(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137980
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】解析装置及び解析プログラム
(51)【国際特許分類】
E02D 1/00 20060101AFI20220914BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
E02D1/00
E21D9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037734
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(71)【出願人】
【識別番号】592090555
【氏名又は名称】パシフィックコンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 守正
(72)【発明者】
【氏名】平井 卓
(72)【発明者】
【氏名】市川 晃央
(72)【発明者】
【氏名】安田 亨
(72)【発明者】
【氏名】龍原 毅
(72)【発明者】
【氏名】稲毛 孝章
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AA05
2D043AC01
(57)【要約】
【課題】本発明は、地山の未掘削部分に対応するスライスの観測値を精度よく予測することを目的とする。
【解決手段】設定部22によって、地山モデルのスライス毎に説明変数を設定する。目的変数予測部24によって、掘削済み部分のスライスの目的変数に基づいて、掘削対象部分のスライスの目的変数を予測する。学習部26によって、掘削済み部分のスライスの説明変数及び目的変数を学習データとして推定モデルを学習する。観測部30によって、掘削対象部分を掘削した後に、観測値を取得する。同定部32によって、観測値から、観測方程式を用いて、掘削対象部分のスライスの目的変数を同定する。観測値予測部34によって、同定された掘削対象部分のスライスの目的変数と、未掘削部分のスライスの説明変数と、推定モデルとを用いて、未掘削部分のスライスの目的変数を予測し、観測方程式を用いて、未掘削部分のスライスの観測値を予測する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削対象となる地山をモデル化した地山モデルを、掘削方向に分割したスライス毎に、予め求められた前記スライスの地層区分を含む物理量である説明変数を設定する設定部と、
掘削対象部分より前記掘削方向の手前側である掘削済み部分に対応する前記スライスの、前記説明変数と相関がある物理量である目的変数に基づいて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測する目的変数予測部と、
前記掘削済み部分に対応する前記スライスの、前記説明変数及び前記目的変数を学習データとして、前記説明変数から前記目的変数を推定するための推定モデルを学習する学習部と、
前記掘削対象部分を掘削した後に、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの、前記目的変数と関連する物理量である観測値を取得する観測部と、
前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記観測値から、前記観測値と前記目的変数との関係を表す観測方程式を用いて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を同定する同定部と、
前記同定された前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数と、前記掘削対象部分より前記掘削方向の奥側である未掘削部分に対応する前記スライスの前記説明変数と、前記推定モデルとを用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測し、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記目的変数と、前記観測方程式とを用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記観測値を予測する観測値予測部と、
を含む解析装置。
【請求項2】
前記推定モデルは、前記説明変数を入力とし、前記目的変数を出力するニューラルネットワークモデルである請求項1記載の解析装置。
【請求項3】
前記学習部は、前記学習した推定モデルを用いて、前記地層区分間の前記目的変数の比率を求め、
前記観測値予測部は、前記同定された前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数と、前記掘削対象部分より前記掘削方向の奥側である未掘削部分に対応する前記スライスの前記説明変数と、前記地層区分間の前記目的変数の比率とを用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測する請求項1又は2記載の解析装置。
【請求項4】
前記目的変数予測部は、カルマンフィルタの時間更新により、各スライスの前記目的変数を、前記カルマンフィルタの各時刻の状態量として、前記掘削済み部分に対応する前記スライスの前記目的変数に基づいて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測し、
前記同定部は、前記カルマンフィルタの観測更新により、前記目的変数予測部によって推定された前記目的変数と、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記観測値と、前記観測値と前記目的変数との関係を表す観測方程式とに基づいて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を同定する請求項1~請求項3の何れか1項記載の解析装置。
【請求項5】
前記掘削対象部分を掘削した後に、未掘削部分に対応する前記スライスの前記説明変数を更新する説明変数更新部を更に含む請求項1~請求項4の何れか1項記載の解析装置。
【請求項6】
コンピュータを、
掘削対象となる地山をモデル化した地山モデルを、掘削方向に分割したスライス毎に、予め求められた前記スライスの地層区分を含む物理量である説明変数を設定する設定部、
掘削対象部分より前記掘削方向の手前側である掘削済み部分に対応する前記スライスの、前記説明変数と相関がある物理量である目的変数に基づいて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測する目的変数予測部、
前記掘削済み部分に対応する前記スライスの、前記説明変数及び前記目的変数を学習データとして、前記説明変数から前記目的変数を推定するための推定モデルを学習する学習部、
前記掘削対象部分を掘削した後に、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの、前記目的変数と関連する物理量である観測値を取得する観測部、
前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記観測値から、前記観測値と前記目的変数との関係を表す観測方程式を用いて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を同定する同定部、及び
前記同定された前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数と、前記掘削対象部分より前記掘削方向の奥側である未掘削部分に対応する前記スライスの前記説明変数と、前記推定モデルとを用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測し、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記目的変数と、前記観測方程式とを用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記観測値を予測する観測値予測部
として機能させるための解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置及び解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事に関する地下水問題として、大量湧水に伴う切羽崩壊や周辺環境への影響などが挙げられる。これらの問題に対応するため、迅速かつ正確な湧水量の予測手法が求められている。
【0003】
そこで、施工中の観測値をモデルに反映して迅速に地下水挙動の予測を行い、掘削工法の選定や地下水対策(排水工法、止水工法)の検討に反映する情報化施工法として、逐次型データ同化手法(SDA:Sequential Data Assimilation)を導入した湧水量の予測手法SDA-SWING(地下水情報化施工)法が知られている(例えば、非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】高橋健二,大西有三,安田亨,熊俊:山岳トンネルの地下水情報化施工簡易システム(SWING)の構築,土木学会地下空間シンポジウム論文・報告集,Vol.13,pp.147-150,2008.
【非特許文献2】小木曽淳弥,小山倫史,高橋健二,安田亨,大西有三:逐次型データ同化を用いた地下水情報化施工簡易システム(SWING)の開発,土木学会論文集F1(トンネル工学)特集号,Vol.66,No.1,pp.9-15,2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現場で得られた坑口湧水量の観測値を活用して湧水量を予測し、施工段階に反映することが可能な一次元水理公式を用いた予測手法が開発されているが、予測結果と観測値が乖離するケースが報告されている。原因の一つとして、未開削部分においては、予測に必要な地山の物理量を事前に把握することが困難であることが要因であると推定される。
【0006】
