(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138043
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】床下タラップ出入口の手摺構造
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20220914BHJP
E06C 7/18 20060101ALI20220914BHJP
E06C 9/04 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
E04F11/18
E06C7/18
E06C9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037815
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上月 勇一
【テーマコード(参考)】
2E044
2E301
【Fターム(参考)】
2E044AA01
2E044BB01
2E044BB07
2E044BC18
2E044DA01
2E044DB01
2E044EE13
2E301FF01
2E301HH01
(57)【要約】
【課題】手摺として使用する際にもガタつくことなく使用者が安心して使用することができる床下タラップ出入口の手摺構造を提供する。
【解決手段】床下タラップ出入口の手摺構造1は、蓋4aで閉塞自在に床2に設けられた開口を出入口4として、床下に設けられたタラップ5への出入り際に使用する手摺部7を出入口4に備える。出入口4には、手摺部7を上下方向に抜き差し自在な挿通部6aに挿通して支持する支持部6が設けられている。手摺部7は、支持部6の挿通部6aに挿入可能に支持される固定部8と、固定部8よりも長く細い手摺本体部9と、固定部8と手摺本体部9との間に設けられた抜止部10と、を備える。固定部8を挿通部6aに挿通させることで手摺本体部9を手摺として用いることができ、手摺本体部9を挿通部6aに挿通させることで固定部8が出入口4よりも上方へ突出することなく、蓋4aで出入口4を閉塞することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋で閉塞自在に床に設けられた開口を出入口として、床下に設けられたタラップへの出入り際に使用する手摺部を前記出入口に備えた床下タラップ出入口の手摺構造であって、
前記出入口には、前記手摺部を上下方向に抜き差し自在な挿通部に挿通して支持する支持部が設けられ、
前記手摺部は、
前記支持部の前記挿通部に挿入可能に支持される固定部と、
前記固定部よりも長く細い手摺本体部と、
前記固定部と前記手摺本体部との間に設けられた抜止部と、
を備え、
前記固定部を前記挿通部に挿通させることで前記手摺本体部を手摺として用いることができ、
前記手摺本体部を前記挿通部に挿通させることで前記固定部が前記出入口よりも上方へ突出することなく、前記蓋で前記出入口を閉塞することができることを特徴とする床下タラップ出入口の手摺構造。
【請求項2】
請求項1に記載の床下タラップ出入口の手摺構造であって、
前記固定部と前記挿通部とには、前記固定部が前記挿通部に挿通されたときに相対的な回転を阻止する回転阻止部が設けられていることを特徴とする床下タラップ出入口の手摺構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の床下タラップ出入口の手摺構造であって、
前記手摺部及び前記支持部は夫々一対設けられていることを特徴とする床下タラップ出入口の手摺構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の床下タラップ出入口の手摺構造の使用方法であって、
前記手摺部を使用しないときには、前記手摺本体部を前記挿通部に挿通させることで前記固定部が前記出入口よりも上方へ突出することなく、前記蓋で前記出入口を閉塞することができ、
前記手摺部を使用するときには、前記固定部を把持して、前記手摺本体部を前記挿通部から引き抜き、前記手摺部を上下反転させて前記固定部を前記挿通部に差し込んで使用することを特徴とする床下梯子出入口の手摺構造の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下タラップ出入口の手摺構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の1階床下の地下ピットには、配管や配線、雨水水槽や防火水槽、ボイラーやポンプなどの機械設備、免震装置などが設置されていることがある。特に、敷地の確保が難しい大都市の高層ビルなどは、地下ピットの空間を広く設けて敷地を有効活用している。地下ピットの高さが高いところでは、4m~5mほどになるところもある。
【0003】
地下ピットへ設備などを設置する場合には、設備の点検・整備などをするためにも出入り可能にする必要がある。設備の点検は年に数回程度であるが、設備の種類によって、点検担当者が異なることから、複数の設備が設置されている地下ピットの昇降設備の利用頻度は少なくない。
【0004】
階段の昇降設備を設けられない場合には、1階床面に開口を設け、タラップを伝って昇降する方法がとられる。
【0005】
開口部の蓋は、非点検時(常時)には共用廊下などの床面の一部として構成される。地下へ移動する必要がある点検時には、蓋を開けて地下ピット壁面に設置されたタラップを伝って移動するが、作業者が床上からタラップの上段に手をかけるまでの間は不安定な状況で移動することになる。
【0006】
