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特開2022-137961冷熱回収システムおよび船舶又は浮体
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  • 特開-冷熱回収システムおよび船舶又は浮体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137961
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】冷熱回収システムおよび船舶又は浮体
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/04 20060101AFI20220914BHJP
   B63J 2/14 20060101ALI20220914BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20220914BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
F17C9/04
B63J2/14 B
B63B25/16 G
B63B35/44 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037708
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英司
(72)【発明者】
【氏名】川波 晃
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172BB12
3E172BB17
3E172EB03
3E172GA17
3E172GA26
3E172KA03
3E172KA19
(57)【要約】
【課題】冷熱回収システムの出力および信頼性を向上できる冷熱回収システム、および船舶又は浮体を提供する。
【解決手段】冷熱回収システムは、液化ガスを気化するように構成された第1の熱交換器と、液化ガス貯留装置から第1の熱交換器に液化ガスを供給するための液化ガス供給ラインと、第1の熱交換器において液化ガスと熱交換された冷熱用熱媒体を循環させるように構成された冷熱回収サイクルであって、冷熱用熱媒体により駆動されるように構成された冷熱用タービンを含む冷熱回収サイクルと、冷熱回収サイクルにおける冷熱用タービンと第1の熱交換器との間を流れる冷熱用熱媒体と、冷熱回収システムの外部から導入された外部水との間で熱交換を行うように構成された第2の熱交換器と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯留するように構成された液化ガス貯留装置を有する船舶又は浮体に設置される冷熱回収システムであって、
前記液化ガスを気化するように構成された第1の熱交換器と、
前記液化ガス貯留装置から前記第1の熱交換器に前記液化ガスを供給するための液化ガス供給ラインと、
前記第1の熱交換器において前記液化ガスと熱交換された冷熱用熱媒体を循環させるように構成された冷熱回収サイクルであって、前記冷熱用熱媒体により駆動されるように構成された冷熱用タービンを含む冷熱回収サイクルと、
前記冷熱回収サイクルにおける前記冷熱用タービンと前記第1の熱交換器との間を流れる前記冷熱用熱媒体と、前記冷熱回収システムの外部から導入された外部水との間で熱交換を行うように構成された第2の熱交換器と、を備える、
冷熱回収システム。
【請求項2】
前記液化ガス供給ラインから分岐し、前記冷熱回収サイクルに接続される熱媒体補充ラインをさらに備える、
請求項1に記載の冷熱回収システム。
【請求項3】
前記冷熱回収サイクルは、前記冷熱用熱媒体を送るための冷熱用ポンプであって、前記冷熱用熱媒体の少なくとも一部を超臨界状態まで加圧するように構成された冷熱用ポンプを含む、
請求項2に記載の冷熱回収システム。
【請求項4】
前記液化ガスを気化した気化ガスにより駆動されるように構成された気化ガス用タービンと、
前記第1の熱交換器から前記気化ガス用タービンに前記気化ガスを供給するための気化ガス供給ラインと、をさらに備える、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の冷熱回収システム。
【請求項5】
前記外部水は、海水を含む、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の冷熱回収システム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の冷熱回収システムを備える、
船舶又は浮体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化ガスの冷熱エネルギーを回収するための冷熱回収システム、および該冷熱回収システムを備える船舶又は浮体に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガス(例えば、液化天然ガス)は、輸送や貯蔵を目的として液化され、都市ガスや火力発電所などの供給先に供給するに際して、海水などの熱媒体で昇温して気化させることが行われる。液化ガスを気化させる際に、液化ガスの冷熱エネルギーを海水に捨てるのではなく回収することが行われることがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、液化ガスの冷熱エネルギーを電力として回収する冷熱発電サイクルが開示されている。この冷熱発電サイクルとしては、二次媒体ランキンサイクル方式などが知られている(特許文献1参照)。二次媒体ランキンサイクル方式は、クローズドループ内を循環する二次媒体を、蒸発器にて海水を熱源として加熱して蒸発させ、この蒸気を冷熱発電用のタービンに導入して動力を得た後に、液化天然ガスにて冷却、凝縮させる方式である。
