(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137989
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C04B 38/00 20060101AFI20220914BHJP
B28B 11/04 20060101ALI20220914BHJP
B28B 11/12 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C04B38/00 304Z
B28B11/04
B28B11/12
C04B38/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037746
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 佑人
【テーマコード(参考)】
4G019
4G055
【Fターム(参考)】
4G019FA12
4G019GA04
4G055AA08
4G055AB03
4G055AC10
4G055BA32
4G055BA40
4G055BA63
(57)【要約】
【課題】充填材の充填精度のバラつきを低減できるハニカム構造体の製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明によるハニカム構造体の製造方法は、スリット12を備えるハニカム構造体素体2を準備する準備工程と、ハニカム構造体素体2の外周面20に充填材13を供給し、ハニカム構造体素体2の外周面20の法線20aに対して所定角度だけ傾けた当接部材3の先端部分3aを外周面20に所定の力で押し当てつつ、ハニカム構造体素体2を回転させて、当接部材3によりスリット12に充填材13を充填し、スリット12に充填材13が充填されたハニカム構造体を得る充填工程とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、周方向に互いに離間して前記外周壁から径方向内方に延び、前記外周壁が開口するように設けられた複数のスリットと、各スリットに充填された充填材とを備えるハニカム構造体を製造するためのハニカム構造体の製造方法であって、
前記スリットを備えるハニカム構造体素体を準備する準備工程と、
前記ハニカム構造体素体の外周面に前記充填材を供給し、前記ハニカム構造体素体の外周面の法線に対して所定角度だけ傾けた当接部材の先端部分を前記外周面に所定の力で押し当てつつ、前記ハニカム構造体素体を回転させて、前記当接部材により前記スリットに前記充填材を充填し、前記スリットに充填材が充填されたハニカム構造体を得る充填工程と
を含む、
ハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記法線に対する前記当接部材の傾斜角度は30°以上かつ75°以下である、
請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記外周面への前記当接部材の先端部分の押し当て力は1N以上かつ150N以下である、
請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記当接部材の先端部分を前記外周面に押し当てた状態で、前記ハニカム構造体素体を1周以上かつ50周以下だけ回転させる、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記当接部材は、ブレード形状である、請求項1から4までのいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記充填工程は、30RH%以上の調湿環境下で行う、
請求項1から5までのいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記ハニカム構造体素体の回転速度は30rpm以上かつ120rpm以下である、
請求項1から6までのいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、周方向に互いに離間して前記外周壁から径方向内方に延び、前記外周壁が開口するように設けられた複数のスリットと、各スリットに充填された充填材とを備えるハニカム構造体を製造するためのハニカム構造体の製造装置であって、
前記スリットを備えるハニカム構造体素体を回転自在に支持する素体支持部と、
前記ハニカム構造体素体の外周面の法線に対して所定角度だけ傾けた当接部材の先端部分を前記外周面に所定の力で押し当てるための当接部材支持部と
を備え、
前記ハニカム構造体素体の外周面に前記充填材を供給した状態で、前記当接部材支持部により支持された前記当接部材の先端部分を前記外周面に押し当てつつ、前記素体支持部により前記ハニカム構造体素体を回転させて、前記当接部材により前記スリットに前記充填材を充填するように構成されている、
ハニカム構造体の製造装置。
【請求項9】
前記素体支持部は、
前記セルの延在方向に係る両側から前記ハニカム構造体素体の径方向中央部を挟持するための一対の第1挟持部と、
前記第1挟持部と同軸に設けられ、前記セルの延在方向に係る両側から前記ハニカム構造体素体の径方向外周部を挟持するための一対の第2挟持部と
を有している、
