(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137998
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】建設機械の配策物一時保持構造
(51)【国際特許分類】
E02F 3/38 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
E02F3/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037756
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】木谷 友則
(57)【要約】
【課題】建設機械の作業アタッチメントを分解する時において、配策物の数や大きさ、種類等に関係なく取り外した配策物の全てを保持することができ、且つ、分解したアタッチメント構成体が運び易くなり、しかも、作業者による配策物の保持作業を効率的に行うことができるようにする。
【解決手段】解体機10は、互いに連結分解可能な分割ブーム18C,18Dと、一端が分割ブーム18Dに着脱可能に固定される一方、他端が分割ブーム18Cに固定された複数の配管2とを備える。分割ブーム18Cの上面には、配策物保持部3が設けられ、該配策物保持部3は、分割ブーム18Dから取り外した配管2の一端側に設けられた結束体20を一時的に保持可能になっている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連結分解可能な2つのアタッチメント構成体と、一端が前記一方のアタッチメント構成体の表面に着脱可能に固定される一方、他端が前記他方のアタッチメント構成体の表面に固定された1つ以上の配策物とを有する作業アタッチメントを備えた建設機械の配策物一時保持構造であって、
前記他方のアタッチメント構成体の上面には、前記一方のアタッチメント構成体から取り外した前記配策物の一端側に設けられた被保持部を一時的に保持可能な配策物保持部が設けられていることを特徴とする建設機械の配策物一時保持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の配策物一時保持構造において、
前記配策物保持部は、前記他方のアタッチメント構成体の上面側方に設けられていることを特徴とする建設機械の配策物一時保持構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械の配策物一時保持構造において、
前記配策物は、前記2つのアタッチメント構成体の間に複数配策され、
前記被保持部は、前記複数の配策物の一端側を束ねる結束体であることを特徴とする建設機械の配策物一時保持構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の建設機械の配策物一時保持構造において、
前記配策物保持部は、前記被保持部を挿入可能な被挿入部を有し、
前記被保持部は、当該被保持部の前記被挿入部への挿入方向と直交する方向で、且つ、互いに反対向きに突出する一対のピンを有し、
前記被挿入部には、当該被挿入部に前記被保持部を挿入した際、前記各ピンが一端開放部分からそれぞれ進入する一対のスリット部を備え、
該両スリット部の少なくとも一方又は当該両スリット部の少なくとも一方の近傍には、前記ピンが前記スリット部の一端開放部分から抜け出すのを阻止する抜出阻止部が設けられていることを特徴とする建設機械の配策物一時保持構造。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械の配策物一時保持構造において、
前記抜出阻止部は、前記被挿入部の前記スリット部を挟んだ位置に対向して突設されるとともに、板厚方向に貫通する挿通孔がそれぞれ形成された一対の突出板部と、前記両挿通孔に挿通させた状態で前記スリット部に位置する前記ピンが後退動作時に干渉する位置となるよう構成された棒部材とで構成されていることを特徴とする建設機械の配策物一時保持構造。
【請求項6】
請求項4に記載の建設機械の配策物一時保持構造において、
前記スリット部は、一端が前記被挿入部の挿入側に開放する一方、他端が前記被挿入部の中途部に位置する第1直線部と、該第1直線部の他端から当該第1直線部との間の角度が鋭角となるように延びてその延出端が前記被挿入部の中途部に位置する第2直線部とを備え、
前記抜出阻止部は、前記第2直線部であることを特徴とする建設機械の配策物一時保持構造。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1つの建設機械の配策物一時保持構造において、