本発明は上記事実を考慮して、地山の未掘削部分に対応するスライスの観測値を精度よく予測することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る解析装置は、掘削対象となる地山をモデル化した地山モデルを、掘削方向に分割したスライス毎に、予め求められた前記スライスの地層区分を含む物理量である説明変数を設定する設定部と、掘削対象部分より前記掘削方向の手前側である掘削済み部分に対応する前記スライスの、前記説明変数と相関がある物理量である目的変数に基づいて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測する目的変数予測部と、前記掘削済み部分に対応する前記スライスの、前記説明変数及び前記目的変数を学習データとして、前記説明変数から前記目的変数を推定するための推定モデルを学習する学習部と、前記掘削対象部分を掘削した後に、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの、前記目的変数と関連する物理量である観測値を取得する観測部と、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記観測値から、前記観測値と前記目的変数との関係を表す観測方程式を用いて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を同定する同定部と、前記同定された前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数と、前記掘削対象部分より前記掘削方向の奥側である未掘削部分に対応する前記スライスの前記説明変数と、前記推定モデルとを用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測し、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記目的変数と、前記観測方程式とを用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記観測値を予測する観測値予測部と、を含んで構成されている。
【0008】
本発明に係る解析装置によれば、設定部によって、掘削対象となる地山をモデル化した地山モデルを、掘削方向に分割したスライス毎に、予め求められた前記スライスの地層区分を含む物理量である説明変数を設定する。目的変数予測部によって、掘削対象部分より前記掘削方向の手前側である掘削済み部分に対応する前記スライスの、前記説明変数と相関がある物理量である目的変数に基づいて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測する。
【0009】
そして、学習部によって、前記掘削済み部分に対応する前記スライスの、前記説明変数及び前記目的変数を学習データとして、前記説明変数から前記目的変数を推定するための推定モデルを学習する。観測部によって、前記掘削対象部分を掘削した後に、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの、前記目的変数と関連する物理量である観測値を取得する。
【0010】
そして、同定部によって、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記観測値から、前記観測値と前記目的変数との関係を表す観測方程式を用いて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を同定する。観測値予測部によって、前記同定された前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数と、前記掘削対象部分より前記掘削方向の奥側である未掘削部分に対応する前記スライスの前記説明変数と、前記推定モデルとを用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測し、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記目的変数と、前記観測方程式とを用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記観測値を予測する。
【0011】
このように、前記掘削済み部分に対応する前記スライスの、前記説明変数及び前記目的変数を学習データとして、前記説明変数から前記目的変数を推定するための推定モデルを学習し、前記同定された前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数と、未掘削部分に対応する前記スライスの前記説明変数と、前記推定モデルとを用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測し、前記観測方程式を用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記観測値を予測することにより、地山の未掘削部分に対応するスライスの観測値を精度よく予測することができる。
【0012】
本発明に係る前記推定モデルは、前記説明変数を入力とし、前記目的変数を出力するニューラルネットワークモデルである。
【0013】
本発明に係る前記学習部は、前記学習した推定モデルを用いて、前記地層区分間の前記目的変数の比率を求め、前記観測値予測部は、前記同定された前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数と、前記掘削対象部分より前記掘削方向の奥側である未掘削部分に対応する前記スライスの前記説明変数と、前記地層区分間の前記目的変数の比率とを用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測する。
【0014】
