(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138039
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】家畜体重評価プログラムとそのシステム
(51)【国際特許分類】
G01G 17/08 20060101AFI20220914BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20220914BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220914BHJP
G06Q 50/02 20120101ALI20220914BHJP
【FI】
G01G17/08
A01K29/00 D
A01K29/00 A
G06T7/00 350C
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037810
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】509164164
【氏名又は名称】地方独立行政法人山口県産業技術センター
(71)【出願人】
【識別番号】391016082
【氏名又は名称】山口県
(71)【出願人】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】阿野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直弥
(72)【発明者】
【氏名】水上 嘉樹
(72)【発明者】
【氏名】原田 宏明
(72)【発明者】
【氏名】河上 実夫
【テーマコード(参考)】
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L096AA03
5L096AA06
5L096AA09
5L096BA03
5L096BA08
5L096CA18
5L096DA02
5L096FA66
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】家畜の全個体数に対する体重測定を個別に実施することなく、個別の体重を非接触でメンテナンスも基本的には不要で効率的に精度高く評価することが可能な家畜体重評価システム及び家畜体重評価プログラムを提供する。
【解決手段】家畜体重評価システム1aは、家畜を上方から測距する距離センサ6と、2.5次元家畜画像学習データ23aを生成する画像処理部7と、個体毎の2.5次元家畜画像学習データ23aを得る個体分離部8と、学習済の家畜体重評価モデル26aと、この家畜体重評価モデル26aによって評価された個体毎の家畜の体重を家畜体重評価データ35aとして出力する評価部10を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって、複数の家畜の体重を個体毎に評価するために実行されるプログラムであって、複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離学習データを用いて生成された2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データと、前記家畜の体重を個体毎に測定して得た家畜体重教師データと、を入力して学習させた学習済の家畜体重評価モデルを備え、複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離データを用いて生成された2.5次元家畜画像データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記家畜体重評価モデルに入力して個体毎の前記家畜の体重を評価し、個体毎の前記家畜の前記体重を家畜体重評価データとして出力することを特徴とする家畜体重評価プログラム。
【請求項2】
コンピュータによって、複数の家畜の体重を個体毎に評価するために実行されるプログラムであって、複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離学習データを用いて生成された2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データと、前記家畜の体重を個体毎に測定して所望の幅で分別した家畜体重クラス教師データと、を入力して学習させた学習済の家畜体重クラス評価モデルを備え、複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離データを用いて生成された2.5次元家畜画像データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記家畜体重クラス評価モデルに入力して個体毎の前記家畜の体重クラスを評価し、個体毎の前記家畜の前記体重クラスを家畜体重クラス評価データとして出力することを特徴とする家畜体重評価プログラム。
【請求項3】
学習済の前記家畜体重評価モデルは、ニューラルネットワークを用いた深層学習によって構築されたモデル又は回帰分析によって構築されたモデルであることを特徴とする請求項1記載の家畜体重評価プログラム。
【請求項4】
学習済の前記家畜体重クラス評価モデルは、ニューラルネットワークを用いた深層学習によって構築されたモデルであることを特徴とする請求項2記載の家畜体重評価プログラム。
【請求項5】
前記家畜距離学習データ及び前記家畜距離データはいずれも前記家畜が座位の状態で測距された距離に関するデータであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の家畜体重評価プログラム。
【請求項6】
複数の家畜の体重を個体毎に評価するために、複数の前記家畜を上方から測距する距離センサと、前記距離センサによって得た家畜距離学習データから2.5次元家畜画像学習データを生成する画像処理部と、前記2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データを得る個体分離部と、個体毎に分離された前記2.5次元家畜画像学習データと個体毎に測定して得た家畜体重教師データとを入力して学習させた学習済の家畜体重評価モデルと、を備え、複数の前記家畜を前記距離センサによって上方から測距した家畜距離データを用いて前記画像処理部で2.5次元家畜画像データを生成し、この2.5次元家畜画像データを前記個体分離部で個別の個体に分離して個体毎の前記2.5次元家畜画像データを得て、この個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記家畜体重評価モデルに入力して個体毎の前記家畜の体重を評価し、評価された個体毎の前記家畜の前記体重を家畜体重評価データとして出力する評価部と、を有することを特徴とする家畜体重評価システム。
【請求項7】
複数の家畜の体重を個体毎に評価するために、複数の前記家畜を上方から測距する距離センサと、前記距離センサによって得た家畜距離学習データから2.5次元家畜画像学習データを生成する画像処理部と、前記2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データを得る個体分離部と、個体毎に分離された前記2.5次元家畜画像学習データと個体毎に測定して得た体重を所望の幅で分別した家畜体重クラス教師データとを入力して学習させた学習済の家畜体重クラス評価モデルと、を備え、複数の前記家畜を前記距離センサによって上方から測距した家畜距離データを用いて前記画像処理部で2.5次元家畜画像データを生成し、この2.5次元家畜画像データを前記個体分離部で個別の個体に分離して個体毎の前記2.5次元家畜画像データを得て、この個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記家畜体重クラス評価モデルに入力して個体毎の前記家畜の体重クラスを評価し、評価された個体毎の前記家畜の前記体重クラスを家畜体重クラス評価データとして出力する評価部と、を有することを特徴とする家畜体重評価システム。
【請求項8】
学習済の前記家畜体重評価モデルは、ニューラルネットワークを用いた深層学習によって構築されたモデル又は回帰分析によって構築されたモデルであることを特徴とする請求項6記載の家畜体重評価システム。
【請求項9】
学習済の前記家畜体重クラス評価モデルは、ニューラルネットワークを用いた深層学習によって構築されたモデルであることを特徴とする請求項7記載の家畜体重評価システム。
【請求項10】
前記家畜距離学習データ及び前記家畜距離データはいずれも前記家畜が座位の状態で測距された距離に関するデータであることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の家畜体重評価システム。
【請求項11】
コンピュータによって、複数の家畜の体重を雌雄別個体毎に評価するために実行されるプログラムであって、撮像センサによって認識可能で雌雄判別可能なタグを装着した複数の前記家畜を上方から前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像学習データと複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離学習データを用いて生成された雌雄別の2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データと、前記家畜の体重を雌雄別個体毎に測定して得た家畜体重教師データと、を入力して学習させた学習済の雌雄別家畜体重評価モデルを備え、雌雄判別可能な前記タグを装着した複数の前記家畜を上方から前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像データと複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離データを用いて雌雄別に生成された2.5次元家畜画像データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記雌雄別家畜体重評価モデルに入力して雌雄別個体毎の前記家畜の体重を評価し、雌雄別個体毎の前記家畜の前記体重を家畜体重評価データとして出力することを特徴とする家畜体重評価プログラム。
【請求項12】
