(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138101
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】菌又はウイルスの不活化装置、菌又はウイルスの不活化システム
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20220914BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A61L9/20
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174849
(22)【出願日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2021037424
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 龍志
(72)【発明者】
【氏名】藤名 恭典
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB06
4C058DD05
4C058DD07
4C058DD13
4C058DD16
4C058EE26
4C058KK02
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4C058KK22
4C058KK28
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4C180AA07
4C180AA10
4C180DD03
4C180HH17
4C180HH19
4C180HH20
4C180KK04
4C180KK10
4C180LL04
4C180LL20
(57)【要約】
【課題】空間内において、菌やウイルスを不活化できる紫外光を広範囲にわたって照射可能であって、安全性が向上された菌又はウイルスの不活化装置、及び菌又はウイルスの不活化システムを提供する。
【解決手段】空間内に存在する菌又はウイルスを不活化する装置であって、190nm以上240nm未満の波長範囲内にピーク波長を有する紫外光を出射する光源部と、光源部の紫外光の出射方向を変化させる照射領域変更機構と、前記光源部の前記紫外光の照射方向を変化させるように照射領域変更機構を駆動する駆動部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間内に存在する菌又はウイルスを不活化する装置であって、
190nm以上240nm未満の波長範囲内にピーク波長を有する紫外光を出射する光源部と、
前記光源部の前記紫外光の照射方向を変化させる照射領域変更機構と、
前記光源部の前記紫外光の照射方向を変化させるように前記照射領域変更機構を駆動する駆動部とを備えることを特徴とする菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項2】
前記光源部は、少なくとも240nm以上280nm未満の波長範囲内の光強度を抑止するための光学フィルタを備えることを特徴とする請求項1に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項3】
前記照射領域変更機構の動作パターンのデータが格納されるパターン記憶部を備え、
前記パターン記憶部に格納された前記データに基づいて、前記駆動部が前記照射領域変更機構を駆動することを特徴とする請求項1に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記空間内において、床からの高さが2m未満である第一空間と、床からの高さが2m以上の第二空間とに、前記光源部が前記紫外光を照射する方向を切り替えるように前記照射領域変更機構を駆動することを特徴とする請求項1に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項5】
前記光源部の放射強度、又は点灯時間を制御する第一点灯制御部を備え、
前記第一点灯制御部は、前記第一空間に対する単位時間当たりの前記紫外光の照射量が、前記第二空間に対する単位時間当たりの前記紫外光の照射量よりも小さくなるように、前記光源部を制御することを特徴とする請求項4に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項6】
前記第一点灯制御部は、前記紫外光を前記第一空間に照射する時の前記光源部の放射強度が、前記紫外光を前記第二空間に照射する時の前記光源部の放射強度よりも低くなるように、前記光源部を制御することを特徴とする請求項5に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項7】
前記紫外光の照射時間を計測するタイマを備え、
前記タイマが測定した時間に基づいて、前記駆動部が前記第一空間への前記紫外光の照射と、前記第二空間への前記紫外光の照射とを切り替えるように前記照射領域変更機構を駆動することを特徴とする請求項4に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記光源部が前記紫外光を前記第二空間に照射する時間が、直前に前記光源部が前記紫外光を前記第一空間に照射していた時間よりも長くなるように前記照射領域変更機構を駆動することを特徴とする請求項7に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項9】
前記空間内に人が存在するか否かを検知する人感センサを備え、
前記人感センサが前記空間内において人の存在を検知すると、前記駆動部は、前記光源部が前記第二空間に向かって前記紫外光を照射するように前記照射領域変更機構を駆動し、
前記人感センサが前記空間内において人の不存在を検知すると、前記駆動部は、前記光源部が前記第一空間に向かって前記紫外光を照射するように前記照射領域変更機構を駆動することを特徴とする請求項4に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項10】
前記人感センサは、検知領域が固定されるように設けられていることを特徴とする請求項9に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項11】
前記人感センサは、前記駆動部が前記照射領域変更機構を駆動することによって検知領域が移動するように設けられていることを特徴とする請求項9に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項12】
前記紫外光を照射しない方向の方向データが格納される方向データ記憶部を備えることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項13】
前記紫外光を照射する方向の方向データが格納される方向データ記憶部を備えることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項14】
前記光源部と、前記方向データによって前記紫外光が照射される照射対象物との離間距離を計測する距離センサと、
前記距離センサの計測結果に基づいて、前記光源部の放射強度、又は点灯時間を制御する第二点灯制御部とを備えることを特徴とする請求項13に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項15】
前記空間内に人が存在するか否かを検知する少なくとも一つの人検知部を備え、
前記人検知部が前記空間内において人の存在を検知すると、前記駆動部は、人の存在を検知した前記人検知部の人検知時における検知領域の外側に、前記紫外光の主光線が照射されるように、前記照射領域変更機構を駆動することを特徴とする請求項1に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項16】
前記人検知部が前記空間内において人の存在を検知すると、前記駆動部が、前記光源部が前記空間内の床からの高さが2m未満である第一空間への照射を維持した状態で、前記紫外光の照射方向を変化するように、前記照射領域変更機構を駆動することを特徴とする請求項15に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項17】
前記人検知部は、前記駆動部が前記照射領域変更機構を駆動することによって検知領域が移動するように設けられていることを特徴とする請求項15に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項18】
前記照射領域変更機構の駆動時に、前記人検知部が検知領域内において人が不存在である人不在領域を検出すると、前記駆動部は、少なくとも一時的に、前記光源部から出射される前記紫外光の主光線の照射方向が前記人不在領域内に維持されるように前記照射領域変更機構の駆動することを特徴とする請求項17に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項19】
前記人検知部が前記空間内において人の存在を検知すると、前記駆動部が、少なくとも一時的に、床からの高さが2m以上の第二空間に、前記光源部が前記紫外光を照射するように前記照射領域変更機構を駆動することを特徴とする請求項17に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項20】
前記人検知部は、検知領域が固定されるように設けられていることを特徴とする請求項15に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項21】
前記空間内において検知領域が固定されるように設けられた前記人検知部を複数備え、
前記複数の人検知部のうちのいずれかが人の存在を検知すると、前記駆動部は、前記光源部の前記紫外光の主光線の照射方向を、人の存在を検知した前記人検知部の検知領域の外側に変化させるように前記照射領域変更機構を駆動することを特徴とする請求項20に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項22】