請求項8に記載のハニカム構造体の製造装置。
【請求項10】
前記当接部材は、ブレード形状である、請求項8又は9に記載のハニカム構造体の製造装置。
【請求項11】
前記第2挟持部は、前記ハニカム構造体素体と同じ外径を有しており、
径方向外方から前記第2挟持部及び前記ハニカム構造体素体を同時に挟み、前記第2挟持部及び前記ハニカム構造体素体の軸中心位置を合わせる軸中心位置調整部
をさらに備える、
請求項9又は10に記載のハニカム構造体の製造装置。
【請求項12】
前記第2挟持部の挟持圧は切り替え可能とされており、
前記軸中心位置調整部により前記軸中心位置を合わせる際の前記第2挟持部の挟持圧は、前記充填材を充填する際の前記第2挟持部の挟持圧よりも低い、
請求項11に記載のハニカム構造体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体を製造するためのハニカム構造体の製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上するために側面に開口する1本以上のスリットがハニカム構造部に形成されたハニカム構造体が開示されている。また、耐熱衝撃性を維持しつつ、ハニカム構造体を通過するガスが上記スリットからハニカム構造体の外周側に漏れ出さないようにするために、少なくとも1本のスリットに充填材を充填することが提案されている。特許文献1には、充填材をスリットに充填する方法として、シリンジ又はヘラを用いる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、スリットへの充填材の充填は、シリンジによるか又はヘラによるかに拘わらず、作業者の手作業により行われていた。このため、従来のハニカム構造体の製造方法では、作業者により充填材の充填精度にバラつきが生じることがあった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、充填材の充填精度のバラつきを低減できるハニカム構造体の製造方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハニカム構造体の製造方法は、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、周方向に互いに離間して外周壁から径方向内方に延び、外周壁が開口するように設けられた複数のスリットと、各スリットに充填された充填材とを備えるハニカム構造体を製造するためのハニカム構造体の製造方法であって、スリットを備えるハニカム構造体素体を準備する準備工程と、ハニカム構造体素体の外周面に充填材を供給し、ハニカム構造体素体の外周面の法線に対して所定角度だけ傾けた当接部材の先端部分を外周面に所定の力で押し当てつつ、ハニカム構造体素体を回転させて、当接部材によりスリットに充填材を充填し、スリットに充填材が充填されたハニカム構造体を得る充填工程とを含む。
【0007】
本発明に係るハニカム構造体の製造装置は、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、周方向に互いに離間して外周壁から径方向内方に延び、外周壁が開口するように設けられた複数のスリットと、各スリットに充填された充填材とを備えるハニカム構造体を製造するためのハニカム構造体の製造装置であって、スリットを備えるハニカム構造体素体を回転自在に支持する素体支持部と、ハニカム構造体素体の外周面の法線に対して所定角度だけ傾けた当接部材の先端部分を外周面に所定の力で押し当てるための当接部材支持部とを備え、ハニカム構造体素体の外周面に充填材を供給した状態で、当接部材支持部により支持された当接部材の先端部分を外周面に押し当てつつ、素体支持部によりハニカム構造体素体を回転させて、当接部材によりスリットに充填材を充填するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のハニカム構造体の製造方法及び装置によれば、ハニカム構造体素体の外周面に充填材を供給し、ハニカム構造体素体の外周面の法線に対して所定角度だけ傾けた当接部材の先端部分を外周面に所定の力で押し当てつつ、ハニカム構造体素体を回転させて、当接部材によりスリットに充填材を充填し、スリットに充填材が充填されたハニカム構造体を得るので、充填材の充填精度のバラつきを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態によるハニカム構造体の製造方法によって製造されるハニカム構造体を示す斜視図である。
【
図2】
図1のハニカム構造体を製造するためのハニカム構造体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図3の充填材がスリットに充填される様子を示す説明図である。
【
図5】
図2の充填工程に用いることができるハニカム構造体の製造装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態によるハニカム構造体1の製造方法によって製造されるハニカム構造体1を示す斜視図である。