前記配策物保持部は、前記被挿入部の前記他方のアタッチメント構成体に対する姿勢を変更可能な姿勢変更手段を有することを特徴とする建設機械の配策物一時保持構造。
【請求項8】
請求項7に記載の建設機械の配策物一次保持構造において、
前記姿勢変更手段は、前記被挿入部から同方向に突出する一対のガイド部材と、前記被挿入部を支持する支持板部とを備え、
該支持板部には、前記各ガイド部材をそれぞれ案内可能な一対のガイド孔が所定の間隔をあけて形成され、該各ガイド孔は、一端から他端に向かうにつれて互いに接近する形状をなしていることを特徴とする建設機械の配策物一時保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の作業アタッチメントを構成する互いに連結分解可能な2つのアタッチメント構成体を分解した際、両アタッチメント構成体に亘って取り付けられた配策物を一方のアタッチメント構成体から取り外して他方のアタッチメント構成体に一時的に保持しておく構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、大型の建設機械は、作業現場等まで移動させ易くするために、作業アタッチメントを分解することが行われる。作業アタッチメントの表面には、配管や電気ケーブル等の配策物が取り付けられているので、分解するブームやアーム等の2つのアタッチメント構成体に亘って配策物が取り付けられている場合、一方のアタッチメント構成体から配策物の一端側を一時的に取り外す必要がある。そうすると、他方のアタッチメント構成体に配策物の一端側が垂れ下がった状態になってしまい、例えば、雨水が溜まる箇所に継手部分が浸されて腐食や錆が発生したり、或いは、作業者が作業アタッチメント周りにおいて作業する際に邪魔になって安全に作業を行えなくなってしまうおそれがある。
【0003】
これらを回避するために、例えば、特許文献1では、取り外した配策物の一端側を他方のアタッチメント構成体に一時的に保持させる配策物取付ハンガが開示されている。該配策物取付ハンガは、細棒状をなすロッド部と、該ロッド部の両端に設けられた正面視で上方に開放するC字状のフック部とを備え、2つのアタッチメント構成体を連結する際に使用する各アタッチメント構成体に設けられた一対のピン連結用孔に挿通可能になっている。そして、2つのアタッチメント構成体を分解する際、一方のアタッチメント構成体に取り付けられた配策物の一端を取り外すとともに、他方のアタッチメント構成体の両ピン連結用孔に配策物取付ハンガを挿通させ、且つ、取り外した配策物の一端を配策物取付ハンガのフックに一時的に保持させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の如き配策物取付ハンガは、各アタッチメント構成体に設けられたピン連通用孔にフック部を挿通させる必要があるので、当該フック部の大きさをピン連通用孔に挿通させることができる大きさに設計する必要がある。そうすると、例えば、配策物の数や種類が多い場合、設計した大きさのフック部で全ての配策物を保持できない場合があるという問題があった。これに対応するために、フック部の寸法をロッド部の長手方向にのみ長くしてフック部全体を大きくすることも考えられるが、そうすると、アタッチメント構成体を作業現場等まで移動させる際に載せるトレーラー等の車両からフック部が大きくはみ出して輸送性が悪化するおそれがある。また、特許文献1の配策物取付ハンガは、作業アタッチメントを分解するときにのみ持ち出して使用するものであり、それ以外の時には、どこかへ保管しておく必要があるので、持ち出したり、或いは、片付けたりにするのに時間が掛かり、作業が煩雑であるという問題もある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建設機械の作業アタッチメントを分解する時において、配策物の数や大きさ、種類等に関係なく取り外した配策物の全てを保持することができ、且つ、分解したアタッチメント構成体が運び易くなり、しかも、作業者による配策物の保持作業を効率的に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、取り外した配策物の一端側を保持する構造をアタッチメント構成体の上面に予め設けておくようにしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、互いに連結分解可能な2つのアタッチメント構成体と、一端が前記一方のアタッチメント構成体の表面に着脱可能に固定される一方、他端が前記他方のアタッチメント構成体の表面に固定された1つ以上の配策物とを有する作業アタッチメントを備えた建設機械の配策物一時保持構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、前記他方のアタッチメント構成体の上面には、前記一方のアタッチメント構成体から取り外した前記配策物の一端側に設けられた被保持部を一時的に保持可能な配策物保持部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、前記配策物保持部は、前記他方のアタッチメント構成体の上面側方に設けられていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、前記配策物は、前記2つのアタッチメント構成体の間に複数配策され、前記被保持部は、前記配策物の一端側を束ねる結束体であることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記配策物保持部は、前記被保持部を挿入可能な被挿入部を有し、前記被保持部は、当該被保持部の前記被挿入部への挿入方向と直交する方向で、且つ、互いに反対向きに突出する一対のピンを有し、前記被挿入部には、当該被挿入部に前記被保持部を挿入した際、前記各ピンが一端開放部分からそれぞれ進入する一対のスリット部を備え、該両スリット部の少なくとも一方又は当該両スリット部の少なくとも一方の近傍には、前記ピンが前記スリット部の一端開放部分から抜け出すのを阻止する抜出阻止部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第4の発明において、前記抜出阻止部は、前記被挿入部の前記スリット部を挟んだ位置に対向して突設されるとともに、板厚方向に貫通する挿通孔がそれぞれ形成された一対の突出板部と、前記両挿通孔に挿通させた状態で前記スリット部に位置する前記ピンが後退動作時に干渉する位置となるよう構成された棒部材とで構成されていることを特徴とする。
【0014】
第6の発明では、第4の発明において、前記スリット部は、一端が前記被挿入部の挿入側に開放する一方、他端が前記被挿入部の中途部に位置する第1直線部と、該第1直線部の他端から当該第1直線部との間の角度が鋭角となるように延びてその延出端が前記被挿入部の中途部に位置する第2直線部とを備え、前記抜出阻止部は、前記第2直線部であることを特徴とする。
【0015】
第7の発明では、第4から第6のいずれか1つの発明において、前記配策物保持部は、前記被挿入部の前記他方のアタッチメント構成体に対する姿勢を変更可能な姿勢変更手段を有することを特徴とする。
【0016】
第8の発明では、第7の発明において、前記姿勢変更手段は、前記被挿入部から同方向に突出する一対のガイド部材と、前記被挿入部を支持する支持板部とを備え、該支持板部には、前記各ガイド部材をそれぞれ案内可能な一対のガイド孔が所定の間隔をあけて形成され、該各ガイド孔は、一端から他端に向かうにつれて互いに接近する形状をなしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明では、2つのアタッチメント構成体を分解した時に一方のアタッチメント構成体から取り外した配策物の一端を周囲に干渉物が少ない他方のアタッチメント構成体の上面において保持するようになる。したがって、配策物を保持する領域を広く確保することができるので、配策物の数や大きさ、種類等に関係なく、取り外した全ての配策物の一端を他方のアタッチメント構成体に一時的に保持することができる。また、配策物の一端を保持する配策物保持部が他方のアタッチメント構成体の上面にあるので、分解したアタッチメント構成体を車両で輸送する際に配策物保持部が車両から大きくはみ出すことがない。したがって、分解したアタッチメント構成体を運び易くすることができる。さらに、取り外した配策物の一端を保持する配策物保持部が他方のアタッチメント構成体の上面に設けられていて、特許文献1の如き作業アタッチメントを分解するときにのみ持ち出して使用する配策物取付ハンガを用いる必要が無くなるので、作業者が配策物の一時保持作業を効率的に行うことができる。
【0018】
第2の発明では、配策物の一端を配策物保持部に保持させる作業者の作業をアタッチメント構成体の側方の位置で行うことが可能になる。したがって、作業者がアタッチメント構成体の上面にまで移動する作業が無くなるので、作業者は配策物を一時的に保持する作業を容易に行うことができる。
【0019】
第3の発明では、配策物保持部が結束体を保持すると、複数の配策物の一端側がまとまった状態で一度に保持されるようになるので、配策物が複数ある場合における作業者による配策物の他方のアタッチメント構成体への取付作業を容易に行うことができる。