前記複数の人検知部のうちのいずれかが人の存在を検知し、他の前記人検知部が検知領域内において人が不存在である人不在領域を検出すると、前記駆動部は、前記光源部から出射される前記紫外光の主光線の照射方向を、前記人不在領域内に変化させるように前記照射領域変更機構を駆動することを特徴とする請求項21に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項23】
前記駆動部は、床からの高さが2m未満である第一空間と、床からの高さが2m以上の第二空間とに、前記光源部が前記紫外光を照射する方向を切り替えるように前記照射領域変更機構を駆動可能に構成されており、
前記複数の人検知部のうちの半数以上が人の存在を検知すると、前記駆動部が、前記光源部の前記紫外光の照射方向を前記第一空間から前記第二空間に切り替えるように前記照射領域変更機構を駆動することを特徴とする請求項21又は22に記載の菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項24】
空間内に存在する菌又はウイルスを不活化するシステムであって、
190nm以上240nm未満の波長範囲内にピーク波長を有する紫外光を出射する光源部と、
前記光源部の前記紫外光の照射方向を変化させる照射領域変更機構と、
前記光源部の前記紫外光の照射方向を経時的に変化させるように前記照射領域変更機構を駆動する駆動部と、
外部から不活化処理を開始させる所定の無線信号を受信し、前記駆動部に対して駆動動作を開始させる動作開始信号を出力する受信部と、
前記受信部に対して、不活化処理を開始させる前記無線信号を送信する通信機器とを備えることを特徴とする菌又はウイルスの不活化システム。
【請求項25】
前記照射領域変更機構の動作パターンのデータが格納されるパターン記憶部を備え、
前記パターン記憶部に格納された前記データに基づいて、前記駆動部が前記照射領域変更機構を駆動することを特徴とする請求項24に記載の菌又はウイルスの不活化システム。
【請求項26】
前記受信部は、前記通信機器から前記紫外光を拒否する信号を受信したことを検知すると、前記駆動部に対して、拒否検知信号を出力し、
前記駆動部は、前記拒否検知信号を受信すると、前記紫外光が、前記光源部から前記通信機器が存在する方向とは異なる方向に照射されるように、前記照射領域変更機構を駆動することを特徴とする請求項24又は25に記載の菌又はウイルスの不活化システム。
【請求項27】
前記光源部の放射強度、又は点灯時間を制御する第一点灯制御部を備え、
前記受信部は、前記通信機器から前記紫外光を拒否する信号を受信すると、前記第一点灯制御部に対して、拒否検知信号を出力し、
前記第一点灯制御部は、前記拒否検知信号を受信すると、前記光源部を減光、又は消灯させるように制御することを特徴とする請求項24又は25に記載の菌又はウイルスの不活化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌又はウイルスの不活化装置に関し、特に紫外光を利用する菌又はウイルスの不活化装置に関する。また、本発明は、菌又はウイルスの不活化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外光を照射して菌やウイルスを不活化する技術が知られており、DNAが波長260nm付近に最も高い吸収特性を示すことから、多くの場合、低圧水銀ランプ等を光源とする波長が254nm付近の紫外光が利用されている。紫外光によって菌やウイルスを不活化する方法は、薬剤等を散布することなく、処理対象空間や処理対象物に紫外光を照射するだけで殺菌処理が行うことができるという特徴がある。
【0003】
しかし、特定の波長帯の紫外光は、人体に照射すると、人体に影響を及ぼすリスクがあることが知られている。このため、人に紫外光を照射しないように、空間内に存在する菌やウイルスを不活化するための方法や不活化装置が検討されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、空間内の天井付近には常時紫外光を出射し、空間内に人が不在の場合にのみ、人が行き来すると想定される空間内の下方領域にも不活化処理用の紫外光を出射する不活化装置が記載されている。また、下記特許文献2には、空間内に人が存在する場合と、不在の場合とで、出射する光の波長を切り替える不活化装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-130535号公報
【特許文献2】米国特許第10588993号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、一般的な居住空間や職場空間等は、菌やウイルスがエアロゾルや埃等に付着して浮遊しており、天井、壁、床、さらには、空間内に配置された机や椅子等、あらゆるものにも菌やウイルスが少なからず付着している。
【0007】
ところが、上記特許文献1に記載されているような不活化装置は、人の存在に応じて不活化処理用の紫外光源を点灯させるか消灯させるかの制御は行われるが、紫外光を照射する方向を変化させる制御は行われない。このため、不活化処理が行われる空間内において、不活化装置から出射された紫外光が照射される領域は、当該空間の一部の領域に限られてしまう。したがって、上記特許文献1に記載されているような不活化装置では、空間内の紫外光が照射されない領域に付着している菌やウイルスは、いつまでたっても不活化処理されない。
【0008】
上記特許文献2には、設置後に紫外光を照射する方向を調整することができる構成が開示されている。しかしながら、上記特許文献2に記載されている構成では、所望の領域に対して紫外光を照射しようとすると、作業者が安全性を考慮しつつ、紫外光を照射する方向を適宜調整していく作業が必要となる。
【0009】
また、従来から用いられている254nm付近の紫外光を利用した不活化装置の場合、作業者が不活化装置に近づいて紫外光を照射する方向を調整しようとすると、人体に対して影響を及ぼす紫外光が作業者に照射されてしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、空間内において、菌やウイルスを不活化できる紫外光を広範囲にわたって照射可能であって、安全性が向上された菌又はウイルスの不活化装置、及び菌又はウイルスの不活化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の菌又はウイルスの不活化装置は、
空間内に存在する菌又はウイルスを不活化する装置であって、
190nm以上240nm未満の波長範囲内にピーク波長を有する紫外光を出射する光源部と、
前記光源部の前記紫外光の照射方向を変化させる照射領域変更機構と、
前記光源部の前記紫外光の照射方向を変化させるように前記照射領域変更機構を駆動する駆動部とを備えることを特徴とする。
【0012】
本明細書において、「不活化」とは、菌やウイルスを死滅させる又は感染力や毒性を失わせることを包括する概念を指し、「菌」とは、細菌や真菌(カビ)等の微生物を指す。以下において、「菌又はウイルス」を「菌等」と総称することがある。
【0013】
本発明者らは、鋭意研究の結果、波長190以上240nm未満の波長範囲の光は人や動物に対して安全性が高く、微生物の殺菌やウイルスの不活化を行うことが可能であることを見出した。
【0014】
図21は、タンパク質の紫外光領域における平均吸光係数の特性を示すグラフである。
図21に示すように、タンパク質は、波長250nm以上の紫外光は吸収されにくいが、波長240nmより短い波長帯域で急激に吸収されやすくなることがわかる。つまり、波長が240nm以上の紫外光は、人の皮膚を透過しやすく、皮膚内部まで浸透する。そのため、人の皮膚内部の細胞がダメージを受けやすい。これに対して、波長240nm未満の紫外光は、人の皮膚表面(例えば角質層)で吸収されやすく、皮膚内部まで浸透し難い。そのため、皮膚に対して安全である。
【0015】
一方で、波長190nm未満の紫外光が存在すると、大気中に存在する酸素分子が光分解されて酸素原子を多く生成し、酸素分子と酸素原子との結合反応によってオゾンを多く生成させてしまう。そのため、波長190nm未満の紫外光を大気中に照射させることは望ましくない。
【0016】
したがって、波長が190nm以上240nm未満の範囲内の紫外光は、人や動物に対する安全性が高い紫外光であるといえる。なお、人や動物に安全性をより高める観点から、光源部から出射される紫外光は、波長範囲が190nm以上237nm以下の範囲内であることが好ましく、190nm以上235nm以下の範囲内であることがより好ましく、190nm以上230nm以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0017】
また、波長240nm以上波長280nm以下の紫外光は、人や動物に対して有害であるため、安全性を向上させるために、光源部から出射される光において、当該波長範囲の光強度が抑止されていることが望ましい。具体的には、当該波長範囲における光強度が、ピーク波長における光強度に対して、光強度が5%未満にまで低減されていることが好ましく、3%未満にまで低減されていることがより好ましく、1%未満にまで低減されていることが特に好ましい。光源部には、上述の波長範囲を満たす発光スペクトルを有する光源を選定するか、別途光学フィルタ等を用いて、出射される紫外光の波長範囲を調整したものを用いることができる。
【0018】
本発明の対象製品は、人や動物の皮膚や目に紅斑や角膜炎を起こすことはなく、紫外光本来の殺菌、ウイルスの不活化能力を提供することができる。特に、従来の紫外光源とは異なり、有人環境で使用できるという特徴を生かし、屋内外の有人環境に設置することで、環境全体を照射することができ、空気と環境内設置部材表面のウイルス抑制・除菌を提供することができる。
【0019】