そこで、タラップの横に固定された外筒と、外筒内に手動自在に挿入された内筒を設け、内筒を上方へ引き上げて固定して手摺として用いる手摺構造が知られている(特許文献1参照)。特許文献1の手摺構造によれば、地下ピットの出入口の蓋を開けて、内筒を上方へ引き上げるだけで手摺を設置することができ、別のところから手摺を持ってきて設置することなく容易に、手摺を設置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の手摺構造は、外筒内を内筒が摺動して上方へ突出することにより内筒が手摺として利用できるものであるため、内筒を上に引っ張り易くする為に外筒と内筒の隙間を比較的大きく設定する必要があり、手摺として使用する際にガタつきが生じるため不安定であり、使用者が不安を感じるものであった。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、手摺として使用する際にもガタつくことなく使用者が安心して使用することができる床下タラップ出入口の手摺構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
蓋で閉塞自在に床に設けられた開口を出入口として、床下に設けられたタラップへの出入り際に使用する手摺部を前記出入口に備えた床下タラップ出入口の手摺構造であって、
前記出入口には、前記手摺部を上下方向に抜き差し自在な挿通部に挿通して支持する支持部が設けられ、
前記手摺部は、
前記支持部の前記挿通部に挿入可能に支持される固定部と、
前記固定部よりも長く細い手摺本体部と、
前記固定部と前記手摺本体部との間に設けられた抜止部と、
を備え、
前記固定部を前記挿通部に挿通させることで前記手摺本体部を手摺として用いることができ、
前記手摺本体部を前記挿通部に挿通させることで前記固定部が前記出入口よりも上方へ突出することなく、前記蓋で前記出入口を閉塞することができることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、手摺本体部を挿通部に挿通しているときには、手摺本体部は固定部よりも細いため、従来と同様またはそれ以上に挿通部を容易に摺動させることができる。また、固定部は、手摺本体部よりも太いため、支持部にガタつきなく固定される寸法に設計することができ、手摺として使用する際にもガタつくことなく使用者が安心して使用することができる。
【0012】
[2]また、本発明においては、前記固定部と前記挿通部とには、前記固定部が前記挿通部に挿通されたときに相対的な回転を阻止する回転阻止部が設けられていることが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、固定部と挿通部との相対的な回転が回転阻止部によって阻止されるため、使用者が手摺本体部に手をかけても手摺本体部が回転することがなく、利用者が更に安心して利用することができる。
【0014】
[3]また、前記手摺部及び前記支持部は夫々一対設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、使用者は、左右の両手で一対の手摺部をそれぞれしっかりと把持することができ、安定した状態でタラップを降りたり上ったりすることができる。
【0015】
[4]また、本発明の床下タラップ出入口の手摺構造の使用方法においては、
前記手摺部を使用しないときには、前記手摺本体部を前記挿通部に挿通させることで前記固定部が前記出入口よりも上方へ突出することなく、前記蓋で前記出入口を閉塞することができ、
前記手摺部を使用するときには、前記固定部を把持して、前記手摺本体部を前記挿通部から引き抜き、前記手摺部を上下反転させて前記固定部を前記挿通部に差し込んで使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】発明の実施形態の床下タラップ出入口の手摺構造を模式的に示す平面図。
【
図2】本実施形態の床下タラップ出入口の手摺構造を模式的に示す側面図。
【
図3】本実施形態の床下タラップ出入口の手摺構造の収納状態を模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図を参照して、発明の実施形態の床下タラップ出入口の手摺構造を説明する。本実施形態の床下タラップ出入口の手摺構造は、建築構造物の地下ピットへ出入りする点検口としての出入口に設けられる安全設備に関する。
【0018】
建築物の1階床下の地下ピットには、配管や配線、雨水水槽や防火水槽、ボイラーやポンプなどの機械設備、免振装置などが設置されていることがある。特に、敷地の確保が難しい大都市の高層ビルなどは、地下ピットの空間を広く設けて敷地を有効活用している。地下ピットの高さが高いところでは、4m~5mほどになるところもある。
【0019】
地下ピットへ設備などを設置する場合には、設備の点検・整備などをするためにも出入り可能にする必要がある。設備の点検は年に数回程度であるが、設備の種類によって、点検担当者が異なることもあり、複数の設備が設置されている地下ピットの昇降設備の利用頻度は少なくない。
【0020】
階段の昇降設備を設けられない場合には、1階床面に開口を設け、タラップを伝って昇降する方法がとられる。
【0021】
開口部の蓋は、非点検時(常時)には共用廊下などの床面の一部として構成される。地下へ移動する必要がある点検時には、蓋を開けて地下ピット壁面に設置されたタラップを伝って移動するが、作業者が床上からタラップの上段に手をかけるまでの間は不安定な状況で移動することになる。
【0022】
図1は、本実施形態の床下タラップの手摺構造1を模式的に示した平面図である。
