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特開2022-138044ピンチユニットおよび該ピンチユニットを複数備えた物干し具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138044
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】ピンチユニットおよび該ピンチユニットを複数備えた物干し具
(51)【国際特許分類】
   D06F 55/00 20060101AFI20220914BHJP
   D06F 57/00 20060101ALI20220914BHJP
   A47G 25/02 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
D06F55/00 C
D06F57/00 350
D06F57/00 380
A47G25/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037817
(22)【出願日】2021-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】516012807
【氏名又は名称】崎山 方央
(72)【発明者】
【氏名】崎山 方央
【テーマコード(参考)】
3K099
【Fターム(参考)】
3K099BA13
3K099CB34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】デリケートな薄物の生地を傷めることなく弱い力で開放でき、かつ、より分厚い生地の洗濯物も確実に開放することができ、耐強風性能が向上し、操作性と取り回しの良い一括開放物干し具を提供する。
【解決手段】ピンチユニット1は、ピンチ部材30の支持部材10への連結構造に、連結される部材同士が隙間をもって嵌め合わされる滑動連結構造を採用するとともに、規制部材60を緊張状態としたときの前記規制部材60による支持部材側係止部61a、61bを支点とした前記ピンチ部材30の回動にともなう滑動連結構造と前記規制部材60との連動により、被挟持物を容易に開放できることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばね部材によって付勢された第一挟持片及び第二挟持片の挟持部にて被挟持物を保持するピンチ部材と、
該ピンチ部材を支持する支持部材と、
前記第一挟持片の把持部に固定され、前記ピンチ部材を前記支持部材に連結する吊持部材と、
前記支持部材と前記ピンチ部材第二挟持片とをつなぎ、前記ピンチ部材が垂下された姿勢で弛緩状態で係止された規制部材と、
により構成され、前記ピンチ部材挟持部の前記第一挟持片側への移動にともない前記規制部材が作用し前記ピンチ部材挟持部の開放がなされるピンチユニットであって、
前記支持部材は、基台部と、第一支持軸基部および第二支持軸基部にて該基台部より突出して接続される曲状の支持軸と、からなり、
前記吊持部材は、該支持軸に滑動可能に懸けられている縦長の滑動連結部にて、前記ピンチ部材を前記支持部材に連結し、
前記規制部材は、前記ピンチ部材挟持部の移動方向とは反対側の前記基台部に設けられた支持部材側係止部により前記支持部材と係止されており、前記ピンチ部材挟持部の前記移動にともない、前記規制部材が弛緩状態から緊張状態へと移行することで、前記ピンチ部材の吊持箇所を前記第一挟持片から前記第二挟持片に切り替えるとともに、前記緊張状態後の前記規制部材による前記支持部材側係止部を支点とした前記ピンチ部材の回動をもたらすものであり、
該回動にともなう前記滑動連結部の前記支持部材の前記基台部へ当接、および、その後の前記基台部に支持された状態での滑動により前記ピンチ挟持部の開放がなされることを特徴とするピンチユニット。
【請求項2】
前記滑動連結部の前記基台部に支持された状態での前記滑動は、前記基台部に加えて前記支持軸に前記滑動連結部が当接し回転滑動するものであることを特徴とする請求項1記載のピンチユニット。
【請求項3】
前記滑動連結部の前記基台部に支持された状態で前記滑動は、前記基台部上で前記滑動連結部が前記支持部材側係止部方向に移動した後、反転移動するものであることを特徴とする請求項1記載のピンチユニット。
【請求項4】
前記ピンチユニットは、前記規制部材の緊張状態に至るまでのタイミングと、前記吊持部材と前記基台部との当接姿勢と、が、前記挟持部に挟まれる前記被挟持物の厚みによって変化することを特徴とする請求項1に記載のピンチユニット。
【請求項5】
前記ピンチユニットの前記基台部に支持された状態での前記滑動による前記ピンチ挟持部の前記開放動作は、前記挟持部に挟まれる前記被挟持物の厚みによって、前記基台部に加え前記支持軸への当接により前記ピンチ部材の回転運動を梃子の駆動力に変換して開放する第一の開放モードと、前記基台部に沿って前記支持軸から離れる方向への直線運動を梃子の駆動力に変換して開放する第二の開放モードと、をとり得ることを特徴とする請求項1または4に記載のピンチユニット。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のピンチユニットを複数備えるフレームを有するとともに、これら複数のピンチユニットが前記フレームに同じ向きに配置されたピンチユニット群を有することを特徴とする物干し具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯物等の被挟持物を干すために利用されるピンチユニットおよび該ピンチユニットを複数備えた物干し具であり、特に被挟持物を一括で開放可能なピンチユニットと該ピンチユニットを複数備えた物干し具に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯物等を干すために広く利用される物干し具としては、複数の洗濯バサミとなるピンチユニットがフレームに取り付けられた構成のものがある。このような物干し具は、洗濯物を干す際には個々のピンチユニットに洗濯物を挟んで吊り下げ、洗濯物を取り込む時には、個々のピンチユニットの把持部を一つ一つ手でつまんで開放するという動作を要する。このピンチユニットの開放動作は、ピンチユニットの数が多いと、思いのほか手間な作業となるため、この手間を減らすことを課題とした方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1および特許文献2には、洗濯物を洗濯物吊り下げ方向(下方)に引っ張ることで、ピンチの侠持力を弱めて挟持部を開放し、取り込みを容易にする洗濯バサミが提案されている。
しかしながら、この構成では、洗濯物吊り下げ方向と開放時の引っ張り方向とが同方向であるため、「比較的重い挟持物とか、挟み部分が厚い挟持物を干すと、ピンチの挟み部が拡開する恐れがある」と記載されるように挟持物の自重や挟持物にかかる風の力が挟持力を弱めてしまう。この問題に関しては、特許文献1、2の発明者ともに認識していることから、この問題に対処すべく、ピンチ開放規制機構(特許文献1:応用例、特許文献2:吊り上げ手段19)を付加し、開放機構を働かないようにする構成を記載している。
このピンチ開放規制機構を付加した形態は、構成の複雑さが生じるだけでなく、使用者にピンチ開放規制機構操作の手間が必要になるといったように使用者の利便性を損ねてしまうものであった。
このように、特許文献1、2に記載の構成は、「挟持力の維持と開放とが有効に機能する挟持物の厚みの範囲」がそもそも狭く、厚みや重さが異なる種々の洗濯物に対応することが困難で、ピンチ開放機構の利便性を十分に享受できるものとはなっていなかった。また、デリケートな極薄物の洗濯物に対しては下方へ引っ張って取り外すため傷む虞があり安心して使えなかった。
【0004】
そこで、本発明者は、このような問題に鑑み、本発明者は、先に、ピンチ部材を回動させて開放させる回動開放機構により、洗濯物の吊り下げ方向とピンチ開放時における引っ張り方向とを異ならせ、挟持物の自重が開放機構に作用しない構成とした提案を出願している。(特許文献3,4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-190896号公報
【特許文献2】特開平8-206395号公報
【特許文献3】特許4911490号公報
【特許文献4】特許6523081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら特許文献3,4の構成においては、上述の「挟持力の維持と開放とが有効に機能する挟持物の厚みの許容範囲」は、特許文献1、2に比べれば広くなるものの、この範囲を厚い洗濯物に適用できるまで十分に広げることは難しかった。すなわち、厚い洗濯物では、挟持部を大きく開くためにピンチ部材の回動量を大きくとる必要があるが、挟持部開放に使えるピンチ部材の回動量にも限界があるため、特に、より大きな回動量を要する厚物(例えば、5mmを超える厚さのもの)の被挟持物まで対応させることは難しかった。
さらに、ピンチ部材の開放機構が働かず挟持力を維持しながら回動が可能な範囲である「ピンチ部材の挟持保持回動範囲」は、挟持部開放に寄与するピンチ部材の回動量を大きくとるにつれて目減りしていくため、強風での洗濯物の落下の虞も生じるようになるものであった。
