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特開2022-137987表皮一体パッド、車両用シート、成形用型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137987
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】表皮一体パッド、車両用シート、成形用型
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20220914BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20220914BHJP
   A47C 7/18 20060101ALI20220914BHJP
   B29C 39/26 20060101ALI20220914BHJP
   B29C 39/28 20060101ALI20220914BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20220914BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20220914BHJP
   B29C 44/02 20060101ALI20220914BHJP
   B29C 44/12 20060101ALI20220914BHJP
   B29C 44/58 20060101ALI20220914BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20220914BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20220914BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20220914BHJP
   B29L 31/58 20060101ALN20220914BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C27/14 A
A47C7/18
B29C39/26
B29C39/28
B29C33/14
B29C44/00 A
B29C44/02
B29C44/12
B29C44/58
B29C39/10
B29C39/24
B29K105:04
B29L31:58
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037742
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利春
(72)【発明者】
【氏名】平尾 和樹
(72)【発明者】
【氏名】秋元 厚志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 克司
(72)【発明者】
【氏名】堀井 礼奈
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B096
4F202
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
3B084CB01
3B087DE03
3B096AB08
4F202AA42
4F202AB02
4F202AC05
4F202AD08
4F202AD20
4F202AD35
4F202AG03
4F202AG20
4F202AH26
4F202AM32
4F202CA01
4F202CB01
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4F214AD20
4F214AD35
4F214AG03
4F214AG20
4F214AH26
4F214AM32
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB13
4F214UD21
4F214UF05
4F214UF27
4F214UF37
4F214UK22
4F214UK24
4F214UK25
4F214UK31
(57)【要約】
【課題】表皮の端末部に樹脂部材を設けることを可能とし、かつ発泡材の漏れを抑制する表皮一体パッド、車両用シート、成形用型を得る。
【解決手段】シート表皮18の端末部18Aがパッド材の裏面側に配置された状態でパッド材がシート表皮18によって被覆されるため、シート表皮18の端末部18Aが成形用型30内に収容された状態で表皮一体パッドは成形される。このため、成形用型30のPL部36において、シート表皮18の端末部18Aは成形用型30の上型34と下型32の間で挟まれることはない。したがって、当該PL部36において、上型34と下型32は隙間のない状態で面接触され、これにより、成形時におけるウレタンの漏れ出しを抑制又は防止することができる。また、シート表皮18の端末部18Aが成形用型30の上型34と下型32の間で挟まれることはないため、シート表皮18の端末部18Aに樹脂板等を設けることが可能となる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡材により形成されるパッド材と、
