(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137831
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】可溶栓
(51)【国際特許分類】
F16K 17/38 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
F16K17/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037515
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000141794
【氏名又は名称】株式会社宮入バルブ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】富田 勉
(72)【発明者】
【氏名】西川 聡
【テーマコード(参考)】
3H061
【Fターム(参考)】
3H061AA07
3H061BB15
3H061CC30
3H061DD02
3H061EA32
3H061GG05
3H061GG09
3H061GG17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ビスマス(Bi)やインジウム(In)を含有しつつ、耐クリープ性を向上させることができる可溶合金を使用した可溶栓を提供する。
【解決手段】可溶栓10Aは、六角形に成形された頭部11(ヘッド)と、頭部11に繋がって外周に雄ネジが作られたネジ部12とを有し、一方向へ貫通する貫通孔16と、貫通孔に溶着・充填された可溶合金21A~21Dとを備え、平常時に前記可溶合金によって貫通孔が封止され、異常時に可溶合金が溶融して貫通孔が開孔する。可溶合金は、33~37重量%のビスマス(Bi)と、1.3~1.7重量%のアンチモン(Sb)と、61.3~65.7重量%のインジウム(In)とから形成され、その溶融温度が72±2℃である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向へ貫通する貫通孔と、前記貫通孔に溶着・充填された可溶合金とを備え、平常時に前記可溶合金によって前記貫通孔が封止され、異常時に可溶合金が溶融して貫通孔が開孔する可溶栓において、
前記可溶合金が、33~37重量%のビスマス(Bi)と、1.3~1.7重量%のアンチモン(Sb)と、61.3~65.7重量%のインジウム(In)とから形成され、前記可溶合金の溶融温度が、72±2℃である可溶栓。
【請求項2】
一方向へ貫通する貫通孔と、前記貫通孔に溶着・充填された可溶合金とを備え、平常時に前記可溶合金によって前記貫通孔が封止され、異常時に可溶合金が溶融して貫通孔が開孔する可溶栓において、
前記可溶合金が、33~37重量%のビスマス(Bi)と、0.8~1.2重量%のアンチモン(Sb)と、2.8~3.2重量%の錫(Sn)と、58.6~63.4重量%のインジウム(In)とから形成され、前記可溶合金の溶融温度が、72±2℃である可溶栓。
【請求項3】
一方向へ貫通する貫通孔と、前記貫通孔に溶着・充填された可溶合金とを備え、平常時に前記可溶合金によって前記貫通孔が封止され、異常時に可溶合金が溶融して貫通孔が開孔する可溶栓において、
前記可溶合金が、33~37重量%のビスマス(Bi)と、1.3~1.7重量%のアンチモン(Sb)と、61.2~65.68重量%のインジウム(In)とから形成され、0.02~0.1重量%のセラミック微粉体を含有し、前記セラミック微粉体が、前記可溶合金の全域に均一に分散し、前記可溶合金の溶融温度が、72±2℃である可溶栓。
【請求項4】
一方向へ貫通する貫通孔と、前記貫通孔に溶着・充填された可溶合金とを備え、平常時に前記可溶合金によって前記貫通孔が封止され、異常時に可溶合金が溶融して貫通孔が開孔する可溶栓において、
前記可溶合金が、33~37重量%のビスマス(Bi)と、0.8~1.2重量%のアンチモン(Sb)と、2.8~3.2重量%の錫(Sn)と、58.5~63.38重量%のインジウム(In)とから形成され、0.02~0.1重量%のセラミック微粉体を含有し、前記セラミック微粉体が、前記可溶合金の全域に均一に分散し、前記可溶合金の溶融温度が、72±2℃である可溶栓。
【請求項5】
前記可溶栓では、前記可溶合金を前記貫通孔に溶着・充填して該貫通孔を封止する過程において、溶融させた該可溶合金に前記セラミック微粉体を投入しつつ攪拌し、溶融した前記可溶合金全域に前記セラミック微粉体を均一に混入させつつ、該セラミック微粉体を含有する該可溶合金を前記貫通孔に溶着・充填して該貫通孔を封止する請求項3又は請求項4に記載の可溶栓。
【請求項6】
前記セラミック微粉体の平均粒径が、50~200μmの範囲にある請求項3ないし請求項5いずれかに記載の可溶栓。
【請求項7】
前記セラミック微粉体が、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、ジルコン(ZrO2)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つである請求項3ないし請求項6いずれかに記載の可溶栓。
【請求項8】
前記貫通孔の内径が、2~6mmの範囲にあり、前記貫通孔の軸方向の長さが、20~40mmの範囲にある請求項1ないし請求項7いずれかに記載の可溶栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平常時に可溶合金によって貫通孔が封止され、異常時に可溶合金が溶融して貫通孔が開孔し、高温・高圧ガスを貫通孔から外気中に放出する可溶栓に関する。
【背景技術】
【0002】
一方向へ貫通する貫通孔(逃がし孔)と、貫通孔に溶着・充填された可溶合金(低融点金属)とを備え、ボイラーや高圧ガス貯蔵器等に取り付けられて安全装置として利用される可溶栓は公知である。可溶栓は、平常時にボイラーや高圧ガス貯蔵器内の高圧ガスを可溶合金において封止し、火災や空焚き等による設備異常等による異常な温度上昇やそれに伴う圧力の上昇を感知すると、可溶合金が軟化溶融して貫通孔が開孔し、高温・高圧ガスを貫通孔から外気中に放出することでボイラーや高圧ガス貯蔵器等の破損事故や破裂事故等を防止する。各種の可溶栓が特開2009-85410号公報(特許文献1参照)及び特開2006-329374号公報(特許文献2参照)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-85410号公報
