(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138025
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】オイルフィルタ
(51)【国際特許分類】
F01M 11/03 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
F01M11/03 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037793
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】大橋 義広
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015BG01
3G015DA07
(57)【要約】
【課題】長期使用後のガスケットのシール面圧の低下による油漏れを防止することができるオイルフィルタを提供する。
【解決手段】本オイルフィルタ1Aは、ハウジング3を備え、ハウジングの底部3aには、クロージャープレート17が固定されており、クロージャープレートの底面側には、ガスケット27が装着されている。そして、ハウジングの底部とクロージャープレートのガスケットの装着部17cとの間には隙間Sが形成されており、エンジン31にハウジングを締結する際に、その締結力によりクロージャープレートが隙間内でハウジングの底部側に向かうように撓み変形する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その底部の中央側にエンジンに締結可能なネジ部を有するハウジングを備え、前記ハウジングの底部には、前記ネジ部を囲むようにクロージャープレートが固定されており、前記クロージャープレートの底面側には、前記エンジンの座面との間をシールするリング状のガスケットが装着されているオイルフィルタであって、
前記ハウジングの底部と前記クロージャープレートの前記ガスケットの装着部との間には隙間が形成されており、
前記エンジンに前記ハウジングを締結する際に、その締結力により前記クロージャープレートが前記隙間内で前記ハウジングの底部側に向かうように撓み変形することを特徴とするオイルフィルタ。
【請求項2】
前記クロージャープレートには、その撓み変形を容易にする脆弱部が設けられている請求項1に記載のオイルフィルタ。
【請求項3】
前記エンジンに前記ハウジングを締結する際に、前記クロージャープレートが前記ハウジングの底部に当接して撓み変形が規制される請求項1又は2に記載のオイルフィルタ。
【請求項4】
前記ガスケットは、その軸方向に沿う断面が矩形に形成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のオイルフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルフィルタに関し、さらに詳しくは、エンジンに組み付けられてオイルをろ過するオイルフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のオイルフィルタとして、エンジンに組み付けられてオイルをろ過するものが一般に知られている(例えば、特許文献1、2等を参照)。これら特許文献1及び2には、例えば、
図4に示すように、ハウジング103の底部103aを構成してエンジン131に締結可能なリィンフォースプレート112を備え、リィンフォースプレート112には、クロージャープレート117が固定119されており、クロージャープレート117の底面側には、エンジン131の座面131aとの間をシールするリング状のガスケット27が装着されているオイルフィルタ101が記載されている。このオイルフィルタ101では、リィンフォースプレート112とクロージャープレート117のガスケット27の装着部117cとが隙間なく当接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-337844号公報
【特許文献2】特開2014-169653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のオイルフィルタ101では、リィンフォースプレート112とクロージャープレート117のガスケット27の装着部117cとが隙間なく当接しているので、長期使用後にガスケット27が変形(ヘタリ変形)した場合に、シール面圧が低下して油漏れが生じる恐れがある。
【0005】
ここで、ガスケットとしては、例えば、断面矩形状の角型ガスケット27(
図5(a)参照)や先端側がR状に形成された丸型ガスケット28(
図5(c)参照)が知られている。この角型ガスケット27は、チューブ体33を輪切りにすることで得られる(
図5(b)参照)ため、生産性に優れる。一方、丸型ガスケット28は、1個ずつ成形する必要があり、生産性が低い。そのため、コストダウン等の観点から、角型ガスケット27を採用することが望まれる。
【0006】
