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特開2022-137838オートフォーカス装置及び顕微鏡装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137838
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】オートフォーカス装置及び顕微鏡装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/24 20060101AFI20220914BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20220914BHJP
   G02B 7/36 20210101ALI20220914BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20220914BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20220914BHJP
【FI】
G02B21/24
G02B7/28 J
G02B7/36
G03B13/36
G02B7/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037522
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】栗田 和信
(72)【発明者】
【氏名】今井 裕也
【テーマコード(参考)】
2H011
2H044
2H052
2H151
【Fターム(参考)】
2H011AA06
2H011BA33
2H011BB02
2H044BB05
2H044BB07
2H052AA08
2H052AD06
2H052AD09
2H052AD16
2H052AD19
2H151AA11
2H151BA45
2H151BA47
2H151CB22
2H151CE32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対物レンズの焦点を対象物に合わせるのに要する時間を短縮することができるオートフォーカス装置及び顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】オートフォーカス装置20は、対物レンズ11を光軸方向に移動させる駆動部25と、対物レンズ11の焦点面から予め規定された基準距離だけずれた検出位置DPに対象物が配置されたか否かを検出する検出部28と、対象物が検出位置DPに配置されたと検出部28で検出された場合に、駆動部25を駆動して対物レンズ11を基準距離だけ移動させて対物レンズ11の焦点を対象物に合わせる制御を行う制御部29と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを光軸方向に移動させる駆動部と、
前記対物レンズの焦点面から予め規定された基準距離だけずれた検出位置に対象物が配置されたか否かを検出する検出部と、
前記対象物が前記検出位置に配置されたと前記検出部で検出された場合に、前記駆動部を駆動して前記対物レンズを前記基準距離だけ移動させて前記対物レンズの焦点を前記対象物に合わせる制御を行う制御部と、
を備えるオートフォーカス装置。
【請求項2】
前記検出位置は、前記対物レンズの光軸上において、前記対物レンズから前記焦点面に向かう方向である前側方向に、前記焦点面から前記基準距離だけ離れた位置である、請求項1記載のオートフォーカス装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記対象物が前記検出位置に配置されたと前記検出部で検出されるまで、前記駆動部を駆動して前記対物レンズを前記前側方向に移動させる、請求項2記載のオートフォーカス装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記対物レンズを介して前記検出位置と光学的に共役となる位置に配置され、検出面が複数に分割された分割フォトダイオードと、
前記対物レンズと前記分割フォトダイオードとの間の光路上に配置されたシリンドリカルレンズと、
を備える請求項1から請求項3の何れか一項に記載のオートフォーカス装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記対物レンズを介して前記検出位置と光学的に共役となる位置にピンホールが位置するように配置されたピンホール板と、
前記ピンホールを介した光を受光するフォトダイオードと、
を備える請求項1から請求項3の何れか一項に記載のオートフォーカス装置。
【請求項6】
