(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137973
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】遠隔監視システム
(51)【国際特許分類】
H04M 11/00 20060101AFI20220914BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20220914BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220914BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20220914BHJP
C02F 11/121 20190101ALI20220914BHJP
【FI】
H04M11/00 301
G06N20/00 ZAB
G06T7/00 350C
H04Q9/00 311K
C02F11/121
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037724
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】飯倉 智弘
(72)【発明者】
【氏名】塚本 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏
【テーマコード(参考)】
4D059
5K048
5K201
5L096
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059BD00
4D059BE07
4D059BE16
4D059BE20
4D059BE26
4D059BE31
4D059BE38
4D059BE41
4D059CA30
4D059EA06
4D059EA20
5K048BA21
5K048BA34
5K048EB10
5K048EB15
5K048GC06
5K201BA02
5K201CA04
5K201CA08
5K201CA10
5K201DC04
5K201DC05
5K201EC06
5K201ED05
5K201ED09
5L096BA02
5L096CA27
5L096DA02
5L096DA03
5L096HA09
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】監視対象物の状態の最適な遠隔監視を行うことができる遠隔監視システム及び画像解析システムを提供する。
【解決手段】遠隔監視システム1は、被処理水3を固液分離して分離物5を生成する固液分離装置7、画像データを生成する撮像装置及び画像データに基づいて、分離物5の異常状態を解析する画像解析システム10と、エッジサーバ15と、クラウドサーバ17と、を備える。クラウドサーバ17は、Webアプリケーション19を備え、Webアプリケーション19に異常状態の解析結果及び画像データを表示させる。エッジサーバ15は、画像データを少なくとも含む訓練データを用いて機械学習により構築された推論モデル15aを備え、画像データを推論モデルに入力し、推論モデルに従って分離物5の異常状態を推論する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固液分離された分離物の状態を監視するための遠隔監視システムであって、
被処理水を固液分離して前記分離物を生成する固液分離装置と、
前記分離物を撮像し、画像データを生成する撮像装置と、
前記画像データに基づいて、前記分離物の異常状態を解析する画像解析システムと、を備え、
前記画像解析システムは、
前記撮像装置に電気的に接続されたエッジサーバと、
ネットワークを介して前記エッジサーバに接続されたクラウドサーバを備え、
前記クラウドサーバは、Webアプリケーションを備え、前記クラウドサーバは、前記Webアプリケーションに前記異常状態の解析結果および前記画像データを表示させるように構成されており、
前記画像解析システムには、前記画像データを少なくとも含む訓練データを用いて機械学習により構築された推論モデルが格納されており、
前記画像解析システムは、
前記画像データを前記推論モデルに入力し、前記推論モデルに従って前記分離物の異常状態を推論し、
前記解析結果を複数段階に分類し、
前記解析結果を正規化して算出するように構成されている、遠隔監視システム。
【請求項2】
前記クラウドサーバは、前記ネットワークを介してユーザ端末に接続されており、
前記クラウドサーバは、前記分離物の状態を異常と判断した場合、前記分離物の状態が異常であることを通知するメールをユーザ端末に送信するように構成されている、請求項1に記載の遠隔監視システム。
【請求項3】
前記クラウドサーバは、前記ネットワークを介して警告灯に連結されており、
前記クラウドサーバは、前記分離物の状態を異常と判断した場合、前記分離物の状態が異常であることを前記警告灯を介して通知するように構成されている、請求項1に記載の遠隔監視システム。
【請求項4】
前記Webアプリケーションは、前記クラウドサーバが前記分離物の状態を異常と判断するための異常条件を設定可能に構成されている、請求項2または3に記載の遠隔監視システム。
【請求項5】
前記分離物の状態を間接的に示す物理量を測定するセンサをさらに備え、
前記画像解析システムは、前記物理量の測定データを前記推論モデルにさらに入力し、前記推論モデルに従って前記分離物の異常状態を推論するように構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の遠隔監視システム。
【請求項6】
前記センサは、温度センサ、湿度センサ、水質センサ、音センサ、振動センサ、および匂いセンサのうちのいずれか1つまたは複数である、請求項5に記載の遠隔監視システム。
【請求項7】
前記推論モデルは、前記エッジサーバに格納されており、
