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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013794
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】外科用ステープル留めデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A61B17/072
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105364
(22)【出願日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】16/919,168
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】オルシー ディアズ-チオサ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC09
4C160CC23
4C160MM32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外科用ステープル留めデバイスを提供する。
【解決手段】外科用ステープル留めデバイスは、アンビル顎部材20に取り付けられた第1のバットレス24を有する。第1のバットレス24は、ステープル留めされた組織内に溶出する生体適合性造影剤を有し、患者に残留する組織T内の癌性細胞の術中識別を可能にする。態様では、外科用ステープル留めデバイスは、同様に生体適合性造影剤を有し得るカートリッジ顎部材30に取り付けられた第2のバットレス24aを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ステープル留めデバイスであって、
互いに枢動式に結合されたアンビル顎部材およびステープルカートリッジ顎部材を含むエンドエフェクタであって、前記アンビル顎部材および前記ステープルカートリッジ顎部材は、前記エンドエフェクタが開位置とクランプ位置との間で移動可能であるように相対的に移動可能である、エンドエフェクタと、
前記アンビル顎部材に取り付けられた第1のバットレスであって、少なくとも1つの生体適合性造影剤を含む、第1のバットレスと、を備える、外科用ステープル留めデバイス。
【請求項2】
前記カートリッジ顎部材に取り付けられた第2のバットレスをさらに備え、前記第2のバットレスが、少なくとも1つの生体適合性造影剤を含む、請求項1に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの生体適合性造影剤が、ヘモグロビンベースの酸素担体、パーフルオロカーボンベースの酸素担体、またはそれらの組み合わせから選択される人工酸素担体である、請求項1に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項4】
前記生体適合性造影剤が、界面活性剤、塩、酸、安定剤、多価アルコール、ヒドロトロープ、低分子量ポリ(エチレングリコール)、またはそれらの任意の組み合わせを含む賦形剤と組み合わされている、請求項1に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項5】
前記賦形剤が、シクロデキストリン、ドデシル硫酸ナトリウム、オクチルグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、またはそれらの組み合わせから選択される界面活性剤を含む、請求項4に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項6】
前記賦形剤が、塩化ナトリウムを含む塩を含む、請求項4に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項7】
前記賦形剤が、オレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、またはそれらの組み合わせから選択される酸を含む、請求項4に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項8】
前記賦形剤が、ブチル化ヒドロキシトルエンまたはブチル化ヒドロキシアニソールから選択される安定剤を含む、請求項4に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項9】
前記賦形剤が、D-ソルビトール、マンニトール、またはそれらの組み合わせから選択される多価アルコールを含む、請求項4に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項10】
前記第1のバットレスが、少なくとも1つの縫合糸によって前記アンビル顎部材に取り付けられている、請求項1に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項11】
前記第2のバットレスが、少なくとも1つの縫合糸によって前記ステープルカートリッジ顎部材に取り付けられている、請求項2に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項12】
前記第1のバットレスが、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、ムテイン、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(1~18)、インターフェロン、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制剤、血液タンパク質、フィブリン、トロンビン、フィブリノーゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノーゲン、ゴナドトロピン、ホルモンおよびホルモン類似体、ワクチン、ソマトスタチン、抗原、血液凝固因子、成長因子、骨形態形成タンパク質、TGF-B、タンパク質阻害剤、タンパク質アンタゴニスト、タンパク質アゴニスト、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドなどの核酸、細胞、ウイルス、抗炎症剤、抗菌剤、抗微生物剤、ならびにリボザイムから選択される治療薬をさらに含む、請求項1に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項13】
請求項1に記載の外科用ステープル留めデバイスを用いて組織をステープル留めすることを含む、組織を治療するための方法。
【請求項14】
外科用ステープル留めデバイスであって、
