(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137902
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】車両浸水防止装置
(51)【国際特許分類】
B60J 11/04 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
B60J11/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037621
(22)【出願日】2021-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】521100793
【氏名又は名称】華盛商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関根 一生
(57)【要約】
【課題】設置場所の制約を受け難くて車両を簡単に包むことができる車両浸水防止装置を提供する。
【解決手段】車両を包む樹脂フィルム製の袋状のシート体を備え、前記シート体は、前記車両の車輪が載る底部と、前記底部に連続して前記車両より高く延出する一対の側面部と、を備え、前記側面部の上半部は、前後の各端縁同士が溶着され、上縁が開閉自在な止め具により閉塞され、前記側面部の下半部は、前記底部の斜め端縁に溶着されている、ことを特徴とする車両浸水防止装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を包む樹脂フィルム製の袋状のシート体を備え、
前記シート体は、前記車両の車輪が載る底部と、前記底部に連続して前記車両より高く延出する一対の側面部と、を備え、
前記側面部の上半部は、前後の各端縁同士が溶着され、上縁が開閉自在な止め具により閉塞され、前記側面部の下半部は、前記底部の斜め端縁に溶着されている、ことを特徴とする車両浸水防止装置。
【請求項2】
前記側面部の上半部は、前記車両のルーフの上方で前記車両の側面側に折れ曲がり、前記車両の側面側からのアクセスで前記止め具を開閉自在に形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の車両浸水防止装置。
【請求項3】
前記底部に前後の方向に延びる折れ部が設けられている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両浸水防止装置。
【請求項4】
前記底部は、二重の樹脂フィルムからなり、上下の樹脂フィルムの間に空隙があり、下の樹脂フィルムの裏には、前後の方向に延びる、車輪が通るレール体を備える、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両浸水防止装置。
【請求項5】
前記側面部には、前記上半部の下部に空気抜きが設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の車両浸水防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を包む樹脂フィルム製の袋状のシート体を備える、車両浸水防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大雨などによる河川の氾濫などで洪水が発生した場合、自動車などの車両が水没することがある。車両が水没すれば、電装品は水により機能が損なわれて交換が必要となる。また車室内に泥水が浸入して内装材が汚損して車室内の清掃が必要となるなど、復旧に多大の費用を要し、多くの場合は復旧の費用が車両価格を上回り、ほとんどの場合は廃車となる。これを解消するため、合成樹脂製のシート体により、車両を覆って車室内への浸水を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の技術では、開口部を車両の屋根上の中央部で結ぶため、車両をシート体で包む作業に、多大の労力が必要になるという問題がある。また、開口部を車両の屋根上の中央部で結ぶのに代えて側方で結ぶ場合には、開口部を開いた状態に保持するためにシート体を吊り下げる設備が必要であり、設置場所が制約され易いという問題がある。