コンピュータによって、複数の家畜の体重を雌雄別個体毎に評価するために実行されるプログラムであって、撮像センサによって認識可能で雌雄判別可能なタグを装着した複数の前記家畜を上方から前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像学習データと複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離学習データを用いて生成された雌雄別の2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データと、前記家畜の体重を雌雄別個体毎に測定して所望の幅で分別した家畜体重クラス教師データと、を入力して学習させた学習済の雌雄別家畜体重クラス評価モデルを備え、雌雄判別可能な前記タグを装着した複数の前記家畜を上方から前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像データと複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離データを用いて雌雄別に生成された2.5次元家畜画像データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記雌雄別家畜体重クラス評価モデルに入力して雌雄別個体毎の前記家畜の体重クラスを評価し、雌雄別個体毎の前記家畜の前記体重クラスを家畜体重クラス評価データとして出力することを特徴とする家畜体重評価プログラム。
【請求項13】
複数の家畜の体重を雌雄別個体毎に評価するために、雌雄判別が可能なタグを装着した複数の前記家畜を認識可能に上方から撮影する撮像センサと、前記家畜を上方から測距する距離センサと、前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像学習データと前記距離センサによって得た家畜距離学習データを用いて雌雄別の2.5次元家畜画像学習データを生成する画像処理部と、雌雄別の前記2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データを得る個体分離部と、雌雄別の個体毎に分離された前記2.5次元家畜画像学習データと雌雄別の個体毎に測定して得た雌雄別個体毎の家畜体重教師データとを入力して学習させた学習済の雌雄別家畜体重評価モデルと、を備え、雌雄判別可能な前記タグを装着した複数の前記家畜を上方から前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像データと複数の前記家畜を前記距離センサによって上方から測距した家畜距離データとを用いて前記画像処理部で雌雄別の2.5次元家畜画像データを生成し、この雌雄別の2.5次元家畜画像データを前記個体分離部で個別の個体に分離して雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像データを得て、この雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記雌雄別家畜体重評価モデルに入力して雌雄別個体毎の前記家畜の体重を評価し、評価された雌雄別個体毎の前記家畜の前記体重を家畜体重評価データとして出力する評価部と、を有することを特徴とする家畜体重評価システム。
【請求項14】
複数の家畜の体重を雌雄別個体毎に評価するために、雌雄判別が可能なタグを装着した複数の前記家畜を認識可能に上方から撮影する撮像センサと、前記家畜を上方から測距する距離センサと、前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像学習データと前記距離センサによって得た家畜距離学習データを用いて雌雄別の2.5次元家畜画像学習データを生成する画像処理部と、雌雄別の前記2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データを得る個体分離部と、雌雄別の個体毎に分離された前記2.5次元家畜画像学習データと雌雄別の個体毎に測定して得た体重を所望の幅で分別した雌雄別家畜体重クラス教師データとを入力して学習させた学習済の雌雄別家畜体重クラス評価モデルと、を備え、雌雄判別可能な前記タグを装着した複数の前記家畜を上方から前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像データと複数の前記家畜を前記距離センサによって上方から測距した家畜距離データとを用いて前記画像処理部で雌雄別の2.5次元家畜画像データを生成し、この雌雄別の2.5次元家畜画像データを前記個体分離部で個別の個体に分離して雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像データを得て、この雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記雌雄別家畜体重クラス評価モデルに入力して雌雄別個体毎の前記家畜の体重クラスを評価し、評価された雌雄別個体毎の前記家畜の前記体重クラスを家畜体重クラス評価データとして出力する評価部と、を有することを特徴とする家畜体重評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜舎に複数の個体が収容されている家畜の体重を省労力で効率的に精度よく、しかも家畜に対して低侵襲で評価する家畜体重評価プログラムとそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
畜舎で飼育される鶏やアヒルをはじめとする鳥類や豚やめん羊をはじめとする哺乳類等の家畜は収容される数も多く発育状況を把握するための個体の体重測定には時間と労力を必要とする。
そこで、従来様々な方法を用いて省労力で効率的に体重を測定あるいは推定する方法が開示されてきた。
例えば、特許文献1には、「ニワトリの体重算出方法とニワトリの成長監視システム」という名称で、警戒心を抱かせることなく、個体の体重をリアルタイムに測定するため、シート状圧力センサに乗っているニワトリの足の圧力分布に基づいて体重を算出する技術が開示されている。この技術によると、圧力分布を測定することで体重を算出するので、ニワトリが静止して片足だけでニワトリがシート状圧力センサ上に乗っていれば、圧力分布を測定して体重を算出することが可能である。また、低侵襲でありニワトリに警戒心を抱かせることがないという特徴を有している。
また、特許文献2には、「動物体の体重推定装置、及び体重推定方法」という名称で、三次元計測によって動物体の寸法を高精度に測定し、得られた寸法データによる推定される体重の精度を向上させる技術が開示されている。この技術によれば、姿勢で静止した動物体の上方、左側方、右側方の少なくとも一つの方向から赤外帯域のランダムな光点を投光し、動物体により反射された反射点を撮像して動物体の三次元点群データを取得し、取得した三次元点群データを用いて動物体の断面形状を楕円形状に近似し、近似された楕円形状から動物体の特徴的な寸法データを抽出し、これを体重計算式に代入して精度の向上を図った動物体の体重を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/194350号
【特許文献2】特開2014-44078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される発明では、シート状の圧力センサの設置が必要であり、その圧力センサ上にはニワトリの他、ニワトリの糞や餌が乗ってしまうとそれらの圧力がノイズとなる可能性があり、精度が鈍るおそれがある。また、シート状の圧力センサはニワトリに対して接触していることから、接触によるダメージや故障も考える必要があり、その作動確認を含めたメンテナンスも必要で、労力や時間も必要であるという課題があった。
また、特許文献2に開示される発明では、大型の哺乳動物が家畜の場合にはその頭数も比較的少なく、三次元計測器を用いた点群データの取得には労力や時間が必要ないとも考えらえるものの、小型や中型の家畜の場合には羽数や頭数も一般的には大型の家畜よりも多く、すべての家畜に対して三次元計測を実行するための労力と時間が膨大となり、現実的ではないという課題があった。
【0005】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、家畜の全個体数に対する体重測定を個別に実施することなく、個別の体重を非接触で侵襲性が低く、メンテナンスも基本的には不要で効率的に精度高く評価することが可能な家畜体重評価システム及び家畜体重評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明である家畜体重評価プログラムは、コンピュータによって、複数の家畜の体重を個体毎に評価するために実行されるプログラムであって、複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離学習データを用いて生成された2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データと、前記家畜の体重を個体毎に測定して得た家畜体重教師データと、を入力して学習させた学習済の家畜体重評価モデルを備え、複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離データを用いて生成された2.5次元家畜画像データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記家畜体重評価モデルに入力して個体毎の前記家畜の体重を評価し、個体毎の前記家畜の前記体重を家畜体重評価データとして出力することを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価プログラムでは、個体毎の2.5次元家畜画像学習データと家畜体重教師データを用いて学習させて得られた学習済の家畜体重評価モデルが、個体毎の2.5次元家畜画像データの入力によって家畜体重評価データを出力するように作用する。
【0007】
第2の発明である家畜体重評価プログラムは、コンピュータによって、複数の家畜の体重を個体毎に評価するために実行されるプログラムであって、複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離学習データを用いて生成された2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データと、前記家畜の体重を個体毎に測定して所望の幅で分別した家畜体重クラス教師データと、を入力して学習させた学習済の家畜体重クラス評価モデルを備え、複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離データを用いて生成された2.5次元家畜画像データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記家畜体重クラス評価モデルに入力して個体毎の前記家畜の体重クラスを評価し、個体毎の前記家畜の前記体重クラスを家畜体重クラス評価データとして出力することを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価プログラムでは、個体毎の2.5次元家畜画像学習データと家畜体重クラス教師データを用いて学習させて得られた学習済の家畜体重クラス評価モデルが、個体毎の2.5次元家畜画像データの入力によって家畜体重クラス評価データを出力するように作用する。
【0008】