互いに枢動式に結合されたアンビル顎部材およびステープルカートリッジ顎部材を含むエンドエフェクタであって、前記アンビル顎部材および前記ステープルカートリッジ顎部材は、前記エンドエフェクタが開位置とクランプ位置との間で移動可能であるように相対的に移動可能である、エンドエフェクタと、
前記アンビル顎部材に取り付けられた第1のバットレスであって、少なくとも1つの生体適合性造影剤を有する、第1のバットレスと、
前記カートリッジ顎部材に取り付けられた第2のバットレスであって、少なくとも1つの生体適合性造影剤を有する、第2のバットレスと、を備える、外科用ステープル留めデバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの生体適合性造影剤が、ヘモグロビンベースの酸素担体、パーフルオロカーボンベースの酸素担体、またはそれらの組み合わせから選択される人工酸素担体を含む、請求項14に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項16】
前記生体適合性造影剤が、界面活性剤、塩、酸、安定剤、多価アルコール、ヒドロトロープ、低分子量ポリ(エチレングリコール)、またはそれらの任意の組み合わせを含む賦形剤と組み合わされている、請求項14に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項17】
前記第1のバットレスが、少なくとも1つの縫合糸によって前記アンビル顎部材に取り付けられている、請求項14に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項18】
前記第2のバットレスが、少なくとも1つの縫合糸によって前記ステープルカートリッジ顎部材に取り付けられている、請求項14に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項19】
前記第1のバットレス、前記第2のバットレス、またはそれら両方が、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、ムテイン、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(1~18)、インターフェロン、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制剤、血液タンパク質、フィブリン、トロンビン、フィブリノーゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノーゲン、ゴナドトロピン、ホルモンおよびホルモン類似体、ワクチン、ソマトスタチン、抗原、血液凝固因子、成長因子、骨形態形成タンパク質、TGF-B、タンパク質阻害剤、タンパク質アンタゴニスト、タンパク質アゴニスト、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドなどの核酸、細胞、ウイルス、抗炎症剤、抗菌剤、抗微生物剤、またはリボザイムから選択される治療薬をさらに含む、請求項14に記載の外科用ステープル留めデバイス。
【請求項20】
請求項14に記載の外科用ステープル留めデバイスを用いて組織をステープル留めすることを含む、組織を治療するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、創傷閉鎖デバイスとともに使用するための、バットレスなどの外科用デバイスを含む医療デバイスに関する。本開示の材料から形成される医療デバイスは、診断薬を患者に送達することが可能である。
【背景技術】
【0002】
外科用ステープル留め器具は、身体組織のセグメントを一体に接合するために、1列以上の締結具、例えば、ステープルまたは2部品締結具を身体組織に順次にまたは同時に適用するために外科医によって採用される。そのような器具は、一般に、中間に接合される身体組織が配置される一対の顎部または指状構造体を含む。ステープル留め器具が作動または「発射」されたときに、長手方向に移動する発射棒が、顎部のうちの1つのステープル駆動部材と接触する。ステープル駆動部材は、身体組織を通してステープルを形成する対向する顎部のアンビル内に外科用ステープルを押し込む。組織を除去または分離する場合、ナイフブレードをデバイスの顎部に提供して、ステープルのライン間で組織を切断することができる。
【0003】
一部の外科的処置にとっては、治療部位に診断薬を導入することが望ましくなり得る。例えば、癌性組織を除去するための外科的処置では、外科医は癌性組織を除去し、患者は癌の再発について定期的に監視される。癌性組織の外科的切除の範囲は、生検結果によって判断される。切除した組織の辺縁に癌細胞が認められた場合は、組織はさらに切除され、組織のより大部分が除去される。
【0004】
生検分析は、切除された組織片に限定され、患者の身体内に残っている組織の状態についての病識は存在しない。癌細胞が切除部位を越えて転移している可能性があるが、リンパ節または患者の身体の他の部分には到達していない。これらの細胞は、新しい腫瘍増殖部位になる可能性があり、通常、従来の手術では検出されることはない。
【0005】
組織に対してステープルラインを密封および/または補強するためのバットレスとして使用可能な改善された外科用修復材料、ならびに癌性細胞/組織の存在を含む患者の状態を診断するための改善された方法が、依然として望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、組織を修復するために使用され得る外科用ステープル留めデバイスを含む医療デバイスに関する。
【0007】
態様では、開示される外科用ステープル留めデバイスは、互いに枢動式に結合されたアンビル顎部材およびステープルカートリッジ顎部材を有するエンドエフェクタを含み、アンビル顎部材およびステープルカートリッジ顎部材は、エンドエフェクタが開位置とクランプ位置との間で移動可能であるように相対的に移動可能である。第1のバットレスがアンビル顎部材に取り付けられ、第1のバットレスは、少なくとも1つの生体適合性造影剤を含む。
【0008】
いくつかの態様では、第2のバットレスは、カートリッジ顎部材に取り付けられる。第2のバットレスは、生体適合性造影剤を有する必要はない。態様では、第2のバットレスは、少なくとも1つの生体適合性造影剤を有する。
【0009】
態様では、少なくとも1つの生体適合性造影剤は、ヘモグロビンベースの酸素担体、パーフルオロカーボンベースの酸素担体、またはそれらの組み合わせから選択される人工酸素担体である。
【0010】
いくつかの態様では、生体適合性造影剤は、界面活性剤、塩、酸、安定剤、多価アルコール、ヒドロトロープ、低分子量ポリ(エチレングリコール)、またはそれらの任意の組み合わせを含む賦形剤と組み合わされる。
【0011】
態様では、界面活性剤は、シクロデキストリン、ドデシル硫酸ナトリウム、オクチルグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、またはそれらの組み合わせである。