本発明に係る前記目的変数予測部は、カルマンフィルタの時間更新により、各スライスの前記目的変数を、前記カルマンフィルタの各時刻の状態量として、前記掘削済み部分に対応する前記スライスの前記目的変数に基づいて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測し、前記同定部は、前記カルマンフィルタの観測更新により、前記目的変数予測部によって推定された前記目的変数と、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記観測値と、前記観測値と前記目的変数との関係を表す観測方程式とに基づいて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を同定する。
【0015】
本発明に係る解析装置は、前記掘削対象部分を掘削した後に、未掘削部分に対応する前記スライスの前記説明変数を更新する説明変数更新部を更に含む。
【0016】
本発明に係る解析プログラムは、コンピュータを、掘削対象となる地山をモデル化した地山モデルを、掘削方向に分割したスライス毎に、予め求められた前記スライスの地層区分を含む物理量である説明変数を設定する設定部、掘削対象部分より前記掘削方向の手前側である掘削済み部分に対応する前記スライスの、前記説明変数と相関がある物理量である目的変数に基づいて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測する目的変数予測部、前記掘削済み部分に対応する前記スライスの、前記説明変数及び前記目的変数を学習データとして、前記説明変数から前記目的変数を推定するための推定モデルを学習する学習部、前記掘削対象部分を掘削した後に、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの、前記目的変数と関連する物理量である観測値を取得する観測部、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記観測値から、前記観測値と前記目的変数との関係を表す観測方程式を用いて、前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数を同定する同定部、及び前記同定された前記掘削対象部分に対応する前記スライスの前記目的変数と、前記掘削対象部分より前記掘削方向の奥側である未掘削部分に対応する前記スライスの前記説明変数と、前記推定モデルとを用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記目的変数を予測し、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記目的変数と、前記観測方程式とを用いて、前記未掘削部分に対応する前記スライスの前記観測値を予測する観測値予測部として機能させるための解析プログラムである。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の解析装置及び解析プログラムによれば、地山の未掘削部分に対応するスライスの観測値を精度よく予測することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る解析装置を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る解析装置を示す機能ブロック図である。
【
図3】地山モデルを、掘削方向に分割したスライスの例を示す図である。
【
図4】ニューラルネットワークモデルの例を示す図である。
【
図5】湧水量を観測値とする観測方程式となる井戸公式の例を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る解析装置の解析処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【
図7】実施例における説明変数及び目的変数の例を示すグラフである。
【
図8】実施例におけるニューラルネットワークモデルの構成を示す図である。
【
図9】実施例における目的変数の予測結果を示すグラフである。
【
図10】従来技術での逆計算における操作を示す図である。
【
図11】従来技術でのデータ同化における操作を示す図である。
【
図12】従来技術での観測空間及び状態空間を考慮したフィルタリングを示す図である。
【
図13】湧水量予測におけるデータ同化範囲の例を示す図である。
【
図14】湧水量予測における観測値の追加例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
<本発明の実施の形態の原理>
(従来技術およびその問題点)
【0021】
近年、トンネル掘削シミュレーションにおいて、その予測精度を高めるために逆計算(データ同化等)や深層学習といった手法を取り入れる取り組みが各所でなされている。ここではそれぞれの手法が持つ問題点を述べる。
【0022】
(逆計算/順計算(データ同化))
一般的なシミュレーション問題においては、観測値yと状態量xとの間をy=h(x)という数式で置き換える。状態量xはシミュレーションモデルを構成する主たるパラメータだが、直接観測するのは難しく、観測値yから推定するのが一般的である。例えば、状態量xが、土質定数であり、観測値yが、掘削に伴う地盤変形・水位低下量などである。
【0023】
逆計算問題においては、観測値yが適合するような状態量xを計算により求める。この解は決定論的に定まり、一つの観測値yに対して状態量xはただ一つのみ存在する。
【0024】
今、観測値が得られる前の状態の状態量をx
t-1、得られた後の状態量をx
t、観測値をy
t、x
tの時間変化をf
t(x)、数式をh
t(x)とすると、逆解析における操作は
図10のように表現される。