しかしながら、角型ガスケット27は、丸型ガスケット28に比べて、圧縮変形し難い形状である。そして、クロージャープレート117がエンジン131の座面131aに着座しない構成(メタルタッチしない構成)のオイルフィルタ101においては、組付時の締付量は、作業者ごとの判断に依るためバラツキ易い。このため、角型ガスケット27の圧縮量が不十分となり、上述の問題(すなわち、ガスケット27のシール面圧の低下による油漏れ)の可能性が高まる。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、長期使用後のガスケットのシール面圧の低下による油漏れを防止することができるオイルフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、その底部の中央側にエンジンに締結可能なネジ部を有するハウジングを備え、前記ハウジングの底部には、前記ネジ部を囲むようにクロージャープレートが固定されており、前記クロージャープレートの底面側には、前記エンジンの座面との間をシールするリング状のガスケットが装着されているオイルフィルタであって、前記ハウジングの底部と前記クロージャープレートの前記ガスケットの装着部との間には隙間が形成されており、前記エンジンに前記ハウジングを締結する際に、その締結力により前記クロージャープレートが前記隙間内で前記ハウジングの底部側に向かうように撓み変形することを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記クロージャープレートには、その撓み変形を容易にする脆弱部が設けられていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記エンジンに前記ハウジングを締結する際に、前記クロージャープレートが前記ハウジングの底部に当接して撓み変形が規制されることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記ガスケットは、その軸方向に沿う断面が矩形に形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のオイルフィルタによると、ハウジングの底部とクロージャープレートのガスケットの装着部との間には隙間が形成されており、エンジンにハウジングを締結する際に、その締結力によりクロージャープレートが隙間内でハウジングの底部側に向かうように撓み変形する。これにより、長期使用後にガスケットが変形(ヘタリ変形)した場合、撓み変形したクロージャープレートが復元変形することでガスケットの適正な圧縮量が維持される。よって、長期使用後のガスケットのシール面圧の低下による油漏れを防止することができる。
【0010】
また、前記クロージャープレートに、その撓み変形を容易にする脆弱部が設けられている場合は、クロージャープレートを効果的に撓み変形させることができる。
【0011】
また、前記エンジンに前記ハウジングを締結する際に、前記クロージャープレートが前記ハウジングの底部に当接して撓み変形が規制される場合は、クロージャープレートの撓み変形量を規制することでガスケットの倒れ込みを防止できる。
【0012】
さらに、前記ガスケットは、その軸方向に沿う断面が矩形に形成されている場合は、生産性に優れ、安価な角型ガスケットを採用することで、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【
図1】実施例1に係るオイルフィルタを説明するための説明図であり、オイルフィルタの中心線より片側を断面とした側面図を示す。
【
図2】
図1の要部拡大図であり、(a)はエンジンへの締結前の状態を示し、(b)エンジンへの締結直後の状態を示し、(c)は長期使用後にガスケットがヘタリ変形した際の状態を示す。
【
図3】実施例2に係るオイルフィルタを説明するための説明図(要部断面図)であり、(a)はエンジンへの締結前の状態を示し、(b)エンジンへの締結直後の状態を示し、(c)は長期使用後にガスケットがヘタリ変形した際の状態を示す。
【
図4】従来のオイルフィルタを説明するための説明図(要部断面図)であり、(a)はエンジンへの締結前の状態を示し、(b)エンジンへの締結直後の状態を示す。
【
図5】一般的なガスケットを説明するための説明図であり、(a)は角型ガスケットの断面図を示し、(b)は角型ガスケットの製法を示し、(b)は丸形ガスケットの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0015】
<オイルフィルタ>
本実施形態に係るオイルフィルタは、例えば、
図1に示すように、その底部3aの中央側にエンジン31に締結可能なネジ部13を有するハウジング3を備え、ハウジング3の底部3aには、ネジ部13を囲むようにクロージャープレート17、37が固定されており、クロージャープレート17、37の底面側には、エンジン31の座面31aとの間をシールするリング状のガスケット27が装着されているオイルフィルタ1A、1Bである。そして、例えば、
図2及び
図3に示すように、ハウジング3の底部3aとクロージャープレート17、37のガスケット27の装着部17c、37cとの間には隙間Sが形成されており、エンジン31にハウジング3を締結する際に、その締結力によりクロージャープレート17、37が隙間S内でハウジング3の底部3a側に向かうように撓み変形する。
【0016】
オイルフィルタ1A、1Bの構造、大きさ等は特に問わない。このオイルフィルタ1A、1Bは、通常、
