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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138083
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】弾性ストッキング
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/06 20060101AFI20220914BHJP
   A61F 13/14 20060101ALI20220914BHJP
   A41B 11/14 20060101ALI20220914BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20220914BHJP
   A41D 13/06 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A61F13/06 Z
A61F13/14 Z
A41B11/14 B
A41B11/14 E
A41D13/05 125
A41D13/05 143
A41D13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037879
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】507186551
【氏名又は名称】株式会社 女性医療研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】三井 桂子
【テーマコード(参考)】
3B011
3B018
【Fターム(参考)】
3B011AA05
3B011AA12
3B011AA14
3B011AA15
3B011AB08
3B011AC17
3B018HA03
3B018HA05
3B018HB01
(57)【要約】
【課題】リンパ浮腫の改善を図る。
【解決手段】本発明の弾性ストッキング1は、レッグ部50が、脚に所定の圧力を付与する弾性力を有していると共に、パンティー部10に会陰部押圧部となる環状部20を有している。このため、脚に滞留しているリンパ液の流れを改善できるだけでなく、会陰部付近におけるリンパ液の流れも促すことができ、リンパ浮腫の改善に効果的である。また、会陰部付近を含む下半身全体のマッサージ効果の改善が期待できることから、血流改善、血行促進にも効果的である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンティー部と、前記パンティー部に接続された少なくとも片足装着用のレッグ部とを備え、
前記パンティー部が、装着時に会陰部に対応する位置に設けられ、会陰部を押圧する会陰部押圧部を有し、
前記レッグ部が、脚に所定の圧力を付与する弾性力を有していることを特徴とする弾性ストッキング。
【請求項2】
前記パンティー部が、
装着時に、膣口の外周部に対応する位置になるように設けられた環状部と、
前記環状部に連結され、前記環状部を、膣口に対して前方又は後方の少なくとも一方に引っ張り、前記環状部における膣口の左右に位置する左右の側部の相互間の間隔を狭める引っ張り部と
を有し、
前記環状部が前記会陰部押圧部として機能する請求項1記載の弾性ストッキング。
【請求項3】
前記レッグ部が、前記脚の周方向に沿って適宜の間隔をおいて、かつ、略縦方向に延びるように設けられた帯状の加圧ラインを有する請求項1又は2記載の弾性ストッキング。
【請求項4】
前記レッグ部が、前記脚の周方向に沿って適宜の間隔をおいて、かつ、略縦方向に延びるように設けられた帯状の加圧ラインを有し、前記加圧ラインが、前記パンティー部に形成される環状部及び引っ張り部の少なくとも一つに接続されている請求項2記載の弾性ストッキング。
【請求項5】
前記レッグ部の前記脚に付与する圧力が、部分的に異なっている請求項1~4のいずれか1に記載の弾性ストッキング。
【請求項6】
前記レッグ部の前記脚に付与する圧力が、足首からパンティー部に向かうに従って弱くなっている請求項5記載の弾性ストッキング。
【請求項7】
前記レッグ部は、爪先被覆部を有している請求項1~6のいずれか1に記載の弾性ストッキング。
【請求項8】
前記爪先被覆部は、足指のうち、少なくとも1本を独立して被覆する足指被覆部を有している請求項7記載の弾性ストッキング。
【請求項9】
前記レッグ部には、土踏まず部より爪先寄りの範囲に、少なくとも爪先を被覆可能で、前記レッグ部の装着前に保持させておく装着補助具を、前記レッグ部の着用後に引き抜き可能な引き抜き部が設けられている請求項7又は8記載の弾性ストッキング。
