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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137836
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】封口体及び電気二重層キャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/80 20130101AFI20220914BHJP
【FI】
H01G11/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037520
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 文子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀明
【テーマコード(参考)】
5E078
【Fターム(参考)】
5E078AA12
5E078AB02
5E078EA03
5E078EA09
5E078EA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水分通過量は低く、しかしながらガス透過量の低下度合いは抑制されている封口体及びこの封口体を備える電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】封口体は、エラストマーを含むエラストマー部材を備える。エラストマー部材は、プロセスオイル、ポリエチレンワックス及びポリブタジエンの群から選択される1種以上と、タルクとを含む。電気二重層キャパシタは、電気二重層を有するコンデンサ素子をケースに収容し、この封口体によってケースを封口して構成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気二重層キャパシタのケースを封口する封口体であって、
エラストマーを含むエラストマー部材を備え、
前記エラストマー部材は、プロセスオイル、ポリエチレンワックス及びポリブタジエンの群から選択される1種以上と、タルクとを含むこと、
を特徴とする封口体。
【請求項2】
水分の通過量が10[mg×mm/cm]以下であり、且つ水分の通過量に対するガスの透過量の比が1を超えること、
を特徴とする請求項1記載の封口体。
【請求項3】
前記エラストマー部材は、更にマイカを含むこと、
を特徴とする請求項1又は2記載の封口体。
【請求項4】
前記エラストマー部材は、前記プロセスオイルを含み、
前記プロセスオイルは、前記エラストマー100重量部に対して、5重量部以上50重量部以下の割合で前記エラストマー部材に含まれること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の封口体。
【請求項5】
前記タルクを含む白色充填剤が、前記エラストマー100重量部に対して、150重量部以上420重量部以下の割合で前記エラストマー部材に含まれること、
を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の封口体。
【請求項6】
前記エラストマー部材は、前記プロセスオイルと前記ポリエチレンワックスを含み、
前記タルクを含む白色充填剤が、前記エラストマー100重量部に対して、250重量部以上420重量部以下の割合で前記エラストマー部材に含まれること、
を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の封口体。
【請求項7】
前記エラストマー部材は、クレーを更に含むこと、
を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の封口体。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の封口体と、
前記封口体によって封口されるケースと、
前記ケースに収容され、電気二重層を有するコンデンサ素子と、
を備えること、
を特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項9】
前記コンデンサ素子に含浸された非水系の電解液を備えること、
を特徴とする請求項8記載の電気二重層キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層を有するコンデンサ素子が収容されたケースを封口する封口体、及びこの封口体を備える電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、一対の分極性電極の間に電解質を充填して構成される。この電気二重層キャパシタは、分極性電極と電解質との境界面に形成される電気二重層の蓄電作用を利用している。即ち、正極において、電解質のアニオンは、分極性電極との界面に整列し、分極性電極内の空孔と極めて短い距離を隔てて対を成す。これにより、正極には電位障壁が形成される。負極においても、電解質のカチオンが分極性電極との界面に整列し、分極性電極内の電子と極めて短い距離を隔てて対を成し、負極に電位障壁が形成される。