【0012】
塩は塩化ナトリウムを含み得る。
【0013】
いくつかの態様では、酸は、オレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、またはそれらの組み合わせを含む。
【0014】
他の態様では、安定剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン、またはブチル化ヒドロキシアニソールを含む。
【0015】
態様では、多価アルコールは、D-ソルビトール、マンニトール、またはそれらの組み合わせを含む。
【0016】
いくつかの態様では、第1のバットレスは、少なくとも1つの縫合糸によってアンビル顎部材に取り付けられる。
【0017】
他の態様では、第2のバットレスは、少なくとも1つの縫合糸によってステープルカートリッジ顎部材に取り付けられる。
【0018】
態様では、第1のバットレスは、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、ムテイン、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(1~18)、インターフェロン、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制剤、血液タンパク質、フィブリン、トロンビン、フィブリノーゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノーゲン、ゴナドトロピン、ホルモンおよびホルモン類似体、ワクチン、ソマトスタチン、抗原、血液凝固因子、成長因子、骨形態形成タンパク質、TGF-B、タンパク質阻害剤、タンパク質アンタゴニスト、タンパク質アゴニスト、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドなどの核酸、細胞、ウイルス、抗炎症剤、抗菌剤、抗微生物剤、ならびにリボザイムから選択された治療薬をさらに含む。
【0019】
他の態様では、本開示の外科用ステープル留めデバイスは、互いに枢動式に結合されたアンビル顎部材およびステープルカートリッジ顎部材を含むエンドエフェクタを含み、アンビル顎部材およびステープルカートリッジ顎部材は、エンドエフェクタが開位置とクランプ位置との間で移動可能であるように相対的に移動可能である。第1のバットレスがアンビル顎部材に取り付けられ、第1のバットレスは、少なくとも1つの生体適合性造影剤を有しており、第2のバットレスは、カートリッジ顎部材に取り付けられ、第2のバットレスは少なくとも1つの生体適合性造影剤を有している。
【0020】
本開示のステープル留めデバイスを用いて組織をステープル留めするための方法もまた提供される。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
外科用ステープル留めデバイスであって、
互いに枢動式に結合されたアンビル顎部材およびステープルカートリッジ顎部材を含むエンドエフェクタであって、上記アンビル顎部材および上記ステープルカートリッジ顎部材は、上記エンドエフェクタが開位置とクランプ位置との間で移動可能であるように相対的に移動可能である、エンドエフェクタと、
上記アンビル顎部材に取り付けられた第1のバットレスであって、少なくとも1つの生体適合性造影剤を含む、第1のバットレスと、を備える、外科用ステープル留めデバイス。
(項目2)
上記カートリッジ顎部材に取り付けられた第2のバットレスをさらに備え、上記第2のバットレスが、少なくとも1つの生体適合性造影剤を含む、上記項目に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目3)
上記少なくとも1つの生体適合性造影剤が、ヘモグロビンベースの酸素担体、パーフルオロカーボンベースの酸素担体、またはそれらの組み合わせから選択される人工酸素担体である、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目4)
上記生体適合性造影剤が、界面活性剤、塩、酸、安定剤、多価アルコール、ヒドロトロープ、低分子量ポリ(エチレングリコール)、またはそれらの任意の組み合わせを含む賦形剤と組み合わされている、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目5)
上記賦形剤が、シクロデキストリン、ドデシル硫酸ナトリウム、オクチルグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、またはそれらの組み合わせから選択される界面活性剤を含む、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目6)
上記賦形剤が、塩化ナトリウムを含む塩を含む、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目7)
上記賦形剤が、オレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、またはそれらの組み合わせから選択される酸を含む、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目8)
上記賦形剤が、ブチル化ヒドロキシトルエンまたはブチル化ヒドロキシアニソールから選択される安定剤を含む、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目9)
上記賦形剤が、D-ソルビトール、マンニトール、またはそれらの組み合わせから選択される多価アルコールを含む、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目10)
上記第1のバットレスが、少なくとも1つの縫合糸によって上記アンビル顎部材に取り付けられている、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目11)
上記第2のバットレスが、少なくとも1つの縫合糸によって上記ステープルカートリッジ顎部材に取り付けられている、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目12)
上記第1のバットレスが、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、ムテイン、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(1~18)、インターフェロン、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制剤、血液タンパク質、フィブリン、トロンビン、フィブリノーゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノーゲン、ゴナドトロピン、ホルモンおよびホルモン類似体、ワクチン、ソマトスタチン、抗原、血液凝固因子、成長因子、骨形態形成タンパク質、TGF-B、タンパク質阻害剤、タンパク質アンタゴニスト、タンパク質アゴニスト、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドなどの核酸、細胞、ウイルス、抗炎症剤、抗菌剤、抗微生物剤、ならびにリボザイムから選択される治療薬をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目13)