【0020】
第4の発明では、被保持部の被挿入部への挿入動作により各スリット部に各ピンが進入するとともに、当該各ピンによって配策物保持部に対する被保持部の位置が決まるようになる。したがって、被保持部の配策物保持部への取付操作が簡単になり、作業者は、被保持部の配策物保持部への取付作業を安全、且つ、容易に行うことができる。また、配策物保持部に対する被保持部の位置決め用の各ピンと各スリット部とを利用して被保持部を配策物保持部に固定できるので、安価な構造にすることができる。
【0021】
第5の発明では、各ピンを各スリット部に進入させた後、各突出板部に設けられた挿通孔に棒部材を挿通させるという簡単な操作で配策物保持部に対して被保持部が固定されるようになる。したがって、作業者は、作業アタッチメント周りにおいてさらに安全、且つ、容易に作業を行うことができる。
【0022】
第6の発明では、被挿入部に被保持部を挿入して各スリット部の第1直線部に各ピンを進入させた後、被保持部を後退させて各スリット部の第2直線部に各ピンを進入させると、各ピンが各スリット部から抜け出なくなり、配策物保持部に対して被保持部が固定されるようになる。したがって、作業者は、配策物保持部に対する被保持部の取付作業を簡単に行うことができ、しかも、配策物保持部に対する被保持部の取付構造を簡単で、且つ、安価なものにすることができる。
【0023】
第7の発明では、被挿入部への被保持部の挿入位置を作業者の所望する位置や、配策物の硬さや長さ或いは最小曲げR等の個体差に応じた最適な位置に変更可能になるので、作業者における配策物保持部に対する被保持部の取付作業をさらに簡単にすることができる。
【0024】
第8の発明では、一方のガイド孔の一端側に位置する一方のガイド部材を中心に被挿入部を回動させると、他方のガイド孔がその他端側に他方のガイド部材を案内して被挿入部への被保持部の挿入位置が変わるようになる。一方、他方のガイド孔の一端側に位置する他方のガイド部材を中心に被挿入部を回動させると、一方のガイド孔がその他端側に一方のガイド部材を案内して被挿入部への被保持部の挿入位置が変わるようになる。このように、被挿入部への被保持部の挿入位置を細かく設定することができ、使い勝手の良い構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態1の配策物一時保持構造が適用された解体機の概略側面図である。
【
図3】
図2のIII-III線における断面図である。
【
図6】保持フレームの姿勢を変更した状態を示す
図5相当図である。
【
図7】本発明の実施形態1の配策物一時保持構造に係る抜出阻止部であり、抜け出し阻止状態にする直前の状態を示す図である。
【
図8】
図7の後、抜出阻止部を抜け出し阻止状態にした直後の状態を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態1に係る配策物一時保持構造の使用状態を示す
図2相当図である。
【
図11】抜出阻止部を抜け出し阻止状態にした直後の状態を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態2に係る配策物一時保持構造の抜出阻止部であり、抜け出し阻止状態にする直前の状態を示す図である。
【
図13】
図12の後、抜出阻止部を抜け出し阻止状態にしている途中の状態を示す図である。
【
図14】
図13の後、抜出阻止部を抜け出し阻止状態にした直後の状態を示す図である。
【
図15】本発明の実施形態3に係る配策物保持部を示す斜視図であり、配策物を一時保持する直前の状態を示す。
【
図16】
図15の後、配策物を一時保持した直後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0027】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る配策物一時保持構造1が適用された解体機10(建設機械)を示す。該解体機10は、高層の建物の解体作業に使用されるものであり、クローラ式の下部走行体11と、該下部走行体11の上方に旋回機構を介して取り付けられた上部旋回体12と、上部旋回体12の幅方向一側に設けられた解体作業を行う作業アタッチメント13とを備えている。
【0028】
作業アタッチメント13は、複数のアタッチメント構成体で構成された、いわゆるロングアタッチメントであり、掴み具14、アーム15、先端側ブーム16、インターブーム17及び基端側ブーム18を先端側から順に備えている。
【0029】
基端側ブーム18は、複数の分割ブーム18A~18Dを備え、各分割ブーム18A~18Dの長手方向両端には、