このように、回動開放機構を有するピンチユニットであっても、依然として、厚みや重さが異なる種々の洗濯物に対応することは十分ではなく、ピンチ開放機構の利便性を十分に享受できるものとは言い切れないものであった。
さらに、引用文献3、4ともに、ピンチ部材の可動性に関しては、ピンチ部材の連結構造が一部の方向において制限される構成となっているため、ピンチ部材の取り回しやすさの観点からもピンチ開放機構の利便性を十分に享受できるものはなかった。
【0007】
本発明は、以上のような従来の欠点に鑑み、ピンチ開放機構を有するピンチユニットにおける「挟持力の維持と開放とが有効に機能する挟持物の厚みの許容範囲」を十分に広げ、厚みや重さが異なる種々の洗濯物に対応することが可能で、ピンチ開放機構の利便性を十分に享受できるピンチユニットを提供することを目的とするものである。
【0008】
さらに、デリケートな薄物の生地を傷めることなく弱い力で開放できる優れた機能を維持しつつ、かつ加えてより分厚い生地の洗濯物も確実に開放することができるとともに、耐強風性能も落とすことがなく、ピンチの取り回しが良く洗濯物の取り付け作業性に優れたピンチユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のピンチユニットは、ばね部材によって付勢された第一挟持片及び第二挟持片の挟持部にて被挟持物を保持するピンチ部材と、該ピンチ部材を支持する支持部材と、前記第一挟持片の把持部に固定され、前記ピンチ部材を前記支持部材に連結する吊持部材と、前記支持部材と前記ピンチ部材第二挟持片とをつなぎ、前記ピンチ部材が垂下された姿勢で弛緩状態で係止された規制部材と、により構成され、前記ピンチ部材挟持部の前記第一挟持片側への移動にともない前記規制部材が作用し前記ピンチ部材挟持部の開放がなされるピンチユニットであって、前記支持部材は、基台部と、第一支持軸基部および第二支持軸基部にて該基台部より突出して接続される曲状の支持軸と、からなり、前記吊持部材は、該支持軸に滑動可能に懸けられている縦長の滑動連結部にて、前記ピンチ部材を前記支持部材に連結し、前記規制部材は、前記ピンチ部材挟持部の移動方向とは反対側の前記基台部に設けられた支持部材側係止部により前記支持部材との係止されており、前記ピンチ部材挟持部の前記移動にともない、前記規制部材が弛緩状態から緊張状態へと移行することで、前記ピンチ部材の吊持箇所を前記第一挟持片から前記第二挟持片に切り替えるとともに、前記緊張状態後の前記規制部材による前記支持部材側係止部を支点とした前記ピンチ部材の回動をもたらすものであり、該回動にともなう前記滑動連結部の前記支持部材の前記基台部へ当接、および、その後の前記基台部に支持された状態での滑動により前記ピンチ挟持部の開放がなされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、滑動連結部と規制部材との連動により、厚みや重さが異なる種々の洗濯物に対応することが可能となる。これにより、デリケートな薄物の生地を傷めることなく弱い力で開放できる優れた機能を維持しつつ、かつ加えてより分厚い生地の洗濯物も確実に開放することができるため、ピンチ開放機構を有するピンチユニットにおける「挟持力の維持と開放とが有効に機能する挟持物の厚みの許容範囲」を十分に広げたピンチユニットの提供が可能となる。
さらに、ピンチ開放機構を備えるピンチユニットが有していた耐強風性能の低下をもたらすことなく、強風下でも安心して使用することができるピンチユニットを提供することができる。
また、ピンチの取り回しが良く洗濯物の取り付け作業性に優れたピンチユニットを提供することができる。
このように、本発明のピンチユニットは、従来のピンチ開放機構を備えるピンチユニットの様々な課題を解決し、ピンチ開放機構の利便性を十分に享受できるピンチユニットを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一の実施態様のピンチユニットを示す模式図である。
図2】本発明の第一の実施態様のピンチユニットの開放過程を示す模式図である。
図3図2の要部拡大図である。
図4】本発明の第一の実施態様のピンチユニットにおける第二の規制部材を示す模式図である。
図5】本発明の第一の実施態様のピンチユニットにおける第三の規制部材を示す模式図である。
図6】本発明の第二の実施態様のピンチユニットの開放過程を示す模式図である。
図7図6の要部拡大図である。
図8】本発明の第三の実施態様の物干し具の斜視模式図である。
図9】本発明の第三の実施態様の物干し具の正面模式図である。
図10】本発明の第三の実施態様の物干し具における洗濯物の取り込み過程の説明模式図である。
図11】本発明の第四の実施態様の物干し具の上面模式図である。
図12】本発明の第四の実施態様の物干し具の正面模式図である。
図13】本発明の第四の実施態様の物干し具における洗濯物の取り込み過程を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[ピンチユニットの概要説明]
以下、本発明のピンチユニットについて図面を参照しながら本発明を説明する。
図1は、本発明の第一の実施態様のピンチユニット1を示す模式図であり、図1(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は支持部材10の斜視図である。
【0013】
本発明のピンチ部材30は、いわゆる一般に言われる洗濯ばさみであり、バネ部材34のバネ力により二つの挟持片(第一挟持片31、第二挟持片32)にて被挟持物を挟持部36で挟持するよう構成されている。そして、ピンチ部材30は、第一挟持片31側で支持部材10に吊持されているとともに、第二挟持片32側で規制部材60によって支持部材10に係止されている。
そして、本発明のピンチユニット1とは、上述のピンチ部材30と支持部材10とで構成される。
前記支持部材10は、円柱を弧状に湾曲させた形状である支持軸18と、該支持軸18が設けられている基台部12を備えている。該支持軸18と基台部12とは、支持軸18の2か所の根本部である第一支持軸基部14と第二支持軸基部16とで接続されており、第一挟持片31側で接続するのが第一支持軸基部14、第二挟持片32側で接続するのが第二支持軸基部16となっている。本実施態様においては、該第一支持軸基部14に隣接する基台部12の一部を支持軸18設置方向に迫上げた構成となっているとともに、該第二支持軸基部16の近傍には前記規制部材60を通して係止するための2つの貫通孔が設けられている
また、基台部12はピンチユニット1の物干し具のフレーム等への組み付け部位でもあり、本実施態様では基台部12の上面で物干し具フレーム等に組み付けられている。この基台部12に関しては、フレームと別体であることは必ずしも必要ではなく、フレーム材が樹脂材料等の場合は基台部12と一体で形成することもできる。この場合のピンチユニットとは、フレームを含むものとなる。
【0014】
本発明のピンチ部材30は、ピンチ部材30の付属機構として設けられる吊持部材20と規制部材60によって、支持部材10とつながっており、これらがピンチ部材30と連動することにより、ピンチ開放機構が作用する。
前記吊持部材20は、第一挟持片31の第一把持部37(ピンチ開放動作時に指でつまむ部分に対応する箇所)側端部に設けられている。これにより、本実施形態のピンチ部材30は、第一挟持片31の後端が第二挟持片32よりも遠方に延在するよう構成されている。そして、この吊持部材20には、前記支持軸18に回動可能に掛けられる滑動連結部22を備えている。本実施形態における該滑動連結部22は、長円の一部を切り欠いたような鉤形状を有しており、この切り欠き部分から支持軸18を挿入し、連結吊持させることにより支持軸18に回動可能に連結されている。
そして、滑動連結部の太さに対する支持軸18の湾曲径と、および、支持軸18の太さに対する滑動連結部における鉤形状の湾曲径とが相互に十分な隙間をもった状態で連結された滑動連結構造をなしている。この滑動連結構造により、本発明のピンチ部材30は支持軸18に連結されたままでも、XY方向に回動でき、かつX方向にも移動できるとともに、Z方向にも長孔形状の内側空間の遊び分移動ができるようになっている。
なお、本実施態様においては、前記吊持部材20が第一挟持片31と別体となっているが、この構成は必須ではなく、これらを成型等にて一体としてもよいのは言うまでもない。
【0015】
次に、規制部材60は、ワイヤー等の紐状の部材で形成されるものであり、一方が、第二挟持片32のピンチ側係止部63に係止されるとともに、もう一方が、前述の貫通孔内に設けられた支持部材側係止部61a、62aの2箇所でそれぞれ係止されている。
この規制部材60は、ピンチ部材30と連動し開放機構に寄与するものではあるが、単に洗濯物を干すときのように、被挟持物を取り付け、挟持する場面においては、ピンチ部材30の動きを邪魔しないように十分な長さを有しているため、図のように、ピンチ部材30が第一挟持片31にて吊持されている垂下姿勢においては弛んだ状態で係止されている。
規制部材60のピンチ部材30及び支持部材10への具体的な係止箇所に関しては、後述のピンチ開放機構が有効に機能する箇所であれば、その箇所を特定する必要はないが、本実施態様においては、ピンチ側係止部63は、第二挟持片32の第二把持部38よりも侠持部36側の位置に設定されており、支持部材側係止部61a、61bに関しては、支持部材の第二支持軸基部16近傍に設定されている。
