IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

特開2022-138099自動車用バッテリケース、ルーフレール、フロントピラー、フロアクロスメンバ、ブレースおよびシートフレーム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138099
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】自動車用バッテリケース、ルーフレール、フロントピラー、フロアクロスメンバ、ブレースおよびシートフレーム
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20220914BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20220914BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20220914BHJP
【FI】
B62D25/06 A
B62D25/04 A
B60K1/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172397
(22)【出願日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2021037686
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一
(72)【発明者】
【氏名】粂野 宏之
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 昂三郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 紀条
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203BB14
3D203BB17
3D203BB42
3D203BB54
3D203BB55
3D203BB62
3D203CA57
3D203DA34
3D203DA53
3D235BB05
3D235BB18
3D235BB25
(57)【要約】
【課題】軽量化および高強度化が可能な自動車用バッテリケース、ルーフレール、フロントピラー、フロアクロスメンバ、ブレースおよびシートフレームを提供すること。
【解決手段】自動車用バッテリケース1は、自動車用バッテリを収納する部品である。自動車用バッテリケース1は、枠部材2と、枠部材2の内側に支持され、枠部材2を補強する補強部材3とを備える。補強部材3は、管状体を変形してなり、管状体の外周部に長手方向に沿って形成された凹部を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用バッテリを収納する自動車用バッテリケースであって、
枠部材と、
前記枠部材の内側に支持され、該枠部材を補強する補強部材とを備え、
前記補強部材は、管状体を変形してなり、該管状体の外周部に長手方向に沿って形成された凹部を有することを特徴とする自動車用バッテリケース。
【請求項2】
自動車用バッテリを収納する自動車用バッテリケースであって、
枠部材と、
前記枠部材の内側に支持され、該枠部材を補強する補強部材とを備える自動車用バッテリケースであって、
前記補強部材は、管状体を変形してなり、該管状体の外周部から突出形成されたフランジ部を有することを特徴とする自動車用バッテリケース。
【請求項3】
前記枠部材は、4つの部材を組み立ててなり、
各前記部材は、管状をなすパイプ部と、該パイプ部の外周部から突出形成されたフランジ部とを有し、前記パイプ部と前記フランジ部とが連続する1部材で構成される請求項1または2に記載の自動車用バッテリケース。
【請求項4】
自動車の骨格を構成し、該自動車の車幅方向に架設されるルーフレールであって、
管状をなすパイプ部と、
前記パイプ部の外周部から突出形成されたフランジ部とを有し、
前記パイプ部と前記フランジ部とが連続する1部材で構成されることを特徴とするルーフレール。
【請求項5】
前記フランジ部は、前記自動車の前方に向かって突出する請求項4に記載のルーフレール。
【請求項6】
自動車の骨格を構成するフロントピラーであって、
管状をなすパイプ部と、
前記パイプ部の外周部から突出形成されたフランジ部とを有し、
前記パイプ部と前記フランジ部とが連続する1部材で構成されることを特徴とするフロントピラー。
【請求項7】
前記フランジ部は、下方に向かって突出する請求項6に記載のフロントピラー。
【請求項8】
自動車の骨格を構成し、該自動車の車幅方向に架設されるフロアクロスメンバであって、
管状をなすパイプ部と、
前記パイプ部の外周部から突出形成されたフランジ部とを有し、
前記パイプ部と前記フランジ部とが連続する1部材で構成されることを特徴とするフロアクロスメンバ。
【請求項9】
前記フランジ部は、前記自動車の前方または後方に向かって突出する請求項8に記載のフロアクロスメンバ。
【請求項10】
自動車のエンジンコンパートメント内の骨格を構成するブレースであって、
管状をなすパイプ部と、
前記パイプ部の外周部から突出形成されたフランジ部とを有し、
前記パイプ部と前記フランジ部とが連続する1部材で構成されることを特徴とするブレース。
【請求項11】
前記フランジ部は、前記自動車の前方または後方に向かって突出する請求項10に記載のブレース。
【請求項12】
自動車に搭載されるシートの骨格を構成するシートフレームであって、
管状をなすパイプ部と、
前記パイプ部の外周部から突出形成されたフランジ部とを有し、
前記パイプ部と前記フランジ部とが連続する1部材で構成されることを特徴とするシートフレーム。
【請求項13】
前記フランジ部は、前記自動車の前方または側方に向かって突出する請求項12に記載のシートフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用バッテリケース、ルーフレール、フロントピラー、フロアクロスメンバ、ブレースおよびシートフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばセダン型やワゴン型等の自動車は、車体の骨格の一部を構成するルーフサイドレールを備えることが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のルーフサイドレールは、湾曲した板状をなす2枚の部材を溶接することにより、横断面形状がリング状をなすパイプ部材となっている.また、特許文献1に記載のルーフサイドレールの内側には、当該ルーフサイドレールを補強する補強部材が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-118635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のルーフサイドレールは、2枚の部材を溶接する分、例えば1部材で構成された場合に比べて、強度(剛性)が低下する。また、特許文献1に記載のルーフサイドレールは、補強部材が固定されている分、全体としての重量が増加する。重量増加は、例えば自動車の燃費が低下する原因となる。