そこで、本発明の目的は、上述した従来技術が有する課題を解消し、設置場所の制約を受け難くて車両を簡単に包むことができる車両浸水防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両浸水防止装置は、車両を包む樹脂フィルム製の袋状のシート体を備え、前記シート体は、前記車両の車輪が載る底部と、前記底部に連続して前記車両より高く延出する一対の側面部と、を備え、前記側面部の上半部は、前後の各端縁同士が溶着され、上縁が開閉自在な止め具により閉塞され、前記側面部の下半部は、前記底部の斜め端縁に溶着されている、ことを特徴とする。
【0006】
上記構成において、前記側面部の上半部は、前記車両のルーフの上方で前記車両の側面側に折れ曲がり、前記車両の側面側からのアクセスで前記止め具を開閉自在に形成されてもよい。
【0007】
また、上記構成において、前記底部に前後の方向に延びる折れ部が設けられていてもよい。
【0008】
また、上記構成において、前記底部は、二重の樹脂フィルムからなり、上下の樹脂フィルムの間に空隙があり、下の樹脂フィルムの裏には、前後の方向に延びる、車輪が通るレール体を備えてもよい。
【0009】
また、上記構成において、前記側面部には、前記上半部の下部に空気抜きが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両浸水防止装置は、車両を包む樹脂フィルム製の袋状のシート体を備え、前記シート体は、前記車両の車輪が載る底部と、前記底部に連続して前記車両より高く延出する一対の側面部と、を備え、前記側面部の上半部は、前後の各端縁同士が溶着され、上縁が開閉自在な止め具により閉塞され、前記側面部の下半部は、前記底部の斜め端縁に溶着されている。この構成によれば、設置場所の制約を受け難い構成で車両を簡単に包むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】シート体で車両を包んだ状態を示す側面図である。
【
図2】シート体の形成方法を示す図であり、
図2(A)は二枚の樹脂フィルムが重ねられた状態を示す図、
図2(B)は樹脂フィルムが折られた状態を示す図、
図2(C)は樹脂フィルムを溶着した状態を示す図である。
【
図3】シート体の使用方法を説明する図であり、シート体を路面に配置した状態を示す図である。
【
図4】
図3の続きを説明する図であり、シート体に車両を乗せた状態を示す図である。
【
図5】
図4の続きを説明する図であり、シート体を車両の上方に引き上げシート体を車両の上方で折り曲げた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、シート体1で車両30を包んだ状態を示す側面図である。
このシート体1は、透明または半透明の樹脂フィルム製であり、車両30の全体を包み込むために、袋状に形成されている。樹脂フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンやPET(polyethylene terephthalate)を使用可能である。このシート体1は、車両30の車輪31が載る底部2と、底部2に連続して形成されて車両30の側部で車両30のルーフ32よりも高く延出可能な車幅方向一対の側面部3、4と、を備える。シート体1は、底部2上に車両30が配置された状態で側面部3、4を上下方向(重力方向)に延出可能に構成され、車両30の上方部分の側面部3、4を車両30の側方に折り曲げ可能(
図1の二点鎖線)に構成される。
【0013】
図2は、シート体1の形成方法を示す図である。
シート体1は、二枚の樹脂フィルム1A、1B(
図2(A)参照)を二重に重ねて形成される。二枚の樹脂フィルム1A、1B同士の間は基本的には接着されておらず相対的に摺動可能である。シート体1の底部2は、上下(二重)の樹脂フィルム1A、1Bの間に部分的に空隙が生じるように重ね合わされており、二枚の樹脂フィルム1A、1Bは互いに密着した状態になり難くなっている。すなわち、樹脂フィルム1A、1Bは、面接触しても互いに摺動し易くなっている。