規制部材60が途中で二股に分岐している理由について述べる。規制部材60が仮に一本構成であった場合は支持軸18の中心線に沿って設置することが望ましいが、そうするとピンチ開放動作に伴う-X方向への回動時に規制部材が支持軸18に接触してしまう。そこで、支持部材側係止部61a、61bを2箇所とするとともに規制部材60を途中で二股とすることで、支持軸18をまたぎ接触しないようにしている。
なお、二股にした別の理由もある。仮に規制部材が片側1本構成の場合、ピンチ開放動作に伴う-X方向への回動時にピンチ部材30がY方向へも傾き得るため、開放時の挙動が不安定になる虞があるが、二股にしたことにより規制部材の支持状態の対称性を維持できる。
【0016】
規制部材における支持状態の対称性を得る手段としてピンチ部材30に関わる部品数やパーツ形状はできるだけ最小限でシンプルであることがより好ましいことから、本実施態様では途中で分岐した形状のワイヤーを用いたが、部品数を増やしてもいいのであれば、支持部材側係止部61a、61bにそれぞれ個別の規制部材を設ける2本構成や、図4に示すように、支持軸と接触するエリアの部分だけ硬質部材66とした2部材構成としてもよく、さらに、支持軸と接触するエリアの部分を図5に示すような硬質部材69として連結する構成としてもよい。なお、図4、5とも図2a5、b5に示す状態をZ方向に見たものである。
【0017】
[本発明の要部の説明]
次に本発明の要部であるピンチユニットの開放機構の詳細について説明する。
【0018】
(課題背景)
まず、本発明の課題背景および技術思想について説明する。
前述したように、本発明は、吊下げていた洗濯物を一括で取り込むことができる物干し具において、使い勝手の面では大きな影響を与える「挟持力の維持と開放とが有効に機能する挟持物の厚みの許容範囲」の広さに関して大きな改善をもたらすものである。これは、すなわち、一括取り込み用の開放機構を有するピンチユニットが使える洗濯物(被挟持物)を選ばないという意味となる。
実は、従来のピンチ開放機構では、この部分で割り切らざるを得ない構成であった。
このことについて、以下にその背景について説明していく。
【0019】
まず、開放機構を備えるピンチユニットにおいては、以下の二つの性能が重要となる。
一つは、被挟持物を干している際に必要な被挟持物を挟持・維持する「通常挟持力」と、もう一つは、開放機構が働き、完全開放直前に被挟持物にかかる力である「挟持開放力」と、である。
そして、一般的には、「通常挟持力」は、重いものでも十分に挟持、維持できるよう強いほうが好ましく、「挟持開放力」は、生地を傷めない、容易に取り込みができるために弱いほうが好ましい。また、被挟持物の厚みが厚くなるに従い、ピンチ部材の挟持部が開いていき、バネ力が増す方向に変化するため「通常挟持力」と「挟持開放力」の閾値も変化していく。
【0020】
しかしながら、この「通常挟持力」と「挟持開放力」とは、バネ力と相関を有し、バネ力を強くすれば、「通常挟持力」と「挟持開放力」ともに強くなり、逆に弱くすれば、「通常挟持力」と「挟持開放力」ともに弱くなるという関係を有する。
このことは、すなわち、「通常挟持力」と「挟持開放力」とは、個別に適正化できないにもかかわらず、求められる性能が相反するということである。
したがって、特許文献1,2のように、被挟持物の重さによって開放機構が一部働いてしまい、通常挟持力を弱めてしまうような構成の場合、「挟持力の維持と開放とが有効に機能する挟持物の厚みの許容範囲」を狭めるともに、「通常挟持力」と「挟持開放力」のいずれか一方で閾値を満たすギリギリの性能で成り立たせるような設計が必要となっていたわけである。とりわけ、「通常挟持力」と「挟持開放力」に求められる性能がそれぞれ厳しくなる「厚みが極薄できわめて傷つきやすいもの」と、「厚みが厚く、大きなもの」に関しては、極薄のものは、一般に生地が非常に傷みやすいため、著しく挟持開放力を弱める必要があるのに対して、厚みが厚いもの(以下、端に厚物と称す)は、含水時の重量増や、風を受けた際の力に挟持部が耐えられるよう「通常挟持力」を大幅に強める必要がある。このように、著しく弱い挟持開放力と、非常に強い通常挟持力とを同時に満たそうとすると、相関性を有し個別に適正化できない「通常挟持力」と「挟持開放力」との差を大きく採らなければ成り立たなくなるという無理が生じる。したがって、従来の手法では、これらのものを一つのピンチ部材でまかなおうとするには、機構上困難であった無理が生じるものとなっていた。
【0021】
そこで、特許文献3、4に記載の構成では、挟持力開放のための動作としてピンチ部材を回動させる構造とすることで、被挟持物の重さによって通常挟持力を弱めてしまうようなことがない構成としている。原理上ではピンチ部材を大きく回動させるほど「通常挟持力」と「挟持開放力」との差を広げることができるものの、“ピンチ部材の挟持保持回動範囲”は狭くなり意図しない被挟持物の落下を考慮した場合でのピンチ部材の回動許容量が限られているため、特に、挟持部をより大きく開かなければいけない厚物(例えば、5mm強)の被挟持物では対応が困難であった。
さらに、厚物への対応を割り切った場合であっても、強風環境下で起きうる回動に対しての挟持力確保については、十分でなかった。
【0022】
すなわち、このピンチ部材における開放のための回動量は、”ピンチ部材の挟持保持回動範囲”を狭めてしまうことになるが、通常の使用環境でとどまるのであれば、この、”ピンチ部材の挟持保持回動範囲”の目減りは、それほど影響を及ぼさない。しかしながら、強風環境下においては、風によりピンチ部材が横向きに連続的にあおられるような状態となるため、この風の作用により、ピンチ開放機構が働いてしまうと挟持力を保持できずに被挟持物の落下の虞が生じるようになるものである。
このように、回動開放機構を有するピンチユニットであっても、依然として、厚みや重さが異なる種々の洗濯物に対応することは十分ではなく、ピンチ開放機構の利便性を十分に享受できるものとは言い切れないものであった。
【0023】
(本発明の技術思想詳細説明)
そこで、本発明者は、このような課題を鋭意検討したところ、今までとは異なるアプローチにて上記課題を解消するに至った。
そのアプローチとは、被挟持物の厚みの違いによって変化する要素を用いて、ピンチ開放機構での作用の働き方を切り替えるというものである。
本明細書では、この作用の働き方を、開放モードと称し、弱い力で開放が可能となる回転運動を利用して開放にいたる第一の開放モードと、被挟持物の厚みの変化に対応しやすい直線運動を利用して開放にいたる第二の開放モードという複数の開放モードを実現可能とした。そして、これら複数の開放モードが被挟持物の厚みによって自動的に切り替えられる構成を導き出すに至った。
この構成によれば、第一の開放モードとしては極薄側から通常よく使用される厚みまで、第二の開放モードとしては厚物側から通常よく使用される厚みまで、対応可能となるため、第一の開放モードと第二の開放モードが切り替わる挟持部の厚さを適宜設定することで、従来一つのピンチ部材では難しかった領域まで補完し合うことができ、厚みや重さが異なる種々の洗濯物に対応することが可能で、ピンチ開放機構の利便性を十分に享受できるものとすることができた。
しかも、上記開放モードの切り替えは、被挟持物の厚みの違いによってなされるようにしているため、使用者側には、開放モード切り替えのための動作は何ら必要としない。
【0024】
そして、本発明者は、上記構成を導き出すために、ピンチ部材の支持部材への連結構造に、連結される部材同士が隙間をもって嵌め合わされる滑動連結構造を採用すること、および、前記規制部材を緊張状態としたとき規制部材による前記支持部材側係止部を支点としたピンチ部材の回動にともなう滑動連結構造と規制部材との連動により、前記開放モードの切り替えがなされるようにした。
この構造によれば、開放モード切替のための新たな機構を付加する必要がなく、ピンチ部材の取り回し性を阻害することがない。
【0025】
以下に、滑動連結構造と規制部材とがどのように連動し、そして、それぞれの開放モードがどう機能するかについて具体的に説明していく。
まず、本発明の要部の一つとなる滑動連結構造をなすのは支持部材と吊持部材とであり、支持部材の曲状支持軸と吊持部材の滑動連結部(長孔)とが、十分な隙間をもって連結しているので、前述のように、連結状態を維持しながら滑動できるようになっている。
そして、規制部材によってピンチ部材の姿勢が制御されつつ変移していくことによって、ピンチ部材の開放動作が行われる。
本発明において、規制部材と連動した滑動連結構造における滑動は、異なる二つの場面で機能する。
一つは、ピンチ部材回動による規制部材の緊張状態が発生した直後での、ピンチ部材の姿勢変位をもたらす第一の滑動であり、もう一つは、第一の滑動後のさらなるピンチ部材回動時における、吊持部材を支持部材に当接させたまま行われる挟持部開放に寄与する第二の滑動である。
【0026】
以下に第一及び第二のそれぞれの滑動について、説明していく。
まず、第一の滑動について説明する。上述の第一の滑動では、前述の第一の開放モードと第二の開放モードとの切り替えを生じさせるものであり、規制部材が緊張状態となることでピンチ部材の吊持箇所が第一挟持片から第二挟持片へと移行するとともに、支持部材に対する第一挟持片の支持状態が吊持支持から突き当て(当接)支持に変化する。そして、このピンチ部材の吊持箇所および第一挟持片の支持状態の切り替えによって、吊持部材当接後のピンチ部材の挙動の違いを生み出し、開放モードの切替に至る。
【0027】