第3の発明である家畜体重評価プログラムは、第1の発明において、学習済の前記家畜体重評価モデルは、ニューラルネットワークを用いた深層学習によって構築されたモデル又は回帰分析によって構築されたモデルであることを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価プログラムにおける作用は第1の発明の作用と同様である。
【0009】
第4の発明である家畜体重評価プログラムは、第2の発明において、学習済の前記家畜体重クラス評価モデルは、ニューラルネットワークを用いた深層学習によって構築されたモデルであることを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価プログラムにおける作用は第2の発明の作用と同様である。
【0010】
第5の発明である家畜体重評価プログラムは、第1乃至第4の発明において、前記家畜距離学習データ及び前記家畜距離データはいずれも前記家畜が座位の状態で測距された距離に関するデータであることを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価プログラムにおける作用は第1乃至第4の発明の作用に加えて、家畜の測距に関するデータが座位におけるものとなるが、これは夜間家畜が睡眠をとっている状態を想定するものであり、家畜の静止状態に近いデータとしての取得が可能であり、より精度の高い測距に関するデータを得るように作用する。
なお、本願発明における座位とは、家畜が脚を折り曲げ、胸部及び腹部を下し、臥せた状態を意味している。したがって、畜舎の地面に臥せたような状態の他、畜舎内の止まり木や棚の上等でも座位の状態が生じる。
【0011】
第6の発明である家畜体重評価システムは、複数の家畜の体重を個体毎に評価するために、複数の前記家畜を上方から測距する距離センサと、前記距離センサによって得た家畜距離学習データから2.5次元家畜画像学習データを生成する画像処理部と、前記2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データを得る個体分離部と、個体毎に分離された前記2.5次元家畜画像学習データと個体毎に測定して得た家畜体重教師データとを入力して学習させた学習済の家畜体重評価モデルと、を備え、複数の前記家畜を前記距離センサによって上方から測距した家畜距離データを用いて前記画像処理部で2.5次元家畜画像データを生成し、この2.5次元家畜画像データを前記個体分離部で個別の個体に分離して個体毎の前記2.5次元家畜画像データを得て、この個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記家畜体重評価モデルに入力して個体毎の前記家畜の体重を評価し、評価された個体毎の前記家畜の前記体重を家畜体重評価データとして出力する評価部と、を有することを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価システムは第1の発明をシステムとして捉えた発明であるので、その作用は第1の発明の作用と同様である。
【0012】
第7の発明である家畜体重評価システムは、複数の家畜の体重を個体毎に評価するために、複数の前記家畜を上方から測距する距離センサと、前記距離センサによって得た家畜距離学習データから2.5次元家畜画像学習データを生成する画像処理部と、前記2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データを得る個体分離部と、個体毎に分離された前記2.5次元家畜画像学習データと個体毎に測定して得た体重を所望の幅で分別した家畜体重クラス教師データとを入力して学習させた学習済の家畜体重クラス評価モデルと、を備え、複数の前記家畜を前記距離センサによって上方から測距した家畜距離データを用いて前記画像処理部で2.5次元家畜画像データを生成し、この2.5次元家畜画像データを前記個体分離部で個別の個体に分離して個体毎の前記2.5次元家畜画像データを得て、この個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記家畜体重クラス評価モデルに入力して個体毎の前記家畜の体重クラスを評価し、評価された個体毎の前記家畜の前記体重クラスを家畜体重クラス評価データとして出力する評価部と、を有することを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価システムは第2の発明をシステムとして捉えた発明であるので、その作用は第2の発明の作用と同様である。
【0013】
第8の発明である家畜体重評価システムは、第6の発明において、学習済の前記家畜体重評価モデルは、ニューラルネットワークを用いた深層学習によって構築されたモデル又は回帰分析によって構築されたモデルであることを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価システムは第3の発明をシステムとして捉えた発明であるので、その作用は第3の発明の作用と同様である。
【0014】
第9の発明である家畜体重評価システムは、第7の発明において、学習済の前記家畜体重クラス評価モデルは、ニューラルネットワークを用いた深層学習によって構築されたモデルであることを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価システムは第4の発明をシステムとして捉えた発明であるので、その作用は第4の発明の作用と同様である。
【0015】
第10の発明である家畜体重評価システムは、前記家畜距離学習データ及び前記家畜距離データはいずれも前記家畜が座位の状態で測距された距離に関するデータであることを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価システムは第5の発明をシステムとして捉えた発明であるので、その作用は第5の発明の作用と同様である。
【0016】
第11の発明である家畜体重評価プログラムは、コンピュータによって、複数の家畜の体重を雌雄別個体毎に評価するために実行されるプログラムであって、撮像センサによって認識可能で雌雄判別可能なタグを装着した複数の前記家畜を上方から前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像学習データと複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離学習データを用いて生成された雌雄別の2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データと、前記家畜の体重を雌雄別個体毎に測定して得た家畜体重教師データと、を入力して学習させた学習済の雌雄別家畜体重評価モデルを備え、雌雄判別可能な前記タグを装着した複数の前記家畜を上方から前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像データと複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離データを用いて雌雄別に生成された2.5次元家畜画像データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記雌雄別家畜体重評価モデルに入力して雌雄別個体毎の前記家畜の体重を評価し、雌雄別個体毎の前記家畜の前記体重を家畜体重評価データとして出力することを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価プログラムでは、撮像センサによって認識可能で雌雄判別が可能なタグが家畜の雌雄を判別するように作用する。家畜によっては雌雄で同じ体積でも体重が異なることもあって、雌雄別に家畜を分別することは重要な要素となる。また、雌雄別個体毎の2.5次元家畜画像学習データと家畜体重教師データを用いて学習させて得られた学習済の雌雄別家畜体重評価モデルが、雌雄別個体毎の2.5次元家畜画像データの入力によって雌雄を分別した家畜体重評価データを出力するように作用する。
なお、雌雄判別が可能なタグとは、雌雄のいずれにも付していずれの家畜が雄でいずれの家畜が雌であるかを判別可能なタグの他、雌雄のいずれかに付して、付された家畜が雌雄のいずれかを判別可能なタグをも含む概念であるが、その判別原理は撮像センサによる撮影で判別可能であれば問わない。
【0017】
第12の発明である家畜体重評価プログラムは、コンピュータによって、複数の家畜の体重を雌雄別個体毎に評価するために実行されるプログラムであって、撮像センサによって認識可能で雌雄判別可能なタグを装着した複数の前記家畜を上方から前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像学習データと複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離学習データを用いて生成された雌雄別の2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データと、前記家畜の体重を雌雄別個体毎に測定して所望の幅で分別した家畜体重クラス教師データと、を入力して学習させた学習済の雌雄別家畜体重クラス評価モデルを備え、雌雄判別可能な前記タグを装着した複数の前記家畜を上方から前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像データと複数の前記家畜を上方から測距した家畜距離データを用いて雌雄別に生成された2.5次元家畜画像データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して得た雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記雌雄別家畜体重クラス評価モデルに入力して雌雄別個体毎の前記家畜の体重クラスを評価し、雌雄別個体毎の前記家畜の前記体重クラスを家畜体重クラス評価データとして出力することを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価プログラムでは、第11の発明と同様に撮像センサによって認識可能で雌雄判別が可能なタグが家畜の雌雄を判別するように作用する。また、雌雄別個体毎の2.5次元家畜画像学習データと家畜体重クラス教師データを用いて学習させて得られた学習済の雌雄別家畜体重クラス評価モデルが、雌雄別個体毎の2.5次元家畜画像データの入力によって雌雄を分別した家畜体重クラス評価データを出力するように作用する。
【0018】
