(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138040
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20220914BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220914BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20220914BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220914BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/40
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037811
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松野 智久
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和幸
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ11
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029DJ09
5H029EJ05
5H029EJ07
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5H029HJ04
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA13
5H050EA12
5H050EA15
5H050FA02
5H050HA00
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】充放電時の発電要素部へのダメージを低減することで耐久性能を高めた全固体電池を提供する。
【解決手段】
本発明の全固体電池100(単電池9)は、正極層11、固体電解質層12、及び負極層13が積層された発電要素部1が配置され、さらに発電要素部1の外周を覆うように絶縁部材4が配置された全固体電池において、絶縁部材4は、弾性率が5Gpa以下の絶縁層41と、絶縁層41より弾性率の低い膨張吸収層42との積層構造を有し、発電要素部1と同じ積層方向である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層、固体電解質層、及び負極層が積層された発電要素部が配置され、さらに前記発電要素部の外周を覆うように絶縁部材が配置された全固体電池において、
前記絶縁部材は、
弾性率が5Gpa以下の絶縁層と、前記絶縁層より前記弾性率の低い膨張吸収層との積層構造を有し、前記発電要素部と同じ積層方向である全固体電池。
【請求項2】
前記発電要素部及び前記絶縁部材は、一対の集電体の間に配置され、
前記絶縁層及び前記膨張吸収層は、一対の前記集電体が対向する方向に積層され、且つ前記発電要素部に密着している請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記負極層はリチウム金属、又はリチウム化合物を含み、
前記膨張吸収層は、一対の前記集電体のうち前記負極層に隣接する前記集電体に隣接している請求項2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記膨張吸収層は、前記負極層に隣接するとともに前記負極層の厚みよりも厚い請求項3に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記絶縁層は、前記正極層に隣接するとともに前記正極層の厚みよりも厚い請求項3又は請求項4に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記絶縁層及び前記膨張吸収層は、互いに離間している請求項5に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、正極層、固体電解質層、及び負極層の順に積層された発電要素部の側面が絶縁層により被覆され、当該絶縁層が当該側面を被覆する第1の絶縁層と第1の絶縁層の側面を被覆する第2の絶縁層により形成され、第1の絶縁層の弾性率が第2の絶縁層の弾性率よりも低い全固体電池を開示している。
【0003】
特許文献1では、弾性率の低い第1の絶縁層が全固体電池の充放電による体積変化を吸収することで自身の亀裂の発生を抑制し、弾性率の高い第2の絶縁層が第1の絶縁層及び発電要素部を保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、絶縁層は、正極側から負極側まで同じ材料により形成されている。一方、全固体電池の充放電の際、正極と負極の体積変化率は異なるため、正極及び負極のいずれかに絶縁層から物理的な負荷(歪)が掛かるため、耐久性能に悪影響を及ぼす。