【0005】
本発明の目的は、軽量化および高強度化が可能な自動車用バッテリケース、ルーフレール、フロントピラー、フロアクロスメンバ、ブレースおよびシートフレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動車用バッテリケースの一つの態様は、自動車用バッテリを収納する自動車用バッテリケースであって、枠部材と、枠部材の内側に支持され、枠部材を補強する補強部材とを備え、補強部材は、管状体を変形してなり、管状体の外周部に長手方向に沿って形成された凹部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の自動車用バッテリケースの一つの態様は、自動車用バッテリを収納する自動車用バッテリケースであって、枠部材と、枠部材の内側に支持され、枠部材を補強する補強部材とを備える自動車用バッテリケースであって、補強部材は、管状体を変形してなり、管状体の外周部から突出形成されたフランジ部を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のルーフレールの一つの態様は、自動車の骨格を構成し、自動車の車幅方向に架設されるルーフレールであって、管状をなすパイプ部と、パイプ部の外周部から突出形成されたフランジ部とを有し、パイプ部とフランジ部とが連続する1部材で構成されることを特徴とする。
【0009】
本発明のフロントピラーの一つの態様は、自動車の骨格を構成するフロントピラーであって、管状をなすパイプ部と、パイプ部の外周部から突出形成されたフランジ部とを有し、パイプ部とフランジ部とが連続する1部材で構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明のフロアクロスメンバの一つの態様は、自動車の骨格を構成し、自動車の車幅方向に架設されるフロアクロスメンバであって、管状をなすパイプ部と、パイプ部の外周部から突出形成されたフランジ部とを有し、パイプ部とフランジ部とが連続する1部材で構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明のブレースの一つの態様は、自動車のエンジンコンパートメント内の骨格を構成するブレースであって、管状をなすパイプ部と、パイプ部の外周部から突出形成されたフランジ部とを有し、パイプ部とフランジ部とが連続する1部材で構成されることを特徴とする。
【0012】
本発明のシートフレームの一つの態様は、自動車に搭載されるシートの骨格を構成するシートフレームであって、管状をなすパイプ部と、パイプ部の外周部から突出形成されたフランジ部とを有し、パイプ部とフランジ部とが連続する1部材で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
自動車用バッテリケース、ルーフレール、フロントピラー、フロアクロスメンバ、ブレースおよびシートフレームのうち、自動車用バッテリケースを代表すると、自動車用バッテリケースを構成する補強部材は、複数の部材同士を接合した接合体ではなく、1つの連続した部材(母材としての管状体)から得られたものである。これにより、補強部材は、接合体で構成された場合よりも、強度が高まる、すなわち、高強度化が図られている。従って、自動車用バッテリケースも高強度化が図られたものとなる。
【0014】
また、母材としての管状体の管壁を適宜薄くしても、当該管状体を変形することから得られる補強部材は、自動車に用いられる程度に十分な強度を有するものとなる。これにより、補強部材を備える自動車用バッテリケースは、高強度化が図られるだけではなく、軽量化も図られる。このような高強度化および軽量化については、ルーフレール、フロントピラー、フロアクロスメンバ、ブレースおよびシートフレームでも同様に図られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】自動車用部材の製造過程を順に示す図(型開き状態を示す横断面図)である。
図2】自動車用部材の製造過程を順に示す図(型締め状態を示す横断面図)である。
図3】本発明の第1実施形態に係るバッテリケースの斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るバッテリケースの分解斜視図である。
図5図4中のA-A線断面図である。
図6図4中のB-B線断面図である。
図7図4中のC-C線断面図である。
図8図4中のD-D線断面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る補強部材の横断面図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る補強部材の横断面図である。
図11】本発明の第4実施形態に係る補強部材の横断面図である。
図12】本発明の第5実施形態に係る補強部材の横断面図である。
図13】本発明の第6実施形態を示す車体フレームの斜視図である。
図14図13中のE-E線断面図である。
図15】本発明の第7実施形態を示す車体フレームの斜視図である。
図16図15中のF-F断面図である。
図17】本発明の第8実施形態を示す車体フレームの側面図である。
図18図17中のG-G線断面図である。
図19図17中のH-H線断面図である。
図20】本発明の第9実施形態を示す車体フレームの斜視図である。
図21図20中の一点鎖線で囲まれた領域[i]の拡大図である。
図22】本発明の第10実施形態に係るフロアクロスメンバの斜視図である。
図23】本発明の第11実施形態を示す車体フレームの斜視図である。
図24図23中の一点鎖線で囲まれた領域[J]の拡大図である。
図25】本発明の第12実施形態に係るブレースの斜視図である。
図26図25中の矢印K方向から見た図である。
図27】本発明の第13実施形態に係るシートレールの斜視図である。
図28図27中の一点鎖線で囲まれた領域[L]の拡大図である。
図29図28中のM-M線断面図である。
図30】本発明の第14実施形態を示す車体フレームの斜視図である、
図31図30のN部拡大詳細図である。
図32】フロントバンパビームの横断面図である。
図33】本発明の第15実施形態を示す車体の斜視図である。
図34図33のP-P線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の自動車用バッテリケース、ルーフレール、フロントピラー、フロアクロスメンバ、ブレース、シートフレーム、バンパビームおよびドアビームを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、説明の都合上、図1図34中の上側を「上(または上方)」、下側を「下(または下方)」と言う。
【0017】
<自動車用部材の製造方法>