【0004】
液化天然ガスの供給先の夫々に対応する陸用のLNG基地を設けることは、土地の確保などに費用がかかるため困難である。このため、液化天然ガスを貯蔵するLNG貯蔵設備や、液化天然ガスを再ガス化する再ガス化設備を備える船舶を海上に係留し、該船舶により再ガス化した液化天然ガスを、パイプラインを介して陸上の供給先や海上のパワーゲージ(浮体式の発電所)などに送ることが行われることがある。
【0005】
船舶は、陸上設備に比べて拡張性に乏しいため、冷熱発電設備を搭載するためには、冷熱発電システムの小型化、特に熱交換器の小型化が重要となる。小型の熱交換器としては、例えばプリント回路熱交換器(PCHE)やプレート式熱交換器などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭61-59803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方の熱交換対象の凝固点よりも他方の熱交換対象が低温であると、熱交換器での熱交換において一方の熱交換対象が凝固して、凝固した熱交換対象が熱交換器の表面に付着して熱交換器を閉塞させる虞がある。小型の熱交換器は、大型の熱交換器(例えば、シェルチューブ式の熱交換器)に比べて、熱交換器の閉塞リスクが高いため、信頼性に課題がある。
【0008】
ところで、高出力化を図るためには、上記冷熱発電サイクルと、液化ガスを気化した気化ガスの膨張エネルギーにより駆動する直接膨張タービンと、を組合わせた複合サイクルが考えられる。この複合サイクルの出力を向上させるため、直接膨張タービンに供給される気化ガスを海水で加熱し昇温させることが考えられるが、気化ガスと海水との間の熱交換を行う熱交換器が閉塞する虞がある。
【0009】
上述した事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態の目的は、冷熱回収システムの出力および信頼性を向上できる冷熱回収システム、および船舶又は浮体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムは、
液化ガスを貯留するように構成された液化ガス貯留装置を有する船舶又は浮体に設置される冷熱回収システムであって、
前記液化ガスを気化するように構成された第1の熱交換器と、
前記液化ガス貯留装置から前記第1の熱交換器に前記液化ガスを供給するための液化ガス供給ラインと、
前記第1の熱交換器において前記液化ガスと熱交換された冷熱用熱媒体を循環させるように構成された冷熱回収サイクルであって、前記冷熱用熱媒体により駆動されるように構成された冷熱用タービンを含む冷熱回収サイクルと、
前記冷熱回収サイクルにおける前記冷熱用タービンと前記第1の熱交換器との間を流れる前記冷熱用熱媒体と、前記冷熱回収システムの外部から導入された外部水との間で熱交換を行うように構成された第2の熱交換器と、を備える。
【0011】
本開示の一実施形態にかかる船舶又は浮体は、前記冷熱回収システムを備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、冷熱回収システムの出力および信頼性を向上できる冷熱回収システム、および該冷熱回収システムを備える船舶又は浮体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。
図2】比較例にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。
図3】本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。
図4】本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0015】
(船舶、浮体)
図1は、本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。幾つかの実施形態にかかる冷熱回収システム1は、図1に示されるように、船舶10Aや浮体10Bに設置される。船舶10Aや浮体10Bは、水上に浮遊可能な構造体であり、液化ガスを貯留するように構成された液化ガス貯留装置(例えば、液化ガスタンク)11を有する。船舶10Aは、プロペラなどの不図示の推進器、および該推進器を駆動させるように構成された不図示の推進装置を有し、該推進装置を駆動させることで自走可能に構成された構造体である。浮体10Bは、船舶10Aのような自走するための推進装置を有さない自走不能な構造体である。
【0016】
(冷熱回収システム)
冷熱回収システム1は、図1に示されるように、液化ガスを気化するように構成された第1の熱交換器(液化ガス気化器)12と、液化ガス貯留装置11から熱交換器12に液化ガスを供給するための液化ガス供給ライン2と、熱交換器12において液化ガスが気化されることで生成された気化ガスを供給するための気化ガス供給ライン3と、熱交換器12において液化ガスと熱交換された冷熱用熱媒体を循環させるように構成された冷熱回収サイクル4と、を備える。気化ガスは、気化ガス供給ライン3を通じてガスの供給先13に導かれる。
【0017】
以下、液化ガス貯留装置11から供給される液化ガスの具体例として液化天然ガス(LNG)を、冷熱回収サイクル4を流れる冷熱用熱媒体の具体例としてプロパンを例に挙げて説明するが、本開示は、液化天然ガス以外の液化ガス(液化石油ガス、液体水素など)を、液化ガス貯留装置11から供給される液化ガスとした場合にも適用可能であり、また、プロパン以外の熱媒体(例えば、有機媒体)を、冷熱回収サイクル4を流れる冷熱用熱媒体とした場合にも適用可能である。なお、冷熱用熱媒体は、水よりも沸点や凝固点が低い。
【0018】
(第1の熱交換器)
