(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137922
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20220914BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B60T7/12 A
F02D29/02 321A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037649
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大上 秀仁
【テーマコード(参考)】
3D246
3G093
【Fターム(参考)】
3D246DA01
3D246DA02
3D246EA02
3D246GB30
3D246GC07
3D246HA02A
3D246HA08A
3D246HA43A
3D246HA64A
3D246HA84A
3D246HB11A
3D246JB12
3D246JB43
3G093AA01
3G093BA21
3G093BA22
3G093CA02
3G093CB05
3G093DA01
3G093DA06
3G093DB05
3G093DB15
3G093EA03
3G093EB04
(57)【要約】
【課題】車両発進時に加速が抑制されて緊急回避を行うことができなくなることを抑止することができる車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】車両の停止時にブレーキペダルの操作が解除された後も制動力を維持しアクセルペダルの操作により制動力を解除するオートブレーキホールド装置を備える車両の制御装置において、緊急回避が必要でないと判定された場合にオートブレーキホールド装置による制動力が解除されるまでエンジントルクを抑制(トルク抑制)し、緊急回避が必要であると判定された場合にエンジントルクの抑制を禁止する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の停止時にブレーキペダルの操作が解除された後も制動力を維持しアクセルペダルの操作により制動力を解除するオートブレーキホールド装置を備える車両の制御装置であって、
緊急回避が必要か否かを判定する緊急回避判定部と、
前記緊急回避判定部により緊急回避が必要でないと判定された場合に前記オートブレーキホールド装置による制動力が解除されるまでエンジントルクを抑制し、前記緊急回避判定部により緊急回避が必要であると判定された場合にエンジントルクの抑制を禁止するように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記緊急回避判定部により緊急回避が必要でないと判定された場合に前記オートブレーキホールド装置による制動力が解除された後に所定時間が経過するまでエンジントルクを抑制するように制御することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制動維持制御装置は、アイドリングストップ条件が解除されたときに車両の制動の維持を解除し、アイドリングストップ装置は、ドライバーによるアクセル操作に応じてエンジンを再始動させ、制動維持の解除が完了するまではエンジンのトルクが所定値以下となるようにエンジンのトルクを制御する技術が特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案されたような従来の技術は、制動維持の解除が完了した後にエンジントルクを増加させるため、車両発進時の加速が抑制される。このため、従来の技術は、他車両が接近している場合や不審者による接触の可能性がある場合にドライバーが緊急回避を行おうとしても、車両発進時に加速が抑制されて緊急回避を行うことができないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、車両発進時に加速が抑制されて緊急回避を行うことができなくなることを抑止することができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の制御装置は、車両の停止時にブレーキペダルの操作が解除された後も制動力を維持しアクセルペダルの操作により制動力を解除するオートブレーキホールド装置を備える車両の制御装置であって、緊急回避が必要か否かを判定する緊急回避判定部と、前記緊急回避判定部により緊急回避が必要でないと判定された場合に前記オートブレーキホールド装置による制動力が解除されるまでエンジントルクを抑制し、前記緊急回避判定部により緊急回避が必要であると判定された場合にエンジントルクの抑制を禁止するように制御する制御部と、を備えた構成を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、車両発進時に加速が抑制されて緊急回避を行うことができなくなることを抑止することができる車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の走行補助動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の走行補助動作の作用を説明するためのグラフであり、(a)の各グラフは、緊急回避が必要でない場合の例を示し、(b)の各グラフは、緊急回避が必要である場合の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、車両の停止時にブレーキペダルの操作が解除された後も制動力を維持しアクセルペダルの操作により制動力を解除するオートブレーキホールド装置を備える車両の制御装置であって、緊急回避が必要か否かを判定する緊急回避判定部と、緊急回避判定部により緊急回避が必要でないと判定された場合にオートブレーキホールド装置による制動力が解除されるまでエンジントルクを抑制し、緊急回避判定部により緊急回避が必要であると判定された場合にエンジントルクの抑制を禁止するように制御する制御部と、を備えることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、車両発進時に加速が抑制されて緊急回避を行うことができなくなることを抑止することができる。
【実施例0010】
以下、本発明の一実施例に係る車両の制御装置を搭載した車両について図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、車両1は、エンジン2と、エンジンコントローラ3と、ブレーキペダル4と、倍力装置5と、マスタシリンダ6と、ブレーキ圧保持装置7と、前輪8と、後輪9と、電動パーキングブレーキ10と、アクセルペダル11と、制御装置12と、を含んで構成されている。
【0012】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。
【0013】
エンジン2は、一連の4行程を行うことによって、それぞれ図示しない変速機構及びディファレンシャル機構などを介して、前輪8及び後輪9又は、前輪8及び後輪9のいずれか一方を回転させる。
【0014】
エンジンコントローラ3は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートと、通信モジュールとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0015】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをエンジンコントローラ3として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0016】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、このコンピュータユニットは、本実施例におけるエンジンコントローラ3として機能する。
【0017】
エンジンコントローラ3は、通信モジュールを介して、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)に接続されている。エンジンコントローラ3は、車内LANを介して制御装置12と接続されている。
【0018】
エンジンコントローラ3は、各種センサ類から入力ポートを介して入力された検知信号及び制御装置12から出力された制御信号に基づいて、エンジン2の吸入空気量、燃料噴射量及び点火タイミングなどを制御することにより、エンジン2の運転状態を制御する。
【0019】
倍力装置5は、例えば、エンジン2の内部に生じる負圧を用いてブレーキペダル4の踏力を補助する。マスタシリンダ6は、倍力装置5を介したブレーキペダル4の踏力に応じた油圧を発生する。
【0020】
ブレーキ圧保持装置7は、マスタシリンダ6によって発生された油圧から前輪8及び後輪9を制動するためのブレーキ圧を作り出す油圧回路によって構成される。ブレーキ圧保持装置7は、制御装置12の制御により、マスタシリンダ6によって発生された油圧にかかわらず、ブレーキ圧を保持することができる。電動パーキングブレーキ10は、制御装置12の制御により、後輪9の制動力を生成する。
【0021】