図2に示すように、それぞれ一対のピン連結用孔18aが設けられている。そして、分割ブーム18A~18Dの隣り合う2つ分割ブームのピン連結用孔18aを重ねて連結用ピンP1を挿通させることにより各分割ブーム18A~18Dを連結する一方、隣り合う2つ分割ブームのピン連結用孔18aに挿通された連結用ピンP1を抜き取ることにより、各分割ブーム18A~18Dを互いに分解可能になっている。
【0030】
分割ブーム18Cと分割ブーム18Dとの間には、複数の配管2(配策物)が分割ブーム18Cの上面から分割ブーム18Dの上面に亘って配策され、各配管2の一端側は、ブロック形状をなす結束体20(被保持部)にて一体に束ねられている(
図10参照)。尚、分割ブーム18Cと分割ブーム18Dとの間には、その他多くの配管2が配策されているが、便宜上、
図2には記載していない。
【0031】
結束体20の外周面には、配管2の延長方向と直交する方向で、且つ、互いに反対向きに突出する一対のロックピン20aが設けられている。
【0032】
分割ブーム18Dの上面には、側面視で略L字状をなす一対の取付プレート18bが分割ブーム18Dの幅方向に所定の間隔をあけて立設され、各取付プレート18bの外側面には、分割ブーム18Dから上部旋回体12側に延びる配管(図示せず)の各端部を所定の数毎に集約した第1接続部18cがそれぞれ取り付けられている。
【0033】
第1接続部18cは、上下に離間して配置され、上下方向に延びる回動軸心周りに回動可能な一対の回動プレート18dと、側面視で略U字状をなし、各端部が各回動プレート18dに固定されたハンドルレバー18eとを備え、該ハンドルレバー18eを操作することにより、各回動プレート18dが回動するようになっている。
【0034】
そして、各回動プレート18dには、回動軸心周りに円弧状に延びて一端が外周縁部に開放するガイド溝18fが形成され、結束体20の各ロックピン20aが各回動プレート18dのガイド溝18fに入り込むようにハンドルレバー18eを一方側に操作して各回動プレート18dを回動させると、分割ブーム18Dから上部旋回体12側に延びる配管(図示せず)に結束体20に束ねられた各配管2の一端側が一度に接続される一方、ハンドルレバー18eを他方側に操作して各回動プレート18dを回動させると、結束体20の各ロックピン20aが各回動プレート18dのガイド溝18fから抜け出るとともに、分割ブーム18Dより上部旋回体12側に延びる配管(図示せず)から各配管2の一端側が一度に取り外されるようになっている。
【0035】
つまり、各配管2の一端は、分割ブーム18Dの表面に着脱可能に固定されるようになっている。
【0036】
分割ブーム18Cの上面には、
図3に示すように、当該分割ブーム18Cの本体部分から所定の間隔をあけて上方に位置するとともに分割ブーム18Cの幅方向に略帯板状に延びる第2接続部19が配設されている。
【0037】
第2接続部19の下面には、各配管2の他端側が固定され、当該各配管2の他端は、分割ブーム18Cからインターブーム17側に延びる配管(図示せず)の各端部にそれぞれ接続されている。つまり、各配管2の他端は、分割ブーム18Cの表面に固定されている。
【0038】
第2接続部19上面における長手方向の各端部寄りの位置には、それぞれ配策物保持部3が配設されている。
【0039】
すなわち、各配策物保持部3は、分割ブーム18Cの上面で、且つ、当該分割ブーム18Cの側方に設けられている。
【0040】
配策物保持部3は、
図4に示すように、第2接続部19の上面に固定され、分割ブーム18Cの長手方向に見て略L字状をなす支持プレート4(支持板部)と、金属板を略U字状に折り曲げて形成された保持フレーム5(被挿入部)とを備えている。
【0041】
支持プレート4の上下に延びる板状部分には、
図5及び
図6に示すように、一対のガイド孔4aが分割ブーム18Cの長手方向に所定の間隔をあけて形成されている。
【0042】
各ガイド孔4aは、上端(一端)から下端(他端)に向かうにつれて互いに接近する湾曲形状をなしている。具体的には、一方のガイド孔4aは、他方のガイド孔4aの上端を中心とした一定半径の円弧状に延びる形状をなす一方、他方のガイド孔4aは、一方のガイド孔4aの上端を中心とした一定半径の円弧状に延びる形状をなしている。
【0043】
保持フレーム5は、互いに所定の間隔をあけて分割ブーム18Cの幅方向に平行に延びる帯板状をなす一対の取付板部5aと、各取付板部5aの一端を橋絡する帯板状をなす連結部5bとを備えている。
【0044】
両取付板部5aの間隔は、結束体20におけるロックピン20aの突出方向の寸法に対応しており、結束体20を配管2の延長方向で、且つ、取付板部5aの幅方向に移動させながら両取付板部5aの間に挿入可能になっている。