【0003】
このように、電気二重層を利用するキャパシタは、充放電に化学反応を利用せず物理的に電荷を蓄える。そのため、電気二重層を利用するキャパシタは構成材料の劣化が少なく、充放電サイクル寿命に優れる。従って、電気二重層を利用するキャパシタは、定期的な部品交換が困難な用途や設置場所において、交換頻度の低減やメンテナンスフリーを目的に採用されることも多い。
【0004】
この電気二重層キャパシタでは、電解質が添加されて成る電解液の蒸散を抑制するために、一対の分極性電極の間に電解質を充填して構成されたコンデンサ素子をケースと封口体とで密閉している(例えば、特許文献1参照。)。封口体は、コンデンサ素子を収容した有底筒状のケースの開口を封止する部材である。この封口体には、例えばブチルゴム等のエラストマー部材が備えられる。エラストマー部材に、石油系又はパラフィン系の軟化剤及び白色充填剤であるクレーが配合されることにより、高温、高湿の環境下での封口体のシール性の不具合を解消する案も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-70051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気二重層キャパシタの電解液として、γ-ブチロラクトン及びプロピレンカーボネート等の有機溶媒を用いた非水系が知られている。非水系の電解液に水分が含有していると、電気二重層キャパシタに不都合を生じさせる虞がある。具体的には、水分を含む電解液を使用した電気二重層キャパシタを70℃前後の高温条件での電圧負荷試験を行なうと、電気二重層キャパシタの分極性電極の主材料である活性炭上での化学反応が起こる。
【0007】
活性炭上での化学反応は、活性炭の組織を壊して活性炭の微粒子を電解液中に移動させてしまい、漏れ電流の増加や短絡の原因ともなる。また、活性炭の組織が壊れるため、分極性電極そのものの電気抵抗が増大し、電気二重層コンデンサ全体としての内部抵抗増加の原因ともなる。そこで、封口体には、水分を通過させず、電気二重層キャパシタの外部からの水分浸入を食い止め、あるいは抑制するため、水分を電気二重層キャパシタの内部へ浸入させ難い低透過性が求められている。
【0008】
但し、電気二重層キャパシタ内への水分浸入量を完全にゼロに制御することはできず、僅か数十ppm以下の水分を含む電解液であっても、活性炭上での化学反応を引き起こす。そして、活性炭上での化学反応は、最終的には、電気二重層キャパシタ内部で一酸化炭素等のガス発生に繋がる。
【0009】
そのため、封口体に低透過性を求めすぎると、ガスが外部に十分に放出されず、ガスが電気二重層キャパシタ内に蓄積され、蓄積されたガスが電気二重層キャパシタの内圧を上昇させてしまう。そして、開放弁作動により電気二重層キャパシタから液漏れを生じさせたり、電気二重層キャパシタを破裂させてしまう虞が生じる。そこで、水分の通過量を低くして電気二重層キャパシタ内への水分浸入量を抑え、しかしながらガス透過量の低下度合いは抑制されている封口体が求められる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、水分の通過量は低く、しかしながらガス透過量の低下度合いは抑制されている封口体、及びこの封口体を備える電気二重層キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決すべく、本発明の封口体は、電気二重層キャパシタのケースを封口する封口体であって、エラストマーを含むエラストマー部材を備え、前記エラストマー部材は、プロセスオイル、ポリエチレンワックス及びポリブタジエンの群から選択される1種以上と、タルクとを含むこと、を特徴とする。
【0012】
プロセスオイル、ポリエチレンワックス及びポリブタジエンの群から選択される1種以上と、タルクの組み合わせは、ガスの透過性の低下は小さく抑えつつ、水分の通過性を下げることができ、水分の通過量に対するガスの透過量の比を1超にすることができる。例えば、水分の通過量が10[mg×mm/cm]以下であり、且つ水分の通過量に対するガスの透過量の比が1を超えるようにすることができる。
【0013】
前記エラストマー部材は、更にマイカを含むようにしてもよい。マイカを含むことにより、ガスの透過性の低下を更に抑制しつつ、水分の通過性を更に下げ、水分の通過量に対するガスの透過量の比が1を大きく上回る。
【0014】
前記エラストマー部材は、前記プロセスオイルを含み、前記プロセスオイルは、前記エラストマー100重量部に対して、5重量部以上50重量部以下の割合で前記エラストマー部材に含まれるようにしてもよい。