【0025】
データ同化においては、状態量x
tと観測値y
tにはそれぞれの特性に起因した既知のガウスノイズが乗るものと仮定し、それぞれの分布におけるノイズをυ
tおよびω
tと設定する。このとき、逆解析において観測値は
図11で示されるように確率分布で表示される。
【0026】
今、数式y=h(x)は不変であり、状態変数であるxのみ時間更新していくと考える。f(x)、h(x)ともに線形であり、なおかつυ、ωともにガウスノイズという条件の下で、観測値を反映したxtの確率分布は数式で求めることができる。
【0027】
xt=F・xt-1+υ υ~N(0,Q):この状態空間モデルは、分散値Qの正規分布で表される。
【0028】
yt=H・xt+ω ω~N(0,R):この観測モデルは、分散値Rの正規分布で表される。
【0029】
ある時刻t-1における分布xt-1は以下に示すように平均値xt-1、分散値Vt-1の正規分布に従うとする。
【0030】
xt-1~N(xt-1,Vt-1)
【0031】
観測値y
tが与えられた場合、状態量x
tは以下の通り計算できる。この操作をフィルタリングと呼ぶ(
図12参照)。
【0032】
Kt=Vt-1・H’/(H・Vt-1・H’+Rt)
xt=xt-1+Kt・(yt-H・xt-1)
Vt=Vt-1・(1-Kt・H)
【0033】
ytとxtとの関係が係数H(観測方程式)の線形写像であり、これを利用して事後分布xt・分散値Vtと事前分布xt-1・Vt-1の更新係数であるKtを算出している。KtはVt-1とRtとの比率である。これは、事前分布xt-1および観測分布ytにおける分散値Vt-1,Rtの比率Ktで事後分布の平均値xtおよび分散値Vtを算出しているに過ぎない。このKtをカルマンゲインという。
【0034】
事後分布xtが算出されたら、その時点からの一期先およびそれ以降の状態予測を状態方程式および観測方程式を用いて行うことができる。一期先予測の式は以下の通りである。
【0035】
xt=F・xt-1
Vt=F・Vt-1・F’+Qt
【0036】
Vtの計算においては、状態方程式Fが線形であることが前提条件となっている。
【0037】
これ以降、観測データが得られる度にこの操作を繰り返すことにより、事後分布の精度を上げていく。
【0038】
逆計算をトンネル掘削シミュレーションに適用した場合の最大の問題点としては、この手法はあくまでも観測値に影響を及ぼす領域においてのみ目的変数を同定するものであり、特に施工延長の長いトンネル掘削においては、影響範囲外の未施工区間については目的変数の同定が出来ず、順計算(将来予測)の結果が更新されないことである(
図13参照)。
【0039】
また、影響範囲内に複数の地層区分が存在する場合(
図3参照)、目的変数も複数となるので、逆計算には目的変数の数と同じだけの観測値が必要であるが、トンネル掘削において得られる観測値は大抵の場合切羽位置における一つだけのものであり、切羽前方で別途観測値を求める必要がある(
図14参照)。例えば、y=ax1+bx2 という方程式を解くには、yの値が二つ必要となる。
【0040】
更に、通常の逆計算/順計算の処理においては、目的変数xは観測値yのみを用いて値の同定を行っており、説明変数zについては触れられていないのが現状である。例えば亀裂の密度と透水係数との関係のように、説明変数zと目的変数xの間には明確な相関が存在するが、その関係を方程式で実証するのは難しく、亀裂だけではなく弾性波速度や一軸圧縮強度など説明変数の次元が増えた場合、関係式を導くのはより困難となる。
【0041】
従って、明確にその関連性を示されている観測方程式を利用して、観測値のみを用いて目的変数を逆算する手順が一般的となっている。
【0042】
(SWING法(井戸公式)における透水係数と土被りとの相関について)
SWING法においては、Dupuitの準一様流に降雨浸透を組み合わせたBearの式によりスライス断面におけるトンネル湧水量を求めている。この式は井戸公式の一種であり、トンネル直上の水位は掘削直後にトンネル掘削深度まで低下すると仮定した上で経過時間に応じて定常状態の水位低下範囲まで徐々に広がっていくモデルである。山岳トンネルを対象としているので、掘削前の地下水位はGLもしくはGL-5m程度と仮定している。
【0043】
この式においては、湧水量qtと透水係数kがqt=α√kという対数透水係数に関する比例関係で表される。
【0044】
浸透理論における水の流れを考えた場合、トンネル直上の水位は掘削直後は変化せずに、時間経過に応じて徐々に低下していく。従って、SWING法において算出される流量qtは、このモデル化による誤差を含んだ値となる。土被りが小さい場合、定常状態の水位はトンネル位置まで低下すると予想されるので、この誤差は小さくなる。この時、湧水量(=SWING法で同定した透水係数)は土被りの2乗に比例する。ただし、土被りが大きい場合、定常状態でも地下水位はトンネル位置まで低下せず、誤差は大きくなる。この時、湧水量に対する土被りの影響は小さくなると予想される。
【0045】
従って、地山の透水係数が一定と仮定して将来予測を実施した場合、SWING法により算出される湧水量は土被りの二乗に比例して増加する。しかし、実際にはある一定以上の土被りになると湧水量の変化はほとんど無くなるので、土被りと湧水量との相関は対数比例に近くなる。このような湧水量に対してSWING法による同化を実施した場合、その透水係数はモデル化誤差により小さな値となる。従って、SWING法において一様な透水係数の地山に対する予測精度を向上させるには、設定した透水係数を土被りに応じて補正する必要がある。