第13の発明である家畜体重評価システムは、複数の家畜の体重を雌雄別個体毎に評価するために、雌雄判別が可能なタグを装着した複数の前記家畜を認識可能に上方から撮影する撮像センサと、前記家畜を上方から測距する距離センサと、前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像学習データと前記距離センサによって得た家畜距離学習データを用いて雌雄別の2.5次元家畜画像学習データを生成する画像処理部と、雌雄別の前記2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データを得る個体分離部と、雌雄別の個体毎に分離された前記2.5次元家畜画像学習データと雌雄別の個体毎に測定して得た雌雄別個体毎の家畜体重教師データとを入力して学習させた学習済の雌雄別家畜体重評価モデルと、を備え、雌雄判別可能な前記タグを装着した複数の前記家畜を上方から前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像データと複数の前記家畜を前記距離センサによって上方から測距した家畜距離データとを用いて前記画像処理部で雌雄別の2.5次元家畜画像データを生成し、この雌雄別の2.5次元家畜画像データを前記個体分離部で個別の個体に分離して雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像データを得て、この雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記雌雄別家畜体重評価モデルに入力して雌雄別個体毎の前記家畜の体重を評価し、評価された雌雄別個体毎の前記家畜の前記体重を家畜体重評価データとして出力する評価部と、を有することを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価システムは第11の発明をシステムとして捉えた発明であるので基本的にはその作用は第11の発明の作用と同様である。その他、システムとしては、距離センサが家畜を上方から測距するように作用し、画像処理部は雌雄別の2.5次元家畜画像学習データ及び2.5次元家畜画像データを生成するように作用し、個体分離部は雌雄別の2.5次元家畜画像学習データ及び2.5次元家畜画像データを雌雄別個体毎の画像に分離するように作用する。
【0019】
第14の発明である家畜体重評価システムは、複数の家畜の体重を雌雄別個体毎に評価するために、雌雄判別が可能なタグを装着した複数の前記家畜を認識可能に上方から撮影する撮像センサと、前記家畜を上方から測距する距離センサと、前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像学習データと前記距離センサによって得た家畜距離学習データを用いて雌雄別の2.5次元家畜画像学習データを生成する画像処理部と、雌雄別の前記2.5次元家畜画像学習データから複数の前記家畜を個別の個体に分離して雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像学習データを得る個体分離部と、雌雄別の個体毎に分離された前記2.5次元家畜画像学習データと雌雄別の個体毎に測定して得た体重を所望の幅で分別した雌雄別家畜体重クラス教師データとを入力して学習させた学習済の雌雄別家畜体重クラス評価モデルと、を備え、雌雄判別可能な前記タグを装着した複数の前記家畜を上方から前記撮像センサで撮影した雌雄判別用家畜画像データと複数の前記家畜を前記距離センサによって上方から測距した家畜距離データとを用いて前記画像処理部で雌雄別の2.5次元家畜画像データを生成し、この雌雄別の2.5次元家畜画像データを前記個体分離部で個別の個体に分離して雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像データを得て、この雌雄別個体毎の前記2.5次元家畜画像データを学習済の前記雌雄別家畜体重クラス評価モデルに入力して雌雄別個体毎の前記家畜の体重クラスを評価し、評価された雌雄別個体毎の前記家畜の前記体重クラスを家畜体重クラス評価データとして出力する評価部と、を有することを特徴とするものである。
上記構成の家畜体重評価システムは第12の発明をシステムとして捉えた発明であるので基本的にはその作用は第12の発明の作用と同様である。その他、システムとしては、第11の発明と同様である。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明である家畜体重評価プログラムは、一度に複数の家畜の距離に関するデータを取得することが可能で、しかも、個別の個体毎の体重を評価することが可能であるため効率的な体重測定とその管理が可能である。また、センサ類が家畜に接触しないため家畜にとって低侵襲性が高く、家畜にストレスを与えることもなく、また、データ測定機器に対する家畜による損傷もなく、メンテナンス性に優れている。また、客観的なデータを取得することが可能であり、作業員の熟練が不要であり、高精度の体重評価が可能である。
【0021】
第2の発明である家畜体重評価プログラムも第1の発明の効果と同様の効果を発揮することができる。
【0022】
第3の発明である家畜体重評価プログラムも第1の発明における効果と同様の効果を発揮することができる。
【0023】
第4の発明である家畜体重評価プログラムも第2の発明における効果と同様の効果を発揮することができる。
【0024】
第5の発明である家畜体重評価プログラムは第1乃至第4の発明における効果に加え、家畜の座位時のデータを取得することで、家畜が立位の状態よりも動きがなくより高精度のデータの取得が可能であり、家畜の体重評価もより高精度とすることができる。本願発明では複数の家畜に関するデータを同時に取得することから動きがない状態におけるデータの取得はより重要な要素となる。
【0025】
第6の発明である家畜体重評価システムは第1の発明をシステム発明として捉えたものであるため、第1の発明における効果と同様の効果を発揮することができる。
【0026】
第7の発明である家畜体重評価システムは第2の発明をシステム発明として捉えたものであるため、第2の発明における効果と同様の効果を発揮することができる。
【0027】
第8の発明である家畜体重評価システムは第3の発明をシステム発明として捉えたものであるため、第3の発明における効果と同様の効果を発揮することができる。
【0028】
第9の発明である家畜体重評価システムは第4の発明をシステム発明として捉えたものであるため、第4の発明における効果と同様の効果を発揮することができる。
【0029】
第10の発明である家畜体重評価システムは第5の発明をシステム発明として捉えたものであるため、第5の発明における効果と同様の効果を発揮することができる。
【0030】
第11の発明である家畜体重評価プログラムは、第1の発明における効果に加え、撮像センサによって認識可能で雌雄判別が可能なタグを家畜に装着しておくことで、家畜の雌雄を判別可能であり、家畜の雌雄別で個体毎の体重を評価することが可能であり、より高い精度で家畜の体重を評価することができる。
【0031】
第12の発明である家畜体重評価プログラムも第11の発明の効果と同様の効果を発揮することができる。
【0032】
第13の発明である家畜体重評価システムは第11の発明をシステム発明として捉えたものであるため、第11の発明における効果と同様の効果を発揮することができる。
【0033】
第14の発明である家畜体重評価システムは第12の発明をシステム発明として捉えたものであるため、第12の発明における効果と同様の効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る家畜体重評価システムのブロック構成図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る家畜体重評価システムの距離センサの設置状態を示す概念図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る家畜体重評価システムの学習済の体重評価モデルと体重クラス評価モデルの生成を説明するためのフロー図である。
【
図4】(a)は撮像センサで撮影された複数の鶏の座位状態における画像であり、(b)は第1の実施の形態に係る家畜体重評価システムに係る距離センサで得られた家畜距離データを用いて家畜体重評価システムの画像処理部で生成した2.5次元の家畜画像であり、(c)は家畜体重評価システムの個体分離部で(b)の画像を処理して得られた個体分離の状態を表現した画像であり、(d)は家畜体重評価システムの個体分離部でさらに個体分離された個体のうち1つを抽出して表現した画像である。
【
図5】第1の実施の形態に係る家畜体重評価システムにおいてニューラルネットワークを用いた学習済の家畜体重評価モデルの構成を示す概念図である。
【
図6】第1の実施の形態に係る家畜体重評価システムにおいてニューラルネットワークを用いた学習済の家畜体重クラス評価モデルの構成を示す概念図である。
【
図7】第1の実施の形態に係る家畜体重評価システムの体重評価モデル又は体重クラス評価モデルを用いて家畜の体重の評価を説明するためのフロー図である。
【
図8】鶏の体の演算体積と測定体重から回帰分析を行った結果を示すグラフである。
【
図9】本発明の第2の実施の形態に係る家畜体重評価システムのブロック構成図である。
【
図10】(a)は第2の実施の形態に係る家畜体重評価システムの撮像センサと距離センサの設置状態を示す概念図であり、(b)は(a)に示される破線内の撮像センサと距離センサを発明者が設置した実画像である。
【
図11】第2の実施の形態に係る家畜体重評価システムの学習済の体重評価モデルと体重クラス評価モデルの生成を説明するためのフロー図である。
【
図12】第2の実施の形態に係る家畜体重評価システムの撮像センサとして暗視カメラを採用し、一羽の雄鶏の背中に装着したタグによって反射された赤外線を検出しながら一羽の雌鶏とともに体全体を撮影した画像である。
【
図13】第2の実施の形態に係る家畜体重評価システムにおいてニューラルネットワークを用いた学習済の家畜体重評価モデルの構成を示す概念図である。
【
図14】第2の実施の形態に係る家畜体重評価システムにおいてニューラルネットワークを用いた学習済の家畜体重クラス評価モデルの構成を示す概念図である。
【
図15】第2の実施の形態に係る家畜体重評価システムの体重評価モデル又は体重クラス評価モデルを用いて家畜の体重の評価を説明するためのフロー図である。
【
図16】(a)は雄鶏の体の演算体積と測定体重から回帰分析を行った結果を示すグラフであり、(b)は雌鶏の体の演算体積と測定体重から回帰分析を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明の第1の実施の形態に係る家畜体重評価システムについて
図1を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る家畜体重評価システムのブロック構成図である。
図1において、家畜体重評価システム1aは、入力部2、出力部3、本体4、学習データベース11、学習済モデルデータベース12、入力データベース13及び出力データベース14から構成されている。この家畜体重評価システム1aは、コンピュータサーバ内でそれぞれの機能を発揮し得る演算回路や記憶装置を備えたシステムを想定することが可能である。