熱交換器12は、液化ガス供給ライン2から送られた液化ガスと、冷熱回収サイクル4を流れる冷熱用熱媒体との間で熱交換を行うように構成されている。熱交換器12は、液化ガス供給ライン2から送られた液化ガスが流れる一方側通路121と、冷熱回収サイクル4に設けられた冷熱用熱媒体が流れる他方側通路122と、を含む。熱交換器12では、一方側通路121と他方側通路122との間で熱交換が行われて、一方側通路121を流れる液化ガスの冷熱エネルギーが、他方側通路122を流れる冷熱用熱媒体に回収される。これにより、一方側通路121を流れる液化ガスが加熱され、気化する。また、他方側通路122を流れる冷熱用熱媒体が冷却される。
【0019】
(液化ガス供給ライン、気化ガス供給ライン)
液化ガス供給ライン2は、その一方側が液化ガス貯留装置11に接続され、その他方側が熱交換器12の一方側通路121の上流端に接続された液化ガス流路20を含む。気化ガス供給ライン3は、その一方側が熱交換器12の一方側通路121の下流端に接続され、その他方側が気化ガスの供給先13に接続された気化ガス流路30を含む。熱交換器12の一方側通路121は、液化ガス流路20と気化ガス流路30を繋ぐ流路(管路)を含む。熱交換器12の一方側通路121、液化ガス流路20および気化ガス流路30の夫々は、液化ガスや液化ガスを気化した気化ガスを流通可能に構成されている。なお、気化ガスの供給先13は、船舶10Aや浮体10Bの外部に設けられた設備(例えば、陸上の発電設備やガス貯蔵設備であってもよいし、船舶10Aや浮体10Bに搭載された設備であってもよい。
【0020】
(ガス用ポンプ)
液化ガス供給ライン2は、液化ガス流路20に設けられたガス用ポンプ21をさらに含む。ガス用ポンプ21は、液化ガス流路20の下流側(、すなわち熱交換器12が位置する側)に液化ガスを送るように構成されている。図示される実施形態では、ガス用ポンプ21は、液化ガス流路20に設けられた動翼211と、動翼211を回転させる駆動力を動翼211に供給するように構成された電動機212と、を含む。ガス用ポンプ21を駆動させることで、液化ガス貯留装置11に貯留された液化ガスが液化ガス供給ライン2に抜き出されて、液化ガス供給ライン2を通じて熱交換器12に送られる。熱交換器12において液化ガスが気化されることで生成された気化ガスは、ガス用ポンプ21により、気化ガス供給ライン3を通じて供給先13に送られる。
【0021】
(冷熱回収サイクル)
冷熱回収サイクル4は、冷熱用熱媒体をオーガニックランキンサイクルの下で循環させるように構成されている。冷熱回収サイクル4は、液化ガスと熱交換された冷熱用熱媒体を循環させるための冷熱用流路40と、冷熱用熱媒体の冷熱エネルギーにより駆動するように構成された冷熱用タービン5と、冷熱用熱媒体を圧縮するように構成された冷熱用ポンプ41と、冷熱用ポンプ41により圧縮された冷熱用熱媒体を加熱するように構成された冷熱用加熱器42と、を含む。
【0022】
熱交換器12の他方側通路122は、冷熱回収サイクル4上に設けられ、冷熱用流路40に冷熱用熱媒体を流通可能に接続されている。熱交換器12は、冷熱回収サイクル4においては冷熱用冷却器として機能する。冷熱用冷却器(熱交換器12)は、冷熱用タービン5により膨張された冷熱用熱媒体を、液化ガスの冷熱エネルギーにより冷却するように構成されている。
【0023】
冷熱用タービン5は、冷熱回収サイクル4において、冷熱用加熱器42の一方側通路421よりも下流側、且つ熱交換器12の他方側通路122よりも上流側に設けられている。冷熱用ポンプ41は、冷熱回収サイクル4において、熱交換器12の他方側通路122よりも下流側、且つ冷熱用加熱器42の一方側通路421よりも上流側に設けられている。なお、「上流側」は、熱媒体(冷熱用熱媒体)の流れ方向の上流側を意味し、「下流側」は、熱媒体(冷熱用熱媒体)の流れ方向の下流側を意味している。
【0024】
(冷熱用ポンプ)
冷熱用ポンプ41は、冷熱回収サイクル4の下流側(、すなわち冷熱用加熱器42が位置する側)に冷熱用熱媒体を送るように構成されている。図示される実施形態では、冷熱用ポンプ41は、冷熱用流路40に設けられた動翼411と、動翼411を回転させる駆動力を動翼411に供給するように構成された電動機412と、を含む。冷熱用ポンプ41を駆動させることで、冷熱用熱媒体が熱交換器12の他方側通路122および冷熱用流路40を循環する。熱交換器12にて冷却された冷熱用熱媒体は、冷熱用ポンプ41により圧縮された後に、冷熱用加熱器42に導かれる。冷熱用加熱器42にて加熱された冷熱用熱媒体が冷熱用タービン5に導入される。なお、幾つかの実施形態では、冷熱回収サイクル4は、熱交換器12における冷却により冷熱用熱媒体を液化させ、且つ冷熱用加熱器42における加熱により冷熱用熱媒体を気化させるように構成されていてもよい。
【0025】
(冷熱用加熱器)
冷熱用加熱器42は、冷熱回収サイクル4を流れる冷熱用熱媒体と、冷熱回収システム1の外部から導入された外部水との間で熱交換を行うように構成されている。冷熱用加熱器42は、冷熱用熱媒体が流れる一方側通路421と、外部水が流れる他方側通路422と、を含む。冷熱用加熱器42の一方側通路421は、冷熱回収サイクル4上に設けられ、冷熱用流路40に冷熱用熱媒体を流通可能に接続されている。冷熱用加熱器42では、一方側通路421と他方側通路422との間で熱交換が行われて、他方側通路422を流れる外部水の熱エネルギーが、一方側通路421を流れる冷熱用熱媒体に回収される。これにより、一方側通路421を流れる冷熱用熱媒体が加熱される。冷熱用加熱器42により、冷熱用タービン5に導入される冷熱用熱媒体が昇温される。
【0026】
外部水は、熱交換器において熱媒として熱交換対象を加熱できる水(熱交換対象よりも高温の水)であればよく、常温の水であってもよい。外部水は、船舶10Aや浮体10Bにおいて入手が容易な水(例えば、海水などの船外水や船舶10Aのエンジンを冷却したエンジン冷却水など)が好ましい。