【0046】
そこで、本実施の形態では、機械学習において説明変数に土被りを入れることにより、この相関を内部計算し、透水係数を自動的に補正する。これにより、観測方程式に誤差が存在したとしても、機械学習を組み込むことで精度の高い予測が可能となる。
【0047】
(機械学習)
上述したように、説明変数zと目的変数xとの間には明確な相関が存在するが、その関係を方程式で実証するのは難しい。ただし、説明変数zに対応する目的変数xの組み合わせが複数存在する場合、そこから方程式を推定することは回帰分析等の手法を用いることで実施可能である。
【0048】
説明変数zが高次元の場合、回帰分析等の実施も難しいが、近年計算機の性能が向上したことにより、機械学習を用いることで複雑な定式化作業を行うことなく、比較的簡易にこの相関性を算出することが可能になった。
【0049】
本実施の形態では、この機械学習処理を逆計算・順計算のフローに組み込むことで、観測値yだけでなく、説明変数zが更新された場合、その結果より未施工区間の目的変数xを予測することが可能である。
【0050】
また、説明変数zは観測方程式の影響範囲とは無関係であり、範囲外の未施工区間における目的変数の更新が可能となる。更に、逆計算とは独立して実施するので、複数の岩種に対してそれぞれ目的変数が算出され、その比率を一定と仮定することで目的変数xの次元は一つとなり、単一の観測値yに対する同定が可能となる。
【0051】
逆計算と併用することなく、機械学習単独で観測値yと説明変数zとを直接関連付けることも可能であるが、一般的に一つの観測方程式を通して複数の観測項目(例えば変形量・部材応力・湧水量・影響範囲など)と目的変数とを関連付けすることができるので、効率的な計算が可能となる。
【0052】
<本発明の実施の形態の解析装置の構成>
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る解析装置100は、CPU12、グラフィックカード13、GPU14、RAM16、HDD18、通信インタフェース21、及びこれらを相互に接続するためのバス23を備えている。
【0053】
CPU12、GPU14は、各種プログラムを実行する。RAM16は、CPU12による各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。記録媒体としてのHDD18には、後述する解析処理ルーチンを実行するためのプログラムを含む各種プログラムや各種データが記憶されている。
【0054】
本実施の形態における解析装置100を、解析処理ルーチンを実行するためのプログラムに沿って、機能ブロックで表すと、
図2に示すようになる。解析装置100は、入力部10、演算部20、及び出力部50を備えている。
【0055】
入力部10は、掘削対象となる地山をモデル化した地山モデルを、掘削方向に分割した各スライスを表すデータと、スライス毎に予め求められた地層区分を含む物理量である説明変数とを入力として受け付ける(
図3参照)。
【0056】
説明変数zは、トンネル掘削が該当スライスに到達する前に設計条件や事前調査(前方探査など)、過去実績等により取得することが可能であり、目的変数と関連があると予想されるものの定式化が難しい値とする。
【0057】
説明変数の一例としては、地層区分である岩種の他、土被り、トンネル断面寸法、亀裂密度、地山弾性波速度、一軸圧縮強度、降雨強度などを含む。
【0058】
また、入力部10は、他の掘削工事実績より得られた説明変数と目的変数の相関性を表すデータを入力として受け付ける。
【0059】
ここで、目的変数は、観測方程式を通して各種観測値に変換可能な値とする。この値は、説明変数zのうち地層区分毎にそれぞれ対応する値を定めるものとする。例えば、目的変数は、地山変形係数、透水係数、又は降雨浸透率などを含む。
【0060】
また、入力部10は、掘削対象部分を掘削した後に、当該掘削対象部分に対応するスライスの、目的変数と関連する物理量である観測値を入力として受け付ける。
【0061】
ここで、各種観測値yは、トンネル進捗が各スライスに到達した段階でトンネルに発生する各種挙動より得られる値であり、事前測定が不可能なものである。例えば、観測値は、支保工変位、切羽押出し量、適正装薬量、切羽画像(特徴量)、又は湧水量を含む。
【0062】
また、入力部10は、掘削対象部分を掘削した後に、未掘削部分に対応するスライスの更新すべき説明変数がある場合に、当該未掘削部分に対応するスライスの説明変数を入力として受け付ける。
【0063】
演算部20は、設定部22、目的変数予測部24、学習部26、説明変数更新部28、観測部30、同定部32、及び観測値予測部34を備えている。
【0064】
設定部22は、掘削対象となる地山をモデル化した地山モデルのスライス毎に、説明変数を設定する。
【0065】
また、設定部22は、他の掘削工事の実績より得られた地層区分と目的変数との相関性を基に、スライス毎に、説明変数に含まれる地層区分に対応する初期の目的変数xを設定する。
【0066】
目的変数予測部24は、掘削対象部分より掘削方向の手前側である掘削済み部分に対応するスライスの目的変数に基づいて、掘削対象部分に対応するスライスの目的変数を予測する。
【0067】