図1に示すように、ろ過エレメント2と、ろ過エレメント2を収容するハウジング3と、を備える。このハウジング3は、例えば、軸方向の一方を開口した筒状のケース11と、ケース11の開口を塞ぐように設けられるリィンフォースプレート12と、を備え、ハウジング3の底部3aは、リィンフォースプレート12により構成されることができる。
【0017】
クロージャープレート17、37の材質、形状等は特に問わない。このクロージャープレート17、37のハウジング3の底部3aに対する固定部19としては、例えば、溶接部、カシメ結合部等を採用できる。また、クロージャープレート17、37の固定部19は、例えば、
図2及び
図3に示すように、クロージャープレート17、37のガスケット27の装着部17c、37cの外周側及び/又は内周側に配置されていることができる。これらのうち、クロージャープレート17の撓み変形性等の観点から、固定部19がクロージャープレート17の装着部17cの外周側のみに配置されていることが好ましい(
図2参照)。
【0018】
クロージャープレート17、37には、例えば、
図2及び
図3に示すように、その撓み変形を容易にする脆弱部25が設けられていることができる。この脆弱部25としては、例えば、薄肉部、凹部、切欠き部等を採用できる。また、脆弱部25は、例えば、クロージャープレート17、37の周方向にわたって設けられていてもよいし、周方向に所定の角度間隔で複数設けられていてもよい。また、脆弱部25は、例えば、クロージャープレート17、37の装着部17c、37cの外周側及び/又は内周側に配置されていることができる。また、脆弱部25は、例えば、クロージャープレート17、37に形成された湾曲部18に備えられていることができる。これにより、クロージャープレート17、37を更に効果的に撓み変形させることができる。さらに、脆弱部25は、例えば、クロージャープレート17、37の板厚の10~40%(好ましくは20~30%)の厚さ分薄い板厚を有することができる。
【0019】
ガスケット27の材質、形状等は特に問わない。このガスケット27の材質としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)、シリコンゴム(SI)等のゴムを採用できる。また、ガスケット27としては、例えば、断面矩形状(断面正方形も含む。)の角型ガスケット27(
図5(a)参照)、先端側がR状に形成された丸型ガスケット28(
図5(c)参照)、先端側が山状に形成された山型ガスケット等を採用できる。これらのうち、コストダウン等の観点から、角型ガスケット27であることが好ましい。この角型ガスケット27は、例えば、チューブ体33を輪切りにして得ることができる(
図5(b)参照)。
【0020】
隙間Sの形態は特に問わない。この隙間Sは、例えば、オイルフィルタ1A、1Bのシールに必要なガスケット27の圧縮量以上の間隔c(好ましくは圧縮量と略同じ間隔c)に設定されていることができる。さらに、隙間Sの間隔cとしては、例えば、0.1~0.7mm(好ましくは0.2~0.5mm)等を採用できる。0.1mm以上であれば、ガスケット27の適正な圧縮量を維持し易く、0.7mm以下であれば、ガスケット27の倒れを抑制し易い。
なお、隙間Sを介するクロージャープレート17、37の撓み変形の開始時期は、例えば、ガスケット27の圧縮中であってもよいし、ガスケット27が必要な圧縮量で圧縮された後であってもよいし、ガスケット27が圧縮される前であってもよい。
【0021】
本オイルフィルタ1A、1Bでは、例えば、
図2及び
図3に示すように、エンジン31にハウジング3を締結する際に、クロージャープレート17、37がハウジング3の底部3aに当接して撓み変形が規制されることができる。
【0022】
なお、上記実施形態で記載した各構成の符号は、以下の実施例に記載の具体的構成との対応関係を示すものである。
【実施例0023】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「オイルフィルタ」として、エンジンに交換部品として組み付けられるスピンオン型のオイルフィルタを例示する。
【0024】
<実施例1>
本実施例に係るオイルフィルタ1Aは、
図1に示すように、ろ過エレメント2と、ろ過エレメント2を収容する筒状のハウジング3と、を備えている。このろ過エレメント2は、ひだ折り筒状のろ材4と、ろ材4の内周側を支持し且つ複数の流通孔が形成されたプロテクタ5と、を備えている。また、ろ過エレメント2は、リリーフ弁7とチェックバルブ8との間に挟持されている。さらに、ろ過エレメント2は、ハウジング3の内部空間を上流空間Saと下流空間Sbとに仕切っている。また、リリーフ弁7は、ろ過エレメント3の目詰まり時等において上流空間Saと下流空間Sbの圧力差が所定値以上となったときに、両空間Sa、Sbを連通するように作動する。
なお、ろ材4としては、不織布、織布、紙等を採用できる。さらに、ひだ折り筒状以外に、発泡体や成形体により形成されるろ材を採用してもよい。
【0025】