【0027】
(冷熱用タービン)
冷熱用タービン5は、回転シャフト51と、回転シャフト51に取り付けられたタービン翼52と、回転シャフト51およびタービン翼52を回転可能に収容するケーシング53と、を含む。冷熱用タービン5は、ケーシング53の内部に導入された冷熱用熱媒体のエネルギーによりタービン翼52を回転させるように構成されている。タービン翼52を通過した冷熱用熱媒体は、ケーシング53の外部に排出される。
【0028】
冷熱回収サイクル4は、タービン翼52の回転力を動力として回収するように構成されている。図示される実施形態では、冷熱回収サイクル4は、冷熱用タービン5の駆動により発電を行うように構成された冷熱用の発電機54をさらに含む。冷熱用の発電機54は、回転シャフト51に機械的に接続されており、タービン翼52の回転力を電力に変換するように構成されている。なお、他の幾つかの実施形態では、冷熱回収サイクル4は、タービン翼52の回転力を電力に変換するのではなく、動力伝達装置(例えば、カップリングやベルト、プーリなど)によりそのまま動力として回収してもよい。また、冷熱回収サイクル4は、冷熱用タービン5を迂回するバイパス流路43を備えていてもよい。
【0029】
(気化ガス用タービン)
冷熱回収システム1は、図1に示されるような、液化ガスを気化した気化ガスの冷熱エネルギーにより駆動するように構成された気化ガス用タービン6を備えていてもよい。気化ガス用タービン6は、気化ガス流路30に設けられたタービン翼62を含む。気化ガス用タービン6には、ガス用ポンプ21により昇圧後に第1の熱交換器12において加熱された気化ガスが導入される。気化ガス供給ライン3は、第1の熱交換器12から気化ガス用タービン6に気化ガスを導くための上流側気化ガス供給ライン3Aと、気化ガス用タービン6からガスの供給先13に気化ガスを導くための下流側気化ガス供給ライン3Bと、を含む。
【0030】
気化ガス用タービン6は、回転シャフト61と、回転シャフト61に取り付けられた上述したタービン翼62と、回転シャフト61およびタービン翼62を回転可能に収容するケーシング63と、を含む。気化ガス用タービン6は、ケーシング63の内部に導入された気化ガスのエネルギー(膨張エネルギー)により、タービン翼62を回転させるように構成されている。すなわち、気化ガス用タービン6は、気化ガスを作動流体とする膨張タービンからなる。タービン翼62を通過した気化ガスは、ケーシング63の外部に排出される。
【0031】
気化ガス用タービン6は、タービン翼62の回転力を動力として回収するように構成されている。図示される実施形態では、気化ガス用タービン6は、タービン翼62の駆動により発電を行うように構成された気化ガス用の発電機64をさらに含む。気化ガス用の発電機64は、回転シャフト61に機械的に接続されており、タービン翼62の回転力を電力に変換するように構成されている。なお、他の幾つかの実施形態では、気化ガス用タービン6は、タービン翼62の回転力を電力に変換するのではなく、動力伝達装置(例えば、カップリングやベルト、プーリなど)によりそのまま動力として回収してもよい。また、気化ガス供給ライン3は、気化ガス用タービン6を迂回するバイパス流路31を備えていてもよい。
【0032】
(気化ガス用加熱器)
冷熱回収システム1は、図1に示されるような、気化ガス供給ライン3を流れる気化ガスと、冷熱回収システム1の外部から導入された外部水との間で熱交換を行うように構成された気化ガス用加熱器32を備えてもよい。気化ガス用加熱器32は、気化ガス用タービン6よりも下流側の下流側気化ガス供給ライン3Bに設けられている。
【0033】
気化ガス用加熱器32は、気化ガスが流れる一方側通路321と、外部水が流れる他方側通路322と、を含む。気化ガス用加熱器32の一方側通路321は、気化ガス供給ライン3上に設けられ、気化ガス流路30に気化ガスを流通可能に接続されている。気化ガス用加熱器32では、一方側通路321と他方側通路322との間で熱交換が行われて、他方側通路322を流れる外部水の熱エネルギーが、一方側通路321を流れる気化ガスに回収される。これにより、一方側通路321を流れる気化ガスが加熱される。気化ガス用加熱器32により気化ガスを加熱することで、ガスの供給先13において要求される温度まで気化ガスを昇温できる。
【0034】
(第2の熱交換器)
冷熱回収システム1は、図1に示されるように、冷熱回収サイクル4における冷熱用タービン5と第1の熱交換器12との間を流れる冷熱用熱媒体と、冷熱回収システム1の外部から導入された外部水との間で熱交換を行うように構成された第2の熱交換器14を備える。第2の熱交換器14は、冷熱回収サイクル4において、冷熱用タービン5やバイパス流路43よりも下流側、且つ第1の熱交換器12よりも上流側に設けられた、冷熱用熱媒体が流れる一方側通路141と、外部水が流れる他方側通路142と、を含む。第2の熱交換器14の一方側通路141は、冷熱回収サイクル4上に設けられ、冷熱用流路40に冷熱用熱媒体を流通可能に接続されている。
【0035】
冷熱用タービン5又はバイパス流路43を通過した冷熱用熱媒体は、第2の熱交換器14の一方側通路141を流れた後に第1の熱交換器12の他方側通路122に導かれる。第2の熱交換器14では、一方側通路141と他方側通路142との間で熱交換が行われて、他方側通路142を流れる外部水の熱エネルギーが、一方側通路141を流れる冷熱用熱媒体に回収される。これにより、一方側通路141を流れる冷熱用熱媒体が加熱される。第2の熱交換器14により、第1の熱交換器12の他方側通路122に導入される冷熱用熱媒体が昇温される。
【0036】
(外部水供給ライン、外部水排出ライン)