【0015】
前記タルクを含む白色充填剤が、前記エラストマー100重量部に対して、150重量部以上420重量部以下の割合で前記エラストマー部材に含まれるようにしてもよい。
【0016】
前記エラストマー部材は、前記プロセスオイルと前記ポリエチレンワックスを含み、前記タルクを含む白色充填剤が、前記エラストマー100重量部に対して、250重量部以上420重量部以下の割合で前記エラストマー部材に含まれるようにしてもよい。プロセスオイル、ポリエチレンワックス、ポリブタジエン及びタルクの何れも未添加の場合と比べると、ガスの透過性が上がり、水分の通過性が下がり、高い次元でガスの透過性と水分の通過性のバランスを取ることができる。
【0017】
前記エラストマー部材は、クレーを更に含むようにしてもよい。
【0018】
この封口体と、前記封口体によって封口されるケースと、前記ケースに収容され、電気二重層を有するコンデンサ素子と、を備える電気二重層キャパシタも、本発明の一態様である。
【0019】
この電気二重層キャパシタにおいて、前記コンデンサ素子に含浸された非水系の電解液を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、封口体において、水分通過量は低く、しかしながらガス透過量の低下度合いは抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る封口体及び電気二重層キャパシタについて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでない。
【0022】
(電気二重層キャパシタ概要)
電気二重層キャパシタは、静電容量により電荷の蓄電及び放電を行う受動素子である。電気二重層キャパシタのコンデンサ素子は、正極箔、負極箔、セパレータ及び電解液を備え、巻回形又は積層形を採る。正極箔と負極箔はセパレータを介して対向する。電解液は、コンデンサ素子の空隙部に充填されるが、電解質を保持できれば媒体は液体でなくてよく、固体高分子でもゲル電解質でもよい。
【0023】
このコンデンサ素子は電気二重層を有する。即ち、正極箔及び負極箔には電極活物質の層が形成され、正極箔または負極箔の少なくとも一方の分極性電極と電解液との境界面に電気二重層が形成される。正極箔及び負極箔の両方に分極性電極を有するキャパシタの他にも、ハイブリッドキャパシタも電気二重層キャパシタと呼ぶ。ハイブリッドキャパシタは、正極箔に分極性電極を有し、負極箔にリチウムイオンを吸蔵放出可能な金属化合物粒子により成る電極活物質の層または炭素材料のファラデー反応電極を有する。
【0024】
コンデンサ素子は、電気二重層キャパシタのケースに収容され、封口体で密封されている。ケースは、コンデンサ素子を収容する有底筒状であり、例えばアルミニウム製である。封口体は、ケースの開口に加締め加工により取り付けられ、ケースの開口を封止する。正極箔と負極箔には引出端子が接続されている。封口体には、外部に導出する外部端子が取り付けられている。正極箔及び負極箔に接続された引出端子と封口体の外部端子は電気的に接続され、これにより電気二重層キャパシタは、回路上に実装可能となっている。または、正極箔と負極箔に接続された引出端子が封口体の貫通孔を通って外部に導出されている。
【0025】
(封口体)
この封口体は、加締め加工によるケースとの密着性向上のため、また絶縁性確保のために弾性力を備えたエラストマー部材を備えている。エラストマー部材は、主としてエラストマーを含む。エラストマーとしては、ブチルゴムとも呼ばれるイソブチレンイソプレンゴム、EPDMとも呼ばれるエチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、天然ゴムが挙げられる。エラストマー部材は、樹脂加硫、過酸化物加硫、硫黄加硫、キノイド加硫及びポリオール加硫等の加硫にて作製され、また熱可塑性エラストマーも挙げられる。エラストマーは、1種又は2種以上が用いられてもよい。
【0026】
このエラストマー部材には、更に、プロセスオイル、ポリエチレンワックス及びポリブタジエンのうちの1種以上が添加されている。プロセスオイルとしては、パラフィン系、ナフテン系及び芳香族系等が挙げられる。ポリエチレンワックスとしては、低密度ポリエチレンワックスでも高密度ポリエチレンワックスでも何れでもよい。また、エラストマー部材には、タルクが添加されている。タルク以外の白色充填剤をタルクに加えてエラストマー部材に添加してもよい。タルク以外の白色充填剤としては、マイカ及びクレーが挙げられる。例えば、タルク単独、タルクとクレー、又はタルクとマイカとクレーをエラストマー部材に添加してもよい。
【0027】