上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイスを用いて組織をステープル留めすることを含む、組織を治療するための方法。
(項目14)
外科用ステープル留めデバイスであって、
互いに枢動式に結合されたアンビル顎部材およびステープルカートリッジ顎部材を含むエンドエフェクタであって、上記アンビル顎部材および上記ステープルカートリッジ顎部材は、上記エンドエフェクタが開位置とクランプ位置との間で移動可能であるように相対的に移動可能である、エンドエフェクタと、
上記アンビル顎部材に取り付けられた第1のバットレスであって、少なくとも1つの生体適合性造影剤を有する、第1のバットレスと、
上記カートリッジ顎部材に取り付けられた第2のバットレスであって、少なくとも1つの生体適合性造影剤を有する、第2のバットレスと、を備える、外科用ステープル留めデバイス。
(項目15)
上記少なくとも1つの生体適合性造影剤が、ヘモグロビンベースの酸素担体、パーフルオロカーボンベースの酸素担体、またはそれらの組み合わせから選択される人工酸素担体を含む、上記項目に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目16)
上記生体適合性造影剤が、界面活性剤、塩、酸、安定剤、多価アルコール、ヒドロトロープ、低分子量ポリ(エチレングリコール)、またはそれらの任意の組み合わせを含む賦形剤と組み合わされている、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目17)
上記第1のバットレスが、少なくとも1つの縫合糸によって上記アンビル顎部材に取り付けられている、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目18)
上記第2のバットレスが、少なくとも1つの縫合糸によって上記ステープルカートリッジ顎部材に取り付けられている、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目19)
上記第1のバットレス、上記第2のバットレス、またはそれら両方が、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、ムテイン、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(1~18)、インターフェロン、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制剤、血液タンパク質、フィブリン、トロンビン、フィブリノーゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノーゲン、ゴナドトロピン、ホルモンおよびホルモン類似体、ワクチン、ソマトスタチン、抗原、血液凝固因子、成長因子、骨形態形成タンパク質、TGF-B、タンパク質阻害剤、タンパク質アンタゴニスト、タンパク質アゴニスト、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドなどの核酸、細胞、ウイルス、抗炎症剤、抗菌剤、抗微生物剤、またはリボザイムから選択される治療薬をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイス。
(項目20)
上記項目のいずれか一項に記載の外科用ステープル留めデバイスを用いて組織をステープル留めすることを含む、組織を治療するための方法。
(摘要)
外科用ステープル留めデバイスは、アンビル顎部材に取り付けられた第1のバットレスを有する。第1のバットレスは、ステープル留めされた組織内に溶出する生体適合性造影剤を有し、患者に残留する組織内の癌性細胞の術中識別を可能にする。態様では、外科用ステープル留めデバイスは、同様に生体適合性造影剤を有し得るカートリッジ顎部材に取り付けられた第2のバットレスを有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明で開示される外科用ステープル留め装置の態様が、図面を参照して本明細書で説明される。
【0022】
図1】本開示の一態様によるハンドルハウジング、アダプタアセンブリ、エンドエフェクタ、およびその構成要素に取り付けられるバットレスを含む外科用ステープル留め装置の斜視図である。
図2図1に示される外科用ステープル留め装置のエンドエフェクタのアンビルアセンブリの斜視図であり、バットレスが本開示の一態様に従って、そこにどのように取り付けられ得るかを示している。
図3図1に示される外科用ステープル留め装置のエンドエフェクタのステープルカートリッジアセンブリの斜視図であり、ステープルカートリッジアセンブリのいくつかの部品が分離した状態であり、本開示の一態様によるバットレスが、ステープルカートリッジアセンブリにどのように取り付けられ得るかを示している。
図4】ステープル留めされる組織と係合した図1のエンドエフェクタの斜視図である。
図5図1の外科用ステープル留め装置の発射後の組織のステープル留めされたセクションの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の様々な例示的な態様は、組織固定デバイスとともに使用するためのバットレスについて、外科用ステープルの態様で以下で考察される。以下の開示は、ステープルを備えるこれらのバットレスの使用について詳細に考察するが、本開示の外科用ステープル留め装置は、組織を機械的に支持し、ステープルまたは縫合ラインに沿って組織を補強して流体漏出および/または組織の出血の発生を低下させるために使用され得る、様々なバットレス材料およびフィルムベースの材料を含むことが理解されるであろう。例えば、本開示の外科用ステープル留め装置とともに使用され得る他の好適な材料には、ヘルニアパッチおよび/または組織スキャフォールドが含まれる。
【0024】
本開示の外科用ステープル留め装置とともに使用されるバットレスは、遠位端部および近位端部を有する概して長方形体の形態であり、遠位端部から近位端部まで細長い長方形体部分の長さに沿って延びる対向する側面を備える。
【0025】
態様では、本開示のバットレスは、生体適合性造影剤を有し得る。本開示のバットレスに加えられる生体適合性造影剤は、本開示のバットレスが配置される部位またはその近くの癌細胞のさらなる識別に好適である。したがって、本開示は、患者から癌性組織を除去することを支援するためのバットレス、およびバットレスを使用するための方法ならびに機構を説明する。