前記対物レンズの焦点に集光される光を射出する光源部を備える請求項1から請求項5の何れか一項に記載のオートフォーカス装置。
【請求項7】
前記検出部は、三角測量方式の変位センサを備える請求項1から請求項3の何れか一項に記載のオートフォーカス装置。
【請求項8】
対物レンズと、
前記対物レンズを介した対象物からの光が導かれる顕微鏡と、
前記対物レンズの焦点を前記対象物に合わせる請求項1から請求項7の何れか一項に記載のオートフォーカス装置と、
を備える顕微鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートフォーカス装置及び顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、落射蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、その他の顕微鏡を備える顕微鏡システムを用いて、生体の組織、器官、細胞等の試料を2次元画像又は3次元画像に画像化する技術が注目されている。この顕微鏡システムは、蛍光色素が添加された試料に照明光(励起光)を照射して得られる蛍光を顕微鏡で取得し、その画像をカメラで撮影するシステムである。このような顕微鏡システムは、生体の組織、器官、細胞等の試料の挙動を解析することができるため、生物の基礎研究から創薬の応用開発の分野で幅広く利用されている。
【0003】
このような顕微鏡システムは、ウェルプレートに形成された多数の窪み(ウェル)に収容された試料を順次観察する用途に用いられることが多いため、試料に対して対物レンズの焦点を自動的に合わせる(合焦させる)オートフォーカス装置を備えるものが多い。以下の特許文献1には、4分割フォトダイオードの検出信号から焦点誤差(フォーカスエラー)を求め、焦点誤差が最小となる位置に対物レンズの焦点を合わせる従来のオートフォーカス装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4974062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1に開示された従来のオートフォーカス装置は、まず、対物レンズをウェルプレートに近づく方向に移動させながら焦点誤差を順次検出する。次に、検出された焦点誤差が最小となる位置(合焦位置)を求め、その位置に対物レンズの焦点が合うように対物レンズを逆方向に移動させる。このように、従来は、対物レンズの焦点がウェルプレートを通過するように移動させ(オーバーランさせ)、その後にオーバーランした分だけ対物レンズを逆方向に移動させているため、対物レンズの焦点を試料に合わせるのに要する時間が長くなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、対物レンズの焦点を対象物に合わせるのに要する時間を短縮することができるオートフォーカス装置及び顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様によるオートフォーカス装置(20、30、40)は、対物レンズ(11)を光軸(AX)方向に移動させる駆動部(25)と、前記対物レンズの焦点面(PL)から予め規定された基準距離(d)だけずれた検出位置(DP)に対象物(WP)が配置されたか否かを検出する検出部(27、28、31、32、SN)と、前記対象物が前記検出位置に配置されたと前記検出部で検出された場合に、前記駆動部を駆動して前記対物レンズを前記基準距離だけ移動させて前記対物レンズの焦点を前記対象物に合わせる制御を行う制御部(29)と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様によるオートフォーカス装置は、前記検出位置が、前記対物レンズの光軸上において、前記対物レンズから前記焦点面に向かう方向である前側方向に、前記焦点面から前記基準距離だけ離れた位置である。
【0009】
また、本発明の一態様によるオートフォーカス装置は、前記制御部が、前記対象物が前記検出位置に配置されたと前記検出部で検出されるまで、前記駆動部を駆動して前記対物レンズを前記前側方向に移動させる。
【0010】
また、本発明の一態様によるオートフォーカス装置は、前記検出部が、前記対物レンズを介して前記検出位置と光学的に共役となる位置に配置され、検出面が複数に分割された分割フォトダイオード(28)と、前記対物レンズと前記分割フォトダイオードとの間の光路上に配置されたシリンドリカルレンズ(27)と、を備える。
【0011】
或いは、本発明の一態様によるオートフォーカス装置は、前記検出部が、前記対物レンズを介して前記検出位置と光学的に共役となる位置にピンホール(31a)が位置するように配置されたピンホール板(31)と、前記ピンホールを介した光を受光するフォトダイオード(32)と、を備える。