図1および図2を参照して、自動車用部材10を製造する方法について説明する。この製造方法では、成形装置80を用いる。
【0018】
まず、自動車用部材10は、当該自動車用部材10の母材10’となる、横断面形状が円形の1本の管状体を成形して(変形して)なる成形体、すなわち、加工物である。自動車用部材10は、横断面形状が非円形のリング状をなすパイプ部(リング状部)101と、パイプ部101の外周部(外周側)から突出形成されたフランジ部102とを有する。
【0019】
パイプ部101は、自動車用部材10の中でフランジ部102よりも占有率(体積比率)が高い。なお、自動車用部材10は、例えば、Fe-C系合金等の金属材料で構成されている。
【0020】
図1図2に示すように、成形装置80は、母材10’を自動車用部材10に成形する装置である。成形装置80は、上金型801と、下金型802と、気体供給部803と、加熱部804と、冷却部805と、駆動部806と、制御部807とを備える。
【0021】
下金型802は、固定され、上金型801は、下金型802に対して接近、離間可能に支持される。図1に示すように、上金型801と下金型802とは、型開き状態で、上金型801と下金型802との間に、母材10’を配置することができる。また、図2に示すように、上金型801と下金型802とは、型締め状態で、パイプ部101を形成する第1キャビティ808と、フランジ部102を形成する第2キャビティ809とを画成することができる。
【0022】
気体供給部803は、母材10’内に高圧空気を供給する。これにより、型締め状態での母材10’の過剰な潰れを防止することができる。気体供給部803の構成としては、特に限定されず、例えば、コンプレッサを有する構成とすることができる。
【0023】
加熱部804は、母材10’を加熱する。加熱部804の構成としては、特に限定されず、例えば、母材10’に電気的に接続される2つの電極と、これらの電極間に電圧を印可する電圧印加部とを有する構成とすることができる。これにより、母材10’を通電状態として、母材10’を加熱して軟化させることができる。
【0024】
冷却部805は、自動車用部材10(母材10’)を急冷却する。冷却部805の構成としては、特に限定されず、例えば、上金型801および下金型802にそれぞれ設けられ、冷媒が通過する流路を有する構成とすることができる。そして、冷媒が流路を通過した際、上金型801および下金型802ごと、自動車用部材10を急冷却することができる。なお、冷媒は、液体、気体いずれでもよい。
【0025】
駆動部806は、上金型801を移動させて、上金型801を下金型802に対して接近、離間させることができる。これにより、型開き状態と、型締め状態とを切り換えることができる。駆動部806の構成としては、特に限定されず、例えば、モータと、モータに接続されたボールねじと、ボールねじに接続されたリニアガイドとを有する構成とすることができる。
【0026】
制御部807は、気体供給部803、加熱部804、冷却部805、駆動部806の作動を制御する。制御部807の構成としては、特に限定されず、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、各種メモリとを有する構成とすることができる。
【0027】
成形装置80は、以下のように作動する。
【0028】
まず、図1に示すように、上金型801と下金型802とを型開き状態として、上金型801と下金型802との間に母材10’を配置する。
【0029】
次いで、型開き状態のまま、加熱部804を作動させる。これにより、母材10’を軟化させることができる。
【0030】
次いで、上金型801を下金型802に接近させた状態とする。この状態は、図2に示す型締め状態には至らず、上金型801と下金型802との間に隙間が形成された状態である。そして、気体供給部803を作動させて、1次ブローを行う。これにより、上金型801と下金型802との間の前記隙間に母材10’の一部が膨出して入り込む。
【0031】
次いで、図2に示す型締め状態として、気体供給部803を作動させて、2次ブローを行う。これにより、母材10’は、自動車用部材10の形状に向かって変形することができる、すなわち、パイプ部101とフランジ部102とを有する自動車用部材10となる。
【0032】
なお、このとき、金型には、冷却媒体を通じて冷えているので、2次ブローで母材10’金型と接触させることで自動車用部材10は急冷却する。これにより、自動車用部材10では、オーステナイトがマルテンサイトに変態する。
【0033】
次いで、再度型開き状態として、自動車用部材10を取り出す。その後、自動車用部材10を所望の長さに切断して、自動車用の骨格部品として用いることができる。
【0034】
以下に述べるように、本明細書では、自動車用部材10を、自動車用バッテリケース(以下単に「バッテリケース」という)1の枠部材2および補強部材3に適用することができる。また、その他、自動車用部材10を、ルーフレール4A、ルーフレール4B、フロントピラー5、フロアクロスメンバ(アンダーブレース)6、ブレース7およびシートフレーム8に適用することもできる。
【0035】
なお、自動車用部材10は、適用箇所に応じて、例えば、パイプ部101の横断面形状、フランジ部102の突出長さ、フランジ部102の形成数、フランジ部102の形成位置等が異なる。このような形成条件を異ならせるには、例えば、第1キャビティ808や第2キャビティ809の形状、成形装置80を構成する各部の作動タイミング等を適宜変更することにより可能となる。
【0036】
また、自動車用部材10には、その外周部に長手方向に沿って形成された凹部(ビード)103を有する場合がある(例えば図8参照)。凹部103を形成する場合には、第1キャビティ808に、凹部103を形作るための凸部を設ければよい。これにより、例えば2次ブローで凹部103を形成することができる。
【0037】
<第1実施形態>
図3図8を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
【0038】
図3に示すバッテリケース1は、各種自動車に用いられるバッテリを収納する自動車部品である。バッテリケース1は、枠部材2と、補強部材3と、底板11とを備える。
【0039】
図4に示すように、枠部材2は、第1部材21と、第2部材22と、2本の第3部材23と、4つの第1連結部材24と、6つの第2連結部材25とを有する。本実施形態では、第1部材21、第2部材22、第3部材23が自動車用部材10を適用したものである。
【0040】
第1部材21は、枠部材2の中で、自動車の前方に位置する。図5に示すように、第1部材21は、管状をなすパイプ部211と、板状をなすフランジ部212と、板状をなすフランジ部213とを有する。なお、パイプ部211が自動車用部材10のパイプ部101に対応し、フランジ部212およびフランジ部213がフランジ部102に対応する。
【0041】