【特許文献2】特開2006-329374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から使用されている100℃以下で溶解する可溶合金には鉛及(Pb)びカドミウム(Cd)の環境負荷物質が含まれており、RoHS指令等のEUから始まった世界的な環境配慮製品への移行に伴って可溶合金についても特定有害物質(Pb、Cd、Hg、Cr6+、PBB、PBDE)の使用制限がかけられている。RoHS指令に対応するためにビスマス(Bi)及びインジウム(In)を主成分とした可溶栓が使用されている。錫(Sn)及びビスマス(Bi)並びにインジウム(In)から形成された可溶合金を使用した可溶栓がWO2006/057029号公報に開示されている。しかし、錫(Sn)及びビスマス(Bi)並びにインジウム(In)から形成された可溶合金は、機械的強度から耐クリープ性が低く、その可溶合金を利用した可溶栓の長期間の使用が困難であった。
【0005】
本発明の目的は、ビスマス(Bi)やインジウム(In)を含有しつつ、耐クリープ性を向上させることができる可溶合金を使用した可溶栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の前提は、一方向へ貫通する貫通孔と、貫通孔に溶着・充填された可溶合金とを備え、平常時に可溶合金によって貫通孔が封止され、異常時に可溶合金が溶融して貫通孔が開孔する可溶栓である。
【0007】
前記前提における本発明の可溶栓の第1の特徴は、可溶合金が、33~37重量%のビスマス(Bi)と、1.3~1.7重量%のアンチモン(Sb)と、61.3~65.7重量%のインジウム(In)とから形成され、可溶合金の溶融温度が、72±2℃であることにある。
【0008】
前記前提における本発明の可溶栓の第2の特徴は、可溶合金が、33~37重量%のビスマス(Bi)と、0.8~1.2重量%のアンチモン(Sb)と、2.8~3.2重量%の錫(Sn)と、58.6~63.4重量%のインジウム(In)とから形成され、可溶合金の溶融温度が、72±2℃であることにある。
【0009】
前記前提における本発明の可溶栓の第3の特徴は、可溶合金が、33~37重量%のビスマス(Bi)と、1.3~1.7重量%のアンチモン(Sb)と、61.2~65.68重量%のインジウム(In)とから形成され、0.02~0.1重量%のセラミック微粉体を含有し、セラミック微粉体が、可溶合金の全域に均一に分散し、可溶合金の溶融温度が、72±2℃であることにある。
【0010】
前記前提における本発明の可溶栓の第4の特徴は、可溶合金が、33~37重量%のビスマス(Bi)と、0.8~1.2重量%のアンチモン(Sb)と、2.8~3.2重量%の錫(Sn)と、58.5~63.38重量%のインジウム(In)とから形成され、0.02~0.1重量%のセラミック微粉体を含有し、セラミック微粉体が、可溶合金の全域に均一に分散し、可溶合金の溶融温度が、72±2℃であることにある。
【0011】
本発明の可溶栓の一例として、可溶栓では、可溶合金を貫通孔に溶着・充填して貫通孔を封止する過程において、溶融させた可溶合金にセラミック微粉体を投入しつつ攪拌し、溶融した可溶合金全域にセラミック微粉体を均一に混入させつつ、セラミック微粉体を含有する可溶合金を貫通孔に溶着・充填して該貫通孔を封止する。
【0012】
本発明の可溶栓の他の一例としては、セラミック微粉体の平均粒径が、50~200μmの範囲にある。
【0013】
本発明の可溶栓の他の一例としては、セラミック微粉体が、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、ジルコン(ZrO2)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つである。
【0014】
本発明の可溶栓の他の一例としては、貫通孔の内径が、2~6mmの範囲にあり、貫通孔の軸方向の長さが、20~40mmの範囲にある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に対応
【0016】
請求項1に記載された第1の特徴を有する本発明の可溶栓によれば、それに穿孔された貫通孔に溶着・充填された可溶合金が33~37重量%のビスマス(Bi)と、1.3~1.7重量%のアンチモン(Sb)と、61.3~65.7重量%のインジウム(In)とから形成され、可溶合金が33~37重量%のビスマス(Bi)と61.3~65.7重量%のインジウム(In)とを含有しつつ、1.3~1.7重量%のアンチモン(Sb)を含むから、ビスマス(Bi)及びインジウム(In)を主成分とするにもかかわらず、アンチモン(Sb)によって機械的強度を向上させることができ、使用温度域において良好なクリープ特性の可溶合金を得ることが可能となる。可溶栓は、それに使用する可溶合金の溶融温度が72±2℃であり、可溶合金の溶融温度が100℃未満であるにもかかわらず、可溶合金の耐クリープ性が高い可溶合金が貫通孔に溶着・充填されることで長期間の使用に耐えることができる。可溶栓は、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)から形成された可溶合金が異常時に貫通孔において確実に溶融し、高温・高圧ガスを貫通孔から外気中に放出することができ、可溶栓としての機能を確実に発揮させることができる。
【0017】
請求項2に対応
【0018】
請求項2に記載された第2の特徴を有する本発明の可溶栓によれば、それに穿孔された貫通孔に溶着・充填された可溶合金が33~37重量%のビスマス(Bi)と、0.8~1.2重量%のアンチモン(Sb)と、2.8~3.2重量%の錫(Sn)と、58.6~63.4重量%のインジウム(In)とから形成され、可溶合金が33~37重量%のビスマス(Bi)と58.6~63.4重量%のインジウム(In)とを含有しつつ、0.8~1.2重量%のアンチモン(Sb)と2.8~3.2重量%の錫(Sn)とを含むから、ビスマス(Bi)及びインジウム(In)を主成分とするにもかかわらず、アンチモン(Sb)及び錫(Sn)によって機械的強度を向上させることができ、使用温度域において良好なクリープ特性の可溶合金を得ることが可能となる。可溶栓は、それに使用する可溶合金の溶融温度が72±2℃であり、可溶合金の溶融温度が100℃未満であるにもかかわらず、可溶合金の耐クリープ性が高い可溶合金が貫通孔に溶着・充填されることで長期間の使用に耐えることができる。可溶栓は、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、錫(Sn)から形成された可溶合金が異常時に貫通孔において確実に溶融し、高温・高圧ガスを貫通孔から外気中に放出することができ、可溶栓としての機能を確実に発揮させることができる。