また、これら姿勢および吊持部材の基台部への当初の当接位置は挟持部に挟持された被挟持物の厚みによって違ってくる。
正確には被挟持物の厚みによって変化したピンチ部材の開き方(被挟持物を挟んだ状態での第一挟持片と第二挟持片の角度)に違いによってもたらされるものである。
これらをよりつかみやすくするために、薄物から厚物へと被挟持物の厚みが変わった際に各所で生じる変化を順に挙げてみることにする。
まず、被挟持物を挟んでいない場合や、被挟持物が薄い場合のピンチ部材を側方から見た形状は略V字形状をなしているが、被挟持物の厚みが厚くなってくると挟持部が開いてくるため略H字形状へ変化することになる。
そして、厚物の被挟持物を挟んだ状態では、ピンチ部材後端同士の離間距離を近づけることになるため、ピンチ部材後端に設けられている吊持部材が基台部に当接するタイミングを遅らせるように作用する。しかも、ピンチ部材後端同士の近接は、第二挟持片の規制部材係止部における第二挟持片と緊張した規制部材とがなす角度を広げ、規制部材係止部からピンチ部材先端までの長さを延長するように作用するため、これらの結果として、開放直前の滑動連結部は支持軸に触れることなく、その後支持軸から遠ざかる方向へ移動する。
これらのことから、被挟持物として、厚いものを挟むだけで吊持部材の基台部への当初の当接位置が変化し、このことで先の第一の開放モードと第二の開放モードとが切り替わる構成となっている。
【0028】
次に、第二の滑動について説明する。上述のように第二の滑動は、ピンチ部材挟持部の開放を実質的に生じせしめるものであり、本発明の構成では、吊持部材が支持部材の基台部に当接した状態での滑動により初めて開放機構が作用するようになっている。
そして、第二の滑動時、その挙動は、吊持部材が支持部材の基台部に当接した状態で滑動し、この時のピンチ部材挟持部の移動を梃子の駆動力に変換することで開放機構を作用させる点では共通しているものの、各開放モードによって滑動の仕方および梃子の用い方は若干異なっている。
前述の第一の開放モードのときには、吊持部材が基台部に加えて支持軸にも当接するため、吊持部材は、基台部及び支持軸に当接支持された状態で回転滑動する。この時、第一挟持片は支持部材との間で、第二挟持片は規制部材との間で、双方がヒンジ部にて相互に作用しながらそれぞれ梃子の働きを示すものであり、滑動連結部が設けられている第一挟持片における回転運動による梃子の駆動力をヒンジ部を介して第二挟持片に伝えることで第二挟持片での梃子の駆動力を増強して挟持開放力をより弱めることができるようになっている。
一方、前述の第二の開放モードのときには、吊持部材が支持部材の基台部に当接した時の被挟持物を介した引っ張り力の方向が、ほぼ支持部材の沿った方向に集約されているため、第一の開放モードで見られたようなピンチ部材の回転は生じず、ピンチ部材が基台部に沿って支持軸から離れる方向に直線的に滑動する。さらに、この姿勢での滑動では、第一挟持片は梃子の働きはせずに、第二挟持片を支える役割だけになるため、この直線的滑動を第二挟持片での梃子の駆動力に変換することで被挟持物の開放が行われる。
【0029】
しかも、第一の開放モードでは挟持部の開放が開始されるタイミングである「吊持部材と支持部材との当接するときの姿勢」を、ピンチ部材がフレームに十分に平行に近づく角度まで、挟持部の挟持状態を維持しておくことができるため、本発明のピンチユニットにおける”ピンチ部材の挟持保持回動範囲”を、開放機構を備えていない一般に市販されているピンチ部材と同等まで広げるようにすることもできるものである。なお、第二の開放モードではピンチ部材がフレームとほぼ平行になった後、発動するものなので“ピンチ部材の挟持保持回動範囲”は最大であり開放機構を有さないピンチ部材と同等となっている。
したがって、被挟持物を引っ張ることで機能する被挟持物開放機能に影響を及ぼすことなく、耐強風性能に優れたピンチユニットを提供できるものである。また、本発明のピンチユニットでは、上述の広いピンチ部材の挟持保持回動範囲と、滑動連結構造により、被挟持物取り付け時の取り回し性もピンチ部材開放機構が取り付けられていない一般に市販されているピンチ部材と変わらないものとすることができる。
【0030】
[動作を含めた本発明の詳細説明]
以下、図2図3を参照して、上記ピンチユニット1の開放機構の具体的動作について説明する。
図2は、本実施態様のピンチ部材30の被挟持物7,71の挟持状態から開放にいたる開放工程説明図であり、図2のa1~a5は、本発明の第一の開放モードにおけるピンチユニット及びピンチ部材30の工程説明図であり、図2のb1~b5は、本発明の第二の開放モードにおけるピンチユニット1及びピンチ部材30の工程説明図である。
また、図2のa1~a5、b1~b5において、図2のa1、b1は、ピンチ部材30に被挟持物7,71が挟持され重力方向に吊り下がっている状態を示し、図2のa2~a5、b2~b5は、被挟持物7,71を図中左側(-X方向)に引っ張る際にピンチ部材30の被挟持物7,71における挟持から開放にいたる様子を示している。
さらに、図2のa2、b2は、弛んでいた規制部材60に張力が働き緊張状態となった瞬間を示した状態、図2のa3、b3は、吊持部材20が基台部12の当接面13に接触した瞬間を示した状態、図2のa4、b4は、さらに被挟持物7、71の引っ張りを進め、開放が始まる直前の状態、図2のa5、b5は、ピンチ部材30の挟持状態が開放され、被挟持物7,71が外れた状態、をそれぞれ示している。
さらに、図3のa3~a5および、b3~b5は、図2のa3~a5および、b3~b5にそれぞれ対応した支持軸18の近傍を拡大したものであり、滑動連結部22の当接・滑動状態を示すものである。
なお、滑動連結部22のハッチング表示部分はY方向中心断面図であり滑動連結部22と支持軸18との関係を分かり易く表示するために一部切り欠け図としているものである。
【0031】
以下に、第一の開放モードと第二の開放モードの開放動作のそれぞれについて説明していく。
まず、本発明のピンチユニット1においては、前述したように、構造を変えることなく、被挟持物7,71の厚みが変わるだけでピンチ部材30の被挟持物7,71に対する開放メカニズムが変わるものとなっている。
いずれの開放モードに関しても、ピンチ部材30の回動にともない、(1)規制部材60が弛緩状態から緊張状態に至るまでの、自由回動工程、(2)規制部材60が緊張状態に至った直後からのピンチ部材30支持切替回動工程、(3)吊持部材60が支持部材10の基台部12に当接支持された状態で滑動し挟持部36の開放がなされる挟持部開放回動工程の3工程を経るものであり、この3工程が(1)~(3)の順番で生じることによりピンチ部材30の挟持部36開放がもたらされるものとなっている。
以下、各開放モードの各工程における滑動連結部22及び規制部材60の連動の様子を具体的に説明する。
【0032】
(第一の開放モード)
まず、第一の開放モードについて説明する。
まず、a1 の初期状態では、ピンチ部材30が第一挟持片31の吊持部材20で支持部材10に吊持された垂下姿勢において、滑動連結部22端部側内径が滑らかな弧状を有する支持軸18の内周部分に接触して吊り下がり滑動かつ回動できる構成となっている。また、本形態では、被挟持物7として、ナイロンストッキングのような極薄のものを挟持させた状態を示している。そして、このように被挟持物7の厚みが十分に薄いため、ピンチ部材30の挟持姿勢に関しては図のように略V字形状となっている。
【0033】
この初期状態a1から次のa2までの工程が、前述の自由回動工程であり、この自由回動工程時には、規制部材60は弛緩状態となっているため、規制部材60が作用せず、図中のX、Y方向回動とX方向への滑動もできるとともにZ方向滑動も滑動連結部22の長孔形状の遊び分許容し、開放機構を持たない在来の単なるピンチ部材単体を吊り下げたものとほぼ同様の挙動を可能としている。
【0034】
次いで、前記ピンチ部材30挟持部の前記第一挟持片側への移動にともない、ピンチ部材30が回動してa2の状態になると、規制部材60が緊張状態となり、これ以降、規制部材60による前記支持部材側係止部61a、61bを支点としたピンチ部材30の回動による滑動連結部22との連動が始まる。そして、このa2からa4までの工程が、前述のピンチ部材30支持切替回動工程となる。
このピンチ部材30の回動に関わる力として、矢印Fは被挟持物7をフレームと平行方向に引っ張る力であり、矢印Frはピンチ部材30を回転させる方向に働くベクトル成分を示している。
【0035】
この姿勢では、規制部材60が緊張状態となりピンチ部材30が第二挟持片32側で支持されるようになることで、滑動連結部22が支持軸18の内径から離れて、滑動連結部22における第一挟持片31側での支持が一時的に開放される。この状態では、第一挟持片31側が何ものにも支持されておらずピンチ部材30の姿勢維持が不完全(不安定)であるため、ピンチ部材30が回転するよう姿勢に変位する。このことにより、滑動連結部22は基台部12に当接し、第一挟持片31の支持状態が、吊持支持から当接支持に切り替わる。(a3参照)
本実施態様においては、基台部12における滑動連結部22の当接面13が他の部分より一段高く(図2では下方)形成されていることから、規制部材60の緊張状態後、滑動連結部22が基台部12に当接するようになっている。
そして、本実施態様の基台部12における滑動連結部22との当初当接箇所は、図3のa3で示すように、この当接面13の縁の角部Taにてなされており、この部分と滑動連結部22の鉤状をなす部分とが当接するようになっている。