前記エッジサーバは、少なくとも前記画像データを前記推論モデルに入力し、前記推論モデルに従って前記分離物の異常状態を推論するように構成されており、かつ前記ネットワークを介して、前記解析結果および前記画像データを前記クラウドサーバに送信するように構成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の遠隔監視システム。
【請求項8】
前記エッジサーバは、前記解析結果と前記画像データとを互いに異なる送信頻度で送信するように構成されている、請求項7に記載の遠隔監視システム。
【請求項9】
前記エッジサーバは、前記ネットワークを介して前記画像データを前記クラウドサーバに送信するように構成されており、
前記推論モデルは、前記クラウドサーバに格納されており、
前記クラウドサーバは、少なくとも前記画像データを前記推論モデルに入力し、前記推論モデルに従って前記分離物の異常状態を推論するように構成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の遠隔監視システム。
【請求項10】
被処理水の状態を監視するための遠隔監視システムであって、
前記被処理水を撮像し、画像データを生成する撮像装置と、
前記画像データに基づいて、前記被処理水の異常状態を解析する画像解析システムと、を備え、
前記画像解析システムは、
前記撮像装置に電気的に接続されたエッジサーバと、
ネットワークを介して前記エッジサーバに接続されたクラウドサーバを備え、
前記クラウドサーバは、Webアプリケーションを備え、前記クラウドサーバは、前記Webアプリケーションに前記異常状態の解析結果および前記画像データを表示させるように構成されており、
前記画像解析システムには、前記画像データを少なくとも含む訓練データを用いて機械学習により構築された推論モデルが格納されており、
前記画像解析システムは、
前記画像データを前記推論モデルに入力し、前記推論モデルに従って前記被処理水の異常状態を推論し、
前記解析結果を複数段階に分類し、
前記解析結果を正規化して算出するように構成されている、遠隔監視システム。
【請求項11】
前記クラウドサーバは、前記ネットワークを介してユーザ端末に接続されており、
前記クラウドサーバは、前記被処理水の状態を異常と判断した場合、前記被処理水の状態が異常であることを通知するメールをユーザ端末に送信するように構成されている、請求項10に記載の遠隔監視システム。
【請求項12】
前記クラウドサーバは、前記ネットワークを介して警告灯に連結されており、
前記クラウドサーバは、前記被処理水の状態を異常と判断した場合、前記被処理水の状態が異常であることを前記警告灯を介して通知するように構成されている、請求項10に記載の遠隔監視システム。
【請求項13】
前記Webアプリケーションは、前記クラウドサーバが前記被処理水の状態を異常と判断するための異常条件を設定可能に構成されている、請求項11または12に記載の遠隔監視システム。
【請求項14】
前記被処理水の状態を間接的に示す物理量を測定するセンサをさらに備え、
前記画像解析システムは、前記物理量の測定データを前記推論モデルにさらに入力し、前記推論モデルに従って前記被処理水の異常状態を推論するように構成されている、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の遠隔監視システム。
【請求項15】
前記センサは、温度センサ、湿度センサ、水質センサ、音センサ、振動センサ、および匂いセンサのうちのいずれか1つまたは複数である、請求項14に記載の遠隔監視システム。
【請求項16】
前記推論モデルは、前記エッジサーバに格納されており、
前記エッジサーバは、少なくとも前記画像データを前記推論モデルに入力し、前記推論モデルに従って前記被処理水の異常状態を推論するように構成されており、かつ前記ネットワークを介して、前記解析結果および前記画像データを前記クラウドサーバに送信するように構成されている、請求項10乃至15のいずれか一項に記載の遠隔監視システム。
【請求項17】
前記エッジサーバは、前記解析結果と前記画像データとを互いに異なる送信頻度で送信するように構成されている、請求項16に記載の遠隔監視システム。
【請求項18】
前記エッジサーバは、前記ネットワークを介して前記画像データを前記クラウドサーバに送信するように構成されており、
前記推論モデルは、前記クラウドサーバに格納されており、
前記クラウドサーバは、少なくとも前記画像データを前記推論モデルに入力し、前記推論モデルに従って前記被処理水の異常状態を推論するように構成されている、請求項10乃至15のいずれか一項に記載の遠隔監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離された分離物の状態や、被処理水の状態を監視するための遠隔監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下水処理場、し尿処理場、産業排水処理場などの液体処理施設から排出される懸濁液(例えば汚泥)を圧搾して、該懸濁液から水を分離する(すなわち、脱水する)脱水機が使用されている。このような脱水機の処理の良否を判別するために、これまでは脱水ケーキなどの分離物や懸濁液などの被処理水の状態を人が目視で判断していた。
【0003】
また、機械学習を用いた機器または設備の診断システムや、単に設備の状態を遠隔で監視するシステム(例えば、SCADA:Supervisory Control And Data Acquisition)はあった。SCADAは、現場1に対してSCADAが1の、1対1の監視を行うために用いられることが多く、かつ、オンプレミス(ハードウェア、ソフトウェアを現場に設置することが多い。
【0004】
出願人はこれまで脱水設備の遠隔監視AIシステムの開発を行っており、汚泥処理設備(脱水機)を遠隔監視用のカメラで撮影した画像を基に、設備の運転状態の正常・異常を判別することが可能なAIを搭載した遠隔監視システムについて報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-182529号公報