具体的には、目的変数予測部24は、カルマンフィルタの時間更新により、各スライスの目的変数を、カルマンフィルタの各時刻の状態量として、掘削済み部分に対応するスライスの目的変数に基づいて、掘削対象部分に対応するスライスの目的変数を予測する。ここで、地山モデルの掘削方向の各スライスが、カルマンフィルタの各時間ステップに相当するものとして、カルマンフィルタの時間更新を行っている。すなわち、目的変数の時間変化を予測しているわけではない。
【0068】
学習部26は、掘削済み部分に対応する各スライスの説明変数及び目的変数を学習データとして生成し、学習データに基づいて、説明変数から目的変数を推定するためのニューラルネットワークモデルを学習する(
図4参照)。
【0069】
このように、トンネル掘削が進むにつれて、既施工区間においては各スライスにおいて同定後の目的変数xとそれに対応する説明変数zが求められるため、各スライスの説明変数及び同定後の目的変数を学習データとして生成し、この学習データを機械学習にかけてニューラルネットワークモデルを学習する。
【0070】
また、学習部26は、学習したニューラルネットワークモデルを用いて、地層区分間の目的変数の比率を求める。具体的には、学習したニューラルネットワークモデルを用いて、各地層区分に対応した目的変数x1’,x2’を求め、掘削対象部分における地層区分に対応した目的変数x1’と、他の地層区分に対応した目的変数x2’とから、x2’=α2×x1’となる比率α2を求める。この比率を、全ての地層区分について求める。
【0071】
説明変数更新部28は、掘削対象部分を掘削した後に、前方探査実施により、未掘削部分に対応するスライスの更新すべき説明変数があれば、当該スライスの説明変数を更新する。
【0072】
観測部30は、掘削対象部分を掘削した後に、入力された掘削対象部分に対応するスライスの観測値を取得する。
【0073】
同定部32は、掘削対象部分に対応するスライスの観測値yから、観測値yと目的変数xとの関係を表す観測方程式fを用いて、逆計算x=f’(y)により、掘削対象部分に対応するスライスの目的変数を同定する。
【0074】
具体的には、同定部32は、カルマンフィルタの観測更新により、目的変数予測部24によって推定された目的変数と、掘削対象部分に対応するスライスの観測値と、観測方程式とに基づいて、掘削対象部分に対応するスライスの目的変数を同定する。
【0075】
ここで、観測方程式fは、目的変数x、説明変数zの一部と各種観測値yとの関係を説明するy=f(x)もしくはy=f(x,z)に相当するシミュレーションモデルであり、モデル化に伴う誤差を内在している。
【0076】
例えば、観測方程式fは、変形量及び湧水量を観測値とする3次元FEMモデル、変形量及び湧水量を観測値とする2次元FEMモデル、変形量を観測値とする弾性支承梁モデル、又は
図5に示す湧水量を観測値とする井戸公式である。
【0077】
観測値予測部34は、同定された掘削対象部分に対応するスライスの目的変数と、掘削対象部分より掘削方向の奥側である未掘削部分に対応するスライスの説明変数と、ニューラルネットワークモデルの学習結果とを用いて、未掘削部分に対応するスライスの目的変数を予測し、未掘削部分に対応するスライスの目的変数と、観測方程式とを用いて、未掘削部分に対応するスライスの観測値を予測する。
【0078】
具体的には、観測値予測部34は、同定された掘削対象部分に対応するスライスの目的変数と、掘削対象部分より掘削方向の奥側である未掘削部分に対応するスライスの説明変数と、地層区分間の目的変数の比率とを用いて、未掘削部分に対応するスライスの目的変数を予測する。
【0079】
例えば、掘削対象部分のスライスの地層区分1とそれに対応する岩種の目的変数x1を基準値とし、他の地層区分2,3,4・・・に対する目的変数x2,x3,x4・・・を、x1の倍数としてx2=α2×x1,x3=α3×x1,x4=α4×x1,…と設定し、未施工区間に存在する各スライスの目的変数xを求める。
【0080】
そして、観測値予測部34は、未施工区間に存在する各スライスの観測値yを、観測方程式y=f(x)に当てはめた順計算により予測し、出力部50により出力する。
【0081】
<解析装置の動作>
次に、本発明の実施の形態に係る解析装置100の動作について説明する。
【0082】
掘削対象となる地山に対する掘削作業を行う際に、入力部10によって、掘削対象となる地山をモデル化した地山モデルを、掘削方向に分割した各スライスを表すデータと、スライス毎に予め求められた地層区分を含む物理量である説明変数と、他の掘削工事実績より得られた説明変数と目的変数の相関性を表すデータとを、入力として受け付けると、解析装置100によって、
図6に示す解析処理ルーチンが実行される。
【0083】
まず、ステップS100において、設定部22は、掘削対象となる地山をモデル化した地山モデルのスライス毎に、入力された説明変数を設定する。
【0084】
そして、ステップS102において、設定部22は、他の掘削工事の実績より得られた地層区分と目的変数との相関性を基に、スライス毎に、説明変数の地層区分に対応する初期の目的変数xを設定する。
【0085】
ステップS104において、目的変数予測部24は、掘削対象部分より掘削方向の手前側である掘削済み部分に対応するスライスの目的変数に基づいて、掘削対象部分に対応するスライスの目的変数を予測する。
【0086】
ステップS106において、学習部26は、掘削済み部分に対応する各スライスの説明変数及び目的変数を学習データとして生成し、学習データに基づいて、説明変数から目的変数を推定するためのニューラルネットワークモデルを学習する。