【0019】
請求項3に対応
【0020】
請求項3に記載された第3の特徴を有する本発明の可溶栓によれば、それに穿孔された貫通孔に溶着・充填された可溶合金が33~37重量%のビスマス(Bi)と、1.3~1.7重量%のアンチモン(Sb)と、61.2~65.68重量%のインジウム(In)とから形成されて0.02~0.1重量%のセラミック微粉体を含有し、可溶合金が33~37重量%のビスマス(Bi)と61.2~65.68重量%のインジウム(In)とを含有しつつ、1.3~1.7重量%のアンチモン(Sb)と0.02~0.1重量%のセラミック微粉体とを含むから、ビスマス(Bi)及びインジウム(In)を主成分とするにもかかわらず、アンチモン(Sb)によって機械的強度を向上させることができ、使用温度域において良好なクリープ特性の可溶合金を得ることが可能となる。又、可溶合金の全域に均一に分散するセラミック微粉体の優れたクリープ特性によってビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)から形成された可溶合金の機械的強度が増加し、それによって可溶合金の耐クリープ性をさらに向上させることができ、優れた耐クリープ性を備えた可溶合金を使用した可溶栓を提供することができる。可溶栓は、それに使用する可溶合金の溶融温度が72±2℃であり、可溶合金の溶融温度が100℃未満であるにもかかわらず、可溶合金の耐クリープ性が高い可溶合金が貫通孔に溶着・充填されることで長期間の使用に耐えることができる。可溶栓は、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)から形成されて均一に分散するセラミック微粉体を含む可溶合金が異常時に貫通孔において確実に溶融し、高温・高圧ガスを貫通孔から外気中に放出することができ、可溶栓としての機能を確実に発揮させることができる。
【0021】
請求項4に対応
【0022】
請求項4に記載された第4の特徴を有する本発明の可溶栓によれば、それに穿孔された貫通孔に溶着・充填された可溶合金が33~37重量%のビスマス(Bi)と、0.8~1.2重量%のアンチモン(Sb)と、2.8~3.2重量%の錫(Sn)と、58.5~63.38重量%のインジウム(In)とから形成されて0.02~0.1重量%のセラミック微粉体を含有し、可溶合金が33~37重量%のビスマス(Bi)と58.5~63.38重量%のインジウム(In)とを含有しつつ、0.8~1.2重量%のアンチモン(Sb)と2.8~3.2重量%の錫(Sn)と0.02~0.1重量%のセラミック微粉体とを含むから、ビスマス(Bi)及びインジウム(In)を主成分とするにもかかわらず、アンチモン(Sb)及び錫(Sn)によって機械的強度を向上させることができ、使用温度域において良好なクリープ特性の可溶合金を得ることが可能となる。又、可溶合金の全域に均一に分散するセラミック微粉体の優れたクリープ特性によってビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)、錫(Sn)から形成された可溶合金の機械的強度が増加し、それによって可溶合金の耐クリープ性をさらに向上させることができ、優れた耐クリープ性を備えた可溶合金を使用した可溶栓を提供することができる。可溶栓は、それに使用する可溶合金の溶融温度が72±2℃であり、可溶合金の溶融温度が100℃未満であるにもかかわらず、可溶合金の耐クリープ性が高い可溶合金が貫通孔に溶着・充填されることで長期間の使用に耐えることができる。可溶栓は、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、錫(Sn)から形成されて均一に分散するセラミック微粉体を含む可溶合金が異常時に貫通孔において確実に溶融し、高温・高圧ガスを貫通孔から外気中に放出することができ、可溶栓としての機能を確実に発揮させることができる。
【0023】
請求項5に対応
【0024】
可溶合金を貫通孔に溶着・充填して貫通孔を封止する過程において、溶融させた可溶合金にセラミック微粉体を投入しつつ攪拌し、溶融した可溶合金全域にセラミック微粉体を均一に混入させつつ、セラミック微粉体を含有する可溶合金を貫通孔に溶着・充填して貫通孔を封止する可溶栓は、可溶合金を貫通孔に溶着・充填して貫通孔を封止(閉塞)する過程において、溶融した可溶合金全域にセラミック微粉体を均一に混入させ、セラミック微粉体を均一に分散させた可溶合金を貫通孔に溶着・充填して貫通孔を封止(閉塞)するから、貫通孔に溶着・充填された可溶合金全域にセラミック微粉体を均一に分散させることができ、可溶合金におけるセラミック微粉体の偏りを防ぐことができる。可溶栓は、可溶合金全域に均一に分散したセラミック微粉体の優れたクリープ特性によって可溶合金の機械的強度が大幅に増加し、それによって可溶合金の耐クリープ性を大幅に向上させることができ、優れた耐クリープ性を有する可溶合金が貫通孔に溶着・充填されることで長期間の使用に耐えることができる。
【0025】
請求項6に対応
【0026】
セラミック微粉体の平均粒径が50~200μmの範囲にある可溶栓は、セラミック微粉体の平均粒径が前記範囲にあるから、セラミック微粉体を溶融した可溶合金に混入する際に溶融した可溶合金全域にセラミック微粉体を均一に分散させることができ、可溶合金全域に均一に分散したセラミック微粉体の優れたクリープ特性によって可溶合金の機械的強度が大幅に増加し、それによって可溶合金の耐クリープ性を大幅に向上させることができ、優れた耐クリープ性を有する可溶合金が貫通孔に溶着・充填されることで長期間の使用に耐えることができる。
【0027】
請求項7に対応
【0028】
セラミック微粉体がアルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、ジルコン(ZrO2)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つである可溶栓は、可溶合金全域に均一に分散したアルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、ジルコン(ZrO2)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つのセラミック微粉体の優れたクリープ特性によって可溶合金の機械的強度が大幅に増加し、それによって可溶合金の耐クリープ性を大幅に向上させることができ、優れた耐クリープ性を有する可溶合金が貫通孔に溶着・充填されることで長期間の使用に耐えることができる。