制御装置12は、CPUと、RAMと、ROMと、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートと、通信モジュールとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御装置12として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0022】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、このコンピュータユニットは、本実施例における制御装置12として機能する。
【0023】
制御装置12の入力ポートには、ブレーキペダル4が踏まれているか否かを検出するブレーキスイッチ21と、アクセルペダル11の操作量(以下、「アクセル開度」ともいう)を検出するアクセル開度センサ22と、車速を検出する車速センサ23と、マスタシリンダ6によって発生された油圧を検出するマスタシリンダ圧センサ24と、車両1の周辺を撮影するカメラ25とが接続されている。
【0024】
制御装置12の出力ポートには、ブレーキ圧保持装置7と、電動パーキングブレーキ10とが接続されている。制御装置12は、通信モジュールを介して、車内LANに接続されている。制御装置12は、車内LANを介してエンジンコントローラ3と接続されている。
【0025】
制御装置12は、エンジン自動停止条件が成立すると、エンジン2を自動停止させるための制御信号をエンジンコントローラ3に出力し、エンジン再始動条件が成立すると、エンジン2を再始動させるための制御信号をエンジンコントローラ3に出力するアイドルストップシステムとして機能する。本実施例において、エンジン自動停止条件は、車両1が停止したこととし、エンジン再始動条件は、アクセルペダル11が踏まれたこととする。
【0026】
制御装置12は、車両1が停止している状態で、ブレーキペダル4が解放されてから、アクセルペダル11が踏まれたことにより再始動したエンジン2の駆動力で車両1が前進できる状態になるまでの間、ブレーキ圧保持装置7にブレーキ圧を保持させて車両1のずり下がりを防止するオートブレーキホールド制御を実行する。
【0027】
例えば、制御装置12は、車両1が停止している状態で、マスタシリンダ圧センサ24によりマスタシリンダ圧が予め定められた所定圧以下になったことを検出すると、ブレーキ圧を保持するようにブレーキ圧保持装置7を制御する。
【0028】
エンジン2の駆動力で車両1を発進させることができる発進可能条件が成立すると、制御装置12は、ブレーキ圧を減圧してブレーキを解除するようにブレーキ圧保持装置7を制御する。本実施例において、制御装置12及びブレーキ圧保持装置7は、オートブレーキホールド装置を構成する。
【0029】
なお、オートブレーキホールド制御の実行期間において、制御装置12は、電動パーキングブレーキ10による制動力によって車両1のずり下がりを防止するようにしてもよい。すなわち、制御装置12及び電動パーキングブレーキ10が、オートブレーキホールド装置を構成するようにしてもよい。
【0030】
また、オートブレーキホールド制御の実行期間において、制御装置12は、ブレーキ圧保持装置7にブレーキ圧を保持させるとともに、電動パーキングブレーキ10による制動力によって車両1のずり下がりを防止するようにしてもよい。すなわち、制御装置12、ブレーキ圧保持装置7及び電動パーキングブレーキ10が、オートブレーキホールド装置を構成するようにしてもよい。
【0031】
制御装置12は、緊急回避が必要か否かを判定する緊急回避判定部12aとしての機能を有する。制御装置12は、カメラ25によって撮影された画像に基づいて、車両1に対する他車両の接近や不審者による接触があるか否かを判定する。
【0032】
制御装置12は、車両1に対する他車両の接近や不審者による接触があると判定した場合には、緊急回避が必要であると判定する。制御装置12は、車両1に対する他車両の接近や不審者による接触がないと判定した場合には、緊急回避が必要でないと判定する。
【0033】
制御装置12は、緊急回避が必要であるか否かの判定結果に応じて、エンジン2の出力トルク(以下、「エンジントルク」ともいう)を抑制する制御部12bとしての機能を有する。
【0034】
本実施例において、制御装置12は、緊急回避が必要でないと判定した場合にオートブレーキホールド制御による制動力が解除された後のトルク抑制保持時間が経過するまでエンジン2の出力トルク(以下、「エンジントルク」ともいう)を抑制し、緊急回避が必要であると判定した場合にエンジントルクの抑制を禁止する。
【0035】
トルク抑制保持時間は、オートブレーキホールド制御が終了してからオートブレーキホールド制御による制動力が解除されるまでの時間として予め検証により定められ、ROMに記憶されている。本実施例において、トルク抑制保持時間は、若干のマージンとして所定時間(例えば、100ms)が加算された時間に設定されている。
【0036】