ここで、プロセスオイル、ポリエチレンワックス又はポリブタジエンを含むエラストマー部材はガスも水分も透過させ易い。一方、タルクを含むエラストマー部材は、プロセスオイル、ポリエチレンワックス又はポリブタジエンと効果が相反し、ガスも水分も透過させ難い。しかも、水分もガスも透過させ難い白色充填剤としてタルク以外にもクレー等が挙げられるが、タルクは、クレーと比べて、水分の通過量を低下させる一方、ガスの透過性を極端に下げてしまう。
【0028】
しかしながら、プロセスオイル、ポリエチレンワックス及びポリブタジエンの群から選択される1種以上と、タルクとを組み合わせると、タルクのガス低透過性の効果がキャンセル又は減殺され、ガスの透過性は極端に下がらず、水分の通過性を下げることができ、水分の通過量に対するガスの透過量の比を1超にすることができる。クレーのみを選択した場合には、クレーのガス低透過性と水分低透過性の両方ともがキャンセルされてしまい、水分通過量も多くなってしまう。
【0029】
プロセスオイル、ポリエチレンワックス及びポリブタジエンのうちの添加された種は、1種類につき、全エラストマー100重量部に対して5重量部以上50重量部以下の割合で添加することが好ましい。例えば、プロセスオイルが添加された場合、プロセスオイルは、全エラストマー100重量部に対して5重量部以上50重量部以下の割合で添加される。
【0030】
また、エラストマー部材に含まれるタルク及びタルク以外の白色充填剤の総計は、全エラストマー100重量部に対して150重量部以上420重量部以下の割合で添加することが好ましい。タルクは、全エラストマー100重量部に対して10重量部以上160重量部以下の割合で添加されることが好ましく、クレーを添加する場合には全エラストマー100重量部に対して20重量部以上220重量部以下の割合で添加されることが好ましく、マイカを添加する場合には0重量部超80重量部以下の割合で添加されることが好ましい。
【0031】
特に、エラストマー部材には、プロセスオイルとポリエチレンワックスの両方を含有させ、且つタルクを含む白色充填剤が全エラストマー100重量部に対して150重量部以上420重量部以下の割合で添加されていることが好ましい。この種の組み合わせ及び添加量範囲であると、プロセスオイル、ポリエチレンワックス、ポリブタジエン及びタルクの何れも未添加としたエラストマー部材を備える封口体と比べて、水分通過量が低くなる一方、ガス透過量の低下を抑制するどころか、ガス透過量を向上させることもでき、水分の通過量に対するガスの透過量の比も1を遙かに超えて高くなる。
【0032】
エラストマー部材には、更に他の添加剤を含めてもよい。例えば、エラストマー部材には、カーボンブラック等を含めることができる。また、この封口体は、エラストマー部材に硬質樹脂板を積層し、または硬質樹脂板をエラストマー部材で内包させるようにして備えていてもよい。硬質樹脂板は、電気二重層キャパシタ内の密閉性を更に高める。
【0033】
このような封口体は、エラストマー、加硫剤、並びにプロセスオイル、ポリエチレンワックス及びポリブタジエンの群から選択される1種以上、並びにタルク、またはタルク以外の白色充填剤と他の添加剤とを混和して作製される。加硫剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5ジメチル-2,5ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂類等が挙げられ、これらの量は全エラストマー100重量部に対して0.5~20重量部の量で混和すればよい。
【0034】
(コンデンサ素子)
(電極箔)
このような封口体を、コンデンサ素子を収容したケースの開口に嵌め込むことで、電気二重層キャパシタは作製される。コンデンサ素子の正極箔及び負極箔は、集電体に分極性電極となる電極活物質層を形成させて成る。集電体は、アルミニウム箔、白金、金、ニッケル、チタン、鋼、およびカーボンなどの弁作用を有する金属を使用することができる。集電体の形状は、膜状、箔状、板状、網状、エキスパンドメタル状、円筒状などの任意の形状を採用することができる。また集電体の表面はエッチング処理などによる凹凸面を形成してもよく、またプレーン面であってもよい。さらには、表面処理を行い、リンを集電体の表面に付着させてもよい。
【0035】
分極性電極となる電極活物質層には炭素材料を含有させる。炭素材料は、やしがら等の天然植物組織、フェノール等の合成樹脂、石炭、コークス、ピッチ等の化石燃料由来のものを原料とする活性炭、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラック、カーボンナノホーン、無定形炭素、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化ケッチェンブラック、メソポーラス炭素、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバなどが挙げられる。この炭素材料は、水蒸気賦活、アルカリ賦活、塩化亜鉛賦活又は電界賦活等の賦活処理並びに開口処理によって比表面積を向上させてもよい。