【0026】
バットレスを形成するために使用される材料は、生体適合性造影剤を含浸させてもよく、生体適合性造影剤がコーティングとしてバットレスに適用されてもよく、または生体適合性造影剤(複数可)のこれらの適用の組み合わせが使用されてもよい。他の態様では、生体適合性造影剤は、バットレスを形成するために使用される繊維の成分であり得、バットレス製造プロセス中に繊維に組み込まれる。いくつかの態様では、以下でより詳細に説明するように、追加の層および/またはコーティングが、本開示のバットレスに適用され得る。
【0027】
バットレスおよびステープルラインが展開されると、生体適合性造影剤が組織に溶出する。切除された組織に隣接する組織への生体適合性造影剤の溶出は三次元的であり、特定の光の下で、異常細胞、例えば癌性細胞の視覚化を可能にする。生体適合性造影剤がバットレスを形成するために使用される繊維の成分である態様では、バットレスからの生体適合性造影剤の溶出はより遅くなり、より長期間にわたって行われることになり、このことは、フォローアップケアの間に転移をチェックするのに役立つことになり得、つまり、手術後数週間での癌性細胞の視覚化を可能にする。したがって、生体適合性造影剤のこの長期にわたる溶出は、癌性細胞を有する組織のそれらの領域を標的とする放射線治療の支援において有益となり得る。
【0028】
様々な外科用ステープル留め装置が、本開示のバットレスとともに利用され得ることが理解されるべきである。態様では、例えば、EndoGIA(商標)Reinforced Reload with Tri-Staple Technology(商標)、およびMedtronic(North Haven、CT)を通じて入手可能な他のTri-Staple Technology(商標)を備える他のステープラを含む線形ステープラ、ならびに例えば、EEA(商標)、CEEA(商標)、GIA(商標)、EndoGIA(商標)、およびTA(商標)などの、同様にMedtronicを通じて入手可能な他の吻合ステープラも利用することができる。本開示の原理はまた、例えば、円形カートリッジおよびアンビルを有するエンドツーエンド吻合ステープラ(例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Surgical Fastener Applying Apparatus」と題する共同所有の米国特許第5,915,616号を参照のこと)、腹腔鏡ステープラ(例えば、その各々の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、各々「Surgical Stapling Apparatus」と題する共同所有の米国特許第6,330,965号および同第6,241,139号を参照のこと)、ならびに横断吻合ステープラ(例えば、その各々の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、各々「Surgical Fastener Applying Apparatus」と題する共同所有の米国特許第5,964,394号および同第7,334,717号を参照のこと)などの代わりの構成を有する外科用ステープラに等しく適用可能であると理解すべきである。
【0029】
本開示されたバットレスおよび外科用ステープル留め装置が、ここで図面を参照して詳細に説明され、ここでは同様の参照番号は、同様の、または同一の要素を特定する。以下の考察において、「近位」および「後部」という用語は互換的に採用されてもよく、適正使用中に臨床医により近い構造体の部分を指すと理解されるべきである。「遠位」および「先端の」という用語も互換的に採用されてもよく、適正使用中に臨床医から遠い構造体の部分を指すと理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、ヒト対象または他の動物を指すと理解されるべきであり、「臨床医」という用語は、医師、看護師、または他の医療提供者を指すと理解されるべきであり、サポート要員を含み得る。
【0030】
図1図3は、組織をステープル留めする際に使用するための例示的な外科用ステープル留めデバイスまたは外科用ステープラ10を図示する。図1に図示されるように、外科用ステープル留めデバイス10は、一般に、ハンドル12と、ハンドル12から遠位に延在する細長い管状部材14を含むアダプタアセンブリと、を含む。エンドエフェクタ16は、細長い管状部材14の遠位端部18上に装着されている。エンドエフェクタ16は、細長い管状部材14に恒久的に貼着されてもよいか、または取り外し可能であり、したがって新しいエンドエフェクタ16と交換可能であり得る。
【0031】
エンドエフェクタ16は、アンビル顎部材20(図2)、およびステープルカートリッジ32を受容するように構成されたステープルカートリッジ顎部材30(図3)を含む。アンビル顎部材20は、エンドエフェクタ16の遠位端部18上に移動可能に装着され、ステープルカートリッジ顎部材30から離間した開位置と、ステープルカートリッジ顎部材30に実質的に隣接する閉鎖位置との間で移動可能である。
【0032】
ステープルカートリッジ顎部材30は、中央ナイフスロット34と、中央ナイフスロット34の両側にステープルポケット36の列とを画定するステープルカートリッジ32をその中に有する(図3)。中央ナイフスロット34の両側に2列以上のステープルポケット36が設けられ得ることが想定されている。ステープルポケット36を列に並べる必要はなく、むしろ、ステープルポケット36の様々な異なるアレイを中央ナイフスロット34(図示せず)の両側に画定し得ることが想定されている。
【0033】
外科用ステープル留め装置10は、図1に見られるように、ハンドル12上に移動可能に装着された引き金33をさらに含む。引き金33の作動は、最初に、アンビル顎部材20をステープルカートリッジ顎部材30に対して開位置から閉鎖位置に移動させるように動作し、その後、外科用ステープル留め装置10を作動させて、ステープルのラインを組織に適用する。ステープル留めされる組織に対してエンドエフェクタ16を適切に配向するために、外科用ステープル留め装置10には、ハンドル12上に装着された回転ノブ34が追加的に設けられている。ステープル留めされる組織に対してエンドエフェクタ16を適切に配向するために、ハンドル12に対する回転ノブ34の回転は、細長い管状部材14およびエンドエフェクタ16をハンドル12に対して回転させる。
【0034】
図2図3を参照すると、アンビル顎部材20およびステープルカートリッジ顎部材30には、バットレス24、24aが設けられ得る。バットレス24、24aは、外科用ステープル留め装置10によって組織に適用されたステープルラインを補強および密封するために設けられている。バットレス24、24aは、任意の外科用ステープル留め装置、締結装置、または発射装置に適合させるのに好適な任意の形状、サイズ、または次元に構成され得る。