図1に示すハニカム構造体1は、セラミックス製の柱状の部材であり、外周壁10と、外周壁10の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセル11aを区画形成する隔壁11とを有している。柱状とは、セル11aの延在方向(ハニカム構造体1の軸方向)に厚みを有する立体形状と理解できる。ハニカム構造体1の軸方向長さとハニカム構造体1の端面の直径又は幅との比(アスペクト比)は任意である。柱状には、ハニカム構造体1の軸方向長さが端面の直径又は幅よりも短い形状(偏平形状)も含まれていてよい。
【0012】
ハニカム構造体1の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、端面が円形の柱状(円柱形状)、端面がオーバル形状の柱状、端面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の他の形状とすることができる。また、ハニカム構造体1の大きさは、耐熱性を高める(外周壁の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、端面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0013】
セル11aの延在方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体1に排気ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0014】
セル11aを区画形成する隔壁11の厚みは、0.1~0.3mmであることが好ましく、0.1~0.2mmであることがより好ましい。隔壁11の厚みが0.1mm以上であることで、ハニカム構造体1の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁11の厚みが0.3mm以下であることで、ハニカム構造体1を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本発明において、隔壁11の厚みは、セル11aの延在方向に垂直な断面において、隣接するセル11aの重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁11を通過する部分の長さとして定義される。
【0015】
ハニカム構造体1は、セル11aの延在方向に垂直な断面において、セル密度が40~150セル/cm2であることが好ましく、70~100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排気ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2以上であると、触媒担持面積が十分に確保される。セル密度が150セル/cm2以下であるとハニカム構造体1を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなりすぎることが抑制される。セル密度は、外周壁10部分を除くハニカム構造体1の一つの端面部分の面積でセル数を除して得られる値である。
【0016】
ハニカム構造体1の外周壁10を設けることは、ハニカム構造体1の構造強度を確保し、また、セル11aを流れる流体が外周壁10から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁10の厚みは好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.10mm以上、更により好ましくは0.15mm以上である。但し、外周壁10を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁11との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁10の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周壁10の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁10の箇所をセルの延在方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁10の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0017】
ハニカム構造体1は、セラミックス製であり、導電性を有することが好ましい。ハニカム構造体1は、通電してジュール熱により発熱可能である限り、体積抵抗率については特に制限はないが、0.1~200Ωcmであることが好ましく、1~200Ωcmがより好ましい。本発明において、ハニカム構造体1の体積抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0018】