【請求項10】
前記レッグ部に、装着時に、装着者の指がかかる厚みの異なる部位が部分的に設けられている請求項1~7のいずれか1に記載の弾性ストッキング。
【請求項11】
リンパ浮腫治療用である請求項1~10のいずれか1に記載の弾性ストッキング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性ストッキングに関し、特に、リンパ浮腫の治療に適する弾性ストッキングに関する。
【背景技術】
【0002】
癌の手術における転移予防等のため、リンパ節の切除が行われる。リンパ節が切除されると、リンパ液の流れが悪くなり四肢に溜まり、リンパ浮腫を引き起こす。なかでも、子宮癌、卵巣癌の治療で骨盤内リンパ節郭清が行われると、下肢からのリンパ液が鼠径リンパ節を経由して陰部へと逆流する。また、肛門からのリンパ流は、胸管への流出が阻害され、鼠径リンパ節を経由して陰部へ逆流する。リンパ浮腫の予防や治療には、適度な運動、リンパドレナージュ、圧迫療法、リンパ管静脈吻合術などが有効であるが、なかでも、強い圧縮力を付与する弾性ストッキングを着用する圧迫療法は、手軽であり、日常生活において実施しやすい。
【0003】
このような弾性ストッキングとして、特許文献1では、足首領域、下腿領域、大腿領域における各着圧力を段階的に弱めた構成とした医療用ストッキングを開示している。これにより、脚のリンパ液の流れの改善効果を上げると共に、地糸と挿入糸(弾性糸)の各糸長の比を所定の関係とすることで、通気性、透湿性を高める工夫もなされている。
一方、本出願人は、特許文献2に、パンツ型の骨盤底筋支持補助具を提案している。これは、膣口の外周部に対応する位置になるように設けられた環状部を有し、この環状部により骨盤底筋を下方から上方に向かって押圧したり、膣口を狭くする方向に力を付与したりして尿失禁や骨盤臓器脱の予防等を図るものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-115571号公報
【特許文献2】WO2019/065708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の医療用ストッキングは、レッグ部において上記のような所定の着圧力が作用する構成となっている。これに対し、パンティー部は、左右の浅鼠径リンパ節の内側を弾性力の小さい弱パワー領域として、着圧を抑制し、腹部膨出部の締め付けを抑えて着用感を上げている。このような弱パワー領域は腹部膨出部に対応する箇所だけでなく、クロッチ部においても、同様の素材が用いられている。上記のように、骨盤内リンパ節郭清が行われるとリンパ液の会陰部方向への逆流が生じるが、特許文献1ではクロッチ部は弱パワー領域となっており、リンパ液の流れを促す特別な手段は施されていない。よって、特許文献1の医療用ストッキングは、骨盤内リンパ節郭清が行われた場合のように、リンパ液の会陰部方向への逆流が生じるような症状への対応手段としては必ずしも十分ではない。
【0006】
また、特許文献2の骨盤底筋支持補助具は、環状部によって骨盤底部を押圧するものであり、膣口の外周に形成されている環状部は、会陰部を押圧することができる。従って、パンティー部にこのような会陰部押圧機能を有する環状部を設けることで、会陰部におけるリンパ液の滞りを抑制できることが期待できる。
【0007】
一方、特許文献1に示されたような医療用ストッキング(弾性ストッキング)は、弾性糸を用いて形成したレッグ部により、人の脚に所定の着圧力がかかるようになっている。そのため、着用時において、パンティー部及びレッグ部の境界に爪先から脚を入れていく場合、爪先がレッグ部内面に引っ掛かり着用しにくい。特に、レッグ部の先端が爪先を被覆する爪先被覆部まで有する構造のストッキングの場合には、この爪先被覆部に至るまで爪先を挿入することは容易ではない。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、脚はもとより、会陰部付近におけるリンパ液の流れも促すことができ、さらには、着用時の困難さを解消できる弾性ストッキングを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の弾性ストッキングは、
パンティー部と、前記パンティー部に接続された少なくとも片足装着用のレッグ部とを備え、
前記パンティー部が、装着時に会陰部に対応する位置に設けられ、会陰部を押圧する会陰部押圧部を有し、
前記レッグ部が、脚に所定の圧力を付与する弾性力を有していることを特徴とする。