このことは、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢の全ての人々が健康的な生活を確保し、福祉を促進する」に対応し、また、ターゲット3.3「2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶すると共に、肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する」に大きく貢献するものである。
【0020】
また、上述のとおり、波長が190nm未満の紫外光は、空気中の酸素に吸収されることでオゾンの生成に寄与する。このようなオゾンの発生をより効果的に抑制するため、200nm以上にピーク波長を有する紫外光を利用することが望ましい。そのため、光源部から出射される紫外光のピーク波長は、好ましくは200nm以上237nm以下の波長範囲内とし、より好ましくは200nm以上235nm以下の波長範囲内とし、さらに好ましくは200nm以上230nm以下の波長範囲内とする。
【0021】
このような光を出射する光源としては、例えば、管体内に発光ガスとしてKrClが封入されて、ピーク波長が222nmの紫外光を出射するエキシマランプや、管体内に発光ガスとしてKrClが封入されて、ピーク波長が207nmの紫外光を出射するエキシマランプがある。つまり、KrClエキシマランプから放出されるピーク波長が222nmの紫外光や、KrBrエキシマランプから放出されるピーク波長が207nmの紫外光は、いずれも人や動物に安全であって、微生物の殺菌やウイルスの不活化を行うことができる光である。よって、空間内の殺菌・不活化領域に人や動物が存在していても、紫外光の照射による殺菌・不活化作業を行うことができる。
【0022】
また、LEDやLD等の固体光源を用いても良い。例えば、波長が190nm以上240nm未満に発光域を有するLEDとして、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系の発光素子や、窒化アルミニウム(AlN)系の発光素子、酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)系の発光素子を採用することができる。さらに、波長変換素子を組み合わせるものであってもよい。例えば、ガスレーザや固体レーザ素子から放射される光を周波数倍化させ、第二次高周波(SHG)や第三次高周波(THG)等の高次高周波を発生させる非線形光学結晶を波長変換素子として用いることで、波長が190nm以上240nm未満の紫外光を生成しても良い。
【0023】
さらに、本発明の不活化装置は、光源部から放射される紫外光の照射方向を変化させる照射領域変更機構と、照射領域変更機構を駆動する駆動部とを備えている。これにより、紫外光の照射位置を変動させて、対象物表面や対象空間の不活化処理を行うことができる。例えば、時間の経過と共に照射位置を変動させてゆくことで、広い空間や複数の位置に対して不活化処理を順次に進めることができる。なお、駆動部による照射領域変更機構の駆動動作としては、紫外光の照射位置が常に変動するように照射領域変更機構を駆動してもよく、変動と停止を繰り返すように駆動しても構わない。
【0024】
さらに、波長が190nm以上240nm未満の範囲内の紫外光を照射させることで、紫外光の照射位置が変動しても、効果的に不活化処理を進めることができる。詳述すると、菌の中には、紫外光によるDNAの損傷を修復する酵素を持つものが存在する。菌が持つDNAの損傷を修復する酵素としては、例えば、FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)があり、FADは、波長が300nm~500nmの光が照射されることで菌が持つDNAの損傷を修復させる効果有する。このような、所定の波長範囲の光が特定の酵素に対して照射されることで、菌が持つDNAの損傷が回復する現象は、「菌の光回復」と称されることがある。
【0025】
従来の殺菌線として知られる254nmの紫外光で不活化を行う場合は、紫外光が照射されない時間が存在すると、光回復によって菌が増殖しやすく、効果的に不活化を実現することが困難であった。つまり、光回復を生じさせないように照射対象物の表面の不活化処理を行おうとすると、できる限り常時紫外光を照射し続ける必要があり、紫外光の照射位置を変動させて不活化処理を進めることは困難であった。
【0026】
これに対し、波長が240nm未満の波長範囲においては、「菌の光回復」の阻害効果が奏されることが分かった。
図22Aは、ピーク波長が254nmの紫外光を出射する低圧水銀灯によって、光回復酵素を持つ黄色ブドウ球菌に紫外光を照射した後の生存率の時間変化を示すグラフであって、
図22Bは、ピーク波長が222nmの紫外光を出射する管体内に発光ガスとしてKrClが封入されたエキシマランプによって、光回復酵素を持つ黄色ブドウ球菌に紫外光を照射した後の生存率の時間変化を示すグラフである。いずれも可視光が照射される環境下において、紫外光の照射を30分間行った後、紫外光の照射を停止させ菌の生存数の変化を確認したものである。また、紫外光の照射量が、5mJ/cm
2、10mJ/cm
2、15mJ/cm
2の異なる3種類で比較するため、紫外光の照度を異ならせた場合の検証を行った。なお、縦軸は、紫外光L1の照射前の時点における黄色ブドウ球菌のコロニー数(N
0)を基準としたときの、照射後の黄色ブドウ球菌のコロニー数(N
t)の比率のLog値に対応する。
【0027】
図22A及び
図22Bに示すグラフから明らかなように、ピーク波長が222nmの紫外光を用いた場合、菌の光回復自体を抑制することが分かる。これは、波長が240nm未満の波長範囲は、菌やウイルスを構成する細胞組織に対してより効果的に作用する結果、光回復の機能を抑制したと考えられる。
【0028】
図21に示すように、タンパク質に対する平均吸光係数は、240nmより短い波長帯域で上昇することが分かる。そのため、細菌やウイルスが持つ細胞膜や酵素の成分であるタンパク質に、紫外光が効果的に吸収される。特に、240nmよりも短い波長帯域の紫外光は、人の皮膚表面(例えば角質層)で吸収され、皮膚内部まで浸透し難く、皮膚に対して安全性が高いが、細菌やウイルスはヒト細胞よりも物理的にはるかに小さく、240nmよりも短い波長帯域であっても紫外光が内部まで到達しやすい。そのため、菌やウイルスを構成する細胞、特に、タンパク質成分を含む細胞膜や酵素等に対して効果的に作用し、菌の光回復等の機能を抑制する効果が高められると考えられる。
【0029】
ここで、タンパク質に対する吸光特性を確認するために、調整した大腸菌原液の吸光度を測定した。吸光度の測定方法と大腸菌原液の調整方法は次の通りである。
【0030】
大腸菌(NBRC.106373 凍結乾燥品)をLB培地に懸濁して37℃で24時間の振とう培養を行った。さらに、上記懸濁液をLB培地で1/105~1/107に希釈し、標準寒天培地に0.1mL塗抹し、37℃で24時間培養した。さらに、30~300CFU/Plateとなった標準寒天培地からコロニーを1個白金耳で釣菌し、5mLのLB培地に懸濁し、37℃で4時間振とう培養を行った。上記懸濁液を滅菌生理食塩水で遠心洗浄したものを大腸菌原液とした。上記作業で得られた原液濃度は109CFU/mLである。吸光度の測定は、原液を1/100に希釈した、濃度が107CFU/mLの試液を用いて、サーモフィッシャーサイエンスのナノドロップにて行った。
【0031】
図23は、大腸菌(E.Coli)の吸光スペクトルを示したグラフである。
図23に示すとおり、タンパク質に対する平均吸光係数の傾向と同様に、240nmより短い波長帯域の光に対して大腸菌(E.Coli)の吸光度が上昇することが分かる。これは、240nmより短い波長帯域の光が、細菌やウイルス等を構成する細胞組織に効果的に作用することを示している。
【0032】
このため、従来の紫外光を用いた不活化装置と比較して、240nm未満の波長帯域に属する紫外光は、菌の光回復を抑制することで、断続的な紫外光の照射であっても良好な不活化効果を発揮する。つまり、紫外光の照射位置を変動させて不活化を行う場合であっても、効率的に不活化処理を進めることができる。なお、菌の光回復をより効果的に抑制する観点から、光源部から出射される紫外光にピーク波長が、190nm以上235nm以下の波長範囲内であることが好ましく、190nm以上230nm以下の波長範囲内であることがより好ましい。
【0033】
上記不活化装置において、
前記光源部は、少なくとも240nm以上280nm未満の波長範囲内の光強度を抑止するための光学フィルタを備えていても構わない。
【0034】
本明細書における、「光強度を抑止する」とは、ピーク波長における光強度に対して、光強度が5%未満であることを意味し、より好ましくは3%未満、さらに好ましくは1%未満である。
【0035】
波長240nm以上波長280nm以下の紫外光は、人や動物に対して有害であるため、安全性を向上させるために、光源部からの出射される光において、当該波長範囲の光強度が抑止されることが望ましい。光強度の抑止は、当該波長範囲における光強度が、ピーク波長における光強度に対して、光強度が5%未満にまで低減されることが好ましく、3%未満にまで低減されることがより好ましく、1%未満にまで低減されることが特に好ましい。
【0036】
また、KrClエキシマランプやKrBrエキシマランプは、ピーク波長が200~230nmの波長範囲となるが、240nm以上280nm以下の波長範囲の紫外光が僅かに含まれている。このような場合は、波長240nm以上波長280nm以下の紫外光の放射を抑止するため、上記のように、光源部に光学フィルタを設けることが望ましい。
【0037】
光学フィルタとしては、例えば、200nm以上237nm以下の波長範囲の光を透過し、波長240以上280nm以下の光をカットする波長選択フィルタを用いることができる。ここで、波長選択フィルタとしては、例えば、HfO2層及びSiO2層による誘電体多層膜フィルタを用いることができる。このように、光出射窓に光学フィルタを設けることで、エキシマランプから人に有害な光が僅かに放射されている場合であっても、当該光が筐体の外に漏洩することをより確実に抑えることができる。
【0038】
また、上記不活化装置において、