制御装置12は、エンジントルクを抑制する期間において、エンジントルクが予め定められた上限トルクを超えないようにエンジン2のトルクを制御するための制御信号をエンジンコントローラ3に出力する。上限トルクは、オートブレーキホールド制御による制動力が解除されたときに車両1が急発進しないように予め検証により定められ、ROMに記憶されている。
【0037】
なお、車両1の進行方向の傾斜角を検出する傾斜角センサを車両1に設け、傾斜角センサによって検出された傾斜角が大きくなるほど上限トルクを大きくするようにしてもよい。このように構成する場合には、傾斜角に対する上限トルクを表すマップをROMに格納しておけばよい。
【0038】
また、制御装置12は、エンジントルクを抑制する期間において、エンジントルクが予め定められた上限トルクを超えないようにするのに代えて、エンジントルクの単位時間当たりの増加量が予め定められた上限増加量を超えないようにエンジン2を制御するための制御信号をエンジンコントローラ3に出力するようにしてもよい。
【0039】
以上のように構成された制御装置12の走行補助動作について
図2を参照して説明する。なお、以下に説明する走行補助動作は、制御装置12が起動している間、繰り返し実行される。
【0040】
まず、S1において、制御装置12は、車両1が停止しているか否かを判定する。例えば、制御装置12は、車速センサ23の検出値が0であれば、車両1が停止していると判定し、車速センサ23の検出値が0でなければ、車両1が停止していないと判定する。
【0041】
S1において、車両1が停止していると判定した場合には、制御装置12は、S2の処理を実行する。S1において、車両1が停止していないと判定した場合には、制御装置12は、S1の処理を実行する。すなわち、S1において、車両1が停止していないと判定した場合には、制御装置12は、車両1の停止待ち状態となる。
【0042】
S2において、制御装置12は、オートブレーキホールド制御の実行条件(以下、「ブレーキホールド条件」ともいう)が成立しているか否かを判定する。例えば、制御装置12は、車両1が停止していると判定した場合、かつ、インストルメントパネルなどに設けられた図示しないオートブレーキホールドスイッチがONである場合には、ブレーキホールド条件が成立していると判定し、車両1が停止していないと判定した場合、又は、オートブレーキホールドスイッチがOFFである場合には、ブレーキホールド条件が成立していないと判定する。
【0043】
なお、車両1の進行方向の傾斜角を検出する傾斜角センサを車両1に設け、S2において、制御装置12は、車両1が停止していると判定した場合、オートブレーキホールドスイッチがONである場合、かつ、傾斜角センサの検出値が所定値以上である場合には、ブレーキホールド条件が成立していると判定し、車両1が停止していないと判定した場合、オートブレーキホールドスイッチがOFFである場合、又は、傾斜角センサの検出値が所定値未満である場合には、ブレーキホールド条件が成立していないと判定するようにしてもよい。
【0044】
S2において、ブレーキホールド条件が成立していると判定した場合には、制御装置12は、S4の処理を実行する。S2において、ブレーキホールド条件が成立していないと判定した場合には、制御装置12は、S3の処理を実行する。
【0045】
S3において、制御装置12は、アクセル開度センサ22の検出値に基づいて、アクセルペダル11が操作されているか否かを判定する。S3において、アクセルペダル11が操作されていると判定した場合には、制御装置12は、走行補助動作を終了し、車両1は、発進する。S3において、アクセルペダル11が操作されていないと判定した場合には、制御装置12は、S2の処理を実行する。
【0046】
S4において、制御装置12は、オートブレーキホールド制御の実行を開始する(図中、「ブレーキホールドON」と記す)。S4の処理を実行した後、制御装置12は、S5の処理を実行する。
【0047】
S5において、制御装置12は、アイドルストップ条件が成立しているか否かを判定する。例えば、制御装置12は、前述したエンジン自動停止条件が成立している場合には、アイドルストップ条件が成立していると判定し、エンジン自動停止条件が成立してない場合には、アイドルストップ条件が成立していないと判定する。
【0048】
S5において、アイドルストップ条件が成立していないと判定した場合には、制御装置12は、S6の処理を実行する。S5において、アイドルストップ条件が成立していると判定した場合には、制御装置12は、S7の処理を実行する。
【0049】
S6において、制御装置12は、アクセル開度センサ22の検出値に基づいて、アクセルペダル11が操作されているか否かを判定する。S6において、アクセルペダル11が操作されていないと判定した場合には、制御装置12は、S5の処理を実行する。S6において、アクセルペダル11が操作されていると判定した場合には、制御装置12は、S12の処理を実行する。
