DmhTi)は、健康分割線量(Dhij)及び総健康線量(DhTi)がそれぞれ従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積されている場合よりも低い健康な細胞(3hi)の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす等価線量である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1a】合計すると腫瘍(3)の深度全体にまたがる個々のブラッグピークの合計(SOBP)を形成する、X線(XR)及び陽子ビームレットの透過深度(z)の関数として組織へのエネルギー蓄積を示す。
図1b】腫瘍細胞を含む標的細胞を通過する、陽子ビーム方向に対して平行な断面を示す。
図1c】対応するSOBPを示す。
図2a】健康な細胞(3hi)に取り囲まれ、及び/又は同様に健康な細胞(3hi)を包囲する外周表面内に包囲された腫瘍細胞を含む標的組織(3t)を図示する。
図2b図2(a)の標的組織の、荷電粒子ビームに対して平行な平面(x、z)に沿った断面を図示する。
図3】健康な組織(3hi)を参照したN回の分割に分割された治療計画の一部を示し、各分割には、第N回の分割を終了した時点で総等価健康線量(DmhTi)に積算される従来の率(CDR)及び/又は超高率(HDR)での所定の線量(Dhij)の送達が含まれる。
図4a】健康な組織に蓄積された線量(D)及び線量蓄積率(DR)の関数としてNTCP等値線を示す。
図4b】CDR(白丸)及びHDR(黒丸)において、健康な組織に蓄積される線量(D)の関数としてNTCPを示す。
図4c】等価健康分割線量(Dmhij=Dchij+αDhhij)の原理を示す。
図5a】CDR(=「Dhhij=0(CDR)」)のみ、HDR(=「Dchij=0(HDR)」)のみ並びに線形(=「(1)」)及び非線形(=「(4)」)の、CDRで蓄積される線量Dch1ijとHDRで蓄積される残りの線量とを混合させた蓄積モードを想定した線量蓄積について、Dhij(=Dchij+Dhhij)の関数としてDmhij(=Dchij+αDhhij)を図示する。
図5b図5(c)に示されたα=f(xH)の4つの選択肢に対し、xHの関数としてDh0ijを示す。
図6】浸透深度(z)の関数として線量(D)蓄積プロファイル及び同一の浸透深度の関数として線量蓄積率(DR)を含む治療計画を示す。
図7】等価健康線量(DmhTi=DchTi+αDhhTi)の原理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
本発明は、荷電粒子ビームで標的組織(3t)を治療するための計画を生成するための治療計画システムに関する。標的組織の例は、健康な細胞によって取り囲まれ、及び/又は同様に健康な細胞を包囲する外周表面内に包囲された腫瘍細胞を含む図1(b)、2(a)及び2(b)に図示され、ここで、健康な細胞は健康な組織(3hi)を形成し、添字iは健康な組織(3hi)の種類を示す。計画すべき多パラメータの治療が複雑であるため、TPSは、所定の基準を満たすのに必要とされるビーム又はビームレットの性質及び数を最適化するように構成されるコンピュータ又はプロセッサを一般に備える。ビームの性質としては、荷電粒子の種類、ビームの強度、蓄積される線量、線量蓄積率、ビームの方向、分割の数及び頻度等が挙げられる。線量蓄積プロファイルは、図1(a)及び1(c)に図示されるようにブラッグピークを含むものであるため、荷電粒子は陽子であることが好ましい。荷電粒子ビームは、単一散乱モード若しくは重散乱モードにおいて又はペンシルビームスキャン(PBS)によって送達することができる。図3に示されるように、計画は、照射のN回の分割からなり、ここで、N≧1であり、TPSは、以下の基準を満たすようなビーム照射の性質及び数を最適化する必要がある。
(C1)標的組織(3t)の全ての腫瘍細胞は、N回の分割の終了時、各分割において受けられる標的分割線量(Dmtj)の合計に等しい総標的線量(DmtT)を受けている必要があり(すなわちDmtT=ΣDmtj)、総標的線量は、腫瘍細胞を死滅させるための最小標的線量(DmtT0)に少なくとも等しい、すなわちDmtT=ΣDmtj≧DmtT0。
(C2)外周表面を取り囲むか又はその中に包囲された健康な組織の全ての健康な細胞(3hi)は、
(C2.1)各分割jにおいて受けられる健康分割線量(Dhij)は、分割jの終了時、健康な細胞を保護するための所定の閾値を超過せず、
(C2.2)N回の分割の終了時に受けられ且つ積算される総健康線量(DhTi)は、N回の分割の治療が終了した時点で、健康な細胞を保護するための所定の閾値を超過しない
ように、N回の分割の終了時、各分割jにおいて受けられる健康分割線量(Dhij)の合計と等しい総健康線量(DhTi)を受けている必要がある(すなわちDhTi=ΣDhij)。
【0044】
現在、FLASH効果は当業者に広く認知されているが、FLASH効果の根底をなす化学的メカニズムは、まだはっきりと理解されていない。いくつかの異なる理論が展開されている。例えば、超高線量蓄積率のFLASH-RTは、血流を循環する細胞の死滅を著しく低減させることが提唱されており、CDRとHDRとが区別される閾値の線量蓄積率が、1サイクルの血液循環時間に依存する可能性があることを示唆している。人間の場合、FLASH効果が現れるための閾値の線量蓄積率は約1Gy/秒であると報告されている。また、第一級炭素中心ラジカルにOが付加することによって形成される有機ペルオキシルラジカルROO・が、放射線によって誘発される傷害に重要な役割を果たす可能性があることも提唱されている。別の例では、放射線によって誘発された酸素欠乏と、毛細血管からの酸素の再拡散との間の競合により、FLASH効果を説明することができることも報告されている。本発明は、これらの又は他の理論のいずれにも束縛されず、FLASH効果が実際に存在するという実験的証拠に基づいている。本発明は、以下の観察結果に基づいて開発された。
(O1)腫瘍細胞は、線量蓄積率(DR)とは無関係に同様に死滅する。
(O2)超過してはならない健康な組織(3hi)の所定の正常組織障害発生確率(NTCP0i)は、図4(a)~4(c)に示されるように、超高線量蓄積率(HDR)よりも従来線量蓄積率(CDR)で蓄積されるような低い線量で到達する。
(O3)標的組織(3t)の腫瘍細胞は、線量蓄積率にかかわらず、同一の放射線線量に暴露された健康な組織よりも回復時間が長い。
【0045】
前述の基準を満たすために、且つ図3に図示されるように、本発明のTPSは、
・腫瘍細胞及び/又は健康な細胞を含む体積を、CDR<1Gy/秒の線量率として規定される従来線量蓄積率(CDR)で照射すること、及び/又は
・腫瘍細胞及び/又は健康な細胞を含む体積を、HDR≧1Gy/秒の線量率として規定される超高線量蓄積率(HDR)で照射すること
を含むN回の分割を組み合わせる。
【0046】
上記の観察結果(O1)に基づき、N回の分割の終了時、標的組織(3t)の体積に送達され且つ積算される総標的線量(DmtT)は、各分割で標的組織(3t)に送達される総標的分割線量(Dmtj)のN回の分割jにわたる合計として基準(C1)を満たすように規定される。分割j中に送達される標的分割線量(Dmtj)は、
・分割j中に従来線量蓄積率(CDR)でその体積に送達される従来標的線量(Dctj)と、
・分割j中に超高線量蓄積率(HDR)でその体積に送達される高率標的線量(Dhtj)と
の合計として規定される。これは、次のようにDmtT=ΣDmtj=Σ(Dctj+Dhtj)≧DmtT0と表すことができ、これによって基準(C1)が満たされる。