【特許文献2】特許第2613360号公報
【特許文献3】特許第5351092号公報
【非特許文献1】「「SCADA×IoT」でビジネスチャンスを拡大」、[online]、[令和3年2月18日検索]、インターネット、<https://www.jte.co.jp/package/watcher/lp/iot/>
【非特許文献2】板倉智弘、楠本勝子、古賀大輔、「脱水設備の遠隔監視AIシステムの開発」、下水道研究発表会講演集、2020年7月22日出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
分離物や被処理水の状態を目視で判断するためには、定期的に現場へ行き点検を行う必要があり、時間と人手を要していた。異常(例えば脱水ケーキの脱水の状態が望ましい状態でない)かどうかは見た目で判断するため、従来のセンサでは異常状態を直接計測することが難しく、自動化できていなかった。設備の状態(脱水機であれば脱水の状態)が異常(望ましい含水率でない)であることを見逃すと、プラントの後段設備へも影響を及ぼすため、監視者の精神的な負担が大きかった。
【0007】
上記特許文献1は、ホスト装置と表示装置をネットワーク接続するための手段を開示するが、プラント設備を遠隔で監視するという機能や、複数の人間がWebアプリケーションを通じて1つのプラント設備の状態を確認できるという機能については記載していない。閉じられたネットワークでしかできないので、遠隔監視したくともできず、業務効率化ができない。
【0008】
上記特許文献3は、公衆回線(インターネット)を利用して遠隔から監視するシステムを開示するが、被処理水3画像を含むデータを送信することについては述べられていない。
【0009】
上記非特許文献2は、設備の正常・異常の二分類による状態判別を行うといった非常にシンプルなシステムを開示するが、様々な処理場への具体的な展開方法については述べられていない。
【0010】
そこで、本発明は、様々な処理場において分離物や被処理水の状態の最適な遠隔監視を行うことができる遠隔監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、固液分離された分離物の状態を監視するための遠隔監視システムであって、被処理水を固液分離して前記分離物を生成する固液分離装置と、前記分離物を撮像し、画像データを生成する撮像装置と、前記画像データに基づいて、前記分離物の異常状態を解析する画像解析システムと、を備え、前記画像解析システムは、前記撮像装置に電気的に接続されたエッジサーバと、ネットワークを介して前記エッジサーバに接続されたクラウドサーバを備え、前記クラウドサーバは、Webアプリケーションを備え、前記クラウドサーバは、前記Webアプリケーションに前記異常状態の解析結果および前記画像データを表示させるように構成されており、前記画像解析システムには、前記画像データを少なくとも含む訓練データを用いて機械学習により構築された推論モデルが格納されており、前記画像解析システムは、前記画像データを前記推論モデルに入力し、前記推論モデルに従って前記分離物の異常状態を推論し、前記解析結果を複数段階に分類し、前記解析結果を正規化して算出するように構成されている、遠隔監視システムが提供される。
【0012】
一態様では、前記クラウドサーバは、前記ネットワークを介してユーザ端末に接続されており、前記クラウドサーバは、前記分離物の状態を異常と判断した場合、前記分離物の状態が異常であることを通知するメールをユーザ端末に送信するように構成されている。
一態様では、前記クラウドサーバは、前記ネットワークを介して警告灯に連結されており、前記クラウドサーバは、前記分離物の状態を異常と判断した場合、前記分離物の状態が異常であることを前記警告灯を介して通知するように構成されている。
一態様では、前記Webアプリケーションは、前記クラウドサーバが前記分離物の状態を異常と判断するための異常条件を設定可能に構成されている。
一態様では、前記遠隔監視システムは、前記分離物の状態を間接的に示す物理量を測定するセンサをさらに備え、前記画像解析システムは、前記物理量の測定データを前記推論モデルにさらに入力し、前記推論モデルに従って前記分離物の異常状態を推論するように構成されている。
一態様では、前記センサは、温度センサ、湿度センサ、水質センサ、音センサ、振動センサ、および匂いセンサのうちのいずれか1つまたは複数である。
一態様では、前記推論モデルは、前記エッジサーバに格納されており、前記エッジサーバは、少なくとも前記画像データを前記推論モデルに入力し、前記推論モデルに従って前記分離物の異常状態を推論するように構成されており、かつ前記ネットワークを介して、前記解析結果および前記画像データを前記クラウドサーバに送信するように構成されている。
一態様では、前記エッジサーバは、前記解析結果と前記画像データとを互いに異なる送信頻度で送信するように構成されている。
一態様では、前記エッジサーバは、前記ネットワークを介して前記画像データを前記クラウドサーバに送信するように構成されており、前記推論モデルは、前記クラウドサーバに格納されており、前記クラウドサーバは、少なくとも前記画像データを前記推論モデルに入力し、前記推論モデルに従って前記分離物の異常状態を推論するように構成されている。
【0013】
一態様では、被処理水の状態を監視するための遠隔監視システムであって、前記被処理水を撮像し、画像データを生成する撮像装置と、前記画像データに基づいて、前記被処理水の異常状態を解析する画像解析システムと、を備え、前記画像解析システムは、前記撮像装置に電気的に接続されたエッジサーバと、ネットワークを介して前記エッジサーバに接続されたクラウドサーバを備え、前記クラウドサーバは、Webアプリケーションを備え、前記クラウドサーバは、前記Webアプリケーションに前記異常状態の解析結果および前記画像データを表示させるように構成されており、前記画像解析システムには、前記画像データを少なくとも含む訓練データを用いて機械学習により構築された推論モデルが格納されており、前記画像解析システムは、前記画像データを前記推論モデルに入力し、前記推論モデルに従って前記被処理水の異常状態を推論し、前記解析結果を複数段階に分類し、前記解析結果を正規化して算出するように構成されている、遠隔監視システムが提供される。