前記駆動部は、前記光源部から出射される紫外光の照射位置が所定の方向に往復、又は所定の照射経路を周回するように、駆前記照射領域変更機構を駆動するものであっても構わない。
【0039】
上記構成によれば、所定の照射位置における紫外光の照射が断続的に継続されることで、不活化処理を進めることができる。また、照射領域が変動しない従来の不活化装置と比較して、空間内をより広範囲にわたって不活化処理できる。
【0040】
上記不活化装置は、
前記照射領域変更機構の動作パターンのデータが格納されるパターン記憶部を備え、
前記パターン記憶部に格納された前記データに基づいて、前記駆動部が前記照射領域変更機構を駆動するものであっても構わない。
【0041】
上記構成とすることで、予めパターン記憶部に格納された照射領域変更機構の動作パターンのデータに基づいて光源部の紫外光を照射する方向が自動で変化していく。したがって、紫外光を空間内全体にわたって照射することや、不活化処理が不十分な領域に対して、集中的に紫外光を照射することができる。
【0042】
また、本発明の不活化装置が備えるパターン記憶部は、予め格納された照射方向領域機構の動作パターンが読み出されるだけの構成であってもよく、外部機器との有線通信、又は無線通信によって、格納されたデータを書き換え可能に構成されていても構わない。
【0043】
上記不活化装置において、
前記駆動部は、前記空間内において、床からの高さが2m未満である第一空間と、床からの高さが2m以上の第二空間とに、前記光源部が前記紫外光を照射する方向を切り替えるように前記照射領域変更機構を駆動するものであっても構わない。
【0044】
本明細書において、「紫外光を第一空間に照射する」とは、光源部から出射された紫外光のうちの最も高い強度を示す主光線が、消失せず空間内を直進すると仮定したときに、床、又は第一空間における壁に到達するように、紫外光を照射することを意味する。また、「紫外光を第二空間に照射する」とは、光源部から出射された紫外光の主光線が、消失せず空間内を直進すると仮定したときに、天井、又は第二空間における壁に到達するように、紫外光を照射することを意味する。
【0045】
例えば、天井に設置された不活化装置から、床に向かって紫外光が照射する場合、紫外光の主光線は、消失せず空間内を直進すると仮定すると、常に第二空間を通過して床に到達する。このような場合は、紫外光の主光線が第二空間を通過してはいるが、消失せず空間内を直進すると仮定した紫外光の主光線が、床に到達することから、「紫外光を第一空間に照射する」ことになる。
【0046】
空間内には、机や椅子等の配置された物品等に付着している菌等と、空間内を浮遊している菌等が存在する。そして、人が日常で使用する机や椅子等の物品は、空間内において、概ね人の身長よりも低い領域である、2m未満の領域に配置される。つまり、居住空間等において、設置されている物品に付着している菌等を不活化処理したい場合は、床からの高さが2m未満の第一空間に向けて紫外光を照射する必要がある。
【0047】
そして、エアロゾル等に付着して空間内を浮遊している菌等は、数十秒~数分程度で空間中に拡散し、空間の上方領域と下方領域とを対流する。このため、第一空間と第二空間とに紫外光を照射することが効果的であると考えられる。
【0048】
以上より、空間内を不活化処理するには、空間の端から順に紫外光を照射していくのではなく、物品等に付着している菌等に紫外光を照射する制御と、空間内を浮遊している菌等に紫外光を照射する制御とを切り替えて紫外光を照射することが効果的であると考えられる。この効果については、「発明を実施するための形態」の項目において、試算結果を参照しながら確認する。
【0049】
上記構成とすることで、空間内に存在する菌等をより効果的に不活化処理することができる。
【0050】
上記不活化装置は、
前記光源部の放射強度、又は点灯時間を制御する第一点灯制御部を備え、
前記第一点灯制御部は、前記第一空間に対する単位時間当たりの前記紫外光の照射量が、前記第二空間に対する単位時間当たりの前記紫外光の照射量よりも小さくなるように、前記光源部を制御するものであっても構わない。
【0051】
さらに、上記不活化装置において、
前記第一点灯制御部は、前記紫外光を前記第一空間に照射する時の前記光源部の放射強度が、前記紫外光を前記第二空間に照射する時の前記光源部の放射強度よりも低くなるように、前記光源部を制御するものであっても構わない。
【0052】
また、上記不活化装置は、
前記紫外光の照射時間を計測するタイマを備え、
前記タイマが測定した時間に基づいて、前記駆動部が前記第一空間への前記紫外光の照射と、前記第二空間への前記紫外光の照射とを切り替えるように前記照射領域変更機構を駆動するものであっても構わない。
【0053】
さらに、上記不活化装置において、
前記駆動部は、前記光源部が前記紫外光を前記第二空間に照射する時間が、直前に前記光源部が前記紫外光を前記第一空間に照射していた時間よりも長くなるように前記照射領域変更機構を駆動するものであっても構わない。
【0054】
上記不活化装置は、
前記空間内に人が存在するか否かを検知する人感センサを備え、
前記人感センサが前記空間内において人の存在を検知すると、前記駆動部は、前記光源部が前記第二空間に向かって前記紫外光を照射するように前記照射領域変更機構を駆動し、
前記人感センサが前記空間内において人の不存在を検知すると、前記駆動部は、前記光源部が前記第一空間に前記紫外光を照射するように前記照射領域変更機構を駆動するものであっても構わない。
【0055】
さらに、上記不活化装置において、
前記人感センサは、検知領域が固定されるように設けられていても構わない。
【0056】
本願出願日の時点では、人体に対して1日(8時間)あたりの紫外光の照射量に関して、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:米国産業衛生専門家会議)やJIS Z 8812(有害紫外放射の測定方法)等によって、波長ごとの許容限界値(TLV:Threshold Limit Value)が定められている。つまり、人間が存在する環境下で紫外光が利用される場合には、所定の時間内に照射される紫外光の積算照射量がTLVの基準値以内となるように、光源部の放射強度や点灯時間を決定することが推奨されている。
【0057】
これらの規定には、波長が190nm以上240nm未満の紫外光についても許容限界値が定められている。このため、不活化処理が人体に影響を及ぼすリスクが極めて少ない、波長が190nm以上240nm未満の紫外光を用いて行われる場合であっても、当該紫外光が人に対して長時間照射されないことが好ましい。
【0058】
そこで、上記のように光源部を制御することで、人が存在することが想定される第一空間に照射される紫外光の積算照射量が、第二空間に照射される紫外光の積算照射量に比べて低くなる。したがって、空間内に人が存在していた場合において、いずれの空間に対しても同じ積算照射量となるように紫外光が照射される構成と比べると、人に対する紫外光の積算照射量が低減され、上述した許容限界値に到達しにくくなる。つまり、安全性がさらに向上された不活化装置が実現される。
【0059】
また、上記不活化装置において、
前記人感センサは、前記駆動部が前記照射領域変更機構を駆動することによって検知領域が移動するように設けられていても構わない。
【0060】
人感センサは、例えば、赤外光を受光して検知するセンサ等があるが、赤外光を受光して検知するセンサは、人が放射する赤外光の量を観測しているのではなく、赤外光を発する物体の動きに反応して検知をしている。つまり、固定されて特定の領域において、人の存在を検知するように設けられた人感センサは、赤外光を観測する検知領域内で静止している人を精度よく検知することができない。
【0061】
上記構成とすることで、照射領域変更機構によって人感センサの検知領域が移動する。そうすると、人感センサから見たときに、静止している人が相対的に検知領域内で動作しているように見える。したがって、上記構成によれば、人が空間内で静止している状態であっても、人感センサが、人の存在を精度よく検知することができる。
【0062】
上記不活化装置は、
前記紫外光を照射しない方向の方向データが格納される方向データ記憶部を備えていても構わない。
【0063】
作業者や患者等によっては、紫外光が照射されることを不快に感じる場合や、光線過敏症によって紫外光の照射を控えるべき場合が考えられる。また紫外光に反応する感光材料や薬品等、紫外光の照射を避けるべきものが存在する場合等も想定される。そのような場合において、紫外光を照射しない方向を記憶させておくことで、適切に環境中の不活化を実行することができる。
【0064】
上記不活化装置は、
前記紫外光を照射する方向の方向データが格納される方向データ記憶部を備えていても構わない。
【0065】
上述したように、机や椅子等の人が触れる頻度が高い物品は、人が普段あまり触らない置物等に比べてより多く付着していることがある。このような場合には、空間全体にわたって一様に紫外光が照射されると、当該物品の不活化処理が不十分となってしまう可能性がある。そこで、上記構成とすることで、より重点的な紫外光の照射が必要な照射対象物が空間内に存在する場合等において、当該照射対象物に対して重点的に紫外光を照射して、不活化処理を行うことができる。
【0066】
さらに、上記不活化装置は、
前記光源部と、前記方向データによって前記紫外光が照射される照射対象物との離間距離を計測する距離センサと、
前記距離センサの計測結果に基づいて、前記光源部の放射強度、又は点灯時間を制御する第二点灯制御部とを備えていても構わない。
【0067】
光源部が紫外光を照射する対象が順次変更される場合、ある時に紫外光を照射している物品と光源部との離間距離が、その前に紫外光を照射していた物品と光源部との離間距離に対して、大きく異なる場合がある。そうすると、いずれの物品に対しても光源部が同じ放射強度で点灯していると、光源部からより遠い位置に配置された物品に対しては、紫外光の照射量が不足し、十分に不活化処理できない場合が生じる。
【0068】