冷熱回収システム1は、外部水の供給元16から冷熱回収システム1の外部水を熱媒とする熱交換器(第2の熱交換器14や冷熱用加熱器42、気化ガス用加熱器32)に外部水を供給するための外部水供給ライン8と、外部水を熱媒とする熱交換器から排出された外部水を外部水の排出先17に排出するための外部水排出ライン9と、を備える。
【0037】
図1に示されるように、外部水供給ライン8は、外部水の供給元16と第2の熱交換器とを繋ぐ第1の外部水供給流路81と、外部水の供給元16と冷熱用加熱器42とを繋ぐ第2の外部水供給流路82と、外部水の供給元16と気化ガス用加熱器32とを繋ぐ第3の外部水供給流路83と、外部水供給ライン8の下流側(、すなわち外部水を熱媒とする熱交換器が位置する側)に外部水を送るように構成された外部水用ポンプ84と、を含む。図示される実施形態では、第1の外部水供給流路81、第2の外部水供給流路82および第3の外部水供給流路83は、分岐部85よりも上流側が共有流路86になっている。外部水用ポンプ84は、共有流路86に設けられた動翼841と、動翼841を回転させる駆動力を動翼841に供給するように構成された電動機842と、を含む。外部水用ポンプ84を駆動させることで、外部水が外部水の供給元16から外部水供給ライン8に抜き出されて、外部水供給ライン8を通じて上記外部水を熱媒とする熱交換器に送られる。共有流路86に外部水用ポンプ84を設けることで、冷熱回収システム1の大型化や複雑化、高価格化を抑制できる。なお、他の幾つかの実施形態では、外部水供給ライン8は、共有流路86を有しない構成にしてもよく、第1の外部水供給流路81、第2の外部水供給流路82および第3の外部水供給流路83の夫々が接続される外部水の供給元16が異なっていてもよい。
【0038】
図1に示されるように、外部水排出ライン9は、第2の熱交換器14と外部水の排出先17A(17)とを繋ぐ第1の外部水排出流路91と、冷熱用加熱器42と外部水の排出先17Bとを繋ぐ第2の外部水排出流路92と、気化ガス用加熱器32と外部水の排出先17Cとを繋ぐ第3の外部水排出流路93と、を含む。なお、外部水の排出先17Aは、排出先17B又は17Cの少なくとも一方と同一であってもよい。また、第1の外部水排出流路91は、第2の外部水排出流路92又は第3の外部水排出流路93の少なくとも一方と一部を共有するように構成されていてもよい。
【0039】
(比較例にかかる冷熱回収サイクル)
図2は、比較例にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。比較例にかかる冷熱回収システム01は、上述した第2の熱交換器14の代わりに、第3の熱交換器15を備える。また、冷熱回収システム01は、上述した第1の熱交換器12と、上述した液化ガス供給ライン2と、上述した気化ガス供給ライン3と、上述した冷熱用タービン5を含む冷熱回収サイクル4と、上述した気化ガス用タービン6と、を備える。
【0040】
第3の熱交換器15は、気化ガス用タービン6よりも上流側の上流側気化ガス供給ライン3Aに設けられている。第3の熱交換器15は、上流側気化ガス供給ライン3Aを流れる気化ガスと、冷熱回収システム1の外部から導入された外部水との間で熱交換を行うように構成されている。第3の熱交換器15は、気化ガスが流れる一方側通路151と、外部水が流れる他方側通路152と、を含む。第3の熱交換器15の一方側通路151は、上流側気化ガス供給ライン3A上に設けられ、気化ガス流路30に気化ガスを流通可能に接続されている。第3の熱交換器15では、一方側通路151と他方側通路152との間で熱交換が行われて、他方側通路152を流れる外部水の熱エネルギーが、一方側通路151を流れる気化ガスに回収される。これにより、一方側通路151を流れる気化ガスが加熱される。第3の熱交換器15により気化ガスを加熱することで、気化ガス用タービン6の入口における気化ガスの温度を高くできる。
【0041】
比較例にかかる冷熱回収システム01は、外部水供給ライン08と、外部水排出ライン09と、を備える。外部水供給ライン08は、外部水の供給元16と第3の熱交換器15とを繋ぐ第4の外部水供給流路87と、上述した第2の外部水供給流路82と、上述した第3の外部水供給流路83と、上述した外部水用ポンプ84と、を含む。外部水排出ライン09は、第3の熱交換器15と外部水の排出先17Dとを繋ぐ第4の外部水排出流路94と、上述した第2の外部水排出流路92と、上述した第3の外部水排出流路93と、を含む。
【0042】
図1に示される冷熱回収システム1は、第2の熱交換器14により冷熱用熱媒体が加熱されるため、比較例にかかる冷熱回収システム01に比べて、第1の熱交換器12に供給される冷熱用熱媒体の温度が高くなる。第1の熱交換器12に供給される冷熱用熱媒体を高くすることで、第1の熱交換器12における液化ガスと冷熱用熱媒体との間の熱交換量を増やすことができる。これにより、図1に示される冷熱回収システム1は、比較例にかかる冷熱回収システム01に比べて、第1の熱交換器12の出口における気化ガスの温度が高くなる。
【0043】
幾つかの実施形態にかかる冷熱回収システム1は、図1に示されるように、上述した第1の熱交換器12と、上述した液化ガス供給ライン2と、上述した冷熱用タービン5を含む冷熱回収サイクル4と、上述した第2の熱交換器14と、を備える。
【0044】
上記の構成によれば、第2の熱交換器14により、冷熱回収サイクル4における冷熱用タービン5と第1の熱交換器12との間を流れる冷熱用熱媒体と、外部水との間で熱交換が行われて、冷熱用熱媒体が加熱される。このため、第1の熱交換器12に供給される冷熱用熱媒体の温度が、比較例にかかる冷熱回収システム01よりも高くなる。第1の熱交換器12により、第2の熱交換器14で加熱後の冷熱用熱媒体と、液化ガスとの間で熱交換が行われて、液化ガスが加熱される。第1の熱交換器12に導かれる冷熱用熱媒体を第2の熱交換器14で予め加熱することで、比較例にかかる冷熱回収システム01に比べて、第1の熱交換器12における冷熱用熱媒体と液化ガスとの間の熱交換量を増やすことができ、冷熱用熱媒体が液化ガスから回収する冷熱エネルギーを増やすことができる。これにより、冷熱用タービン5の出力を増大させることができ、ひいては冷熱回収システム1の出力を増大させることができる。