【0087】
ステップS108において、学習部26は、学習したニューラルネットワークモデルを用いて、地層区分間の目的変数の比率を求める。
【0088】
ステップS110において、説明変数更新部28は、掘削対象部分を掘削した後に、前方探査実施により、未掘削部分に対応するスライスの更新すべき説明変数が入力されれば、当該スライスの説明変数を更新する。
【0089】
ステップS112において、観測部30は、掘削対象部分を掘削した後に、掘削対象部分に対応するスライスの観測値を取得する。
【0090】
ステップS114において、同定部32は、掘削対象部分に対応するスライスの観測値yから、観測値yと目的変数xとの関係を表す観測方程式fを用いて、逆計算x=f’(y)により、掘削対象部分に対応するスライスの目的変数を同定する。
【0091】
ステップS116において、観測値予測部34は、同定された掘削対象部分に対応するスライスの目的変数と、掘削対象部分より掘削方向の奥側である未掘削部分に対応するスライスの説明変数と、ニューラルネットワークモデルの学習結果とを用いて、未掘削部分に対応するスライスの目的変数を予測し、未掘削部分に対応するスライスの目的変数と、観測方程式とを用いて、未掘削部分に対応するスライスの観測値を予測する。そして、予測結果を出力部50により出力する。
【0092】
ステップS118において、掘削作業を終了したか否かを判定する。掘削作業を終了しない場合には、掘削対象部分のスライスを、更に掘削方向の奥側のものに変更して、上記ステップS104へ戻る。一方、掘削作業を終了した場合には、解析処理ルーチンを終了する。
【0093】
<実施例>
本実施例では、地層区分である岩種の他、
図7に示すような、土被り、間隙率、弾性波速度、トンネル切羽用の装薬のための削孔をドリルにより行う際の穿孔エネルギーを説明変数とし、透水係数を、目的変数とする。説明変数は、設計条件や各種調査により決定し、目的変数は、掘削作業時の観測値より、観測方程式を用いた逆計算にて決定する。
【0094】
学習するニューラルネットワークモデルには、
図8に示すような各Node数100個の7層パーセプトロン構造を用いる。
【0095】
SWING法による計測結果と、掘削作業を300m行った時点での、未施工区間の透水係数の予測結果とを比較したものを
図9(A)に示す。また、SWING法による計測結果と、掘削作業を700m行った時点での、未施工区間の透水係数の予測結果とを比較したものを
図9(B)に示す。また、SWING法による計測結果と、掘削作業を1000m行った時点での、未施工区間の透水係数の予測結果とを比較したものを
図9(C)に示す。
【0096】
このように、掘削作業が進むにつれて、ニューラルネットワークモデルの学習が進み、未施工区間の透水係数の予測精度が向上していくことが確認できた。
【0097】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る解析装置によれば、掘削済み部分に対応するスライスの、説明変数及び目的変数を学習データとして、説明変数から目的変数を推定するためのニューラルネットワークモデルを学習し、同定された掘削対象部分に対応するスライスの目的変数と、未掘削部分に対応するスライスの説明変数と、ニューラルネットワークモデルから得られる地層区分間の目的変数の比率とを用いて、未掘削部分に対応するスライスの目的変数を予測し、観測方程式を用いて、未掘削部分に対応するスライスの観測値を予測することにより、地山の未掘削部分に対応するスライスの観測値を精度よく予測することができる。
【0098】
また、通常の逆計算/順計算では不可能である、観測方程式の影響範囲外における目的変数xの同定が可能となる。
【0099】
また、観測方程式の影響範囲内に複数の地層区分が存在する場合でも、単一の観測値を用いて逆解析より目的変数を同定することが可能である。
【0100】
また、観測方程式にモデル化誤差を含んでいたとしても、その誤差を考慮した目的変数を同定することが可能であり、地山の未掘削部分に対応するスライスの観測値を精度よく予測することができる。
【0101】
また、掘削の進捗に応じて目的変数の予測精度は向上していくが、掘削前の事前予測においても過去実績を用いることで目的変数の予測精度の向上が見込まれる。
【0102】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0103】
例えば、上記の解析処理ルーチンにおいて、ステップS102における、他の掘削工事の実績より得られた地層区分と目的変数との相関性を基にした初期の目的変数xの設定や、ステップS110におけるスライスの説明変数の更新を省略してもよい。この場合に、入力部10による、他の掘削工事実績より得られた説明変数と目的変数の相関性を表すデータの入力や、未掘削部分に対応するスライスの更新すべき説明変数の入力を省略することができる。
【0104】
また、上記の実施の形態では、水平掘削のトンネルを想定しているが、立坑や山留掘削などの鉛直方向の掘削作業においても、本発明を適用してもよい。
【0105】
また、本発明のプログラムは、記憶媒体に格納して提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0106】
10 入力部
20 演算部
22 設定部
24 目的変数予測部
26 学習部
28 説明変数更新部
30 観測部
32 同定部
34 観測値予測部
50 出力部
100 解析装置