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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138093
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】コンクリート製織物形状型パネル
(51)【国際特許分類】
   E04C 2/42 20060101AFI20220914BHJP
   B28B 23/04 20060101ALI20220914BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20220914BHJP
   C04B 7/26 20060101ALI20220914BHJP
   C04B 7/14 20060101ALI20220914BHJP
   E04C 2/04 20060101ALI20220914BHJP
   E04C 2/06 20060101ALI20220914BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
E04C2/42 Z
B28B23/04 ZAB
C04B28/02
C04B7/26
C04B7/14
E04C2/04 C
E04C2/06
E04F13/14 102A
E04F13/14 102C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098975
(22)【出願日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2021037055
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】717001145
【氏名又は名称】株式会社HPC沖縄
(72)【発明者】
【氏名】阿波根 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】西薗 博美
(72)【発明者】
【氏名】細矢 仁
(72)【発明者】
【氏名】多田 修二
(72)【発明者】
【氏名】有賀 俊二
【テーマコード(参考)】
2E110
2E162
4G058
4G112
【Fターム(参考)】
2E110AB04
2E110GA42W
2E110GB11W
2E110GB23W
2E110GB41W
2E162AA02
2E162CA11
2E162FA14
2E162FA20
2E162FD06
2E162FD07
4G058GA01
4G058GB01
4G058GC01
4G058GF11
4G112PA15
4G112PA24
4G112PC12
(57)【要約】
【課題】 従来の型枠を用いたコンクリートパネルでは実現が困難とされていた、縦糸と横糸を織り込んだような織物形状のデザインをコンクリートパネルで実現するものであり、縦梁と横梁を組合せて構成されるコンクリート製織物形状型パネルを提供するものである。
【解決手段】 複数の縦梁に対して、直交する凹凸形状に製作された複数の横梁が組み合わされ、打継ぎされて構成されたことを特徴とするコンクリート製織物形状型パネルである。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の直線状の縦梁に対して、直交する凹凸形状に製作された複数の横梁が組み合わされ、打継ぎされて構成されたことを特徴とするコンクリート製織物形状型パネル。
【請求項2】
前記の縦梁は、緊張材によりプレストレスが導入されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート製織物形状型パネル。
【請求項3】
前記の凹凸形状の横梁は、該梁の凹部及び凸部が、縦梁の前面(鏝面)側と後面(ベッド面)側とで交互に打継ぎされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンクリート製織物形状型パネル。
【請求項4】
前記の凹凸形状の横梁と縦梁の組合せは、横梁が段毎に前面(鏝面)と後面(ベッド面)とで凹凸が反対となるように、縦梁を打継ぎすることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のコンクリート製織物形状型パネル
【請求項5】
繊維補強材を混入した繊維補強コンクリートを用いたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のコンクリート製織物形状型パネル。
【請求項6】
前記の横梁が、環境配慮型コンクリートを用いたことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のコンクリート製織物形状型パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦梁と横梁を織物状に組み合わせた構造を有するコンクリート製織物形状型パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、セメントなどの固化材に水と骨材を混合して、型枠内に充填して固化させるものである。建築等の構造物で利用するコンクリートは,耐久性と経済性を兼ね備えた欠かすことのできない重要な材料である。
【0003】
一般に、コンクリートは、型枠にコンクリート材料を流し込み、固めて製造するため、複雑な形状はコンクリートの流動性の問題があり、非常に困難である。
【0004】
近年、コンクリートによる壁面の意匠性が注目されており、各種の凹凸デザインを有するデザインパネルを型枠に取り付けてコンクリートを打設することが提案されている。(特許文献1:特開2003-176626号)
【0005】
デザインブロック(特許文献2:特開2005-76389号)や隆起パネル部材を貼り付けた壁面パネル(特許文献3:特開2000-356026)なども提案されている。
【0006】