【0006】
本発明は、充放電時の発電要素部へのダメージを低減することで耐久性能を高めた全固体電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による全固体電池は、正極層、固体電解質層、及び負極層が積層された発電要素部が配置され、さらに発電要素部の外周を覆うように絶縁部材が配置された全固体電池である。絶縁部材は、弾性率が5Gpa以下の絶縁層と、当該絶縁層より弾性率の低い膨張吸収層との積層構造を有し、発電要素部と同じ積層方向である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充放電時の正極層の体積変化率及び負極層の体積変化率にそれぞれ追従するように絶縁部材の体積変化率を不均一に変化させることが可能となる。したがって、充放電時における全固体電池全体の保形性を向上させ、絶縁部材が発電要素部に与えるダメージを低減して耐久性能を高めた全固体電池となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の全固体電池が備える単電池を説明する模式図(断面図)であり、中央にある一点鎖線よりも左側が充電前の単電池、中央にある一点鎖線よりも右側が充電後の単電池を示す。
【
図2】
図2は、第1比較例の全固体電池が備える単電池を説明する模式図(断面図)であり、中央にある一点鎖線よりも左側が充電前の単電池、中央にある一点鎖線よりも右側が充電後の単電池を示す。
【
図3】
図3は、第1実施形態の全固体電池の充放電回数と単位質量当たりの放電容量との関係を示す図である。
【
図4】
図4は、第1比較例の全固体電池の充放電回数と単位質量当たりの放電容量との関係を示す図である。
【
図5】
図5は、第2比較例の全固体電池が備える単電池を説明する模式図(断面図)である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の全固体電池が備える単電池を説明する模式図(断面図)である。
【
図7】
図7は、第3実施形態の全固体電池が備える単電池を説明する模式図(断面図)である。
【
図8】
図8は、第3比較例の全固体電池が備える単電池を説明する模式図(断面図)である。
【
図9】
図9は、第3比較例の全固体電池の充放電回数と単位質量当たりの放電容量との関係を示す図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態の全固体電池が備える単電池を説明する模式図(断面図)である。
【
図11】
図11は、第4比較例の全固体電池が備える単電池を説明する模式図(断面図)である。
【
図12】
図12は、第4比較例の全固体電池の充放電回数と単位質量当たりの放電容量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本実施形態の概要]
本実施形態に係る全固体電池100について説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態の全固体電池100が備える単電池9を説明する模式図(断面図)であり、中央にある一点鎖線よりも左側が充電前の単電池9、中央にある一点鎖線よりも右側が充電後の単電池9を示す。
【0012】
本実施形態の全固体電池100は、複数回充放電が可能な二次電池である。全固体電池100は、その内部に、以下に説明する単電池9が複数積層した構造体(不図示)を電池外装材であるラミネート層(不図示)で封止した状態で収容するいわゆる積層型の全固体電池100である。積層型とすることで、電池をコンパクトにかつ高容量化することができる。
【0013】
ただし、本発明が適用される全固体電池100が収容する単電池9は必ずしも複数層である必要はなく、単層であってもよい。なお、単電池9は、電池外装材に収容される前の状態において例えば円形又は矩形のシート状に構成される。また、本実施形態の全固体電池100の外観、及び内部における電気的な接続状態(電極構造)は特に限定されない。
【0014】
全固体電池100の外観は、平面視で、円、楕円、矩形形状が適用できる。或いは、単層、又は複数層の単電池9を巻き回して収容する円筒形状型であってもよい。また、全固体電池100の電極構造は、いわゆる非双極型(内部並列接続タイプ)、及び双極型(内部直列接続タイプ)のいずれが採用されてもよい。すなわち、以下に説明する単電池9の構成以外に関しての全固体電池100の態様は、公知あるいは非公知に関わらず、特に制限されない。
【0015】
単電池9は、互いに対向する一対の集電体(負極集電体3、正極集電体2)の間に、正極層11、固体電解質層12、負極層13の順に積層されて形成された発電要素部1が挟まれた構成を有している。また単電池9では、一対の集電体(負極集電体3、正極集電体2)の間に、発電要素部1(正極層11、固体電解質層12、負極層13)の周囲を覆うように絶縁部材4が配置されている。
【0016】
正極集電体2は、アルミニウム(Al)等の金属で形成された薄板である。負極集電体3は、ステンレス(SUS)や、銅(Cu)等の金属で形成された薄板である。