ハウジング3は、一方の軸端側が開口した筒状で金属製のケース11と、ケース11の開口を塞ぐように設けられた金属製のリィンフォースプレート12と、を備えている。このリィンフォースプレート12は、ハウジング3の底部3aを構成している。また、リィンフォースプレート12には、その中央側に筒状の突起12aが設けられている。この突起12aの内周側には、エンジン31のユニオンボルト31bと締結(螺合)可能なネジ部13が形成されている。また、突起12aの内側は、オイル流出口14を構成している。また、リィンフォースプレート12のオイル流出口14の外周側には、円周方向に沿って所定間隔で複数のオイル流入口15が形成されている。さらに、突起12aの外周側には、上流空間Saからオイル流入口15へ向かうオイルの流れを規制するチェックバルブ8が装着されている。
【0026】
リィンフォースプレート12の底面側には、ネジ部13(具体的に、オイル流出口14及び流入口15)を囲むように金属製のクロージャープレート17が固定されている。このクロージャープレート17は、
図2に示すように、ケース11の開口端の周縁に巻締めされる巻締め部17aと、巻締め部17aから内周側に延びてリィンフォースプレート12の底面と接する面部17bと、面部17bの内周端に連なり角型ガスケット27が装着される装着部17cと、を備えている。この面部17bには、リンフォースプレート12に固定される固定部19(具体的に、プロジェクション溶接等の溶接部19)が設けられている。また、装着部17cは、ガスケット27の軸方向の端面を支持する横壁21と、横壁21の一端に連なりガスケット27の内周面を支持する内壁22と、を備えている。
【0027】
なお、本実施例では、エンジン31への組付時にクロージャープレート17がエンジン31の座面31aに着座しない構成(メタルタッチしない構成)とする。
【0028】
クロージャープレート17には、後述する撓み変形を促進するための脆弱部25が設けられている。この脆弱部25は、その周辺の部位の板厚(例えば、0.5mm等)よりも薄い板厚(例えば、0.4mm等)を有する薄肉部により構成されている。また、脆弱部25は、クロージャープレートの周方向にわたって設けられている。また、脆弱部25は、面部17bと装着部17cとを連絡する湾曲部(R状部)18に設けられている。
【0029】
クロージャープレート17の底面側(具体的に、装着部17c)には、エンジン31の座面31aとの間をシールするリング状の角型ガスケット27が装着されている。この角型ガスケット27は、軸方向に沿う断面が矩形状に形成されている(
図5(a)参照)。
【0030】
リィンフォースプレート12とクロージャープレート17のガスケット27の装着部17c(具体的に、装着部17cの横壁21)との間には隙間Sが形成されている。この隙間Sは、エンジン31へのハウジング3の締結時に、その締結力(締結軸力)によりクロージャープレート17が撓み変形(バネ状に弾性変形)してクロージャープレート17をリィンフォースプレート12側に変位させるためのものである。具体的に、隙間Sは、オイルフィルタ1Aのシールに必要な角型ガスケット27の圧縮量と略同じ間隔c(例えば、0.2mm)に設定されている。
【0031】
次に、上記構成のオイルフィルタ1Aの作用効果について説明する。このオイルフィルタ1Aでは、エンジン31にハウジング3を締結する際に、その締結力によりクロージャープレート17が隙間S内でリィンフォースプレート12側に向かうように撓み変形(バネ状に弾性変形)し、その後、クロージャープレート17がリィンフォースプレート12の底面に当接して撓み変形が規制される(
図2(b)参照)。そして、長期使用後に、エンジン31の座面31aからの押付力によりガスケット27が変形(ヘタリ変形)した場合、撓み変形したクロージャープレート17が復元変形することでガスケット27の適正な圧縮量が維持される(
図2(c)参照)。
【0032】
なお、オイルフィルタ1Aによると、エンジン31の稼働時に、エンジン31側のオイルは、オイル流入口15からチェックバルブ8を押し上げて上流空間Saに流入する。その流入オイルは、ろ材4を通過して塵埃などの異物がろ過されてから、プロテクタ5の流通穴を通って下流空間Sbに至り、オイル流出口14を通ってエンジン31側の潤滑経路に戻される。一方、エンジン31の停止時には、チェックバルブ8により、ハウジング3内のオイルがオイル流入口15を介してエンジン31側に流れることが規制される。
【0033】
以上より、本実施例のオイルフィルタ1Aによると、ハウジング3の底部3a(即ち、リィンフォースプレート12)とクロージャープレート17のガスケット27の装着部17cとの間には隙間Sが形成されており、エンジン31にハウジング3を締結する際に、その締結力によりクロージャープレート17が隙間S内でハウジング3の底部3a側に向かうように撓み変形する。これにより、長期使用後にガスケット27が変形(ヘタリ変形)した場合、撓み変形したクロージャープレート17が復元変形することでガスケット27の適正な圧縮量が維持される。よって、長期使用後のガスケット27のシール面圧の低下による油漏れを防止することができる。その結果、ガスケット27として高コストの耐熱性に優れたゴム材質を使わずとも長期保証が可能となり、製品寿命を向上させることができる。
【0034】
また、本実施例では、クロージャープレート17には、その撓み変形を容易にする脆弱部25が設けられている。これにより、クロージャープレート17を効果的に撓み変形させることができる。
特に、本実施例では、クロージャープレート17の面部17bと装着部17cとを連絡する湾曲部18に脆弱部25が設けられている。これにより、クロージャープレート17を更に効果的に撓み変形させることができる。