そこで、上記構成とすることで、光源部から遠くはなれた照射対象物に対して紫外光を照射する場合、例えば、光源部に供給する電力を大きくし、当該照射対象物に対して照射される紫外光の照射量を向上させるような制御を行うことが可能となり、効率よく不活化処理をすることができる。
【0069】
上記不活化装置は、
前記空間内に人が存在するか否かを検知する少なくとも一つの人検知部を備え、
前記人検知部が前記空間内において人の存在を検知すると、前記駆動部は、人の存在を検知した前記人検知部の人検知時における検知領域の外側に、前記紫外光の主光線が照射されるように、前記照射領域変更機構を駆動するように構成されていても構わない。
【0070】
上記不活化装置は、
前記人検知部が前記空間内において人の存在を検知すると、前記駆動部が、前記光源部が前記空間内の床からの高さが2m未満である第一空間への照射を維持した状態で、前記紫外光の照射方向を変化するように、前記照射領域変更機構を駆動するように構成されていても構わない。
【0071】
上記不活化装置において、
前記人検知部は、前記駆動部が前記照射領域変更機構を駆動することによって検知領域が移動するように設けられていても構わない。
【0072】
上記不活化装置は、
前記照射領域変更機構の駆動時に、前記人検知部が検知領域内において人が不存在である人不在領域を検出すると、前記駆動部は、少なくとも一時的に、前記光源部から出射される前記紫外光の主光線の照射方向が前記人不在領域内に維持されるように前記照射領域変更機構の駆動するように構成されていても構わない。
【0073】
上記不活化装置は、
前記人検知部が前記空間内において人の存在を検知すると、前記駆動部が、少なくとも一時的に、床からの高さが2m以上の第二空間に、前記光源部が前記紫外光を照射するように前記照射領域変更機構を駆動するように構成されていても構わない。
【0074】
上記不活化装置において、
前記人検知部は、検知領域が固定されるように設けられていても構わない。
【0075】
上記不活化装置は、
前記空間内において検知領域が固定されるように設けられた前記人検知部を複数備え、
前記複数の人検知部のうちのいずれかが人の存在を検知すると、前記駆動部は、前記光源部の前記紫外光の主光線の照射方向を、人の存在を検知した前記人検知部の検知領域の外側に変化させるように前記照射領域変更機構を駆動するように構成されていても構わない。
【0076】
上記不活化装置は、
前記複数の人検知部のうちのいずれかが人の存在を検知し、他の前記人検知部が検知領域内において人が不存在である人不在領域を検出すると、前記駆動部は、前記光源部から出射される前記紫外光の主光線の照射方向を、前記人不在領域内に変化させるように前記照射領域変更機構を駆動するように構成されていても構わない。
【0077】
上記不活化装置において、
前記駆動部は、床からの高さが2m未満である第一空間と、床からの高さが2m以上の第二空間とに、前記光源部が前記紫外光を照射する方向を切り替えるように前記照射領域変更機構を駆動可能に構成されており、
前記複数の人検知部のうちの半数以上が人の存在を検知すると、前記駆動部が、前記光源部の前記紫外光の照射方向を前記第一空間から前記第二空間に切り替えるように前記照射領域変更機構を駆動するように構成されていても構わない。
【0078】
ここでの人検知部は、人感センサはもちろんのこと、カメラで所定の領域を撮影し、撮影した画像を解析することによって人の存在を検知する構成等をも含む。
【0079】
上記構成とすることで、不活化装置は、空間内に存在する人に対する高強度の紫外光の照射を回避しつつ、空間内の不活化処理を効率的に進めることができる。
【0080】
本発明の菌又はウイルスの不活化システムは、
空間内に存在する菌又はウイルスを不活化するシステムであって、
190nm以上240nm未満の波長範囲内にピーク波長を有する紫外光を出射する光源部と、
前記光源部の前記紫外光の照射方向を変化させる照射領域変更機構と、
前記光源部の前記紫外光の照射方向を経時的に変化させるように前記照射領域変更機構を駆動する駆動部と、
外部から不活化処理を開始させる所定の無線信号を受信し、前記駆動部に対して駆動動作を開始させる動作開始信号を出力する受信部と、
前記受信部に対して、不活化処理を開始させる前記無線信号を送信する通信機器とを備えることを特徴とする。
【0081】
上記不活化システムは、
前記照射領域変更機構の動作パターンのデータが格納されるパターン記憶部を備え、
前記パターン記憶部に格納された前記データに基づいて、前記駆動部が前記照射領域変更機構を駆動するものであっても構わない。
【0082】
ここでいう通信機器とは、例えば、空間内に設置された操作パネルや、スマートフォン、タブレット、PCといった外部機器と無線通信によってデータ通信可能な通信端末等である。
【0083】
上記構成とすることで、不活化装置から離れた位置から、又は操作者が空間内に入ることなく、不活化装置を操作することができる。これにより、操作者が光源部から出射される紫外光に曝されることなく、光源部の放射強度や紫外光を照射する方向を制御することができる。また、感染症等を患う患者が入院している病棟等で、容易に入退室ができない空間において、外部から光源部の放射強度や紫外光を照射する方向を制御することができる。
【0084】
上記不活化システムは、
前記受信部は、前記通信機器から前記紫外光を拒否する信号を受信すると、前記駆動部に対して、拒否検知信号を出力し、
前記駆動部は、前記拒否検知信号を受信すると、前記紫外光が、前記光源部から前記通信機器が存在する方向とは異なる方向に照射されるように、前記照射領域変更機構を駆動するものであっても構わない。
【0085】
また、上記不活化システムは、
前記光源部の放射強度、又は点灯時間を制御する第一点灯制御部を備え、
前記受信部は、前記通信機器から前記紫外光を拒否する信号を受信すると、前記第一点灯制御部に対して、拒否検知信号を出力し、
前記第一点灯制御部は、前記拒否検知信号を受信すると、前記光源部を減光、又は消灯させるように制御するものであっても構わない。
【0086】
上述したように、作業者や患者等によっては、紫外光が照射されることを不快に感じる場合や、光線過敏症によって紫外光の照射を控えるべき場合が考えられる。また紫外光に反応する感光材料や薬品等、紫外光の照射を避けるべきものが存在する場合等も想定される。
【0087】
そこで、上記のシステム構成とすることで、紫外光を照射されたくない者に対して、紫外光が照射されないように構成することができ、より広いユーザーに対して適合できる不活化システムを構築することができる。
【発明の効果】
【0088】
本発明によれば、空間内において、菌やウイルスを不活化できる紫外光を広範囲にわたって照射可能であって、安全性が向上された菌又はウイルスの不活化装置、及び菌又はウイルスの不活化システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】不活化システムの一実施形態を模式的に示す図面である。
【
図3】制御部の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図4】
図1に示す不活化システムの動作途中の一状態を示す図面である。
【
図5A】制御部による光源部の制御に関するタイミングチャートである。
【
図5B】制御部による光源部の制御に関するタイミングチャートである。
【
図5C】制御部による光源部の制御に関するタイミングチャートである。
【
図6】不活化処理による部屋内で浮遊しているウイルス濃度の時間変化を試算にした結果を示すグラフである。
【
図7】不活化システムの一実施形態を模式的に示す図面である。
【
図9】不活化システムの一実施形態を模式的に示す図面である。
【
図10】
図9の不活化装置の構成を示す図面である。
【
図11】不活化システムの一実施形態を模式的に示す図面である。
【
図13】
図11に示す不活化システムの動作途中の一状態を示す図面である。
【
図14】不活化システムの一実施形態を模式的に示す図面である。
【
図15】制御部の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図16】不活化システムの一実施形態を模式的に示す図面である。
【
図17】制御部の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図18】不活化システムの一実施形態を模式的に示す図面である。
【
図19】不活化システムの一実施形態を模式的に示す図面である。
【
図20】
図19に示す不活化システムの動作途中の一状態を模式的に示す図面である。
【
図21】タンパク質の紫外光領域における平均吸光係数の特性を示すグラフである。
【
図22A】低圧水銀灯によって黄色ブドウ球菌に紫外光を照射した後の生存率の時間変化を示すグラフである。
【
図22B】KrClエキシマランプによって黄色ブドウ球菌に紫外光を照射した後の生存率の時間変化を示すグラフである。
【
図23】大腸菌(E.Coli)の吸光スペクトルを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0090】
以下、本発明の不活化装置及び不活化システムについて、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0091】
[第一実施形態]
図1は、不活化システム1の第一実施形態を模式的に示す図面である。
図1に示すように、不活化システム1は、不活化装置10と、通信機器に相当する操作パネル20とを備える。
【0092】
図1に示すように、不活化システム1は、不活化装置10が部屋2内の天井に設置されており、後述される受信部31(
図3参照)が操作パネル20から動作開始の無線信号S1を受信すると、部屋2内の机や椅子等に付着しているウイルスV1(
図1では●で示される)や、エアロゾル等に付着して空気中に浮遊しているウイルスV2(
図1では○で示される)に対して紫外光L1の照射を開始する。そして、不活化装置10は、後述されるパターン記憶部34a(
図3参照)に格納されたデータに基づいて、自動的に部屋2内全体にわたって紫外光L1を照射するように動作する。
【0093】
図2は、
図1の不活化装置10の構成を示す図面である。