ハニカム構造体1の材質としては、限定的ではないが、アルミナ、ムライト、ジルコニア及びコージェライト等の酸化物系セラミックス、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックスからなる群から選択することができる。また、炭化珪素-金属珪素複合材や炭化珪素/グラファイト複合材等を用いることもできる。これらの中でも、耐熱性と導電性の両立の観点から、ハニカム構造体1の材質は、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするセラミックスを含有していることが好ましい。ハニカム構造体1の材質が、珪素-炭化珪素複合材を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造体1が、珪素-炭化珪素複合材(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素-炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。ハニカム構造体1の材質が、炭化珪素を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造体1が、炭化珪素(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0019】
ハニカム構造体1が、珪素-炭化珪素複合材を含んでいる場合ハニカム構造体1に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造体1に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造体1に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることが更に好ましい。
【0020】
隔壁11は多孔質としてもよい。多孔質とする場合、隔壁11の気孔率は、35~60%であることが好ましく、35~45%であることが更に好ましい。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0021】
ハニカム構造体1の隔壁11の平均細孔径は、2~15μmであることが好ましく、4~8μmであることが更に好ましい。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0022】
ハニカム構造体1は、周方向に互いに離間して外周壁10から径方向内方に延び、外周壁10が開口するように設けられた複数のスリット12を備えている。スリット12は、ハニカム構造体1の一方の端面から他方の端面までハニカム構造体1の軸方向に直線状に延在されている。周方向におけるスリット12の本数としては、2本以上12本以下であってもよい。スリット12の深さは、ハニカム構造体1の軸方向に垂直な断面において、ハニカム構造体1の半径の60%以下であることが好ましく、1%以上25%以下がより好ましい。スリット12の幅は、0.4mm以上2.0mm以下であってもよい。
【0023】
スリット12には、充填材13が充填されている。充填材13は、スリット12の空間の少なくとも一部に充填されていることが好ましい。充填材13は、スリット12の空間の50%以上に充填されていることが好ましく、スリット12の空間の全部に充填されていることがより好ましい。
図1に示す態様では、充填材13は、スリット12の空間の全部に充填されており、ハニカム構造体1の両方の端面と一体の平面を形成し、ハニカム構造体1の外周壁10と一体の曲面を形成している。しかしながら、充填材13は、ハニカム構造体1の端面よりも軸方向の内側の位置まで充填されていてもよく、ハニカム構造体1の外周壁10よりも径方向又は幅方向の内側の位置まで充填されていてもよい。
【0024】
充填材13は、ハニカム構造体1の主成分が炭化珪素、又は金属珪素-炭化珪素複合材である場合、炭化珪素を20質量%以上含有することが好ましく、20~70質量%含有することが更に好ましい。これにより、充填材13の熱膨張係数を、ハニカム構造体の熱膨張係数に近い値にすることができ、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。充填材13は、シリカ、アルミナ等を30質量%以上含有するものであってもよい。
【0025】
図示はしないが、セル11aの延在方向に帯状に延びる一対の電極層がハニカム構造体1の外周面上に設けられ、それらの電極層上に電極端子を設けることができる。これら電極端子及び電極層を通してハニカム構造体1に電圧を印加して、ハニカム構造体1を発熱させることができる。
【0026】
電極層に電気を流しやすくする観点から、電極層の体積抵抗率は、ハニカム構造体1の電気抵抗率の1/200以上、1/10以下であることが好ましい。
【0027】
電極層の材質は、導電性セラミックス、金属、又は金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を使用することができる。金属としては、例えばCr、Fe、Co、Ni、Si又はTiの単体金属又はこれらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。導電性セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。
【0028】
電極層を有するハニカム構造体1の製造方法としては、まず、ハニカム乾燥体の側面に、セラミックス原料を含有する電極層形成原料を塗布し、乾燥させて、ハニカム乾燥体の中心軸を挟んで、外周壁の外面上において、セル11aの延在方向に帯状に延びるように一対の未焼成電極層を形成して、未焼成電極層付きハニカム乾燥体を作製する。次に、未焼成電極層付きハニカム乾燥体を焼成して一対の電極層を有するハニカム焼成体を作製する。これにより、電極層を有するハニカム構造体1が得られる。