【0012】
また、本発明の一態様によるオートフォーカス装置は、前記対物レンズの焦点に集光される光を射出する光源部(21)を備える。
【0013】
或いは、本発明の一態様によるオートフォーカス装置は、前記検出部が、三角測量方式の変位センサ(SN)を備える。
【0014】
本発明の一態様による顕微鏡装置(1)は、対物レンズ(11)と、前記対物レンズを介した対象物(WP)からの光が導かれる顕微鏡(12)と、前記対物レンズの焦点を前記対象物に合わせる上記の何れかに記載のオートフォーカス装置(20、30、40)と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、対物レンズの焦点を対象物に合わせるのに要する時間を短縮することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る顕微鏡システムの要部構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態によるオートフォーカス装置を拡大して示す図である。
図3】本発明の第1実施形態において、4分割フォトダイオードに結像される光学像と4分割フォトダイオードから出力される検出信号とを説明するための図である。
図4】本発明の第1実施形態によるオートフォーカス装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の第1実施形態によるオートフォーカス装置の動作を説明するための図である。
図6】本発明の第2実施形態によるオートフォーカス装置の要部構成を示す図である。
図7】本発明の第3実施形態によるオートフォーカス装置の要部構成を示す図である。
図8】本発明の第3実施形態における変位センサの要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるオートフォーカス装置及び顕微鏡装置について詳細に説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0018】
〔概要〕
本発明の実施形態は、対物レンズの焦点を対象物に合わせるのに要する時間を短縮することができるオートフォーカス装置及び顕微鏡装置を提供するものである。具体的には、対物レンズの移動を少なくすることで、対物レンズの焦点を対象物に合わせるのに要する時間を短縮するものである。
【0019】
上述した特許文献1に開示されたオートフォーカス装置は、4分割フォトダイオードの検出信号から焦点誤差(フォーカスエラー)を求め、焦点誤差が最小となる位置に対物レンズの焦点を合わせている。ここで、対物レンズの焦点が対象物に合っている状態(合焦状態)では焦点誤差が小さくなり、対物レンズの焦点が対象物に合っていない状態(非合焦状態)では焦点誤差が大きくなる。
【0020】
上述した特許文献1に開示されたオートフォーカス装置は、合焦状態となる位置を検出するため、対物レンズの焦点が対象物を通過するように移動させ(オーバーランさせ)ている。そして、合焦状態となる位置(焦点誤差が最小となる位置)が検出されたら、オーバーランした分だけ対物レンズを逆方向に移動させている。このように、従来は、対物レンズをオーバーランさせた上に、対物レンズを逆方向に移動させる必要があったため、対物レンズの焦点を対象物に合わせるのに要する時間が長くなっていた。
【0021】
本発明の実施形態では、対物レンズの焦点面から予め規定された基準距離だけずれた検出位置に対象物が配置されたか否かを検出する検出部を設け、対象物が検出位置に配置されたと検出部で検出された場合に、対物レンズを基準距離だけ移動させて対物レンズの焦点を対象物に合わせる制御を行うようにしている。これにより、対物レンズの移動を従来よりも少なくすることができ、対物レンズの焦点を対象物に合わせるのに要する時間を短縮することができる。
【0022】
〔第1実施形態〕
〈顕微鏡システム〉
図1は、第1実施形態に係る顕微鏡システムの要部構成を示す図である。図1に示す通り、本実施形態の顕微鏡システムMSは、顕微鏡装置1、共焦点スキャナ2、及びカメラ3を備える。このような顕微鏡システムMSは、ウェルプレートWP(対象物)に収容された試料SPに励起光を照射し、これにより得られる蛍光を、共焦点スキャナ2を介してカメラ3で撮影することにより、試料SPの共焦点像を得るものである。
【0023】
尚、ウェルプレートWPは、試料SPを収容する多数の窪みW(ウェル)が形成された透明な板状の器具である。このウェルプレートWPは、例えば、窪みWが形成された面を上方に向けた状態でXYステージ(図示省略)上に載置されており、水平面内で移動可能にされている。試料SPは、例えば、蛍光色素が添加された生体の組織、器官、細胞等である。