【0014】
図1において、シート体1の底部2は、上面視では、前後方向に長い六角形状である。底部2の殆どの部分は路面(地面)から浮き上がらず、路面に接地される。接地される部分の前後の長さは、少なくとも車両30の前側の車輪31と後側の車輪31の前後間隔よりも大きい。設置される部分の前後の長さは、望ましくは、車両30の長さ寸法よりも大きいが、必ずしも大きくなくてもよい。また、設置される部分の左右幅は、左右の車輪31の通過位置よりも広い。
【0015】
底部2の下側(外側)となる樹脂フィルム1Bの下面(外面)には、車幅方向一対のレール体21、22(
図2(C)参照)が貼り付けられている。レール体21、22は、前後方向(車両30の進入方向)に延びる帯板状に形成される。レール体21、22は、樹脂フィルム1A、1Bの厚さよりも厚く形成されている。各レール体21、22は、車輪31の車輪幅よりも幅広に形成されている。レール体21、22は、例えば、ウレタン樹脂である。レール体21、22は、車両30がシート体1の底部2の上面に進入する際に、車輪31が載って、車両30の重量を支える。下側の樹脂フィルム1Bがレール体21、22を介して路面と接触するため、車両30の進入時に、樹脂フィルム1A、1Bの破損が防止され易くなっている。
【0016】
また、シート体1は透明または半透明であるため、レール体21、22は底部2を透かして底部2の上面(内面)側から視認できるようになっている。よって、レール体21、22は、車両30を底部2に進入させる場合には、作業者の運転時の目印となり、車両30を底部2の所定位置に移動させ易くなっている。さらに、レール体21、22は、車幅方向の車輪31の位置を示す目印としても機能する。
【0017】
車両30を底部2の所定位置に移動させる際に、車両30のハンドルを据え切りなどした場合には、上側(内側)の樹脂フィルム1Aが下側(外側)の樹脂フィルム1Bに対して摺動し易く、樹脂フィルム1A、1Bが破損し難くなっている。
【0018】
シート体1の底部2と、一対の側面部3、4とは幅方向に連続する。底部2と、側面部3、4とは、二枚の樹脂フィルム1A、1Bを重ねた状態で、底部2の幅方向両側縁となる位置で折り曲げることにより、底部2と側面部3、4とが形成される。すなわち、底部2と側面部3、4とは一体に形成される。
【0019】
側面部3、4は、底部2に連続する下半部5、6と、下半部5、6の上方に連続する上半部7、8とを備える。
下半部5、6は、下側で水平方向に延びる下縁部5A、6A(
図2(C))と、下縁部5A、6Aの前端から前方に延びて前方に進むにつれて上方に傾斜する前側の傾斜縁部5B、6Bと、下縁部5A、6Aの後端から後方に延びて後方に進むにつれて上方に傾斜する後側の傾斜縁部5C、6Cと、を有する。
【0020】
下縁部5A、6Aは、底部2と接続される部分である。
前側の傾斜縁部5B、6Bには、底部2の前端部の左右の斜め端縁2D、2Eが溶着されており、前側の傾斜溶着部11、12(
図2(B)参照)が形成されている。左右一対の傾斜溶着部11、12全体は、上面視では、前側で窄まるV字状に形成されている。
後側の傾斜縁部5C、6Cには、底部2の後端部の左右の斜め端縁2F、2Gが溶着されており、後側の傾斜溶着部13、14(
図2(B)参照)が形成されている。左右一対の傾斜溶着部13、14全体は、上面視では、後側で窄まるV字状に形成されている。
【0021】
上半部7、8は、前側の傾斜縁部5B、6Bの上端から上方に延びる前縁部7A、8Aと、後側の傾斜縁部5C、6Cの上端から上方に延びる後縁部7B、8Bと、前縁部7A、8Aの上端から後縁部7B、8Bの上端まで延びる開放縁部(上縁)7C、8Cと、を有する。
【0022】
前縁部7A、8Aは、所定の幅で溶着されており、前縁部7A、8Aには、上下方向に沿って溶着された前側の溶着部15が形成される。
後縁部7B、8Bは、所定の幅で溶着されており、後縁部7B、8Bには、上下方向に沿って溶着された後側の溶着部16が形成される。 開放縁部7C、8Cは、シート体1の内部から外部に開口する開口形状を形成する。