【0050】
S7において、制御装置12は、アイドルストップの実行を開始する。例えば、制御装置12は、エンジン2を自動停止させるための制御信号をエンジンコントローラ3に出力する。S7の処理を実行した後、制御装置12は、S8の処理を実行する。
【0051】
S8において、制御装置12は、アクセル開度センサ22の検出値に基づいて、アクセルペダル11が操作されているか否かを判定する。S8において、アクセルペダル11が操作されていないと判定した場合には、制御装置12は、S8の処理を実行する。
【0052】
すなわち、S8において、アクセルペダル11が操作されていないと判定した場合には、制御装置12は、アクセルペダル11の操作待ち状態となる。S8において、アクセルペダル11が操作されていると判定した場合には、制御装置12は、S9の処理を実行する。
【0053】
S9において、制御装置12は、エンジン2を始動する。例えば、制御装置12は、エンジン2を再始動させるための制御信号をエンジンコントローラ3に出力する。S9の処理を実行した後、制御装置12は、S10の処理を実行する。
【0054】
S10において、制御装置12は、エンジン2の完爆条件が成立したか否かを判定する。例えば、制御装置12は、前述した発進可能条件が成立している場合には、エンジン2の完爆条件が成立していると判定し、発進可能条件が成立してない場合には、エンジン2の完爆条件が成立していないと判定する。
【0055】
S10において、エンジン2の完爆条件が成立していないと判定した場合には、制御装置12は、S10の処理を実行する。すなわち、S10において、エンジン2の完爆条件が成立していないと判定した場合には、制御装置12は、エンジン2の完爆条件の成立待ち状態となる。S10において、エンジン2の完爆条件が成立していると判定した場合には、制御装置12は、S11の処理を実行する。
【0056】
S11において、制御装置12は、緊急回避が必要であるか否かを判定する。S11において、制御装置12は、緊急回避が必要でないと判定した場合には(YES)、S13の処理を実行する。S11において、制御装置12は、緊急回避が必要である(NO)と判定した場合には、S12の処理を実行する。
【0057】
S12において、制御装置12は、オートブレーキホールド制御の実行を終了する(図中、「ブレーキホールドOFF」と記す)。オートブレーキホールド制御の実行が終了されると、ブレーキ圧が低下していくため、車両1が発進する。S12の処理を実行した後、制御装置12は、走行補助動作を終了する。
【0058】
S13において、制御装置12は、エンジントルクを抑制する(図中、「トルク抑制ON」と記す)。例えば、制御装置12は、エンジントルクを抑制するための制御信号をエンジンコントローラ3に出力する。S13の処理を実行した後、制御装置12は、S14の処理を実行する。
【0059】
S14において、制御装置12は、オートブレーキホールド制御の実行を終了する(図中、「ブレーキホールドOFF」と記す)。オートブレーキホールド制御の実行が終了されると、ブレーキ圧が低下していくため、車両1が発進する。S14の処理を実行した後、制御装置12は、S15の処理を実行する。
【0060】
S15において、制御装置12は、前述したトルク抑制保持時間が経過したか否かを判定する。S15において、トルク抑制保持時間が経過していないと判定した場合には、制御装置12は、S15の処理を実行する。
【0061】
すなわち、S15において、トルク抑制保持時間が経過していないと判定した場合には、制御装置12は、トルク抑制保持時間の経過待ち状態となる。S15において、トルク抑制保持時間が経過したと判定した場合には、制御装置12は、S16の処理を実行する。
【0062】
S16において、制御装置12は、エンジントルクの抑制を解除する(図中、「トルク抑制OFF」と記す)。例えば、制御装置12は、エンジントルクの抑制を解除するための制御信号をエンジンコントローラ3に出力する。S16の処理を実行した後、制御装置12は、走行補助動作を終了する。
【0063】
以上に説明した走行補助動作の作用について
図3を参照して説明する。
図3は、車両1が停止中、アイドルストップによりエンジン2が自動停止中、かつ、オートブレーキホールド制御が実行中である状態から各種検出値及び各種制御値の時間経過に応じた変化を表している。
【0064】
図3(a)の各グラフは、緊急回避が必要でないと制御装置12によって判定された場合の各種検出値及び各種制御値の時間経過に応じた変化を表し、
図3(b)の各グラフは、緊急回避が必要であると制御装置12によって判定された場合の各種検出値及び各種制御値の時間経過に応じた変化を表している。