【0014】
一態様では、前記クラウドサーバは、前記ネットワークを介してユーザ端末に接続されており、前記クラウドサーバは、前記被処理水の状態を異常と判断した場合、前記被処理水の状態が異常であることを通知するメールをユーザ端末に送信するように構成されている。
一態様では、前記クラウドサーバは、前記ネットワークを介して警告灯に連結されており、前記クラウドサーバは、前記被処理水の状態を異常と判断した場合、前記被処理水の状態が異常であることを前記警告灯を介して通知するように構成されている。
一態様では、前記Webアプリケーションは、前記クラウドサーバが前記被処理水の状態を異常と判断するための異常条件を設定可能に構成されている。
一態様では、前記遠隔監視システムは、前記被処理水の状態を間接的に示す物理量を測定するセンサをさらに備え、前記画像解析システムは、前記物理量の測定データを前記推論モデルにさらに入力し、前記推論モデルに従って前記被処理水の異常状態を推論するように構成されている。
一態様では、前記センサは、温度センサ、湿度センサ、水質センサ、音センサ、振動センサ、および匂いセンサのうちのいずれか1つまたは複数である。
一態様では、前記推論モデルは、前記エッジサーバに格納されており、前記エッジサーバは、少なくとも前記画像データを前記推論モデルに入力し、前記推論モデルに従って前記被処理水の異常状態を推論するように構成されており、かつ前記ネットワークを介して、前記解析結果および前記画像データを前記クラウドサーバに送信するように構成されている。
一態様では、前記エッジサーバは、前記解析結果と前記画像データとを互いに異なる送信頻度で送信するように構成されている。
一態様では、前記エッジサーバは、前記ネットワークを介して前記画像データを前記クラウドサーバに送信するように構成されており、前記推論モデルは、前記クラウドサーバに格納されており、前記クラウドサーバは、少なくとも前記画像データを前記推論モデルに入力し、前記推論モデルに従って前記被処理水の異常状態を推論するように構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、Webアプリケーションによって分離物または被処理水の画像データと、機械学習を用いた画像データの解析結果を確認することができる。結果として分離物や被処理水の状態の最適な遠隔監視を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】遠隔監視システムの一実施形態を示す模式図である。
【
図2】遠隔監視システムの他の実施形態を示す模式図である。
【
図3】遠隔監視システムの他の実施形態を示す模式図である。
【
図4】
図4(a)は、画像解析システム10が正常と推論したときの分離物5の画像データを示し、
図4(b)は、画像解析システム10が異常と推論したときの分離物5の画像データを示している。
【
図5】汚泥乾燥機へ投入された濁質残渣としての分離物の画像データと、各画像データの解析結果を示す図である。
【
図6】被処理水としての水族館の水槽の水の画像データと、各画像データの解析結果を示す図である。
【
図7】Webアプリケーションの表示の一実施形態を示す図である。
【
図8】遠隔監視システムの他の実施形態を示す模式図である。
【
図9】脱水ろ液としての分離物の監視方法の一例を示す図である。
【
図10】遠隔監視システムの他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、遠隔監視システムの一実施形態を示す模式図である。本実施形態の遠隔監視システム1は、固液分離された分離物の状態を監視するための遠隔監視システムである。遠隔監視システム1は、被処理水3を固液分離して分離物5を生成するための固液分離装置7と、分離物5を撮像し画像データを生成する撮像装置9と、画像データに基づいて、分離物5の異常状態を解析する画像解析システム10を備えている。
【0018】
被処理水3の例として、下水処理場、し尿処理場、産業排水処理場、生物飼育用水処理設備などの液体処理施設から排出される懸濁液(例えば汚泥)が挙げられる。本実施形態では、固液分離装置7は、被処理水3から水を分離(すなわち、脱水)して、分離物5を生成する脱水機である。具体的には、固液分離装置7は、スクリュープレスである。
【0019】
分離物5の例として、被処理水3(例えば汚泥)から液体を除去した後に残る濁質残渣(例えばケーキ)および被処理水3から分離された分離液(脱水ろ液)が挙げられる。一実施形態では、濁質残渣としての分離物5は、コンベヤ12上に落下し、コンベヤ12によって搬送される。
【0020】
固液分離装置7として、スクリュープレス以外にもフィルタープレス、遠心分離機、多重円盤型脱水機(例えば、スリットセーバー)などの他のタイプの脱水機や、砂ろ過装置、加圧浮上処理装置、機械濃縮装置、重力式汚泥沈降装置、プロテインスキマー装置を用いてもよい。さらに一実施形態では、固液分離装置7は、被処理水3を加熱して水分を蒸発させることによって分離物5(例えば濁質残渣)を生成する乾燥装置であってもよい。
【0021】
撮像装置9は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、撮像装置9は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。本実施形態では、撮像装置9は、コンベヤ12上の分離物5を向いて配置されており、コンベヤ12上の分離物5を撮像可能に構成されている。一実施形態では、撮像装置9は、固液分離装置7を向いて配置されていてもよく、コンベヤ12に落下する前の分離物5を撮像可能に構成されていてもよく、コンベヤ12から落下した後の分離物5を撮像可能に構成されていれもよい。