【0023】
側面部3、4は、上半部7、8が車両30のルーフ32を越えて幅方向に折り曲げられる高さ(長さ)に形成されている。このとき、側面部3、4の高さは、
図1の二点鎖線で示すように、開放縁部7C、8Cが車両30の窓33の高さに来るような高さ(長さ)が好適である。
【0024】
開放縁部7C、8Cには、止め具23が溶着されている。本実施形態の止め具23は、帯状シート25を有する。帯状シート25は樹脂製である。本実施形態では、帯状シート25が、側面部3、4のうちの側面部4の上半部8に溶着される。帯状シート25は、開放縁部8Cを越えて上方に延出可能な長さに形成され、開放縁部8Cに沿った方向に所定の間隔を空けて複数配置される。帯状シート25の一端は、開放縁部8Cから下方に所定の間隔を空けて溶着される。帯状シート25の他端には、第一の止め具本体26Aが設けられる。
【0025】
側面部4とは反対側の側面部3には、第一の止め具本体26Aが脱着可能に嵌合する第二の止め具本体26Bが設けられる。第二の止め具本体26Bは、第一の止め具本体26Aの数に応じて設けられている。
側面部3、4の上半部7、8が車両30のルーフ32を越えて幅方向に折り曲げられると開放縁部7C、8Cが閉じた状態で車両30の窓33の高さに来る。この状態で、帯状シート25を第二の止め具本体26Bに向けて延ばし、第一の止め具本体26Aを第二の止め具本体26Bに嵌合させることにより、開放縁部7C、8Cが閉じた状態に保持される。すなわち、シート体1が閉塞される。
【0026】
第一の止め具本体26Aと、第二の止め具本体26Bとは、一方に凸部分を有し、他方に凹部分を有し、これらの凸部分と凹部分とを嵌合させることにより、互いを結合させることが可能な部材である。本実施形態では、第一の止め具本体26Aと第二の止め具本体26Bとは、ボタン状の凸部分とボタン状の凹部分で構成され、いわゆる、樹脂製のプラホックである。
帯状シート25と、第一の止め具本体26Aと、第二の止め具本体26Bとにより、本実施形態の止め具23が構成される。
【0027】
シート体1の片側の側面部3には、上半部7の下部に対応して、シート体1の内部空間から空気を抜くことが可能な空気抜き24が設けられる。空気抜き24は、車両30の窓33の高さに応じて設けられる。本実施形態では、空気抜き24は、片側の側面部3に一つだけ設けられるが、複数設けたり、さらには、両側の側面部3、4に設ける構成が可能である。空気抜き24は、例えば、樹脂フィルム1A、1Bの厚み方向に貫通する微細な孔で構成される。ただし、空気抜き24は、シート体1の外部から内部への水の進入を防止し、且つ、シート体1の内部から外部への空気の排出を許容する構成であれば、逆止弁のような樹脂フィルム1A、1Bとは別部材を設けてもよい。
【0028】
図2は、シート体1の形成方法を示す図であり、
図2(A)は二枚の樹脂フィルム1A、1Bが重ねられた状態を示す図、
図2(B)は樹脂フィルム1A、1Bが折られた状態を示す図、
図2(C)は樹脂フィルム1A、1Bを溶着した状態を示す図である。なお、
図2の説明では、シート体1の形成後に、底部2や、側面部3,4となる部位は、樹脂フィルム1A、1Bについても底部2や、側面部3,4と呼ぶ。他の部位も同様である。
【0029】
図2(A)に示すように、シート体1は、二枚の樹脂フィルム1A、1Bが重ねて形成される。本実施形態では、シート体1の内側となる樹脂フィルム1Aは、ポリエチレン製の一層構造の樹脂フィルムである。一方、シート体1の外側となる樹脂フィルム1Bは、ポリエチレン製のシート、ポリエチレン製のクロスシート、PET製のシートが重ねた状態で接着された三層構造の樹脂フィルムである。二枚の樹脂フィルム1A、1Bは、互いのポリエチレン製のシート同士が面し、PET製のシートが外側となるように重ねられる。路面に接触する部分がPET製であるため、シート体1が破損し難くなっている。各樹脂フィルム1A、1Bの厚さはおおよそ0.15mmであり、シート体1の厚さは合計で0.3mm程度である。樹脂フィルム1A、1Bは、例えば長方形であり、車両30を包めるように十分に大きい大きさに形成されている。