パイプ部211は、横断面形状が非円形であり、本実施形態では、自動車の前方に臨む平坦部214と、自動車の後方に臨む平坦部215と、上方に臨む平坦部216と、下方に臨む平坦部217とを有する。ここで、平坦部214と平坦部215とは、互いに前後方向に対向配置されている。平坦部216と平坦部217も、互いに上下方向に対向配置されている。
【0042】
フランジ部212およびフランジ部213は、母材10’が潰されて、母材10’の管壁の一部同士が重なり合った重なり部で構成されている。これにより、第1部材21は、パイプ部211とフランジ部212とフランジ部213とが連続する1部材で構成された部材となる。これにより、第1部材21は、例えば複数の部材を接合した接合体で構成されている場合よりも、第1部材21自体の機械的強度(以下単に「強度」という)が高まる。
【0043】
また、第1部材21は、フランジ部212およびフランジ部213を有する。このように2つのフランジ部を有することにより、第1部材21は、フランジ部が1つの場合に比べて、強度が増加する。そして、第1部材21は、連続する1部材で構成されていることと、フランジ部を2つ有することとが相まって、強度がさらに向上することとなる。
【0044】
フランジ部212は、パイプ部211の全長にわたって形成され、平坦部215と平坦部216との間から上方に向かって突出している。フランジ部213も、フランジ部212と同様にパイプ部211の全長にわたって形成され、平坦部214と平坦部217との間から自動車の前方に向かって突出している。そして、このフランジ部213を自動車の前方から折れ曲げるのは極めて困難である。
【0045】
第2部材22は、枠部材2の中で、自動車の後方に位置する。図6に示すように、第2部材22は、管状をなすパイプ部221と、板状をなすフランジ部222とを有する。なお、パイプ部221が自動車用部材10のパイプ部101に対応し、フランジ部222がフランジ部102に対応する。
【0046】
パイプ部221は、横断面形状が非円形であり、本実施形態では、自動車の前方に臨む平坦部224と、自動車の後方に臨む平坦部225と、上方に臨む平坦部226と、下方に臨む平坦部227とを有する。平坦部224と平坦部225とは、互いに前後方向に対向配置されている。平坦部226と平坦部227も、互いに上下方向に対向配置されている。
【0047】
フランジ部222は、母材10’が潰されて、母材10’の管壁の一部同士が重なり合った重なり部で構成されている。これにより、第2部材22は、パイプ部221とフランジ部222とが連続する1部材で構成された部材となる。これにより、第2部材22は、第1部材21と同様に、例えば複数の部材を接合した接合体で構成されている場合よりも、第2部材22自体の強度が高まる。ここで、フランジ部222は、パイプ部221の全長にわたって形成され、平坦部225と平坦部226との間から上方に向かって突出している。
【0048】
各第3部材23は、枠部材2の中で、自動車の側方に位置する。また、第3部材23同士は、枠部材2の中で、互いに前後反転したものである。図7に示すように、第3部材23は、管状をなすパイプ部231と、板状をなすフランジ部232と、板状をなすフランジ部233とを有する。なお、パイプ部231が自動車用部材10のパイプ部101に対応し、フランジ部232およびフランジ部233がフランジ部102に対応する。
【0049】
パイプ部231は、横断面形状が非円形であり、本実施形態では、枠部材2の外側に臨む平坦部234と、枠部材2の内側に臨む平坦部235と、上方に臨む平坦部236および平坦部237と、下方に臨む平坦部238と、枠部材2の外側の斜め下方に臨む平坦部239と、枠部材2の内側の斜め上方に臨む平坦部230とを有する。
【0050】
平坦部236と平坦部237とは、平坦部235を介して互い反対側に配置されている。また、平坦部236と平坦部237とは、上側に平坦部236が配置され、下側に平坦部237が配置されている。また、平坦部237は、平坦部238と対向配置されている
平坦部230は、平坦部237を介して、平坦部235と反対側に配置されている。
【0051】
平坦部239は、平坦部234と平坦部238との間に配置されている。
【0052】
フランジ部232およびフランジ部233は、母材10’が潰されて、母材10’の管壁の一部同士が重なり合った重なり部で構成されている。これにより、第3部材23は、パイプ部231とフランジ部232とフランジ部233とが連続する1部材で構成された部材となる。これにより、第3部材23は、第1部材21や第2部材22と同様に、例えば複数の部材を接合した接合体で構成されている場合よりも、第3部材23自体の強度が高まる。
【0053】
また、第3部材23は、フランジ部232およびフランジ部233を有する。このように2つのフランジ部を有することにより、第3部材23は、フランジ部が1つの場合に比べて、強度が増加する。そして、第3部材23は、連続する1部材で構成されていることと、フランジ部を2つ有することとが相まって、強度がさらに向上することとなる。
【0054】
フランジ部232は、パイプ部231の全長にわたって形成され、平坦部235と平坦部236との間から上方に向かって突出している。
【0055】
フランジ部233も、フランジ部232と同様にパイプ部231の全長にわたって形成され、平坦部238と平坦部230との間から枠部材2の内側に向かって突出している。そして、このフランジ部3を自動車の側方から折れ曲げるのは極めて困難である。
【0056】
第1部材21~第3部材23は、第1連結部材12を介して組み立てられて、全体として枠状をなす。第1連結部材12には、これら部材を差し込むことができる。これにより、第1部材21~第3部材23の組み立てを容易に行うことができる。底板11は、枠部材2の底部に固定される。これにより、枠部材2の内側にバッテリを収納することができる。
【0057】
また、各第3部材23の外側には、第2連結部材25が3つずつ、固定される。各第2連結部材25は、バッテリケース1を自動車の所定部位に連結する部材である。これにより、バッテリが収納されたバッテリケース1を自動車に搭載することができる。
【0058】
枠部材2の内側には、管状の補強部材3が3本支持されている。各補強部材3は、2本の第3部材23の間に架設されており、枠部材2(主に車幅方向)を補強する部材である。また、自動車の前後方向に等間隔に配置されている。なお、補強部材3の本数は、本実施形態では3本であるが、これに限定されず、例えば、1本、2本または4本以上であってもよい。
【0059】
また、各補強部材3は、枠部材2の内側を仕切る仕切り部材としても機能する。これにより、例えば、枠部材2の内でのバッテリを整列して配置することができる。図8に示すように、補強部材3は、横断面形状が上下方向に長い非円形の部材であり、その外周部に長手方向に沿って形成された凹部31を有する。なお、凹部31は、自動車用部材10の凹部103に対応する。凹部31は、補強部材3の内側に湾曲変形して窪んだ部分である。これにより、補強部材3は、例えば凹部31が省略された場合に比べて、強度が高まる。
【0060】