図1では手摺部7は省略している。
図2は、本実施形態の床下タラップの手摺構造1を側方から模式的に示した説明図である。
【0023】
床2の下には、地下ピット3が設けられている。床2には、地下ピット3へ出入りするための出入口4(点検口)が設けられている。地下ピット3の側壁面3aには、複数のタラップ5が上下方向に間隔を存して設けられている。
【0024】
出入口4のタラップ5側には、円筒形状の一対の支持部6がタラップ5の幅と同一程度に互いに間隔を存して設けられている。支持部6は、上下方向に上下端の開口が位置するように配置されている。円筒形状の支持部6の内部空間が本実施形態の挿通部6aに該当する。また、支持部6には、上縁から下方に向かって延びる切欠部6b(
図1参照)が設けられている。
【0025】
図2を参照して、支持部6には、手摺部7を着脱自在に固定することができる。手摺部7は、円筒形棒状であり、そして、挿通部6aに挿通して支持部6に固定可能な固定部8と、固定部8に連続して同心に延びる手摺本体部9と、固定部8と手摺本体部9の間に設けられ、径方向外側へ張り出す抜止部10と、を備えている。固定部8の外周面には上下方向に延びる突片形状の回転阻止部8aが設けられている。回転阻止部8aは、切欠部6bと嵌合することで、固定部8が支持部6に固定された状態で、手摺部7が支持部6に対して相対的に回転することを阻止している。
【0026】
手摺本体部9は固定部8よりも長く且つ細く形成されている。
図3は、固定部8を支持部6から抜いた後、手摺部7を上下反転させて、手摺本体部9を支持部6に挿入した状態を模式的に示している。
【0027】
手摺本体部9は固定部8よりも細く形成されているため、手摺本体部9を支持部6に容易に挿入することができる。また、固定部8を把持して上方へ引っ張り、手摺本体部9を支持部6から引き抜くことも容易である。また、固定部8は手摺本体部9よりも太く形成されているため、
図2に示すように、固定部8を支持部6にガタつきなく差し込めるように構成することができ、手摺本体部9がガタついて不安定になることを防止することができる。
【0028】
図3に示すように、固定部8は、出入口4を蓋4aで閉じられるように手摺本体部9よりも短く形成されている。ただし、固定部8は、手摺本体部9よりも短いものの手摺本体部9を手摺として使用するときに、安全性を確保すべく固定部8が支持部6から意図せずに抜け出てしまうことのない程度の長さは確保されている。また、
図2に示すように、手摺本体部9は、使用者がタラップ5へ降り易いように、出入口4よりも上方へ延びるように、固定部8よりも長く形成されている。
【0029】
本実施形態の床下タラップ出入口の手摺構造1によれば、手摺本体部9を挿通部6aに挿通しているときには、手摺本体部9は固定部8よりも細いため、従来と同様またはそれ以上に挿通部6aを容易に摺動させることができる。また、固定部8は、手摺本体部9よりも太いため、支持部6にガタつきなく固定される寸法に設計することができ、手摺として使用する際にもガタつくことなく使用者が安心して使用することができる。
【0030】
また、本実施形態の床下タラップ出入口の手摺構造1によれば、固定部8と支持部6の挿通部6aとの相対的な回転が切欠部6bに嵌合した回転阻止部8aによって阻止されるため、使用者が手摺本体部9に手をかけても手摺本体部9が回転することがなく、利用者が更に安心して利用することができる。
【0031】
また、手摺部7と支持部6は1つだけでも、ガタつきを防止し使用者が安心して使用することができるという作用効果を得られるが、本実施形態のように手摺部7及び支持部6はタラップ5の幅方向に間隔を存して夫々一対設けられているため、使用者は、左右の両手で一対の手摺部7の手摺本体部9をそれぞれしっかりと把持することができ、安定した状態でタラップ5を降りたり上ったりすることができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、円筒形状の手摺部7を説明したが、発明の手摺部はこれに限らず、棒状であればよい。例えば、固定部と手摺本体部とが角筒形状であってもよく、または、固定部のみが角柱形状であり、手摺本体部が円柱形状としてもよい。この場合、挿通部も断面四角形状とすることで、回転防止部(固定部の断面四角形状の角部)を構成してもよい。
【0033】
また、固定部を支持部6の挿通部6aに差し込み易くするために、少なくとも先端部分を先細り形状(テーパ形状)としてもよい。また、発明のタラップは地下ピット用に限らず、床(ただし地面を含む)の出入口から下方へ延びるように設けられたタラップであればよく、床下の空間は地下ピットに限らない。
【0034】
また、本実施形態においては、支持部6の切欠部6bに固定部8の突片状の回転阻止部8aを嵌合させて支持部6と固定部8との相対的な回転を阻止するものを説明した。しかしながら、発明の床下タラップ出入口の手摺構造の回転防止部はこれに限らず、固定部と挿通部とには固定部が挿通部に挿通されたときに相対的な回転を阻止するように回転阻止部が設けられていればよい。例えば、支持部に凸部を設け、固定部にその凸部が嵌合する切欠を設けてもよい。また、回転阻止部をボタン式にしてもよい。また、支持部にピンを差し込んで回転阻止部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 床下タラップ出入口の手摺構造
2 床
3 地下ピット
3a 側壁面
4 出入口(点検口)
4a 蓋
5 タラップ
6 支持部
6a 挿通部
6b 切欠部
7 手摺部
8 固定部
8a 回転阻止部
9 手摺本体部
10 抜止部