【0045】
また、第1の熱交換器12に導かれる冷熱用熱媒体を第2の熱交換器14で予め加熱することで、第1の熱交換器12における冷熱用熱媒体と液化ガスとの間の熱交換の際に、冷熱用熱媒体が凝固することを抑制できる。これにより、比較例にかかる冷熱回収システム01に比べて、第1の熱交換器12に凝固した冷熱用熱媒体が凍り付き、第1の熱交換器12を閉塞させることを抑制できる。このため、第1の熱交換器12に小型の熱交換器を使用する際の冷熱回収システム1の信頼性を向上させることができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、図1に示されるように、上述した冷熱回収システム1は、液化ガス供給ライン2、冷熱回収サイクル4、第1の熱交換器12および第2の熱交換器14の他に、上述した気化ガス供給ライン3(上流側気化ガス供給ライン3A)と、上述した気化ガス用タービン6と、をさらに備える。
【0047】
上記の構成によれば、気化ガス供給ライン3(上流側気化ガス供給ライン3A)を通じて、第1の熱交換器12から気化ガス用タービン6に気化ガスが供給される。第1の熱交換器12に導かれる冷熱用熱媒体を第2の熱交換器14で予め加熱することで、第1の熱交換器12における冷熱用熱媒体と液化ガスとの間の熱交換量を増やすことができ、冷熱用熱媒体が液化ガスから回収する冷熱エネルギーを増やすことができる。これにより、気化ガス用タービン6の入口における気化ガスの温度を高くできるため、気化ガス用タービン6の出力を増大させることができ、ひいては冷熱回収システム1の出力を増大させることができる。
【0048】
図1に示される冷熱回収システム1が発生させる出力は、冷熱回収システム1の発電機(冷熱用の発電機54および気化ガス用の発電機64)が発生させた電力の総和から、冷熱回収システム1のポンプ(ガス用ポンプ21、冷熱用ポンプ41および外部水用ポンプ84)の消費電力の総和を引くことで表される。冷熱回収システム1は、比較例にかかる冷熱回収システム01に比べて、冷熱用の発電機54および気化ガス用の発電機64が発生させる電力を大きなものにできる。このため、冷熱回収システム1が発生させる出力は、比較例にかかる冷熱回収システム01が発生させる出力よりも大きくなる。
【0049】
また、第1の熱交換器12および第2の熱交換器14により、気化ガス用タービン6の入口における気化ガスの温度を高くできるため、気化ガス用タービン6に供給される気化ガスを予め加熱するための熱交換器(図2に示される第3の熱交換器15)を、上流側気化ガス供給ライン3Aに設けなくてもすむ。この場合には、上記熱交換器の閉塞リスクから解放されるため、冷熱回収システム1の信頼性を向上させることができる。
【0050】
幾つかの実施形態では、上述した冷熱回収システム1における外部水は、海水を含む。図示される実施形態では、図1に示されるように、外部水の供給元16は、船舶10A又は浮体10Bに設けられた船外の水(海水など)を導入するための取水口からなる。外部水の排出先17(17A、17B、17C、17D)は、船舶10A又は浮体10Bに設けられた船外に水を排出するための排出口からなる。
【0051】
上記の構成によれば、冷熱回収システム1は、船舶10Aや浮体10Bなどに搭載されるため、海水の入手が容易である。冷熱回収システム1は、第2の熱交換器14や冷熱用加熱器42などの熱交換器における冷熱用熱媒体の熱媒として入手が容易な海水を活用することで、冷熱用熱媒体の熱媒を貯留する貯留設備などを設けなくてもよいため、冷熱回収システム1の大型化や複雑化、高価格化を抑制できる。
【0052】
図3は、本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。
幾つかの実施形態では、図3に示されるように、上述した冷熱回収システム1は、液化ガス供給ライン2から分岐し、冷熱回収サイクル4に接続される熱媒体補充ライン24をさらに備える。図示される実施形態では、熱媒体補充ライン24は、ガス用ポンプ21よりも液化ガス供給ライン2の下流側に一方側251が接続され、且つ冷熱回収サイクル4における第1の熱交換器12よりも下流側、且つ冷熱用ポンプ41よりも上流側に他方側252が接続された補充流路25と、補充流路25を開閉するように構成された弁26と、を含む。
【0053】
図示される実施形態では、冷熱回収サイクル4は、熱媒体補充ライン24の接続部よりも下流側、且つ冷熱用ポンプ41よりも上流側に、冷熱用熱媒体(図示例では、液化ガス)を貯留するための貯留装置44を含む。冷熱回収システム1は、貯留装置44に貯留された冷熱用熱媒体の液高さを取得するように構成された液高さ取得装置71と、液高さ取得装置71の取得した液高さに応じて、弁26の開閉制御を行う開閉制御装置72と、を備える。例えば、開閉制御装置72は、液高さ取得装置71が取得した冷熱用熱媒体の液高さが閾値以上であるときに、補充流路25を閉じるように弁26に指示する。冷熱回収サイクル4の運転中に、例えば冷熱回収サイクル4の外部への漏洩などにより、貯留装置44内の冷熱用熱媒体が少なくなることがある。開閉制御装置72は、液高さ取得装置71が取得した冷熱用熱媒体の液高さが上記閾値に満たなくなると、補充流路25を開くように弁26に指示する。弁26を開くと、熱媒体補充ライン24が接続された液化ガス供給ライン2と冷熱回収サイクル4との間の圧力差により、補充流路25を通じて液化ガス供給ライン2から冷熱回収サイクル4に液化ガスが送られる。
【0054】