【0010】
前記パンティー部が、
装着時に、膣口の外周部に対応する位置になるように設けられた環状部と、
前記環状部に連結され、前記環状部を、膣口に対して前方又は後方の少なくとも一方に引っ張り、前記環状部における膣口の左右に位置する左右の側部の相互間の間隔を狭める引っ張り部と
を有し、
前記環状部が前記会陰部押圧部として機能するものであることが好ましい。
【0011】
前記レッグ部が、前記脚の周方向に沿って適宜の間隔をおいて、かつ、略縦方向に延びるように設けられた帯状の加圧ラインを有するものであることが好ましい。
また、前記レッグ部が、前記脚の周方向に沿って適宜の間隔をおいて、かつ、略縦方向に延びるように設けられた帯状の加圧ラインを有し、前記加圧ラインが、前記パンティー部に形成される環状部及び引っ張り部の少なくとも一つに接続されているものであることが好ましい。
【0012】
前記レッグ部の前記脚に付与する圧力が、部分的に異なっていることが好ましい。
また、前記レッグ部の前記脚に付与する圧力が、足首からパンティー部に向かうに従って弱くなっていることが好ましい。
【0013】
前記レッグ部は、爪先被覆部を有している構成とすることが好ましい。
前記爪先被覆部は、足指のうち、少なくとも1本を独立して被覆する足指被覆部を有していることが好ましい。
【0014】
前記レッグ部には、土踏まず部より爪先寄りの範囲に、少なくとも爪先を被覆可能で、前記レッグ部の装着前に着用しておく装着補助具を、前記レッグ部の装着後に引き抜き可能な引き抜き部が設けられていることが好ましい。
前記レッグ部に、装着時に、装着者の指がかかる厚みの異なる部位が部分的に設けられていることが好ましい。
【0015】
前記弾性ストッキングは、リンパ浮腫治療用として好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の弾性ストッキングは、レッグ部が、脚に所定の圧力を付与する弾性力を有していると共に、パンティー部に会陰部押圧部を有している。このため、脚に滞留しているリンパ液の流れを改善できるだけでなく、会陰部付近におけるリンパ液の流れも促すことができ、リンパ浮腫の改善に効果的である。また、会陰部付近を含む下半身全体のマッサージ効果の改善が期待できることから、血流改善、血行促進にも効果的である。
【0017】
また、レッグ部における土踏まず部より爪先寄りの範囲に、装着補助具を引き抜き可能な引き抜き部が設けられている構成とすることが好ましい。装着補助具は、摩擦抵抗を小さくするためのプラスチック製の少なくとも爪先を被覆できる袋状等の形態のもので、装着者がこの装着補助具を着用してレッグ部に脚を通すことにより、レッグ部の着用性を向上させるものである。しかしながら、レッグ部が爪先被覆部を有する場合、レッグ部の装着後にこの装着補助具を取り除くことができない。このため、従来、装着補助具は、爪先被覆部のない弾性ストッキングの装着時のみに用いられていたが、本発明によれば、引き抜き部を有する構成とすることで、レッグ部が爪先被覆部を有する場合でも装着補助具を用いることができ、レッグ部の装着性を向上させることができる。
また、レッグ部に厚みの異なる部位を設けておくことにより、装着時に、着用者の指をかけやすくなり、はきやすさを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一の実施形態に係る弾性ストッキングを前方から見た斜視図である。
図2図2は、図1の弾性ストッキングを後方から見た斜視図である。
図3図3は、上記実施形態の弾性ストッキングにおける環状部の作用を説明するための図であり、該環状部が設けられた付近のパンティー部を平面的に見た図である。
図4図4は、加圧ラインを引っ張り部に接合した態様に係る弾性ストッキングを前方から見た斜視図である。
図5図5は、図4の弾性ストッキングを後方から見た斜視図である。
図6図6(a)は、着脱可能な爪先被覆部を設けた弾性ストッキングの一部を示した斜視図であり、図6(b)~(c)は、その着用法を説明するための図である。
図7図7(a),(b)は、装着補助具の引き抜き部の例を示した図である。
図8図8(a),(b)は、足指被覆部を有する構成の例を示した図である。