【0024】
顕微鏡装置1は、観察光学系10とオートフォーカス装置20とを備える。観察光学系10は、試料SPを観察するための光学系であり、対物レンズ11及び顕微鏡12を備える。この観察光学系10は、無限遠補正光学系であることが望ましい。対物レンズ11は、ウェルプレートWPの底面近傍に配置され、励起光を試料SPに照射するとともに、励起光を試料SPに照射して得られる蛍光を顕微鏡12に向けて出力する。顕微鏡12は、対物レンズ11から出力されてダイクロイックミラー24(詳細は後述する)を透過した蛍光を共焦点スキャナ2に導く。尚、オートフォーカス装置20の詳細については後述する。
【0025】
共焦点スキャナ2は、顕微鏡装置1に設けられた観察光学系10とともに共焦点光学系を構成する。この共焦点スキャナ2は、例えば、マイクロレンズアレイディスク及びピンホールアレイディスクが回転軸に結合された回転ディスクを備えており、回転ディスクを回転させることで、顕微鏡12によって導かれる蛍光を走査(スキャン)する。
【0026】
カメラ3は、共焦点スキャナ2から出力される蛍光を撮像することにより、試料SPの共焦点像を得るものである。このカメラ3は、例えばCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)等の固体撮像素子を備えており、二次元の静止画像又は動画を撮影可能なカメラである。尚、カメラ3で得られた試料SPの共焦点像を、例えば不図示の表示装置に表示するようにしても良い。
【0027】
〈オートフォーカス装置〉
図2は、本発明の第1実施形態によるオートフォーカス装置を拡大して示す図である。図1,2に示す通り、オートフォーカス装置20は、レーザ21(光源部)、レンズ群22、ハーフミラー23、ダイクロイックミラー24、アクチュエータ25(駆動部)、コリメートレンズ26、シリンドリカルレンズ27(検出部)、4分割フォトダイオード28(検出部、分割フォトダイオード)、及び制御部29を備える。尚、図1では、制御部29の図示を省略している。
【0028】
レーザ21は、対物レンズ11の焦点FPに集光されるレーザ光(以下、検出光という)を射出する。レーザ21から射出される検出光は、オートフォーカス(対物レンズ11の焦点FPを対象物に自動的に合わせる)を実現するために用いられる。尚、以下では、説明を簡単にしつつ理解を容易にするために、対物レンズ11の焦点は、オートフォーカス装置20によって、ウェルプレートWPの底面に合わせられるものとする。
【0029】
レンズ群22は、レーザ21から射出された検出光を平行光に変換する。ハーフミラー23は、レンズ群22によって平行光に変換された検出光の一部(例えば、半分)をダイクロイックミラー24に向けて反射させ、ダイクロイックミラー24から反射されてきた検出光の一部(例えば、半分)を透過させる。
【0030】
ダイクロイックミラー24は、観察光学系10に設けられた対物レンズ11と顕微鏡12との間の光路上に配置され、試料SPに照射される励起光及び試料SPから得られる蛍光を透過させ、オートフォーカスに用いられる検出光を反射させる。アクチュエータ25は、制御部29の制御の下で、対物レンズ11を光軸AXに沿う方向(例えば、鉛直方向)に移動させる。尚、対物レンズ11の移動に伴って、対物レンズ11の焦点FP及び焦点面PLも光軸AXに沿う方向に移動する。
【0031】
コリメートレンズ26は、ダイクロイックミラー24から反射されてきて、ハーフミラー23を透過した検出光を集光する。シリンドリカルレンズ27は、入射面が平面とされ、射出面が円筒面とされたレンズであり、特定の方向(射出面が曲率を有する方向)にのみ検出光を集光する。4分割フォトダイオード28は検出面が4つの領域に分割されたフォトダイオードである。シリンドリカルレンズ27及び4分割フォトダイオード28は、非点収差法によって焦点誤差(フォーカスエラー)を検出するために設けられる。
【0032】
ここで、コリメートレンズ26及びシリンドリカルレンズ27の位置は、図2に示す検出位置DPで反射された検出光が、4分割フォトダイオード28の中心に照射されるように調整されている。つまり、4分割フォトダイオード28は、その検出面の中心が対物レンズ11を介して検出位置DPと光学的に共役となる位置に配置されている。このように、本実施形態では、オートフォーカス装置20が焦点誤差を検出する際の基準となる検出位置DPが、対物レンズ11の焦点FPとは異なる位置に設定されている。
【0033】