【0047】
分割j中に健康な組織(3i)の健康な細胞の体積に送達される健康分割線量(Dhij)は、
○従来線量蓄積率(CDR)でその体積に送達される従来健康分割線量(Dchij)と、
○超高線量蓄積率(HDR)でその体積に送達される高率健康分割線量(Dhhij)と
の合計Dhij=Dchij+Dhhijと等しい。
【0048】
超過してはならない健康な細胞の所与のNTCP0iが、HDRよりもCDRで蓄積される低い従来健康線量(Dchij)で到達されるという上記の観察結果(O2)に基づき、等価健康分割線量(Dmhij)を、
○従来健康分割線量(Dchij)と、
○等価係数(α)及び高率健康分割線量(Dhhij)の積と
の合計Dmhij=Dchij+αDhhijとして規定される。
【0049】
等価健康分割線量(Dmhij)は、あたかも健康分割線量(Dhij)が従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積されているような、健康な細胞(3hi)に同等又はより低い傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす等価線量として規定される。この規定は、上記の観察結果(O2)の直接的な結果である。
【0050】
上記の基準(C2.1)を満たすために、等価健康分割線量(Dmhij)は、各分割j後、健康な細胞を保護するための最大等価健康分割線量(Dmh0ij)を超過しないようにしなければならない(すなわちDmhij≦Dmh0ij)。最大等価健康分割線量(Dmh0ij)は、従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積された線量に対応し、且つ健康な細胞(3hi)に所定の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす最大従来健康分割線量(Dch0ij)以下である(すなわちDmh0ij≦Dch0ij)。Dmh0ijは、特定の健康な組織(3hi)の等価係数αが十分な確実性又は精度で規定されない場合における安全マージンを許容するために、Dch0ijよりも小さくなり得る。
【0051】
上記基準(C2.2)を満たすために、N回の分割の終了時、健康な組織(3hi)の体積に送達され且つ積算される総等価健康線量(DmhTi)が、等価健康分割線量(Dmhij)のN回の分割jにわたる合計、DmhTi=ΣDmhij=Σ(Dchij+αDhhij)(α≦1、好ましくはα>0.5)として規定される。総等価健康線量(DmhTi)は、N回の分割の終了時、健康な細胞を保護するための最大等価健康線量(DmhT0i)を超過しないようにしなければならない(すなわちDmhTi≦DmhT0i)。
【0052】
総等価健康線量(DmhTi)は、あたかも総健康線量(DhTi)が従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積されているような、健康な細胞(3hi)に同等又はより低い傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす等価線量として規定される。この規定は、上記の観察結果(O2)の直接的な結果である。最大等価健康線量(DmhT0i)は、従来線量蓄積率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積された線量に対応し、且つ健康な細胞(3hi)に所定の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす最大従来健康線量(DchT0i)以下である(すなわちDmhT0i≦DchT0i)。ここでもまた、DmhT0iは、特定の健康な組織(3hi)の等価係数αが十分な確実性又は精度で規定されない場合における安全マージンを許容するために、DchT0iよりも小さくなり得る。
【0053】
観察結果(O2):健康線量Dhij(NTCP0i)は線量蓄積率(DR)の関数である
図4(a)~4(c)は、分割jの治療の間に所与の健康な組織(3hi)に対して所与のNTCPに到達するのに必要とされる健康線量(Dhij)が、線量蓄積率(DR)に依存することをグラフによって図示している。「健康線量」という表現は、「健康な細胞に送達される線量」を短縮したものとして本明細書で使用されており、細胞の健康に有益な線量であるものとして理解すべきでないことに留意されたい。基準(C2.1)及び(C2.2)によれば、「健康線量」とは、荷電粒子のビームが横断する健康な細胞への損傷を可能な限り制限すると同時に、標的組織(3t)の腫瘍細胞を同一のビームによって死滅させるようなものでなければならない。
【0054】
図4(a)は、10%~100%の確率を含むNTPC値に対して、健康線量(Dhij)の関数として線量蓄積率(DR)をプロットしたNTCP等値線を示している。分割jの治療の間に超過してはならないNTCPの値NTCP0iが50%の傷害発生確率であると仮定すると、網掛け領域で示された(0.5)と標記されたNTCP等値線の左側の線量を、対応する線量蓄積率で蓄積させることができる。NTCP等値線=50%を規定する線量(D)は、線量が蓄積される際の比率に強く依存することが分かる。
【0055】
図4(b)は、図4(a)の直接の結果であって、図4(a)の縦軸DR=1Gy/秒に整列した白いドットが、図4(b)では前記線量率で所与のNTCPに到達するのに必要とされる線量(Dhij)を示し、白いドットのシグモイド曲線が得られたことが記録されている。図4(a)の縦軸DR=10Gy/秒に黒いドットを整列させて同様の作業を繰り返すことにより、図4(b)で黒いドットのシグモイド曲線が得られたことが記録されている。図4(a)のようにNTCP0i=50%とすると、これら2つの蓄積率で健康な組織(3hi)の健康な細胞に蓄積され得る線量を示す、対応する網掛け領域が得られる。
【0056】
図4(a)及び4(b)のNTCP等値線により、各線量の全体が対応する線量蓄積率(DR)で送達される場合、所与のNTCPに到達するのに必要とされる線量(Dhij)が規定される。換言すれば、本発明の一実施形態では、分割j中に健康な組織(3hi)の体積が、
・従来線量蓄積率(CDR)のみで照射された場合、等価健康分割線量(Dmhij)は、従来健康分割線量(Dchij)と等しい(すなわちDmhij=Dchij)が、その分割jにおけるその体積に対して最大従来健康分割線量(Dch0ij)以下としなければならない(すなわちDmhij=Dchij≦Dch0ij)か、又は
・超高率(HDR)のみで照射された場合、
○等価健康分割線量(Dmhij)は、等価係数(α)及び高率健康分割線量(Dhhij)の積と等しい(すなわちDmhij=αDhhij)が、最大従来健康分割線量(Dch0ij)以下としなければならず(すなわちDmhij=αDhhij≦Dch0ij)、
○高率健康分割線量(Dhhij)は、その分割におけるその体積に対して最大高率健康分割線量(Dhh0ij)以下としなければならず(すなわちDhhij≦Dhh0ij)、ここで、Dhh0ijは、健康な組織(3i)の健康な細胞を保護するために超過してはならない、単一の分割jの際にHDRのみで送達される最大高率健康分割線量である。
【0057】
しかしながら、本発明は、従来線量蓄積率(CDR)と超高線量蓄積率(HDR)との両方で蓄積される線量を組み合わせた分割jを含み得る。従来線量蓄積率(CDR)と超高線量蓄積率(HDR)との両方において、等価健康分割線量(Dmhij)は、従来健康分割線量(Dchij)と等価係数α及び高率健康分割線量(Dhhij)の積との合計と等しい(すなわちDmhij=Dchij+αDhhij)が、最大従来健康分割線量(Dch0ij)以下としなければならない(すなわちDmhij=Dchij+αDhhij≦Dch0ij)。