【0036】
a3の状態以後、さらなるピンチ部材30の回動に伴い、図中上方Z方向側からは規制部材60に支持されるようになるものの、被挟持物を介して引っ張られる力は、X方向にも働くため、ピンチ部材30がピンチ部材係止部63を支点として回転しながら、滑動連結部22が基台部12の当接面13に当接した状態でX方向へ滑動していくことでa4の状態に変位していく。
そして、X方向に滑動した滑動連結部22は支持軸18に突き当てられることで第一の滑動が止まり、基台部当接面13及び支持軸18との当接箇所がX方向に押す力Fsを受け止めるように作用するとともに、以降、ピンチ部材30はこの基台部当接面13及び支持軸18とが接続する部分を支点として、回動するように変位していく。
【0037】
a4の状態とは、ピンチ部材30の挟持部36の開放が始まる直前の状態であり、この状態は別の言い方をすると、滑動連結部22が第一の滑動から第二の滑動に転じる状態ともいえる。すなわち、ピンチ部材30支持切替行程中に生じていたピンチ部材30単独での回転に伴う滑動連結部22におけるX方向への移動がなくなった状態である。なぜなら、この滑動連結部におけるX方向への移動はピンチ部材挟持部の開放に働く力を逃がしてしまう方向に働くためである。そして、本実施態様の第一の開放モードにおいては、この滑動連結部のX方向への移動が、上述のように支持軸に当接することで機械的に制止されるものとなっている。
【0038】
そして、本実施態様の第一の開放モードにおける第二の滑動は、この滑動連結部22が前記基台部に加えて支持軸18に付き当てられた姿勢での回転滑動となる。さらに、ここからピンチ挟持部36の開放状態であるa5までの工程が、前述の挟持部開放回動工程となっている。
本実施態様の第一の開放モードにおける第二の滑動時では、前述のように、第一挟持片31と第二挟持片32の双方がヒンジ部35にて相互に作用しながらそれぞれ梃子の働きを示すものであり、第一挟持片31においては、滑動連結部22の基台部12及び支持軸18との当接部を梃子の支点とし、挟持部36は力点、ヒンジ部35は作用点として働く一方、第二挟持片32においては、ピンチ部材係止部63を支点として、ヒンジ部35は梃子の力点、挟持部36が作用点として働くものである。
そして、規制部材60による支持部材側係止部61a、62aを支点としたピンチ部材の回動(ベクトルFr)により、第一挟持片31においては、ピンチ部材挟持部36の移動(-X方向への移動)がもたらされ、基台部12および支持軸18と前記滑動連結部22との当接部を支点とした第一挟持片31の回転滑動により、ヒンジ部35を介して第二挟持片32に梃子の駆動力が付加される。
さらに、前記ピンチ部材の回動に加えて、第一挟持片31から付加された梃子の駆動力を受けて、第二挟持片32では、ヒンジ部35が-X方向に大きな力で移動することになり、これに対抗するよう規制部材60に働く力を受けて、第二挟持片32の挟持部36は第一挟持片31の挟持部36に対して離れる方向に移動し、挟持部36の開放をもたらすことになる。
【0039】
なお、ここで、本実施態様においては、第一の開放モードが扱う被挟持物7の厚みの守備範囲を極薄のものに限定する仕様として設計しており、そのために挟持部36の開口厚みを1mmまで開く仕様としている。また、これ以上の厚みのものに関しては、後述の第二の開放モードにて開放されるようになっている。そして、挟持部開放回動工程が始まる際(a4の状態)の、ピンチ部材30の挟持部36の中心を通る仮想線(図中点線にて表示)と、基台部12の当接面13の延長線と、がなす角度であるピンチ部材傾斜角度αが大きいほど第一の開放モードにて開く挟持部の開口厚みを大きくすることができる。本実施態様では、先ほどの挟持部の開口厚みを1mmに対応したピンチ部材傾斜角度α=13°となるように規制部材60の長さが設定されているものである。
そして、このa4の状態から、第二の滑動による第一挟持片31の挟持部36の移動によりピンチ部材30の回動が進み、ピンチ部材傾斜角度αが0度に近づくにつれ挟持部の開口が広がっていき、やがて、a5のように、被挟持物7がピンチ部材30から開放される。
【0040】
(第二の開放モード)
次に第二の開放モードについて説明する。
また、本形態では、被挟持物71として、バスローブのような厚手のものを挟持させた状態を示している。まず、初期状態b1において、被挟持物71が厚みを持っているために、ピンチ部材30の挟持部36が大きく開き、ピンチ部材30の挟持姿勢が、第一挟持片31と第二挟持片32とが平行に近くなった略H字形状となっているところが、第一の開放モードの説明とは大きく異なる部分である。
なお、被挟持物挟持時のこれ以外の操作性に関しては、第一の開放モードと同様であるため、説明は割愛する。
前述の第一の開放モードと同様に、この初期状態b1から次のb2までの工程が、前述の自由回動工程となっている。
【0041】
b2の状態にて、規制部材60が緊張状態になった時の姿勢としては、厚物を挟持したことにより、ピンチ部材30後端同士の近接をもたらし、前述の第一の開放モードの対応図である同状態a2と比べて、第二挟持片32の規制部材係止部63における第二挟持片32と緊張した規制部材60とがなす角度が広がっていることがわかる。そして、この部分での角度拡大は、規制部材係止部63からピンチ部材30先端までの長さを延長するように作用する。
b2の状態では、上記のような変化は生じているものの、まだ挙動の変化にまでは至っていない。そして、このb2からb4までの工程が、前述のピンチ部材30支持切替回動工程となるが、第二の開放モードが第一の開放モードと異なる挙動を示し始めるのは、次のb3工程以降になる。
【0042】
第二の開放モードにおいても、b3の状態に至る間にピンチ部材30の吊持箇所の変化にともない第一挟持片31の支持状態が吊持支持から当接支持に切り替わる。そして、b3の状態では、ピンチ部材30後端同士の近接状態となるピンチ部材30の挟持姿勢により前述の第一の開放モードに比べ、基台部12への当接するタイミングが遅れるため、ピンチ部材30はフレーム部材に対して角度をあまり持たず、沿うような姿勢で、滑動連結部22が基台部12の当接面13に接触する。
なお、この時の当接箇所に関しては、第一の開放モードと同様、当接面の縁の角部(図3Tb)にてなされており、この部分と滑動連結部22の鉤状をなす部分とが当接するようになっている。
b3の状態では、すでに、当接面13に対するピンチ部材傾斜角度αが第一の開放モードのa4の状態よりも十分に小さくなっているため、ここからさらに被挟持物71を介した引っ張りにおけるピンチ部材30自身の回転は最小限にとどめられるとともに、滑動連結部22のX方向への移動も微々たるものとなって、b4の状態に至る(図b3、b4では図a3、a4のベクトルFs、Tbは省略している)。この状態は、ピンチ部材30の姿勢がフレームとほぼ平行になるピンチ部材傾斜角度αが0度の状態であり、ピンチ部材30がこの姿勢になると被挟持物71の引っ張り力がもたらすピンチ部材30の回動に寄与する成分Frがなくなるため、これ以降はピンチ部材30が姿勢の変化を伴うことはなくなる。
【0043】
このようにして、ピンチ部材30の挟持部36の開放が始まる直前のb4状態にいたる。ここから、滑動連結部22は第一の滑動から第二の滑動に転じるため、滑動連結部22における僅かなX方向への移動が-X方向への移動に転じる。また、第二の開放モードでは、第一の滑動距離が短いため、滑動連結部22は支持軸18に接触することなく第二の滑動へ移行する。
そして、このb4の状態からピンチ挟持部の開放状態であるb5までの工程が、前述の挟持部開放回動工程となっている。
本実施態様の第二の開放モードにおける第二の滑動時では、前述のように、ピンチ部材30の姿勢がフレームとほぼ平行になるピンチ部材傾斜角度αが0度の状態であり、この状態ゆえに吊持部材20が支持部材10の基台部12に当接した時の被挟持物7を介した引っ張り力の方向が、ほぼ支持部材10の沿った方向に集約される。したがって、第一の開放モードで見られたようなピンチ部材の回転は生じず、ピンチ部材30が基台部12に沿って支持軸18から離れる方向(-X方向)に滑動する。さらに、この姿勢での滑動では、第一挟持片31は梃子の働きはせずに、第二挟持片32を支える役割だけになるため、この滑動に伴う直線運動を第二挟持片32での梃子の駆動力に変換することで被挟持物7の開放が行われる。なお、第二挟持片32での梃子の働きについては、第一の開放モードと同様、ピンチ部材係止部63を支点として、ヒンジ部35は梃子の力点、挟持部36が作用点として働くものとなっているため、被挟持物71を引っ張る力Fは単純に直接ヒンジ部35を-X方向へ移動させる力として働きヒンジ部35の-X方向への移動により挟持部36が開口する。
【0044】
この第二の開放モードにおける第二の滑動は、前述した、連結される部材同士が隙間をもって嵌め合わされる滑動連結構造によって挙動可能となっているものであり、図3b4に示す距離d1の分だけ第二の滑動が可能となっている。この第二の開放モードにおける第二の滑動によって、従来は対応することが実用上難しかった、例えば、5mm以上の厚みをもつ被挟持物71にも対応できるものである。なお、第二の滑動可能距離となるd1は仕様によって適宜設定されるものであり、本実施態様では最大で6mm厚のものが開放可能としているため、開放時における図3b5では、滑動可能距離d2を残すものとなっている。もちろん、被挟持物71の厚みとして6mmよりも厚いものに対応させたい場合には、前述の第二の滑動可能距離d1をさらにとれるよう滑動連結部の長さや支持軸の湾曲径を調整し、連結される部材同士の隙間を大きく採れるよう設計してあげればよい。