前記パッド材が一体化され、端末部において複数枚重なり当該パッド材の裏面側に配置された状態で当該パッド材を被覆する表皮と、
を含んで構成されている表皮一体パッド。
【請求項2】
請求項1に記載の前記表皮一体パッドは、乗員が着座するシートクッションに適用され、前記表皮の端末部は車両上下方向の下方側を向く位置に設けられている車両用シート。
【請求項3】
発泡材により形成されるパッド材を表皮と一体化させ、当該表皮でパッド材が被覆された表皮一体パッドを成形する成形用型であって、
前記表皮が収容される下型と、
前記下型との間で前記表皮一体パッドを成形する空間を形成し、当該下型に収容された前記表皮の端末部が折り返された状態で前記表皮の復元力により当該表皮の端末部が押し当てられる上型と、
を含んで構成されている成形用型。
【請求項4】
前記表皮の端末部が複数枚重なり、
前記上型は、複数枚重なった前記表皮の端末部が押し当てられる請求項3に記載の成形用型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮一体パッド、車両用シート、成形用型に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、車両等のシートに用いられるクッション体を表皮と共に一体発泡させて成形する表皮一体発泡シートの製造方法に関する技術が開示されている。
【0003】
この先行技術では、シートを成形する成形用型が、下型と、上型と、を備えており、下型と上型の間には支持具が配置され、下型に表皮を固定させた後、表皮の端部を下型と上型の間に配置された支持具で支持する。そして、下型内の表皮上に発泡材を注入し、上型を閉じて発泡材を発泡させ、クッション体と表皮を一体化させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭52-91070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術では、成形時における発泡材の漏れを抑制するため、下型と上型とが合わせられる(面接触される)パーティングライン部(以下、「PL部」と称する)において、下型と上型とで表皮の端部(以下、「端末部」と称する)を挟むように設定されている。このため、例えば、剛性を向上させる等の目的で表皮の端末部に樹脂板が設けられる場合に、当該PL部において下型と上型とで樹脂板が挟み込まれると、当該樹脂板、成形用型が破損する可能性がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、表皮の端末部に樹脂部材を設けることを可能とし、かつ発泡材の漏れを抑制する表皮一体パッド、車両用シート、成形用型を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る表皮一体パッドは、発泡材により形成されるパッド材と、前記パッド材が一体化され、端末部において複数枚重なり当該パッド材の裏面側に配置された状態で当該パッド材を被覆する表皮と、を含んで構成されている。
【0008】
請求項1に記載の発明に係る表皮一体パッドでは、パッド材と表皮とを備えており、パッド材は、発泡材により形成される。一方、表皮は、当該パッド材と一体化され、当該表皮の端末部が複数枚重なり、パッド材の裏面側に配置された状態で当該パッド材を被覆する。
【0009】
一般に、表皮一体パッドは、上型及び下型によって構成された成形用型を含む成形装置によって成形される。本発明では、表皮の端末部がパッド材の裏面側に配置された状態でパッド材が表皮によって被覆されるため、表皮が成形用型内に収容された状態で、表皮の端末部は、成形用型内に収容されることになる。
【0010】
すなわち、本発明では、成形用型のPL部において、表皮の端末部は当該成形用型の上型と下型の間で挟まれることはない。言い換えると、当該PL部において、上型と下型は、隙間のない状態で面接触可能とされる。このため、本発明では、成形時における発泡材の漏れ出しを抑制又は防止することができる。
【0011】
また、以上のように、成形用型のPL部において、表皮の端末部が上型と下型の間で挟まれることはないため、当該上型と下型の間で挟まれたことによる圧痕等の外観不良を防止することができる。また、成形用型のPL部において、表皮の端末部が上型と下型の間で挟まれることはないため、当該表皮の端末部に樹脂板等の樹脂部材を設けることも可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の前記表皮一体パッドは、乗員が着座するシートクッションに適用され、前記表皮の端末部は車両上下方向の下方側を向く位置に設けられている。