【0035】
図2図3は、アンビル顎部材20およびステープルカートリッジ顎部材30にそれぞれ適用されるバットレス24、24aを図示するが、いくつかの態様では、アンビル顎部材20がバットレス24を有するか、またはステープルカートリッジ顎部材30がバットレス24aを有するかのいずれかであるが、その両方ではない(図示せず)ことが分かる。
【0036】
図2に示すように、バットレス24は、縫合糸26でアンビル顎部材20に取り付けられ得る。同様に、図3に示すように、バットレス24aは、縫合糸28でカートリッジ顎部材30に取り付けられ得る。
【0037】
図1に示すように、アンビル顎部材20にはバットレス24が装填されており、ステープルカートリッジ顎部材30にはバットレス24aが装填されている。
【0038】
本開示によるバットレスは、生体適合性基材材料から作製され得る。そのような基材は、生体吸収性、非吸収性、天然、および/または合成材料から形成され得る。
【0039】
態様では、バットレスは、バットレスが身体から回収されなくてもよいように、生分解性であってもよい。本明細書で使用される場合、「生分解性」という用語は、生体吸収性材料および生体再吸収性材料の両方を含むと定義される。生分解性とは、バットレスが、身体条件(例えば、酵素分解または加水分解)の下で分解するかまたは構造的完全性を失うか、もしくは分解生成物が身体によって排泄可能または吸収可能であるように、身体内の生理学的条件の下で(物理的または化学的に)分解されることを意味する。
【0040】
本開示のバットレスを形成する際に使用され得る材料の非限定的な例としては、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ホスファジン)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリプロピレン、脂肪族ポリエステル、グリセロール、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンシュウ酸塩、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンシュウ酸塩、ポリオキサエステル、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、およびコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、それらのブレンドおよび組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
態様では、天然生物学的ポリマーが、本開示のバットレスを形成する際に使用され得る。好適な天然生物学的ポリマーとしては、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、フィブリノーゲン、エラスチン、ケラチン、アルブミン、セルロース、酸化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシエチルセルロース、キタン、キトサン、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、天然生物学的ポリマーは、本開示のバットレスを生成するために、本明細書に記載された他のポリマー材料のいずれかと組み合わされてもよい。
【0042】
バットレスはまた、多孔性または非多孔性である材料から形成されてもよい。本開示のバットレスを形成するために、多孔性、非多孔性、天然、合成、生体吸収性、および/または非吸収性の材料の任意の組み合わせが使用され得ることは、当然理解されるべきである。
【0043】
いくつかの態様では、本開示のバットレスは、多孔性材料(複数可)で形成されてもよい。本開示のバットレスの任意の多孔性部分は、その表面の少なくとも一部の上に開口部または細孔を有し得る。好適な多孔性材料には、繊維構造体(例えば、編み構造体、織構造体、不織構造体など)、および/または発泡体(例えば、連続または独立気泡発泡体)が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
態様では、細孔は、バットレスの厚さ全体にわたって相互接続するように、十分な数およびサイズであり得る。織布、編布、不織布、および連続気泡発泡体は、構造体の説明的な例であり、ここでは細孔が、バットレスの厚さ全体にわたって相互接続するように、十分な数およびサイズであり得る。
【0045】
他の態様では、細孔は、バットレスの厚さ全体にわたって相互接続しなくてもよい。独立気泡発砲体または溶融不織材料は、構造体の説明的な例であり、ここでは細孔が、バットレスの厚さ全体にわたって相互接続し得ない。いくつかの態様では、細孔はバットレスの一部分の上に配置されることができ、非多孔性テキスチャを有するバットレスの他の部分を有する。当業者は、本開示の多孔性バットレス用の様々な細孔分布パターンおよび構成を想定することができる。
【0046】
本開示のバットレスが多孔性であり、繊維材料を含む場合、バットレスは、編み加工、織り加工、不織技術(メルトブローを含む)、湿式紡糸、電気紡糸、押出成形、共押出成形などを含むがこれらに限定されない任意の好適な方法を使用して形成されてもよい。態様では、バットレスは、その各々の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,021,086号および同第6,443,964号に記載されている織物のような三次元構造を有する。
【0047】
図1図5に図示されるように、バットレス24、24aは、生体適合性造影剤を有する。生体適合性造影剤は、バットレス24、24aの表面上に、バットレス24、24aを形成するために使用される多孔質基材の孔内に、それらの組み合わせなどに存在することができる。
【0048】
態様では、好適な生体適合性造影剤には、人工酸素担体が含まれる。人工酸素担体は酸素を必要とする細胞に栄養を与える。癌細胞は低酸素状態であるために健康な組織と比較して、より多くの生体適合性造影剤を有するようになる。
【0049】
態様では、バットレスに含まれる生体適合性造影剤は、切除処置中にバットレスが適用された組織に溶出する。切除後に患者の体内に残った組織が癌細胞を有する場合、生体適合性造影剤が、癌細胞に接触し、癌細胞の存在の視覚的指標が結果として得られることになる。例えば、患者の体内の残りの組織を適切な波長の光にさらすと、患者の体内の組織内の癌細胞は、酸素の「非消費細胞」として暗い斑点になる。これにより、臨床医は切除のための追加の組織を視覚化して、すべての癌性組織が患者から除去されるように確実化することができる。
【0050】