【0029】
次に、
図2は
図1のハニカム構造体1を製造するためのハニカム構造体1の製造方法を示すフローチャートであり、
図3は
図2の充填工程(ステップS2)を示す説明図であり、
図4は
図3の充填材13がスリット12に充填される様子を示す説明図である。
【0030】
図2に示すように、本実施の形態のハニカム構造体1の製造方法は、準備工程(ステップS1)及び充填工程(ステップS2)を含んでいる。
【0031】
準備工程(ステップS1)は、スリット12を備えるハニカム構造体素体2(
図3参照)を準備する工程である。ハニカム構造体素体2の構成は、スリット12に充填材13が充填されていない点を除き、上述のハニカム構造体1の構成と同様である。
【0032】
充填工程(ステップS2)は、
図3に示すように、ハニカム構造体素体2の外周面20に充填材13を供給し、ハニカム構造体素体2の外周面20の法線20aに対して所定角度だけ傾けた当接部材3の先端部分3aを外周面20に所定の力で押し当てつつ、ハニカム構造体素体2を回転させて、当接部材3によりスリット12に充填材13を充填し、スリット12に充填材13が充填されたハニカム構造体1(
図1参照)を得る工程である。ハニカム構造体素体2の外周面20は、外周壁10の外表面と理解できる。外周面20の法線20aは、当接部材3のハニカム構造体素体2への当接領域(例えば、線接触領域における)における法線である。
【0033】
充填工程(ステップS2)において、ハニカム構造体素体2の軸方向が水平方向に延びるようにハニカム構造体素体2を支持できる。また、ハニカム構造体素体2の軸中心位置を通る直線(ハニカム構造体素体2の端面の径方向又は幅方向に係る中心位置を通るとともにハニカム構造体素体2の軸方向に延びる直線)を中心に回転可能にハニカム構造体素体2を支持することができる。換言すると、充填工程(ステップS2)におけるハニカム構造体素体2の回転軸は、ハニカム構造体素体2と同軸とすることができる。ハニカム構造体素体2の支持には、所定の装置を用いることができる。
【0034】
軸方向が水平方向に延びるようにハニカム構造体素体2を支持した状態で、そのハニカム構造体素体2の上部に充填材13を供給することができる。充填材13の供給位置は、軸方向が水平方向に延びるように支持されたハニカム構造体素体2の頂部(鉛直方向に関して最も高い場所に位置する部分)よりもハニカム構造体素体2の回転方向における下流側の位置、頂部よりも上流側の位置又は頂部の位置とすることができる。ハニカム構造体素体2の上部に供給する際の充填材13の粘度は、100~1000P(10~100Pa・s)とすることが好ましい。この範囲の粘度とすることで、ハニカム構造体素体2の上部で充填材13をより円滑に広げることができるとともに、ハニカム構造体素体2の上部からの充填材13の垂れを抑えることができる。
【0035】
当接部材3としては、ブレード形状であることが好ましい。当接部材3は、ヘラと呼ばれる部材であり得る。当接部材3としては、可撓性を有することが好ましく、例えばショアA硬度が50~98のウレタン製の部材等を使用することができる。当接部材3の外形は任意であるが、ハニカム構造体素体2の外周面20上に設けられるスリットの軸方向長さ以上の幅3Wを有する当接部材3を用いることができる。好ましくは、ハニカム構造体素体2の軸方向長さと等しい幅を有する。ここで、「等しい」という概念には、厳密に等しいことのみならず、実質的に等しいことも含まれていてよい。当接部材3の長さ3Lは例えば30~70mm等とすることができ、当接部材3の厚み3Tは例えば3~15mm等とすることができる。
【0036】
先端部分3aを外周面20に押し当て可能に当接部材3を支持できる。外周面20に対して先端部分3aが近づく方向及び離れる方向に進退可能に当接部材3を支持できる。ハニカム構造体素体2の周方向に係る位置を固定できるとともに、法線20aに対する傾斜角度及び外周面20に対する押し当て力が一定となるように、当接部材3を支持できる。「一定」という概念には、変動が無いことのみならず、変動が所定の範囲内であることも含まれていてよい。当接部材3の支持には、所定の装置を用いることができる。
【0037】
法線20aに対する当接部材3の傾斜角度θ(
図4参照)は30°以上かつ75°以下であることが好ましい。当接部材3は、ハニカム構造体素体2の回転方向における上流側に位置する上流側端面3bを有する。傾斜角度θは、軸方向に沿ってハニカム構造体素体2及び当接部材3を見たときに、上流側端面3bと法線20aとの間の角度と理解できる。傾斜角度θが30°以上であると、ハニカム構造体素体2の回転に伴い当接部材3が充填材13に加える力のうち、充填材13をスリット12に押し込もうとする力を十分に確保することができる。一方、傾斜角度θが75°以下であると、当接部材3が充填材13に加える力のうち、充填材13を下流側に移動させようとする力を十分に確保することができる。すなわち、傾斜角度を上記範囲内とすることで、スリット12への充填材13の押し込みと下流側への充填材13の移動とを円滑に行うことができる。傾斜角度θは45°以上かつ65°以下であることがより好ましい。