図9図9(a)~(c)は、装着時に指を引っかける部位を形成した態様の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1及び図2は、本発明の一の実施形態にかかる弾性ストッキング1を示した図である。この図に示したように、本実施形態の弾性ストッキング1は、パンティー部10とレッグ部50とが一体になっているパンティーストッキングタイプのものである。パンティー部10とレッグ部50は一体に形成されるが、レッグ部50は、左右いずれか少なくとも一方のみの構成とすることもできる。レッグ部50を片方のみとするか、両方とするかは、リンパ浮腫の生じている症状にあわせて決められる。同様に、着用者によっては左右の脚の太さが大きく異なる場合もあるため、その場合には、左右のレッグ部50をそれにあわせて異なる太さで形成することもできる。
【0020】
パンティー部10は、環状部20及び引っ張り部30を有している。環状部20は、クロッチ部13の内面を中心として設けられ、その大きさによっては、前身頃11及び後身頃12の隣接する範囲も含んで形成されている。環状部20は、図3に示したように、クロッチ部13を中心とした範囲において、装着した時に、膣口の外周部に対応する位置になるように設けられている。環状部20は、装着時には会陰部に相当する部位を含むため、本実施形態では、環状部20が会陰部押圧部として機能する。
【0021】
環状部20は、図3に示したように、平面視で例えば楕円状に形成され、その長径方向が、クロッチ部13の幅方向に直交する方向となる向きで設けられている。環状部20のうち、装着時に膣口を挟む部位が左右の側部21,22となり、左右の側部21,22を構成する略直線状となっている辺のうち、前身頃11寄りの端部21a,22a間を接続する部位が前部23となり、後身頃12寄りの端部21b,22b間を接続する部位が後部24となっている。環状部20の中でも、側部21,22から後部24にかけての部位が会陰部押圧部としての中心的な役割を果たす。
【0022】
なお、環状部20は、本実施形態では、側部21,22、前部23及び後部24が全て一体となっているが、それぞれの境界において隙間を有していてもよいし、また、側部21,22、前部23及び後部24のいずれかの部位が途切れていてもよい。また、側部21,22は、若干湾曲していてもよく、さらに、前部23及び後部24は、図面に示すように若干湾曲した形状であってもよいし、略直線状でもよいし、中央付近が外方に突出する山型形状等であってもよい。
【0023】
引っ張り部30は、環状部20を、前方又は後方の少なくとも一方に引っ張り、環状部20の左右の側部21,22の相互間の間隔を狭める機能を有している。本実施形態では、前身頃11の範囲に設けられる前側引っ張り部31と、後身頃12の範囲に設けられる後側引っ張り部32とを有する。
【0024】
前側引っ張り部31は、本実施形態では、2本形成されており、それぞれの一端31aは、環状部20の前部23に接続され、他端31bは、前身頃11の上部に向かって相互に間隔をおくように、略V字状に設けられている。これは、前側引っ張り部31が、尿道口等を圧迫しないようにするためである。
【0025】
後側引っ張り部32は、後部24の中央部24a付近に一端32aが連結され、他端32が後身頃32bの上部に向かって設けられている。すなわち、後身頃12の幅方向(骨盤の幅方向)の中央部24a付近に沿って1本設けられている。なお、環状部20と引っ張り部30(前側引っ張り部31及び後側引っ張り部32)は、本実施形態のように同じ材料で一体に設けられていてもよいが、別々に形成して、上記の部位で両者を接続して形成してもよい。また、環状部20及び引っ張り部30は、後述するレッグ部50の加圧ライン51と同様に、所定の圧力を付与する弾性復元力を有している。これらの部分の弾性復元力を高めた部位は、パンティー部10を編成する際に、所定の弾性糸を挿入するなどして形成することができる。なお、本実施形態の弾性ストッキング1は公知のストッキング用の編機で製造される。
【0026】
図3に示したように、環状部20の前部23は、略V字状の2本の前側引っ張り部31によって若干左右に広がる方向(矢印A方向及びB方向)に引っ張られる。このため、前部23は、中央部付近だけでなく、前部23の範囲全体が当該方向(矢印C方向)へ引っ張られる。これに対し、後部24は、1本の後側引っ張り部32が中央部24a付近に接続されているため、中央部24a付近を中心として後身頃12の上部方向(矢印D方向)に引っ張られる。中央部24a付近が引っ張られると、後部24の両端に位置する側部21,22の端部21b,22b同士が相互の間隔を狭める方向(矢印E方向及びF方向)に変位する。これにより、左右の側部21,22の相互間の間隔は、図3の想像線で示したように、側部21,22全体が相互間の間隔を狭める方向に変位する。すなわち、環状部20は、その内孔20aがより長細くなるように変形する。このように、側部21,22が相互間の間隔を狭めるように変位すると、後部24付近において上方向に力が作用すると共に、膣口を狭めようとする方向にも力が作用する。その結果、会陰部付近に押圧力が付与される。