このような検出位置DPを設定するのは、対物レンズ11の焦点FPがウェルプレートWPの底面に達するのに先んじて、検出位置DPにウェルプレートWPの底面が配置されたか否かを検出するためである。そして、対物レンズ11の移動を従来よりも少なくすることで、対物レンズ11の焦点FPをウェルプレートWPの底面に合わせるのに要する時間を短縮するためである。
【0034】
上記の検出位置DPは、対物レンズ11の焦点面PLから予め規定された基準距離dだけずれた位置である。より具体的に、検出位置DPは、対物レンズ11の光軸AX上において、対物レンズ11から焦点面PLに向かう方向である前側方向に、焦点面PLから基準距離dだけ離れた位置である。尚、基準距離dは、特定の距離に限られる訳ではなく、任意の距離に設定することができる。
【0035】
図3は、本発明の第1実施形態において、4分割フォトダイオードに結像される光学像と4分割フォトダイオードから出力される検出信号とを説明するための図である。尚、図3(a),(b)は、4分割フォトダイオード28の検出面に結像される検出光の光学像の一例を示す図であり、図3(c)は、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号の一例を示す図である。
【0036】
図3(a),(b)に示す通り、4分割フォトダイオード28の検出面は、4つの領域28a~28dに分割されている。これら4つの領域28a~28dの各々から出力される信号をそれぞれA~Dとすると、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号Vは、以下の(1)式で表される。
V=(A+C)-(B+D) …(1)
つまり、検出信号Vの大きさは、4つの領域28a~28dのうちの隣接しない2つの領域(例えば、領域28a,28c)から出力される信号の和と、残りの2つの領域(例えば、領域28b,28d)から出力される信号の和との差から求められる。
【0037】
オートフォーカス装置20の受光側における光学系は、シリンドリカルレンズ27によって非点収差を有する光学系になっている。また、4分割フォトダイオード28は、前述の通り、その検出面の中心が対物レンズ11を介して検出位置DPと光学的に共役となる位置に配置されている。このため、4分割フォトダイオード28の検出面に結像する検出光の光学像は、対物レンズ11の位置(例えば、鉛直方向の位置:Z方向の位置)に応じて変化する。これにより、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号Vは、図3(c)に示す通り、対物レンズ11の位置(Z)に応じて変化する。
【0038】
例えば、図2に示す検出位置DPがウェルプレートWPの底面よりも鉛直下方に位置するように対物レンズ11が配置されている場合(対物レンズ11が図3(c)中の位置Z1に配置されている場合)を考える。この場合には、図3(a)に示す通り、楕円形状の検出光が4分割フォトダイオード28の検出面に結像する。これにより、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号Vの大きさは、図3(c)に示す通り、例えば、V1となる。
【0039】
これに対し、図2に示す検出位置DPがウェルプレートWPの底面に位置するように対物レンズ11が配置されている場合(対物レンズ11が図3(c)中の位置Z2に配置されている場合)を考える。この場合には、図3(b)に示す通り、円形状の検出光が4分割フォトダイオード28の検出面に結像する。これにより、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号Vの大きさは、図3(c)に示す通り、例えば、零(或いは、ほぼ零)となる。
【0040】
制御部29は、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号を用いて、ウェルプレートWPの底面に対物レンズ11の焦点FPを合わせ込む制御を行う。具体的に、制御部29は、アクチュエータ25を駆動して、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号の絶対値が最小になるまで(例えば、零になるまで)、対物レンズ11を前側方向に移動させる。尚、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号の絶対値が最小になるのは、ウェルプレートWPの底面が検出位置DPに配置された場合である。
【0041】
制御部29は、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号の絶対値が最小になった場合に、アクチュエータ25を駆動して対物レンズ11を基準距離dだけ前側方向に移動させる制御を行う。かかる制御が行われることで、対物レンズ11の焦点をウェルプレートWPの底面に合わせることができる。尚、上記の基準距離dは、予め制御部29に格納されている。