【0017】
正極層11は、正極集電体2の負極集電体3に対向する面に形成されている。正極層11は、例えばNMC811(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)を主原料として形成されたものが好適である。また、正極層11は、硫黄を含む正極活物質を含むことも好ましい。硫黄を含む正極活物質の種類としては、特に制限されないが、硫黄単体(S)のほか、有機硫黄化合物又は無機硫黄化合物の粒子又は薄膜が挙げられ、硫黄の酸化還元反応を利用して、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸蔵することができる物質であればよい。なお、正極層11は、充電時に体積(厚さ)が10%程度減少する。
【0018】
固体電解質層12は、固体電解質を主成分として含有し、負極層13と正極層11との間に介在する層である。固体電解質としては、硫化物固体電解質や酸化物固体電解質が挙げられるが、硫化物固体電解質であることが好ましく、例えばアルジロダイト(Li6PS5Cl)等が挙げられる。
【0019】
負極層13は、負極集電体3の正極集電体2に対向する面に配置され、リチウム合金、又はリチウム金属を包含する負極活物質により構成される。また、負極層13は負極集電体3と同じ材料を適用することも可能である。なお、単電池9を充電すると負極層13にリチウム金属が析出(厚さ10μm程度)し、放電すると析出したリチウム金属が消失する。負極層13としてリチウム金属を適用した場合は、当該リチウム金属自身がイオンとなって正極層11との間を往復することになるので、充放電に伴う膨張・収縮量は他の負極用の材料を適用した場合よりも大きくなる。
【0020】
負極層13は、リチウム化合物等を包含する負極活物質を含むものを適用できる。負極活物質の種類としては、特に制限されないが、炭素材料、金属酸化物及び金属活物質が挙げられる。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。また、金属酸化物としては、例えば、Nb2O5、Li4Ti5O12等が挙げられる。さらに、ケイ素系負極活物質やスズ系負極活物質が用いられてもよい。ここで、ケイ素及びスズは第14族元素に属し、非水電解質二次電池の容量を大きく向上させうる負極活物質であることが知られている。これらの単体は単位体積(質量)あたり多数の電荷担体(リチウムイオン等)を吸蔵及び放出しうることから、高容量の負極活物質となる。ここで、ケイ素系負極活物質としては、Si単体を用いることが好ましい。また同様に、Si相とケイ素酸化物相との2相に不均化されたSiOx(0.3≦x≦1.6)などのケイ素酸化物を用いることも好ましい。この際、xの範囲は0.5≦x≦1.5であることがより好ましく、0.7≦x≦1.2であることがさらに好ましい。さらには、ケイ素を含有する合金(ケイ素含有合金系負極活物質)が用いられてもよい。一方、スズ元素を含む負極活物質(スズ系負極活物質)としては、Sn単体、スズ合金(Cu-Sn合金、Co-Sn合金)、アモルファススズ酸化物、スズケイ素酸化物等が挙げられる。このうち、アモルファススズ酸化物としてはSnB0.4P0.6O3.1が例示される。また、スズケイ素酸化物としてはSnSiO3が例示される。また、負極活物質として、リチウムを含有する金属を用いてもよい。このような負極活物質は、リチウムを含有する活物質であれば特に限定されず、金属リチウムのほか、リチウム含有合金が挙げられる。リチウム含有合金としては、例えば、Liと、In、Al、Si及びSnの少なくとも1種との合金が挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。本発明は、充放電時の負極活物質の膨張収縮が大きい場合に特に優れた効果を奏するものである。このような観点と、高容量であるという点で、負極活物質は、金属リチウム、ケイ素系負極活物質又はスズ系負極活物質を含むことが好ましく、金属リチウムを含むことが特に好ましい。
【0021】
負極層13における負極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40~99質量%の範囲内であることが好ましく、50~90質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0022】
負極層13は、固体電解質をさらに含むことが好ましい。負極層13が固体電解質を含むことにより、負極層13のイオン伝導性を向上させることができる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質や酸化物固体電解質が挙げられるが、硫化物固体電解質であることが好ましい。
【0023】
硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5、LiI-Li3PS4、LiI-LiBr-Li3PS4、Li3PS4、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn(ただし、m、nは正の数であり、Zは、Ge、Zn、Gaのいずれかである)、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LixMOy(ただし、x、yは正の数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれかである)等が挙げられる。なお、「Li2S-P2S5」の記載は、Li2S及びP2S5を含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。
【0024】
硫化物固体電解質は、例えば、Li3PS4骨格を有していてもよく、Li4P2S7骨格を有していてもよく、Li4P2S6骨格を有していてもよい。Li3PS4骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-Li3PS4、LiI-LiBr-Li3PS4、Li3PS4が挙げられる。また、Li4P2S7骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LPSと称されるLi-P-S系固体電解質(例えば、Li7P3S11)が挙げられる。また、硫化物固体電解質として、例えば、Li(4-x)Ge(1-x)PxS4(xは、0<x<1を満たす)で表されるLGPS等を用いてもよい。なかでも、硫化物固体電解質は、P元素を含む硫化物固体電解質であることが好ましく、硫化物固体電解質は、Li2S-P2S5を主成分とする材料であることがより好ましい。さらに、硫化物固体電解質は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)を含有していてもよい。
【0025】
また、硫化物固体電解質がLi2S-P2S5系である場合、Li2S及びP2S5の割合は、モル比で、Li2S:P2S5=50:50~100:0の範囲内であることが好ましく、なかでもLi2S:P2S5=70:30~80:20であることが好ましい。
【0026】
上記のように、単電池9の充電時において負極層13の厚みが増加するが正極層11の厚みは減少し、単電池9の放電時において負極層13の厚みが減少するが正極層11の厚みは増加する。
図1(及び
図2)では、発電要素部1は充電により厚みが増加し、放電により厚みが減少している。しかし、発電要素部1の全体の厚みは、正極層11と負極層13の材料、及びその厚みの設定次第で充電時に減少する場合もある。
【0027】
絶縁部材4は、樹脂等の絶縁材料により形成され、発電要素部1の側面に密着(接合)し且つ周回するように平面視で枠形状(リング形状)となるように配置されている。絶縁部材4は絶縁層41と膨張吸収層42との積層構造を有し、発電要素部1と同じ積層方向となっている。
【0028】
絶縁層41は、正極集電体2に隣接(接合)する態様で配置されており、正極層11よりも厚みが厚く、且つ正極層11と固体電解質層12を足した厚みよりも薄くなるように設定されている。
【0029】
膨張吸収層42は、負極集電体3に隣接(接合)する態様で配置されており、負極層13よりも厚みが厚く、且つ負極層13と固体電解質層12を足した厚みよりも薄くなるように設定されている。
【0030】
絶縁層41及び膨張吸収層42の弾性率(ヤング率)は5Gpa(負極層13(リチウム金属)の弾性率)以下であり、さらに膨張吸収層42の弾性率は絶縁層41の弾性率よりも低くなるように設定されている。
【0031】
ここで、例えば絶縁層41としてはポリイミド(例えばカプトン(登録商標):3.3Gpa)が適用され、膨張吸収層42としてはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン:0.5Gpa)が適用される。
【0032】
絶縁層41と正極集電体2との接合、膨張吸収層42と負極集電体3との接合、及び絶縁層41と膨張吸収層42との接合に用いる接着剤(不図示)としては、例えばアクリル変性シリコーン樹脂系弾性接着剤(例えばセメダイン株式会社製:スーパーX(登録商標) No.8008、スーパーXG No.777、SX720W)、二液混合硬化型エポキシ・変性シリコーン系弾性接着剤(例えばセメダイン株式会社製:EP001K)等の樹脂系の接着剤、その他エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が適用される。
【0033】
[単電池9の製造工程]
単電池9の製造工程としては、アルミ箔(正極集電体2)、NMC811(正極層11)、アルジロダイト(固体電解質層12)、ステンレス箔(負極層13及び負極集電体3)の順で積層し、またアルミ箔(正極集電体2)とステンレス箔(負極層13)との間において、NMC811(正極層11)及びアルジロダイト(固体電解質層12)の外周を周回するようにカプトン(登録商標)(絶縁層41)、PTFE(膨張吸収層42)の順に積層し、積層方向からプレスして成型する。
【0034】
[第1実施形態と第1比較例との比較]