入力部2は家畜体重評価システム1aの外部や内部のデータベースからのデータの入力を行うものであり、出力部3は家畜体重評価システム1aの外部へデータ類の出力を行うものである。入力部2として具体的には、キーボード、マウス、ペンタブレット、光学式の読み取り装置あるいはデータ受信部としての他の装置や情報通信網からの受信端子が相当する。出力部3として具体的には、ディスプレイ装置やプリンタ装置等の出力装置、さらには、外部装置への伝送を行うためのトランスミッタ等の発信装置や送信端子等が考えられる。もちろん、外部装置や情報通信網への伝送のための出力に対するインターフェースのようなものであってもよい。
本体4は、距離センサ6、画像処理部7、個体分離部8、学習済モデル生成部9及び評価部10を備えている。
距離センサ6は家畜を上方から測距して家畜表面までの距離を多点で測定して家畜全体の形状の凹凸に関するデータを取得するものである。
【0036】
画像処理部7は、距離センサ6から見て地面に向かう方向をz軸とし、家畜が存在している畜舎の地面やこれらのセンサが設置されている例えば畜舎の天井をxy平面とすると、距離センサ6によって得られた家畜までの多点の家畜距離データ群(x,y,z)の(x,y)を画像の(x,y)座標、(z)を画像の画素値に置き換えることで2.5次元画像を生成する。画素値としては、例えばzの値を8ビット(0~255)で表現すること等で可能である。
また、個体分離部8は画像処理部7によって得られた2.5次元家畜画像におけるzの値が谷となっている箇所が個体の境界となっているという前提と家畜の上方から見た外形断面、例えば楕円形である長径と短径の数値範囲内にある場合が個体の境界となっているという前提で画像処理によって分離する。家畜によって外形断面は異なるので評価対象となる家畜によって適宜個体の境界の前提としての外形断面を定めるとよい。
このようにして得られた2.5次元画像を入力データとしたり、家畜体重や家畜体重クラスを評価するための家畜体重評価モデルや家畜体重クラス評価モデルに入力する個体毎の2.5次元家畜画像学習データとすべく、個体分離部8は個体毎の2.5次元画像を生成する。
家畜体重評価モデルとは、家畜の体重をそのまま評価するモデルである。また、家畜体重クラス評価モデルとは、例えば家畜の体重を100gや50g毎にクラス分けして分別する場合のモデルを意味しており、本実施の形態の家畜体重評価モデルにおける変形例である。
学習済モデル生成部9は、学習データベース11に格納される学習データや教師データを用いて学習済の評価モデルを生成するものである。本願発明における実施の形態では、学習方法としては、蓄積された学習データや教師データをニューラルネットワークによる深層学習(ディープラーニング)に用いて学習済の評価モデルを生成する方法と蓄積された学習データや教師データを用いて回帰分析を行うことで学習済の評価モデルを生成する方法の2種類がある。
評価部10は、学習済モデルデータベース12から学習済の評価モデルを選択し、これに入力データベース13から読み出したデータを入力して家畜の体重や体重クラスを評価して出力して、その結果を読み出し可能に出力データベース14に格納するものである。
なお、本願では入力部2等に「部」を用いているが、これは本体4の一部を意味するものであり、それ自体は装置や回路を構成するものである。
【0037】
次に、家畜体重評価システム1aが備えるデータベースについて説明する。
学習データベース11は、家畜距離学習データ22、2.5次元家畜画像学習データ23a、家畜体重教師データ24a及び家畜体重クラス教師データ25aが読み出し可能に格納されるデータベースである。これらのデータは学習済モデル生成部9で学習済モデルとして、家畜体重評価モデル26a及びその変形例の家畜体重クラス評価モデル27aを生成するために用いる学習データや教師データである。
本実施の形態においては、学習データベース11と学習済モデル生成部9を家畜体重評価システム1aに含めているが、これらを独立させて別に設けておいてもよい。すなわち、別のシステムで学習データベース11を用いて学習済モデル生成部9で学習済モデルデータベース12に格納される家畜体重評価モデル26a及び変形例の家畜体重クラス評価モデル27aを生成させて、それらの学習済の評価モデルのみを学習済モデルデータベース12に格納して、学習済モデルデータベース12だけを家畜体重評価システム1aに含めてもよい。
学習済モデルデータベース12は、学習データベース11に格納される学習データや教師データを用いて学習済モデル生成部9によって生成された学習済の評価モデルが格納されるデータベースであり、家畜体重評価モデル26a及び家畜体重クラス評価モデル27aが読み出し可能に格納されている。これらの評価モデルは前述のとおり、評価部10によって読み出される。
【0038】
入力データベース13は、学習済の評価モデルを用いて家畜の体重や体重クラスに関する評価を評価部10で実行するために必要となるデータが格納されるデータベースであり、家畜距離データ32及び2.5次元家畜画像データ33aが格納されている。
出力データベース14は、入力データベース13に格納されている入力データを用いて評価部10によって評価された家畜の体重や体重クラスに関するデータが格納されるデータベースであり、家畜体重評価データ35aと家畜体重クラス評価データ37aが格納されている。
なお、入力部2は、学習データベース11や入力データベース13に格納される前述のデータ類を入力したり、学習済モデルデータベース12に格納される評価モデル類を外部で生成した場合には、それらの評価モデル類を入力する際にも用いられる。また、出力部3は、評価部10で評価された家畜の体重に関する家畜体重評価データ35aや家畜の体重クラスに関する家畜体重クラス評価データ37aを外部へ出力する機能を有する。また、必要に応じて、学習データベース11や入力データベース13に格納されるデータ類あるいは学習済モデルデータベース12に格納される評価モデル類を出力することも可能である。
【0039】
以下、家畜体重評価システム1aについて家畜として鶏を採用して詳細に説明する。
図2は本実施の形態に係る家畜体重評価システムの距離センサの設置状態を示す概念図である。
図2において、本実施の形態では家畜として鶏38を採用し、鶏舎の地面39上で鶏38が飼育されている状況で、その上方に距離センサ6が設置されている。
距離センサ6は設置された場所から鶏38の上表面を測距して、鶏38の上表面までの多点の距離データ群(x,y,z)を得る。
図2では昼間を想定して立位の鶏38を示しているが、昼間は鶏38が動き回ることから、精度の高い画像や距離データを取得し難いので、夜間の鶏38が座位の状態で休んでいるときに距離センサ6による測距を実行することが望ましい。
また、
図2では距離センサ6を1つ設置している状態を表現しているが、1台でカバーできる鶏舎の地面39の広さは限られるので鶏舎全体の鶏38の体重を評価するために統計上必要なサンプル数を網羅可能なように複数台で鶏舎の地面39をカバーすることが望ましい。したがって、鶏舎の規模や鶏38の数に応じて距離センサ6の数は適宜変更されるものである。
このように距離センサ6によって取得される家畜距離データを入力の学習データとして、さらに、家畜の体重を一羽毎に測定してこれを出力の教師データとして、ニューラルネットワークを用いて深層学習を実行すること、あるいは回帰分析を実行することで、学習済の家畜体重評価モデル26aや家畜体重クラス評価モデル27aを構築する。
【0040】
以下、
図3,4を参照しながら本実施の形態に係る家畜体重評価システム1aの家畜体重評価モデル26a及び家畜体重クラス評価モデル27aの具体的な構築方法について説明する。
図3は第1の実施の形態に係る家畜体重評価システムの体重評価モデルと体重クラス評価モデルの生成を説明するためのフロー図である。この
図3は、本願発明の家畜体重評価プログラムに対しては、コンピュータを用いて実行されるその工程を表すものでもあり、この図を参照しながら家畜体重評価システム1aにおけるデータ処理の流れを説明することは家畜体重評価プログラムの実施の形態について説明することと同義である。このほか
図7,11,15についても同様である。
図4は(a)は撮像センサで撮影された複数の鶏の座位状態における画像であり、(b)は第1の実施の形態に係る家畜体重評価システムに係る距離センサで得られた家畜距離データを用いて家畜体重評価システムの画像処理部で生成した2.5次元の家畜画像であり、(c)は家畜体重評価システムの個体分離部で(b)の画像を処理して得られた個体分離の状態を表現した画像であり、(d)は家畜体重評価システムの個体分離部でさらに個体分離された個体のうち1つを抽出して表現した画像である。
図3において、ステップS1で距離センサ6が座位状態にある複数の鶏38の上表面を上方から測距して距離センサ6から家畜までの多点の家畜距離データ群(x,y,z)を家畜距離学習データ22として学習データベース11に読み出し可能に格納する。
さらに、ステップS2として図示しない体重計で鶏の体重が一羽毎に測定され家畜体重教師データ24aとして学習データベース11に読み出し可能に格納される。また、鶏の体重評価の変形例として、クラス分けして所望に定める一定の範囲内の体重クラスで分別してもよい。前述のとおり、100gや50g毎にクラス分けして分別する場合が該当する。その際には、測定した体重が属するクラスに分別された家畜体重クラス教師データ25aとして学習データベース11に読み出し可能に格納される。
【0041】
次に、ステップS3として、画像処理部7が学習データベース11から家畜距離学習データ22を読み出して、前述のとおり距離センサ6によって得られた家畜までの多点の家畜距離データ群(x,y,z)の(x,y)を画像の(x,y)座標、(z)を画像の画素値に置き換えることで2.5次元家畜画像学習データ23aを得る。そして、画像処理部7は2.5次元家畜画像学習データ23aを読み出し可能に学習データベース11に格納する。この2.5次元家畜画像学習データ23aの例としては
図4(b)に示されるような画像データが挙げられる。なお、
図4(a)は第2の実施の形態に係る家畜体重評価システム1bの撮像センサと同一のセンサで撮影した画像であり、この撮像センサやその画像は第1の実施の形態に係る家畜体重評価システム1aにおいては必要でないが、(b)に示される2.5次元家畜画像学習データ23aと比較して同等な画像が得られることを示すものである。
次に、ステップS4として、個体分離部8が学習データベース11から2.5次元家畜画像学習データ23aを読み出して、
図2(a)に示す鶏舎の地面39側から見てzの値が谷となっている箇所が個体の境界となっているという前提と鶏の外形断面として予め所望に定めた楕円形を含んで境界となっているという前提で画像処理を行って分離する。この状態の画像データが
図4(c)に示されるものである。さらに、個体分離部8は個体の集合として表現される
図4(c)のように示される画像データを
図4(d)のように示される個体毎の画像データとして画像そのものも個別に分離する。このようにして得られた個体毎の2.5次元家畜画像学習データ23aを最終的な学習データとすべく、個体分離部8は学習データベース11に読み出し可能に格納する。
【0042】