【0013】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートでは、乗員が着座するシートクッションに適用されており、表皮の端末部は車両上下方向の下方側を向く位置に設けられているため、外観上、見え難い位置に設けられるように設定される。
【0014】
請求項3に記載の発明に係る成形用型は、発泡材により形成されるパッド材を表皮と一体化させ、当該表皮でパッド材が被覆された表皮一体パッドを成形する成形用型であって、前記表皮が収容される下型と、前記下型との間で前記表皮一体パッドを成形する空間を形成し、当該下型に収容された前記表皮の端末部が折り返された状態で前記表皮の復元力により当該表皮の端末部が押し当てられる上型と、を含んで構成されている。
【0015】
請求項3に記載の発明に係る成形用型では、発泡材により形成されるパッド材を表皮と一体化させ、当該表皮でパッド材が被覆された表皮一体パッドを成形する。ここで、成形用型は、下型と上型とを含んで構成されており、下型には表皮が収容される。上型は、下型との間で表皮一体パッドを成形する空間を形成し、当該下型に収容された表皮の端末部が折り返された状態で、表皮の復元力により当該表皮の端末部が当該上型に押し当てられるようになっている。
【0016】
すなわち、本発明では、下型に収容された表皮の端末部は、折り返された状態で上型に当接するため、成形用型内に収容されることになる。したがって、成形用型のPL部において、表皮の端末部は当該成形用型の上型と下型の間で挟まれることはない。これによりL成形用型のPL部において、当該上型と下型は隙間のない状態で面接触可能とされる。このため、本発明では、成形時における発泡材の漏れ出しを抑制又は防止することができる。
【0017】
また、表皮の復元力により当該表皮の端末部が上型に押し当てられるようになっているため、表皮の端末部の上型への密着性が向上する。これにより、成形時における発泡材の漏れ出しを抑制又は防止することができる。
【0018】
さらに、本発明では、表皮の復元力により当該表皮の端末部が上型に押し当てられるようになっているため、上型が下型に閉止(いわゆる型締め)された状態で、表皮の端末部の下型側への垂れ下がりを抑制することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明に係る成形用型は、請求項3に記載の発明に係る成形用型において、前記表皮の端末部が複数枚重なり、前記上型は、複数枚重なった前記表皮の端末部が押し当てられる。
【0020】
請求項4に記載の発明に係る成形用型では、上型には、複数枚重なることによって剛性が高くなった表皮の端末部が押し当てられるため、当該表皮の端末部において、上型への密着性が向上し、これにより、成形時におけるウレタンの漏れ出しをさらに抑制又は防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1に記載の表皮一体パッドによれば、表皮の端末部に樹脂部材を設けることでき、また、発泡材の漏れを抑制することができる。
【0022】
請求項2に記載の車両用シートによれば、表皮の端末部が車室内側から見えないようにすることができる。
【0023】
請求項3に記載の発明に係る成形用型によれば、PL部において、成形時における発泡材の漏れ出しを抑制又は防止することができる。
【0024】
請求項4に記載の発明に係る成形用型によれば、PL部において、成形時における発泡材の漏れ出しをさらに抑制又は防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る表皮一体パッドが適用されたベンチシートタイプの車両用シートのシートクッションを示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る表皮一体パッドを示す断面図である。
図3】本実施形態に係る表皮一体パッドの構成を示す要部が拡大された拡大断面図である。
図4】本実施形態に係る表皮一体パッドを成形する成形用型及び表皮を示す要部が拡大された拡大断面図である。
図5】本実施形態に係る表皮一体パッドを成形する成形用型及び表皮の変形例1を示す要部が拡大された拡大断面図である。
図6図5に示す表皮の構成を示す断面図である。
図7】比較例を示す図4に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る表皮一体パッドが適用された車両用シートについて説明する。
【0027】
図1には、ベンチシートタイプの車両用シート10において、乗員が着座するシートクッション12が図示されている。このシートクッション12の後端部から、図示はしないがシートクッション12に着座した乗員の上体を支持するシートバックが立設されている。
【0028】