臨床医が切除された組織に関する病理学者の報告を待っている間に、バットレスからの生体適合性造影剤の溶出を観察することができる。これにより、組織の切除後約20分~約30分の態様で、患者の少年に残っている組織内の癌細胞の存在の確認が手術中に可能になる。
【0051】
生体適合性造影剤として利用することができる人工酸素担体には、ヘモグロビンベースの酸素担体(HBOC)、パーフルオロカーボンベースの酸素担体(PFC)、それらの組み合わせなどが含まれる。ヘモグロビンベースの人工O担体のヘモグロビン分子は、血管内滞留を延長し、腎毒性を排除するために、α2β2-ヘモグロビン四量体のab-二量体への解離を防止するために安定化される必要があり得る。他の修飾は、組織へのOオフロードを改善するために、O親和性を低下させる働きをする。加えて、ポリエチレングリコールは、ヘモグロビンベースの人工O担体のヘモグロビン分子に結合された表面となり得、分子のサイズを増加させる。最後に、特定の生成物が重合され、生理学的コロイド浸透圧でヘモグロビン濃度を増加させる。パーフルオロカーボンは、OおよびCOに対する高いガス溶解能力と、化学的および生物学的不活性とを特徴とする炭素-フッ素化合物である。
【0052】
市販の人工酸素担体の例としては、ジアスピリン架橋ヘモグロビン(HemAssist)、ヒト組換えヘモグロビン(rHb1.1およびrHb2.0)、重合ウシヘモグロビンベースのO担体(HBOC-201)、ヒト重合ヘモグロビン(PolyHeme(登録商標))、ヘモグロビンラフィマー(Hemolink(商標))、マレイミド活性化ポリエチレングリコール修飾ヘモグロビン(MP4)、およびOxygent(商標)ならびにOxyFluor(商標)の商品名で入手可能なものなどのパーフルオロカーボンエマルジョンが含まれる。
【0053】
ある態様では人工酸素担体である生体適合性造影剤は、適切な波長の光を用いて患者の組織内の任意の残留癌細胞内で検出されることができる。態様では、生体適合性造影剤として利用される人工酸素担体は、特定の波長の光の下で人工酸素担体の視覚化を向上させるフルオロフォアまたは同様の元素/化合物を有し得る。
【0054】
態様では、本開示のバットレスを形成する際に基材材料に適用される生体適合性造影剤はまた、生体適合性造影剤がバットレスに付着する能力と、バットレスからの生体適合性造影剤の溶出を修飾する能力との両方を向上させる賦形剤も含み得る。
【0055】
態様では、バットレスを形成するために生体適合性造影剤と組み合わせることができる好適な賦形剤としては、シクロデキストリン(2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンおよびメチル-β-シクロデキストリンなど)、ドデシル硫酸ナトリウム、オクチルグルコシド、ならびにソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、およびTWEEN(登録商標)の名称で販売されているものを含めて、本明細書ではポリソルベートと称されることがあるソルビタンのポリエトキシル化脂肪酸エステルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。そのようなポリソルベートの例としては、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)、ポリソルベート20(TWEEN(登録商標)20)、ポリソルベート60(TWEEN(登録商標)60)、ポリソルベート65(TWEEN(登録商標)65)、ポリソルベート85(TWEEN(登録商標)85)、それらの組み合わせなどが挙げられる。態様では、低分子量ポリ(エチレングリコール)が、単独で、または他の上記の賦形剤のいずれかとの任意の組み合わせのいずれかで、賦形剤として添加され得る。
【0056】
他の態様では、好適な賦形剤は、塩化ナトリウムなどの塩、および/または尿素、オレイン酸、クエン酸、およびアスコルビン酸などの他の材料を含み得る。さらに他の態様では、賦形剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)またはブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)などの安定剤であり得る。
【0057】
さらに他の好適な賦形剤としては、D-ソルビトール、マンニトール、それらの組み合わせなどの多価アルコールが挙げられる。
【0058】
いくつかの態様では、ヒドロトロープである賦形剤は、生体適合性造影剤(複数可)に含まれ得る。これらの材料は水を引き寄せ、このことが、バットレスからの生体適合性造影剤の放出を向上することができる。
【0059】
態様では、生体適合性造影剤(複数可)、担体成分(複数可)、および/または賦形剤(複数可)は、本開示のバットレスに適用するための溶液であってもよい。乾燥により除去することができる任意の好適な溶媒が、そのような溶液を形成するために使用され得る。そのような溶液を形成するのに好適な溶媒として、生理食塩水、水、アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、N-メチルピロリドン、それらの組み合わせなどを含むがこれらに限定されない任意の薬学的に許容される溶媒が挙げられる。そのような溶液を形成する方法は、当業者の知識の範囲内であり、限定されないが、混合、ブレンド、超音波処理、加熱、それらの組み合わせなどを含む。
【0060】
態様では、生体適合性造影剤(複数可)、任意の担体成分(複数可)、および/または任意の賦形剤(複数可)が、噴霧、浸漬、刷毛塗り、針沈着プロセス、それらの組み合わせなどによってバットレスに適用され得る。上述のように、態様では、生体適合性造影剤は溶液中にあり、その後、バットレスに適用される。
【0061】
態様では、生体適合性造影剤(複数可)、任意の担体成分(複数可)、および/または任意の賦形剤(複数可)が、医療デバイスをいくつかの他の医療装置に貼着する前に本開示の医療デバイスに適用され得る。例えば、バットレスの場合、生体適合性造影剤は、外科用ステープラに取り付ける前に、バットレスに適用され得る。
【0062】
本開示によれば、生体適合性造影剤(複数可)、溶媒(複数可)、任意の担体成分(複数可)、および/または任意の賦形剤(複数可)が適用され、十分な量の生体適合性造影剤(複数可)が堆積してバットレスに頑健に取り付けられたままになるようになっている。
【0063】
適用後に、当業者の知識の範囲内の方法によって、コーティング溶液からの溶媒を追い出すことができる。例えば、溶媒の蒸着は、熱、ガス流、時間、減圧、それらの組み合わせなどによって促されて、バットレス上への薬剤堆積の精度を高めることができる。さらに、この支援を受けた溶媒の蒸着は、バットレスの表面全体に適用され得るか、またはバットレスの表面の一部分のみに部分的に適用され得る。
【0064】
溶媒を追い出すと、生体適合性造影剤および任意の担体成分ならびに/もしくは賦形剤が、バットレス上に、または多孔性バットレスの孔内に残留する。