【0058】
これは、図4(c)に図示されており、「Dchi1」と標記された黒いドットはCDRで健康な細胞に蓄積された線量であり、「Dhhi1」と標記された白いドットは同一の分割j=1の間にHDRで同一の健康な細胞に蓄積された線量である。図4(c)の例では、Dchi1<Dmhi1<Dch0ij<Dhhi1<Dhi1<Dhh0ijであることに留意されたい。厳密に言えば、本発明は、Dmhij<Dch0ijである限りにおいて満たされ、Dhijは必然的にDhh0ijよりも小さい。必然的にDhhijはDhijよりも小さいか、又はDchij=0(すなわちHDRのみの蓄積)の場合及びその場合に限り、Dhijと等しくなり得ることに留意されたい。健康分割線量(Dhij)は、等価健康分割線量(Dmhij)がDch0i以下である限りにおいて、Dch0i以上又は以下となり得る。直感的に予想され得ることに反して、図4(c)の例の場合のように、健康割合線量Dhij=Dchij+Dhhijは、最大従来健康分割線量(Dch0ij)よりも実質的に大きくなる可能性がある。
【0059】
最大従来健康分割線量(Dch0ij)は、一般に、分割jの終了時、健康な細胞を保護する治療計画を構築するための基準(=基準(C2.1))として、臨床医によって与えられる所定の閾値である。健康分割線量(Dhi1)はDch0ijよりも大きいが、驚くべきことに基準(C2.1)を満たしている。超高率のみで蓄積された線量(Dhhi1)の等価健康分割線量(「αDhhi1」)は、実際にHDRで蓄積された高率健康分割線量(Dhhi1)の等価係数αによって規定される一部に過ぎないため、これが可能となる。この対応する等価健康分割線量は、「αDhhi1」と標記された網掛けされたドットによって図4(c)に示されており、線量Dhhi1に等価係数αを乗じることによって得られる。等価健康分割線量(Dmhi1)は破線によって示されており、単純な合計、Dmhi1=Dchi1+αDhhi1である。図4(c)の例では、等価健康分割線量(Dmhi1)は最大従来健康分割線量(Dch0ij)よりも小さく、従ってそこに図示される分割j=1では基準(C2.1)を満たしていることが分かる。健康な組織(3i)を保護するために、続いて説明される最大健康分割線量(Dh0ij)を総健康線量(Dhi1)が超過しないような配慮が必要となる。
【0060】
図4(c)に図示されるように、多くの場合、分割j中に照射される体積内の腫瘍細胞を死滅させるのに必要となる最小標的分割線量(Dmt0j)は、Dch0ijとDhh0ij中に含まれ得る。本発明の大きい利点は、腫瘍細胞及び健康な細胞を含む体積に、分割j=1の間にCDRと腫瘍細胞を死滅させるHDRとを組み合わせた蓄積率(Dhi1=Dmt1)で所与の分割線量を蓄積させることによって放射線治療を行うことができることである。これは、標的分割線量(Dmt1)が最小標的分割線量(Dmt0j)よりも大きいためであり、それと同時に、健康分割線量(Dhi1)は総等価健康分割線量(Dmhi1)が最大健康従来分割線量(Dch0ij)より小さいようなものであるため、照射される体積に含まれた健康な細胞を保護するためである。要約すると、腫瘍細胞と健康な細胞との両方を含む体積を、
・体積内の腫瘍細胞を死滅させるため、Dchij+Dhhij=Dhij=Dmtj>Dmt0jと、
・体積内の健康な細胞を保護するため、Dchij+αDhhij=Dmhij≦Dch0ijと
を条件として、CDRとHDRの両方で分割線量(Dhij=Dmtj)を蓄積することによって治療することができる。
【0061】
分割j=1に関する前述の図4(c)の説明は、変更すべき点を変更して任意の分割jに適用することは、当業者には明らかである(すなわち添字「1」を「j」で置き換えることができる)。
【0062】
等価係数α
例えば、図4(a)~4(c)に図示されるように、線量(Dhij)及び線量蓄積率(DR)の関数としてNTCP曲線を確立することにより、超高線量蓄積率(HDR)での線量蓄積に対する等価係数αの値を求めることができる。十分に高い線量蓄積率では、所定のNTCP0iをもたらす線量(Dhh0ij)が線量率に依存しなくなり、係数αは実質的に一定となって(すなわち図4(a)、4(c)及び7の実線の曲線の右側の垂直部分)、1/kと等しいと規定することができ、ここで、k=1.2~1.5(すなわちα=1/k、k=1.2~1.5)であり、好ましくはα<0.9、より好ましくはα<0.85、最も好ましくはα<0.7である。
【0063】
図5(a)は、等価健康分割線量(Dmhij)と健康分割線量(Dhij)との間の関係の様々な例を図示している。実線は、「Dhhij=0(CDR)」と標記されたCDRのみでの蓄積と、「Dchij=0(HDR)」と標記されたHDRのみでの蓄積との関係を示している。Dmhij=Dchij+αDhhijであり、Dhij=Dchij+Dhhijであることを考慮すると、当然ながら以下のようになる。
・CDRのみでの場合、Dhhij=0、従ってDmhij=Dhijとなり、健康な組織(3hi)を保護するために超過してはならない水平の破線Dmhij=Dch0ijとDhij=Dch0ijの値で交差する、図5(a)の「Dhhij=0(CDR)」と標記された傾き1の直線を規定し、
・HDRのみでの場合、Dchij=0、従ってDmhij=αDhhijとなり、健康な組織(3hi)を保護するために超過してはならない水平の破線Dmhij=Dch0ijとDhij=Dhh0ijの値で交差する、図5(a)の「Dchij=0(HDR)」と標記された傾きα=1/kの直線を規定する。
【0064】
従来の率(CDR)及び超高率(HDR)の両方での線量蓄積を含む治療計画では、DmhijとDhijとの間の関係は、図5(a)の傾き1(=「Dhhij=0(CDR)」)及び傾きα=1/k(=「Dchij=0(HDR)」)の2本の直線の間に含まれる。ある治療の分割の間に体積内に蓄積された従来健康線量(Dchij)をDch1iと固定すると(すなわちDchij=Dch1i=定数)、Dchij=Dch1i+αDhhijとなり、ここで、Dhhijは0(CDRのみ)から任意の正値まで自由に変動する。全線量がCDRのみで蓄積される場合(すなわちDhhij=0)、Dchij=Dhij=Dch1iとなり、Dmhij及びDhijを関連付ける曲線の始点となる。
【0065】
HDR比率を、CDRのみでの蓄積を規定するxH=0からHDRのみでの蓄積を規定するxH=1までの範囲のxH=Dhhij/(Dchij+Dhhij)と規定し、HDRで蓄積される健康分割線量(Dhij)の比率を、Dmhij=Dch1i+αDhhijと規定することにより、Dhijの関数としてDmhij=(1+xH(α-1))Dhijと表すこともできる。xHの関数として健康な組織(3hi)の健康な細胞に蓄積させることができる最大健康線量(Dh0ij)は、Dmhij=Dch0ij=(1+xH(α-1))Dh0ijを等式化することによって決定することが可能であり、これは図5(b)でグラフによって表され、異なるαの値に対して、図5(c)に図示されるようにxHの関数として変化するか否か及びどのようにαの値がxHの関数として変動するかに依存する。
【0066】
