(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137873
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】放射線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20220914BHJP
G21K 3/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
G01N23/04
G21K3/00 W
G21K3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037572
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】原 拓生
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001PA11
2G001PA12
2G001SA11
(57)【要約】
【課題】自動的にフィルタの厚みまたは材質を調整することにより、ユーザの熟練度に拘わらず容易に高画質な透視画像を取得することの出来る放射線検査装置を提供する。
【解決手段】放射線ビームを照射する放射線源2と、放射線源2に対向して設けられ、放射線ビームが入力される検出器3と、検出器3に入力される放射線ビームの信号量I0を減衰させるために、放射線源2と検出器3との間に設けられるフィルタFの減衰率を調整するフィルタ調整部4と、放射線ビームの信号量I0と所定の信号量Isとを比較する判定部942と、を備え、フィルタ調整部4は、放射線ビームの信号量I0が所定の信号量Is以下となるようにフィルタFの減衰率を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線ビームを照射する放射線源と、
前記放射線源に対向して設けられ、前記放射線ビームが入力される検出器と、
前記検出器に入力される前記放射線ビームの信号量を減衰させるために、前記放射線源と前記検出器との間に設けられるフィルタの減衰率を調整するフィルタ調整部と、
前記放射線ビームの信号量と所定の信号量とを比較する判定部と、
を備え、
前記フィルタ調整部は、前記放射線ビームの信号量が前記所定の信号量以下となるように前記フィルタの減衰率を調整する、
放射線検査装置。
【請求項2】
前記フィルタ調整部は、減衰率の低い順に前記フィルタを入れ替えることにより、前記フィルタの減衰率を調整する、
請求項1に記載の放射線検査装置。
【請求項3】
放射線ビームを照射する放射線源と、
前記放射線源に対向して設けられ、前記放射線ビームが入力される検出器と、
前記検出器に入力される前記放射線ビームの信号量を減衰させるために、前記放射線源と前記検出器との間に設けられるフィルタの減衰率を調整するフィルタ調整部と、
前記放射線ビームの信号量の関数として前記フィルタの厚みを算出する算出部と、
を備え、
前記フィルタ調整部は、前記算出部が算出した前記フィルタの厚みに基づいて前記フィルタの減衰率を調整する、
放射線検査装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記フィルタの厚みと前記放射線ビームの信号量との関係を示すフィルタ厚曲線に基づいて前記フィルタの厚みを算出する、
請求項3に記載の放射線検査装置。
【請求項5】
前記フィルタ厚曲線は、以下の式により示される、
請求項4に記載の放射線検査装置。
【数1】
Xs:フィルタの厚み
μ:線減弱係数
Is:所定の信号量
I0:放射線ビームの信号量
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検査装置は、放射線として例えばX線ビームを照射する放射線源と、この放射線源に対向して設けられ、X線ビームを検出する検出器とを備える。放射線源と検出器との間には、被検査物が載置される検査台が設けられ、被検査物に対してX線ビームが照射されることにより、被検査物の透視画像が得られる。また、被検査物に対してX線ビームが照射される間にこの検査台が1回転することにより、全方位からの透視画像が得られる。この透視画像を再構成することにより、被検査物のCT画像(断面画像)が得られる。
【0003】