【0030】
樹脂フィルム1A、1Bは、前後方向に対応する中心線L0に対して左右対称に折られる。樹脂フィルム1A、1Bには、中心線L0から左右両側に所定の間隔を空けて直線状の谷折位置L1が設定される。また、樹脂フィルム1A、1Bには、各谷折位置L1から左右方向外側に所定の間隔を空けて直線状の山折位置L2が設定される。
【0031】
樹脂フィルム1A、1Bは、谷折位置L1で谷折りされ(下方に凸となるように折られ)、山折位置L2で山折りされて(上方に凸となるように折られて)、樹脂フィルム1A、1Bの左右両側同士が重ね合わされる。すなわち、
図2(B)に示すように、中心線L0の左側の底部2上には、矢印Y1で示すように、左側の側面部3の下半部5が重ねられる。また、中心線L0よりも右側の底部2上には、矢印Y2で示すように、右側の側面部4の下半部6が重ねられる。また、左側の上半部7と右側の上半部8とは、矢印Y3、Y4で示すように、底部2の上面に対して直立して交差可能な状態に重ねられる。
【0032】
底部2と左側の下半部5は重ねられた状態で、その前後部分を、前後方向内側に進むにしたがって左右方向外側となる傾斜線L3、L3に沿って、切断、溶着する。溶着は一定幅以上する。底部2と側面部3とは溶着により、一体形状をなし、その前後に傾斜溶着部11、13が形成される。また、切断により、不要部1C、1Cが除去されるため、シート体1が軽量化される。
同様に、底部2と右側の下半部6は重ねられた状態で、その前後部分を、傾斜線L3、L3に沿って、切断、溶着され、傾斜溶着部12、14が形成される。
【0033】
上半部7、8では前端が所定の幅で溶着されて、前側の溶着部15(
図2(C)参照)が形成される。
また、上半部7、8では後端が所定の幅で溶着されて、後側の溶着部16(
図2(C)参照)が形成される。
これにより、樹脂フィルム1A、1Bは、上方に開口形状をなす開放縁部7C、8Cが形成された袋状に形成される。
【0034】
樹脂フィルム1A、1Bの底部2には、適宜のタイミングで、レール体21、22が貼り付けられる。また、樹脂フィルム1A、1Bには、適宜のタイミングで、止め具23が設けられる。すなわち、樹脂フィルム1A、1Bの側面部4に帯状シート25と第一の止め具本体26Aが設けられ、樹脂フィルム1A、1Bの側面部3に第二の止め具本体26Bが設けられる。また、樹脂フィルム1A、1Bの上半部7には、適宜のタイミングで空気抜き24が設けられる。
これにより、本実施形態のシート体1が形成される。
【0035】
ここで、
図2(B)において、底部2には、中心線L0の位置を上方に凹ませるように山折り(シート体1の外部から見れば谷折り)することで、左側の下半部5と右側の下半部6を重ねることが可能である。特に、レール体21、22が左右に分割されており、底部2を中心線L0の位置で折り曲げ易くなっている。これにより、
図2(C)に示すように、袋状のシート体1を平面状にすることができる。よって、立体の袋形状を形成するシート体1は、平面状にし易く、平面状にした後に、折り畳んだりロール状に畳んだりできる。よって、シート体1をコンパクトに畳み易くなっており、シート体1の保管が容易になっている。なお、底部2は、袋としてのシート体1の底部まちを形成し、底部2の前後には底部2の前後の部分が浮き上がる端部マチ2A、2B(
図1、
図2(C)参照)が形成される。端部マチ2A、2Bの幅寸法は車両30の幅寸法よりも大きい。底部2には、中心線L0に沿った折れ部2C(
図2(C)参照)が設けられるため、シート体1の使用前後の折り畳みを簡単にできる。
【0036】
図3は、シート体1の使用方法を説明する図であり、シート体1を路面に配置した状態を示す図である。
図4は、
図3の続きを説明する図であり、シート体1に車両30を乗せた状態を示す図である。
図5は、
図4の続きを説明する図であり、シート体1を車両30の上方に引き上げシート体1を車両30の上方で折り曲げた状態を示す図である。
【0037】
次に、
図3-5を用いて、シート体1の使用方法を説明する。