【0029】
請求項8に対応
【0030】
貫通孔の内径が2~6mmの範囲にあり、貫通孔の軸方向の長さが20~40mmの範囲にある可溶栓は、貫通孔の内径を前記範囲とし、貫通孔の軸方向の長さを前記範囲とすることで、溶融温度が72±2℃の可溶合金に優れた耐クリープ性を発揮させることができ、優れた耐クリープ性を備えた可溶合金を使用した可溶栓を提供することができる。可溶栓は、内径が2~6mmの範囲及び軸方向の長さが20~40mmの範囲にある貫通孔に請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の可溶合金を溶着・充填することで、異常時に貫通孔において可溶合金が確実に溶融して高圧ガスを貫通孔から外気中に放出することができ、可溶栓としての機能を確実に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図6】ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)から形成された可溶合金を貫通孔に充填した可溶栓の試験結果を示す図。
【
図7】ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、錫、インジウム(In)から形成された可溶合金を貫通孔に充填した可溶栓の試験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一例として示す可溶栓10Aの斜視図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る可溶栓の詳細を説明すると、以下のとおりである。尚、
図2は、ネジ部12の側から示す
図1の可溶栓10Aの斜視図であり、
図3は、
図1のA-A線矢視断面図である。
図4は、他の一例として示す可溶栓10Bの斜視図であり、
図5は、
図4のB-B線矢視断面図である。
図1は、可溶栓10Aを頭部11(ヘッド)の側から示し、
図4は、可溶栓10Bを上ネジ部13の側から示す。
図1,4では、軸方向(一方向)を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示す。
【0033】
図1及び
図4に示す可溶栓10A,10B(ヒューズプラグ)は、ボイラーや高圧ガス貯蔵器等に取り付けられ、平常時に可溶合金21A~21D(低融点金属)のいずれかによって貫通孔16が封止(閉塞)され、異常時に可溶合金21A~21Dが溶融して貫通孔16が開孔し、高温・高圧ガスを貫通孔16から外気中に放出することで、ボイラーや高圧ガス貯蔵器等の破損事故や破裂事故等を防止する。可溶栓10A,10Bは、黄銅から作られて軸方向へ長いネジ形状に成形されている。
【0034】
図1の可溶栓10Aは、六角形に成形された頭部11(ヘッド)と、頭部11に繋がって外周に雄ネジが作られたネジ部12とを有する。
図4の可溶栓10Bは、外周に雄ネジが作られた上ネジ部13と、外周に雄ネジが作られた下ネジ部15と、上ネジ部13及び下ネジ部15の間に位置する中間部14とを有する。
図4の可溶栓10Bの中間部14は、六角形に成形されている。
【0035】
それら可溶栓10A,10Bには、それらを軸方向へ貫通する貫通孔16(逃がし孔)が穿孔されている。貫通孔16は、可溶栓10A,10Bの径方向中央に形成されている。
図1の可溶栓10Aでは、貫通孔16が頭部11からネジ部12に向かって軸方向へ延びている。
図1の可溶栓10Aの頭部11には、頭部開口17が形成され(開口し)、可溶栓10Aのネジ部12には、ネジ部開口18が形成されている(開口している)。
図4の可溶栓10Bでは、貫通孔16が上ネジ部13から下ネジ部15に向かって軸方向へ延びている。
図4の可溶栓10Bの上ネジ部13には、上部開口19が形成され(開口し)、可溶栓10Bの下ネジ部15には、下部開口20が形成されている(開口している)。
【0036】
貫通孔16は、その内径が2~6mmの範囲にあり、頭部開口17とネジ部開口18との間の軸方向の長さ及び上部開口19と下部開口20との間の軸方向の長さが20~40mmの範囲にある。貫通孔16には、可溶合金21A~21D(低融点金属)のいずれかが溶着・充填されている。従って、貫通孔16(頭部開口17及び下部開口18、上部開口19及び下部開口20を含む)が可溶合金21A~21Dのうちのいずれかによって封止(閉塞)されている。
【0037】
貫通孔16に溶着・充填された可溶合金21Aの一例は、ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)とインジウム(In)とから形成されている。ビスマス(Bi)は、可溶合金21Aの全重量に対して33重量%~37重量%の範囲にあり、アンチモン(Sb)は、可溶合金21Aの全重量に対して1.3重量%~1.7重量%の範囲にある。インジウム(In)は、可溶合金21Aの全重量に対して61.3重量%~65.7重量%の範囲にある。尚、ビスマス、アンチモン、インジウムから形成された可溶合金21Aは、好ましくはビスマスが35重量%、アンチモンが1.5重量%、インジウムが63.5重量%である。ビスマス、アンチモン、インジウムから形成された可溶合金21Aは、その溶融温度が72±2℃である。
【0038】
可溶合金21Aを形成するアンチモンの重量%が1.3重量%未満では、アンチモンによって機械的強度を向上させることができず、使用温度域において可溶合金21Aの耐クリープ性を得ることができない。アンチモンの重量%が1.7重量%を超過すると、異常時に可溶合金21Aが瞬時に溶融し難くなり、異常時における可溶栓10A,10Bの動作性が低下する。
【0039】
ビスマス、アンチモン、インジウムから形成された可溶合金21Aは、ビスマスの重量%やアンチモンの重量%、インジウムの重量%が前記範囲にあるから、アンチモンによって機械的強度を向上させることができ、使用温度域において、可溶合金21Aの良好な耐クリープ性が得られるとともに、異常時における可溶栓10A,10Bの良好な動作性が確保維持される。
【0040】