【0065】
また、
図3における左右の各グラフは、各種検出値及び各種制御値として、上から順に、車速、エンジン2の機関回転速度(以下、「エンジン回転数」ともいう)、緊急回避の要否の判定結果、アクセル開度、エンジントルクの抑制状態(以下、「トルク抑制」ともいう)、エンジン2の出力トルク(以下、「実トルク」ともいう)、オートブレーキホールド制御の実行状態及びブレーキ圧を表している。
【0066】
以下、
図3(a)の各グラフに基づいて、緊急回避が必要でないと制御装置12によって判定された場合の走行補助動作の作用について説明する。
【0067】
時刻t1で、アクセル開度センサ22によって検出されたアクセル開度に基づくアクセルペダル11の操作が検出されると、エンジン回転数と実トルクが上昇し始める。時刻t2で、発進可能条件が成立すると、緊急回避が必要でない(False)と判定されているため、エンジントルクの抑制状態が有効(ON)になる。
【0068】
また、時刻t2で、発進可能条件が成立すると、オートブレーキホールド制御の実行状態がOFFになり、時刻t3で、オートブレーキホールド制御による制動力が解除される。オートブレーキホールド制御の実行状態がOFFになることによって、ブレーキ圧が低下していき、車速が上昇し始める。
【0069】
時刻t2からトルク抑制保持時間が経過する時刻t4になるまでは、エンジントルクの抑制状態が有効(ON)であるため、実トルクが抑制され、実トルクにともなって、エンジン回転数及び車速が抑制される。
【0070】
時刻t4で、エンジントルクの抑制状態が無効(OFF)になると、エンジントルクの抑制が解除されたことによって、実トルクが上昇し始めるとともに、エンジン回転数及び車速が上昇し始める。
【0071】
以下、
図3(b)の各グラフに基づいて、緊急回避が必要であると制御装置12によって判定された場合の走行補助動作の作用について説明する。
【0072】
時刻t11で、アクセル開度センサ22によって検出されたアクセル開度に基づくアクセルペダル11の操作が検出されると、エンジン回転数と実トルクが上昇し始める。時刻t12で、発進可能条件が成立すると、緊急回避が必要である(True)と判定されているため、エンジントルクの抑制状態が無効(OFF)に維持される。
【0073】
また、時刻t12で、発進可能条件が成立すると、オートブレーキホールド制御の実行状態がOFFになり、時刻t13で、オートブレーキホールド制御による制動力が解除される。オートブレーキホールド制御の実行状態がOFFになることによって、ブレーキ圧が低下していき、車速が上昇し始める。
【0074】
時刻t12以降では、エンジントルクの抑制状態が無効(OFF)に維持されているため、実トルクが継続的に上昇し、実トルクにともなって、エンジン回転数及び車速が継続的に上昇する。
【0075】
以上のように、本実施例に係る車両の制御装置は、緊急回避が必要であると判定した場合にエンジントルクの抑制を禁止するため、他車両の接近や不審者による接触の可能性があってドライバーが緊急回避を意図した場合に、車両発進時の加速が抑制されないようにして緊急回避することができる。
【0076】
また、本実施例に係る車両の制御装置は、緊急回避が不要であると判定した場合にオートブレーキホールド装置により制動力が解除されるまでエンジントルクを抑制するため、ドライバーが緊急回避を意図していない場合に、車両発進時の不快感を抑制することができる。
【0077】
また、本実施例に係る車両の制御装置は、緊急回避が不要であると判定された場合にオートブレーキホールド装置により制動力が解除された後に所定時間が経過するまでエンジントルクを抑制するため、ドライバーが緊急回避を意図していない場合に、車両発進時の不快感を確実に抑制することができる。
【0078】
なお、本実施例では、制御装置12は、カメラ25によって撮影された画像に基づいて、車両1に対する他車両の接近や不審者による接触があるか否かを判定するものとして説明した。
【0079】
これに対し、制御装置12は、超音波センサ又はレーザセンサなどの接近センサの検出値に基づいて、車両1に対する他車両の接近や不審者による接触があるか否かを判定するようにしてもよい。
【0080】
また、制御装置12は、接触感知センサの検出値に基づいて、車両1に対する他車両の接近や不審者による接触があるか否かを判定するようにしてもよい。
【0081】
また、制御装置12は、カメラ25によって撮影された画像、接近センサの検出値、及び、接触感知センサの検出値のうち2以上の組み合わせに基づいて、車両1に対する他車両の接近や不審者による接触があるか否かを判定するようにしてもよい。
【0082】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。