【0036】
炭素材料は、導電助剤とバインダーと混合されて集電体にドクターブレード法等によって塗工される。炭素材料と導電助剤とバインダーの混合物をシート状に成型し、集電体に圧着するようにしてもよい。バインダーとしては、例えばフッ素系ゴム、ジエン系ゴム、スチレン系ゴム等のゴム類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース、その他、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。これらのバインダーは、単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
【0037】
導電助剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、天然/人造黒鉛、繊維状炭素等を用いることができ、繊維状炭素としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ(以下、CNF)などの繊維状炭素を挙げることができる。カーボンナノチューブは、グラフェンシートが1層である単層カーボンナノチューブ(SWCNT)でも、2層以上のグラフェンシートが同軸状に丸まり、チューブ壁が多層をなす多層カーボンナノチューブ(MWCNT)でもよく、それらが混合されていてもよい。
【0038】
(電解液)
電解液は、非水系の溶媒を含んで組成される。非水系の溶媒としては、γ-ブチロラクトン又はγ-バレロラクトンといったラクトン化合物や、プロピレンカーボネート又はエチレンカーボネートといったカーボネート化合物が挙げられる。溶媒としては、ラクトン化合物やカーボネート化合物に加えて他種の溶媒を混合して用いることができる。他種の溶媒としては、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、鎖状エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホランなどのスルホン化合物等を挙げることができる。
【0039】
電解液の溶質としては、第4級アンモニウム塩が挙げられる。第4級アンモニウム塩としては、カチオンとしてテトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、メチルエチルピロリジニウム、スピロビピロリジニウム等を挙げることができ、アニオンとしては、BF 、PF 、ClO 、AsF 、SbF 、AlCl 、またはRfSO 、(RfSO、RfCO (Rfは炭素数1~8のフルオロアルキル基)等を挙げることができる。
【0040】
典型的には、第4級アンモニウム塩として、テトラメチルアンモニウムBF、エチルトリメチルアンモニウムBF4、ジエチルジメチルアンモニウムBF4、トリエチルメチルアンモニウムBF4、テトラエチルアンモニウムBF4、スピロビピロリジニウムBF4、メチルエチルピロリジニウムBF4、テトラメチルアンモニウムPF、エチルトリメチルアンモニウムPF6、ジエチルジメチルアンモニウムPF6、トリエチルメチルアンモニウムPF6、テトラエチルアンモニウムPF6、スピロビピロリジニウムPF6、メチルエチルピロリジニウムPF6、テトラメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、エチルトリメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、ジエチルジメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、トリエチルメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、テトラエチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、スピロビピロリジニウムビス(オキサラト)ボレート、メチルエチルピロリジニウムビス(オキサラト)ボレート、テトラメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、エチルトリメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、ジエチルジメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、トリエチルメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、テトラエチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、スピロビピロリジニウムジフルオロオキサラトボレート、メチルエチルピロリジニウムジフルオロオキサラトボレート等を用いることができる。