図5(c)において(1)と標記される本発明の一実施形態では、等価係数αはHDR比率(xH=Dhhij/(Dchij+Dhhij))に依存しない。HDR比率(xH)は、xH=1-Dch1i/Dhijと表すこともできる。当然、等価係数αがxHに依存しないならば、Dhijにも依存しないことになる。従って、Dchij=Dch1i+αDhhijの関係は、Dmhij=Dhij=Dch1iの点で始まる傾きα=1/kの直線で規定される。この実施形態は、「1」と標記された対応する破線によって図5(a)及び5(b)に図示され、Dmhij=Dhij=Dchi1における点で始まるDmhijとDhijとの間の線形関係(図5(a)を参照のこと)及びDch0ijとxHとの間の非線形関係(図5(b)を参照のこと)を示している。
【0067】
代替的実施形態では、等価係数αは、超高率(HDR)で蓄積された線量のHDR比率、xH=Dhhij/(Dchij+Dhhij)に依存し、xH=1(すなわちHDRのみ)のα=1/kと、xH=0(すなわちCDRのみ)のα=1との間で変動する。例として、このような3つの実施形態を図5(c)において図示している。
・αとxHとの間の線形関係、α=(1/k-1)xH+1を規定する短い破線(2)であって、この実施形態は対応する短い破線(2)によって図5(b)に図示されている。
・αとxHとの間の多項関係、α=(1/k-1)xH2+1を規定する長い破線(3)であって、この実施形態は対応する長い破線(3)によって図5(b)に図示されている。
・αとxHとの間の第2の多項関係、α=(1-1/k)xH2+2(1/k-1)xH+1を規定する点線(4)であって、この実施形態は、「(4)」と標記された対応する点線によって図5(a)及び5(b)に図示されている。図5(a)は、Dhij=Dmhij=Dch1ijで始まり、健康な組織(3hi)を保護するために超過してはならない、Dmhij=Dch0ijにおいて水平の破線によって示される所定の閾値(Dch0ij)とDhij=Dhi0ij(4)の値で交差する、従来健康分割線量Dchij=Dch1ij=定数でのDmhijとDhijとの間の非線形関係を示す。
【0068】
等価係数αがHDR比率xHに依存するか否かは、ほとんどの場合関係する健康な組織(3hi)の種類に依存しており、当業者は、この情報をどこで見出すのか又はどのように評価するのかについて公知である。図5(a)の横軸(Dhij)は、最大従来健康分割線量(Dch0ij)で臨床医によって規定される所定の閾値よりも実質的に高い線量(Dhij)を、HDR単独又はCDRと組み合わせるかのいずれかで使用することにより、所与の健康な組織(3hi)の健全性を保護するために特定された所定のNTCP0i値を超過することなく照射することができることを示している。図5(b)は、最大健康線量(Dh0ij)が、xHの値が大きくなるにつれて(すなわち放射線治療におけるDhhijの寄与が大きくなるにつれて)、Dch0ijを上回って増加する様子を示している。これは、以下の理由で非常に興味深いものである。治療計画では、腫瘍細胞に蓄積される線量と比較して健康な細胞に蓄積される線量を減少させることを目的とするが、これは、実際には必ずしも実現可能であるとは限らない。例えば、照射された体積が腫瘍細胞及び健康な細胞の両方を含んでいる場合、標的分割線量(Dmti)が健康分割線量(Dhij)と実質的に等しい(すなわちDmtj≒Dhij)ような、実質的に同等の線量が腫瘍細胞及び健康な細胞の両方に蓄積される。ほとんどの場合、分割jにおける体積内の腫瘍細胞を死滅させるのに必要とされる最小標的分割線量(Dmt0j)は、最大従来健康分割線量(Dch0ij)よりも高い(すなわちDmt0j>Dch0ij)。これらの2つの競合する条件(すなわちDmtj≒Dhij及びDmt0j>Dch0ij)により、NTCP0iの所定の値の範囲内で、体積内に含まれる健康な細胞を温存しながら腫瘍細胞を死滅させることが非常に困難となる(すなわちDmt0j>Dch0ijの場合が問題である)。ある線量における腫瘍細胞の死滅率は、線量蓄積率とは実質的に無関係であるため(上記の観察結果(O1)を参照のこと)、且つ同一の線量における健康な細胞のNTCPが高い蓄積率で減少するため(上記の観察結果(O2)を参照のこと)、最大従来健康分割線量(Dch0ij)よりも高い標的分割線量(Dmti)を蓄積させ、なおかつ健康な組織(3hi)を温存するのに必要となるNTCP0iの所定値の範囲内に維持することが可能となる。
【0069】
NTCP≦NTCP0iの値が得られる分割jにおいて、体積に蓄積させることができる線量を規定するウィンドウは、Dch0ij~Dhh0ijにわたる。全線量(Dmti)がCDRのみで蓄積される場合、標的分割線量(Dmtj)は、ウィンドウの最も低い境界を規定する最大従来健康分割線量(Dch0ij)を超過することができない。この状況は、Dmt0j>Dch0ijである場合、上記で述べた問題を有する現況技術を表している。CDRとHDRとの両方での蓄積を組み合わせることにより、αに対するxHの依存性に応じて図5(b)に図示されるように、HDR比率xHが増加するにつれて最大健康線量(Dh0ij)が増加する。
【0070】
分割jにおいて健康な組織に「安全に」蓄積させることができる最高許容線量(Dhij)は、標的分割線量(Dmtj)の全体をHDRで(すなわちxH=1で)蓄積させた場合に蓄積可能な最大高率健康分割線量(Dhhij)である。分割jにおいて体積内の腫瘍細胞を死滅させるのに必要とされる所定の標的分割線量(Dmtj)が増加すると、HDRのみで全線量(Dmti)を蓄積することがより困難となる。これは主に、ミリ秒~秒のオーダーの所与の時間内に所与の線量以上を蓄積することができないこと可能性のある装置の限界によるものである。ある分割jにおいて標的分割線量(Dmtj)全体を蓄積させるためにCDR及びHDRを組み合わせることにより、既存の装置に実装可能な治療計画を生成することができ、ここで、体積に蓄積される総線量(Dmtj≒Dhij)は、分割jにおいて体積内の腫瘍細胞を死滅させるのに必要とされる最小標的分割線量(Dmt0j)以上となり得る。
【0071】
「(1)」と標記された混合直線によって図5(a)~5(c)に図示されるように、等価係数α=1/k≠f(xH)であり、定数である場合、最大値(Dhi0ij(1))までの線量が所定のNTCP0iの範囲内で健康な細胞に蓄積され得る。「(4)」と標記された点線曲線によって図5(a)に図示されるように、等価係数α=f(xH)であり、Dhhij=0ではα=1及びDhhij=1ではα=1/kである場合、最大値(Dhi0ij(4))までの線量が所定のNTCP0iの範囲内で健康な細胞に蓄積され得る。従って、健康な細胞を含む体積に蓄積され得る最大線量値は、次のように、Dch0ij<Dhi0ij(4)<Dhi0ij(1)<Dhh0ijと規定される。
【0072】
腫瘍細胞と健康な細胞との両方を含む体積に蓄積され得る最大線量値が最小標的分割線量(Dmt0j)よりも高いと仮定すると、腫瘍細胞を死滅させながら、照射される体積の中に含まれる健康な細胞を所定のNTCP0iの範囲内で温存する照射分割を正常に実行することができる。
【0073】
最大線量及び最小線量
治療計画は、以下を含むいくつかの基準を満たさなければならない。
(C1)DmtT=ΣDmtj≧DmtT0であって、ここで、DmtTは、分割の間に体積内の腫瘍細胞を死滅させるのに必要となる総標的線量であり、DmtT0は、外周表面内に含まれる全ての腫瘍細胞を死滅させるためにN回の分割にわたって積算される最小標的線量である。
(C2.1)Dmhij=Dchij+αDhhij≦Dch0ijであって、ここで、Dmhijは等価健康分割線量であり、Dch0ijは健康な細胞を保護するために分割の間に超過してはならない最大従来健康分割線量である(図4(c)を参照のこと)。