本実施形態では、当該シートクッション12において、本実施形態に係る表皮一体パッド14が適用されるが、シートバックに適用されてもよいのは勿論のことであり、さらに、ベンチシートタイプの車両用シート10以外に、左右セパレートタイプの車両用シートに適用されてもよい。
【0029】
(表皮一体パッドの構成)
図2に示されるように、表皮一体パッド14は、パッド材16を形成するウレタン等の発泡材を発泡成形させて当該パッド材16とシート表皮(表皮)18とを一体に形成させたものである。
【0030】
シート表皮18は、例えば、図3に示されるように、表層20と、中間層22と、裏層24と、を含んで構成されている。表層20は、表皮一体パッド14の意匠面14A側に設けられ、布系又はレザー系が用いられる。また、中間層22には、スラブウレタン等で形成されたワディング材が用いられ、裏層24には、ウレタン系、オレフィン系等のフィルムが用いられる。
【0031】
このように、裏層24としてフィルム層を設けることによって、ウレタンを発泡させる際に、ウレタンを表層20側に含浸させないようにすることができる。これにより、ウレタンの含浸によるシート表皮18の硬化を防ぐことができ、座り心地を悪化させないようにすることができる。また、表層20と裏層24の間にワディング材を用いることによって、表皮一体パッド14においてクッション性を向上させることができる。
【0032】
なお、図3では、各層の厚みが、裏層24<表層20<中間層22の関係となっているが、適用箇所に応じて各層の厚みは変更可能とされる。
【0033】
ここで、本実施形態では、図2に示すシート表皮18の端末部18Aは、表皮一体パッド14が適用されたシートクッション12(図1参照)では、シートクッション12の下面12A(図1参照)側に設けられるように設定される。
【0034】
(表皮一体パッドの成形用型)
本実施形態では、図4に示されるように、表皮一体パッド14を成形する成形装置28には成形用型30が備わっている。この成形用型30は、例えば、アルミニウム合金で形成されており、下型32と、上型34と、を含んで構成されている。なお、ここでは、下型32と上型34とが面接触されるPL部36が拡大された状態を示す拡大断面図が示されている。
【0035】
ここで、下型32の内面32A及び上型34の内面34Aにおいて、図2に示す表皮一体パッド14の意匠面14Aが形成される。但し、表皮一体パッド14が、図1に示すシートクッション12として適用された場合、下型32の内面32Aでシートクッション12の上面12B側が形成され、上型34の内面34Aでシートクッション12の下面12A側が形成される。なお、シート表皮18が下型32内に収容された状態で、シート表皮18の端末部18Aは下型32の上端32Bよりも張り出す長さとなるように設定されている。
【0036】
また、当該成形用型30は、車両用シート10(図1参照)の車両前後方向の前端側と対応する位置に図示しないヒンジ部が設けられており、当該ヒンジ部を中心に上型34が下型32に対して回動可能とされている。上型34が下型32の上に重なった(セットした)状態で成形用型30はいわゆる型締め(閉止)され、上型34が下型32に対して起立した状態で成形用型30はいわゆる型開き(開放)されることになる。
【0037】
前述のように、シート表皮18が下型32内に収容された状態で、当該シート表皮18の端末部18Aは、下型32の上端32Bよりも張り出す長さとなるように設定されている。このため、成形用型30が型締めされた状態で、シート表皮18の端末部18Aは、下型32の上端32Bから内側へ向かって折り返された状態となる。そして、シート表皮18の復元力(F)により、当該シート表皮18の端末部18Aは、上型34の内面34Aに押し当てられる。
【0038】
(表皮一体パッドの作用及び効果)
次に、本実施形態に係る表皮一体パッドの作用及び効果について説明する。
【0039】
本実施形態では、図2に示されるように、表皮一体パッド14の意匠面14Aの一部を構成するシート表皮18の端末部18Aは、パッド材16の裏面16A側に配置される。一方、図4に示されるように、表皮一体パッド14を成形する成形用型30は、下型32と上型34とを含んで構成されており、シート表皮18の端末部18Aは、パッド材16の裏面16A側に配置されるため、当該シート表皮18の端末部18Aは、パッド材16の表面16B側から裏面16A側へ折り返された状態でパッド材16と一体に形成されることになる。
【0040】
つまり、本実施形態では、シート表皮18の端末部18Aが成形用型30内に収容された状態で、表皮一体パッド14が成形される。
【0041】
例えば、比較例として、図7に示されるように、成形用型100を構成する下型102と上型104のPL部106において、シート表皮108の端末部108Aを挟んだ状態で表皮一体パッドを成形する場合、シート表皮108の端末部108Aは成形用型100の外側に露出しているため、ウレタンを発泡させると、当該シート表皮108の端末部108Aを通じてウレタンが表皮一体パッドの外側に漏れ出す可能性がある。