【0042】
〈オートフォーカス装置の動作〉
図4は、本発明の第1実施形態によるオートフォーカス装置の動作の一例を示すフローチャートである。また、図5は、本発明の第1実施形態によるオートフォーカス装置の動作を説明するための図である。尚、図4に示すフローチャートは、ウェルプレートWPに収容された試料SPのうち、XYステージの駆動によって、観察対象の試料SPが対物レンズ11の上方に配置される度に開始される。
【0043】
図4に示すフローチャートの処理が開始されると、まず、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号を参照しつつ、対物レンズ11を移動させる動作が、制御部29の制御の下で行われる(ステップS11)。具体的には、対物レンズ11が初期位置に配置されている状態のときに、制御部29によるアクチュエータ25の駆動が開始される。これにより、光軸AXに沿う方向(例えば、鉛直上方向:Z方向)への対物レンズ11の移動が開始される。そして、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号を参照しつつ、対物レンズ11を移動させる動作が行われる(図5(a)参照)。
【0044】
次に、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号の絶対値が最小になったか否かを判断する処理が制御部29によって行われる(ステップS12)。具体的には、図3(c)に示す通り、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号の絶対値がピークを迎えた後に零(或いは、ほぼ零)になったか否かが制御部29によって判断される。尚、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号の絶対値は、検出位置DPがウェルプレートWPの底面に達した場合に最小となる(図5(b)参照)。
【0045】
4分割フォトダイオード28から出力される検出信号の絶対値が最小になっていないと判断された場合(ステップS12の判断結果が「NO」の場合)には、ステップS11の動作が継続して行われる(図5(a)参照)。これに対し、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号の絶対値が最小になったと判断された場合(ステップS12の判断結果が「YES」の場合)には、対物レンズ11を基準距離dだけ前側方向に移動させる動作が制御部29の制御によって行われる(ステップS13)。
【0046】
具体的には、制御部29によってアクチュエータ25が駆動され、検出位置DPがウェルプレートWPの底面に位置している状態(図5(b)参照)から、制御部29に格納されている基準距離dだけ対物レンズ11を前側方向に移動させる動作が行われる。以上の動作が行われると、対物レンズ11の焦点FPがウェルプレートWPの底面に位置し、対物レンズ11の焦点FPが対象物に合っている状態になる(図5(c)参照)。以上によってオートフォーカス装置20の一連の動作が終了する。
【0047】
尚、対物レンズ11の焦点FPが対象物に合っている状態で、観察光学系10、共焦点スキャナ2、及びカメラ3による試料SPの観察が行われる。観察対象となっている試料SPの観察が終了すると、制御部29によってアクチュエータ25が駆動され、対物レンズ11を初期位置に戻す動作が行われる。そして、XYステージの駆動によって、次の観察対象である試料SPを対物レンズ11の上方に配置する動作が行われる。
【0048】
以上の通り、本実施形態では、4分割フォトダイオード28から出力される検出信号の絶対値が最小になったか否かにより、検出位置DPに対象物(ウェルプレートWPの底面)が配置されたか否かを検出している。そして、対象物が検出位置DPに配置されたと検出された場合に、制御部29がアクチュエータ25を駆動して対物レンズ11を基準距離dだけ移動させて対物レンズ11の焦点FPを対象物に合わせるようにしている。これにより、対物レンズ11の移動を従来よりも少なくすることができ、対物レンズ11の焦点を対象物に合わせるのに要する時間を短縮することができる。
【0049】
また、本実施形態では、対物レンズ11を一方向(鉛直上方向)にのみ移動させて対物レンズ11の焦点FPを対象物に合わせるようにしている。これにより、従来のように、対物レンズの焦点が対象物を通過するように移動させ(オーバーランさせ)た後に、対物レンズを逆方向に移動させる必要がないため、振動を低減することができる。その結果として、対物レンズ11の焦点を対象物に合わせるのに要する時間を短縮することができるのみならず、対物レンズ11の位置合わせを高精度に行うことができる。