また、本実施形態では、凹部31は、自動車の前方および後方に3つずつ形成されている。これにより、凹部31の形成数が多ければ多いほど、補強部材3の強度が高まる傾向となる。
【0061】
また、自動車の前方および後方のいずれでも、これら3つの凹部31は、上下方向に等間隔に配置されている。これにより、補強部材3を前後反転、上下反転しても、向きを問わずに、枠部材2の内側に配置することができる。なお、自動車の前方および後方における凹部31の形成数は、3つに限定されず、例えば、2つまたは4つ以上であってもよい。
【0062】
以上のように、バッテリケース1を構成する第1部材21、第2部材22、第3部材23、補強部材3は、いずれも、複数の部材同士を接合した接合体ではなく、1つの連続した部材(母材10’)から得られたものである。これにより、前述したように、第1部材21~補強部材3は、接合体で構成された場合よりも、強度が高まる、すなわち、高強度化が図られている。従って、バッテリケース1も高強度化が図られたものとなる。
【0063】
また、母材10’の管壁を適宜薄くしても、当該母材10’から得られる第1部材21~補強部材3は、自動車に用いられる程度に十分な強度を有するものとなる。これにより、第1部材21~補強部材3を備えるバッテリケース1は、高強度化が図られるだけではなく、軽量化も図られる。
【0064】
<第2実施形態>
図9を参照して本発明の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0065】
図9に示すように、本実施形態では、補強部材3の凹部31は、自動車の前方および後方に1つずつ形成されている。また、双方の凹部31は、上下方向にズレて配置されている。これにより、凹部31同士を干渉させずに、各凹部31の深さをできる限り深く確保することができる。凹部31の深さが深ければ深いほど、補強部材3の強度が高まる傾向となる。
【0066】
<第3実施形態>
図10を参照して本発明の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0067】
図10に示すように、本実施形態では、補強部材3の凹部31は、自動車の前方および後方に1つずつ形成されている。また、双方の凹部31は、上下方向で同じ位置に配置されている。また、凹部31の幅は、図9に示す補強部材3の凹部31よりも幅が広い。このように、補強部材3としては、図9に示す構成以外にも、図10に示す構成も可能である。
【0068】
<第4実施形態>
図11を参照して本発明の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0069】
図11に示すように、本実施形態では、補強部材3は、横断面形状が非円形のパイプ部32と、パイプ部32の外周部から板状に突出形成された2つのフランジ部33とを有する。なお、パイプ部32が自動車用部材10のパイプ部101に対応し、フランジ部33がフランジ部102に対応する。
【0070】
2つのフランジ部33のうち、一方のフランジ部33は、自動車の前方に向かって形成され、他方のフランジ部33は、自動車の後方に向かって形成されている。また、双方のフランジ部33は、パイプ部32の上下方向の中央部に配置されている。また、2つのフランジ部33を有することにより、補強部材3は、フランジ部が1つの場合に比べて、強度が増加する。
【0071】
各フランジ部33は、母材10’が潰されて、母材10’の管壁の一部同士が重なり合った重なり部で構成されている。これにより、補強部材3は、パイプ部32と各フランジ部33とが連続する1部材で構成された部材となる。これにより、補強部材3は、例えば複数の部材を接合した接合体で構成されている場合よりも、補強部材3自体の強度が高まる。そして、補強部材3は、連続する1部材で構成されていることと、フランジ部を有することとが相まって、強度がさらに向上することとなる。
【0072】
また、各フランジ部33は、パイプ部32の全長にわたって形成され、自動車の前方または後方に向かって突出している。そして、このフランジ部33を自動車の前方または後方から折れ曲げるのは極めて困難である。これにより、例えば自動車の正面衝突時に、補強部材3が折れ曲がるのを防止することができる。
【0073】
なお、フランジ部33の形成数は、本実施形態では2つであるが、これに限定されず、3つ以上であってもよい。また、補強部材3は、凹部31をさらに有していてもよい。
【0074】
<第5実施形態>
図12を参照して本発明の第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0075】
図12に示すように、本実施形態では、補強部材3の各フランジ部33は、パイプ部32の下部に形成されている。また、底板11には、貫通孔111が形成されている。そして、この貫通孔11に補強部材3のパイプ部32を下側から挿入することができる。
【0076】
そして、挿入限界では、各フランジ部33が底板11に当接する。この当接状態のフランジ部33を、底板11との溶接代としても用いることができる。これにより、補強部材3を底板11に固定することができる。
【0077】
<第6実施形態>
図13および図14を参照して本発明の第6実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0078】
図13に示すように、ルーフレール4Aは、自動車の骨格を構成する部材である。ルーフレール4Aは、左右両方のフロントピラー5の間で、自動車の車幅方向に架設される。なお、フロントピラー5も、ルーフレール4Aと同様に、自動車の骨格を構成する部材である。
【0079】
図14に示すように、ルーフレール4Aは、横断面形状が非円形のパイプ部41と、パイプ部41の外周部から板状に突出形成されたフランジ部42とを有する。なお、パイプ部41が自動車用部材10のパイプ部101に対応し、フランジ部42がフランジ部102に対応する。
【0080】
パイプ部41は、本実施形態では、自動車の前方に臨む平坦部411と、自動車の後方に臨む平坦部412と、上方に臨む平坦部413、平坦部414および平坦部415と、下方に臨む平坦部416とを有する。ここで、平坦部411と平坦部412とは、互いに対向配置されている。
【0081】
平坦部413、平坦部414および平坦部415は、この順に自動車の前方から配置されている。また、平坦部413と平坦部414とは、段差部417を介して隣り合い、平坦部414と平坦部415とは、段差部417よりも高さが低い段差部418を介して隣り合う。平坦部416は、平坦部414および平坦部415と対向配置されている。
【0082】
フランジ部42は、母材10’が潰されて、母材10’の管壁の一部同士が重なり合った重なり部で構成されている。これにより、ルーフレール4Aは、パイプ部41とフランジ部42とが連続する1部材で構成された部材となる。これにより、ルーフレール4Aは、例えば複数の部材を接合した接合体で構成されている場合よりも、ルーフレール4Aの強度が高まる。
【0083】