(C2.2)DmhTi=ΣDmhij=Σ(Dchij+αDhhij)≦DchT0iであり、DmhTiは等価健康線量であり、ここで、DchT0iは健康な細胞を保護するために超過してはならない、N回の分割jにわたって積算される最大従来健康線量である(図7を参照のこと)。
【0074】
基準(2.1)及び(2.2)は、
(C2.1)Dhij=Dchij+Dhhij≦Dh0ijであって、ここで、Dhijは健康分割線量であり、Dch0ijは健康な細胞を保護するために分割の間に超過してはならない最大健康分割線量であり(図5(a)を参照されたい)、
(C2.2)DhTi=ΣDhij=Σ(Dchij+Dhhij)≦DhT0iであり、ここで、DhTiはN回の分割jにわたって積算される健康線量であり、DhT0iは健康な細胞を保護するために超過してはならない、N回の分割jにわたって積算される最大健康線量であると表すこともできる。
【0075】
治療によってN回の分割の終了時に外周表面内に含まれる腫瘍細胞を確実に死滅させるためには、最小標的線量(DmtT0)を超過する必要がある。腫瘍細胞が、外周表面内又は外周表面に隣接して位置する健康な細胞(3hi)と同じ組織又は器官に属している場合、最小標的線量(DmtT0)は、腫瘍細胞と同じ性質を持つ前記健康な細胞を温存するために超過してはならない最大従来健康線量(DchT0i)よりも高くなる可能性が大きい。従って、腫瘍細胞を死滅させるのに十分に高く、且つ腫瘍細胞に隣接する健康な細胞を温存するのに十分低い線量を決定することが不可能に見えるため、当然、これは一見すると逃れられないように見える落とし穴となる。最小標的線量(DmtT0)は、一般に、基準(C1)を規定する医療従事者によって予め規定される。
【0076】
図5(a)で分かるように、最大健康分割線量Dh0ijは、最大従来分割線量(Dch0ij)と最大高率分割線量(Dhh0ij)の間に含まれており、すなわちDch0ij≦Dh0ij≦Dhh0ijであり、HDR比率xH=Dhhij/(Dchij+Dhhij)に依存する。一実施形態では、最大健康分割線量Dh0ijは、次のようにDh0ij=Dch0ij+(1-α)Dhhij(xH)と表すことができ、ここで、αは、xHと共に変動しても又はしなくてもよく、Dhhij(xH)がDmhij=Dch0ijとなるようなxHの値における高率健康分割線量である。
【0077】
同様に、最大健康線量DhT0iは、最大従来健康線量(DchT0i)と最大高率健康線量(DhhT0i)との間に含まれており、すなわちDchT0i≦DhT0i≦DhhT0iであり、HDR比率xHに依存する。一実施形態では、DhT0iはDhT0i=DchT0i+(1-α)DhhTi(xH)と表すことができ、ここで、αは、xHと共に変動しても又はしなくてもよく、DhhTi(xH)がDmhTi=DchT0iとなるようなxHの値における高率健康線量である。
【0078】
基準C2.1及びC2.2を規定するのに用いられる、健康な細胞を保護するために超過してはならない所定のNTCP0iをもたらす、CDRのみで蓄積された分割線量及び総積算線量を規定する最大従来健康分割線量(Dch0ij)及び最大従来健康線量(DchT0i)は、医療従事者によって予め規定され得るか又は文献において規定され得る。例えば、表1は、(非特許文献1)の170ページの表3から抜粋した、NTCP0iの値=50%で放射線療法の5年後に診断された、いくつかの器官/組織に関するDchT0iの値を示している。これらの値は、医療従事者がDchT0iの値を規定するために、参照として使用することができる値を代表するものである。
【0079】
【表2】
【0080】
本発明で用いることができる、健康な細胞を保護するために超過してはならない所定のNTCP0iをもたらす、HDRのみで蓄積された分割線量及び総積算線量を規定する最大高率健康分割線量(Dhh0ij)及び最大高率健康線量(DhhT0i)は、
・HDRの所与の値について、医療従事者によって予め規定されるか若しくは文献において規定されるか、又は
・HDRの所与の値について、それぞれDhh0ij=k Dch0i及びDhh0Ti=k DchT0iとして規定され、ここで、kは、1.2~1.5の間に含まれる(すなわちk=1.2~1.5)か、又は
図4(a)~4(c)及び7に図示されるように、線量及び線量率の関数として、健康な組織(3hi)の正常組織障害発生確率(NTCP)の予め確立された曲線によって規定され、ここで、Dhh0iはDch0iと同じNTCPを有する線量であるものと規定される、のいずれかであり得る。
【0081】
例えば、DhhT0iの値は、表1に示したDchT0iの値を係数k=1.5で乗じることによって推定することができる。対応する結果を表2に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
CDR及びHDRでの線量蓄積の局所的分布
所与の超高率(HDR)で所与の線量を送達する限定的な性能を備えた所与の照射装置の場合、CDR及びHDRでそれぞれ蓄積される線量のHDR比率xH=Dhhij/(Dchij+Dhhij)を最適化するために、分割jで治療される標的組織(3t)の体積を、体積に対する健康な細胞の存在及び位置に応じて選択することにより、FLASH効果特性を活用することができる。荷電粒子が陽子である一実施形態では、外周表面の上流に位置する全ての健康な組織(3hi)が、N回の分割の間、従来線量蓄積率のみで照射される。これは、局所的に増加してブラッグピークを形成する低い蓄積を含む、陽子ビームの線量蓄積プロファイルのおかげで可能となる。これは、図1(b)及び1(c)にグラフによって表されており、陽子ビームの幅を考慮するために円柱形で表される陽子ビームが最初に横断する健康な組織(3hi)が、NTCP0iの所定の値の範囲内においてCDRで「安全に」蓄積させることができる低い線量を受ける。当然ではあるが、更に以下の基準を満たさなくてはならない。
・各分割jにおいて前記健康な組織に蓄積された健康分割線量(Dhij)が、最大従来健康分割線量(Dch0ij)を超過せず、
・N回の分割の終了時、前記健康な組織に蓄積された総健康線量(DhTi)が、最大従来健康線量(Dch0Ti)を超過しない。
【0084】
TPSで規定される荷電粒子ビームが外周表面を透通する前に前記健康な細胞を横断するとき、健康な細胞は外周表面の上流に位置する。同様に、TPSで規定される荷電粒子ビームが外周表面を出て初めて前記健康な細胞を横断するとき、健康な細胞は外周表面の下流に位置する。対応するNTCPが≦NTCP0iである場合、線量が「安全に」健康な細胞に蓄積される。
【0085】
これに対して、外周表面の下流に位置する全ての健康な組織(3hi)は、少なくとも部分的に、好ましくは超高線量蓄積率のみで照射される可能性があり、ここで、
・各分割jにおいて前記健康な組織に蓄積された健康分割線量(Dhij)は、最大高率健康分割線量(Dh0ij)を超過せず、
・N回の分割の終了時、前記健康な組織に蓄積された総健康線量(DhTi)は、最大従来健康線量(Dch0Ti)を超過しない。
【0086】