ステップS5は、学習済モデル生成部9が学習データベース11から個体毎の2.5次元家畜画像学習データ23aと家畜体重教師データ24aを読み出して、2.5次元家畜画像学習データ23aに含まれる鶏の上方から撮影されたx-y平面に関する画像の(x,y)座標やz軸の座標(画素値)に関する特徴量と鶏の体重の関係を学習する深層学習を実施する。その際には、個体毎の2.5次元家畜画像学習データ23aを入力して出力された個体毎の家畜体重データを家畜体重教師データ24aと比較し、出力値である個体毎の家畜体重データが家畜体重教師データ24aに近づくように、中間層で用いるパラメータを最適化する。このパラメータとしては、例えばニューロン間の重み(結合係数)や活性化関数に用いられる係数等がある。これらのパラメータの最適化方法については、例えば、誤差逆伝播法(バックプロパゲーション法)等を用いて実行する。
このようにして、学習済モデル生成部9は、個体毎の2.5次元家畜画像データ33aの入力を受けて家畜体重評価データ35aを出力するニューラルネットワークを用いる家畜体重評価モデル26aを生成し、これを学習済モデルデータベース12に読み出し可能に格納する。
このニューラルネットワークとしては、本実施の形態では、画像処理に適しているとされるコンボリューショナル(畳み込み)ニューラルネットワーク(CNN)を用いるが、その他、入力と出力の正しい相関関係を維持できるのであればサポートベクターマシン(SVM)等、他の学習アルゴリズムで構築されるものを用いてもよい。
一方、変形例の家畜体重クラス評価モデル27aを生成する場合のステップS5は、個体毎の家畜体重教師データ24aに代えて個体毎の家畜体重クラス教師データ25aを用いて深層学習を行う。具体的には、学習済モデル生成部9が学習データベース11から個体毎の2.5次元家畜画像学習データ23aと家畜体重クラス教師データ25aを読み出して、2.5次元家畜画像学習データ23aに含まれる鶏の上方から撮影されたx-y平面に関する画像の(x,y)座標やz軸の座標(画素値)に関する特徴量と鶏の体重クラスの関係を学習する深層学習を実施する。その際に実行されるパラメータの最適化は家畜体重評価モデル26aの場合と同様である。
そして、学習済モデル生成部9は、個体毎の2.5次元家畜画像データ33aの入力を受けて家畜体重クラス評価データ37aを出力するニューラルネットワークを用いる家畜体重クラス評価モデル27aを生成し、これを学習済モデルデータベース12に読み出し可能に格納する。
【0043】
このようにして生成されたCNNを用いた家畜体重評価モデル26a及び家畜体重クラス評価モデル27aについて
図5及び
図6をそれぞれ参照しながら説明を加える。
図5は第1の実施の形態に係る家畜体重評価システムにおいてニューラルネットワークを用いた学習済の家畜体重評価モデルの構成を示す概念図であり、
図6は同じく学習済の家畜体重クラス評価モデルの構成を示す概念図である。
図5において、家畜体重評価モデル26aの入力層では2.5次元家畜画像データ33aの鶏の外形断面に関する画像情報に含まれる各画素の(x,y)座標及び画素値(z軸座標)が入力される複数のニューロンを備えている。そして、これらの(x,y)座標や画素値は中間層に送出されるが、中間層では学習済の家畜体重評価のための学習済家畜体重評価関数34aが形成されており、関数に応じて画像情報に含まれる特徴量を抽出する複数のニューロンを備えている。
また、
図6の変形例としての家畜体重クラス評価モデル27aの入力層でも2.5次元家畜画像データ33aの鶏の外形断面に関する画像情報に含まれる各画素の(x,y)座標及び画素値(z軸座標)が入力される複数のニューロンを備えており、これらの(x,y)座標や画素値は中間層に送出され、中間層では家畜体重評価モデル26aの場合と同様に学習済の家畜体重クラス評価のための学習済家畜体重クラス評価関数36aが形成されており、関数に応じて画像情報に含まれる特徴量を抽出する複数のニューロンを備えている。
家畜体重評価モデル26a及び家畜体重クラス評価モデル27aではCNNを採用した場合、中間層では、各画素の(x,y)座標や画素値を畳み込むコンボリューション処理を実行するコンボリューション層と畳み込まれた(x,y)座標や画素値をダウンサンプリングするプーリング処理を実行するプーリング層を交互に配列して画像の(x,y)座標や画素値といった画素情報を圧縮しながら画像の特徴量を抽出しつつ、適宜線形演算を行う全結合層を組み合せて配列し、それらとtanh等の非線形演算を行う活性化関数を用いるとよい。
さらに、変形例としての家畜体重クラス評価モデル27aでは、体重クラスを所望に設定される数値範囲のクラスとして決定する場合として、中間層の最後の関数としてソフトマックス関数等を用いて入力値が確率として出力されるようにして最も確率の高い体重クラスが選択されるようにするとよい。以上のような関数を組み合せて学習済の家畜体重評価や家畜体重クラス評価のための関数が構成されている。
そして、出力層は家畜体重評価モデル26aでは個体毎の家畜体重の評価値が出力されるニューロンを有しており、家畜体重を評価し、個体毎の家畜体重評価データ35aとして出力する。評価部10はこの家畜体重評価データ35aを出力データベース14に読み出し可能に格納する。また、家畜体重クラス評価モデル27aでは個体毎の家畜体重クラスの評価値が出力されるニューロンを有しており、家畜体重クラスを評価し、個体毎の家畜体重クラス評価データ37aとして出力する。評価部10は家畜体重クラス評価データ37aを出力データベース14に読み出し可能に格納する。
【0044】
次に、
図7を参照しながら、第1の実施の形態に係る家畜体重評価システム1aによる個体毎の家畜体重評価及び家畜体重クラス評価について鶏を例に挙げて説明する。
図7は家畜体重評価システム1aの学習済モデルデータベース12に格納される家畜体重評価モデル26a又は家畜体重クラス評価モデル27aを用いて家畜の体重の評価を説明するためのフロー図である。
図7において、ステップS6として、距離センサ6が座位状態にある複数の鶏38の上表面を上方から測距して家畜までの多点の家畜距離データ群(x,y,z)を家畜距離データ32として入力データベース13に読み出し可能に格納する。
そして、ステップS7では、画像処理部7が入力データベース13から家畜距離データ32を読み出して、距離センサ6によって得られた家畜までの多点の家畜距離データ群(x,y,z)の(x,y)を画像の(x,y)座標とし、(z)を画像の画素値に置き換えることで2.5次元家畜画像データ33aを得て、読み出し可能に入力データベース13に格納する。
次に、ステップS8として、個体分離部8が入力データベース13から2.5次元家畜画像データ33aを読み出して、前述のとおり、個体毎の画像データとして画像そのものも個体毎に分離する。得られた個体毎の2.5次元家畜画像データ33aを最終的な入力データとすべく再度入力データベース13に読み出し可能に格納する。
ステップS9は、評価部10が学習済モデルデータベース12から家畜体重評価モデル26a又は家畜体重クラス評価モデル27aを選択して読み出す。そして、ステップS10で評価部10は入力データベース13から個体毎の2.5次元家畜画像データ33aを読み出して、家畜体重評価モデル26a又は家畜体重クラス評価モデル27aの入力層に入力する。
ステップS10では、評価部10は家畜体重評価モデル26aの中間層の学習済家畜体重評価関数34a又は家畜体重クラス評価モデル27aの中間層の学習済体重クラス評価関数36aによって鶏の体重に関する評価を実施して、その評価結果を出力層に家畜体重評価データ35aあるいは家畜体重クラス評価データ37aとして出力する。
そして、ステップS11で、評価部10はこれらの評価データを出力データベース14に読み出し可能に格納する。あるいは、評価部10はこれらの評価データを、出力部3を介して外部に表示したり出力してもよい。
【0045】
(回帰分析によって構築された学習済の家畜体重評価モデルの場合)
次に、
図5に示した家畜体重評価モデル26aの中間層の学習済家畜体重評価関数34aとして回帰分析結果を用いる場合について
図3,5,7に
図8を加え、これらを参照しながら説明する。
図8は、鶏の体の演算体積と測定体重から回帰分析を行った結果を示すグラフである。なお、回帰分析に基づく結果を用いる場合でもニューラルネットワークを用いる場合と共通する箇所については説明を省略し、相違する箇所についてのみ説明を加える。
図8において、横軸は個体毎の2.5次元家畜画像学習データ23aに含まれる家畜距離データ群(x,y,z)と鶏の外形として予め所望に定めた楕円体で構成されるという前提から演算された体積[cm
3]を表している。この体積の演算は、
図3に示されるステップS5として、学習済モデル生成部9によって実行される。また、
図8の縦軸は個体毎の家畜体重教師データ24aによる体重[g]を表している。
これらの体積と体重を用いて、同じくステップS5で、学習済モデル生成部9は一次の回帰分析を行い、
図8内に示されるような回帰直線を得て、これを家畜体重評価モデル26aにおける学習済家畜体重評価関数34aとして採用する。そして、この中間層における回帰分析に基づく学習済家畜体重評価関数34aを用いて、演算された体積に対応する個体毎の体重値、すなわち、個体毎の家畜体重評価データ35aを得ることができる。学習済モデル生成部9は、このようなモデルを家畜体重評価モデル26aとして学習済モデルデータベース12に格納する。
したがって、
図5における入力層としてはニューラルネットワークを採用する場合と同様に2.5次元家畜画像データ33aであり、出力層としては家畜体重評価データ35aとなる。
また、
図7においては、入力データベース13からの入力データを用いつつ、ステップS9で評価部10は学習済モデルデータベース12から前述のとおり回帰分析によって得られた家畜体重評価モデル26aを読み出し、ステップS10で評価部10が家畜体重評価モデル26aの中間層の回帰分析による学習済家畜体重評価関数34aを用いて鶏の体重の評価を実施して、ステップS11では評価部10が家畜体重評価データ35aを出力データベース14に読み出し可能に格納する。
なお、本実施の形態では回帰分析として一次の回帰分析を行ったが他の関数による回帰分析を行ってもよい。
【0046】
以上説明したとおり、本実施の形態に係る家畜体重評価システム1aにおいては、複数の個体の家畜が収容されている畜舎における家畜の体重管理に際し、家畜の全個体数に対する体重測定を個別に実施することなく、個別の体重を非接触で評価することができるので、家畜に対する侵襲性が低くストレスを与えることがないという優れた効果を発揮することが可能である。また、上方に設置されたセンサで撮影、測距していることから、家畜の生育に伴う汚れの心配がなく、メンテナンス性も優れており、装置が汚損しないことから、精度の経時劣化もないという優れた効果を発揮させることが可能である。また、一度に複数の家畜に関するデータを取得できることから、家畜の体重管理に労力が不要であり、低労力で効率的な家畜の体重管理を実施することが可能である。