ビスマス、アンチモン、インジウムから形成された可溶合金21Aを貫通孔16に充填した可溶栓10A,10Bを作成する一例は、以下のとおりである。可溶栓10A,10Bのネジ部開口18や下部開口20に黄銅から作られた蓋を配置し、ネジ部開口18や下部開口20を下に向けた状態で可溶栓10A,10Bを加熱装置(ホットプレート)に載置した。略φ2mm×1mmの小片に加工した前記重量%の低融点金属であるBi-Sb-In可溶合金21Aを頭部開口17や上部開口19から貫通孔16に収容した後、加熱装置(ホットプレート)によって可溶栓10A,10Bを約140~230℃に加熱し、貫通孔16に収容したBi-Sb-In可溶合金21A(低融点金属)を溶融させた。
【0041】
Bi-Sb-In可溶合金21Aによって貫通孔16が完全に封止(閉塞)されるように、Bi-Sb-In可溶合金21Aを貫通孔16に適宜補充しつつ、ステンレス製の攪拌棒で攪拌した。Bi-Sb-In可溶合金21Aによって貫通孔16が完全に封止(閉塞)された後、加熱装置(ホットプレート)による加熱をOFFにし、空冷によってBi-Sb-In可溶合金21A(低融点金属)が冷却固化した後、蓋を取り外し、可溶栓10A,10Bを作製した。
【0042】
図6は、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)から形成された可溶合金21Aを貫通孔16に充填した可溶栓10A,10Bの試験結果を示す図である。
図6の試験に使用した可溶合金21Aは、35重量%のビスマス(Bi)、1.5重量%のアンチモン(Sb)、63.5重量%のインジウム(In)から形成されている。試験では、10個の可溶栓10A,10B(第1~第10試験品)を用意した。試験条件は、試験圧力:15MPa、試験時間:50時間、試験温度60℃、使用流体:水である。判定としては、試験中に可溶栓10A,10Bが15MPaを保持しかつ50時間経過時に飛出し量が2mm以下であること。ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)から形成された可溶合金21Aを使用した可溶栓10A,10Bは、
図6に示すように、全ての可溶栓10A,10B(第1~第10試験品)において試験中に作動しないことを確認した。
【0043】
ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)から形成された可溶合金21Aを貫通孔16に充填した可溶栓10A,10Bは、それらに穿孔された貫通孔16に溶着・充填された可溶合金21Aが33~37重量%(好ましくは35重量%)のビスマス(Bi)と、1.3~1.7重量%(好ましくは1.5重量%)のアンチモン(Sb)と、61.3~65.7重量%(好ましくは63.5重量%)のインジウム(In)とから形成され、可溶合金21Aが33~37重量%のビスマス(Bi)と61.3~65.7重量%のインジウム(In)とを含有しつつ、1.3~1.7重量%のアンチモン(Sb)を含むから、ビスマス(Bi)及びインジウム(In)を主成分とするにもかかわらず、アンチモン(Sb)によって機械的強度を向上させることができ、それによって可溶合金21Aの耐クリープ性を得ることができ、優れた耐クリープ性を備えた可溶合金21Aを使用した可溶栓10A,10Bを提供することができる。
【0044】
可溶栓10A,10Bは、それらに使用する可溶合金21Aの溶融温度が72±2℃であり、可溶合金21Aの溶融温度が100℃未満であるにもかかわらず、耐クリープ性が高い可溶合金21Aが貫通孔16に溶着・充填されることで長期間の使用に耐えることができる。可溶栓10A,10Bは、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)から形成された可溶合金21Aが異常時に貫通孔16において速やかかつ確実に溶融し、高温高圧ガスを貫通孔16から外気中に放出することができ、可溶栓10A,10Bとしての機能を確実に発揮させることができる。
【0045】
貫通孔16に溶着・充填された可溶合金21Bの他の一例は、ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)と錫(Sn)とインジウム(In)とから形成されている。ビスマス(Bi)は、可溶合金21Bの全重量に対して33重量%~37重量%の範囲にあり、アンチモン(Sb)は、可溶合金21Bの全重量に対して0.8重量%~1.2重量%の範囲にある。錫(Sn)は、可溶合金21Bの全重量に対して2.8重量%~3.2重量%の範囲にあり、インジウム(In)は、可溶合金21Bの全重量に対して58.6重量%~63.4重量%の範囲にある。尚、ビスマス、アンチモン、錫、インジウムから形成された可溶合金21Bは、好ましくはビスマスが35重量%、アンチモンが1.0重量%、錫が3.0重量%、インジウムが61重量%である。ビスマス、アンチモン、錫、インジウムから形成された可溶合金21Bは、その溶融温度が72±2℃である。
【0046】
可溶合金21Bを形成するアンチモンの重量%が0.8重量%未満であって錫の重量%が2.8重量%未満では、アンチモン及び錫によって機械的強度を向上させることができず、使用温度域において可溶合金21Bの耐クリープ性を向上させることができない。アンチモンの重量%が1.7重量%を超過し、錫の重量%が3.2重量%を超過すると、異常時に可溶合金21Bが瞬時に溶融し難くなり、異常時における可溶栓10A,10Bの動作性が低下する。
【0047】
ビスマス、アンチモン、錫、インジウムから形成された可溶合金21Bは、ビスマスの重量%やアンチモンの重量%、錫の重量%、インジウムの重量%が前記範囲にあるから、アンチモン及び錫によって機械的強度を向上させることができ、使用温度域において、可溶合金21Bの良好な耐クリープ性が得られるとともに、異常時における可溶栓10A,10Bの良好な動作性が確保維持される。
【0048】
ビスマス、アンチモン、錫、インジウムから形成された可溶合金21Bを貫通孔16に充填した可溶栓10A,10Bを作成する一例は、以下のとおりである。可溶栓10A,10Bのネジ部開口18や下部開口20に黄銅から作られた蓋を配置し、ネジ部開口18や下部開口20を下に向けた状態で可溶栓10A,10Bを加熱装置(ホットプレート)に載置した。略φ2mm×1mmの小片に加工した前記重量%の低融点金属であるBi-Sb-In-Sn可溶合金21Bを頭部開口17や上部開口19から貫通孔16に収容した後、加熱装置(ホットプレート)によって可溶栓10A,10Bを約140~230℃に加熱し、貫通孔16に収容したBi-Sb-In-Sn可溶合金21B(低融点金属)を溶融させた。
【0049】