図2は、第1比較例の全固体電池100Wが備える単電池9Wを説明する模式図(断面図)であり、中央にある一点鎖線よりも左側が充電前の単電池9W、中央にある一点鎖線よりも右側が充電後の単電池9Wを示す。
【0035】
第1比較例の全固体電池100W(単電池9W)は、第1実施形態の全固体電池100(単電池9)とほぼ同様も構造であるが、絶縁部材4が単一の絶縁材料により形成されている。絶縁部材4は、その弾性率が例えば負極層13(リチウム金属)の弾性率よりも低いものが適用される。
【0036】
単電池9、及び単電池9Wにおいて充放電を実行すると、負極層13及び正極層11において体積(厚み)が変化する。その際、絶縁部材4は負極層13及び正極層11の体積(厚み)が変化に追従してその厚みを変化させることができる。
【0037】
しかし、発電要素部1においては、充電すると正極層11にあるリチウム金属が負極層13側に移動することで負極層13の厚みが増加して正極層11の厚みが減少する。逆に放電するとリチウム金属が正極層11側に移動することで負極層13の厚みが減少し正極層11の厚みが増加する。よって、発電要素部1では単電池9W(単電池9)の充放電の際に厚み方向の膨張・収縮が不均一に発生する。
【0038】
特に、負極層13としてリチウム金属を適用した場合、負極層13の体積変化率(厚みの変化率)は顕著となるので、発電要素部1の充放電の際の厚み方向の膨張・収縮が不均一性はさらに顕著となる。
【0039】
一方、絶縁部材4は発電要素部1から当該不均一な膨張・収縮に伴って不均一な応力を受けるが、単一の材料で形成されている。このため、絶縁部材4では当該不均一な応力に関して絶縁部材4の内部で均一にしようとする応力(復元力)が発生するので、当該応力を発電要素部1に印加することになる。したがって、正極層11及び負極層13のどちらかに必ず絶縁部材4からの応力が印加されるので、発電要素部1の耐久性が低下する。この場合、発電要素部1が絶縁部材4から剥離し、充放電の際に発電要素部1の側面にリチウム金属(リチウムデンドライト)が析出し、当該リチウム金属が負極層13と正極層11を短絡させる。
【0040】
一方、
図1に示すように、第1実施形態の全固体電池100(単電池9)では、絶縁部材4は、厚み方向において絶縁層41と膨張吸収層42に分かれており、絶縁層41が正極層11に接合し、膨張吸収層42が負極層13に接合している。また、絶縁層41及び膨張吸収層42の弾性率は、5Gpa以下(負極層13(リチウム金属)の弾性率以下)に設定され、特に膨張吸収層42の弾性率は絶縁層41の弾性率よりも低く設定されている。
【0041】
これにより、絶縁層41は正極層11の膨張・収縮に追従して膨張・収縮することができ、膨張吸収層42も負極層13の膨張・収縮に追従して膨張・収縮することができるので、絶縁部材4から正極層11及び負極層13に印加される応力を低減できる。
【0042】
前記のように、負極層13の体積変化率は正極層11の体積変化率よりも大きいので、負極層13が膨張吸収層42に印加する応力と、膨張吸収層42から負極層13に印加する応力(復元力)は大きくなる。しかし、膨張吸収層42の弾性率を絶縁層41よりも小さく設定することで、膨張吸収層42から負極層13に印加する応力(復元力)を低減することができ、その分、負極層13の耐久性を高めることができる。
【0043】
よって、充放電時の正極層11の体積変化率及び負極層13の体積変化率にそれぞれ追従するように絶縁部材4の体積変化率を不均一に変化させることが可能となるので、発電要素部1に対するダメージを低減して耐久性能を高めることができる。
【0044】
さらに、絶縁層41と膨張吸収層42は互いに接合しており、絶縁層41の弾性率は5Gpa以下(負極層13(リチウム金属)の弾性率)に設定されている。これにより、絶縁層41は負極層13の膨張・収縮に対してもある程度追従して膨張・収縮することができるので、その分、膨張吸収層42の膨張・収縮量を低減することで膨張吸収層42の耐久性を高めることができる。
【0045】
[充放電回数と放電容量]
図3は、第1実施形態の全固体電池100(単電池9)の充放電回数と単位質量当たりの放電容量との関係を示す図である。
図4は、第1比較例の全固体電池100W(単電池9W)の充放電回数と単位質量当たりの放電容量との関係を示す図である。
【0046】
本願発明者は、第1実施形態の単電池9と第1比較例の単電池9Wの放電容量に関して充放電を繰り返したときの変化について検討した。単電池9及び単電池9Wに対してCレートは0.05(20時間で満放電するレート)として定電流充電と定電流放電を繰り返すものとし、電圧が4.3[V](放電開始時電圧)と2.5[V](終止電圧)の間で充放電を繰り返した。
【0047】
第1実施形態の単電池9では、周囲温度を室温(25[℃])と60[℃]に設定し、それぞれの温度において充放電を繰り返しつつ放電容量を算出した。
【0048】