【0050】
尚、従来、1サイクル当たりのオートフォーカスに要する時間が、約440[msec]であったとする。本実施形態によって、オートフォーカスに要する時間を1サイクル当たり85[msec]削減できたとすると、約19%の時間短縮が図られる。従来、96個の窪みWが形成されたウェルプレートWPに格納された試料SPを全て観察するのに必要な時間が約60秒であったとする。本実施形態によって、同じウェルプレートWPに格納された試料SPを全て観察するのに必要な時間を約52秒に短縮することができる。
【0051】
〔第2実施形態〕
〈顕微鏡システム〉
本実施形態に係る顕微鏡システムは、図1に示すオートフォーカス装置20に代えて図6に示すオートフォーカス装置30を設けた構成であり、オートフォーカス装置30以外の構成は、図1と同様である。このため、本実施形態に係る顕微鏡システムの詳細な説明は省略する。
【0052】
〈オートフォーカス装置〉
図6は、本発明の第2実施形態によるオートフォーカス装置の要部構成を示す図である。本実施形態のオートフォーカス装置30は、図2に示すオートフォーカス装置20のシリンドリカルレンズ27及び4分割フォトダイオード28を、ピンホール板31(検出部)及びフォトダイオード32(検出部)に替えた構成である。
【0053】
ピンホール板31は、ピンホール31aが形成された板状部材である。ピンホール板31は、遮光性を有する材料を用いて形成されている。ピンホール板31は、対物レンズ11を介して検出位置DPと光学的に共役となる位置にピンホール31aが位置するように配置されている。フォトダイオード32は、ピンホール31aを透過した光を検出するものである。ピンホール板31及びフォトダイオード32は、共焦点法によって焦点誤差(フォーカスエラー)を検出するために設けられる。
【0054】
本実施形態では、対象物(ウェルプレートWPの底面)が検出位置DPに配置されている場合に、対象物で反射された検出光の全てがピンホール31aを通過する。これに対し、対象物が検出位置DPとは異なる位置に配置されている場合には、ピンホール板31に入射する検出光の光径が大きくなって、ピンホール31aを通過する光量が減少する。このため、ピンホール31aを通過する光量が最大になったか否か(フォトダイオード32の検出信号が最大になったか否か)により、検出位置DPに対象物(ウェルプレートWPの底面)が配置されたか否かを検出することができる。
【0055】
〈オートフォーカス装置の動作〉
本実施形態のオートフォーカス装置30は、第1実施形態のオートフォーカス装置20とは、検出方法が異なるだけであり、第1実施形態のオートフォーカス装置20の動作(図5を用いて説明した動作)と同様の動作が行われる。このため、本実施形態のオートフォーカス装置30の動作の詳細な説明は省略する。
【0056】
以上の通り、本実施形態では、フォトダイオード32から出力される検出信号が最大になったか否かにより、検出位置DPに対象物(ウェルプレートWPの底面)が配置されたか否かを検出している。そして、対象物が検出位置DPに配置されたと検出された場合に、制御部29がアクチュエータ25を駆動して対物レンズ11を基準距離dだけ移動させて対物レンズ11の焦点FPを対象物に合わせるようにしている。これにより、対物レンズ11の移動を従来よりも少なくすることができ、対物レンズ11の焦点を対象物に合わせるのに要する時間を短縮することができる。
【0057】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、対物レンズ11を一方向(鉛直上方向)にのみ移動させて対物レンズ11の焦点FPを対象物に合わせるようにしている。これにより、第1実施形態と同様に、振動を低減することができる。その結果として、対物レンズ11の焦点を対象物に合わせるのに要する時間を短縮することができるのみならず、対物レンズ11の位置合わせを高精度に行うことができる。
【0058】
〔第3実施形態〕
〈顕微鏡システム〉
本実施形態に係る顕微鏡システムは、図1に示すオートフォーカス装置20に代えて図7に示すオートフォーカス装置40を設けた構成であり、オートフォーカス装置40以外の構成は、図1と同様である。このため、本実施形態に係る顕微鏡システムの詳細な説明は省略する。
【0059】
〈オートフォーカス装置〉
図7は、本発明の第3実施形態によるオートフォーカス装置の要部構成を示す図である。本実施形態のオートフォーカス装置40は、図2に示すオートフォーカス装置20のレーザ21、レンズ群22、ハーフミラー23、ダイクロイックミラー24、コリメートレンズ26、シリンドリカルレンズ27、及び4分割フォトダイオード28を省略し、変位センサSN(検出部)を設けた構成である。変位センサSNは、投光器41及び受光器42を備えており、三角測量方式によって、対象物(ウェルプレートWPの底面)が検出位置DPに配置されたか否かを検出する。