透視画像の取得において、被検査物に起因する散乱線やメタルアーティファクトなどのノイズを低減するために、フィルタを用いることが知られている。フィルタは、金属などからなる遮蔽板であり、放射線源の手前に設けられ、放射線源から検出器に入力されるX線ビームを減衰させる。これにより、上述したようなノイズを低減することが出来る。一方で、X線ビームをさらに減衰させるためにフィルタの厚みまたは材質を変えると、検出器に入力されるX線の信号量がノイズよりもさらに減少し、透視画像のSN比が低下してしまうおそれがあった。従来技術においては、この点を考慮しつつ、ユーザがフィルタの厚みまたは材質を調整していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-132859号公報
【特許文献2】特開昭63-111107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、透視画像を確認しながらフィルタの厚みまたは材質を調整するためには長年の経験が必要であるため、経験の少ないユーザにも容易にフィルタの厚みまたは材質を調整することの出来る放射線検査装置が待ち望まれていた。さらに、フィルタの厚みまたは材質の調整は、例えば放射線源に印加する電圧、電流、あるいは放射線源から検出器までの距離(FDD、Focus to Detector Distance)のような各構成の位置関係、といった撮像前の設定を変更する度に必要となるので、熟練のユーザにとっても手間であることは変わりなかった。
【0006】
本実施形態は、上記課題を解決すべく、自動的にフィルタの厚みまたは材質を調整することにより、ユーザの熟練度に拘わらず容易に高画質な透視画像を取得することの出来る放射線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の実施形態の放射線検査装置は、次のような構成を備える。
(1)放射線ビームを照射する放射線源。
(2)前記放射線源に対向して設けられ、前記放射線ビームが入力される検出器。
(3)前記検出器に入力される前記放射線ビームの信号量を減衰させるために、前記放射線源と前記検出器との間に設けられるフィルタの減衰率を調整するフィルタ調整部。
(4)前記放射線ビームの信号量と所定の信号量とを比較する判定部。
(5)前記フィルタ調整部は、前記放射線ビームの信号量が前記所定の信号量以下となるように前記フィルタの減衰率を調整する。
【0008】
第1の実施形態の放射線検査装置は、更に次のような構成を備えてもよい。
(1)前記フィルタ調整部は、減衰率の低い順に前記フィルタを入れ替えることにより、前記フィルタの減衰率を調整する。
【0009】
第2の実施形態の放射線検査装置は、次のような構成を備える。
(1)放射線ビームを照射する放射線源。
(2)前記放射線源に対向して設けられ、前記放射線ビームが入力される検出器。
(3)前記検出器に入力される前記放射線ビームの信号量を減衰させるために、前記放射線源と前記検出器との間に設けられるフィルタの減衰率を調整するフィルタ調整部。
(4)前記放射線ビームの信号量の関数として前記フィルタの厚みを算出する算出部。
(5)前記フィルタ調整部は、前記算出部が算出した前記フィルタの厚みに基づいて前記フィルタの減衰率を調整する。
【0010】
第2の実施形態の放射線検査装置は、更に次のような構成を備えてもよい。
(1)前記算出部は、前記フィルタの厚みと前記放射線ビームの信号量との関係を示すフィルタ厚曲線に基づいて前記フィルタの厚みを算出する。
【0011】
(2)前記フィルタ厚曲線は、以下の式により示される。
【数1】
Xs:フィルタの厚み
μ:線減弱係数
Is:所定の信号量
I0:放射線ビームの信号量
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る放射線検査装置を示す模式図である。
【
図2】第1の実施形態に係る制御部を示す機能ブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る放射線検査装置の作用を示すフローチャートである。
【
図4】第2の実施形態に係る制御部を示す機能ブロック図である。
【
図5】第2の実施形態に係るフィルタ厚曲線を示すグラフである。
【
図6】第2の実施形態に係る放射線検査装置の作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1.第1の実施形態]
[1-1.構成]
以下、第1の実施形態に係る放射線検査装置の構成について、
図1及び
図2を参照しつつ説明する。放射線検査装置100は、被検査物Wに放射線を照射し、被検査物Wを透過した放射線を検出する。この検出結果に基づき、放射線検査装置100は、被検査物Wの透視画像を生成する。なお、本実施形態の放射線検査装置100は、CT装置であっても良いが、以下の説明では、単に透視画像を取得する放射線検査装置であるものとして説明する。