【0042】
これに対して、本実施形態では、前述のように、図2に示されるように、シート表皮18の端末部18Aがパッド材16の裏面16A側に配置された状態で当該パッド材16がシート表皮18によって被覆されるため、図4に示されるように、シート表皮18の端末部18Aが成形用型30内に収容された状態で、表皮一体パッド14は成形されることになる。
【0043】
このため、本実施形態では、成形用型30のPL部36において、シート表皮18の端末部18Aは当該成形用型30の上型34と下型32の間で挟まれることはない。すなわち、本実施形態では、当該PL部36において、上型34と下型32は隙間のない状態で面接触される。これにより、本実施形態では、成形時におけるウレタンの漏れ出しを抑制又は防止することができる。
【0044】
また、本実施形態では、シート表皮18の端末部18Aが成形用型30の上型34と下型32の間で挟まれることはないため、上型34と下型32の間で挟まれたことによる圧痕等の外観不良を防止することができる。また、シート表皮18の端末部18Aが成形用型30の上型34と下型32の間で挟まれることはないため、シート表皮18の端末部18Aに図示はしないが樹脂板等を設けることも可能となる。
【0045】
さらに、本実施形態では、シート表皮18の端末部18Aがパッド材16の表面16B側から裏面16A側へ折り返された状態で、当該シート表皮18の端末部18Aが上型34の内面34Aに押し当てられる(干渉する)ように設定されている。
【0046】
ここで、シート表皮18の端末部18Aを上型34の内面34Aに押し当てる押し当て力は、シート表皮18の復元力(F)によるものである。シート表皮18の端末部18Aにおいて、シート表皮18の復元力(F)によって、上型34の内面34Aに押し当てられるようにすることで、シート表皮18の端末部18Aの上型34への密着性が向上する。これにより、成形時におけるウレタンの漏れ出しを抑制又は防止することができる。
【0047】
また、シート表皮18の端末部18Aにおいて、シート表皮18の復元力(F)によって、上型34の内面34Aに押し当てられるようにすることで、上型34が下型32に型締めされた状態で、シート表皮18の端末部18Aの下型32側への垂れ下がりを抑制することができる。
【0048】
本実施形態では、図3に示されるように、シート表皮18は、表層20と、中間層22と、裏層24と、を含んで構成されている。このように、表層20と裏層24の間にワディング材を用いることによって、シート表皮18においてクッション性を向上させることができるが、当該中間層22は必ずしも必要ではない。
【0049】
なお、当該中間層22の有無によってシート表皮18の厚みが変わり、シート表皮18の剛性が変わる。このため、シート表皮18の復元力を考慮すると、中間層22はあった方がよいが、シート表皮18の厚みが厚過ぎてしまうと、図4に示されるように、上型34が下型32に型締めされた状態で、図示はしないが、シート表皮18の端末部18Aが自重により下型32側へ垂れ下がる可能性がある。
【0050】
このため、シート表皮18の端末部18Aにおいて、シート表皮18の剛性、上型34の内面34Aに押し当てられる(干渉する)干渉量、シート表皮18の構成及び厚みの設定に応じて、それぞれの調整が可能である。
【0051】
また、本実施形態では、シート表皮18の端末部18Aが成形用型30内に収容された状態で表皮一体パッド14を成形することで、図2に示されるように、当該シート表皮18の端末部18Aは、パッド材16に一体化されることになる。したがって、本実施形態では、シート表皮18の端末部18Aの処理を行う必要がなくなる。
【0052】
また、本実施形態では、当該シート表皮18の端末部18Aは、表皮一体パッド14の意匠面14Aを構成するパッド材16の裏面16A側に設けられているが、表皮一体パッド14において車両上下方向の下方側を向く位置に設けられている。
【0053】
すなわち、表皮一体パッド14が適用されたシートクッション12(図1参照)では、シート表皮18の端末部18Aは、シートクッション12の下面12A(図1参照)側に設けられることになる。したがって、シート表皮18の端末部18Aは、表皮一体パッド14の意匠面14Aの一部に設けられるものの、外観上、見え難い位置に設けることで、シート表皮18の端末部18Aが車室内側から見えないようにすることができる。
【0054】
このように、シート表皮18の端末部18Aは、外観上、見え難い位置に設けられるため、ウレタン42(図5(A)参照)を発泡させる際に多少ウレタン42の漏れ出しがあったとしても、外観への影響がないため、漏れ出したウレタンをカットしたり、削ったりする等の対処が不要なため、対処に伴う追加の工数が削減される。
【0055】
(本実施形態の変形例)