【0022】
図2に示すように、一実施形態では、撮像装置9は、被処理水3を向いて配置され、被処理水3、すなわち固液分離装置7に入る前の被処理水3を撮像可能に構成されていてもよい。本実施形態では、遠隔監視システム1は、被処理水3の状態を監視するための遠隔監視システムとして機能する。撮像装置9が撮像する被処理水3の例として、貯留槽に貯留された懸濁液が挙げられる。一実施形態では、撮像装置9が撮像する被処理水3は、水族館の水槽の水であってもよい。この場合、撮像装置9は水族館の水槽を向いて配置される。被処理水3が水族館の水槽の水である場合、遠隔監視システム1は、固液分離装置7およびコンベヤ12を備えない。さらに一実施形態では、撮像装置9は、水槽内または貯留槽内に配置されていてもよい。さらに一実施形態では、撮影装置9が撮像する被処理水3は、排水の生物処理(例えば活性汚泥処理や流動担体法)にて処理された処理水であってもよい。この場合、撮像装置9は生物処理の処理後の水槽を向いて配置される。
【0023】
画像解析システム10は、エッジサーバ15と、インターネットなどのネットワーク16を介してエッジサーバ15に接続されたクラウドサーバ17を備えている。エッジサーバ15は、後述する機械学習を実行してモデルを作成し、そのモデルを使用するためのプログラムが格納された記憶装置15aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置15bと、画像データや、後述する分離物5または被処理水3の異常状態の解析結果などのデータをクラウドサーバ17に送信するための送受信部15cを備えている。以下、分離物5および被処理水3を総称して監視対象物と呼ぶことがある。エッジサーバ15は、監視対象物が配置された現場に配置されている。
【0024】
エッジサーバ15は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。記憶装置15aは、RAMなどの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置15bの例としては、CPU(中央演算装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、エッジサーバ15の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0025】
撮像装置9は、エッジサーバ15に電気的に接続されている。撮像装置9によって生成された監視対象物の画像データは、エッジサーバ15に送られ、記憶装置15a内に保存される。
【0026】
クラウドサーバ17は、プログラムなどが格納された記憶装置17aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置17bと、画像データや、後述する監視対象物の異常状態の解析結果などのデータを受信するための送受信部17cと、監視対象物の異常状態の解析結果や撮像装置9によって生成された画像データを表示するWebアプリケーション19を備えている。
【0027】
クラウドサーバ17は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。記憶装置17aは、RAMなどの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置18の例としては、CPU(中央演算装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、クラウドサーバ17の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0028】
クラウドサーバ17は、ネットワーク16を介してユーザ端末22に接続されている。ユーザ端末22の例として、クラウドサーバ17から離れた場所に設置された監視室のパソコンや、スマートフォン、タブレット端末などが挙げられる。ユーザ(監視者)は、ユーザ端末22からWebブラウザを介してWebアプリケーション19にアクセスし、Webアプリケーション19から監視対象物の異常状態の解析結果および画像データの確認や、Webアプリケーション19の操作を行うことができる。クラウドサーバ17は、ネットワーク16を介して複数のユーザ端末22に接続されていてもよい。この場合、ユーザは、複数のユーザ端末22からWebアプリケーション19にアクセスすることができる。一実施形態では、画像解析システム10は、複数のクラウドサーバ17を備えていてもよい。
【0029】
画像解析システム10は、撮像装置9によって生成された画像データを取得し、画像データに基づいて監視対象物の異常状態を解析する。監視対象物の異常状態を解析することによって、固液分離装置7の処理の良否または被処理水3の水質の良否を判別することができる。具体的には、画像解析システム10は、監視対象物の異常状態を人工知能(AI)を用いた推論により解析する。撮像装置9によって生成された画像データは、エッジサーバ15に送られ、記憶装置15a内に保存される。
【0030】
画像解析システム10は、推論モデルを備えている。推論モデルは、エッジサーバ15の記憶装置15aに格納されている。エッジサーバ15は、撮像装置9から得られた画像データを推論モデルに入力し、推論モデルのアルゴリズムに従って監視対象物の異常状態を推論する。推論モデルは、過去の固液分離工程時に撮像装置9によって生成された画像データ(説明変数)と、作業員によって判定された正解ラベル(目的変数)としての推論結果データを含む訓練データを用いて機械学習によって作成された学習済みモデルである。エッジサーバ15は、過去の画像データおよび対応する推論結果データを含む訓練データを用いて、推論モデルを機械学習のアルゴリズムに従って作成する。機械学習のアルゴリズムは、特に限定されないが、ニューラルネットワークのディープラーニング、ランダムフォレスト、勾配ブースティング法などが好適に使用できる。