【0027】
パンティー部10の左右の少なくとも一方、本実施形態では両方に、パンティー部10と一体となるようにレッグ部50が形成されている。レッグ部50は、脚に対して所定の圧力が付与されるように、弾性糸を織り交ぜて編成されている。その製法は限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。また、図1及び図2に示したように、弾性復元力が強く作用する加圧ライン51を、略縦方向に帯状に、幅方向に所定間隔毎に設けた構成とすることが好ましい。これとは逆に、弾性復元力が強くする加圧ラインを幅方向(脚の周方向)に形成し、これを縦方向に所定間隔毎に設けた構成とすることも可能である。しかしながら、加圧ラインをこのように縦方向に所定間隔毎に周方向に沿って設けると、その加圧ラインに沿った部位にせん断方向の力が集中し、圧力によっては、リンパ液等の流れを却って阻害する可能性がある。そこで、本実施形態のように加圧ライン51を縦方向に沿ってかつ幅方向に所定間隔毎に設けることが好ましい。これにより、脚の付け根からレッグ部50の先端に相当する部位までの脚全体が、周方向から内方に押圧されることになり、局部的にせん断力が強く作用することがないため、、リンパ液等の流れを阻害することがない。また、外観的にもこの縦方向の加圧ライン51が把握できると、脚がすっきり見える。
【0028】
また、加圧ライン51は、略縦方向に沿って全ての範囲において同じ圧力が作用するのではなく、部分的に異なる圧力が作用するように形成することが好ましい。それにより、歩行時など、脚を動かす際に自然にマッサージ効果が得られ、リンパ液の流れ、血流の改善に寄与できる。この場合、足首からパンティー部10方向に向かって、圧力が低くなるように設けることがより好ましい。リンパ液や血液の下から上への流れをより円滑にすることができる。
【0029】
本実施形態によれば、レッグ部50に形成された加圧ライン51により脚に対して所定の圧力が作用し、リンパ液の流れや血流をよくすることができるだけでなく、パンティー部10の環状部20が会陰部押圧部として機能するため、会陰部にも所定の刺激が付与され、骨盤内リンパ節郭清が行われた場合のように、リンパ液等が会陰部付近に滞りやすい症状の改善にも寄与できる。
【0030】
また、レッグ部50の加圧ライン51は、パンティー部10に設けた環状部20、前側引っ張り部31及び後側引っ張り部32のいずれか少なくとも一つに接続する構成とすることが好ましい。例えば、図4及び図5に示したように、加圧ライン51を、前側引っ張り部31及び後側引っ張り部32に連続するように編成することが好ましい。これにより、前側引っ張り部31及び後側引っ張り部32は、歩行時などにおいて、レッグ部50の動きによって加圧ライン51が伸縮すると、それに伴って伸縮する動きを示すことになる。その結果、環状部20の動きも促され、会陰部へのマッサージ効果をより高め、リンパ液等の流れのさらなる促進を図ることができる。
【0031】
上記のように、本実施形態の弾性ストッキング1は、レッグ部50が所定の弾性力を有しているため、脚を通しにくい。すなわち、レッグ部50内に脚を入れる際に、爪先がレッグ部50の中途に引っ掛かり易い。例えば、図1図2図4及び図5に示したレッグ部50の場合、爪先を被覆する部分のないタイプであり、レッグ部50の先端が、土踏まず部付近までしかなく、開口している。このようなタイプの場合、例えば、滑りやすいプラスチック製の袋などからなり、少なくとも爪先を覆うことができる大きさの装着補助具(図6の符号60を参照)を用い、装着補助具を爪先に被せた状態でレッグ部50に足を挿入し、レッグ部50の先端開口から爪先が出たならば、爪先を被覆している装着補助具を取り除くことで、履きにくさを補うことが可能である。しかしながら、レッグ部50の先端か開口されていない爪先被覆部を有する場合には、そのような装着法をとることはできない。
【0032】