【0038】
外周面20への当接部材3の先端部分3aの押し当て力は1N以上かつ150N以下であることが好ましい。押し当て力は、先端部分3aが外周面20に接触する位置に予めセンサをセットし、充填材13の充填時と同様に当接部材3をセンサに押し付けた時の測定値とすることができる。押し当て力を測定するためのセンサとしては、例えばプッシュプルゲージ等を用いることができる。押し当て力が1N以上であると、当接部材3により充填材13を円滑に移動させやすくなる。また、押し当て力が150N以下であると、当接部材3との接触によりハニカム構造体素体2が損傷する虞が抑制される。すなわち、押し当て力を上記範囲内とすることで、充填材13の円滑な移動を可能としつつ、ハニカム構造体素体2が損傷する虞を低減できる。押し当て力は100N以上かつ130N以下であることがより好ましい。
【0039】
当接部材3の先端部分3aを外周面20に押し当てた状態で、ハニカム構造体素体2を1周以上かつ50周以下だけ回転させることが好ましい。1周以上であると、充填材13が十分にスリット12に充填されやすくなる。一方、50周を超えても、既に十分な充填材13がスリット12に充填されており、スリット12への充填材13の充填量の増加が見込めない虞が大きい。ハニカム構造体素体2の回転数は、7周以上かつ20周以下がより好ましい。
【0040】
充填工程(ステップS2)は、30RH%以上の調湿環境下で行うことが好ましい。充填材13の乾燥を抑え、スリット12に充填材13を円滑に充填できるようにするためである。充填材13の充填時に所定のケース内でハニカム構造体素体2を回転可能に支持し、そのケース内を調湿環境としてもよい。充填工程時の調湿環境は、60RH%以上がより好ましく、80RH%以上がさらに好ましい。上限としては、特に制限はなく、理論上、100%以下である。また、充填材13を充填後、必要に応じて乾燥させてもよい。
【0041】
ハニカム構造体素体2の回転速度は30rpm以上かつ120rpm以下であることが好ましい。回転速度が30rpm以上であると、ハニカム構造体素体2を所定の回数だけ回転させる時間を所定時間内に抑えられ、途中で充填材13の乾燥が進む虞を回避できる。回転速度が120rpm以下であると、充填材13がスリット12に入り込みづらくなる虞を抑えることができる。ハニカム構造体素体2の回転速度は、50rpm以上かつ70rpm以下がより好ましい。
【0042】
次に、
図5は、
図2の充填工程(ステップS2)に用いることができるハニカム構造体1の製造装置4を示す斜視図である。
図5に示す製造装置4は、ハニカム構造体素体2及び当接部材3を支持し、当接部材3によりハニカム構造体素体2のスリット12に充填材13を充填しハニカム構造体1を得るための装置である。製造装置4を充填材13の充填装置と呼んでもよい。
【0043】
以下、製造装置4の幅方向4W、奥行方向4D及び高さ方向4Hとの用語を用いて製造装置4の各部を説明することがある。これら幅方向4W、奥行方向4D及び高さ方向4Hは、互いに交わる方向であり、より具体的には互いに直交する方向であり得る。幅方向4W及び奥行方向4Dが水平方向に沿い、高さ方向4Hが鉛直方向に沿うことがある。奥行方向4Dに関連して奥及び手前との用語を用いることがある。また、高さ方向4Hに関連して上方等の用語を用いることがある。
【0044】
図5に示すように、製造装置4は、投入部40、素体支持部41、軸中心位置調整部42、充填材供給部43及び当接部材支持部45を有している。
【0045】
投入部40は、奥行方向4Dに係る手前側に配置されている。投入部40は、支持台401及び移動機構402を有している。支持台401は、ハニカム構造体素体2を支持するための台である。支持台401は、ハニカム構造体素体2の軸方向が幅方向4Wに沿うようにハニカム構造体素体2を支持できる。移動機構402は、高さ方向4H及び奥行方向4Dに移動可能に支持台401を支持している。移動機構402は、セット位置と充填位置との間で支持台401及びハニカム構造体素体2を移動させる。セット位置は、作業者等が支持台401にハニカム構造体素体2をセットするための位置である。充填位置は、ハニカム構造体素体2のスリット12に充填材13を充填するための位置である。充填位置は、セット位置よりも奥かつ上方の位置であり得る。
【0046】
素体支持部41は、投入部40の奥に配置されており、充填位置にハニカム構造体素体2があるとき、そのハニカム構造体素体2を回転自在に支持するための部分である。素体支持部41は、一対の第1挟持部411、一対の第2挟持部412及び駆動部413を有している。
【0047】
第1及び第2挟持部411,412は、それぞれ、幅方向4Wに進退可能に設けられているとともに、回転可能に設けられている。第1挟持部411は、第2挟持部412とは別個に進退可能及び/又は回転可能に設けられていてよい。第1及び第2挟持部411,412は、充填位置にハニカム構造体素体2があるとき、セル11aの延在方向(軸方向)に係る両側から、そのハニカム構造体素体2を挟持することができる。
【0048】