【0045】
各取付板部5aには、当該取付板部5aの幅方向に延びて一端が取付板部5aの外周縁部に開放するスリット部5cが形成され、両取付板部5aの間に結束体20を挿入すると、各ロックピン20aが各スリット部5cにその一端開放部分からそれぞれ進入するようになっている。
【0046】
各取付板部5aの外側面には、一対の突出板部8が取付板部5aの幅方向においてスリット部5cを挟んだ位置に対向して突設されている。
【0047】
各突出板部8には、板厚方向に貫通する挿通孔8aがそれぞれ形成され、各挿通孔8aの内周縁部の一部には、切欠凹部8bが互いに対応する位置に形成されている。
【0048】
両挿通孔8aには、
図7及び
図8に示すように、略剣形状をなす棒部材9を挿入可能になっている。該棒部材9は、先端が略半球状をなす丸棒部9aと、該丸棒部9aの基端寄りの外周面に設けられ、外径が挿通孔8aよりも大きい鍔部9bと、丸棒部9aの先端寄りの外周面に設けられたブロック形状をなす突起部9cとを備えている。
【0049】
該突起部9cの断面は、切欠凹部8bの断面に対応する形状をなしていて、鍔部9bと突起部9cとの間の寸法は、両突出板部8間の寸法よりも長くなるよう設定されている。
【0050】
そして、両突出板部8と棒部材9とで本発明の抜出阻止部30を構成しており、両取付板部5aの間に結束体20を挿入し、且つ、各スリット部5cに各ロックピン20aを進入させた状態において、突起部9cを切欠凹部8bに対応させながら棒部材9をその先端側から各挿通孔8aに順に挿通させて棒中心線周りに回転させると、突起部9cが切欠凹部8bに対応しない位置になって棒部材9が各挿通孔8aから外れなくなり、棒部材9が両突出板部8を橋絡するようになっている。そして、棒部材9は、各スリット部5cに位置する各ロックピン20aが後退動作時に干渉する位置となるようになっている。
【0051】
すなわち、抜出阻止部30は、各スリット部5cの近傍に設けられ、ロックピン20aがスリット部5cの一端開放部分から抜け出すのを阻止するようになっている。
【0052】
連結部5bにおける各取付板部5aが設けられた側とは反対側の面には、
図5及び
図6に示すように、一対のボルト6(ガイド部材)が両取付板部5aの並設方向に所定の間隔をあけた状態で、且つ、連結部5bから同方向に突出する姿勢で螺合連結されている。
【0053】
保持フレーム5は、各ボルト6を支持プレート4の各ガイド孔4aに挿通させた状態で連結部5bに螺合させることにより、支持プレート4に固定されるようになっている。そして、支持プレート4と各ボルト6とで本発明の姿勢変更手段7を構成しており、各ボルト6の螺合状態を緩めた状態で各ガイド孔4aが各ボルト6を案内することにより、保持フレーム5の分割ブーム18Cに対する姿勢を変更することができるようになっている。
【0054】
次に、
図9乃至
図11に示すように、例えば、解体機10を作業現場まで運搬する際において作業アタッチメント13における分割ブーム18Cと分割ブーム18Dとを分解する場合の作業について詳述する。
【0055】
作業者は、分割ブーム18Cと分割ブーム18Dとを連結する連結用ピンP1を各ピン連結用孔18aから抜き取って分割ブーム18Cと分割ブーム18Dとを分解する。
【0056】
次に、作業者は、ハンドルレバー18eを操作して各回動プレート18dを回動させることにより、分割ブーム18Dより上部旋回体12側に延びる配管(図示せず)から各配管2の一端側を一度に取り外す。
【0057】
一方、作業者は、配策物保持部3における各ボルト6を緩めるとともに、各ボルト6を各ガイド孔4aに沿って移動させることにより、保持フレーム5の姿勢を所望の姿勢に変更する。
【0058】
しかる後、作業者は、結束体20を把持するとともに両取付板部5aの間に挿入して各スリット部5cに各ロックピン20aを進入させた後、各突出板部8の挿通孔8aに棒部材9を挿通させる。すると、各ロックピン20aが棒部材9によって各スリット部5cから抜け出ることが出来なくなり、結束体20が分割ブーム18Cに一時的に保持される。
【0059】
このように、本発明の実施形態1によると、分割ブーム18Cと分割ブーム18Dとを分解した時に分割ブーム18Dから取り外した各配管2の一端を周囲に干渉物が少ない分割ブーム18Cの上面において保持するようになる。したがって、各配管2を保持する領域を広く確保することができるので、各配管2の数や大きさ、種類等に関係なく、取り外した全ての配管2の一端を分割ブーム18Cに一時的に保持することができる。
【0060】