そこで、爪先被覆部を有する弾性ストッキング1の場合、図6(a)に示したように、レッグ部50を、土踏まず部から足指付け根部までの範囲内に開口端縁50aを有する形状で形成し、この開口端縁50aに一部が接続されている爪先被覆部55を設けた構成とすることが好ましい。この場合、例えば、滑りやすいプラスチック製の袋等の装着補助具60に足を入れ、その状態で、爪先からレッグ部50に足を通し、図6(b)に示したように、開口端縁50aから爪先が突出したならば、その装着補助具60を引き抜く。その後、図6(c)に示したように、爪先被覆部55で爪先を被覆する。すなわち、開口端縁50aが装着補助具60の引き抜き部となるため、本実施形態の弾性ストッキング1を爪先被覆部55の有するタイプとしても、履きやすさを損なうことがない。なお、爪先被覆部55を開口端縁50aに一部が連結された構成とする手段は任意であり、例えば、縫製などを用いることができる。また、爪先を被覆した後、開口端縁50aにホックや面ファスナー-等により接合する構成とすることもできる。
【0033】
また、図7(a)に示したように、土踏まず部よりも爪先被覆部55寄りの足裏側に、装着補助具60用の引き抜き部である開口部50bを設けると共に、この開口部50bの前縁及び後縁間に弾性糸50cを掛け渡し、開口部50bが拡縮可能な構成とし、この開口部50bから装着補助具60を引き抜く構成とすることもできる。また、図7(b)に示したように、足裏側の爪先寄りの範囲に、単なる引き抜き部としてのスリット50dを形成し、このスリット50dから装着補助具60を引き抜く構成とすることもできる。引き抜き部の形成いちは、図6及び図7に示したものに限定されるものではなく、図7(a),(b)に示したような引き抜き部を足の甲側に形成することもできるし、より爪先寄りに形成することもできる。また、開口部50bやスリット50dも幅方向に長いものに限らず、縦方向に長いものであってよいし、円形や楕円形等であってもよい。
【0034】
また、図8(a),(b)に示したように、爪先被覆部55は、足指被覆部55aを有する構成とすることが好ましい。例えば、図8(a)に示したように、5本指のそれぞれに対応する足指被覆部55aを有する構成としてもよいし、図8(b)に示したように、例えば、親指のみに対応する足指被覆部55aを有する構成としてもよい。足指被覆部55aは、少なくとも1本の指を独立して被覆することができるものであればよく、親指以外の指のみを独立して被覆する構成とすることもできるし、2本や3本の指をまとめる形とした構成とすることもできる。足指も、リンパ液の流れの悪化により浮腫が生じるため、5本指のそれぞれに対応した足指被覆部55aを有する構成として各指を加圧できるものが好ましいが、装着者の症状に合わせて、足指被覆部55aの数を調整することも可能である。また、足指被覆部55aを形成した場合、装着補助具60の引き抜き部を足指被覆部55aに形成することも可能である。
【0035】
また、図9(a)に示したように、レッグ部50の適宜位置に、円周方向において他の部位よりも相対的に厚みがあり、かつ、一部に幅広部56aが形成された突条部56を設けた構成とすることもできる。レッグ部50は、脚に所定の圧力を付与する弾性力を有しているため、装着時には、レッグ部50の一部を折り曲げて脚との間に指を差し入れて、弾性力に抗して外方に広げるような操作をしながら徐々に上方に引き上げて装着する。しかしながら、弾性力が強いタイプのものほど指を差し入れる操作が困難になる。そこで、このような突条部56及び幅広部56aを設けることで、装着時に、装着者の指がこの幅広部56aに引っ掛かるようにし、レッグ部50を上方に引き上げやすくしたものである。また、指をかける部分は、レッグ部50に部分的に相対的に厚みの異なる部位を形成すればよく、厚みのある突条部56の両側付近に凹み56bを形成したり(図9(b))、突条部56の中央付近に凹み56cを形成したりして(図9(c))、これらの凹み56b,56cに指をかける構成とすることもできる。
【0036】
なお、本実施形態の弾性ストッキング1は、上記のように、レッグ部50の略縦方向に加圧ライン51を設けており、その加圧力によりリンパ液等の流れを改善できるが、より高い効果を得るためにはマッサージを併用することが好ましい。例えば、クッションなどをあてがって踵を少し上に上げ、その状態で、バイブレーターなどの簡易なマッサージ器を用いて足首から大腿部方向にマッサージを行う。加圧ライン51がリンパ液の流れ方向に沿った略縦方向であるため、このようなマッサージを併用することで、リンパ液等の流れをさらに効果的に改善することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 弾性ストッキング
10 パンティー部
20 環状部
21,22 側部
23 前部
24 後部
30 引っ張り部
31 前側引っ張り部
32 後側引っ張り部
50 レッグ部
51 加圧ライン
55 爪先被覆部
55a 足指被覆部
60 装着補助具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9