周囲温度が室温(25[℃])の場合、1回目の充放電において放電容量が約165[mAh/g]と算出されるが、充放電を繰り返すほど放電容量の値が単調減少する。これは、充放電を繰り返すと充放電で移動するリチウムイオンが正極層11又は負極層13にトラップされる量が多くなり、その分放電容量が小さくなることに起因する。また、放電容量は単調減少するものの14回充放電を繰り返した段階でも約120[mAh/g]あり、単電池9の短絡は発生していないことがわかる。
【0049】
周囲温度が60[℃]の場合、1回目の充放電において放電容量が約185[mAh/g]であり、室温(25[℃])よりも高い値となっている。これは、温度が上昇すると単電池9全体の内部抵抗が低下することに起因する。そして、充放電を繰り返すことで放電容量は低下していくが9回まで充放電を行っても放電容量は約136[mAh/g]であり、短絡は発生していないことがわかる。
【0050】
第1比較例の単電池9Wでは、周囲温度を室温(25[℃])に設定し、それぞれの温度において充放電を繰り返しつつ放電容量を算出した。
【0051】
1回目の充放電で約157[mAh/g]の放電容量を有するものの、2回目の充放電で放電容量が約130[mAh/g]まで急激に減少し、3回目の充放電で放電容量が0[mAh/g]となった。これは上記の理由により単電池9Wが短絡したものと考えられる。なお、単電池9Wにおいて、絶縁部材4の弾性率が5Gpaよりも大きな材料で形成された場合も同様に2回若しくは3回の充放電で短絡する。
【0052】
[第2比較例]
図5は、第2比較例の全固体電池100Xが備える単電池9Xを説明する模式図(断面図)である。第2比較例の全固体電池100X(単電池9X)は、第1実施形態の全固体電池100(単電池9)と同様に絶縁部材4(絶縁層41、膨張吸収層42)を有する。しかし、絶縁層41は固体電解質層12には接合しているが正極層11と接合しておらず、正極層11との間には隙間411が形成されている。同様に、膨張吸収層42は固体電解質層12には接合しているが負極層13と接合しておらず、負極層13との間に隙間421が形成されている。
【0053】
上記構成において充電すると、負極層13の隙間421に面する側面にリチウム金属(リチウムデンドライト)が析出し、これが成長することで固体電解質層12に接触するとともに固体電解質層12を貫通し、最後に正極層11に到達することで負極層13と正極層11が短絡する。
【0054】
また、上記構成において放電すると、正極層11の隙間411に面する側面にリチウム金属(リチウムデンドライト)が析出して少なくとも放電容量が低下する。
【0055】
しかし、第1実施形態の全固体電池100(単電池9)では、絶縁部材4が発電要素部1に密着しているので、充電時において負極層13の側面におけるリチウム金属(リチウムデンドライト)の析出を抑制し、負極層13と正極層11との短絡を低減することができる。また、放電時において正極層11の側面におけるリチウム金属(リチウムデンドライト)の析出を低減することで放電容量の低下を抑制することができる。
【0056】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態の全固体電池100(単電池9)によれば、正極層11、固体電解質層12、及び負極層13が積層された発電要素部1が配置され、さらに発電要素部1の外周を覆うように絶縁部材4が配置された全固体電池100において、絶縁部材4は、弾性率が5Gpa以下の絶縁層41と、絶縁層41より弾性率の低い膨張吸収層42との積層構造を有し、発電要素部1と同じ積層方向である。
【0057】
上記構成により、絶縁層41は正極層11の膨張・収縮に追従して膨張・収縮することができ、膨張吸収層42も負極層13の膨張・収縮に追従して膨張・収縮することができる。したがって、充放電時における全固体電池100(単電池9)全体の保形性を向上させ(変形量を小さくし)、絶縁部材4から正極層11及び負極層13に印加される応力を低減できる。
【0058】
前記のように、負極層13の体積変化率は正極層11の体積変化率よりも大きいので、負極層13が膨張吸収層42に印加する応力と、膨張吸収層42から負極層13に印加する応力(復元力)は大きくなる。しかし、膨張吸収層42の弾性率を絶縁層41よりも小さく設定することで、膨張吸収層42から負極層13に印加する応力(復元力)を低減することができ、その分、負極層13の耐久性を高めることができる。
【0059】
よって、充放電時の正極層11の体積変化率及び負極層13の体積変化率にそれぞれ追従するように絶縁部材4の体積変化率を不均一に変化させることが可能となる。これにより、発電要素部1に対するダメージを低減して耐久性能を高めることができる。また、これにより、絶縁部材4の発電要素部1からの剥離を低減できるので、絶縁部材4が剥離することで露出する発電要素部1(正極層11、負極層13)の側面においてリチウム金属(リチウムデンドライト)が析出し、これが成長することで正極層11と負極層13が短絡することを低減できる。
【0060】
さらに、弾性率が5Gpa以下である絶縁層41は負極層13の膨張・収縮に対してもある程度追従して膨張・収縮することができるので、その分、膨張吸収層42の膨張・収縮量を低減することで膨張吸収層42の耐久性を高めることができる。