【0031】
エッジサーバ15の演算装置15bは、その記憶装置15aに格納されているプログラムに含まれる命令に従って、訓練データを用いた機械学習を実行し、推論モデルを構築する。得られた推論モデルは記憶装置15a内に格納される。一実施形態では、推論モデルの構築はエッジサーバ15で行われなくてもよい。エッジサーバ15とは別のコンピュータで訓練データを用いて推論モデルを構築し、この推論モデルをエッジサーバ15へ持ってきてもよい。エッジサーバ15は、固液分離工程中に撮像装置9によって生成された画像データを、学習済みの推論モデルに入力し、推論モデルに従って監視対象物の異常状態を推論する。本実施形態では、エッジサーバ15は、推論モデルに従って監視対象物の状態が異常であるか正常であるかを推論する。さらに、エッジサーバ15は、撮像装置9から画像データを取得し、画像データおよび対応する推論結果データを含む訓練データを用いて機械学習を定期的または不定期に実行し、推論モデルを更新する。
【0032】
エッジサーバ15は、解析結果(すなわち監視対象物の異常状態の推論結果)および監視対象物の画像データをクラウドサーバ17に送信する。上記解析結果および画像データは、記憶装置17aに保存される。エッジサーバ15は、上記解析結果をカテゴリ変数として算出する。例えば、エッジサーバ15は、推論モデルに従って、監視対象物の状態が正常であると推論したときは、「1」を算出し、監視対象物の状態を異常と推論したときは、「0」を算出する。
【0033】
一実施形態では、エッジサーバ15は、監視対象物の異常状態の解析結果と画像データとを互いに異なる送信頻度で送信するように構成されていてもよい。例えば、エッジサーバ15は、解析結果を10秒に1回送信し、画像データを1分に1回送信してもよい。各送信頻度を適正に設定することで、データ通信量を低減しつつ必要な効果を得ることができる。
【0034】
図3は、遠隔監視システム1の他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図1および
図2を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、機械学習を実行してモデルを作成し、そのモデルを使用するためのプログラムは記憶装置17aに格納されている。本実施形態では、エッジサーバ15は、監視対象物の画像データをクラウドサーバ17に送信する。本実施形態では、推論モデルは、クラウドサーバ17の記憶装置17aに格納されている。クラウドサーバ17は、エッジサーバ15から送信された画像データを推論モデルに入力し、推論モデルのアルゴリズムに従って監視対象物の異常状態を推論する。
【0035】
推論モデルは、過去の固液分離工程時に撮像装置9によって生成された画像データ(説明変数)と、作業員によって判定された正解ラベル(目的変数)としての推論結果データを含む訓練データを用いて機械学習によって作成された学習済みモデルである。クラウドサーバ17は、過去の画像データおよび対応する推論結果データを含む訓練データを用いて、推論モデルを機械学習のアルゴリズムに従って作成する。
【0036】
クラウドサーバ17の演算装置17bは、その記憶装置17aに格納されているプログラムに含まれる命令に従って、訓練データを用いた機械学習を実行し、推論モデルを構築する。得られた推論モデルは記憶装置17a内に格納される。一実施形態では、推論モデルの構築はクラウドサーバ17で行われなくてもよい。クラウドサーバ17とは別のコンピュータで訓練データを用いて推論モデルを構築し、この推論モデルをクラウドサーバ17へ持ってきてもよい。クラウドサーバ17は、固液分離工程中に撮像装置9によって生成された画像データを、学習済みの推論モデルに入力し、推論モデルに従って監視対象物の異常状態を推論する。本実施形態では、クラウドサーバ17は、推論モデルに従って監視対象物の状態が異常であるか正常であるかを推論する。さらに、クラウドサーバ17は、エッジサーバ15から画像データを取得し、画像データおよび対応する推論結果データを含む訓練データを用いて機械学習を定期的または不定期に実行し、推論モデルを更新する。解析結果(すなわち監視対象物の異常状態の推論結果)および監視対象物の画像データは、記憶装置17aに保存される。クラウドサーバ17は、上記解析結果をカテゴリ変数として算出する。
【0037】
図4は、分離物5の画像データと、解析結果の例を示す図である。
図4(a)は、画像解析システム10(エッジサーバ15またはクラウドサーバ17)が正常と推論したときの分離物5の画像データを示し、
図4(b)は、画像解析システム10が異常と推論したときの分離物5の画像データを示している。
図4に示す分離物5は、濁質残渣である。
図4(a)の分離物5は、含水率が低く乾燥しているため、均一にコンベア上に散らばっている。
図4(b)の分離物5は、含水率が高く汚泥がくっついてまばらに散らばっている。
【0038】
一実施形態では、画像解析システム10(エッジサーバ15またはクラウドサーバ17)は、上記解析結果を複数の段階(例えば、3段階~5段階)に分類して算出してもよい。
図5は、濁質残渣としての分離物5の画像データと、各画像データの解析結果を示す図である。
図5に示す画像データは、コンベヤ12にて汚泥乾燥機(図示せず)へ投入した分離物5を撮像したものである。
図5に示す例では、画像解析システム10は、画像データから推論される含水率(乾燥度合い)に基づいて、分離物5の異常状態の解析結果をレベル1~レベル5の5段階に分類する。
図5では、レベル1からレベル5に進むにつれて含水率が小さくなっている。
【0039】