【0041】
また、添加剤としては、リン酸類及びその誘導体(リン酸、亜リン酸、リン酸エステル類、ホスホン酸類等)、ホウ酸類及びその誘導体(ホウ酸、酸化ホウ酸、ホウ酸エステル類、ホウ素と水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物との錯体等)、硝酸塩(硝酸リチウム等)、ニトロ化合物(ニトロ安息香酸、ニトロフェノール、ニトロフェネトール、ニトロアセトフェノン、芳香族ニトロ化合物等)等が挙げられる。
【0042】
(セパレータ)
セパレータは、正極箔と負極箔の接触を防止する。セパレータとしては、クラフト、マニラ麻、エスパルト、ヘンプ、レーヨン等のセルロースおよびこれらの混合紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、それらの誘導体などのポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ビニロン系樹脂、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、トリメチルペンテン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、これらの樹脂を単独で又は混合して用いることができる。
【実施例0043】
以下、実施例に基づいて本発明の封口体及び電気二重層キャパシタをさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1~3)
実施例1乃至3並びに比較例1乃至5の封口体を作製した。各封口体は、エラストマー部材のみを有する。エラストマー部材は、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂類を用いて加硫にて作製されたブチルゴムポリマー、パラフィン系プロセスオイル、タルク及びクレーを混合して成形された。プロセスオイルの添加量、及びタルクとクレーを合わせた白色充填剤の総計添加量は、下表1の通りである。実施例1乃至3並びに比較例1乃至5の封口体の厚み及び表面積は同値とした。表1中、添加量は、ブチルゴムポリマーの添加量を100重量部とした場合の重量割合である。
【0045】
(表1)
【0046】
(ガス透過量測定)
実施例1乃至3並びに比較例1乃至5の封口体は、5mlのγ-ブチロラクトンが収容された同一形状及び同一厚みのアルミニウム製のケースの開口の封止に用いられた。封口体で封口したケースの初期重量を測定し、当該ケースを85℃の温度環境下に500時間放置し、放置後重量を測定した。そして、以下式(1)により放置後のガス透過量を計算した。
(式(1))
ガス透過量[mg×mm/cm]=(初期重量-放置後重量)×封口体厚み/封口体表面積
【0047】
(水分通過量測定)
実施例1乃至3並びに比較例1乃至5の封口体は、4gのモレキュラーシーブが収容された同一形状及び同一厚みのアルミニウム製のケースの開口の封止に用いられた。封口体で封口したケースの初期重量を測定し、当該ケースを85℃、湿度85%の温度環境下に500時間放置し、放置後重量を測定した。そして、以下式(2)により放置後の水分通過量を計算した。
(式(2))
水通過量[mg×mm/cm]=(放置後重量-初期重量)×封口体厚み/封口体表面積
【0048】
計算されたガス透過量と水分通過量を用いて、水分の通過量に対するガスの透過量の比を計算した。実施例1乃至3並びに比較例1乃至5のガス透過量、水分通過量、及び水分の通過量に対するガスの透過量の比を下表2に示す。
【0049】
(表2)
【0050】
表2に示すように、タルクではなくクレーのみをエラストマー部材に含有させ、プロセスオイルを未添加にした比較例5には、クレーの低透過性の性状が強く影響した。その結果、比較例5の水分通過量は比較例1より低下したが、比較例5のガス透過量も比較例1より低下し、ガス透過量の低下度合いは水分通過量の低下度合いを上回ってしまった。即ち、水分の通過量に対するガスの透過量の比は1を下回ってしまった。
【0051】
また、タルクのみをエラストマー部材に含有させ、プロセスオイルを未添加にした比較例2には、タルクの低透過性の性状が強く影響した。その結果、比較例2の水分通過量は比較例1より低下したが、比較例2のガス透過量は、水分通過量の低下度合いを遙かに超えて著しく低下してしまった。即ち、水分の通過量に対するガスの透過量の比は1を大きく下回ってしまった。
【0052】
また、プロセスオイルのみをエラストマー部材に含有させ、タルクを未添加にした比較例3には、プロセスオイルの高透過性の性状が強く影響した。その結果、比較例3のガス透過量は比較例1より大きく向上したが、比較例3の水分通過量も比較例1を超えてしまった。
【0053】