【0060】
図8は、本発明の第3実施形態における変位センサの要部構成を示すブロック図である。図8に示す通り、変位センサSNの投光器41は、レーザ41a及び投光光学系41bを備えており、レーザ41aから射出されるレーザ光(以下、検出光という)を斜め方向から検出位置DPに向けて投光する。尚、ここにいう斜め方向とは、対物レンズ11の光軸AXに対して斜め方向(或いは、ウェルプレートWPの底面に対して斜め方向)の意である。変位センサSNの受光器42は、受光光学系42a及び検出器42bを備えており、ウェルプレートWPの底面で反射された検出光を検出する。
【0061】
ウェルプレートWPの底面が検出位置DPに配置されている場合には、図8において実線で示す通り、ウェルプレートWPの底面で反射された検出光は、検出器42bの中央部に結像する。これに対し、ウェルプレートWPの底面が検出位置DPに配置されていない場合には、図8において破線で示す通り、ウェルプレートWPの底面で反射された検出光は、検出器42bの中央部とは異なる位置に結像する。このため、検出光が検出器42bの中央部に結像したか否かにより、検出位置DPに対象物(ウェルプレートWPの底面)が配置されたか否かを検出することができる。
【0062】
〈オートフォーカス装置の動作〉
本実施形態のオートフォーカス装置40は、第1実施形態のオートフォーカス装置20とは、検出方法が異なるだけであり、第1実施形態のオートフォーカス装置20の動作(図5を用いて説明した動作)と同様の動作が行われる。このため、本実施形態のオートフォーカス装置40の動作の詳細な説明は省略する。
【0063】
以上の通り、本実施形態では、検出光が検出器42bの中央部に結像したか否かにより、検出位置DPに対象物(ウェルプレートWPの底面)が配置されたか否かを検出している。そして、対象物が検出位置DPに配置されたと検出された場合に、制御部29がアクチュエータ25を駆動して対物レンズ11を基準距離dだけ移動させて対物レンズ11の焦点FPを対象物に合わせるようにしている。これにより、対物レンズ11の移動を従来よりも少なくすることができ、対物レンズ11の焦点を対象物に合わせるのに要する時間を短縮することができる。
【0064】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、対物レンズ11を一方向(鉛直上方向)にのみ移動させて対物レンズ11の焦点FPを対象物に合わせるようにしている。これにより、第1実施形態と同様に、振動を低減することができる。その結果として、対物レンズ11の焦点を対象物に合わせるのに要する時間を短縮することができるのみならず、対物レンズ11の位置合わせを高精度に行うことができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態によるオートフォーカス装置及び顕微鏡装置について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、検出位置DPが対物レンズ11の光軸AX上に設定されている例について説明した。しかしながら、検出位置DPは、対物レンズ11の光軸AX上に必ずしも設定されている必要は無く、対物レンズ11の光軸AXからずれた位置に設定されていても良い。
【0066】
また、上述した実施形態では、検出位置DPが、焦点面PLから前側方向に基準距離dだけ離れた位置に設定されている例について説明した。しかしながら、検出位置DPは、焦点面PLから前側方向とは反対の方向に基準距離dだけ離れた位置に設定されていても良い。このような設定がなされている場合には、例えば、対物レンズ11の初期位置をウェルプレートWPに近い位置に設定し、対物レンズ11をウェルプレートWPから遠ざけながら検出位置DPに対象物が配置されたか否かを検出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 顕微鏡装置
11 対物レンズ
12 顕微鏡
20 オートフォーカス装置
21 レーザ
25 アクチュエータ
27 シリンドリカルレンズ
28 4分割フォトダイオード
29 制御部
30 オートフォーカス装置
31 ピンホール板
31a ピンホール
32 フォトダイオード
40 オートフォーカス装置
AX 光軸
d 基準距離
DP 検出位置
PL 焦点面
SN 変位センサ
WP ウェルプレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8