画像解析システム10は、複数段階に分類したときの解析結果をカテゴリ変数として算出する。例えば、画像解析システム10は、含水率のレベルが1のときは「1」を算出し、含水率のレベルが3のときは「3」を算出する。一実施形態では、画像解析システム10は、異常状態の解析結果を正規化(0~1、または0~100)して算出してもよい。一実施形態では、例えばレベル3の含水率の分離物5を得たい場合で、運転状態が変化してレベル2やレベル4になった場合には、クラウドサーバ17は、後述する異常通知を行ってもよく、ユーザは運転パラメータを変更してもよい。
【0040】
解析結果を複数段階に分類することで現場によって異なる要求に柔軟に対応することができる。さらに、正規化することで、表示画面を共通化することができる。結果として、汎用性が上がり適用できる現場が増えるとともに、システム構築にかかる費用および時間を低減することができる。
【0041】
図6は、被処理水3としての水族館の水槽の水の画像データと、各画像データの解析結果を示す図である。
図6に示す例では、画像解析システム10は、画像データの解析結果を「清浄」、「少し濁っている」、「濁っている」の3段階に分類する。
【0042】
図7は、Webアプリケーション19の表示の一実施形態を示す図である。クラウドサーバ17の演算装置17bは、グラフ表示機能、異常通知機能、および異常条件設定機能などを備えている。クラウドサーバ17は、Webアプリケーション19に、監視対象物の異常状態の解析結果(推論結果)を表すグラフ25および撮像装置9によって生成された画像データ27などを表示させる。
【0043】
図7に示すように、解析結果は、グラフ表示機能によって、横軸を監視対象物の監視時間とし、縦軸を解析結果を示す数字(カテゴリ変数)とするグラフ25としてWebアプリケーション19に表示される。
図7に示す例では、過去24時間の解析結果が時系列で表示されている。本実施形態では、画像解析システム10(エッジサーバ15またはクラウドサーバ17)が監視対象物の状態が正常であると推論したときは、「1」が表示され、監視対象物の状態を異常と推論したときは、「0」が表示される。ユーザは、最新の解析結果だけでなく、過去の解析結果の推移をグラフ25で確認することができる。
【0044】
次に、異常通知機能について説明する。クラウドサーバ17は、推論モデルに従う解析結果に基づいて、監視対象物の状態が正常か異常かを判断する。クラウドサーバ17は、監視対象物の状態を異常と判断した場合、前記分離物の状態が異常であることを通知するメールをユーザ端末22に送信する。Webアプリケーション19には、異常通知設定ボタン30が表示されており、ユーザは、異常通知設定ボタン30を操作することで、異常通知の開始と停止を切り替えることができる。
【0045】
一実施形態では、
図8に示すように、クラウドサーバ17は、ネットワーク16を介して警告灯29に連結されていてもよい。警告灯29は、ユーザ端末22を介してクラウドサーバ17に接続されていてもよく、ユーザ端末22を介さずにクラウドサーバ17に接続されていてもよい。一実施形態では、クラウドサーバ17は、監視対象物の状態を異常と判断した場合、監視対象物の状態が異常であることを警告灯29を介してユーザに通知する。具体的には、クラウドサーバ17は、監視対象物の状態を異常と判断した場合、警告灯29を点灯させる。
【0046】
本実施形態では、異常が発生した際にはメールや警告灯29といった方法で通知を行うため、ユーザは、Webアプリケーション19の画面を見ていなくても状況に気づくことができる。さらにユーザは、監視対象物の状態の良否を判断する必要もない。また、ウェブアプリケーション19を用いることで1つの設備を複数の遠隔地から確認することができ、1人で監視しなくても良いため、監視の負荷を分担することができる。結果として、ユーザの負担を低減・分担することができる。ユーザは、常時監視する必要がなく、ユーザの作業時間を削減することができる。
【0047】
一実施形態では、エッジサーバ15またはクラウドサーバ17は、推論モデルに従って、確信度を算出するように構成されていてもよい。確信度は、推論結果の妥当性を示す指標値であり、0から100までの数値で表される。確信度は、0から1までの数値で表されてもよい。
【0048】
次に、異常条件設定機能について説明する。Webアプリケーション19は、クラウドサーバ17が監視対象物の状態を異常と判断するための異常条件を設定可能に構成されている。具体的には、ユーザは、Webアプリケーション19に表示された異常条件設定ウィンドウ32の数字を設定することで上記異常条件を設定する。異常条件設定ウィンドウ32は、移動平均設定ウィンドウ32aと、警報レベル設定ウィンドウ32bと、安全レベル設定ウィンドウ32cを備えている。
【0049】
異常条件の例として、以下のものが挙げられる。クラウドサーバ17は、以下のいずれか条件を満たす場合、監視対象物の状態は異常であると判断する。
(i)画像解析システム10が推論モデルに従って監視対象物の状態が異常であると推論した場合。
(ii)画像解析システム10が監視対象物の状態が異常であると推論し、かつ確信度が予め定められたしきい値以上となった場合。
(iii)解析結果を複数段階に分類したときの、解析結果のカテゴリ変数が予め定められたしきい値以上またはしきい値以下となったとき
(iv)解析結果のカテゴリ変数の時間経過による移動平均の値が予め定められたしきい値以上またはしきい値以下となった場合。
(v)解析結果を時系列で表した波形(例えば、カテゴリ変数を時系列で表したグラフ。以下、単に解析波形という)がいつもと違う状態である場合。具体的には、クラウドサーバ17は、過去数日分の解析波形を記憶装置17aに保存し、過去数日分の解析波形から基準波形(理想的な解析波形)を算出する。クラウドサーバ17は、現在の解析波形と基準波形を比較し、一致度が所定の設定値以下となった場合に現在の監視対象物の状態は異常であると判断する。
【0050】
一実施形態では、警報レベル設定ウィンドウ32bに数字を入力することで、異常条件を設定する。例えば、異常条件として上記(i)を設定したい場合は、別途用意する設定ファイルに「1」を入力し、判定に用いるしきい値を警報レベル設定ウィンドウ32bに入力する。異常条件として上記(iii)を設定したい場合は、上記設定ファイルに「3」を入力し、警報レベル設定ウィンドウ32bに判定に用いるしきい値を入力する。