また、各配管2の一端を保持する配策物保持部3が分割ブーム18Cの上面にあるので、分解した分割ブーム18Cを車両で輸送する際に配策物保持部3が車両から大きくはみ出すことがない。したがって、分解した分割ブーム18Cを運び易くすることができる。
【0061】
また、取り外した各配管2の一端を保持する配策物保持部3が分割ブーム18Cの上面に設けられていて、特許文献1の如き作業アタッチメント13を分解するときにのみ持ち出して使用する配策物取付ハンガを用いる必要が無くなるので、作業者が配管2の一時保持作業を効率的に行うことができる。
【0062】
また、配策物保持部3が分割ブーム18Cの上面側方に位置しているので、配管2の一端側を配策物保持部3に保持させる作業者の作業を分割ブーム18Cの側方の位置で行うことが可能になる。したがって、作業者が分割ブーム18Cの上面にまで移動する作業が無くなるので、作業者は配管2を一時的に保持する作業を容易に行うことができる。
【0063】
また、各配管2の一端側は結束体20で束ねられているので、配策物保持部3が結束体20を保持すると、複数の配管2の一端側がまとまった状態で一度に保持されるようになる。したがって、配管2が複数ある場合における作業者による配管2の分割ブーム18Cへの取付作業を容易に行うことができる。
【0064】
また、結束体20の保持フレーム5への挿入動作により各スリット部5cに各ロックピン20aが進入するとともに、当該各ロックピン20aによって配策物保持部3に対する結束体20の位置が決まるようになる。したがって、結束体20の配策物保持部3への取付操作が簡単になり、作業者は、結束体20の配策物保持部3への取付作業を安全、且つ、容易に行うことができる。また、配策物保持部3に対する結束体20の位置決め用の各ロックピン20aと各スリット部5cとを利用して結束体20を配策物保持部3に固定できるので、安価な構造にすることができる。
【0065】
また、各ロックピン20aを各スリット部5cに進入させた後、各突出板部8に設けられた挿通孔8aに棒部材9を挿通させるという簡単な操作で配策物保持部3に対して結束体20が固定されるようになる。したがって、作業者は、分割ブーム18C周りにおいてさらに安全、且つ、容易に作業を行うことができる。
【0066】
また、姿勢変更手段7によって保持フレーム5の姿勢を変更可能であるので、当該保持フレーム5への結束体20の挿入位置を作業者の所望する位置や、配管2の硬さや長さ或いは最小曲げR等の個体差に応じた最適な位置に変更できるようになり、作業者における配策物保持部3に対する結束体20の取付作業をさらに簡単にすることができる。
【0067】
また、姿勢変更手段7は、一方のガイド孔4aの上端に位置する一方のボルト6を中心に保持フレーム5を回動させると、他方のガイド孔4aがその下端側に他方のボルト6を案内して保持フレーム5への結束体20の挿入位置が変わるようになる。一方、他方のガイド孔4aの上端に位置する他方のボルト6を中心に保持フレーム5を回動させると、一方のガイド孔4aがその他端側に一方のボルト6を案内して保持フレーム5への結束体20の挿入位置が変わるようになる。このように、保持フレーム5への結束体20の挿入位置を細かく設定することができ、使い勝手の良い配策物一時保持構造1にすることができる。
【0068】
《発明の実施形態2》
図12乃至
図14は、本発明の実施形態2の抜出阻止部30を示す。この実施形態2では、抜出阻止部30の一部構造が実施形態1と異なっている以外は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0069】
実施形態2の棒部材9には、実施形態1の如き突起部9cは設けられておらず、先端側に棒中心線と直交する方向に延びる貫通孔9dが形成されている。
【0070】
また、実施形態2の抜出阻止部30は、リンチピン40を備えている。該リンチピン40は、略ペン形状をなす細棒部40aと、該細棒部40aの基端に設けられ、外形が挿通孔8aよりも大きい略扇形の枠状をなすリング部40bとを備え、該リング部40bは、細棒部40aの棒中心と直交する方向に延びる回動軸心周りに回動可能になっている。
【0071】
そして、棒部材9を両突出板部8の各挿通孔8aに挿通させた状態で貫通孔9dにリンチピン40の細棒部40aを挿通するとともに、リング部40bを回動させて棒部材9の先端側にリング部40bを外嵌合させることにより、棒部材9が各挿通孔8aから外れなくなるようになっている。
【0072】
以上より、本発明の実施形態2によると、抜出阻止部30の構造にリンチピン40を用いる構成にしても、実施形態1と同様に、ロックピン20aをスリット部5cから抜け出ないようにして結束体20を保持フレーム5に取り付けることができる。