上記の構成によれば、液化ガス供給ライン2と冷熱回収サイクル4とを接続する熱媒体補充ライン24を通じて、液化ガス供給ライン2から冷熱回収サイクル4に液化ガスを冷熱用熱媒体として導くことが可能になる。この場合には、冷熱用熱媒体が液化ガス以外の場合に比べて、冷熱用熱媒体の補充が容易になる。また、補充用の冷熱用熱媒体の貯留設備を別途設ける必要がないため、冷熱回収システム1の大型化、複雑化および高価格化を抑制できる。また、冷熱用熱媒体を凝固点が低い液化ガスとすることで、冷熱回収サイクル4における冷熱用熱媒体の最低温度を下げることができるため、冷熱回収サイクル4の性能を向上させることができる。プロパンガスなどに比べて比体積が小さい液化ガスを冷熱用熱媒体とすることで、冷熱回収サイクル4における循環量を低減できるため、冷熱用タービン5などの冷熱回収サイクル4の機器の小型化が図れる。これにより、冷熱回収システム1の大型化や高価格化を抑制できる。
【0055】
幾つかの実施形態では、図3に示されるように、上述した冷熱回収システム1の冷熱回収サイクル4は、冷熱用熱媒体を送るための上述した冷熱用ポンプ41を含む。この冷熱用ポンプ41は、冷熱用熱媒体(液化ガス)の少なくとも一部を超臨界状態まで加圧するように構成されている。図示される実施形態では、冷熱回収サイクル4における第1の熱交換器12よりも下流側、且つ冷熱用ポンプ41よりも上流側において冷熱用熱媒体(液化ガス)は、高圧の液体になっている。冷熱用ポンプ41により加圧されることで、冷熱用タービン5に供給される冷熱用熱媒体の少なくとも一部が超臨界状態になっている。
【0056】
上記の構成によれば、冷熱用ポンプ41により冷熱用熱媒体の少なくとも一部を超臨界状態まで加圧できる。この場合には、冷熱用熱媒体を超臨界状態にすることで、冷熱用熱媒体の体積密度を大きくできるため、冷熱用タービン5などの冷熱回収サイクル4の機器の小型化が図れる。これにより、冷熱回収システム1の大型化や高価格化を抑制できる。
【0057】
なお、上述した熱媒体補充ライン24は、図3に示される冷熱回収システム1以外の冷熱回収システムに適用可能である。図4は、本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。
幾つかの実施形態にかかる冷熱回収システム1Aは、図4に示されるように、比較例にかかる冷熱回収システム01と同様に、上述した第1の熱交換器12と、上述した第3の熱交換器15と、上述した液化ガス供給ライン2と、上述した気化ガス供給ライン3と、上述した冷熱用タービン5を含む冷熱回収サイクル4と、上述した気化ガス用タービン6と、上述した外部水供給ライン08と、上述した外部水排出ライン09と、を備える。また、冷熱回収システム1Aは、上述した熱媒体補充ライン24をさらに備える。
【0058】
なお、他の幾つかの実施形態では、冷熱回収システム1、1Aは、上述した熱媒体補充ライン24を備えずに、冷熱回収サイクル4を循環する冷熱用熱媒体が、液化ガス(液化天然ガス、液化石油ガス、液体水素など)であってもよい。
【0059】
幾つかの実施形態にかかる船舶10A又は浮体10Bは、図1図3図4に示されるように、上述した冷熱回収システム1を備える。上記の構成によれば、冷熱回収システム1の出力および信頼性を向上することで、冷熱回収システム1を備える、船舶10Aや浮体10Bの出力および信頼性を向上できる。
【0060】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0061】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0062】
1)本開示の少なくとも一実施形態にかかる冷熱回収システム(1)は、
液化ガスを貯留するように構成された液化ガス貯留装置(11)を有する船舶(10A)又は浮体(10B)に設置される冷熱回収システム(1)であって、
前記液化ガスを気化するように構成された第1の熱交換器(12)と、
前記液化ガス貯留装置(11)から前記第1の熱交換器(12)に前記液化ガスを供給するための液化ガス供給ライン(2)と、
前記第1の熱交換器(12)において前記液化ガスと熱交換された冷熱用熱媒体を循環させるように構成された冷熱回収サイクル(4)であって、前記冷熱用熱媒体により駆動されるように構成された冷熱用タービン(5)を含む冷熱回収サイクル(4)と、
前記冷熱回収サイクル(4)における前記冷熱用タービン(5)と前記第1の熱交換器(12)との間を流れる前記冷熱用熱媒体と、前記冷熱回収システム(1)の外部から導入された外部水との間で熱交換を行うように構成された第2の熱交換器(14)と、を備える。
【0063】
上記1)の構成によれば、第2の熱交換器(14)により、冷熱回収サイクル(4)における冷熱用タービン(5)と第1の熱交換器(12)との間を流れる冷熱用熱媒体と、外部水との間で熱交換が行われて、冷熱用熱媒体が加熱される。第1の熱交換器(12)により、第2の熱交換器(14)で加熱後の冷熱用熱媒体と、液化ガスとの間で熱交換が行われて、液化ガスが加熱される。第1の熱交換器(12)に導かれる冷熱用熱媒体を第2の熱交換器(14)で予め加熱することで、第1の熱交換器(12)における冷熱用熱媒体と液化ガスとの間の熱交換量を増やすことができ、冷熱用熱媒体が液化ガスから回収する冷熱エネルギーを増やすことができる。これにより、冷熱用タービン(5)の出力を増大させることができ、ひいては冷熱回収システム(1)の出力を増大させることができる。
【0064】
また、第1の熱交換器(12)に導かれる冷熱用熱媒体を第2の熱交換器(14)で予め加熱することで、第1の熱交換器(12)における冷熱用熱媒体と液化ガスとの間の熱交換の際に、冷熱用熱媒体が凝固することを抑制できる。これにより、第1の熱交換器(12)に凝固した冷熱用熱媒体が凍り付き、第1の熱交換器(12)を閉塞させることを抑制できる。このため、第1の熱交換器(12)に小型の熱交換器を使用する際の冷熱回収システム(1)の信頼性を向上させることができる。