【0014】
図1に示すように、放射線検査装置100は、被検査物Wがその上面に載置される検査台1と、被検査物Wの透視画像を撮像する放射線源2及び検出器3と、放射線源2と検出器3との間に設けられ、放射線源2から検出器3に入力される放射線ビームを減衰させるフィルタFを調整するフィルタ調整部4と、を備える。さらに、放射線検査装置100は、検査台1、放射線源2、検出器3、フィルタ調整部4の動作を制御する制御部9を備える。
【0015】
検査台1は、被検査物Wを載置する載置面を有する台である。検査台1は、載置面に平行な方向または垂直な方向に当該載置面を移動させる移動機構11と、この垂直な方向を軸に載置面を回転させる回転機構12と、を備える。移動機構11は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。すなわち、移動機構11は、サーボモータの駆動により、検査台1の載置面に平行な方向または垂直な方向に被検査物Wを移動させる。移動機構11の移動によって、放射線ビームの光軸に被検査物Wを合わせることが出来る。
【0016】
回転機構12は、移動機構11の下に設けられ、例えば、モータ等の駆動源を含んでなるアクチュエータである。回転機構12は、検査台1の載置面に垂直な軸を中心に当該載置面を回転させる。なお、移動機構11の上に回転機構12が設けられてもよい。
【0017】
放射線源2は、被検査物Wに放射線ビームを照射する。放射線ビームは、焦点を頂点として角錐形状に拡大する放射線の束である。放射線源2は、例えばX線管であり、放射線は、例えばX線である。
【0018】
検出器3は、検査台1及び被検査物Wを挟んで放射線源2に対向して設けられ、放射線の透過経路に応じて減弱した放射線強度の二次元分布を検出し、後述の画像処理部93に透視画像を出力する。検出器3は、例えばフラットパネルディテクタ(FPD)により構成される。また、検出器3は、自身に入力された放射線ビームの信号量I0を後述のフィルタ制御部94に出力する。
【0019】
フィルタ調整部4は、複数枚のフィルタFを把持し、後述のフィルタ制御部94が選択したフィルタFを放射線源2と検出器3との間に挿入する。フィルタ調整部4は、挿入したフィルタFが放射線源2からの放射線ビームの光軸に直交するように、例えば放射線源2の焦点から見て左右側に設けられる。
【0020】
フィルタFは、例えば金属などからなるハードフィルタである。金属としては、銅、鉄、アルミ、またはこれらを含む合金などが好適である。フィルタFは、同じ材質で互いに異なる厚みを持つ複数枚であっても良いし、互いに異なる材質で同じ厚みを持つ複数枚であっても良い。なお、後者の場合は、互いに放射線ビームの減衰率が異なるのであれば、厚みが異なっても良い。すなわち、フィルタF毎に放射線ビームの減衰率が異なればよい。以下の説明では、フィルタFは、同じ材質で互いに異なる厚みを持つ複数枚であるものとして説明する。
【0021】
制御部9は、
図2に示すように、検査台1の移動機構11及び回転機構12を制御する機構制御部91と、放射線源2を制御する放射線源制御部92と、検出器3から取得した透視画像に対して補正を行う画像処理部93と、フィルタ調整部4にフィルタを調整させるフィルタ制御部94と、を備える。制御部9は、コンピュータ及びドライバ回路により構成される。コンピュータは、HDDまたはSSDといったストレージ、RAM、CPUなどにより構成される。なお、制御部9には図示しない入力部が接続され、ユーザはこの入力部を介して制御部9に放射線検査装置100の各構成を制御させる。
【0022】
機構制御部91は、検査台1の移動機構11及び回転機構12を制御することにより、検査台1に載置された被検査物Wを放射線ビームの光軸に合わせ、また被検査物Wの向きを変える。放射線源制御部92は、放射線源2を制御し、被検査物Wに放射線ビームを照射させる。すなわち、機構制御部91及び放射線源制御部92の制御により、被検査物Wに対して放射線ビームを照射させ、被検査物Wの透視画像を検出器3から取得することが出来る。
【0023】
画像処理部93は、検出器3からオフセットデータやゲインデータなどの各種データを取得する取得部931と、この各種データに基づき透視画像を補正する補正部932と、を備える。なお、画像処理部93は、図示しない表示部に補正部932が補正した透視画像を表示しても良い。
【0024】