フランジ部42は、パイプ部41の全長にわたって形成され、平坦部411と平坦部413との間から自動車の前方に向かって突出している。そして、このフランジ部42を自動車の前方から折れ曲げるのは極めて困難である。
【0084】
<第7実施形態>
図15および図16を参照して本発明の第7実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0085】
図15に示すように、ルーフレール4Bは、自動車の骨格を構成する部材である。ルーフレール4Bは、左右両方のセンタピラー12の間で、自動車の車幅方向に架設される。なお、センタピラー12も、ルーフレール4Bと同様に、自動車の骨格を構成する部材である。
【0086】
図16に示すように、ルーフレール4Bは、横断面形状が非円形のパイプ部43と、パイプ部41の外周部から板状に突出形成された2つのフランジ部44とを有する。なお、パイプ部43が自動車用部材10のパイプ部101に対応し、フランジ部44がフランジ部102に対応する。
【0087】
パイプ部43は、横断面形状が自動車の前後方向に長い非円形をなし、その外周部に車幅(長手方向)に沿って形成された凹部431および凹部432を有する。なお、凹部431および凹部432は、自動車用部材10の凹部103に対応する。
【0088】
凹部431は、パイプ部43の上側に位置し、凹部432は、パイプ部43の下側に位置する。また、凹部431は、凹部432よりも幅が大きいが、深さは凹部432よりも浅い。
【0089】
また、凹部431および凹部432は、パイプ部43の内側に変形して窪んだ部分である。これにより、ルーフレール4Bは、例えば凹部431および凹部432の内の少なくとも一方が省略された場合に比べて、強度が高まる。
【0090】
また、前述したように、パイプ部43は、横断面形状が自動車の前後方向に長い非円形をなす。すなわち、パイプ部43は、上下方向に扁平な形状をなす。これにより、車内をできる限り確保することができ、車内の居住性が向上する。
【0091】
パイプ部43の上部には、2つのフランジ部44が配置されている。2つのフランジ部44のうち、一方のフランジ部44は、自動車の前方に向かって形成され、他方のフランジ部44は、自動車の後方に向かって形成されている。そして、このようなフランジ部44を自動車の前方または後方から折れ曲げるのは極めて困難である。また、2つのフランジ部44を有することにより、ルーフレール4Bは、フランジ部が1つの場合に比べて、強度がさらに増加する。
【0092】
<第8実施形態>
図17図19を参照して本発明の第8実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0093】
図17に示すように、フロントピラー5は、自動車の骨格を構成する部材である。図18に示すように、フロントピラー5は、管状をなすパイプ部51と、パイプ部51の外周部から板状に突出形成されたフランジ部52とを有する。なお、パイプ部51が自動車用部材10のパイプ部101に対応し、フランジ部52がフランジ部102に対応する。
【0094】
パイプ部51は、横断面形状が非円形であり、本実施形態では、上側から図18中時計回りに配置された平坦部511、平坦部512、平坦部513、湾曲部514、湾曲部515、平坦部516を有する。ここで、平坦部511は、上方に臨む。平坦部512~湾曲部514は、自動車の外側側方に臨む。湾曲部515および平坦部516は、自動車の内側側方に臨む。
【0095】
フランジ部52は、母材10’が潰されて、母材10’の管壁の一部同士が重なり合った重なり部で構成されている。これにより、フロントピラー5は、パイプ部51とフランジ部52とが連続する1部材で構成された部材となる。これにより、フロントピラー5は、例えば複数の部材を接合した接合体で構成されている場合よりも、フロントピラー5の強度が高まる。
【0096】
フランジ部52は、例えばパイプ部51の全長にわたって形成され、湾曲部514と湾曲部515との間から下方に向かって突出している。これにより、フランジ部52には、例えば外側からパッキン(図示せず)を固定することができる。そして、ドアを閉めた際、前記パッキンによって、車内の気密性を確保することができる。
【0097】
図19は、実際に自動車に搭載られた状態のフロントピラー5と、従来のフロントピラー50と重ねたイメージ図となっている。
【0098】
フロントピラー50は、複数の部材を接合した接合体で構成されている。このフロントピラー50では、部材同士を接合するための接合代が、各部材ごとに少なくとも2つ必要となる。そのため、少なくとも2つのフランジ部が形成される。図19に示す構成では、フロントピラー50は、フランジ部501と、フランジ部502とを有する。
【0099】
フロントピラー5とフロントピラー50とを重ねた場合、フランジ部52とフランジ部501とは、同じ位置となるが、フランジ部502は、フロントピラー5よりも車内に突出した状態となる。
【0100】
そして、運転者の左眼EYにとって視界がどの程度確保のされるのかを、フロントピラー5とフロントピラー50とで比較してみる。図19では、フロントピラー5による視界の限界を、矢印αが指し示す一点鎖線で描き、フロントピラー50による視界の限界を、矢印βが指し示す一点鎖線で描いている。
【0101】
図19から明らかなように、後者の視界は、フランジ部502で遮られる分、前者の視界よりも狭くなる。従って、フロントピラー5の方が視界が確保され、運転上の安全性が向上する。
【0102】
<第9実施形態>
図20および図21を参照して本発明の第9実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0103】
図20に示すように、フロアクロスメンバ6は、自動車の骨格を構成する部材である。フロアクロスメンバ6は、例えば自動車の下部に配置された2本のステップ(図示せず)の間で、自動車の車幅方向に架設される。なお、図20に示す構成では、フロアクロスメンバ6は、2本配置されているが、配置本数については、特に限定されない。
【0104】
図21に示すように、フロアクロスメンバ6は、管状をなすパイプ部61と、パイプ部61の外周部から板状に突出形成されたフランジ部62とを有する。なお、パイプ部61が自動車用部材10のパイプ部101に対応し、フランジ部62がフランジ部102に対応する。
【0105】
パイプ部61の横断面形状は、自動車の前後方向に長い非円形をなす、すなわち、上下方向に扁平な形状をなす。また、パイプ部61の横断面は、パイプ部61の長手方向(車幅方向)に沿って、高さおよび幅が変化している。本実施形態では、パイプ部61の長手方向の中央部で、幅が最大となる。また、パイプ部61の両端部では、幅が最小となる。また、パイプ部61の中央部と各端部との間では、高さが最大となる。
【0106】
フランジ部62は、母材10’が潰されて、母材10’の管壁の一部同士が重なり合った重なり部で構成されている。これにより、フロアクロスメンバ6は、パイプ部61とフランジ部62とが連続する1部材で構成された部材となる。これにより、フロアクロスメンバ6は、例えば複数の部材を接合した接合体で構成されている場合よりも、フロアクロスメンバ6の強度が高まる。