シート体1は、例えば、洪水が発生する恐れのある場合に設置(使用)される。シート体1の設置場所は特に限定されないが、駐車場や広場など、洪水発生時に水が引くまでの間、車両30を停車可能な場所に設置するのが望ましい。
【0038】
図3に示すように、シート体1は、底部2を広げて底部2の上面を上方に露出させた状態で、底部2の下面を路面に接触させて配置する。このとき、止め具23の嵌合を解除し側面部3,4の開放縁部7C、8Cの全域を開放した状態で、その側面部3、4を下方に押し畳み込んだ状態とする。畳み込んだ状態の側面部3、4は、レール体21、22よりも車幅方向外側に配置することが望ましい。
【0039】
底部2を上方に露出させた状態で、作業者M1、M2(
図5参照)は、シート体1の前後方向一端から他端に向けて車両30を移動させる。
図4に示すように、車両30は、底部2の所定の位置、例えば、底部2の前後方向中央部に停止させる。この際に、車両30の車輪31をレール体21、22の上方を通過させることにより、車輪31がシート体1の側面部3、4に乗り上げた状態で停止することを防止でき、側面部3、4が持ち上げられなくなることを防止できる。
【0040】
図5に示すように、車両30を所定の位置に停止させた状態で、作業者M1、M2は、一対の側面部3、4を、車両30の上方に向けて引き上げる。このとき、側面部3,4の前後の溶着部15、16を掴んだ場合には、溶着部15、16は剛性を有する部分であるためシート体1の形状を安定させながら、側面部3,4を車両30の上方に引き上げることができる。側面部3、4の上半部7、8を車両30のルーフ32よりも上方に引き上げると、側面部3、4の上半部7、8を、ルーフ32を越えるように、車幅方向に折り曲げ可能となる。車幅方向に、一方の上半部8をルーフ32を越えるように配置することにより、両方の開放縁部7C、8Cが車両30の車幅方向に配置され第二の止め具本体26Bのある側面部7側に配置される。このとき、ルーフ32上で他方の上半部7を折り曲げると、ルーフ32上で他方の上半部7に一方の上半部8が重なった状態となる。よって、側面部3,4がルーフ32上からずれ落ち難くなり、開放縁部7C、8C同士を近接した状態に保持し易くなる。
【0041】
開放縁部7C、8Cは、車両30の窓33付近に配置され易いため、止め具23の位置がルーフ32よりも低くなり易く、車両30の側面側から立ち姿勢で作業者M1、M2が止め具23にアクセスすることができる。止め具23の帯状シート25を把持して、第一の止め具本体26Aを第二の止め具本体26Bに嵌合させることにより、シート体1は開放縁部7C、8C同士が近接して閉じた状態に保持されシート体1が閉塞される。よって、大雨などにより洪水が発生しても、シート体1によって車両30への水の進入が防止され易くなっている。
【0042】
本実施形態のシート体1では、側面部3の上半部7の下部には、空気抜け24が設けられている。上半部7の下部は、車両30の窓33の外側に位置し易く(
図1参照)、折り曲げられた上半部7、8で塞がれ難い。また、上半部7の下部は、上半部7、8を折り曲げた場合のシート体1の内部空間の上方になり易い。
洪水が発生した場合には、シート体1が車両30と共に浸る場合もあるが、洪水でシート体1が圧迫される際には、シート体1の内側の空気が上方となり易い空気抜け24を通じて抜け易くなっている。よって、シート体1の内部の空気による浮力を減らし易くなっている。
【0043】
ここで、従来技術のシート体では、単なる四角筒状の袋なので、軽量化されておらず、開口形状の四隅を掴むなどしないと自重でシート形状が安定し難い。このため、袋を車両の上方に引き上げる作業が煩雑となり易いという問題がある。また、従来技術のシート体では、車両の屋根、すなわち、車両のルーフ上の中央部で開口部を塞ぐ構成のため、作業が煩雑となり易いという問題がある。また、側方を開口させる場合には、駐車場が屋根付きである必要があるなど、袋を吊り下げる設備が必要であり、設置場所が制限され易いという問題もある。
【0044】
これに対して、本実施形態のシート体1では、側面部3、4の上半部7、8は、前後の各前縁部7A、8A、7B、8B同士が溶着され、開放縁部7C、8Cが開閉自在な止め具23により閉塞され、側面部3、4の下半部5、6は、底部2の斜め端縁2D、2E、2F、2Gに溶着されている。