家畜のデータ取得のタイミングをタイマーで夜間に設定しておくことで、家畜が睡眠をとるため座位状態にあり、また、たとえ立位状態であったとしても、家畜の動きは夜間に少なくなるので、そのような状態でのデータ取得が可能なシステム及びコンピュータプログラムであることから、より精度の高いデータ取得と処理を可能としている。
さらに、ニューラルネットワークの深層学習においても回帰分析においてもデータの追加によって精度を高めることが可能であるので、家畜の体重評価と管理を継続することで更なる精度の向上を見込むことが可能である。
【0047】
(第2の実施の形態)
以下に、本発明の第2の実施の形態に係る家畜体重評価システムについて
図9及び
図10を参照しながら説明する。
図9は、第2の実施の形態に係る家畜体重評価システムのブロック構成図であり、
図10(a)は第2の実施の形態に係る家畜体重評価システムの撮像センサと距離センサの設置状態を示す概念図であり、(b)は(a)に示される破線内の撮像センサと距離センサを発明者が設置した実画像である。
図9において第1の実施の形態に係る家畜体重評価システム1aと同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。第2の実施の形態に係る家畜体重評価システム1bは、家畜の体重を雌雄別個体毎に評価するものである。
家畜体重評価システム1bでは、家畜体重評価システム1aの構成に加えて、家畜の雌雄のいずれかあるいは両方に雌雄を判別可能なタグ40を付して、そのタグ40を撮像センサ5で撮影して雌雄を判別する。
図10(a)に示されるとおり、本実施の形態では鶏38の雄のみにタグ40を装着することで雌雄判別を可能としている。雌のみにタグ40を装着してもよいし、雌雄両方に別個のタグ40を装着して雌雄を判別してもよい。
【0048】
また、
図10(a)及び(b)に示されるように撮像センサ5は距離センサ6に近接させて設置される。近接させるのは、撮像センサ5で撮影される雌雄判別用家畜画像データと、距離センサ6によって測定される家畜表面までの家畜距離データ群から画像処理部7が生成した2.5次元家畜画像データとを、画像処理部7が位置合わせすることで雌雄別かつ個体毎のデータを取得するためである。したがって、距離センサ6が1台で鶏舎の地面39全体をカバーできず複数台設置する場合には撮像センサ5も同様に距離センサ6に近接させて複数台設置することが望ましい。
第2の実施の形態に係る家畜体重評価システム1bについて、
図11-14も参照しながら家畜として鶏を採用して詳細に説明する。
図11は第2の実施の形態に係る家畜体重評価システムの学習済の体重評価モデルと体重クラス評価モデルの生成を説明するためのフロー図である。
【0049】
図11において、第2の実施の形態に係る家畜体重評価システム1bは、ステップS12として撮像センサ5が座位状態にある複数の鶏38を雌雄判別可能なタグ40とともに上方から撮影して雌雄判別用家畜画像学習データ21として学習データベース11に読み出し可能に格納する。
図12に示される画像は撮像センサ5として暗視カメラを採用し、一羽の雄鶏の背中に装着したタグ40によって反射された赤外線を検出しながら、タグ40を装着していない右隣の一羽の雌鶏とともに体全体を撮影したものである。白く写っているのがタグ40で、タグ40からの反射によっていずれの鶏が雄であるかがデータとして取得することが可能である。
次に、ステップS13として、距離センサ6が座位状態にある複数の鶏38の上表面を上方から測距して家畜距離学習データ22として学習データベース11に読み出し可能に格納し、ステップS14では図示しない体重計で鶏の体重が雌雄別に一羽毎に測定されて雌雄別家畜体重教師データ24bとして学習データベース11に読み出し可能に格納される。
ステップS15では、画像処理部7が学習データベース11から家畜距離学習データ22を読み出して、第1の実施の形態と同様にして2.5次元家畜画像学習データ23aを得る。そして、画像処理部7はこの2.5次元家畜画像学習データ23aと撮像センサ5によって得られた雌雄判別用家畜画像学習データ21との間で位置合わせを実施して雌雄別に分別した雌雄別2.5次元家畜画像学習データ23bを得て、読み出し可能に学習データベース11に格納する。
【0050】
次に、ステップS16として、個体分離部8が学習データベース11から雌雄別2.5次元家畜画像学習データ23bを読み出して、第1の実施の形態と同様に
図10(a)に示す鶏舎の地面39側から見てzの値が谷となっている箇所が個体の境界となっているという前提と鶏の外形断面として予め所望に定めた楕円形を含んで境界となっているという前提で個体を分離し、さらに、第1の実施の形態と同様に個体毎の画像データとして画像そのものも個別に分離する。これらの状態の画像データは第2の実施の形態においても
図4(c)及び(d)に示されるものと同様である。このようにして得られた個体毎の雌雄別2.5次元家畜画像学習データ23bを最終的な学習データとすべく学習データベース11に読み出し可能に格納する。
ステップS17は、学習済モデル生成部9が学習データベース11から個体毎の雌雄別2.5次元家畜画像学習データ23bと雌雄別家畜体重教師データ24bを読み出して、雌雄別2.5次元家畜画像学習データ23bに含まれる鶏の上方から撮影されたx-y平面に関する画像の(x,y)座標やz軸の座標(画素値)に関する特徴量と鶏の体重の関係を学習する深層学習を実施する。この深層学習の方法については第1の実施の形態と同様である。深層学習によって、学習済モデル生成部9は個体毎の雌雄別2.5次元家畜画像データ33bの入力を受けて雌雄別家畜体重評価データ35bを出力するニューラルネットワークを用いる雌雄別家畜体重評価モデル26bを生成し、これを学習済モデルデータベース12に読み出し可能に格納する。
このステップS17で個体毎の雌雄別家畜体重教師データ24bに代えて個体毎の雌雄別家畜体重クラス教師データ25bを用いて深層学習を行うことで、学習済モデル生成部9は第1の実施の形態と同様に変形例として雌雄別家畜体重クラス評価モデル27bを生成し、学習済モデルデータベース12に読み出し可能に格納する。
【0051】
次に、上述のようにして生成されたニューラルネットワークを用いた雌雄別家畜体重評価モデル26b及び変形例としての雌雄別家畜体重クラス評価モデル27bについて
図13及び
図14を参照しながら説明を加える。
図13は第2の実施の形態に係る家畜体重評価システムにおいてニューラルネットワークを用いた学習済の家畜体重評価モデルの構成を示す概念図であり、
図14は同じく学習済の家畜体重クラス評価モデルの構成を示す概念図である。
図13において、雌雄別家畜体重評価モデル26bの入力層では雌雄別2.5次元家畜画像データ33bの鶏の外形に関する画像情報に含まれる各画素の(x,y)座標及び画素値が(z軸座標)が入力される複数のニューロンを備えている。そして、これらの(x,y)座標や画素値は中間層に送出されるが、中間層では学習済の雌雄別家畜体重評価のための学習済雌雄別家畜体重評価関数34bが形成されており、関数に応じて画像情報に含まれる特徴量を抽出する複数のニューロンを備えている。
また、
図14の雌雄別家畜体重クラス評価モデル27bの入力層でも雌雄別2.5次元家畜画像データ33bの鶏の外形断面に関する画像情報に含まれる各画素の(x,y)座標及び画素値(z軸座標)が入力される複数のニューロンを備えており、これらの(x,y)座標や画素値は中間層に送出され、中間層では雌雄別家畜体重評価モデル26bの場合と同様に学習済の雌雄別家畜体重クラス評価のための学習済雌雄別家畜体重クラス評価関数36bが形成されており、関数に応じて画像情報に含まれる特徴量を抽出する複数のニューロンを備えている。
雌雄別家畜体重評価モデル26b及び雌雄別家畜体重クラス評価モデル27bではニューラルネットワークを採用しているので、中間層における関数の構成としては、
図5,6を参照しながら説明した第1の実施の形態と同様である。
そして、出力層は雌雄別家畜体重評価モデル26bでは雌雄別個体毎の家畜体重の評価値が出力されるニューロンを有しており、雌雄別の家畜体重を評価し、個体毎の雌雄別家畜体重評価データ35bとして出力する。評価部10はこの雌雄別家畜体重評価データ35bを出力データベース14に読み出し可能に格納する。また、雌雄別家畜体重クラス評価モデル27bでは雌雄別個体毎の家畜体重クラスの評価値が出力されるニューロンを有しており、家畜体重クラスを評価し、個体毎の雌雄別家畜体重クラス評価データ37bとして出力する。評価部10は雌雄別家畜体重クラス評価データ37bを出力データベース14に読み出し可能に格納する。
【0052】
次に、
図15を参照しながら、第2実施の形態に係る家畜体重評価システム1bによる雌雄別個体毎の家畜体重評価及び家畜体重クラス評価について鶏を例に挙げて説明する。
図15は家畜体重評価システム1bの学習済モデルデータベース12に格納される雌雄別家畜体重評価モデル26b又は雌雄別家畜体重クラス評価モデル27bを用いて家畜の体重の評価を説明するためのフロー図である。
図15において、ステップS18として撮像センサ5が座位状態にある複数の鶏38を雌雄判別可能なタグ40とともに上方から撮影して雌雄判別用家畜画像データ31として入力データベース13に読み出し可能に格納する。また、ステップS19では距離センサ6が座位状態にある複数の鶏38の上表面を上方から測距して家畜距離データ32として入力データベース13に読み出し可能に格納する。
そして、ステップS20では、画像処理部7が入力データベース13から家畜距離データ32を読み出して、ステップS15と同様に、2.5次元家畜画像データ33aを得る。そして、画像処理部7はこの2.5次元家畜画像データ33aと撮像センサ5によって得られた雌雄判別用家畜画像データ31との間で位置合わせを実施して雌雄別に分別した雌雄別2.5次元家畜画像データ33bを得て、読み出し可能に入力データベース13に格納する。
次に、ステップS21として、個体分離部8が入力データベース13から雌雄別2.5次元家畜画像データ33bを読み出して、ステップS16と同様に、画像データを個体毎に分離する。得られた個体毎の雌雄別2.5次元家畜画像データ33bを最終的な入力データとすべく再度入力データベース13に読み出し可能に格納する。
ステップS22は、評価部10が学習済モデルデータベース12から雌雄別家畜体重評価モデル26b又は雌雄別家畜体重クラス評価モデル27bを選択して読み出す。そして、ステップS23で評価部10は入力データベース13から個体毎の雌雄別2.5次元家畜画像データ33bを読み出して、雌雄別家畜体重評価モデル26b又は雌雄別家畜体重クラス評価モデル27bの入力層に入力する。
ステップS23では、評価部10は雌雄別家畜体重評価モデル26bの中間層の学習済雌雄別体重評価関数34b又は雌雄別家畜体重クラス評価モデル27bの中間層の学習済雌雄別体重クラス評価関数36bによって鶏の体重に関する評価を実施して、その評価結果を出力層に雌雄別家畜体重評価データ35bあるいは雌雄別家畜体重クラス評価データ37bとして出力する。