【0061】
第1実施形態において、発電要素部1及び絶縁部材4は、一対の集電体(正極集電体2、負極集電体3)の間に配置され、絶縁層41及び膨張吸収層42は、一対の集電体(正極集電体2、負極集電体3)が対向する方向に積層され、且つ発電要素部1に密着している。
【0062】
これにより、発電要素部1を絶縁部材4に密着させることで、充放電中の意図しない副反応の発生を低減できる。具体的には、充電時において負極層13の側面におけるリチウム金属(リチウムデンドライト)の析出を抑制し、負極層13と正極層11との短絡を低減することができる。また、放電時において正極層11の側面におけるリチウム金属(リチウムデンドライト)の析出を低減することで放電容量の低下を抑制することができる。
【0063】
第1実施形態において、負極層13はリチウム金属、又はリチウム化合物を含み、膨張吸収層42は、一対の集電体(正極集電体2、負極集電体3)のうち負極層13に隣接する集電体(負極集電体3)に隣接している。
【0064】
上記構成により、負極層13としてリチウム金属を適用した場合は、充放電に伴う膨張・収縮が顕著となるが、当該負極層13に弾性率が5Gpaよりも低い膨張吸収層42が接合することで、負極層13に対する応力(復元力)の印加を低減して耐久性を高めることができる。また、負極層13としてリチウム化合部を包含する場合は、リチウム金属を包含する場合と同様に放電容量を大きくすることができる。
【0065】
[第2実施形態、第3実施形態]
図6は、第2実施形態の全固体電池100Aが備える単電池9Aを説明する模式図(断面図)である。
図7は、第3実施形態の全固体電池100Bが備える単電池9Bを説明する模式図(断面図)である。第2実施形態の全固体電池100A(単電池9A)及び第3実施形態の全固体電池100B(単電池9B)は、第1実施形態の全固体電池100(単電池9)と同様に発電要素部1の側面に密着して周回するように絶縁部材4が配置され、絶縁部材4は絶縁層41と膨張吸収層42を備え両者が互いに接合している。
【0066】
図6に示す第2実施形態の全固体電池100A(単電池9A)において、膨張吸収層42は、負極集電体3に隣接(接合)している。また膨張吸収層42は、負極層13よりも厚みが厚く、負極層13の側面全体に密着している。これにより、充電時において負極層13の側面へのリチウム金属(リチウムデンドライト)が析出を低減することができる。
【0067】
絶縁層41は、正極集電体2に隣接(接合)している。しかし、絶縁層41は、正極層11よりも厚みが薄く、正極層11の固体電解質層12側には絶縁層41とは密着していない領域がある。しかし当該領域は膨張吸収層42に密着しており、正極層11の側面は外部に露出していない。これにより、放電時において正極層11の側面へのリチウム金属(リチウムデンドライト)の析出を低減することができる。
【0068】
図7に示す第3実施形態の全固体電池100A(単電池9A)において、正極集電体2に隣接(接合)している。また絶縁層41は、正極層11よりも厚みが厚く、正極層11の側面全体に密着している。これにより、放電時において正極層11の側面へのリチウム金属(リチウムデンドライト)が析出を低減することができる。
【0069】
膨張吸収層42は、負極集電体3の隣接(接合)している。しかし、膨張吸収層42は、負極層13よりも厚みが薄く、負極層13の固体電解質層12側には膨張吸収層42とは密着していない領域がある。しかし当該領域は絶縁層41に密着しており、負極層13の側面は外部に露出していない。これにより、充電時において負極層13の側面へのリチウム金属の析出を低減することができる。
【0070】
以上より、第2実施形態の全固体電池100A(単電池9A)、第3実施形態の全固体電池100B(単電池9B)、
図3に示す第1実施形態の全固体電池100(単電池9)の放電容量特性と同様の放電容量特性を有する。
【0071】
[第3比較例]
図8は、第3比較例の全固体電池100Yが備える単電池9Yを説明する模式図(断面図)である。
図9は、第3比較例の全固体電池100Yの充放電回数と単位質量当たりの放電容量との関係を示す図である。
【0072】
第3比較例の全固体電池100Y(単電池9Y)は、第1実施形態の全固体電池100(単電池9)と同様に発電要素部1の側面に密着して周回するように絶縁部材4が配置されており、絶縁層41は正極集電体2に隣接(接合)し、膨張吸収層42は負極集電体3に隣接(接合)している。
【0073】
しかし、絶縁層41の厚みは正極層11よりも薄い。このため、正極層11の固体電解質層12側の側面が外部に露出している。よって、放電時に正極層11の当該側面にリチウム金属が析出し、これにより放電能力が低下する虞がある。
【0074】
同様に、膨張吸収層42の厚みも負極層13よりも薄い。このため、負極層13の固体電解質層12側の側面が外部に露出している。よって、充電時に負極層13の当該側面にリチウム金属が析出し、これにより全固体電池100Y(単電池9Y)が短絡する虞がある。