よって、側面部3,4は2枚のシート形状の合わせ面構造であり、また、底部2の斜め端縁2D-2Gが溶着されて傾斜溶着部11-14が形成されている。したがって、不要部1C(
図2(B)参照)が除去されて軽量化された状態で、シート体1で車両30を包んだ際に底部2を路面(地面)から浮き上がらせ易い構成であり、車両30に沿った袋形状になり易い(
図1参照)。よって、車両30の両側で側面部3、4をそれぞれ上方に引き上げることで容易にシート体1で車両30を包み易くなっている。また、側面部3,4の前後二か所の溶着部15、16を持つことでも、シート体1を車両30の上方に引き上げ易くなっている。このとき、溶着部15、16を前後方向に引っ張ることにより、左側の上半部7と右側の上半部8とを近接させ易く、車両30のルーフ32上で近接させることも可能である。
【0045】
また、本実施形態では、開放縁部7C、8Cを止め具23の第一の止め具本体26A、第二の止め具本体26Bにより閉じれば良いため、ひも等の結び具で縛る場合に比べて容易に開放縁部7C、8Cを閉塞した状態にし易くなっている。また、シート体1は上方に持ち上げて車両30を包む構成であるため、屋根付き駐車場や柱などを必要とせずに設置作業ができ、設置場所の制約を受け難くなっている。
よって、本実施形態のシート体1では、車両30を簡単に包むことができる。なお、シート体1は、樹脂製であるため、例えば、ハサミなどで切断することが可能であり、廃棄処理も容易になっている。
【0046】
以上説明したように、本発明を適用した本実施形態によれば、車両浸水防止装置は、車両30を包む樹脂フィルム製の袋状のシート体1を備え、シート体1は、車両30の車輪31が載る底部2と、底部2に連続して車両30より高く延出する一対の側面部3、4と、を備え、側面部3、4の上半部7,8は、前後の各前縁部7A、8A同士が溶着され、開放縁部7C、8Cが開閉自在な止め具23により閉塞され、側面部3、4の下半部5、6は、底部2の斜め端縁2D、2E,2F、2Gに溶着されている。
したがって、樹脂フィルム製の袋状のシート体1により、設置場所の制約を受け難い構成で車両30を簡単に包むことができる。
【0047】
本実施形態では、側面部3、4の上半部7、8は、車両30のルーフ32の上方で車両30の側面側に折れ曲がり、車両30の側面側からのアクセスで止め具23の第一の止め具本体26A、第二の止め具本体26Bを開閉自在に形成される。したがって、側面部3、4の上半部7,8は、車両30のルーフ32の上方で車両30の側方側に折れ曲がるため、止め具23の第一の止め具本体26A、第二の止め具本体26Bの位置が低くなり、止め具23の開閉を、車両30の側方側から立ち姿勢でアクセスでき、止め具23を簡単に開閉できる。
【0048】
また、本実施形態では、底部2に前後の方向に延びる折れ部2Cが設けられている。したがって、シート体1の使用前後に簡単に折り畳むことができる。
【0049】
また、本実施形態では、底部2は、二重の樹脂フィルム1A、1Bからなり、上下の樹脂フィルム1A、1Bの間に空隙があり、下の樹脂フィルム1Bの裏には、前後の方向に延びる、車輪31が通るレール体21、22を備える。したがって、車両30を移動させる際のハンドル操作時に、上下の樹脂フィルム1A、1B間にすべりが発生し、樹脂フィルム1A、1Bに車輪31からの作用力が掛り難くなり、破れ防止となる。また、レール体21、22が車両30を移動させる際の案内目印になる。
【0050】
また、本実施形態では、側面部3、4には、上半部7、8の下部に空気抜き24が設けられている。
したがって、シート体1を閉塞した状態でも空気が抜けるため、空気抜けが無い場合に比べて、内部の空気による浮力を減らし易くなっている。
【0051】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