【0051】
一実施形態では、安全レベル設定ウィンドウ32cに対応する数字を入力することで、上述した(ii)~(iv)のしきい値を設定する。一実施形態では、警報レベルのしきい値に一度到達してから0.2以上回復した段階を安全とみなしたい場合は、ユーザは、安全レベル設定ウィンドウ32cに「0.2」を入力する。
【0052】
上述した(iv)において、移動平均の時間範囲は、移動平均設定ウィンドウ32aで設定することができる。
【0053】
このように、本実施形態では、異常条件を容易に設定することができるため、多くの現場に適用できる。異常通知したい水準は現場によって異なるため、個別に設定できることで使い勝手があがる。
【0054】
図9は、脱水ろ液としての分離物5の監視方法の一例を示す図である。本実施形態では、撮像装置9により脱水ろ液を撮像し、多段階の分類を行う。画像解析システム10は、分離物5の画像データに基づき汚濁~清澄の推論結果を出力する。分離物5の状態は脱水ポリマーの注入量に影響を受けるため、分離物5の分類結果によりポリマーの注入量が適正であるか過剰または不足であるかを確認することができる。希望する状態を定めることで、脱水ろ液の変動にあわせてポリマー量を調整することができる。一実施形態では、クラウドサーバ17は、ポリマー量が過剰または不足であれば異常を通知してもよい。
【0055】
例えば「やや清澄」の状態を維持したい場合であって、かつ固液分離装置7へ投入される現汚泥の状態変動等により分離物5の推論結果が「汚濁」となった場合は、ポリマー不足の警報を出力する(異常を通知する)とともに、ポリマー注入量を増加させる。脱水ろ液の色は、ろ液が汚濁している場合は黒や茶色の濃い色で濁っている。ろ液が清澄な場合は薄い茶色や透明感のある見た目となる。この見た目の違いを機械学習により推論モデルへ学習させ、推論に用いる。
【0056】
図10は、遠隔監視システム1の他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図1乃至
図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の遠隔監視システム1は、監視対象物の状態を間接的に示す物理量を測定するセンサ34をさらに備えている。センサ34は、エッジサーバ15に電気的に接続されている。センサ34によって測定された物理量は、エッジサーバ15に送られ、記憶装置15a内に保存される。
【0057】
本実施形態では、エッジサーバ15は、撮像装置9から得られた画像データおよび上記物理量の測定データを推論モデルに入力し、推論モデルのアルゴリズムに従って監視対象物の異常状態を推論する。本実施形態の推論モデルは、過去の固液分離工程時に撮像装置9によって生成された画像データおよび上記物理量の測定データ(説明変数)と、作業員によって判定された正解ラベル(目的変数)としての推論結果データを含む訓練データを用いて機械学習によって作成された学習済みモデルである。画像解析システム10は、過去の画像データ、過去の物理量の測定データ、および対応する推論結果データを含む訓練データを用いて、推論モデルを機械学習のアルゴリズムに従って作成する。さらに、エッジサーバ15は、撮像装置9から画像データを取得し、かつセンサ34から物理量の測定値を取得し、画像データ、物理量の測定データ、および対応する推論結果データを含む訓練データを用いて機械学習を定期的または不定期に実行し、推論モデルを更新する。
図3を参照して説明した実施形態は、本実施形態にも適用することができる。一実施形態では、エッジサーバ15は、監視対象物の画像データおよび上記物理量の測定データをクラウドサーバ17に送信し、クラウドサーバ17は、エッジサーバ15から送信された画像データおよび上記物理量の測定データを推論モデルに入力し、推論モデルのアルゴリズムに従って監視対象物の異常状態を推論してもよい。
【0058】
監視対象物の状態を間接的に示す物理量の例として、監視対象物および/または固液分離装置7の温度、監視対象物の湿度、被処理水3の水質、固液分離装置7から発せられる音、固液分離装置7の振動、監視対象物の匂いなどが挙げられる。センサ34の例として、温度センサ、湿度センサ、水質センサ、音センサ、振動センサ、および匂いセンサなどが挙げられる。一実施形態では、遠隔監視システム1は、複数のセンサ34を備えていてもよい。遠隔監視システム1は、温度センサ、湿度センサ、水質センサ、音センサ、振動センサ、および匂いセンサのうちのいずれか1つのセンサを備えていてもよく、温度センサ、湿度センサ、水質センサ、音センサ、振動センサ、および匂いセンサのうちの複数のセンサを備えていてもよい。訓練データとして、上記物理量をさらに用いることによって、より精度よく異常状態の推論を行うことができる。
【0059】
上述した実施形態によれば、Webアプリケーション19によって分離物5または被処理水3の画像データと、機械学習を用いた画像データの解析結果を確認することができる。結果として分離物5や被処理水3の状態の最適な遠隔監視を行うことができる。また、上述した実施形態によれば、上記画像データおよび上記解析結果をWebアプリケーション19を用いて複数箇所から確認することができる。小規模な設備であってもピンポイントで画像のAI解析や、監視対象物の遠隔監視をすることができ、水処理に向いている。
【0060】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 遠隔監視システム
3 被処理水
5 分離物
7 固液分離装置
9 撮像装置
10 画像解析システム
12 コンベヤ
15 エッジサーバ
16 ネットワーク
17 クラウドサーバ
19 Webアプリケーション
22 ユーザ端末
25 グラフ
27 画像データ
29 警告灯
30 異常通知設定ボタン
32 異常条件設定ウィンドウ
34 センサ