【0035】
また、本実施例では、エンジン31にハウジング3を締結する際に、クロージャープレート17がハウジング3の底部3aに当接して撓み変形が規制される。このように、クロージャープレート17の撓み変形量を規制することでガスケット27の倒れ込みを防止できる。
【0036】
さらに、本実施例では、ガスケット27は、その軸方向に沿う断面が矩形に形成されている。これにより、生産性に優れ、安価な角型ガスケット27を採用することで、コストダウンを図ることができる。
【0037】
<実施例2>
次に、実施例2に係るオイルフィルタ1Bについて説明するが、実施例1に係るオイルフィルタ1Aと略同様な構成部位には同じ符号を付けて詳説を省略する。
【0038】
本実施例に係るオイルフィルタ1Bでは、
図3に示すように、リィンフォースプレート12には、ネジ部13(具体的に、オイル流出口14及び流入口15)を囲むように金属製のクロージャープレート37が固定されている。このクロージャープレート37は、ケース11の開口端の周縁に巻締めされる巻締め部37aと、巻締め部37aから内周側に延びる面部37bと、面部37bの内周端に連なり角型ガスケット27が装着される装着部37cと、装着部37cの内周端に連なりリィンフォースプレート12の底面に接する面部37dと、を備えている。この面部37dには、リンフォースプレート12に固定される固定部19が設けられている。さらに、装着部37cは、ガスケット27の軸方向の端面を支持する横壁21と、横壁21の一端に連なりガスケット27の内周面を支持する内壁22と、を備えている。
【0039】
クロージャープレート37には、後述する撓み変形を容易にする脆弱部25が設けられている。この脆弱部25は、面部37dと装着部37cとを連絡する湾曲部18に設けられている。また、クロージャープレート37の底面側(具体的に、装着部37c)には、エンジン31の座面31aとの間をシールするリング状の角型ガスケット27が装着されている。さらに、リィンフォースプレート12とクロージャープレート37のガスケット27の装着部37c(具体的に、装着部37cの横壁21)との間には隙間Sが形成されている。
【0040】
次に、上記構成のオイルフィルタ1Bの作用効果について説明する。このオイルフィルタ1Bでは、エンジン31にハウジング3を締結する際に、その締結力によりクロージャープレート37が隙間S内でリィンフォースプレート12側に向かうように撓み変形(バネ状に弾性変形)し、その後、クロージャープレート37がリィンフォースプレート12の底面に当接して撓み変形が規制される(
図3(b)参照)。そして、長期使用後に、エンジン31の座面31aからの押付力によりガスケット27が変形(ヘタリ変形)した場合、撓み変形したクロージャープレート37が復元変形することでガスケット27の適正な圧縮量が維持される(
図3(c)参照)。
以上より、本実施例2のオイルフィルタ1Bによると、実施例1のオイルフィルタ1Aと略同様の作用効果を奏する。
【0041】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1、2では、脆弱部25を有するクロージャープレート17、37を例示したが、これに限定されず、例えば、脆弱部25を有さない略一様な板厚のクロージャープレート17、37としてもよい。
【0042】
また、上記実施例1、2では、撓み変形したクロージャープレート17、37がリィンフォースプレート12の底面に当接した状態で使用されるオイルフィルタ1A、1Bを例示したが、これに限定されず、例えば、撓み変形したクロージャープレート17、37がリィンフォースプレート12の底面から離間した状態で使用されるオイルフィルタ1A、1Bとしてもよい。
【0043】
また、上記実施例1、2では、角型ガスケット27を例示したが、これに限定されず、例えば、丸型ガスケット、山形ガスケットを採用してもよい。
【0044】
また、上記実施例1、2では、クロージャープレート17、37がエンジン31の座面31aに着座しない状態で使用されるオイルフィルタ1A、1Bを例示したが、これに限定されず、例えば、クロージャープレート17、37がエンジン31の座面31aに着座した状態で使用されるオイルフィルタ1A、1Bとしてもよい。
【0045】
また、上記実施例1、2では、リィンフォースプレート12に溶接されるクロージャープレート17、37を例示したが、これに限定されず、例えば、リィンフォースプレート12のオイル流入口15にカシメ結合されるクロージャープレート17、37としてもよい。
【0046】
さらに、上記実施例1、2では、円盤状体(リィンフォースプレート12)により構成されるハウジング3の底部3aを例示したが、これに限定されず、例えば、一方の軸端側を開口した筒状体により構成されるハウジング3の底部3aとしてもよい。
【0047】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0048】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
1A,1B;オイルフィルタ、3;ハウジング、3a;ハウジングの底部、12;リィンフォースプレート、13;ネジ部、17,37;クロージャープレート、17c,37c;装着部、25;脆弱部、27;角型ガスケット、S;隙間。