【0073】
《発明の実施形態3》
図15及び
図16は、本発明の実施形態3の配策物保持部3を示す。この実施形態3では、保持フレーム5の一部構造が実施形態1と異なっている以外は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0074】
実施形態3の保持フレーム5における各取付板部5aの外側面には、実施形態1の如き突出板部8が設けられていない。
【0075】
一方、実施形態3の各取付板部5aにおけるスリット部5cは、略J字状をなす形状をなしており、取付板部5aの幅方向に延びて一端が取付板部5aの外周縁部に開放する一方、他端が取付板部5aの中途部に位置する第1直線部5dと、該第1直線部5dの他端から当該第1直線部5dとの間の角度が鋭角となるように延びてその延出端が取付板部5aの中途部に位置する第2直線部5eとで構成されている。
【0076】
第2直線部5eは、本発明の実施形態3における抜出阻止部30を構成しており、取付板部5aの幅方向一端側から当該両取付板部5aの間に結束体20を挿入し、且つ、各スリット部5cの第1直線部5dに結束体20の各ロックピン20aを進入させた後、結束体20を後退させて各スリット部5cの第2直線部5eに各ロックピン20aを進入させることにより、各ロックピン20aが各スリット部5cから抜け出なくなって配策物保持部3に対して結束体20が固定されるようになっている。
【0077】
すなわち、実施形態3の抜出阻止部30は、各スリット部5cに設けられ、ロックピン20aがスリット部5cの一端開放部分から抜け出すのを阻止するようになっている。
【0078】
以上より、本発明の実施形態3によると、作業者は、配策物保持部3に対する結束体20の取付作業を簡単に行うことができ、しかも、配策物保持部3に対する結束体20の取付構造を簡単で、且つ、安価なものにすることができる。
【0079】
尚、本発明の実施形態1~3の配策物一時保持構造1は、配策物保持部3にて配管2の一端を一時的に保持するようになっているが、電気ゲーブル等が分割ブーム18Cと分割ブーム18Dとの間に亘って設けられている場合であっても電気ケーブル等の一端側も一時的に保持することができる。
【0080】
また、本発明の実施形態1~3では、配策物保持部3が複数の配管2の一端側を束ねた結束体20を保持するようになっているが、1つの配管2の一端を保持するような構成であってもよい。
【0081】
また、本発明の実施形態1~3では、抜出阻止部30が各取付板部5aに設けられているが、いずれか一方にだけ設けられた構成であってもよい。
【0082】
また、本発明の実施形態1~3の保持フレーム5は、U字状をなしているが結束体20を挿入できるのであれば他の形状であってもよく、例えば、両端が開口する筒状をなす構造であってもよいし、一方が開口する有底筒状をなすような構造のものであってもよい。
【0083】
また、本発明の実施形態1~3の配策物保持部3は、分割ブーム18Cと分割ブーム18Dとを分割するときのために設けられているが、分割ブーム18Aと分割ブーム18Bとを分割するときのために設けてもよいし、例えば、アーム15と先端側ブーム16との間に配策物が設けられていて、アーム15と先端側ブーム16とを分割するときのために設けてもよい。
【0084】
また、本発明の実施形態1,2では、棒部材9は断面が円形状であるが、これに限らず、楕円形状、四角形状、六角形状など他の任意の形状であってもよい。
【0085】
また、本発明の実施形態2では、棒部材9が突出板部8の挿通孔8aから外れるのを防ぐためにリンチピン40を用いているが、これに限らず、例えば、スナップピンやシャフトロックピン等を用いる構成であってもよい。
【0086】
また、本発明の実施形態3では、スリット部5cがJ字状に延びる形状をなしているが、進入させたロックピン20aが抜け出ないようにできる形状であれば、その他の形状であってもよく、例えば、N字状に延びる形状であってもよい。
【0087】
尚、本発明の実施形態1~3に係る配策物一時保持構造1は、解体機10以外の建設機械にも適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 配策物一時保持構造
2 配管(配策物)
3 配策物保持部
4 支持プレート(支持板部)
4a ガイド孔
5 保持フレーム(被挿入部)
5c スリット部
5d 第1直線部
5e 第2直線部
6 ボルト(ガイド部材)
7 姿勢変更手段
8 突出板部
8a 挿通孔
9 棒部材
10 解体機(建設機械)
13 作業アタッチメント
18C,18D 分割ブーム
20 結束体(被保持部)
20a ロックピン
30 抜出阻止部