図6は、陽子ビームの浸透深度(z)における、分割jで蓄積される線量(D)及び線量蓄積率(DR)の分布の例を図示するものである。線量(D)は、標的組織(3t)の腫瘍細胞の上流に位置する健康な組織(3hi)の健康な細胞に蓄積される低線量の部分を規定しており、この後に、図1(a)及び1(c)に図示され、標的組織(3t)の全深度に及び、標的組織(3t)の下流において急落するタイプのSOBPが続く。陽子ビーム方向に沿って外周表面の下流端に隣接して位置する細胞は、ブラッグピークの末端で高線量(D)の照射を受ける可能性があり、外周表面内に位置するか、又は外周表面の外側の健康な組織(3hi)により形成された不確定領域(3z)において腫瘍細胞と混じっている健康な細胞を含み得るため、最も注意を要する。そのため、ビーム通路に沿って蓄積される線量(D)が様々な蓄積率(DR)で蓄積される場合、外周表面の上流及び上流の一部ではCDRで蓄積させ、ビームが外周表面の下流端に近づくほど深く透過し、そこを通過するにつれてHDRに到達するまで増加させることが好ましい。健康な細胞が体積内に存在する場合、体積に蓄積された線量(D)が最大従来健康分割線量(Dch0ij)を超過するときの蓄積率は、少なくとも部分的にHDRである必要がある。図6の例では、健康な組織は、特に外周表面の下流部分の中に、また外周表面のすぐ下流に位置する不確定領域(3z)において、Dch0ijよりも高い線量に暴露される可能性がある。基準(C2.1)及び(C2.2)を満足させるために、このような線量を少なくとも部分的にHDRで蓄積させることが重要である。
【0087】
不確定領域(3z)
標的組織(3t)の腫瘍細胞を包囲する外周表面は、その内側の腫瘍細胞とその外側の健康な細胞を隔てる明確な界面を形成していないことがあるが、その代わり、腫瘍細胞と健康な細胞との両方を異なる比率で混在して含む不確定領域(3z)を規定する界面層を形成し得る。不確定領域(3z)は、陽子線で照射するときに最も慎重を要するものであるため、図2(a)、2(b)及び6には、上記で述べたような外周表面の下流部分に位置する不確定領域(3z)が示されている。しかしながら、このような不確定領域(3z)は、外周表面に沿ったあらゆる場所に位置する可能性があるか、又は図2(a)及び2(b)に示されるように、外周表面内に包囲される健康な細胞の島がある場合、標的組織(3t)の塊の中にさえ位置する可能性があることは明らかである。照射治療の望ましくない副作用を低減させるためには、不確定領域に含まれる健康な細胞であったとしても、好ましくは全ての健康な細胞を温存しなければならない。しかしながら、これらの健康な細胞は、最小標的分割線量(Dmt0j)と少なくとも等しくなければならない腫瘍細胞と同じ照射線量に暴露されるため、温存することが特に困難となる。そのため、今日までの大部分の臨床医は、腫瘍細胞を活性化させたままにするリスクを伴いながら健康な細胞を温存しようとするのではなく、同一の照射体積の中に含まれる任意の健康な細胞を犠牲にして、確実に腫瘍細胞を破壊することを優先することがある。好ましい実施形態では、TPSは、N回の分割の終了時に不確定領域(3z)の全域に総不確定線量(DuTi)を送達することを含む。健康な細胞が温存される場合、DuTiの最大値は、健康な細胞の保護によって規定される。これらの条件では、総不確定線量DuTiは総健康線量(DhTi)と等しく、例えば、図2(a)及び2(b)に図示されるような、外周表面内に包囲された健康な細胞の島などであるが、これらに限定されない不確定領域に含まれる健康な細胞又は照射された体積の中に含まれる腫瘍細胞と同じ照射線量に暴露された健康な細胞を含む、任意の照射された体積に、以下の条件が適用されることを規定することができる。この場合、図7に図示されるように、
・総健康線量(DhTi=DchTi+DhhTi)が最小標的線量(DmtT0)よりも大きく、且つ最大高率健康線量(DhhT0i)よりも低く(すなわちDmtT0<DhTi<DhhT0i)、ここで、DchTi及びDhhTiは、N回の分割jにわたって積算された、CDR及びHDRでそれぞれ蓄積された従来健康線量及び高率健康線量であり、
・N回の分割の終了時に送達される総等価健康線量(DmhTi=DchTi+αDhhTi)が、不確定領域に存在する健康な組織(3hi)の最大従来健康線量(DchT0i)よりも低く(すなわちDmhTi<DchT0i)、
・各分割jにおいて送達される等価健康分割線量(Dmhij=Dchij+αDhhij)が、不確定領域に存在する健康な組織(3hi)の最大従来健康分割線量(DchT0ij)よりも低い(すなわちDmhTi<DchT0i)ことが好ましい。
【0088】
多工程の治療計画
本発明の一実施形態では、治療計画の1回以上の分割は、各々が様々なビームレットによって形成された、第1の方向に対して平行な第1の荷電粒子ビーム又は荷電粒子ビームの群により、従来線量を従来線量蓄積率(CDR)で送達する第1の工程を含む。図1(a)を参照すると、これは、「Dchij」と標記される全てのビームレットを第1の工程で送達することに相当する。従来線量は、
・1回以上の分割の各々又は一部において、標的組織(3t)の腫瘍細胞の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%に従来標的分割線量(Dctj)が送達され、
・1回以上の分割の各々又は一部において、外周表面を取り囲み且つその中に包囲された健康な組織(3hi)に、最大従来健康分割線量(Dch0ij)よりも低い従来健康分割線量(Dchij)(すなわちDchij<Dch0ij)が送達されるようにする。
【0089】
この最初の(従来の)工程の後又はそれに先行して、第1の方向と同じ又は異なる第2の方向に対して平行な、第2の荷電粒子ビーム又は荷電粒子ビームの群により、高率線量を超高線量蓄積率(HDR)で送達する第2の工程が行われる。図1(a)を参照すると、これは、「Dhhij」と標記されるビームレットを第2の工程で送達することに相当する。高率線量は、
・標的組織(3t)の腫瘍細胞の100%が従来の率(CDR)及び/又は超高率(HDR)で分割線量を受けているように、1回以上の分割の各々又は一部において標的組織(3t)に高率標的分割線量(Dhtj)が送達され、
・全ての健康な細胞に従来の率(CDR)と超高率(HDR)との両方で送達される等価健康分割線量(Dmhij=Dchij+αDhhij)が最大従来健康分割線量(Dch0ij)を超過しない(すなわちDmhij≦Dch0ij)ように、1回以上の分割の各々又は一部において、外周表面を取り囲み且つその中にある健康な組織(3hi)に高率健康分割線量(Dhhij)が送達されるようにする。
【0090】
従来線量による第1の工程は、大きいブラシで外周の中に包囲された領域を塗り、その後、より細いブラシでこの領域の端を塗り、外周に隣接し、その中にある領域の全てを確実に着色しながら、外周の外側で色が見えないようにするようなものである。第1及び第2の工程は、任意の順序で実施することができる。
【0091】
分割jにおいて、最大健康分割線量(Dh0ij)を超過しない、第1及び第2の工程にわたって積算された健康分割線量(Dhii)を健康な細胞が受けないようにすることを確実にするために、治療計画は、同一の分割の際に、外周表面を取り囲むか又はその中にある任意の健康な組織(3hi)で、第2の荷電粒子ビーム又は荷電粒子ビームの群が、第1の荷電粒子ビーム又は荷電粒子ビームの群と重ならないようにすることを確実にし得る。
【0092】
単一工程の治療計画
本発明の代替的な実施形態では、治療計画の1回以上の分割は、ビームレットによって形成された、第1の方向に対して平行な単一の荷電粒子ビーム(PB)又はビーム群を、
・標的組織(3t)の標的細胞の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%に従来標的分割線量(Dctj)が送達され、
・外周表面を取り囲み且つその中に包囲された健康な組織(3hi)に、最大従来健康分割線量(Dch0ij)よりも低い従来健康分割線量(Dchij)(すなわちDchij<Dch0ij)が送達され、