このようにプロセスオイルと白色充填剤とは透過性において相反する効果を奏することが確認された。また、比較例2と比較例5の結果のみを比較すると、タルクよりもクレーのほうが、水分の通過量に対するガスの透過量の比の観点で良好であることが確認された。換言すれば、タルクは、水分通過量を低下させる効果よりも、ガス透過量を低下させる効果が強く、タルク単独では、クレー単独よりも、水分通過量とガス透過量のバランスを図ることが難しいことが確認された。
【0054】
そこで、比較例4は、クレーを選択しつつ、透過性において性状が相反するプロセスオイルとクレーとをエラストマー部材に混合させたものである。その結果、比較例4は、ガス透過量は多くなったものの、比較例1と比べて水分通過量も著しく多くなってしまった。
【0055】
ところが、水分通過量とガス透過量のバランスを崩すタルクとプロセスオイルとをエラストマー部材に混合させた実施例1乃至3は、比較例1と比べて水分通過量が低下し、且つ水分の通過量に対するガスの透過量の比も1を超えることが確認された。即ち、プロセスオイルとタルクとを混合した実施例1乃至3では、ガス透過量の低下度合いを抑制しつつ、水分通過量を低下させることが確認された。
【0056】
(実施例4~5)
実施例4及び5の封口体を作製した。実施例4の封口体は、プロセスオイルに代えてポリエチレンワックスをエラストマー部材に含有させた点を除き、エラストマーの添加量も白色充填剤の種類及び添加量も含め、実施例3と同一組成、同一構成、同一製法及び同一条件で作製された。実施例5の封口体は、プロセスオイルに代えてポリブタジエンをエラストマー部材に含有させた点を除き、エラストマーの添加量も白色充填剤の種類及び添加量も含め、実施例3と同一組成、同一構成、同一製法及び同一条件で作製された。
【0057】
各封口体は、エラストマー部材のみを有する。エラストマー部材は、エラストマーとしてブチルゴムポリマーを用い、プロセスオイル、タルク及びクレーを混合して成形された。実施例4及び5と各比較例のプロセスオイルの添加量、及びタルクとクレーを合わせた白色充填剤の総計添加量は、下表3の通りである。表3中、添加量は、ブチルゴムポリマーの添加量を100重量部とした場合の重量割合である。
【0058】
(表3)
【0059】
(測定)
実施例4及び5並びに各比較例の封口体のガス透過量と水分通過量測定を測定した。測定条件は、実施例1乃至3と同一である。測定結果を下表4に示す。
【0060】
(表4)
【0061】
表4の実施例4及び実施例5が示すように、プロセスオイルとタルクの組み合わせに代えて、ポリエチレンワックスとタルクの組み合わせ、又はポリブタジエンとタルクの組み合わせであっても、比較例1と比べて水分通過量が低下し、且つ水分の通過量に対するガスの透過量の比も1を超えることが確認された。即ち、プロセスオイル、ポリエチレンワックス及びポリブタジエンの群から選ばれる1種以上とタルクとをエラストマー部材に含めることにより、ガス透過量の低下度合いを抑制しつつ、水分通過量を低下させることが確認された。
【0062】
(実施例6~11)
実施例6乃至11の封口体を作製した。実施例6乃至11の封口体は、プロセスオイル、ポリエチレンワックス及びポリブタジエンの群から1種類以上を選択して組み合わせ、また実施例7を除きタルクとクレーに更にマイカを加えて作製された。具体的な実施例6乃至11の封口体の組成及び添加量は、下表5の通りである。表5中、添加量は、ブチルゴムポリマーの添加量を100重量部とした場合の重量割合である。尚、表5に記載の点を除き、実施例6乃至11は、実施例1と同一構成、同一製法及び同一条件で作製された。
【0063】
(表5)
【0064】
(測定)
実施例6乃至11の封口体のガス透過量と水分通過量測定を測定した。測定条件は、実施例1乃至3と同一である。測定結果を比較例1と共に下表6に示す。
【0065】
(表6)
【0066】
表6の実施例7乃至11に示すように、プロセスオイル、ポリエチレンワックス及びポリブタジエンの群から2種以上を選んでも、タルクと共にエラストマー部材に含まれていれば、ガス透過量の低下度合いを抑制しつつ、水分通過量を低下させることが確認された。また、実施例6、8~11に示すように、マイカを更にエラストマー部材に含有させても、ガス透過量の低下度合いを抑制しつつ、水分通過量を低下させることが確認された。
【0067】
更に、実施例9乃至11は、比較例1と比べて、ガス透過量も多くなり、水分通過量も抑えられ、更に水分の通過量に対するガスの透過量の比も1を遙かに超えていることが確認できる。即ち、エラストマー部材にプロセスオイルとポリエチレンワックスの両方を含み、タルクを含む白色充填剤が、エラストマー100重量部に対して、250重量部以上450重量部以下の割合でエラストマー部材に含まれることで、ガス透過量も多くなり、水分通過量も抑えられ、更に水分の通過量に対するガスの透過量の比も1を遙かに超えていることが確認された。