Bi-Sb-In-Sn可溶合金21Bによって貫通孔16が完全に封止(閉塞)されるように、Bi-Sb-In-Sn可溶合金21Bを貫通孔16に適宜補充しつつ、ステンレス製の攪拌棒で攪拌した。Bi-Sb-In-Sn可溶合金21Bによって貫通孔16が完全に封止(閉塞)された後、加熱装置(ホットプレート)による加熱をOFFにし、空冷によってBi-Sb-In-Sn可溶合金21B(低融点金属)が冷却固化した後、蓋を取り外し、可溶栓10A,10Bを作製した。
【0050】
図7は、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、錫、インジウム(In)から形成された可溶合金21Bを貫通孔16に充填した可溶栓10A,10Bの試験結果を示す図である。
図6の試験に使用した可溶合金21Bは、35重量%のビスマス(Bi)、1.0重量%のアンチモン(Sb)、3.0重量%の錫、61重量%のインジウム(In)から形成されている。試験では、5個の可溶栓10A,10B(第1~第5試験品)を用意した。試験条件は、試験圧力:15MPa、試験時間:50時間、試験温度60℃、使用流体:水である。判定としては、試験中に可溶栓10A,10Bが15MPaを保持しかつ50時間経過時に飛出し量が2mm以下であること。ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、錫、インジウム(In)から形成された可溶合金21Bを使用した可溶栓10A,10Bは、
図6に示すように、全ての可溶栓10A,10B(第1~第5試験品)において試験中に作動しないことを確認した。
【0051】
ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、錫(Sn)、インジウム(In)から形成された可溶合金21Bを貫通孔16に充填した可溶栓10A,10Bは、それらに穿孔された貫通孔16に溶着・充填された可溶合金21Bが33~37重量%(好ましくは35重量%)のビスマス(Bi)と、0.8~1.2重量%(好ましくは1.0重量%)のアンチモン(Sb)と、2.8~3.2重量%(好ましくは3.0重量%)の錫(Sn)と、58.6~63.4重量%(好ましくは61重量%)のインジウム(In)とから形成され、可溶合金21Bが33~37重量%のビスマス(Bi)と58.6~63.4重量%のインジウム(In)とを含有しつつ、0.8~1.2重量%のアンチモン(Sb)と2.8~3.2重量%の錫(Sn)とを含むから、ビスマス(Bi)及びインジウム(In)を主成分とするにもかかわらず、アンチモン(Sb)及び錫(Sn)によって機械的強度を向上させることができ、使用温度域において、可溶合金21Bの耐クリープ性を得ることができ、優れた耐クリープ性を備えた可溶合金21Bを使用した可溶栓10A,10Bを提供することができる。
【0052】
可溶栓10A,10Bは、それらに使用する可溶合金21Bの溶融温度が72±2℃であり、可溶合金21Bの溶融温度が100℃未満であるにもかかわらず、耐クリープ性が高い可溶合金21Bが貫通孔16に溶着・充填されることで長期間の使用に耐えることができる。可溶栓10A,10Bは、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、錫(Sn)から形成された可溶合金21Bが異常時に貫通孔16において速やかかつ確実に溶融し、高温高圧ガスを貫通孔16から外気中に放出することができ、可溶栓10A,10Bとしての機能を確実に発揮させることができる。
【0053】
貫通孔16に溶着・充填された可溶合金21Cの他の一例は、ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)とインジウム(In)とから形成され、セラミック微粉体を含有している。ビスマス(Bi)は、可溶合金21Cの全重量に対して33重量%~37重量%の範囲にあり、アンチモン(Sb)は、可溶合金21Cの全重量に対して1.3重量%~1.7重量%の範囲にある。インジウム(In)は、可溶合金21Cの全重量に対して61.2重量%~65.68重量%の範囲にあり、セラミック微粉体は、可溶合金21Cの全重量に対して0.02重量%~0.1重量%の範囲にある。
【0054】
尚、ビスマス、アンチモン、インジウムから形成され、セラミック微粉体を含有する可溶合金21Cは、好ましくはビスマスが35重量%、アンチモンが1.5重量%、インジウムが63.4~63.48重量%である。ビスマス、アンチモン、インジウムから形成され、セラミック微粉体を含有する可溶合金21Cは、その溶融温度が72±2℃である。
【0055】
セラミック微粉体は、その平均粒径が50~200μmの範囲にあり、可溶合金21Cの全域に均一に分散している。セラミック微粉体には、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、ジルコン(ZrO2)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つを使用することができる。
【0056】
可溶合金21Cを形成するアンチモンの重量%が1.3重量%未満では、アンチモンによって機械的強度を向上させることができず、使用温度域において、可溶合金21Cの耐クリープ性を向上させることができない。アンチモンの重量%が1.7重量%を超過すると、異常時に可溶合金21Cが瞬時に溶融し難くなり、異常時における可溶栓10A,10Bの動作性が低下する。可溶合金21Cに含まれるセラミック微粉体の重量%が0.02重量%未満では、セラミック微粉体のクリープ特性を十分に利用することができず、可溶合金21Cの耐クリープ性を向上させることができない。セラミック微粉体の重量%が0.1重量%を超過すると、セラミック微粉体の比率が大きすぎ可溶合金と均等に分散せず、異常時における可溶栓10A,10Bの動作性が低下する。セラミック微粉体の平均粒径が前記範囲未満又は前記範囲を超過すると、セラミック微粉体を可溶合金21Cの全域に均一に分散させることが難しく、可溶合金21Cにおいてセラミック微粉体のクリープ特性を十分に利用することができない。
【0057】
ビスマス、アンチモン、インジウムから形成され、セラミック微粉体を含有する可溶合金21Cは、ビスマスの重量%やアンチモンの重量%、インジウムの重量%、セラミック微粉体の重量%が前記範囲にあるから、アンチモンによって可溶合金21Cの機械的強度が向上し、セラミック微粉体の優れたクリープ特性を十分に利用することで、可溶合金21Cの耐クリープ性を得られるとともに、異常時における可溶栓10A,10Bの良好な動作性が確保維持される。又、セラミック微粉体の平均粒径が前記範囲にあるから、セラミック微粉体が可溶合金21Cの全域に均一に分散し、可溶合金21Cにおいてセラミック微粉体のクリープ特性を十分に利用することができる。