図2に示すように、不活化装置10は、天井に固定される台座11と、紫外光L1を出射する光源部12と、台座11と光源部12とを連結する照射領域変更機構13と、制御部30とを備える。
【0094】
光源部12は、
図2に示すように、紫外光L1を出射する出射窓12aを備える。また、光源部12は、照射領域変更機構13を介して台座11と連結されている。
【0095】
図1においては、光源部12は、主光線Lxが第一空間A1に配置された椅子に照射されている。すなわち、
図1は、光源部12が第一空間A1に紫外光L1を照射している状態が示されている。ここで、第一空間A1とは、
図1に示すように、部屋2内の床から高さhまでの領域であって、第二空間A2とは、第一空間A1よりも上方の領域である。
【0096】
ここで、第一実施形態では、床からの高さhは、2mとなるように設定されているが、任意に設定してもよい。人に対して紫外光L1が照射されるか否かという点で区別したい場合は、高さhは、1.9m以上2.1m未満であることが好ましく、1.95m以上2.05m未満であることがより好ましい。
【0097】
第一実施形態における光源部12は、ピーク波長が222nmの紫外光L1を出射するように構成されており、240nm以上280nm未満の波長範囲内の光強度を抑止するために、出射窓12aに不図示の光学フィルタが設けられている。光源部12の出射窓12aに設けられる光学フィルタは、例えば、誘電体多層膜によって構成される。光源部12としては、例えば、管体内に発光ガスとしてクリプトン(Kr)と塩素(Cl)とが封入されたエキシマランプを採用し得る。なお、光源部12から出射される光の240nm以上280nm未満の波長範囲における光強度が、光学フィルタによって抑止する必要が無い程に低い場合は、光学フィルタが設けられていなくても構わない。
【0098】
照射領域変更機構13は、
図2に示すように、矢印M1が示す方向に回動するように構成された第一回動機構13aと、光源部12が矢印M2の方向に回動するように構成された第二回動機構13bとを備える。
【0099】
第一回動機構13aと第二回動機構13bは、後述される制御部30が備える駆動部33(
図3参照)によって、光源部12の出射窓12aを向ける方向を動かす。
【0100】
図3は、制御部30の構成を模式的に示すブロック図である。
図3に示すように、制御部30は、受信部31と、第一点灯制御部に相当する点灯制御部32と、駆動部33と、記憶部34と、タイマ35とを備える。
【0101】
受信部31は、操作パネル20から動作の開始を通知する無線信号S1を受信すると、点灯制御部32に対して点灯信号S2を出力し、光源部12が点灯する時間だけ待機した後、駆動部33に対して、駆動動作を開始させる動作開始信号S3を出力する。また、操作パネル20から受信した無線信号S1に、動作パターンに関するデータd1が含まれていた場合、受信部31は、パターン記憶部34aにデータd1を格納する。なお、点灯信号S2の出力と動作開始信号S3の出力タイミングは、いずれが先であってもよく、点灯信号S2と動作開始信号S3は、同じ信号であっても構わない。さらに、受信部31は、無線信号S1を受信すると、駆動部33に対して、動作開始信号S3を出力するのみであって、光源部12は、常時点灯しているように構成されていても構わない。
【0102】
点灯制御部32は、受信部31から点灯信号S2が入力されると、光源部12を点灯させるように光源部12に対して電力の供給を開始する。ここで、点灯制御部32は、例えば、点灯信号S2に応じて出力電力が切り替わるように構成された電気回路や等である。
【0103】
駆動部33は、受信部31から動作開始信号S3が入力されると、記憶部34が備えるパターン記憶部34aから、予め格納されている照射領域変更機構13の動作パターンのデータd2を読み出す。そして、駆動部33は、データd2に基づく動作パターンで動作するように、照射領域変更機構13を駆動する。
【0104】
ここで、駆動部33は、例えば、データd2に基づいて、照射領域変更機構13を駆動する、モータ等の動力源と、制御回路や機構部品を備えるアクチュエータ等である。また、記憶部34は、例えば、電子データを格納するフラッシュメモリや等である。また、制御部30全体を一つのCPUやマイクロコントローラ等で構成されていても構わない。
【0105】
図4は、
図1の不活化システム1の動作途中の一状態を示す図面である。
図4においては、光源部12は、主光線Lxが第二空間A2の壁に照射されている。すなわち、
図4は、光源部12が第二空間A2に紫外光L1を照射している状態が示されている。
【0106】
第一実施形態では、パターン記憶部34aには、所定の時間間隔で光源部12が、第一空間A1と第二空間A2に対して、交互に紫外光L1を照射する動作パターンのデータd2が格納されている。つまり、駆動部33は、
図1に示すように、光源部12が第一空間A1に向かって紫外光L1を照射する状態と、
図4に示すように、光源部12が第二空間A2に向かって紫外光L1を照射する状態とが所定の時間間隔で切り替わるように照射領域変更機構13を駆動する。
【0107】
また、データd2が有する照射領域変更機構13の動作パターンは、駆動部33が、照射領域を第一空間A1と第二空間A2とで交互に切り替えるのではなく、床面から天井に向かって紫外光L1を照射する方向を徐々に移動させるような動作パターン等であっても構わない。
【0108】
第一実施形態における記憶部34は、パターン記憶部34aとは別に、紫外光L1を重点的に照射する特定の照射対象物(例えば、
図1に示す椅子)が配置されている位置に関するデータd3が格納される方向データ記憶部34bを備える。
【0109】
点灯制御部32と駆動部33は、データd2に基づく動作が完了すると、方向データ記憶部34bからデータd3を読み出す。そして、駆動部33が、データd3に基づいて、照射対象物の位置する方向に光源部12の出射窓12aが向くように照射領域変更機構13を駆動し、点灯制御部32が、光源部12に対して所定の時間の間、電力を供給する。なお、照射対象物に対する紫外光L1の重点的な照射は、動作パターンに従って不活化処理を行う前であってもよく、動作パターンに従って不活化処理を行っている最中に、当該照射対象物に光源部12の出射窓12aが向けられたタイミングで行われても構わない。
【0110】
タイマ35は、動作開始からの部屋2内に対する紫外光L1の照射時間を計測しており、駆動部33に対して、光源部12が紫外光L1を照射する方向を、第一空間A1と第二空間A2とで切り替えるタイミングを通知する切替信号S4を出力する。
【0111】
図5Aは、制御部30による光源部12の制御に関するタイミングチャートである。
図5Aにおける(a)は、点灯制御部32による光源部12に供給される電力のタイミングチャートであって、(b)は、駆動部33による、紫外光L1を照射する空間(A1,A2)の切替のタイミングチャートである。
図5Aの(b)において、ハイレベルで示す領域は、光源部12が第二空間A2に紫外光L1を照射している状態を示している。
【0112】
第一実施形態における点灯制御部32は、
図5Aに示すように、駆動部33が、光源部12が第一空間A1に紫外光L1を照射するように制御している時と比べて、光源部12が第二空間A2に紫外光L1を照射するように制御している時の方が、光源部12に対して供給する電力が高くなるように制御している。つまり、駆動部33が、光源部12が第一空間A1に紫外光L1を照射するように制御している期間T1と比べて、光源部12が第二空間A2に紫外光L1を照射するように制御している期間T2の方が、光源部12の放射強度が高くなっている。
【0113】
なお、光源部12がいずれの空間(A1,A2)に紫外光L1を照射しているかによって、放射強度を変更しなくても構わないが、人が往来する第一空間A1に対して紫外光L1を照射する場合は、人に対する紫外光L1の照射量を抑制するために、放射強度が小さく、又は点灯時間が短く設定されることが好ましい。
【0114】
図5Bは、
図5Aとは異なる、制御部30による光源部12の制御に関するタイミングチャートである。
図5Bに示すように、制御部30は、光源部12が第二空間A2に紫外光L1を照射している期間T2が、第一空間A1に紫外光L1を照射している期間T1に対して、放射強度が低くなることに加えて、時間が短くなるように制御しても構わない。
【0115】
また、
図5Cは、
図5A及び
図5bとはさらに異なる、制御部30による光源部12の制御に関するタイミングチャートである。
図5Cに示すように、点灯制御部32は、周期的に消灯、又は減光するように光源部12に供給する電力を制御しても構わない。
図5A~
図5Cにおける制御では、いずれも、光源部12が第一空間A1に対する単位時間当たりの紫外光L1の照射量が、第二空間A2に対する単位時間当たりの紫外光L1の照射量よりも小さくなるように、点灯制御部32が光源部12に対して供給する電力を制御している。
【0116】
ここで、第一空間A1と第二空間A2とで照射対象とする領域を交互に切り替える場合といずれかの領域に照射方向を固定した場合の、それぞれの不活化処理において、部屋2内を浮遊しているウイルスV1の濃度の低下について試算した内容を説明する。
【0117】
ここでの試算では、6m×4m×2.5m(幅×奥行×高さ)の広さの部屋2で、
図1に示すように天井に設置した一台の不活化装置10を用いて不活化処理を行うことを想定した。第一空間A1は、床からの高さが2m未満の領域、第二空間A2は、床からの高さが2m以上の領域とした。
【0118】
不活化装置10は、部屋2の天井中央に設置し、光源部12から出射される紫外光L1は、光源部12の出射窓12aから円錐状に出射されることとし、第一空間A1へは、天井から床に向かって2.5m、第二空間A2へは部屋2の中央から片側の壁に向かって3mの距離にわたって照射することとした。なお、第二空間A2へ照射される紫外光L1は、半分が天井に照射され続けてしまうことを考慮して、第二空間A2への紫外光L1の照射体積は円錐形状の体積の半分とした。
【0119】