第1及び第2挟持部411,412は、互いに同軸に設けられている。第1挟持部411は、第2挟持部412よりも小径とされており、ハニカム構造体素体2の径方向中央部を挟持する。第2挟持部412は、第2挟持部412よりも大径とされており、ハニカム構造体素体の径方向外周部を挟持する。本実施の形態の第2挟持部412は、ハニカム構造体素体2と同じ外径を有している。第2挟持部412は、充填対象となるハニカム構造体素体2に応じて、異なる外径を有する別の第2挟持部412と交換可能とされていてよい。
【0049】
駆動部413は、第1及び第2挟持部411,412に接続されている。駆動部413の駆動力により、第1及び第2挟持部411,412が幅方向4Wに進退されるとともに回転駆動され得る。駆動部413の制御により、第2挟持部412の挟持圧が切り替え可能とされている。後に説明するように、軸中心位置調整部42により軸中心位置を合わせる際の第2挟持部412の挟持圧は、充填材13を充填する際の第2挟持部412の挟持圧よりも低くてよく、その挟持圧の半分程度(例えば45%等)であってよい。
【0050】
軸中心位置調整部42は、径方向外方から第2挟持部412及びハニカム構造体素体2を同時に挟み、第2挟持部412及びハニカム構造体素体2の軸中心位置を合わせるための部分である。
【0051】
本実施の形態の軸中心位置調整部42は、幅方向4Wに互いに離間して配置された一対のワークチャック420を有している。各ワークチャック420は、幅方向4Wに関して、第2挟持部412に挟持されたハニカム構造体素体2の軸方向両端に位置するように配置されている。各ワークチャック420は、高さ方向4Hに互いに近づく方向及び離れる方向に変位可能に設けられた上部421及び下部422を有している。上部421及び下部422は、第2挟持部412の軸中心位置を中心に高さ方向4Hに互いに逆方向かつ同じ量だけ変位可能とされている。また、上部421及び下部422は、幅方向4Wに所定の幅を有している。上部421及び下部422は、互いに近づいた際に第2挟持部412及びハニカム構造体素体2の境界をまたがって第2挟持部412及びハニカム構造体素体2を同時に挟むことが可能とされている。上部421及び下部422の挟持前に第2挟持部412及びハニカム構造体素体2の軸中心位置がずれているとき、上部421及び下部422の挟持により軸中心位置が合う位置までハニカム構造体素体2が高さ方向4Hに移動される。上述のように軸中心位置調整部42により軸中心位置を合わせる際の第2挟持部412の挟持圧が低くされることで、高さ方向4Hのハニカム構造体素体2の移動がより円滑となる。
【0052】
充填材供給部43は、充填位置の上方に配置されており、充填位置にハニカム構造体素体2があるとき、そのハニカム構造体素体2の外周面20に充填材13を供給するための部分である。充填材供給部43は、幅方向4Wに互いに離間する複数のノズルを有するノズルヘッド430を有しており、幅方向4W又はハニカム構造体素体2の軸方向に所定の広がりを持って充填材13を供給できる。
【0053】
当接部材支持部45は、充填位置の上方かつ充填材供給部43の奥に配置されており、充填位置にハニカム構造体素体2があるとき、そのハニカム構造体素体2の外周面20の法線20aに対して所定角度だけ傾けた当接部材3の先端部分3aをハニカム構造体素体2の外周面20に所定の力で押し当てるための部分である。
【0054】
当接部材支持部45は、当接部材3を支持している。当接部材支持部45は、高さ方向4Hに進退可能に設けられており、降下されることで当接部材3の先端部分3aをハニカム構造体素体2の外周面20に押し当てることが可能とされている。当接部材支持部45による外周面20への先端部分3aの押し当て力は調整可能とされていてよい。
【0055】
当接部材支持部45は、法線20aに対する当接部材3の傾きを調整できるように当接部材3を支持できてよい。法線20aに対する当接部材3の傾きを調整できるように、当接部材支持部45が傾動可能に設けられていてもよい。
【0056】
当接部材支持部45は、当接部材取付部450及び一対の支持体451を有している。当接部材取付部450は、当接部材3が着脱可能に取り付けられる部材である。当接部材取付部450は、当接部材3が挿通可能な下部開口を有するとともに、幅方向4Wに所定の幅を有している。例えば、下部開口に挿通された当接部材3を締結部材(ボルト等)により当接部材取付部450に固定する等の方法により、当接部材取付部450に当接部材3を取り付けることができる。一対の支持体451は、幅方向4Wに互いに離間した位置で当接部材取付部450をそれぞれ支持している。一対の支持体451は、当接部材3の長さ方向に進退可能に当接部材取付部450を支持してよい。一対の支持体451は、当接部材3の先端部分3aをハニカム構造体素体2の外周面20に押し当てるように当接部材取付部450を付勢する付勢部材(バネ等)を有していてよい。仮にハニカム構造体素体2の外形にバラツキがあったとしても、当接部材取付部450が付勢されることで、より確実に当接部材3の先端部分3aをハニカム構造体素体2の外周面20に追従させることができる。
【0057】
次に、製造装置4の動作について説明する。製造装置4の各部の動作は、各部に設けられたセンサからの信号及び/又は所定のインターフェースを介して作業者等により入力される信号等に基づき行われ得る。製造装置4は、上述のハニカム構造体1の製造方法を実施するように動作し得る。
【0058】