【0075】
図9に示すように、第3比較例の全固体電池100Y(単電池9Y)の単位質量当たりの放電容量は、1回目の充放電で約160[mAh/g]であったが、2回目の充放電では0[mAh/g]となった。これは、上記理由により正極層11と負極層13の間が短絡したものと考えられる。
【0076】
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態の全固体電池100Cが備える単電池9Cを説明する模式図(断面図)である。第4実施形態の全固体電池100C(単電池9C)は、第1実施形態の全固体電池100(単電池9)と類似の構成を有している。すなわち、絶縁層41は正極集電体2に隣接(接合)するとともに絶縁層41の厚みは正極層11よりも厚く設定されている。同様に、膨張吸収層42は負極集電体3に隣接(接合)するとともに膨張吸収層42の厚みは負極層13よりも厚く設定されている。
【0077】
第4実施形態の全固体電池100C(単電池9C)においても、正極層11の側面の全体に絶縁層41が密着しており、正極層11の側面へのリチウム金属の析出を低減できる構成となっている。同様に、負極層13の側面の全体に膨張吸収層42が密着しており、負極層13の側面へのリチウム金属の析出を低減できる構成となっている。
【0078】
しかし、第4実施形態の全固体電池100C(単電池9C)では、絶縁層41と膨張吸収層42とが互いに離間しており、両者の間に隙間43が形成されている。隙間43により、固体電解質層12のみが外部に露出した態様となっている。
【0079】
これにより、全固体電池100C(単電池9C)を、厚み方向から押圧したとき、絶縁部材4に押圧力が印加されず、発電要素部1にのみ押圧力が印加されるので、その分、発電要素部1の充放電効率を高めることができる。
【0080】
全固体電池100C(単電池9C)を厚み方向から押圧したときに、絶縁層41と膨張吸収層42が互いに接触してもよい。この場合も外部から印加された押圧力は主に発電要素部1に印加されるので、発電要素部1の充放電効率を高い状態に維持できる。
【0081】
以上より、第4実施形態の全固体電池100C(単電池9C)は、
図3に示す第1実施形態の全固体電池100(単電池9)の放電容量特性と同様の放電容量特性を有する。
【0082】
[第4比較例]
図11は、第4比較例の全固体電池100Zが備える単電池9Zを説明する模式図(断面図)である。
図12は、第4比較例の全固体電池100Zの充放電回数と単位質量当たりの放電容量との関係を示す図である。
【0083】
第4比較例の全固体電池100Z(単電池9Z)は、第1実施形態の全固体電池100(単電池9)と類似の構成を有している。しかし、第4比較例の全固体電池100Z(単電池9Z)では、絶縁部材4の厚みが発電要素部1よりも厚くなっている。また、絶縁層41が正極層11よりも正極集電体2側に突出しており、膨張吸収層42も負極層13よりも負極集電体3側に突出している。すなわち、正極層11と正極集電体2との間には隙間21が形成され、負極層13と負極集電体3との間には隙間31が形成されている。
【0084】
上記構成で全固体電池100Z(単電池9Z)を厚み方向から押圧すると、隙間21側が凸となるように正極集電体2が変形して正極集電体2が正極層11に接触し、同様に、隙間31側が凸となるように負極集電体3が変形して負極集電体3が負極層13に接触する。
【0085】
上記構成において、外部から押圧力が最も係る位置は、絶縁層41の正極集電体2側の端面における内側角部412と、膨張吸収層42の負極集電体3側の端面における内側角部422となる。
【0086】
よって、発電要素部1は、内側角部412及び内側角部422に隣接する外周部が最も強く押圧力を受けることになるが、中央部はほとんど押圧力を受けることはない。このため、中央部における充放電効率が低下し、全固体電池100Z(単電池9Z)全体の充放電効率も低下する。
【0087】
また、絶縁部材4においては、前記のように押圧力が内側角部412及び内側角部422に偏在して印加されるため絶縁部材4が変形して発電要素部1から剥離し、当該剥離した部分(負極層13の側面)に金属リチウム(リチウムデンドライト)が析出し、この金属リチウムが成長して正極層11に到達することで正極層11と負極13層が短絡する虞がある。
【0088】
図12に示すように、第4比較例の全固体電池100Z(単電池9Z)の単位質量当たりの放電容量は、1回目の充放電で約40[mAh/g]と、他の実施形態等よりも低い値となっている。これは、上記理由により充放電効率が低下したものと考えられる。また、2回目の充放電では0[mAh/g]となった。これは、上記理由により正極層11と負極層13の間が短絡したものと考えられる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0090】
100 全固体電池
1 発電要素部
11 正極層
12 固体電解質
13 負極層
2 正極集電体
3 負極集電体
4 絶縁部材
41 絶縁層
42 膨張吸収層
9 単電池