ちなみに、第一の開放モードと第二の開放モードとで挟持開放力を比べた場合、第一の開放モードでは、第一挟持片の梃子の駆動力を付加できること、及び、回転滑動時に大きくヒンジ部を移動させることができるため挟持開放力を小さくすることができるものである。
【0045】
なお、上述の第一の開放モード及び第二の開放モードの説明では、被挟持物として、それぞれ
ナイロンストッキング、バスローブを用いた例で説明したが、本実施態様の第一の開放モードで設定した被挟持物の厚みを少し超える程度の被挟持物の場合について、補足しておく。
前述したように、本実施形態においては、被挟持物の厚みとして1mmのものまでが第一の開放モードで開放されるものとなっている。被挟持物の厚みが1mmをわずかに超えるような場合(例えば、1.5mm)には、前述の第一の開放モードの挙動であるa1~a4と同様の挙動を示す。そして、その後のピンチ部材30の回動によって、滑動連結部22は回転滑動し、ピンチ部材30挟持部が開いていくものであるが、a4でのピンチ部材傾斜角度αが足りないために、被挟持物が開放される前に第二の開放モードと同様にピンチ部材の回動は止まってしまう。しかしながら、この状態からさらに被挟持物を引っ張ることにより、ピンチユニットは前述の第二の開放モードの挙動であるb4~b5の挙動となり、被挟持物の開放が行われる。
なお、本発明においては、このように、前述の第一の開放モードの挙動を経て前述の第二の開放モードに至るような場合も、第二の開放モードによる開放として定めている。すなわち、被挟持物がピンチ部材30を実際に開放するに至る時点での開放モードが、その被挟持物の時の開放モードとなるわけである。
【0046】
既述したように、第一の開放モードの方が効率よく弱い開放力となるため、生地が傷みやすい極薄の被挟持物への適用が好ましく、一方、力点での移動量が少なくても大きな挟持開放力を要する第二の開放モードを厚物に適用することが好ましい。本実施態様では、このように各被挟持物に求められる挟持開放力に合わせて開放モードが割り当てられる構成となっている。
なお、前述した、前述の第一の開放モードの挙動を経て前述の第二の開放モードに至るような場合には、あらかじめ部分的に第一の開放モードで挟持部が開放しかけている分だけ、その挟持開放力は第二の開放モードによるものより挟持開放力は小さくなる。
【0047】
実装に当たってはピンチユニットの使用目的に沿って最適化するため各寸法を最適化することができる。設計に当たってはピンチ部材各部の寸法を一定とした場合を考えてみると、考慮する要素は次の物である。
(1) 各モード毎に適用する被挟持物の厚さ
(2) 規制部材が被挟持物を開放するときの第二挟持片となす角度
これらの要素は密接に関係しており何れの寸歩を変更しても全てのバランスを適正化する必要がある。先ず基本的に(1)各モードに適用する被挟持物の厚さを仕様として決める。次に(2)規制部材の角度を仕様上の最厚の被挟持物を開放できるように設定する。厚い対象被挟持物ほど角度は浅くなる。
この(2)規制部材の角度は次の要素できまる。
(イ)規制部材の長さ、(ロ)支持部材側係止部の位置、(ハ)ピンチ側係止部の位置、(ハ)当接面の基台部からの高さ
これら要素(イ)~(ハ)の設定は規制部材の角度を決めるだけでなく挟持開放力にも影響を与えるため設計に当たってはバランスを取って最適に設定する必要がある。なお、基台部からの当接面の高さは少なくとも図2a4状態の時、必要なピンチ部材傾斜角度αが設定できる高さが必要である。
【0048】
また、仕様としてどちらか一方のモードのみとすることも可能であり、この場合には、ピンチユニットにおける「挟持力の維持と開放とが有効に機能する挟持物の厚みの許容範囲」を、本実施態様のようには広げることはできないものの、第一の開放モードだけの場合には、小さな挟持開放力での開放と、被挟持物取り付け時の良好な取り回し性と、の両立したピンチユニットを、第二の開放モードだけの場合には、従来は対応することが実用上難しかった厚物まで対応したピンチユニットを、それぞれ提供することができ、単独の開放モードだけでも従来にはなかった優れた効果を有するものである。
【0049】
次に、このような被挟持物の厚みの違いに関わるものであり、各厚みで求められる挟持開放力と通常開放力の具体的な大きさについて、説明する。
被挟持物における極薄の生地とは、例えばナイロンストッキングや、シルクのようなもので、その厚みは1mmに満たないものである。このような極薄の生地は、生地の薄さからくる傷みやすさだけではなく、生地自体の素材特性からくる傷みやすさを持ち合わせていることが多い。そのため、開放時における生地の摩擦を最小限にする配慮が求められる。したがって、極薄の生地を扱う際の挟持開放力としては、単にピンチ部材が開放する挟持開放力よりもさらに小さい、例えば300g以下の挟持開放力となっていることが望ましい。
【0050】
一方、被挟持物における生地の厚みが厚くなるに従い、素材の強度が上がり生地の傷みやすさをそれほど気にしなくてもよくなる。この場合は、例えば700g以下の挟持開放力となっていれば、実用に耐えうるものとなる。
また、厚物における通常挟持力に関しては、前述のように、含水時にかなりの重量を有することや、風を受けた際に面積が広い分、挟持部にかかる力が非常に大きくなることから、最低でも1,000g程度は必要であり、できれば1,200g以上であることが好ましい。強風下における挟持力を考慮した場合、この通常挟持力は、大きいほど好ましいものであるが、通常挟持力が大きくなりすぎると被挟持物取り付け時の開放操作に負担がかかり、握力が弱い女性や高齢者には好まれない。このようなことを鑑みると、1,200~1,500g程度の通常挟持力が、強風下での対応と操作性の両立できる実用的範囲ということができる。
【0051】
[本発明の実施態様による実測結果]
以下に、本実施態様のピンチユニットにて各種被挟持物を実際に挟持し、この挟持物を回動したときの通常挟持力および挟持開放力を表1に記す。
表1において、挟持部に挟持される被挟持物の厚さは、縁始末部の厚さを示している。縁始末部とは、布製品で、通常、生地の縁の部分のほつれを防止するために生地端部を折り返して補強している縁の厚み部分のことである。
また、ここでの通常挟持力および挟持開放力の測定は、被挟持物にテンションゲージを取り付け、テンションゲージを介して被挟持物を引っ張っていった際に被挟持物が開放されたときのテンションゲージの値を測ることにより行われたものである。そして、通常挟持力は、被挟持物が垂下された状態で真下へ引っ張った際の値であり、挟持開放力は、被挟持物を支持部材に沿った方向に引っ張った際の値である。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、極薄い繊細な被挟持物の代表としてのナイロンストッキングを挟持させた場合における挟持開放力は200gと十分に小さくすることができ、生地を痛めることなく開放が可能なことが確認された。
また、これよりも厚い被挟持物である、フェイスタオル、バスタオル、風呂マットにおいても、いずれも650g以下の挟持開放力となっており、十分に実用的にピンチ部材の開放が行えることが確認できた。
一方、強風の影響を受けやすいフェイスタオル、バスタオル、風呂マットにおける通常挟持力においては、いずれも1,200g以上の通常挟持力を有するものであり、本発明のピンチユニットが強風下での対応と操作性とを両立できるものであることが確認された。
しかも、従来は対応することが実用上難しかった、5mm以上の厚みをもつ被挟持物にも対応できることが確認された。
これらの結果から、本実施形態のピンチユニットが、ピンチ開放機構を有するピンチユニットにおける「挟持力の維持と開放とが有効に機能する挟持物の厚みの許容範囲」を十分に広げ、厚みや重さが異なる種々の洗濯物に対応することが可能であることが理解されよう。
なお、同一のばね部材を使っているのにもかかわらず、厚みによって通常挟持力が変わっているのは、挟持部が大きく開くにしたがい、ばね部材も広げられることにより挟持部にかかる力が増大していくことに起因するものである。
【0054】
次に、本実施態様のピンチユニットを用いて、強風下における挟持維持状態をみる耐風速実験を行った結果を示す。
ここでは、本実施態様のピンチユニットを複数備える物干し具に表1に示したナイロンストッキング、フェイスタオル、風呂マットを挟持させ、試験場内で発生する強風環境下(試験場設備での最大風速である15m/Sec)で1分間被挟持物を落下させずに挟持し続けられるかどうかを検証した。
なお、実験に際して、各被挟持物における実際の挟持状態を再現するため、ナイロンストッキング、フェイスタオルはピンチ2個掛け、風呂マットはピンチ4個掛けにて検証した。
上記検証を行なったところ、いずれの被挟持物に関しても、1分間の強風環境下で落下は見受けられず、本発明のピンチユニットが耐強風性に優れることが実証された。
【0055】
(第二の実施態様)
以下に、本発明の第二の実施態様のピンチユニットについて、図面を用いて説明する。