まず、作業者等は、支持台401がセット位置にあるとき、その支持台401にハニカム構造体素体2をセットする。このとき、ハニカム構造体素体2は、軸方向が幅方向4Wに沿う向きとされている。支持台401にハニカム構造体素体2をセットされた後、移動機構402により支持台401及びハニカム構造体素体2が充填位置まで移動される。
【0059】
支持台401及びハニカム構造体素体2が充填位置まで移動された後、第1挟持部411がハニカム構造体素体2を挟持する一方で、支持台401がセット位置まで戻される。次に、第2挟持部412がハニカム構造体素体2を挟持するとともに、軸中心位置調整部42による軸中心位置合わせが行われる。すなわち、軸中心位置調整部42により、径方向外方から第2挟持部412及びハニカム構造体素体2が同時に挟まれて、第2挟持部412及びハニカム構造体素体2の軸中心位置が合わせられる。軸中心位置合わせが完了した後、第2挟持部412及びハニカム構造体素体2から軸中心位置調整部42が離されるとともに、第2挟持部412によるハニカム構造体素体2の挟持圧が高められる。
【0060】
その次に、充填材供給部43によりハニカム構造体素体2の外周面20に充填材13が供給されるとともに、当接部材支持部45が降下されて、ハニカム構造体素体2の外周面20の法線20aに対して所定角度だけ傾けた当接部材3の先端部分3aがハニカム構造体素体2の外周面20に所定の力で押し当てられる。
【0061】
その次に、第1及び第2挟持部411,412が回転駆動される。これに伴い、ハニカム構造体素体2が回転されて、当接部材3によりスリット12に充填材13が充填され、スリット12に充填材13が充填されたハニカム構造体1が得られる。ハニカム構造体1が得られた後、支持台401が充填位置まで移動されて、支持台401の上にハニカム構造体1が載置される。その後、第1及び第2挟持部411,412によるハニカム構造体1の挟持が解放され、支持台401及びハニカム構造体1がセット位置に戻されて、作業者等がハニカム構造体1を取り出すことが可能とされる。
【0062】
本実施の形態のようなハニカム構造体1の製造方法及び製造装置4では、ハニカム構造体素体2の外周面20に充填材13を供給し、ハニカム構造体素体2の外周面20の法線20aに対して所定角度だけ傾けた当接部材3の先端部分3aを外周面20に所定の力で押し当てつつ、ハニカム構造体素体2を回転させて、当接部材3によりスリット12に充填材13を充填し、スリット12に充填材13が充填されたハニカム構造体1を得るので、充填材13の充填精度のバラつきを低減できる。
【0063】
また、法線20aに対する当接部材3の傾斜角度θは30°以上かつ75°以下であるので、スリット12への充填材13の押し込みと下流側への充填材13の移動とを円滑に行うことができる。
【0064】
また、外周面20への当接部材3の先端部分3aの押し当て力は1N以上かつ150N以下であるので、充填材13の円滑な移動を可能としつつ、ハニカム構造体素体2が損傷する虞を低減できる。
【0065】
当接部材3の先端部分3aを外周面20に押し当てた状態で、ハニカム構造体素体2を1周以上かつ50周以下だけ回転させるので、充填材13が充填されていないスリット12が残る虞を低減しつつ、過剰にハニカム構造体素体2を回転させることを回避できる。
【0066】
また、充填工程(ステップS2)は、30RH%以上の調湿環境下で行うので、充填材13の乾燥を抑え、スリット12に充填材13を円滑に充填できる。
【0067】
また、ハニカム構造体素体2の回転速度は30rpm以上かつ120rpm以下であるので、充填中に充填材13の乾燥が進んでしまうことを回避しつつ、充填材13がスリット12に入り込みづらくなる虞を低減できる。
【0068】
また、素体支持部41が一対の第1挟持部411と一対の第2挟持部412とを有するので、第2挟持部412のみで保持している場合はハニカム構造体1との接触抵抗が弱いため、容易に軸中心位置合わせを行うことができる。加えて第1挟持部411によりハニカム構造体1を保持することで接触抵抗が大きくなり、充填動作中にハニカム構造体1の軸中心位置がズレることを抑制できる。
【0069】
また、軸中心位置調整部42が径方向外方から第2挟持部412及びハニカム構造体素体2を同時に挟み、第2挟持部412及びハニカム構造体素体2の軸中心位置を合わせるので、第2挟持部412によりハニカム構造体素体2を回転させる際のハニカム構造体素体2のブレを抑え、充填材13の充填精度のバラつきを低減できる。
【0070】
また、軸中心位置調整部42により軸中心位置を合わせる際の第2挟持部412の挟持圧は、充填材13を充填する際の第2挟持部412の挟持圧よりも低いので、軸中心位置を合わせる際のハニカム構造体素体2の移動をより円滑とすることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 :ハニカム構造体
10 :外周壁
11 :隔壁
11a :セル
12 :スリット
13 :充填材
2 :ハニカム構造体素体
20 :外周面
20a :法線
3 :当接部材
3a :先端部分
4 :ハニカム構造体の製造装置
41 :素体支持部
42 :軸中心位置調整部
43 :充填材供給部
45 :当接部材支持部
411 :第1挟持部
412 :第2挟持部