【0058】
ビスマス、アンチモン、インジウムから形成され、セラミック微粉体を含有する可溶合金21Cを貫通孔16に充填した可溶栓10A,10Bを作成する一例は、以下のとおりである。可溶栓10A,10Bのネジ部開口18や下部開口20に黄銅から作られた蓋を配置し、ネジ部開口18や下部開口20を下に向けた状態で可溶栓10A,10Bを加熱装置(ホットプレート)に載置した。略φ2mm×1mmの小片に加工した前記重量%の低融点金属であるBi-Sb-In可溶合金21Cを頭部開口17や上部開口19から貫通孔16に収容した後、加熱装置(ホットプレート)によって可溶栓10A,10Bを約140~230℃に加熱し、貫通孔16に収容したBi-Sb-In可溶合金21C(低融点金属)を溶融させた。
【0059】
Bi-Sb-In可溶合金21Cによって貫通孔16が完全に封止(閉塞)されるように、Bi-Sb-In可溶合金21Cを貫通孔16に適宜補充しつつ、溶融したBi-Sb-In可溶合金21Cにセラミック微粉体を投入し、ステンレス製の攪拌棒で攪拌して溶融したBi-Sb-In可溶合金21Cの全域にセラミック微粉体を均一に混入させた。セラミック微粉体を含むBi-Sb-In可溶合金21Cによって貫通孔16が完全に封止(閉塞)された後、加熱装置(ホットプレート)による加熱をOFFにし、空冷によってセラミック微粉体を含むBi-Sb-In可溶合金21C(低融点金属)が冷却固化した後、蓋を取り外し、可溶栓10A,10Bを作製した。
【0060】
ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)から形成され、セラミック微粉体を含む可溶合金21Cを貫通孔16に充填した可溶栓10A,10Bは、可溶栓10A,10Bに穿孔された貫通孔16に溶着・充填された可溶合金21Cが33~37重量%のビスマス(Bi)と、1.3~1.7重量%のアンチモン(Sb)と、61.2~65.68重量%のインジウム(In)とから形成されて0.02~0.1重量%のセラミック微粉体を含有し、可溶合金21Cが33~37重量%のビスマス(Bi)と61.2~65.68重量%のインジウム(In)とを含有しつつ、1.3~1.7重量%のアンチモン(Sb)と0.02~0.1重量%のセラミック微粉体とを含むから、ビスマス(Bi)及びインジウム(In)を主成分とするにもかかわらず、アンチモン(Sb)とともに、可溶合金21Cの全域に均一に分散するセラミック微粉体の優れたクリープ特性によってビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)から形成された可溶合金21Cの機械的強度が増加し、それによって可溶合金21Cの耐クリープ性を向上させることができ、優れた耐クリープ性を備えた可溶合金21Cを使用した可溶栓10A,10Bを提供することができる。
【0061】
可溶栓10A,10Bは、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)から形成された可溶合金21Cを貫通孔16に溶着・充填して貫通孔16を封止(閉塞)する過程(封止(閉塞)する直前)において、溶融した可溶合金21C全域にセラミック微粉体を均一に混入させ、セラミック微粉体を均一に分散させた可溶合金21Cを貫通孔16に溶着・充填して貫通孔16を封止(閉塞)するから、貫通孔16に溶着・充填された可溶合金21C全域にセラミック微粉体を均一に分散させることができ、可溶合金21Cにおけるセラミック微粉体の偏りを防ぐことができるとともに、可溶合金21C全域に均一に分散したセラミック微粉体の優れたクリープ特性によって可溶合金21Cの機械的強度が大幅に増加し、それによって可溶合金21Cの耐クリープ性を大幅に向上させることができる。
【0062】
可溶栓10A,10Bは、それらに使用する可溶合金21Cの溶融温度が72±2℃であり、可溶合金21Cの溶融温度が100℃未満であるにもかかわらず、耐クリープ性が高い可溶合金21Cが貫通孔16に溶着・充填されることで長期間の使用に耐えることができる。可溶栓10A,10Bは、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)から形成されて均一に分散するセラミック微粉体を含む可溶合金21Cが異常時に貫通孔において速やかかつ確実に溶融し、高温・高圧ガスを貫通孔16から外気中に放出することができ、可溶栓10A,10Bとしての機能を確実に発揮させることができる。
【0063】
貫通孔に溶着・充填された可溶合金21Dの他の一例は、ビスマス(Bi)とアンチモン(Sb)と錫(Sn)とインジウム(In)とから形成され、セラミック微粉体を含有している。ビスマス(Bi)は、可溶合金21Dの全重量に対して33重量%~37重量%の範囲にあり、アンチモン(Sb)は、可溶合金21Dの全重量に対して0.8重量%~1.2重量%の範囲にある。錫(Sn)は、可溶合金21Dの全重量に対して2.8重量%~3.2重量%の範囲にあり、インジウム(In)は、可溶合金21Dの全重量に対して58.5重量%~63.38重量%の範囲にある。セラミック微粉体は、可溶合金21Dの全重量に対して0.02重量%~0.1重量%の範囲にある。
【0064】
尚、ビスマス、アンチモン、錫、インジウムから形成され、セラミック微粉体を含有する可溶合金21Dは、好ましくはビスマスが35重量%、アンチモンが1.0重量%、錫が3.0重量%、インジウムが60.98~60.9重量%である。ビスマス、アンチモン、錫、インジウムから形成され、セラミック微粉体を含有する可溶合金21Dは、その溶融温度が72±2℃である。
【0065】
セラミック微粉体は、その平均粒径が2~50μmの範囲にあり、可溶合金21Dの全域に均一に分散している。セラミック微粉体には、可溶合金21Cと同様に、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、ジルコン(ZrO2)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つを使用することができる。
【0066】