【0107】
本実施形態では、フランジ部62は、パイプ部61を介して、2つ配置されている。各フランジ部62は、パイプ部61の全長にわたって形成されている。2つのフランジ部62のうち、一方のフランジ部42は、自動車の前方に向かって突出し、他方のフランジ部42は、自動車の後方に向かって突出する。このようなフランジ部62を自動車の前方または後方から折れ曲げるのは極めて困難である。これにより、フロアクロスメンバ6は、強度が向上したものとなる。
【0108】
また、各フランジ部62は、長手方向に沿って、幅が変化している。本実施形態では、パイプ部61の両端部で、幅が最大となる。また、各フランジ部62は、一部または全体が水平方向に対して斜め下方に傾斜している。
【0109】
各フランジ部62の両端部には、フロアクロスメンバ6の取付用の貫通孔63が設けられている。貫通孔63には、ボルト(図示せず)を挿通させることができる。このボルトにより、フロアクロスメンバ6を自動車に取り付けることができる。
【0110】
<第10実施形態>
図22を参照して本発明の第10実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0111】
図22に示すフロアクロスメンバ6は、フランジ部62が省略された構成となっている。すなわち、フロアクロスメンバ6は、横断面形状が上下方向に扁平なパイプ部63で構成されている。
【0112】
パイプ部63は、長手方向(車幅方向)に沿って、高さおよび幅が変化している。本実施形態では、パイプ部63の両端部で、高さが最大となる。また、パイプ部61の長手方向の中央部では、幅が最大となる。このようなフロアクロスメンバ6は、前記第9実施形態のフロアクロスメンバ6に比べて、フランジ部62が省略された分、簡単な構成となる。これにより、本実施形態では、フロアクロスメンバ6の製造が容易となる。
【0113】
<第11実施形態>
図23および図24を参照して本発明の第11実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0114】
図23に示すように、ブレース7は、自動車のエンジンコンパートメント内の骨格を構成する梁部材である。ブレース7は、例えば、サスペンションが収納されるハウジング等に取り付けられる。なお、図23に示す構成では、ブレース7は、2本配置されているが、配置本数については、特に限定されない。また、各ブレース7は、自動車の全長方向に対して傾斜して配置される。
【0115】
図24に示すように、ブレース7は、管状をなすパイプ部71と、パイプ部の外周部から突出形成されたフランジ部72とを有する。なお、パイプ部71が自動車用部材10のパイプ部101に対応し、フランジ部62がフランジ部102に対応する。パイプ部71の横断面形状は、上下方向に扁平な形状をなす。パイプ部71の横断面は、パイプ部71の長手方向(車幅方向)に沿って、高さが一定である。
【0116】
また、パイプ部71の両端部には、管壁の厚さの分だけ貫通した貫通孔74が設けられている。貫通孔74は、上方に向かって開口しており、例えば、部材結合用のスポット溶接またはボルト締め付け作業用の孔として用いることができる。
【0117】
フランジ部72は、母材10’が潰されて、母材10’の管壁の一部同士が重なり合った重なり部で構成されている。これにより、ブレース7は、パイプ部71とフランジ部72とが連続する1部材で構成された部材となる。これにより、ブレース7は、例えば複数の部材を接合した接合体で構成されている場合よりも、ブレース7の強度が高まる。
【0118】
フランジ部72は、自動車の斜め後方に向かって突出し、パイプ部71の全長にわたって形成されている。このフランジ部72は、長手方向の途中で幅が最大となっており、その両側では、幅が一定となっている。
【0119】
そして、フランジ部72の中で幅が最大となっている幅最大部721には、ブレース7の取付用の貫通孔73が設けられている。貫通孔73には、ボルト(図示せず)を挿通させることができる。このボルトにより、ブレース7を自動車に取り付けることができる。なお、幅最大部721では、パイプ部71の幅が最小となる。また、フランジ部72は、本実施形態では自動車の斜め後方に向かって突出しているが、自動車へのブレース7の取付位置によっては、自動車の斜め前方に向かって突出していてもよい。
【0120】
<第12実施形態>
図25および図26を参照して本発明の第12実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0121】
図25に示すように、本実施形態では、ブレース7のフランジ部72は、長手方向に沿って一定である。また、図26に示すように、パイプ部71には、長手方向の途中に凹部75が設けられている。凹部75は、パイプ部71の管壁が上方から下方に向かって窪んだ部分である。凹部75は、例えば、エンジンコンパートメント内で、ブレース7以外の他の部材との干渉を防止する逃げ部として機能する。これより、自動車を製造する際、ブレース7と前記他の部材とを円滑に組み立てることができる。
【0122】
<第13実施形態>
図27図29を参照して本発明の第13実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0123】
図27に示すように、シートフレーム8Aおよびシートフレーム8Bは、自動車に搭載されるシート13の背もたれ14の骨格を構成する部材である。シートフレーム8Aとシートフレーム8Bとは、背もたれ14の左右両側にそれぞれ配置されており、左右対称的な形状に形成されている。以下では、シートフレーム8Aについて、代表的に説明する。
【0124】
図27図28に示すように、シートフレーム8Aは、上下に長い部材である。図29に示すように、シートフレーム8Aは、管状をなすパイプ部81と、パイプ部81の外周部から板状に突出形成されたフランジ部82とを有する。なお、パイプ部81が自動車用部材10のパイプ部101に対応し、フランジ部82がフランジ部102に対応する。
【0125】
パイプ部81の横断面形状は、自動車の前後方向に長い非円形をなす、すなわち、左右方向に扁平な形状をなす。本実施形態では、パイプ部81は、自動車の外側に臨む平坦部811と、自動車の内側に臨む平坦部812と、前方に臨む湾曲部813、後方に臨む平坦部814とを有する。ここで、平坦部811と平坦部812とは、互いに左右方向に対向配置されている。湾曲部813と平坦部814とは、互いに前後方向に対向配置されている。
【0126】
フランジ部82は、母材10’が潰されて、母材10’の管壁の一部同士が重なり合った重なり部で構成されている。これにより、シートフレーム8Aは、パイプ部81とフランジ部82とが連続する1部材で構成された部材となる。これにより、シートフレーム8Aは、例えば複数の部材を接合した接合体で構成されている場合よりも、シートフレーム8Aの強度が高まる。
【0127】