部屋2内で浮遊しているウイルスV1は、自然対流によって一分間に二回、第一空間A1と第二空間A2とを行き来するものとした。なお、第一空間A1に対する紫外光L1の照射は、第一空間A1と第二空間A2との間のウイルスの行き来はほとんど関係ないので、その影響はないものとした。
【0120】
試算は、初期菌濃度をC0、点灯時間をT、部屋2の容積をR、空気の不活化率(殺菌率)をε、単位時間内に不活化される空気の総量をVとして、下記(1)及び(2)式に基づいて点灯時間Tに対する浮遊しているウイルスV1の濃度CTを計算した。
CT=C0e(-αT/R) (1)
α=εV (2)
【0121】
図6は、不活化処理による部屋2内で浮遊しているウイルスV1濃度の時間変化を試算した結果を示すグラフであり、縦軸は浮遊しているウイルスV1の濃度、横軸は経過時間を示している。
図6に示すように、結果としては、第二空間A2のみに紫外光L1を照射する場合が浮遊しているウイルスV1の濃度の低下が最も早く、第一空間A1のみに紫外光L1を照射する場合が浮遊しているウイルスV1の濃度の低下が最も遅い。これは、自然対流によるウイルスV1の循環によって、単位時間当たりの不活化体積が第二空間A2に対する紫外光L1の照射の方が、第一空間A1に対する紫外光L1の照射よりも大きいことによる。
【0122】
図6に示す結果は、あくまで上記の条件において、
図1に示される空気中を浮遊しているウイルスV1に対する結果である。しかし、部屋2内には、浮遊しているウイルスV1と共に、床や机などに付着しているウイルスV2も存在する。
図4に示すように、第二空間A2に紫外光L1を照射している場合、光源部12は、床や机に対して紫外光L1を照射しない。すなわち、第二空間A2に対してのみ紫外光L1を照射している場合は、ウイルスV1の減少量は多いが、床や机に付着しているウイルスV2が全く不活化処理されない。
【0123】
これに対し、第一空間A1への紫外光L1の照射と、第二空間A2への紫外光L1の照射とを交互に切り替える場合は、第一空間A1に紫外光L1を照射している間に、床や机等に付着したウイルスV2が不活化処理される。この点を考慮すれば、部屋2内全体に存在するウイルス(V1,V2)を効率よく不活化する観点では、紫外光L1を第一空間A1と第二空間A2に対して、交互に照射する方法が最も効果的であると考えられる。
【0124】
以上より、上記構成とすることで、予めパターン記憶部34aに格納された照射領域変更機構13の動作パターンのデータd2に基づいて光源部12の紫外光L1を照射する方向が自動で部屋2内に存在する菌等を不活化処理することができる。
【0125】
また、人体に影響を及ぼすリスクがほとんどない、波長が222nmの紫外光を利用して不活化処理を行うため、従来から用いられている、波長が254nm付近の紫外光による不活化装置に比べて安全性が高い不活化システム、不活化装置が実現される。
【0126】
なお、第一実施形態における不活化装置10は、制御部30がタイマ35を備え、光源部12が、紫外光L1を照射する方向を、所定の時間間隔で第一空間A1と第二空間A2とに切り替えるように構成されているが、タイマ35を備えず、単に動作パターンのデータd2で指定された順序で不活化処理を行うような構成であっても構わない。
【0127】
また、部屋2内の不活化処理を行うにあたっては、データd2が、当該部屋2内を第一空間A1と第二空間A2とに区別せず、例えば、床面側から順に天井に向かって不活化処理を行うような照射領域変更機構13の動作パターンとなるように構成されていても構わない。
【0128】
さらに、駆動部33は、制御回路や機構部品を備えず、モータの動作のみによって、単に照射領域変更機構13が光源部12の紫外光L1の照射方向を動かすように構成されていても構わない。
【0129】
さらに、不活化装置10は、操作パネル20等の通信機器から送信される無線信号S1ではなく、作業者が不活化装置10に設けられた動作開始のボタンを押すことで、不活化処理を開始するように構成されていてもよく、所定の時間になると自動的に不活化処理を開始するように構成されていても構わない。
【0130】
さらに、方向データ記憶部34bに格納されるデータd3は、特定の照射対象物が配置されている位置に関するデータではなく、紫外光L1を照射したくない物品が配置されている位置や、紫外光L1を照射されたくない人の座席やベッドの位置に関するデータであっても構わない。
【0131】
データd3が、紫外光L1を照射したくない物品が配置されている位置や、紫外光L1を照射されたくない人の座席やベッドの位置に関するデータである場合は、例えば、駆動部33は、データd2に基づきつつも、紫外光L1を照射したくない物品が配置されている位置への照射を回避するように照射領域変更機構13を駆動する。
【0132】
なお、特定の方向に対して重点的に紫外光L1を照射する必要が無い場合や、特定の方向に対する紫外光L1の照射を避ける必要が無い場合には、方向データ記憶部34bが設けられていなくても構わない。
【0133】
第一実施形態の不活化装置10が備える光源部12は、波長が222nmの紫外光L1を出射するように構成されているが、光源部12が出射する紫外光L1の波長は、190nm以上240nm未満であればよい。なお、光源部12が出射する紫外光L1の波長は、波長200nm以上237nm以下であることが好ましく、波長200nm以上235nm以下であることがより好ましく、200nm以上230nm未満であることが特に好ましい。
【0134】
図7は、
図1とは別の不活化システム1の構成を模式的に示す図面であって、
図8は、
図7の不活化装置10の構成を示す図面である。
図7に示すように、不活化装置10は、第二回動機構13bを備える代わりに、ミラー14と、ミラー14を矢印M3の方向に回動させる第三回動機構13cとを備えていても構わない。
【0135】
図8に示す不活化装置10は、ミラー14が、第三回動機構13cによって矢印M3の方向に回動されることで、出射窓12aに対するミラー14の角度θが変化し、光源部12の出射窓12aから出射された紫外光L1の反射される方向が変化する。この場合は、第一回動機構13aと第三回動機構13cとの組み合わせが、照射領域変更機構13を構成する。
【0136】
[第二実施形態]
本発明の不活化システム1及び不活化装置10の第二実施形態の構成につき、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0137】
図9は、不活化システム1の第二実施形態を模式的に示す図面であって、
図10は、
図9の不活化装置10の構成を示す図面である。
図10に示すように、第二実施形態における不活化装置10は、部屋2内の特定の領域を検知領域X1とするように、台座11に設けられた第一人感センサ15を備える。
【0138】
第一人感センサ15は、部屋2内の特定の範囲に設定される検知領域X1に人が存在するか否かを検知する。なお、第二実施形態において、第一人感センサ15は、検知領域X1において人から放射される赤外光を検知して人の存在を検知するセンサである。第一人感センサ15は、赤外光を検知するセンサの他に、例えば、超音波センサ等も採用し得る。
【0139】
第二実施形態では、第一人感センサ15が人の存在を検知すると、駆動部33は、光源部12が第二空間A2に向かって紫外光L1を照射するように照射領域変更機構13を駆動する。そして、第一人感センサ15が空間内において人の不存在を検知すると、駆動部33は、光源部12が第一空間A1に向かって紫外光L1を照射するように照射領域変更機構13を駆動する。
【0140】
上記構成とすることで、人に対して照射される紫外光L1の照射量を抑制することができる。
【0141】
[第三実施形態]
本発明の不活化システム1及び不活化装置10の第三実施形態の構成につき、第一実施形態及び第二実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0142】
図11は、不活化システム1の第三実施形態を模式的に示す図面であって、
図12は、
図11の不活化装置10の構成を示す図面である。
図12に示すように、第三実施形態における不活化装置10は、光源部12の出射窓12aが設けられた面と同じ面に、第二人感センサ16を備える。
【0143】
第二人感センサ16は、照射領域変更機構13によって、光源部12の出射窓12aから出射される紫外光L1と同じように、検知領域X2が部屋2内を移動する。なお、第三実施形態において、第二人感センサ16は、検知領域X2において、人から放射される赤外光を検知して人の存在を検知するセンサである。第二人感センサ16は、赤外光を検知するセンサの他に、例えば、超音波センサ等も採用し得る。
【0144】
第三実施形態においては、第二人感センサ16が人の存在を検知すると、駆動部33は、光源部12が第二空間A2に向かって紫外光L1が照射するように照射領域変更機構13を駆動する。そして、第二人感センサ16が空間内において人の不存在を検知すると、駆動部33は、光源部12が第一空間A1に向かって紫外光L1を照射するように照射領域変更機構13を駆動する。
【0145】
図13は、
図11の不活化システム1の動作途中の一状態を示す図面である。上記構成とすることで、
図12に示すように、照射領域変更機構13によって紫外光L1の出射方向が変化する光源部12と併せて、第二人感センサ16の検知領域X2が移動する。そうすると、第二人感センサ16の検知領域X2が、部屋2内で静止している人を含むように移動してくると、第二人感センサ16から見たときに、相対的に人が検知領域内で移動しているように見える。
【0146】
したがって、上記構成によれば、人が部屋2内で静止している状態であっても、第二人感センサ16が、部屋2内の人の存在を検知することができ、人に対して照射される紫外光L1の照射量を抑制することができる。
【0147】
[第四実施形態]
本発明の不活化システム1及び不活化装置10の第四実施形態の構成につき、第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0148】
図14は、不活化システム1の第四実施形態を模式的に示す図面であり、