可溶合金21Dを形成するアンチモンの重量%が0.8重量%未満であって錫の重量%が2.8重量%未満では、アンチモン及び錫によって機械的強度を向上させることができず、使用温度域において、可溶合金21Dの耐クリープ性を得ることができない。アンチモンの重量%が1.7重量%を超過し、錫の重量%が3.2重量%を超過すると、異常時に可溶合金21Dが瞬時に溶融し難くなり、異常時における可溶栓10A,10Bの動作性が低下する。可溶合金21Dに含まれるセラミック微粉体の重量%が0.02重量%未満では、セラミック微粉体のクリープ特性を十分に利用することができず、可溶合金21Dの耐クリープ性を向上させることができない。セラミック微粉体の重量%が0.1重量%を超過すると、セラミック微粉体の比率が大きすぎて可溶合金に均等に分散せず、異常時における可溶栓10A,10Bの動作性が低下する。セラミック微粉体の平均粒径が前記範囲未満又は前記範囲を超過すると、セラミック微粉体を可溶合金21Dの全域に均一に分散させることが難しく、可溶合金21Dにおいてセラミック微粉体のクリープ特性を十分に利用することができない。
【0067】
ビスマス、アンチモン、錫、インジウムから形成され、セラミック微粉体を含有する可溶合金21Dは、ビスマスの重量%やアンチモンの重量%、錫の重量%、インジウムの重量%、セラミック微粉体の重量%が前記範囲にあるから、アンチモン及び錫によって可溶合金21Dの機械的強度を向上し、セラミック微粉体の優れたクリープ特性を十分に利用することで、可溶合金21Dの耐クリープ性を得られるとともに、異常時における可溶栓10A,10Bの良好な動作性が維持される。又、セラミック微粉体の平均粒径が前記範囲にあるから、セラミック微粉体が可溶合金21Dの全域に均一に分散し、可溶合金21Dにおいてセラミック微粉体のクリープ特性を十分に利用することができる。
【0068】
ビスマス、アンチモン、錫、インジウムから形成され、セラミック微粉体を含有する可溶合金21Dを貫通孔16に充填した可溶栓10A,10Bを作成する一例は、以下のとおりである。可溶栓10A,10Bのネジ部開口18や下部開口20に黄銅から作られた蓋を配置し、ネジ部開口18や下部開口20を下に向けた状態で可溶栓10A,10Bを加熱装置(ホットプレート)に載置した。略φ2mm×1mmの小片に加工した前記重量%の低融点金属であるBi-Sb-In-Sn可溶合金21Dを頭部開口17や上部開口19から貫通孔16に収容した後、加熱装置(ホットプレート)によって可溶栓10A,10Bを約140~230℃に加熱し、貫通孔16に収容したBi-Sb-In-Sn可溶合金21D(低融点金属)を溶融させた。
【0069】
Bi-Sb-In-Sn可溶合金21Dによって貫通孔16が完全に封止(閉塞)されるように、Bi-Sb-In-Sn可溶合金21Dを貫通孔16に適宜補充しつつ、溶融したBi-Sb-In-Sn可溶合金21Dにセラミック微粉体を投入し、ステンレス製の攪拌棒で攪拌して溶融したBi-Sb-In-Sn可溶合金21Dの全域にセラミック微粉体を均一に混入させた。セラミック微粉体を含むBi-Sb-In-Sn可溶合金21Dによって貫通孔16が完全に封止(閉塞)された後、加熱装置(ホットプレート)による加熱をOFFにし、空冷によってセラミック微粉体を含むBi-Sb-In-Sn可溶合金21D(低融点金属)が冷却固化した後、蓋を取り外し、可溶栓10A,10Bを作製した。
【0070】
ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、錫(Sn)、インジウム(In)から形成され、セラミック微粉体を含む可溶合金21Dを貫通孔16に充填した可溶栓10A,10Bは、可溶栓10A,10Bに穿孔された貫通孔16に溶着・充填された可溶合金21Dが33~37重量%のビスマス(Bi)と、0.8~1.2重量%のアンチモン(Sb)と、2.8~3.2重量%の錫(Sn)と、58.5~63.38重量%のインジウム(In)とから形成されて0.02~0.1重量%のセラミック微粉体を含有し、可溶合金21Dが33~37重量%のビスマス(Bi)と58.5~63.38重量%のインジウム(In)とを含有しつつ、0.8~1.2重量%のアンチモン(Sb)と2.8~3.2重量%の錫(Sn)と0.02~0.1重量%のセラミック微粉体とを含むから、ビスマス(Bi)及びインジウム(In)を主成分とするにもかかわらず、アンチモン(Sb)及び錫(Sn)とともに、可溶合金21Dの全域に均一に分散するセラミック微粉体の優れたクリープ特性によってビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、錫(Sn)、インジウム(In)から形成された可溶合金21Dの機械的強度が増加し、それによって可溶合金21Dの耐クリープ性を向上させることができ、優れた耐クリープ性を備えた可溶合金21Dを使用した可溶栓10A,10Bを提供することができる。
【0071】
可溶栓10A,10Bは、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、錫(Sn)から形成された可溶合金21Dを貫通孔16に溶着・充填して貫通孔16を封止(閉塞)する過程(封止(閉塞)する直前)において、溶融した可溶合金21D全域にセラミック微粉体を均一に混入させ、セラミック微粉体を均一に分散させた可溶合金21Dを貫通孔16に溶着・充填して貫通孔16を封止(閉塞)するから、貫通孔16に溶着・充填された可溶合金21D全域にセラミック微粉体を均一に分散させることができ、可溶合金21Dにおけるセラミック微粉体の偏りを防ぐことができるとともに、可溶合金21D全域に均一に分散したセラミック微粉体の優れたクリープ特性によって可溶合金21Dの機械的強度が大幅に増加し、それによって可溶合金21Dの耐クリープ性を大幅に向上させることができる。
【0072】
可溶栓10A,10Bは、それに使用する可溶合金21Dの溶融温度が72±2℃であり、可溶合金21Dの溶融温度が100℃未満であるにもかかわらず、耐クリープ性が高い可溶合金21Dが貫通孔16に溶着・充填されることで長期間の使用に耐えることができる。可溶栓10A,10Bは、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、錫(Sn)から形成されて均一に分散するセラミック微粉体を含む可溶合金21Dが異常時に貫通孔16において速やかかつ確実に溶融し、高温・高圧ガスを貫通孔16から外気中に放出することができ、可溶栓10A,10Bとしての機能を確実に発揮させることができる。
【符号の説明】
【0073】
10A 可溶栓
10B 可溶栓
11 頭部
12 ネジ部
13 上ネジ部
14 中間部
15 下ネジ部
16 貫通孔
17 頭部開口
18 ネジ部開口
19 上部開口
20 下部開口
21A~21D 可溶合金