・標的組織(3t)の腫瘍細胞の100%が従来の率(CDR)及び/又は超高率(HDR)で分割線量を受けているように、1回以上の分割の各々又は一部において標的組織(3t)に高率標的分割線量(Dhtj)が送達され、
・全ての健康な細胞に従来の率(CDR)と超高率(HDR)との両方で送達される等価健康分割線量(Dmhij=Dchij+αDhhij)が最大従来健康分割線量(Dch0ij)を超過しない(すなわちDmhij≦Dch0ij)ように、1回以上の分割の各々又は一部において、外周表面を取り囲み且つその中にある健康な組織(3hi)に高率健康分割線量(Dhhij)が送達されるように含む。
【0093】
この単一工程の治療計画と、上記で述べた多工程の治療計画との違いは、分割jの全てのビームレットが、多工程の治療計画のための2回の工程ではなく、単一の照射工程の範囲内で送達されることである。図1(a)を参照すると、これは単一工程であり、「Dchij」と標記されたビームレットと「Dhhij」と標記されたビームレットとが、透過深度(z)の関数として蓄積される線量を変更するように変調された同一の照射ビームの範囲内で全て送達されることを意味する。
【0094】
図3はN回の分割を示しており、各分割には、従来の分割線量(Dchij)(網掛けされた棒グラフ)での蓄積と、高率での分割(Dhhij)(白色の棒グラフ)での蓄積が含まれる。HDR比率xH=Dhhij/(Dchij+Dhhij)は、ある分割から別の分割へと、実質的に変動させることができる。従来分割線量及び高率分割線量のそれぞれは、以下の基準を満たさなければならない。
・N回の分割にわたって積算される総標的線量(DmtT)(DmtT=ΣDmtj=DctT+DhtT=Σ(Dctj+Dhtj))は、所定の最小標的線量(DmtT0)よりも大きくなければならず(すなわちDmtT>DmtT0)、ここで、DctT及びDhtTは、N回の分割jにわたって積算される、CDR及びHDRでそれぞれ蓄積された従来標的線量及び高率標的線量である。
・N回の分割にわたって積算される総等価健康線量(DmhTi)(DmhTi=ΣDmhij=DchTi+αDhhTi=Σ(Dchij+αDhhij))は、所定の最大従来健康線量(DchT0i)よりも低くなくてはならない(すなわちDmhTi>DchT0i)。
【0095】
多工程の治療計画によれば、第1の工程で各分割jにおける従来線量(Dchij)(図3の網掛けされた棒グラフを参照のこと)が蓄積され、この後に高率線量(Dhhij)での蓄積による第2の工程が続く。単一工程の治療計画によれば、CDR及びHDRの両方での線量を蓄積する全てのビームレットが単一照射で送られ、連続するビームレットの特性(蓄積率を含む)は、対応するブラッグピークの深度(z)と共に変化する。
【0096】
概要
荷電粒子ビーム、好ましくは陽子ビームで腫瘍細胞を含む標的組織を治療するための治療計画は、治療が終了した時点で、腫瘍細胞に隣接する健康な細胞を温存しながら腫瘍細胞を死滅させることを確実にするための所定の臨床基準を満たさなければならない。基準には、以下が含まれる。
(1)腫瘍細胞を死滅させることであって、
(C1)外周表面内に含まれる全体積に送達される総標的線量(DmtT)は、最小標的線量(DmtT0)を超過しなければならない、すなわちDmtT=ΣDmtj≧DmtT0であり、
(2)健康な細胞を温存することであって、
(C2.1)ある分割jにおいて蓄積された健康分割線量(Dhij)は、最大健康分割線量(Dh0ij)を超過することができず、すなわちDhij=Dchij+Dhhij≦Dh0ijであり、
(C2.2)N回の分割jにわたって積算される健康線量(DhTi)は、N回の分割jにわたって積算される最大健康線量(DhT0i)を超過することができない、すなわちDhTi=ΣDhij=Σ(Dchij+Dhhij)≦DhT0i。
【0097】
健康な細胞が腫瘍細胞に隣接する場合、健康な細胞は腫瘍細胞と同じ線量を受けることがある。受けた線量が腫瘍細胞を死滅させるのに十分である場合、健康な細胞を死滅させるのにも十分なものとなることがあり、これはもちろん望ましいものではない。本発明は、特定の体積のCDRでの従来の照射とHDRでのFLASH照射とを治療計画において組み合わせることにより、超高線量蓄積率(HDR)で観察されるFLASH効果を活用するものである。
【0098】
基準(C1)は、総標的線量DmtT=DctT+DhtTを確実に最小標的線量(DmtT0)よりも大きくすることによって満たされる。
【0099】
基準(C2.1)は、健康分割線量(Dhij=Dchij+Dhhij)を確実に最大健康分割線量(Dh0ij)よりも低くすることによって満たされる。この基準は、等価健康分割線量(Dmhij=Dchij+αDhhij)が最大従来健康分割線量(Dch0ij)を超過しない、すなわちDmhij=Dchij+αDhhij≦Dch0ijである場合に満たされる。等価健康分割線量(Dmhij)は、あたかも同一線量がCDRのみで蓄積されるように同一の値の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす、少なくとも部分的にHDRで蓄積された線量である。
【0100】
基準(C2.2)は、総健康線量(DhTi=DchTi+DhhTi)を確実に最大総健康線量(DhT0i)よりも低くすることによって満たされる。この基準は、等価健康線量(DmhTi=DchTi+αDhhij)が最大従来健康分割線量(DchT0i)を超過しない、すなわちDmhij=Dchij+αDhhTi≦DchT0iである場合に満たされる。等価総健康線量(DmhTi)は、あたかも同一線量がCDRのみで蓄積されているように同一の値の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす、N回の分割にわたって少なくとも部分的にHDRで蓄積された積算線量である。
【0101】
上記の治療計画により、分割jにおいて健康な細胞に蓄積される健康分割線量(Dhij)が、分割jにおいて照射される体積の中に含まれる腫瘍細胞及び健康な細胞の両方を死滅させるのに必要とされる最小標的線量(DmtT0)よりも大きい場合、CDRでの蓄積とHDRでの蓄積を組み合わせてFLASH効果の利点を得ることにより、一見すると逃れられないように見える落とし穴が解決される。腫瘍細胞及び健康な細胞の両方が同一の放射線線量(Dmtij=Dhij)を受ける最悪のシナリオにおいてもこの落とし穴が解決され、従って基準(C1)及び(C2.1)の両方が満たされる。同じ結論がN回の分割の終了時における治療全体にあてはまり、これにより、N回の分割の後に健康な細胞に蓄積される総健康線量(DhTi)が少なくとも部分的にHDRで蓄積される場合、総健康線量(DhTi)は、外周表面内にある腫瘍細胞を死滅させるのに必要とされる最小標的線量(DmtT0)よりも大きく、健康な組織(3hi)を温存するのに必要とされる最大総健康線量(DhT0i)よりも低くなり得る。ここでもまた、腫瘍細胞及び健康な細胞の両方が同一の放射線線量を受ける最悪のシナリオにおいても、この一見すると逃れられないように見える落とし穴が解決され、従って基準(C1)及び(C2.2)の両方が満たされる。Dhij=Dmtj及びN回の分割後にDhTi=DmTtとなる場合を、「最悪のシナリオ」と称するが、これは、ほとんどの場合、健康な細胞が外周表面の外側にある場合にDhij<Dmtj及びN回の分割の後にDhTi<DmTtとなるように、治療計画によって健康な細胞に送達される線量(Dhij)を低減させ、且つ腫瘍細胞に送達される線量(Dmtj)を最大化させようと試みるためである。