そして、ステップS24で、評価部10はこれらの評価データを出力データベース14に読み出し可能に格納する。あるいは、評価部10はこれらの評価データを、出力部3を介して外部に表示したり出力してもよい。
【0053】
次に、実際に
図13に示す学習済の雌雄別家畜体重評価モデル26bを生成させた際の学習条件と生成された雄鶏のモデルに関するテスト結果をまとめて表1に示す。表1に示すとおり、今回の雌雄別家畜体重評価モデル26b(雄鶏モデル)では54,780枚の学習画像(雌雄別2.5次元家畜画像学習データ23b)を用いて学習させているが、この学習画像の数は元々の学習画像を30°間隔で回転させて12倍に増やしたものである。また、検証画像とは学習させた雌雄別家畜体重評価モデル26b(雄鶏モデル)が概ね正しく鶏の体重を評価できているかを確認するために別途用意した1,522枚の2.5次元家畜画像データであり、これらを用いて誤差逆伝播法によってパラメータの最適化を実施した。さらに、最適化された雌雄別家畜体重評価モデル26bとテスト画像1,206枚(2.5次元家畜画像データ)を用いて、雄鶏の体重評価をテストした結果、推定誤差が3.3%であることがわかった。
【表1】
【0054】
表2は表1で示した雄鶏の体重評価のテスト結果の一部を示すものである。No.0からNo.10までの11のテスト画像を用いて評価された体重と真値を比較して相対誤差と共に一覧表にまとめた。
【表2】
【0055】
表2に示すとおり、今回の雌雄別家畜体重評価モデル26b(雄鶏モデル)では相対誤差に多少のばらつきはあるものの概ね真値に近い体重として評価できていることがわかった。これら11のテスト結果でも表の欄外に示すとおり平均相対誤差は3.3%となった。
【0056】
次に、同様に
図14に示す学習済の雌雄別家畜体重クラス評価モデル27b(雄鶏モデル)を生成させた際の学習条件と生成されたモデルに関するテスト結果をまとめて表3に示す。表3に示すとおり、雌雄別家畜体重クラス評価モデル27b(雄鶏モデル)では18,260枚の学習画像(雌雄別2.5次元家畜画像学習データ23b)を用いて学習させているが、この学習画像の数は元々の学習画像を90°間隔で回転させて4倍に増やしている。また、検証画像とテスト画像は雌雄別家畜体重評価モデル26b(雄鶏モデル)の場合と同じものを採用している。最適化された雌雄別家畜体重クラス評価モデル27b(雄鶏モデル)とテスト画像1,206枚(2.5次元家畜画像データ)を用いて、雄鶏の体重クラス評価をテストした結果、推定誤差が2.8%であることがわかった。
【表3】
【0057】
表4は表3で示した雄鶏の体重クラス評価のテスト結果の一部を示すものである。No.0からNo.10までの11のテスト画像を用いて評価された体重クラスと真値を比較して相対誤差とともに一覧表にまとめた。
【表4】
【0058】
表4に示すとおり、今回の雌雄別家畜体重クラス評価モデル27b(雄鶏モデル)でも相対誤差に多少のばらつきはあるものの概ね真値の体重クラスに近い体重クラスとして評価できていることがわかった。これら11のテスト結果でも表の欄外に示すとおり平均相対誤差は2.8%となった。
【0059】
同様に、
図13に示す学習済の雌雄別家畜体重評価モデル26bを生成させた際の学習条件と生成された雌鶏のモデルに関するテスト結果をまとめて表5に示す。表5に示すとおり、今回の雌雄別家畜体重評価モデル26b(雌鶏モデル)では42,216枚の学習画像(雌雄別2.5次元家畜画像学習データ23b)を用いて学習させているが、この学習画像の数は元々の学習画像を30°間隔で回転させて12倍に増やしたものである。また、検証画像として1,173枚の2.5次元家畜画像データを用意し、これらを用いて誤差逆伝播法によってパラメータの最適化を実施した。さらに、最適化された雌雄別家畜体重評価モデル26bとテスト画像1,564枚(2.5次元家畜画像データ)を用いて、雌鶏の体重評価をテストした結果、推定誤差が4.3%であることがわかった。
【表5】
【0060】
表6は表5で示した雌鶏の体重評価のテスト結果の一部を示すものである。No.0からNo.10までの11のテスト画像を用いて評価された体重と真値を比較して相対誤差と共に一覧表にまとめた。
【表6】
【0061】
表6に示すとおり、今回の雌雄別家畜体重評価モデル26b(雌鶏モデル)でも相対誤差に多少のばらつきはあるものの概ね真値に近い体重として評価できていることがわかった。これら11のテスト結果でも表の欄外に示すとおり平均相対誤差は4.3%となった。
【0062】
次に、同様に
図14に示す学習済の雌雄別家畜体重クラス評価モデル27b(雌鶏モデル)を生成させた際の学習条件と生成されたモデルに関するテスト結果をまとめて表7に示す。表7に示すとおり、雌雄別家畜体重クラス評価モデル27b(雌鶏モデル)では14,072枚の学習画像(雌雄別2.5次元家畜画像学習データ23b)を用いて学習させているが、この学習画像の数は元々の学習画像を90°間隔で回転させて4倍に増やしている。また、検証画像とテスト画像は雌雄別家畜体重評価モデル26b(雌鶏モデル)の場合と同じものを採用している。最適化された雌雄別家畜体重クラス評価モデル27b(雌鶏モデル)とテスト画像1,564枚(2.5次元家畜画像データ)を用いて、雌鶏の体重クラス評価をテストした結果、推定誤差が4.0%であることがわかった。
【表7】
【0063】
表8は表7で示した雌鶏の体重クラス評価のテスト結果の一部を示すものである。No.0からNo.10までの11のテスト画像を用いて評価された体重クラスと真値を比較して相対誤差とともに一覧表にまとめた。
【表8】
【0064】
表8に示すとおり、今回の雌雄別家畜体重クラス評価モデル27b(雌鶏モデル)でも相対誤差に多少のばらつきはあるものの概ね真値の体重クラスに近い体重クラスとして評価できていることがわかった。これら11のテスト結果でも表の欄外に示すとおり平均相対誤差は4.0%となった。
なお、第1の実施の形態では学習済の家畜体重評価モデル26aを用いた鶏の体重評価及び体重クラス評価について示していないものの、雌雄別家畜体重評価モデル26bを用いた評価と同様に行うことが可能である。
【0065】
(回帰分析によって構築された学習済の雌雄別家畜体重評価モデルの場合)
次に、
図13に示した雌雄別家畜体重評価モデル26bの中間層の学習済雌雄別家畜体重評価関数34bとして回帰分析結果を用いる場合について、
図11,13,15に
図16を加え、これらを参照しながら説明する。
図16は、(a)は雄鶏の体の演算体積と測定体重から回帰分析を行った結果を示すグラフであり、(b)は雌鶏の体の演算体積と測定体重から回帰分析を行った結果を示すグラフである。なお、回帰分析に基づく結果を用いる場合でもニューラルネットワークを用いる場合と共通する箇所については説明を省略し、相違する箇所についてのみ説明を加える。
図16(a),(b)において、横軸は個体毎の雌雄別2.5次元家畜画像学習データ23bに含まれる家畜距離データ群(x,y,z)と鶏の外形として予め所望に定めた楕円体で構成されるという前提から演算された体積[cm
3]を表している。この体積の演算は、
図11に示されるステップS17として、学習済モデル生成部9によって実行される。また、
図16の縦軸は個体毎の雌雄別家畜体重教師データ24bによる体重[g]を表している。
これらの体積と体重を用いて、同じくステップS17で、学習済モデル生成部9は一次の回帰分析を行い、
図16(a)及び(b)内に示されるような回帰直線を得て、これを雌雄別家畜体重評価モデル26bにおける学習済雌雄別家畜体重評価関数34bとして採用する。そして、この中間層における回帰分析に基づく学習済雌雄別家畜体重評価関数34bを用いて、演算された体積に対応する雌雄別個体毎の体重値、すなわち、個体毎の雌雄別家畜体重評価データ35bを得ることができる。学習済モデル生成部9は、このようなモデルを雌雄別家畜体重評価モデル26bとして学習済モデルデータベース12に格納する。
したがって、
図13における入力層としてはニューラルネットワークを採用する場合と同様に雌雄別2.5次元家畜画像データ33bであり、出力層としては雌雄別家畜体重評価データ35bとなる。
また、
図15においては、入力データベース13からの入力データを用いつつ、ステップS22で評価部10は学習済モデルデータベース12から前述のとおり回帰分析によって得られた雌雄別家畜体重評価モデル26bを読み出し、ステップS23で評価部10が雌雄別家畜体重評価モデル26bの中間層の回帰分析による学習済雌雄別家畜体重評価関数34bを用いて鶏の体重の評価を実施して、ステップS24では評価部10が雌雄別家畜体重評価データ35bを出力データベース14に読み出し可能に格納するか、出力部3を介して外部に出力する。
【0066】
以上説明したとおり、本実施の形態に係る家畜体重評価システム1bにおいては、第1の実施の形態に係る家畜体重評価システム1aが発揮する優れた効果に加え、複数の個体の家畜の雌雄を予めタグを用いることで判別しておき、雌雄別に家畜の体重評価を実施することが可能であるので、単位体積当たりの体重が重い雄と軽い雌を分別してより高い精度で体重評価と管理を実施することが可能である。また、撮像センサは距離センサに近接させて上方に設置されるので、撮像センサを設置しても家畜に対する低侵襲性は維持され、家畜の生育に伴う汚損もなく精度の経時劣化もないという優れた効果も維持される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように、請求項1乃至請求項14に記載された発明は、畜舎で飼育される家畜の体重を家畜への侵襲性を低減しながら、省労力で効率的かつ高精度に評価できることから広く畜産業に利用が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1a,1b…家畜体重評価システム 2…入力部 3…出力部 4…本体 5…撮像センサ 6…距離センサ 7…画像処理部 8…個体分離部 9…学習済モデル生成部 10…評価部 11…学習データベース 12…学習済モデルデータベース 13…入力データベース 14…出力データベース 21…雌雄判別用家畜画像学習データ 22…家畜距離学習データ 23a…2.5次元家畜画像学習データ 23b…雌雄別2.5次元家畜画像学習データ 24a…家畜体重教師データ 24b…雌雄別家畜体重教師データ 25a…家畜体重クラス教師データ 25b…雌雄別家畜体重クラス教師データ 26a…家畜体重評価モデル 26b…雌雄別家畜体重評価モデル 27a…家畜体重クラス評価モデル 27b…雌雄別家畜体重クラス評価モデル 31…雌雄判別用家畜画像データ 32…家畜距離データ 33a…2.5次元家畜画像データ 33b…雌雄別2.5次元家畜画像データ 34a…学習済家畜体重評価関数 34b…学習済雌雄別家畜体重評価関数 35a…家畜体重評価データ 35b…雌雄別家畜体重評価データ 36a…学習済家畜体重クラス評価関数 36b…学習済雌雄別家畜体重クラス評価関数 37a…家畜体重クラス評価データ 37b…雌雄別家畜体重クラス評価データ 38…鶏 39…鶏舎の地面 40…タグ