図6は、本実施態様のピンチ部材の被挟持物の挟持状態から開放にいたる開放工程説明図であり、図6のc1~c5は、第二の実施態様における第一の開放モードにおけるピンチユニット2及びピンチ部材30の工程説明図であり、図6のd1~d5は、第二の実施態様における第二の開放モードにおけるピンチユニット2及びピンチ部材30の工程説明図である。
また、図7のc3~c5および、d3~d5は、図6のc3~c5および、d3~d5にそれぞれ対応した支持軸181の近傍を拡大したものであり、滑動連結部22の当接・滑動状態を示すものである。
なお、図6のc1~c5、および、d1~d5の各状態は、第一の実施態様での工程説明図である図2のa1~a5および、b1~b5の各状態と同様の状態を示すものである。
【0056】
以下、本発明を実施するための異なる態様の説明に当って、前記本発明を実施するための第一の実施態様と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
第二の実施態様において、前記本発明を実施するための第一の実施態様と主に異なる点について述べる。
【0057】
第一の実施態様においては、滑動連結部22と当接する基台部12の当接面13は第一支持軸基部14近傍の支持軸18の外側の嵩上げされた部分に設けられる形態であったが、本実施態様では、この当接面131が第一支持軸基部141と第二支持軸基部161との間に設けられる形態となっていることが異なっている。そして、この当接面131位置の変更に伴って、滑動連結部22はその先端で当接面131に当接するよう構成されているとともに、第一の開放モードにおける第二の滑動に転じる際の支持軸181への当接箇所が第二支持軸基部161に変更となっている。また、この滑動連結部22先端の第二支持軸基部161への当接が行われやすくするために、支持軸181の第一支持軸基部141と第二支持軸基部161間の距離は第一の実施態様よりも近くなっている。
したがって、図で明らかなように、図6のc2工程までは、第一の実施態様とほぼ同様であり、本実施態様においては、滑動連結部の当接箇所が滑動連結部の先端となるため、この部分が支持軸181に挟まれた部分である第一支持軸基部141と第二支持軸基部161との間に設けられた支持部材の当接面131の図中Tc点に当接する。この状態から被挟持物7を引っ張る力Fの抗力Fsを受けて滑動連結部22の先端はX方向へ滑動していくとともに、回転方向ベクトルFrによりピンチ部材30も僅かに回転する。
その後、既述したように滑動連結部22の内孔の長さよりも第一支持軸基部141と第二支持軸基部161間の距離は近くなるよう設定されているため、滑動連結部22先端が第二支持軸基部161に突きあたって止まる。
そして、これ以降は、第一の実施態様と同様の第二の滑動を示し、挟持部の開放をもたらす。
一方、本実施態様の第二の開放モードでは、当接面131および第一の滑動における滑動連結部22と基台部121との当接箇所Td点が異なるだけで、それ以外の滑動連結部と規制部材との連動における挙動やピンチ部材の姿勢変化等は、ほぼ第一の実施態様と変わらないものである。
【0058】
このように、本発明の第二実施態様においては、滑動連結部22および基台部121それぞれの当接箇所は異なるものの、その挙動やピンチ部材3の姿勢変化に関しては、本発明の第一の実施態様と同様であり、同じ技術思想に含まれることは理解されよう。もちろん、このように構成したピンチユニット2にしても、前記本発明を実施するための第一の実施態様と同様な作用効果が得られることは言うまでもない。
【0059】
(第三の実施態様)
図8ないし図10に示す本発明を実施するための第三の実施態様において、前記本発明を実施するための第一の実施態様および第二の実施態様のいずれかの前記ピンチユニット1,2を、在来の物干し具、いわゆるピンチハンガーに取り付けられたピンチと係合部を本発明の前記ピンチユニット1またはピンチユニット2と置き換えたものである。
具体的には図2で示すピンチユニットのフレームを在来の物干し具のフレームとして前記ピンチユニットを組み付けたものである。
【0060】
本実施態様では対象の物干し具は収納形態が谷折り式の折り畳み式ピンチハンガーとし、収納形態の谷折り形態になった時に洗濯物を纏めて下へ引っ張ることにより一括取り込みが可能なことを主要な特長とする物干し具を提示する。
なお、在来の物干し具には種々の形式が存在しており、前記ピンチユニットを組み付けるについてはその形式が特に限定されるものではなく、その場合は一括取り込みではなく個々のピンチユニットをフレームと平行方向に引っ張ることで取り込むようにしてもよい。
【0061】
[折り畳み式物干し具に関する説明]
一般的に折り畳み式物干し具に関しては、その折り畳み方向によって、一対のフレーム部材を吊り具側の吊るし方向上方に折りたたむ(フレーム部材の外端におけるピンチが支持されていない上方部同士が内側に向き合うように折り畳む)谷折り式(以下、単に谷折り式と称す)と、吊るし方向下方に折りたたむ(フレーム部材の外端におけるピンチが支持されている下方部同士が内側に向き合うように折り畳む)山折り式(以下、単に山折り式と称す)とがある。
【0062】
本発明の折り畳み式物干し具は、上述のうちの谷折り式を採用しており、まず、本発明が好適に用いられる谷折り式物干し具の形態について述べる。
図8は第三の実施態様の物干し具100の模式斜視図であり、図中には、物干し具の長手方向をX方向、短手方向をY方向としX、Yで形成される平面に対して垂直方向をZ方向とするように3方向が規定されている。図9はY方向から見た模式図となっている。以降の説明において、各方向を示す際には、単にX,Y,Z方向とのみ記載する。
【0063】
図8図9において、100は折り畳み式物干し具であり、洗濯物等を干すための複数のピンチユニット1(以下、1または2のいずれでもよく1と略す)と、該複数のピンチユニット1を保持し、ヒンジ部103によって回動可能に連結された一対のフレーム部材102a、102bと、該フレーム部材102a、102bを吊すための吊り具104と、前記フレーム部材102a、102bと前記吊り具104とを連結することで前記フレーム部材102a、102bを前記吊り具104によって吊持するフレーム吊持部材105と、で構成されている。
ピンチユニット1は第一の実施態様と第二の実施態様で示したピンチユニットの組み付け部位を物干し具100のフレーム102a、102bとして取り付けており、左右フレームそれぞれのピンチ部材30は中心部のヒンジ部103方向へ向くように取り付けられている。
【0064】
本実施態様においては、コの字状の金属パイプで形成されたフレーム部材102a、102bは、ヒンジ部103によって連結されることにより、略長方形のような環状に形成されている。
本実施の態様の折り畳み式物干し具は、前記ヒンジ部103によるフレーム部材102a、102bの回動動作により、物干し具として用いられる形態である展開形態と、折りたたまれてコンパクトとなる収納形態とを採ることができるようになっている。
フレーム部材102a、102bが折り畳まれた収納形態時には、図10(c)に示すようにピンチユニット1がフレーム部材102a、102bの外側に向く姿勢となる
【0065】
フレーム吊持部材105は、フレーム部材102a、102bに回動可能に連結支持されており、前記展開形態時には、このフレーム吊持部材105を介してフレーム部材102a、102bが吊り具104によって吊持される構成となっている。
前記フレーム吊持部材105は、収納形態時に前記フレーム部材102a、102bの回動動作によって前記吊り具104をフレーム部材102a、102bの領域から押し出すため、本発明の折り畳み式物干し具を物干し竿にかけたまま、展開形態から収納形態に移行可能で、さらにはその状態での洗濯ものの取り込みも可能となっている。また、収納形態時に一対のフレーム部材102a、102bのそれぞれに配置されたピンチ部材30は分離され、ピンチ部材30同士が絡まらない構成となっている。
【0066】
[洗濯物の一括取り外しに関する説明]
図10(a)は物干し具100に洗濯物7を掛けた状態であり、図10(b)は物干し具100を谷折りに折りたたむ途中経過を示しており、図10(c)は谷折り形態になった時に複数の洗濯物7を下へ引っ張ることにより一括して取り込もうとしている状態である。
洗濯物等の一括取り込み過程を図2を用いて説明する。図2(a)は物干し具100が展開形態のときであり支持部材10は水平で規制部材60は緩んでおり前後左右に自由に回動可能である。図2は物干し具100の右側(X方向)フレーム102bに取り付けられ例を想定している。洗濯物等を取り込むために物干し具100を谷折りに折り畳むと図10(b)の状態を経過して図10(c)のように前記フレーム部材102a、102bは背中合わせに垂直に立ち上がった姿勢となる。図2(a2)示すピンチユニット1の姿勢は支持部材10とともに反時計方向に90度回転し立ち上がった姿勢となる。既に第一の実施態様で説明したようにこの姿勢にあるとき洗濯物7等を下方(図2では-X方向)へ引っ張ると図2(a3)ないし図(a5)の過程を経て挟持部36は開口し洗濯物等は開放される。薄い生地の洗濯物7等は図2(a5)時点で開放され、それより厚みのある洗濯物等は図(b5)の時点で開放される。
図6の第二の実施態様のピンチユニット2でも上記と全く同様に稼働する。
【0067】
洗濯物7を取り外すときは纏めて下方へ引っ張ることにより容易に取り外すことができるようになっている。