【0102】
本発明のTPSによって生成される治療計画及びその好ましい実施形態は、健康な細胞によって取り囲まれ、及び/又は同様に健康な細胞を包囲する外周表面内に包囲された腫瘍細胞を含む標的組織(3t)を、荷電粒子ビーム、好ましくは陽子ビームによって治療するための方法において実現することができ、ここで、健康な細胞は健康な組織(3hi)を形成し、添字iは、健康な組織(3hi)の種類を示し、方法はN回の分割照射から構成され、N≧1の場合、以下の基準、
(C1)標的組織(3t)の全ての腫瘍細胞は、N回の分割の終了時、各分割において受けられる標的分割線量(Dmtj)の合計に等しい総標的線量(DmtT)を受けている必要があり(すなわちDmtT=ΣDmtj)、総標的線量は、腫瘍細胞を死滅させるための最小標的線量(DmtT0)に少なくとも等しく、すなわちDmtT=ΣDmtj≧DmtT0であること、
(C2)外周表面を取り囲むか又はその中に包囲された健康な組織の全ての健康な細胞(3hi)は、
(C2.1)各分割jにおいて受けられる健康分割線量(Dhij)は、分割jの終了時、健康な細胞を保護するための所定の閾値を超過せず、
(C2.2)N回の分割の終了時に受けられ且つ積算される総健康線量(DhTi)は、N回の分割の治療が終了した時点で、健康な細胞を保護するための所定の閾値を超過しない
ように、N回の分割の終了時、各分割jにおいて受けられる健康分割線量(Dhij)の合計と等しい総健康線量(DhTi)を受けている必要があること(すなわちDhTi=ΣDhij)
を満たすことを含み、
・方法は、
○腫瘍細胞及び/又は健康な細胞を含む体積を、CDR<1Gy/秒の線量率として規定される従来線量率(CDR)で照射すること、及び/又は
○腫瘍細胞及び/又は健康な細胞を含む体積を、HDR≧1Gy/秒の線量率として規定される超高線量率(HDR)で照射すること
を含むN回の分割を組み合わせ、
・N回の分割の終了時、標的組織(3t)の体積に送達され且つ積算される総標的線量(DmtT)は、各分割において標的組織(3t)に送達される標的分割線量(Dmtj)のN回の分割jにわたる合計、DmtT=ΣDmtj=Σ(Dctj+Dhtj)≧DmtT0として基準(C1)を満たすように規定され、ここで、分割j中に送達される標的分割線量(Dmtj)は、
○分割j中に従来線量蓄積率(CDR)でその体積に送達される従来標的線量(Dctj)と、
○分割j中に超高線量蓄積率(HDR)でその体積に送達される高率標的線量(Dhtj)と
の合計として規定され、
・分割j中に健康な組織(3i)の健康な細胞の体積に送達される健康分割線量(Dhij)は、
○従来線量率(CDR)でその体積に送達される従来健康分割線量(Dchij)と、
○超高線量率(HDR)でその体積に送達される高率健康分割線量(Dhhij)と
の合計Dhij=Dchij+Dhhijと等しく、
・等価健康分割線量(Dmhij)が、
○従来健康分割線量(Dchij)と、
○等価係数(α)及び高率健康分割線量(Dhhij)の積と
の合計Dmhij=(Dchij+αDhhij)として規定され、
各分割j後、健康な細胞を保護するための最大等価健康分割線量(Dmh0ij)を超過せず(すなわちDmhij≦Dmh0ij)、従って基準(C2.1)を満たし、ここで、最大等価健康分割線量(Dmh0ij)は、従来線量率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積された線量に対応当し、且つ健康な細胞(3hi)に所定の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす最大健康従来分割線量(Dch0ij)以下であり(すなわちDmh0ij≦Dch0ij)、
・N回の分割の終了時、健康な組織(3hi)の体積に送達され且つ積算される総等価健康線量(DmhTi)が、等価健康分割線量(Dmhij)のN回の分割jにわたる合計、DmhTi=ΣDmhij=Σ(Dchij+αDhhij)(α≦1、好ましくはα>0.5)として規定され、ここで、総等価健康線量(DmhTi)は、N回の分割の終了時、健康な細胞を保護するための最大等価健康線量(DmhT0i)を超過せず(すなわちDmhTi≦DmhT0i)、従って基準(C2.2)を満たし、ここで、最大等価健康線量(DmhT0i)は、従来線量率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積された線量に対応し、且つ健康な細胞(3hi)に所定の傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす最大健康従来線量(DchT0i)以下である(すなわちDmhT0i≦DchT0i)。
【0103】
等価健康分割線量(Dmhij)及び総等価健康線量(DmhTi)は、あたかも健康分割線量(Dhij)及び総健康線量(DhTi)がそれぞれ従来線量率(CDR)のみで健康な細胞に蓄積されているように、健康な細胞(3hi)に同等又はより低い傷害発生確率(NTCP0i)をもたらす等価線量である。
【符号の説明】
【0104】
参照 説明
3hi 健康な組織i
3t 標的組織
3z 不確定領域
D 線量
Dch0ij 最大従来健康分割線量
DchT0i N回の分割jにわたって積算された最大従来健康線量
Dchi1 分割j=1の従来健康分割線量
Dchij 従来健康分割線量
DchTi N回の分割jにわたって積算された従来健康線量
DctT 従来標的線量
Dctj 従来標的分割線量
Dh0ij 最大健康分割線量
Dhi0ij(1) 最大健康分割線量(α=定数)
Dhi0ij(2) 最大健康分割線量(α=f(xH)が線形)
Dhi0ij(3) 最大健康分割線量(α=f(xH)が放物線形)
Dhi0ij(4) 最大健康分割線量(α=f(xH)が放物線形)
Dhhi1 分割j=1の高率健康分割線量
Dhhij 高率健康分割線量
Dhh0ij 最大高率健康分割線量
DhhT0i 最大高率健康線量
DhhTi 高率健康線量
Dhi1 分割j=1の健康分割線量
Dhij Dhij=Dchij+Dhhij、健康分割線量
DhTi DhTi=ΣDhij=Σ(Dchij+Dhhij)、N回の分割jにわたって積算された総健康線量
Dhtj 高率標的分割線量
DhtT 高率標的線量
DhT0i N回の分割jにわたって積算された最大総健康線量
Dmh0ij 最大等価健康分割線量
Dmhi1 分割j=1の等価健康分割線量
Dmhij Dmhij=Dchij+αDhhij、等価健康分割線量
DmhTi DmhTi=ΣDmhij=Σ(Dchij+αDhhij)、N回の分割jにわたって積算された総等価健康線量
Dmt0j 最小標的分割線量
Dmtj Dmtj=Dctj+Dhtj、標的分割線量
DmtT DmtT=DctT+DhtT、総標的線量
DmtT0 最小標的線量
DR 線量蓄積率(又は蓄積率)
k 超高線量蓄積率でのCDR/HDR比例定数、(k=1/α)
CDR 従来線量蓄積率
HDR 超高線量蓄積率
NTCP 正常組織障害発生確率
NTCP0i 健康な組織(3hi)の最大NTCP値
PB 陽子ビーム
S 皮膚
SOBP ブラッグピークの合計
x,y 深度(z)におけるビームに対して垂直な平面を規定するベクトル
xH HDR比率=Dhhij/(Dchij+Dhhij)
XR X線
z 透過深度
Z0 Z=0(皮膚)
Zn 外周表面の最深部
α 等価係数(Dmhij=Dchij+αDhhij)
図1a
図1b-1c】
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6
図7
【外国語明細書】