【0065】
いくつかの態様では、図示されていないが、バットレス24、24aは、その上/その中に生体適合性造影剤の勾配を有し得、バットレスの細長い長方形体部分の長さに沿って延びる対向する側面で生体適合性造影剤のより高い濃度を有し、バットレス24、24aの中央部分で生体適合性造影剤のより低い濃度を有する。
【0066】
形成後、本開示のバットレスは、コーティングされたバットレスの約0.1重量%~約50重量%の生体適合性造影剤を有してよく、態様では、コーティングされたバットレスの約1重量%~約10重量%を有してもよい。賦形剤は必要ではないが、存在する場合、非ポリマー賦形剤は、コーティングされたバットレスの約0.01重量%~約80重量%で存在してよく、態様では、コーティングされたバットレスの約1重量%~約11重量%の量で存在してもよい。他の態様では、存在する場合、ポリマー賦形剤は、コーティングされたバットレスの約0.014重量%~約14重量%で存在してよく、態様では、コーティングされたバットレスの約5重量%~約15重量%で存在してもよい。
【0067】
基材を形成するために使用される布地の多孔性は、生物学的流体および/または細胞成分の浸潤を可能にすることができ、これにより、本開示のバットレスからの生体適合性造影剤の放出速度が加速し得、したがって、バットレスから周囲組織および流体内への生体適合性造影剤(複数可)の放出の速度を増加させる。
【0068】
本開示のバットレスを形成するために使用される基材は、約0.05mm~約0.5mmの厚さを有し得、態様では、約0.1mm~約0.2mmの厚さを有し得る。
【0069】
バットレスを形成するために使用される基材が多孔性である場合、本開示のバットレスは、約65%~約85%の細孔容積を有し得、態様では約70%~約80%の細孔容積を有し得る。
【0070】
使用中には、図4図5に全体的に図示されるように、本明細書で説明されるバットレス24、24aが、外科用ステープル留め装置10のステープルカートリッジ顎部材30とアンビル顎部材20との間で創傷組織の縁部を接近させることによって創傷を密封する際に使用され得る。外科用ステープル留め装置10の発射が、少なくとも1つのステープル50をステープルカートリッジ顎部材30上の開口部、ステープルカートリッジ顎部材30上のバットレス24a、組織「T」、アンビル顎部材20上のバットレス24、およびアンビル上の開口部(図示せず)を貫通するように強制してバットレス24、24aを組織「T」に固定し、組織がこれら両者の間に挟まれ、それによって隣接する組織を固定し、組織を密封するようになっている。
【0071】
分割され、ステープル50によってステープル留めされ、閉鎖された、結果として得られた組織「T」が、図5に示されている。具体的には、ステープルカートリッジ顎部材30に関連付けられたバットレス24aおよびアンビル顎部材20に関連付けられたバットレス24が、ステープル50によって組織「T」に対して固定され、それによって、ステープル50によって作成されたステープルラインを密封および補強する。切除後、生体適合性造影剤は、患者内に残っている組織「T」に溶出する。組織「T」内の癌細胞「CC」は、生体適合性造影剤を吸収し、それにより、より暗い色のものになり、それによって、切除の一部としてすでに除去されたそのような組織の生検結果を待つ間に臨床医が、そのような癌細胞「CC」の存在を視覚的に観察できるようにする。
【0072】
上記の記載は、長方形のバットレスを対象にしているが、本開示に従って、バットレスの任意の好適な構成が利用され得ることが理解されるべきである。例えば、バットレスの端部にヘッド部分およびテール部分を有する細長い長方形体を有するバットレスが利用されてもよい。他の任意の好適な形状が利用され得る。例えば、追加の好適なバットレスとしては、それら各々の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2017/0296188号、ならびに米国特許第8,157,151号、同第8,561,873号、および同第9,693,772号に開示されているものが挙げられる。
【0073】
態様では、バットレスはまた、治療薬を含み得る。バットレスに添加され得る好適な治療薬としては、薬剤、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、ムテイン、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(1~18)、インターフェロン(β-IFN、α-IFN、およびγ-IFN)、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM-CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制剤、血液タンパク質、フィブリン、トロンビン、フィブリノーゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノーゲン、ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモン類似体(例えば、成長ホルモン、黄体形成ホルモン放出因子)、ワクチン(例えば、腫瘍性抗原、細菌性抗原、およびウイルス性抗原)、ソマトスタチン、抗原、血液凝固因子、成長因子(例えば、神経成長因子、インスリン様成長因子)、骨形態形成タンパク質、TGF-B、タンパク質阻害剤、タンパク質拮抗薬、タンパク質作動薬、アンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドなどの核酸、細胞、ウイルス、抗炎症剤、抗菌剤、抗微生物剤、およびリボザイムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
本開示の医療デバイスおよびそれに関連する使用方法は、例えば、以下を含むいくつかの利点を有する。
・迅速に溶出する生体適合性造影剤をバットレスに追加することで、ステープルラインに隣接する組織の診断が可能になる。
・生体適合性造影剤は、切除部位の先にある癌細胞の検出のために、ライトと組み合わせて手術中に使用され得る。
・外科的決定および術後療法を導くための病理学分析を補完する手術中検出。
・健康な組織と癌性組織とを差別的に拡散および対比する迅速に溶出する生体適合性造影剤。
・癌細胞を完全に除去することで、術後の放射線治療および化学療法による攻撃が少なくなり、このことが患者のより早期の回復を可能にする。
【0075】
本明細書に開示された態様に様々な修飾が加えられ得ることが理解されるであろう。したがって、上記は、限定するものではなく、単に好ましい態様の例示として解釈されるべきである。当業者であれば、本開示の範囲および趣旨内での他の修飾を想定するであろう。そのような修飾および変形は、以下の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5