以上の実施形態では、1枚のシート表皮18が用いられているが、表皮一体パッド14の表皮を構成するシート表皮18は1枚に限るものではない。例えば、変形例1として、図5に示されるように、少なくともシート表皮40の端末部40Aにおいて、複数(ここでは2枚)のシート表皮42、44によって形成されてもよい。
【0056】
当該シート表皮40では、シート表皮42は、図1に示すシートクッション12の意匠面12A(表皮一体パッド14の意匠面14A)側に配置され、シート表皮42は、シートクッション12の意匠面12Aの反対側に配置される。このため、以下の説明では、シート表皮42を外側シート表皮42と称し、シート表皮44を内側シート表皮44と称する。
【0057】
ここで、図3に示されるように、シート表皮18は、表層20と、中間層22と、裏層24と、を含んで構成されている。図6に示されるように、外側シート表皮42、内側シート表皮44もシート表皮18と同様に、表層46と、中間層48と、裏層50と、を含んで構成されている。つまり、外側シート表皮42は、表層46B、中間層48B及び裏層50Bを含んで構成され、内側シート表皮44は、表層46A、中間層48A及び裏層50Aを含んで構成されている。
【0058】
そして、外側シート表皮42は、表層46Bを上にして配置されるが、内側シート表皮44は、表層46Aを下にして配置される。すなわち、シート表皮40は、シートクッション12の意匠面12A(図1参照)側から、外側シート表皮42の表層46B、中間層48B、裏層50B、内側シート表皮44の裏層50A、中間層48A、表層46Aの順に配置されている。
【0059】
なお、図5図6では、外側シート表皮42と内側シート表皮44の間に隙間(白抜き部分)が設けられているが、外側シート表皮42及び内側シート表皮44の2枚が重なって形成されていることを分かりやすく示すためのものであり、実際には白抜き部分は設けられていない。
【0060】
本実施形態では、少なくともシート表皮40の端末部40Aにおいて、2枚のシート表皮42、44によって形成されている。これにより、シート表皮40の端末部40Aではシート表皮18よりも剛性が高くなる。その結果、シート表皮40の端末部40Aにおいて、シート表皮18による復元力(F)よりも復元力(F’>F)が向上し、その分、上型34の内面34Aに押し当てる押し当て力が大きくなる。このため、シート表皮40の端末部40Aの上型34への密着性が向上し、これにより、成形時におけるウレタンの漏れ出しをさらに抑制又は防止することができる。
【0061】
特に、図示はしないが、シートクッションには、シートベルトに設けられたタングプレートが連結されるバックルを収容するバックルポケット部が形成されており、当該バックルポケット部はシートクッションにおいて、シートクッションの他の部位よりも高い剛性が必要とされる。このため、当該バックルポケット部では樹脂板が設けられる場合があるが、図5に示されるように、2枚のシート表皮42、44を重ね、シート表皮40の端末部40Aにおいて剛性を高く設定することによって、当該バックルポケット部への適用も可能である。
【0062】
なお、本実施形態では、シート表皮40は、前述のように、シートクッション12の意匠面12A(図1参照)側から、外側シート表皮42の表層46B、中間層48B、裏層50B、内側シート表皮44の裏層50A、中間層48A、表層46Aの順に配置されているが、この順番に限るものではない。
【0063】
例えば、内側シート表皮44は、表層46Aと裏層50Aが逆となるように配置されてもよい。さらに、内側シート表皮44において中間層48A、裏層50Aは必ずしも必要はない。
【0064】
(実施形態の補足説明)
以上の実施形態では、図1に示されるシートクッション12へ適用した実施形態を説明したが、本発明では、これに限らず、車両用シート10のシートバックに適用されてもよい。なお、シートバックに適用する場合、当該シートバックを補強するため樹脂板等が別途必要になる場合もある。さらには、車両用シート10に限らず、図示はしないが家具用シートに適用されてもよい。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能である。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0066】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 表皮一体パッド
16 パッド材
16A 裏面(パッド材の裏面)
18 シート表皮(表皮)
18A 端末部(表皮の端末部)
28 成形装置
30 成形用型
32 下型
34 上型
40 シート表皮(表皮)
40A 端末部(表皮の端末部)
42 シート表皮(表皮)
44 シート表皮(表皮)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7