縦梁と横梁からなるコンクリートととしては、傾斜面の保護フレームなどがあるのみであり、太い梁で、重量物であり、建築物の壁面に使用できるものではない。(特許文献4:特開平7-238552号)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-176626号公報
【特許文献2】特開2005-76389号公報
【特許文献3】特開2000-356026公報
【特許文献4】特開平7-238552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の各種のコンクリート壁面のデザインパネルは、いずれも、表面の凹凸や空洞部を形成することによるデザインであり、コンクリート原料を流し込む型枠に工夫を施したものである。
【0009】
型枠にコンクリート原料を流し込み、固化させて製造するデザインコンクリートパネルであるため、縦糸と横糸を組み合わせた織物のような形状とすることは困難である。
【0010】
複雑な形状の型枠を単純に制作することは可能であるが、型枠を脱型したときに、形状が維持できなければならない。これがコンクリートの製造において最も高度な技術が求められるものである。
【0011】
確実に脱型できる為には、型枠の壁面のテーパーを適切に設定する必要があり、型枠の形状、材質は元より、より複雑になると、角部や細部が剥離や脱落が発生したり、強度の低下や局部的な応力の集中などの問題もある。
【0012】
このように、型枠を用いて製作するコンクリート製品の場合、複雑な形状になると、希望の形状を維持した状態で脱型することは困難である。
【0013】
特に縦糸と横糸を編み込んだ形状を実現する為には、型枠のみでは不可能であり、複数段階に分けて、打設する部位と形状、及び順番を十分に検討し、脱型による問題が発生しないようにコンクリート製品を完成させる必要があり、打継ぎというコンクリート技法を駆使する必要がある。
【0014】
本発明は、従来の型枠を用いたコンクリートパネルでは実現が困難とされていた、縦糸と横糸を織り込んだような織物形状のデザインをコンクリートパネルで実現するものであり、縦糸を縦梁とし、横糸を横梁として組合せて構成されるコンクリート製織物形状型パネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は諸課題を解決するために、請求項1では、複数の直線状の縦梁に対して、直交する凹凸形状に製作された複数の横梁が組み合わされ、打継ぎされて構成されたことを特徴とするコンクリート製織物形状型パネルとするものである。
【0016】
本願発明は、縦糸と横糸を織り込んだ織物のように、縦梁と横梁を組み合わせてコンクリート製織物形状型パネルとするものである。
【0017】
該凹凸形状の横梁とは、横梁が凸部と凹部を交互に繰り返す形状であればいずれでも良い。例えば、角柱状の縦梁に対して、直角に交差する横梁が縦梁の上部側を迂回して上部に突出する形状を形成し、次の縦梁では下側を迂回し、下側に突出する形状を形成するように、凹凸形状を形成した横梁としても良い。
【0018】
また、横梁は、波形の凹凸形状としても良い。
【0019】
横梁は、一部に凹凸形状を形成したものでも良い。直線状の横梁と凹凸形状の横梁を組み合わせて構成したものでも良い。
【0020】
請求項2では、前記の縦梁は、緊張材によりプレストレスが導入されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート製織物形状型パネルとするものである。
【0021】
本発明のように縦梁と横梁を複雑に組み合わせたコンクリート製織物形状型パネルの耐久性を向上させる為に、直線状の縦梁において、緊張材を用いてプレストレスを導入するものである。
【0022】
該プレストレスの引張荷重は、プレストレスの導入後、コンクリート表面のひび割れを効果的に抑制でき、曲げ耐力を高めることができる引張荷重が確保できればいずれでも良い。
【0023】
該緊張材は、PC鋼撚線、防錆処理したPC鋼撚線、又は連続繊維補強線材である、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、石材繊維などから選ばれた1種又は2種以上による強化線材でも良い。
【0024】
該連続繊維補強線材とは、線状の連続繊維補強材であり、連続的に線状に成形された強化繊維補強材によるPC緊張材である。
【0025】
請求項3では、前記の凹凸形状の横梁は、該梁の凹部及び凸部に対して、縦梁の前面(鏝面)側と後面(ベッド面)側とを打継ぎされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンクリート製織物形状型パネルとするものである。
【0026】
前記の凹凸形状の横梁に対して、縦梁を前面(鏝面)側と後面(ベッド面)側とで打継ぎすることにより、縦糸と横糸による織物の織り込みと同様の形状を実現できるものである。
【0027】
先に凹凸状に製作された横梁に対して、縦梁を横梁の前面(鏝面)側と後面(ベッド面)側とで交互に組み合わされるように、縦梁の型枠を構成し、打継ぎするものである。
【0028】
請求項4では、前記の凹凸形状の横梁と縦梁の組合せは、横梁が段毎に前面(鏝面)と後面(ベッド面)とで凹凸が反対となるように、縦梁を打継ぎすることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のコンクリート製織物形状型パネルとするものである。
【0029】
横梁が段毎に前面(鏝面)と後面(ベッド面)とで凹凸が反対となるように、縦梁を打継ぎすることにより、織物のような縦糸と横糸の織り込みの繰り返しと同様の形状を実現できるものである。
【0030】
先に凹凸状に製作された横梁に対して、縦梁を横梁が前面(鏝面)と後面(ベッド面)とで凹凸が反対に組み合わされ、かつ、上下の段で凹凸が反対となるように、縦梁の型枠を構成し、打継ぎするものである。
【0031】
請求項5では、繊維補強材を混入した繊維補強コンクリートを用いたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のコンクリート製織物形状型パネルとするものである。
【0032】
該線維補強材は、鋼繊維、ガラス繊維、炭素繊維、無機系繊維、有機系繊維の中のいずれか1種類以上からなるものである。