なお洗濯物7の下端部を纏めて下方向へ引っ張ったとき、突出したラッチ雄部106はX側フレーム102bに対応するように設けられたラッチ雌部の結合孔(図示せず)に係合されフレーム102が水平方向へ開かないようになっている。
なお、言うまでも無いが、フレームを展開したままの状態で個々のピンチ部材30を水平方向に引っ張って取り外すことも可能である。
また、本発明の物干し具100の特長はピンチユニット1、2を備えており数々の特長はそのまま継承していると共に、さらに収納形態時にピンチ部材30同士が絡まないものとなっている。
【0068】
(第四の実施態様)
図11ないし図13に示す本発明を実施するための第四の実施態様において、前記本発明を実施するための第一の実施態様および第二の実施態様の前記ピンチユニット1またはピンチユニット2(以下、1または2のいずれでもよく1と略す)のいずれかを在来のパンタグラフ式の物干し具のフレームに取り付けたものであり、洗濯物の一括取り込みを主要な特長とするものである。
図11図12は、本発明の第四の実施態様の物干し具を示す上方および側方からの模式図であり、図13は、本発明の第四の実施態様の物干し具における洗濯物の取り込み時の様子を示す模式図である。
【0069】
図において、支持部材であるフレーム202は、パンタグラフ式の構成となっており、図中の矢印M(左右)方向に伸縮可能になっている。フレーム202には、3つのフック203が設けられており、この3つのフック203により物干し竿204にハンガーが吊下げられている。
【0070】
ここで、本実施態様では、図に示すように、ピンチユニット1の取り付け方向をフレーム伸縮方向に対して垂直方向に設置している。この構成とすることにより、物干しさお等への支持部分での物干し具のフレーム(支持部材)の支持回動許容方向(矢印S)を、ピンチユニット開放方向と揃えることができる。
【0071】
この構成によると、横風にあおられた場合であっても、本発明のピンチユニット1の風に強い特長に加えてさらに物干し具全体が回動することにより、ピンチユニット1部分での回転を抑制できるため、不測の事態による落下をさらに抑制することができるようになっている。
【0072】
さらに、被挟持物を取り込む際には、図13に示すようにフレームを左右方向に縮ませた姿勢とすれば、片手でフレームをおさえつつ、方向Fに被挟持物を引っ張るだけで、複数の被挟持物を一括して速やかに取り込むことができる構成となっている。
なお、言うまでも無いが、フレームを展開した状態のままで個々のピンチ部材30を引っ張って取り外すことも可能である。
【0073】
(その他実施態様)
前記の谷折り形式物干し具、パンタグラフ形式物干し具以外の形式の物干し具についても本発明のピンチユニットを利用してもよい。
また、フレーム20に代えてマグネットや吸盤等の固着部材にすることで、本発明のピンチユニットを用いた単体の挟持具としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、物干し具を使用、製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0075】
1、2:ピンチユニット
10、101:支持部材
13、131:当接面
102a、102b、202:フレーム
18、181:曲状支持軸
20:吊持部材
30:ピンチ部材
31:第一挟持片
32:第二挟持片
35:ヒンジ部
36:挟持部
60、65、68:規制部材
61a、61b:支持部材側係止部
63:ピンチ部材係止部
7、71:被挟持物
100、200:物干し具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2021-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばね部材によって付勢された第一挟持片及び第二挟持片の挟持部にて被挟持物を保持するピンチ部材と、
該ピンチ部材を支持する支持部材と、
前記第一挟持片の把持部に固定され、前記ピンチ部材を前記支持部材に連結する吊持部材と、
前記支持部材と前記ピンチ部材第二挟持片とをつなぎ、前記ピンチ部材が垂下された姿勢で弛緩状態で係止された規制部材と、
により構成され、前記ピンチ部材挟持部の前記第一挟持片側への移動にともない前記規制部材が作用し前記ピンチ部材挟持部の開放がなされるピンチユニットであって、
前記支持部材は、基台部と、前記第一挟持片側に設けられた第一支持軸基部および前記第二挟持片側に設けられた第二支持軸基部にて該基台部より前記ピンチ部材が前記垂下される側で突出して接続される曲状の支持軸と、該支持軸の設置される側で該支持軸の延伸方向に沿って前記第一支持軸基部に隣接する該基台部に設けられた当接面と、からなり、
前記吊持部材は、該支持軸に滑動可能に懸けられている縦長の滑動連結部にて、前記ピンチ部材を前記支持部材に連結し、
前記規制部材は、前記支持軸に対して、前記基台部の前記ピンチ部材挟持部の前記第1挟持片側への移動方向とは反対側に設けられた支持部材側係止部により前記支持部材と係止されており、前記ピンチ部材挟持部の前記移動にともない、前記規制部材が弛緩状態から緊張状態へと移行することで、前記ピンチ部材の吊持箇所を前記第一挟持片から前記第二挟持片に切り替えるとともに、前記緊張状態後の前記規制部材による前記支持部材側係止部を支点とした前記ピンチ部材の回動をもたらすものであり、
該回動にともなう前記滑動連結部の前記当接面への前記回動方向からの当接、および、その後の前記基台部に当接支持された状態での滑動により前記ピンチ挟持部の開放がなされることを特徴とするピンチユニット。
【請求項2】
前記滑動連結部の前記基台部に当接支持された状態での前記滑動は、前記基台部に加えて前記支持軸に前記滑動連結部が当接し回転滑動するものであることを特徴とする請求項1記載のピンチユニット。
【請求項3】
前記滑動連結部の前記基台部に当接支持された状態で前記滑動は、前記基台部上で前記滑動連結部が前記支持部材側係止部方向に移動した後、反転移動するものであることを特徴とする請求項1記載のピンチユニット。
【請求項4】
前記当接面は、前記第一支持軸基部近傍の前記第二支持軸基部側とは逆側に設けられているとともに、前記滑動連結部は、その内径部分で前記当接面と当接することを特徴とする請求項2または3に記載のピンチユニット。
【請求項5】
前記当接面は、前記第一支持軸基部と前記第二支持軸基部との間に設けられているとともに、前記滑動連結部は、その先端部分で前記当接面と当接することを特徴とする請求項2または3に記載のピンチユニット。
【請求項6】
前記ピンチユニットは、前記規制部材の緊張状態に至るまでのタイミングと、前記吊持部材と前記基台部との当接姿勢と、が、前記挟持部に挟まれる前記被挟持物の厚みによって変化することを特徴とする請求項1に記載のピンチユニット。
【請求項7】
前記ピンチユニットの前記基台部に当接支持された状態での前記滑動による前記ピンチ挟持部の前記開放動作は、前記挟持部に挟まれる前記被挟持物の厚みによって、前記基台部に加え前記支持軸への当接により前記ピンチ部材の回転運動を梃子の駆動力に変換して開放する第一の開放モードと、前記基台部に沿って前記支持軸から離れる方向への直線運動を梃子の駆動力に変換して開放する第二の開放モードと、をとり得ることを特徴とする請求項1またはに記載のピンチユニット。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のピンチユニットを複数備えるフレームを有するとともに、これら複数のピンチユニットが前記フレームに同じ向きに配置されたピンチユニット群を有することを特徴とする物干し具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のピンチユニットは、ばね部材によって付勢された第一挟持片及び第二挟持片の挟持部にて被挟持物を保持するピンチ部材と、該ピンチ部材を支持する支持部材と、前記第一挟持片の把持部に固定され、前記ピンチ部材を前記支持部材に連結する吊持部材と、前記支持部材と前記ピンチ部材第二挟持片とをつなぎ、前記ピンチ部材が垂下された姿勢で弛緩状態で係止された規制部材と、により構成され、前記ピンチ部材挟持部の前記第一挟持片側への移動にともない前記規制部材が作用し前記ピンチ部材挟持部の開放がなされるピンチユニットであって、前記支持部材は、基台部と、前記第一挟持片側に設けられた第一支持軸基部および前記第二挟持片側に設けられた第二支持軸基部にて前記ピンチ部材が前記垂下される側で該基台部より突出して接続される曲状の支持軸と、該支持軸の設置される側で該支持軸の延伸方向に沿って前記第一支持軸基部に隣接する該基台部に設けられた当接面と、からなり、前記吊持部材は、該支持軸に滑動可能に懸けられている縦長の滑動連結部にて、前記ピンチ部材を前記支持部材に連結し、前記規制部材は、前記支持軸に対して、前記基台部の前記ピンチ部材挟持部の前記第1挟持片側への移動方向とは反対側に設けられた支持部材側係止部により前記支持部材と係止されており、前記ピンチ部材挟持部の前記移動にともない、前記規制部材が弛緩状態から緊張状態へと移行することで、前記ピンチ部材の吊持箇所を前記第一挟持片から前記第二挟持片に切り替えるとともに、前記緊張状態後の前記規制部材による前記支持部材側係止部を支点とした前記ピンチ部材の回動をもたらすものであり、該回動にともなう前記滑動連結部の前記当接面への前記回動方向からの当接、および、その後の前記基台部に当接支持された状態での滑動により前記ピンチ挟持部の開放がなされることを特徴とする。