【0065】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の冷熱回収システム(1)であって、
前記液化ガス供給ライン(2)から分岐し、前記冷熱回収サイクル(4)に接続される熱媒体補充ライン(24)をさらに備える。
【0066】
上記2)の構成によれば、液化ガス供給ライン(2)と冷熱回収サイクル(4)とを接続する熱媒体補充ライン(24)を通じて、液化ガス供給ライン(2)から冷熱回収サイクル(4)に熱媒体である液化ガスを導くことが可能になる。この場合には、冷熱用熱媒体が液化ガス以外の場合に比べて、冷熱用熱媒体の補充が容易になる。また、補充用の冷熱用熱媒体の貯留設備を別途設ける必要がないため、冷熱回収システム(1)の大型化、複雑化および高価格化を抑制できる。また、冷熱用熱媒体を凝固点が低い液化ガスとすることで、冷熱回収サイクル(4)における冷熱用熱媒体の最低温度を下げることができるため、冷熱回収サイクル(4)の性能を向上させることができる。プロパンガスなどに比べて比体積が小さい液化ガスを冷熱用熱媒体とすることで、冷熱回収サイクル(4)における循環量を低減できるため、冷熱用タービン(5)などの冷熱回収サイクル(4)の機器の小型化が図れる。これにより、冷熱回収システム(1)の大型化や高価格化を抑制できる。
【0067】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載の冷熱回収システム(1)であって、
前記冷熱回収サイクル(4)は、前記冷熱用熱媒体を送るための冷熱用ポンプ(41)であって、前記冷熱用熱媒体の少なくとも一部を超臨界状態まで加圧するように構成された冷熱用ポンプ(41)を含む。
【0068】
上記3)の構成によれば、冷熱用ポンプ(41)により冷熱用熱媒体の少なくとも一部を超臨界状態まで加圧できる。この場合には、冷熱用熱媒体を超臨界状態にすることで、冷熱用熱媒体の体積密度を大きくできるため、冷熱用タービン(5)などの冷熱回収サイクル(4)の機器の小型化が図れる。これにより、冷熱回収システム(1)の大型化や高価格化を抑制できる。
【0069】
4)幾つかの実施形態では、上記1)から上記3)までの何れかに記載の冷熱回収システム(1)であって、
前記液化ガスを気化した気化ガスにより駆動されるように構成された気化ガス用タービン(6)と、
前記第1の熱交換器(12)から前記気化ガス用タービン(6)に前記気化ガスを供給するための気化ガス供給ライン(上流側気化ガス供給ライン3A)と、をさらに備える。
【0070】
上記4)の構成によれば、気化ガス供給ライン(3A)を通じて、第1の熱交換器(12)から気化ガス用タービン(6)に気化ガスが供給される。第1の熱交換器(12)に導かれる冷熱用熱媒体を第2の熱交換器(14)で予め加熱することで、第1の熱交換器(12)における冷熱用熱媒体と液化ガスとの間の熱交換量を増やすことができ、冷熱用熱媒体が液化ガスから回収する冷熱エネルギーを増やすことができる。これにより、気化ガス用タービン(6)の入口における気化ガスの温度を高くできるため、気化ガス用タービン(6)の出力を増大させることができ、ひいては冷熱回収システム(1)の出力を増大させることができる。また、第1の熱交換器(12)および第2の熱交換器(14)により、気化ガス用タービン(6)の入口における気化ガスの温度を高くできるため、気化ガス用タービン(6)に供給される気化ガスを予め加熱するための熱交換器を、気化ガス供給ライン(3A)に設けなくてもすむ。この場合には、上記熱交換器の閉塞リスクから解放されるため、冷熱回収システム(1)の信頼性を向上させることができる。
【0071】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から上記4)までの何れかに記載の冷熱回収システム(1)であって、
前記外部水は、海水を含む。
【0072】
上記5)の構成によれば、冷熱回収システム(1)は、船舶(10A)や浮体(10B)などに搭載されるため、海水の入手が容易である。冷熱回収システム(1)は、第1の熱交換器(12)における冷熱用熱媒体の熱媒として入手が容易な海水を活用することで、冷熱用熱媒体の熱媒を貯留する貯留設備などを設けなくてもよいため、冷熱回収システム(1)の大型化や複雑化、高価格化を抑制できる。
【0073】
6)本開示の少なくとも一実施形態にかかる船舶(10A)又は浮体(10B)は、
上記1)から上記5)までの何れかに記載の冷熱回収システム(1)を備える。
【0074】
上記6)の構成によれば、冷熱回収システム(1)の出力および信頼性を向上することで、冷熱回収システム(1)を備える、船舶(10A)や浮体(10B)の出力および信頼性を向上できる。
【符号の説明】
【0075】
1,1A 冷熱回収システム
01 比較例にかかる冷熱回収システム
2 液化ガス供給ライン
3 気化ガス供給ライン
3A 上流側気化ガス供給ライン
3B 下流側気化ガス供給ライン
4 冷熱回収サイクル
5 冷熱用タービン
6 気化ガス用タービン
8,08 外部水供給ライン
9,09 外部水排出ライン
10A 船舶
10B 浮体
11 液化ガス貯留装置
12 第1の熱交換器
13 ガスの供給先
14 第2の熱交換器
15 第3の熱交換器
16 外部水の供給元
17,17A~17D 外部水の排出先
20 液化ガス流路
21 ガス用ポンプ
24 熱媒体補充ライン
26 弁
30 気化ガス流路
32 気化ガス用加熱器
40 冷熱用流路
41 冷熱用ポンプ
42 冷熱用加熱器
44 貯留装置
51,61 回転シャフト
52,62 タービン翼
53,63 ケーシング
54,64 発電機
71 液高さ取得装置
72 開閉制御装置
84 外部水用ポンプ

図1
図2
図3
図4