【0033】
該繊維補強材の含有率は、2.0体積%以下が好ましい。市販の繊維材の形状、サイズを使用できる。角部や細部の剥離や脱落の防止、及び強度の向上が期待でき、耐久性を向上できる。
【0034】
請求項6では、前記の横梁が、環境配慮型コンクリートを用いたことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のコンクリート製織物形状型パネルとするものである。
【0035】
環境配慮型コンクリートとは、高炉スラグやフライアッシュなどを用いたコンクリートや、二酸化炭素を隔離または固定化された化合物を用いたコンクリートなど、製造工程において二酸化炭素を大量に発生するセメントの使用を軽減することにより、地球温暖化で注目される二酸化炭素削減に寄与できることが期待されているコンクリートであり、低環境負荷型コンクリートなどとも呼ばれている。
【0036】
例えば、廃炭酸ガスを導入したコンクリートや、普通セメントを使用しない、高炉スラグのみのコンクリート等が開発されている。
【0037】
2021年4月に日本政府の地球温暖化対策推進本部は、2030年までの二酸化炭素排出量削減目標を2013年度比46%減とする新目標を発表したところであり、コンクリート業界でも注目が集まっている問題である。
【発明の効果】
【0038】
本発明は以下の効果を奏する。
1)従来の型枠を用いたコンクリートパネルでは実現が困難とされていた、縦糸と横糸を織り込んだような織物形状のコンクリートパネルを実現できる。
【0039】
2)織物形状型コンクリート製パネルにおいて、耐久性を実現したプレストレスを導入したプレストレストコンクリートが実現できる。
【0040】
3)凹凸形状の横梁に対して縦梁を打継ぎ、組み合わせることにより、従来では実現困難となされていた、縦糸と横糸の織り込みのような独特な形状のコンクリートパネルを実現できる。
【0041】
4)コンクリート製パネルにおいて、複数の縦梁と横梁を連続的に組み合わせることにより、織物のような独特のパネルデザインを実現できる。
【0042】
5)織物形状は、鋳物製など金属や木製、樹脂製では実現できる形状とされていたが、コンクリートでは不可能とされていた織物形状のデザインを実現することができる。
【0043】
6)打設時は、凹凸形状の横梁が縦梁の形状をロックし、プレストレスが導入された後は、縦梁が横梁をロックするため、緊結効果により耐久性を向上させることができる。
【0044】
7)地球温暖化対策にも寄与できる環境配慮型コンクリートを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明によるコンクリート製織物形状型パネルの横梁の一実施例を示す概略図である。
図2】本発明によるコンクリート製織物形状型パネルの縦梁の一実施例を示す概略図である。
図3】本発明によるコンクリート製織物形状型パネルの一実施例を示す概略図である。
図4】本発明によるコンクリート製織物形状型パネルの図3のA-A部断面図である。
図5】本発明によるコンクリート製織物形状型パネルの製造例を示す図である。
図6】本発明によるコンクリート製織物形状型パネルの他の製造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0047】
本実施例では、繊維材(ポリプロピレン材)をコンクリート材料に対して0.5体積%混入して用いた。
【0048】
ポリプロピレン材は、繊維材Aは、長さが18mm、径が0.5mm、断面積が0.2mm2 とした。
【0049】
混合割合は、コンクリート材料に対して、繊維材0.5体積%として用いた。
【0050】
図1は、上記の繊維材を混入した繊維コンクリートで凹凸形状に製造した横梁である。
【0051】
図2は、断面が長方形状である繊維コンクリートで製造した縦梁である。
【0052】
図3は、上記の凹凸形状の横梁と、直方体である縦梁を組み合わせて製造した、縦糸と横糸を織り込んだような繊維形状のコンクリート製織物形状型パネルの平面図である。
【0053】
直線状に4列配置した縦梁に対して、直角に3段、凹凸形状の横梁を配置した。
【0054】
縦梁の前面(鏝面)部5と後面(ベッド面)部6を交互に、横梁が迂回して形成され、縦糸と横糸を織り込んだ織物のような形状となっている。
【0055】
本実施例のコンクリート製織物形状型パネルは、予め、凹凸状の横梁を製作する。
【0056】
次に、凹凸状の横梁を均等間隔に配置し、図4の断面図に示すように、横梁の凹凸形状の内側に対して縦梁が各々配置されるように縦梁用型枠を構成し、縦梁の打継ぎを行う。
【0057】
これにより、凹凸形状の横梁で縦梁をロックした状態で打継ぎができる。
【0058】
この打設時に、縦梁に対して、図4の断面図に示すように、緊張材4をセットし、プレストレスを導入することにより、今度は、凹凸形状の横梁をプレストレスが導入された縦梁でロックすることとなる。
【0059】
緊張材は、錆の問題のない、カーボン製緊張材(φ7.9mm)を使用した。緊張荷重は、1本当たり、3トンとした。
【0060】
上記の2段階のロック作用による緊結効果により、複雑な形状にすることによって発生する問題である、強度の低下、コンクリートの固化時の変形によるひび割れ、応力集中等の問題を解消でき、複雑な織物形状を維持でき、曲げ強度を高め、耐久性を大きく向上させことができるものである。
【0061】
図5は、上記に示す、凹凸形状の横梁と縦梁とを組み合わせて、縦糸と横糸を織り込んだ織物のような形状に実際に製造した状態を示す写真による図である。
【0062】
図6は、本発明によるコンクリート製織物形状型パネルを実際に製造した状態を示す写真による図である。横梁には繊維補強材を混入し、縦梁にはカーボン製緊張材によるプレストレストを導入したものであり、複雑な織物形状にも係わらず、十分な曲げ強度及び耐久性を有し、織物形状のデザイン性も存分に発揮されているものである。
【符号の説明】
【0063】
1 縦梁
2 横梁
3 打継ぎ部
4 緊張材
5 前面(鏝面)
6 後面(ベッド面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6