本実施形態では、フランジ部82は、2つ配置されている。各フランジ部82は、例えば、パイプ部81の全長にわたって形成されている。
【0128】
2つのフランジ部82のうち、一方のフランジ部82Aは、自動車の前方に向かって突出し、他方のフランジ部82Bは、自動車の内側側方に向かって突出する。そして、フランジ部82Aを自動車の前方から折れ曲げるのは極めて困難であり、フランジ部82Bを自動車の側方から折れ曲げるのは極めて困難である。
【0129】
<第14実施形態>
次に、本発明の第14実施形態を図30図32に基づいて説明する。
【0130】
図30は本発明の第14実施形態を示す車体フレームの斜視図、図31図30のN部拡大詳細図、図32はフロントバンパビームの横断面図である。
【0131】
図30に示す自動車の車体フレームの前端部と後端部には、車幅方向に沿って水平に延びるフロントバンパビーム9Fとリヤバンパビーム9Rがそれぞれ配置されている。ここで、これらのフロントバンパビーム9Fとリヤバンパビーム9Rの基本構成は同じであるため、以下、フロントバンパビーム9Fについてのみ説明し、リヤバンパビーム9Rについての説明は省略する。
【0132】
フロントバンパビーム9Fは、丸パイプ状の金属(例えば、超ハイテンション材)製の母材10’(図1参照)を用いて図1および図2に示す前記方法によって1部材として成形されるものであって、図31および図32に示すように、横断面形状が矩形枠状のパイプ部91,92を上下に備えている。具体的には、フロントバンパビーム9Fの車両後方側(図32の左側)の後壁の中間高さ位置に車両後方から車両前方に向かう(図32の右方に向かう)水平な深絞り部93が車幅方向(図32の紙面垂直方向)に沿って形成されており、この深絞り部93によって上下のパイプ部91,92が画成されている。
【0133】
また、フロントバンパビーム9Fの車両前方側(図32の右側)の垂直な前壁(平坦部)94の上下には、車両後方に向かって膨出する上下2つの凹部95が車幅方向(図32の紙面垂直方向)に沿って形成されている。
【0134】
以上のように構成されたフロントバンパビーム9Fは、複数の部材同士(例えば、2枚の鋼板同士)を接合した接合体ではなく、1つの連続した部材(母材としての管状体)から得られるものであるため、接合体で構成された場合よりも強度と剛性が高められる。特に、フロントバンパビーム9Fは、上下2つのパイプ部91,92と凹部95によって断面係数が高められるため、強度と剛性が一層高められ、この結果、当該フロントバンパビーム9Fを薄肉化しても必要十分な強度と剛性が確保されることとなり、軽量化も図ることができる。なお、このような効果は、リヤバンパビーム9Rについても同様に得られる。
【0135】
<第15実施形態>
次に、本発明の第15実施形態を図33及び図34に基づいて説明する。
【0136】
図33は本発明の第15実施形態を示す車体の斜視図、図34図33のP-P線断面図である。
【0137】
図33に示す自動車の車体の左右両側の各前後に設けられた開閉可能なドア内部には、補強用のドアビーム9F’,9R’(図33には、左側のみ図示)がそれぞれ取り付けられている。ここで、これらのドアビーム9F’,9R’の基本構成は同じであるため、以下、前側のドアビーム9F’についてのみ説明し、後側の他方のドアビーム9R’についての説明は省略する。
【0138】
ドアビーム9F’は、丸パイプ状の金属(例えば、超ハイテンション材)製の母材10’(図1参照)を用いて図1および図2に示す前記方法によって1部材として成形されるものであって、図34に示すように、横断面形状が矩形枠状のパイプ部91’,92’を上下に備えている。具体的には、ドアビーム9F’の車幅方向内側(図34の右側)の後壁の中間高さ位置に車幅方向内側から車幅方向外側に向かう(図34の左方に向かう)水平な深絞り部93’が車両前後方向(図34の紙面垂直方向)に沿って形成されており、この深絞り部93’によって上下のパイプ部91’,92’が画成されている。
【0139】
また、ドアビーム9F’の車幅方向外側(図34の左側)の垂直な側壁(平坦部)94’の上下には、車幅方向内側(図34の右側)に向かって膨出する上下2つの凹部95’が車両前後方向(図34の紙面垂直方向)に沿って形成されている。
【0140】
以上のように構成されたドアビーム9F’は、複数の部材同士(例えば、2枚の鋼板同士)を接合した接合体ではなく、1つの連続した部材(母材としての管状体)から得られるものであるため、接合体で構成された場合よりも強度と剛性が高められる。特に、ドアビーム9F’は、上下2つのパイプ部91’,92’と凹部95’によって断面係数が高められるため、強度と剛性が一層高められ、この結果、当該ドアビーム9F’を薄肉化しても必要十分な強度と剛性が確保されることとなり、軽量化も図ることができる。なお、このような効果は、リヤドアビーム9Rドアビーム9F’についても同様に得られる。
【0141】
以上、本発明の自動車用バッテリケース、ルーフレール、フロントピラー、フロアクロスメンバ、ブレース、シートフレーム、バンパビームおよびドアビームを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、自動車用バッテリケース、ルーフレール、フロントピラー、フロアクロスメンバ、ブレース、シートフレーム、バンパビームおよびドアビームを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0142】
また、本発明の自動車用バッテリケース、ルーフレール、フロントピラー、フロアクロスメンバ、ブレース、シートフレーム、バンパビームおよびドアビームは、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0143】
1 自動車用バッテリケース(バッテリケース)
2 枠部材
21 第1部材
211 パイプ部
212,213 フランジ部
22 第2部材
221 パイプ部
222 フランジ部
23 第3部材
231 パイプ部
232,233 フランジ部
24 第1連結部材
25 第2連結部材
3 補強部材
31 凹部
32 フランジ部
4A,4B ルーフレール
41 パイプ部
42 フランジ部
431,432 凹部
44 フランジ部
5 フロントピラー
51 パイプ部
52 フランジ部
6 フロアクロスメンバ(アンダーブレース)
61 パイプ部
62 フランジ部
63 パイプ部
7 ブレース
71 パイプ部
72 フランジ部
75 凹部
8 シートフレーム
81 パイプ部
82 フランジ部
82A,82B フランジ部
9F フロントバンパビーム
9R リヤバンパビーム
91,92 パイプ部
95 凹部
9F’ フロントバンパビーム
9R’ リヤバンパビーム
91’,92’ パイプ部
95’ 凹部
10 自動車用部材
10’ 母材
101 パイプ部
102 フランジ部
103 凹部(ビード)
12 センタピラー
50 フロントピラー
501 フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34