フィルタ制御部94は、記憶部941と、判定部942と、選択部943と、を備える。記憶部941は、予め所定の信号量Isを記憶している。所定の信号量Isは、上述の入力部を介して所望の値に変更することが出来る。判定部942は、記憶部941を参照し、所定の信号量Isと検出器3から取得した放射線ビームの信号量I0とを比較する。I0>Isの場合、選択部943は、これまでに放射線源2と検出器3との間に挿入されていないフィルタFの中で、最も減衰率の低いフィルタFをフィルタ調整部4に挿入させる。この後、判定部942は、IsとフィルタFにより減衰されたI0とを比較し、I0≦Isであれば、フィルタFの調整を終了する。一方で、ここでもI0>Isであれば、フィルタ調整部4を制御し、I0≦Isとなるまで減衰率の低い順にフィルタFを入れ替えさせる。
【0025】
[1-2.作用]
本実施形態のフィルタ調整について、
図3を参照しつつ説明する。前提として、検査台1には何も載置されておらず、また放射線源2と検出器3との間にはフィルタFが挿入されていないものとする。
【0026】
まず、放射線源制御部92の制御により、放射線源2は、放射線ビームを検出器3に照射する。検出器3は、自身に入力された放射線ビームの信号量I0を検出し、フィルタ制御部94の判定部942に出力する(ステップS01)。次に、判定部942は、記憶部941に予め記憶されている所定の信号量Isを参照し、この所定の信号量Isと検出器3から取得した放射線ビームの信号量I0とを比較する(ステップS02)。
【0027】
I0>Isの場合(ステップS02のYES)、選択部943は、これまでに放射線源2と検出器3との間に挿入されていないフィルタFの中で、最も減衰率の低いフィルタFをフィルタ調整部4に挿入させる(ステップS03)。この後、ステップS01に戻り、検出器3は、フィルタFを介して減衰された放射線ビームの信号量I0を検出し、判定部942に出力する。判定部942は、再度IsとI0とを比較し、I0≦Isの場合(ステップS02のNO)、フィルタFの調整を終了する。一方で、ここでもI0>Isの場合は、再び上述のループを繰り返し、選択部943及びフィルタ調整部4により、減衰率の低い順にフィルタFを順次入れ替えていく。
【0028】
このように、フィルタFの調整が終わると、検査台1に被検査物Wが載置され、最適なフィルタFが挿入された状態で被検査物Wの撮像が行われる。
【0029】
[1-3.効果]
(1)本実施形態では、判定部942が所定の信号量Isと検出器3から取得した放射線ビームの信号量I0とを比較し、I0≦Isとなるようにフィルタ調整部4がフィルタFを調整する。これにより、ユーザは煩雑なフィルタFの調整を行う手間を省きながらもノイズの少ない透視画像を取得することが出来る。特に、撮像前の設定を頻繁に変更する場合であってもフィルタFを調整する手間がかからないので、ユーザはフィルタFの使用を意識することなく様々に設定を変更することが出来る。
【0030】
(2)本実施形態のフィルタ調整部4は、減衰率の低い順にフィルタFを順次入れ替える。これにより、透視画像におけるノイズを低減するだけでなく、信号量I0が下がり過ぎることによるSN比の低下を防ぐことも出来る。すなわち、ユーザはノイズの低減とSN比の維持を両立した高画質な透視画像を取得することが出来る。
【0031】
[2.第2の実施形態]
[2-1.構成]
本実施形態の放射線検査装置100の構成を、
図4及び
図5を参照して説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と基本構成が同じである。以下では、第1の実施形態と異なる点のみを説明し、第1の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】
本実施形態では、フィルタ厚曲線に基づいて理想的なフィルタFの厚みを算出する。そのため、本実施形態のフィルタFは、同じ材質で互いに異なる厚みを持つ複数枚であるものに限られる。
【0033】
図4に示すように、本実施形態のフィルタ制御部94は、判定部942の代わりに算出部944を備える。また、記憶部941は、所定の信号量Isに加え、予め理想的なフィルタの厚みを算出するための数式を記憶している。
【0034】
この数式は、
図5に示すようなフィルタ厚曲線を近似したものであることが望ましい。フィルタ厚曲線は、フィルタの厚みXと検出器3に入力される放射線ビームの信号量I0との関係を示すものである。フィルタ厚曲線は、放射線源2のエネルギースペクトル、検出器3のエネルギー感度、各構成の位置関係などの影響を受け理論式で表すことは困難であるため、実測またはモンテカルロシミュレーションを用いることによって撮像前の設定ごとに取得される。このフィルタ厚曲線を示す近似式が、記憶部941に予め記憶される数式である。