上記実施形態では、帯状シート25の一端は、開放縁部8Cから下方に所定の間隔を空けて溶着されるが、この際に、開放縁部7C、8C側の上半部7、8を複数回折り畳めるような所定の間隔を空けて溶着してもよい。これにより、止め具23を閉じるときに、開放縁部7C、8Cが、より確実に閉塞され易くなる。
【0052】
上記実施形態では、止め具23は、プラホックの構成を説明したが、他の機構の止め具でもよい。例えば、止め具は、開放縁部7C、8Cの一方に凸部分を有し、他方に凹部分を有し、これらの凸部分と凹部分とを嵌合させることにより、開放縁部7C、8Cの全域を閉じる部材でもよい。すなわち、止め具23は、いわゆる、樹脂製のジッパーでもよい。
【0053】
上記実施形態では、止め具23は、帯状シート25を有する構成を説明したが、帯状シート25を省略し、側面部3と側面部4の一方の長さを長くして、側面部3の一方に第一の止め具本体26Aを設ける構成にしてもよい。
【0054】
上記実施形態では、シート体1は設置場所に繋ぎ留めていないが、アンカーや柱などでシート体1を繋ぎ留めてもよい。例えば、シート体1の前後の傾斜溶着部11-14は、樹脂フィルム1a、1bが多重に重なった状態で溶着されており強度が高い。そこで、傾斜溶着部11-14に孔や留め具などの固定部を形成して、固定部に、綱やベルトなどの長尺部材を固定し、長尺部材をアンカーで地面に固定したり柱に巻き付けて固定したりする。これにより、シート体1を設置場所に繋ぎ留めてもよい。
【0055】
例えば、上記実施形態では、シート体1は前後対称状に形成されていたが、前後非対称でもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 シート体
1A、1B 樹脂フィルム
2 底部
2C 折れ部
3、4 側面部
2D、2E、2F、2G 斜め端縁
5、6 下半部
7,8 上半部
7A、8A 端縁
7C、8C 開放縁部(上縁)
21、22 レール体
23 止め具
24 空気抜き
30 車両
31 車輪
32 ルーフ
【手続補正書】
【提出日】2021-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を包む樹脂フィルム製の袋状のシート体を備え、
前記シート体は、前記車両の車輪が載る底部と、前記底部に連続して前記車両より高く延出する一対の側面部と、を備え、
前記側面部の上半部は、前後の各端縁同士が溶着され、上縁が開閉自在な止め具により閉塞され、前記側面部の下半部は、前記底部の斜め端縁に溶着され、
前記側面部の上半部は、前記車両のルーフの上方で前記車両の側面側に折れ曲がり、前記車両の側面側からのアクセスで前記止め具を開閉自在に形成される、ことを特徴とする車両浸水防止装置。
【請求項2】
前記底部に前後の方向に延びる折れ部が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の車両浸水防止装置。
【請求項3】
前記底部は、二重の樹脂フィルムからなり、上下の樹脂フィルムの間に空隙があり、下の樹脂フィルムの裏には、前後の方向に延びる、車輪が通るレール体を備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両浸水防止装置。
【請求項4】
前記側面部には、前記上半部の下部に空気抜きが設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両浸水防止装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明の車両浸水防止装置は、車両を包む樹脂フィルム製の袋状のシート体を備え、前記シート体は、前記車両の車輪が載る底部と、前記底部に連続して前記車両より高く延出する一対の側面部と、を備え、前記側面部の上半部は、前後の各端縁同士が溶着され、上縁が開閉自在な止め具により閉塞され、前記側面部の下半部は、前記底部の斜め端縁に溶着され、前記側面部の上半部は、前記車両のルーフの上方で前記車両の側面側に折れ曲がり、前記車両の側面側からのアクセスで前記止め具を開閉自在に形成される、ことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】削除
【補正の内容】