【0035】
この数式は、例えば以下の式により示される。なお、この数式は、上述の入力部を介して所望のものに変更することが出来る。
【数2】
Xs:フィルタの厚み
μ:線減弱係数
Is:所定の信号量
I0:放射線ビームの信号量
【0036】
算出部944は、記憶部941を参照し、所定の信号量Isと検出器3から取得した放射線ビームの信号量I0とをこの数式に代入することにより、理想的なフィルタの厚みXsを算出する。換言すると、算出部944は、放射線ビームの信号量I0の関数として理想的なフィルタの厚みXsを算出する。
【0037】
選択部943は、算出部944が算出した理想的なフィルタの厚みXsに最も近い厚みのフィルタFを選択し、フィルタ調整部4に挿入させる。
【0038】
[2-2.作用]
本実施形態のフィルタ調整について、
図6を参照しつつ説明する。前提として、検査台1には何も載置されておらず、また放射線源2と検出器3との間にはフィルタFが挿入されていないものとする。
【0039】
まず、放射線源制御部92の制御により、放射線源2は、放射線ビームを検出器3に照射する。検出器3は、自身に入力された放射線ビームの信号量I0を検出し、フィルタ制御部94の算出部944に出力する(ステップS11)。次に、算出部944は、記憶部941を参照し、所定の信号量Isと検出器3から取得した放射線ビームの信号量I0とを上述の数式に代入することにより、理想的なフィルタの厚みXsを算出する(ステップS12)。選択部943は、算出部944が算出した理想的なフィルタの厚みXsに最も近い厚みのフィルタFを選択し、フィルタ調整部4に挿入させる(ステップS03)。
【0040】
このように、フィルタFの調整が終わると、検査台1に被検査物Wが載置され、最適なフィルタFが挿入された状態で被検査物Wの撮像が行われる。
【0041】
[2-3.効果]
(1)本実施形態では、算出部944が放射線ビームの信号量I0の関数として理想的なフィルタの厚みXsを算出し、このフィルタの厚みXsに基づいてフィルタ調整部4がフィルタFを調整する。これにより、第1の実施形態の効果に加え、第1の実施形態における最適なフィルタFを選択するまでの試行錯誤が不要となるので、調整時間を短縮することが出来る。
【0042】
(2)本実施形態の算出部944は、フィルタFのフィルタ厚曲線に基づいて理想的なフィルタの厚みXsを算出する。これにより、フィルタFの枚数を多くすればするほど、理想的な厚みのフィルタFを用いることが出来る。第1の実施形態でフィルタFの枚数を多くすると、フィルタFの調整に掛かる時間がそれだけ長くなるというデメリットがあるが、本実施形態においてはこのようなデメリットを無くすことが出来る。
【0043】
[3.他の実施形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0044】
(1)上記第1の実施形態では、最も減衰率が低いフィルタFから挿入したが、これに限られない。例えばSN比をさほど気にしない場合は、減衰率が中ほどのフィルタFから挿入しても良い。これにより、フィルタFの調整フローにおけるループの回数を減らすことが出来るので、調整時間を短縮することが出来る。
【0045】
(2)上記第1の実施形態では、フィルタFを順次入れ替えたが、一度挿入したフィルタFをそのままにした状態で、追加的にフィルタFを挿入しても良い。なお、この場合は、複数枚のフィルタFの厚み及び材質の両方が同じであることが好ましい。
【0046】
(3)上記第2の実施形態の選択部943は、算出部944が算出した理想的なフィルタの厚みXsに最も近い厚みのフィルタFを選択したが、例えばXs以上の厚みであってXsに最も近いフィルタFを選択しても良い。これにより、透視画像におけるノイズを確実に低減することが出来る。
【0047】
(4)上記実施形態では、選択部943の選択に基づいてフィルタ調整部4がフィルタFを調整したが、これに限られない。例えば、図示しない報知部などにより、選択部943が選択したフィルタFを報知し、ユーザがこのフィルタFを挿入するように仕向けても良い。
【符号の説明】
【0048】
100…放射線検査装置
1…検査台
11…移動機構
12…回転機構
2…放射線源
3…検出器
4…フィルタ調整部
9…制御部
91…機構制御部
92…放射線源制御部
93…画像処理部
931…取得部
932…補正部
94…フィルタ制御部
941…記憶部
942…判定部
943…選択部
944…算出部
F…フィルタ
W…被検査物