図15は、制御部30の構成を模式的に示すブロック図である。第四実施形態の不活化装置10の制御部30は、
図14及び
図15に示すように、スマートフォン21から送信される拒否信号S5を受信部31が受信すると、不図示の拒否検知信号を点灯制御部32に出力する。点灯制御部32は、拒否検知信号が入力されると、光源部12に対する電力の供給を一時的に停止する。
【0149】
不活化装置10の制御部30は、点灯制御部32に拒否検知信号が入力されると、光源部12に供給する電力を停止するのではなく、低減させるように構成されていてもよい。また、受信部31が拒否信号S5を受信すると、駆動部33に対して拒否検知信号を出力する。そして、駆動部33は、拒否検知信号が入力されると、拒否信号S5が出力された方向とは異なる方向に、光源部12の出射窓12aが向くように照射領域変更機構13を駆動するように構成されていても構わない。
【0150】
上記構成とすることで、不活化システム1は、皮膚へのダメージを気にする人や、体調を崩しやすい人等、紫外光を浴びたくない人に対して、不活化処理用の紫外光L1を照射しないように構成することができる。
【0151】
なお、
図14に示す構成では、部屋2内に拒否信号S5を出力する人が一人だけ図示されているが、部屋2内には、複数の人が存在し、不活化装置10が、複数のスマートフォン21からの拒否信号S5を同時に受信可能となるように構成されていても構わない。
【0152】
[第五実施形態]
本発明の不活化システム1及び不活化装置10の第五実施形態の構成につき、第一実施形態~第四実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0153】
図16は、不活化システム1の第五実施形態を模式的に示す図面であり、
図17は、制御部30の構成を模式的に示すブロック図である。
図16及び
図17に示すように、第五実施形態における不活化装置10は、距離センサ17を備える。
【0154】
図17に示すように、距離センサ17は、光源部12と、照射対象物との離間距離を計測し、計測結果の情報を含む計測データd4を制御部30の点灯制御部32に対して出力する。計測データd4が入力された点灯制御部32は、計測データd4、すなわち、光源部12と照射対象物との離間距離が大きくなる程、光源部12に供給する電力を大きくするように制御する。なお、ここでの点灯制御部32が第二点灯制御部に相当する。
【0155】
上記構成とすることで、光源部12から遠くはなれた照射対象物に対して、紫外光L1の照射量を向上させることができ、不活化処理を促進させることができる。
【0156】
[第六実施形態]
本発明の不活化システム1及び不活化装置10の第六実施形態の構成につき、第一実施形態~第五実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0157】
図18は、不活化システム1の第六実施形態を模式的に示す図面である。不活化システム1の第六実施形態の構成は、
図12に示す第三実施形態の構成と同じであって、照射領域変更機構13によって紫外光L1の出射方向が変化する光源部12と併せて、人検知部に相当する第二人感センサ16の検知領域X2が移動するように構成されている。
【0158】
不活化システム1の第六実施形態は、動作開始の操作が行われる、又は動作を開始するように設定された所定の時間が到来すると、照射領域変更機構13が光源部12の紫外光L1を出射する方向を変化させながら部屋2内の不活化処理を実行する。そして、
図18に示すように、紫外光L1を出射する方向を変化させている最中に第二人感センサ16が人の存在を検知すると、第一空間A1内であって、第二人感センサ16が人の存在を検知した時における検知領域X2aの外側に主光線Lxが照射されるように、照射領域変更機構13が光源部12の紫外光L1を出射する方向を変化させる。
【0159】
上記構成とすることで、不活化システム1は、部屋2内に存在する人に対しての紫外光L1の照射を回避しつつ、部屋2内の不活化処理を順次進行させることができる。
【0160】
なお、第六実施形態は、第二人感センサ16が人の存在を検知した時には、照射領域変更機構13が第一空間A1内の検知領域X2aの外側に紫外光L1の主光線Lxが照射されるように光源部12の出射方向を変化させるが、第二空間A2内に紫外光L1の主光線Lxを照射するように光源部12の出射方向を変化させても構わない。
【0161】
上記のような動作によれば、人の存在が検知された場合に紫外光L1の主光線Lxが第二空間A2内に照射されるため、高強度の紫外光L1が人に照射されることをより確実に回避することができる。このような制御は、例えば、部屋2内に人が多数存在し、紫外光L1を照射できる方向が第一空間A1内に僅かしかないような場合に有効である。
【0162】
また、第六実施形態においては、第二人感センサ16が人の存在を検知して、紫外光L1の主光線Lxの出射方向を検知領域X2aの外側の領域に変化させた後、第二人感センサ16が人を検知しない人不在領域を検出した場合、当該人不在領域内に紫外光L1の主光線Lxの照射が所定の時間維持されるように構成されていても構わない。当該所定の時間は、十分な不活化処理を行うために、30秒以上であることが好ましく、60秒以上であることがより好ましい。
【0163】
さらに、第六実施形態においては、人検知部として第二人感センサ16を備える構成であったが、人検知部は、人感センサ以外に、例えば、部屋2内の所定の領域を撮影するカメラと、当該カメラで撮影した画像を解析して人の存在を判定する画像解析部とを備える構成等であっても構わない。
【0164】
なお、不活化システム1が人検知部としてカメラを備える場合での検知領域とは、部屋2内における当該カメラの撮影範囲としてもよいが、撮影される領域のうちの特定の範囲内としても構わない。カメラにおける検知領域が撮影される領域のうちの特定の範囲内となる場合、例えば、画像解析部は、カメラが撮影した画像を解析することで、特定の範囲内に人が存在するか否かを判定する。
【0165】
[第七実施形態]
本発明の不活化システム1及び不活化装置10の第七実施形態の構成につき、第一実施形態~第六実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0166】
図19は、不活化システム1の第七実施形態を模式的に示す図面である。
図19に示すように、不活化システム1の第七実施形態は、検知領域X1が固定された人検知部に相当する第一人感センサ15を複数備える。
【0167】
第七実施形態における複数の第一人感センサ15は、
図19に示すように、それぞれの検知領域X1が重ならないように設定されているが、各検知領域X1は、それぞれ一部が重なるように設定されていても構わない。
【0168】
不活化システム1の第七実施形態は、複数の第一人感センサ15のうちのいずれかが人の存在を検知すると、人がいない人不在領域を検出した第一人感センサ15の検知領域X1に向けて紫外光L1の主光線Lxが照射されるように、照射領域変更機構13が光源部12の紫外光L1の出射方向を変更する。
【0169】
図19を参照しながら具体的な動作の一例を説明する。不活化システム1の不活化動作が実行されている最中に、光源部12から出射される紫外光L1が、第一人感センサ15aの検知領域X1a内に向かって照射されているとする。そして、人が検知領域X1a内に移動してくると、
図19に示すように、照射領域変更機構13が人を検知していない第一人感センサ15bの検知領域X1b(人不在領域)内に紫外光L1の主光線Lxが照射されるように光源部12の紫外光L1の出射方向を変化させる。
【0170】
上記構成とすることで、不活化システム1は、部屋2内に存在する人に対しての紫外光L1の照射を回避しつつ、部屋2内の不活化処理を順次進行させることができる。
【0171】
図20は、
図19に示す不活化システム1の動作途中の一状態を模式的に示す図面である。不活化システム1の第七実施形態は、
図20に示すように、全ての第一人感センサ15が人の存在を検知した時には、紫外光L1が第二空間A2に照射されるように、照射領域変更機構13が光源部12の紫外光L1の照射方向を変更する。
【0172】
なお、第七実施形態においては、全ての第一人感センサ15が人の存在を検知した場合に、紫外光L1を第二空間A2に照射するように構成されているが、一部の第一人感センサ15が人の存在を検知した場合に、紫外光L1を第二空間A2に照射するように構成されていても構わない。部屋2内に人が多数存在する場合において、できる限り人への照射を回避するという観点から、不活化システム1が備える第一人感センサ15のうち、少なくとも半数が人を検知した場合には、第二空間A2に紫外光L1を照射するように構成されていることが好ましい。
【0173】
不活化システム1の第七実施形態は、いずれかの第一人感センサ15が人の存在を検知した場合に、人不在領域に紫外光L1の主光線Lxが照射されるように構成されているが、人を検知した第一人感センサ15の検知領域X1の外側で、かつ、他のいずれの第一人感センサ15の検知領域X1とも異なる領域に紫外光L1の主光線Lxが照射されるように構成されていても構わない。
【0174】
また、不活化システム1の第七実施形態は、第一人感センサ15を複数備えているが、第一人感センサ15が一つだけ搭載されている構成であっても構わない。例えば、部屋2があまり広くない場合や、人が出入りする頻度が低い場合等は、第一人感センサ15が一つだけ搭載されており、第一人感センサ15が人の存在を検知すると、第一人感センサ15の検知領域X1の外側に紫外光L1の主光線Lxが照射されるように構成されていても構わない。
【0175】
また、第七実施形態の不活化システム1は、人感センサ以外の人検知部が構成されていてもよく、例えば、第六実施形態と同様に、カメラと画像解析部による人検知部が構成されていても構わない。
【0176】
さらに、第七実施形態に限らず、上述したいずれの実施形態においても、追加的に、又は人感センサと共に、又は人感センサに代えて、カメラと画像解析部による人検知部が構成されていてもよく、感圧センサや近接センサ等により人の存在を判定する人検知部が構成されていても構わない。
【符号の説明】
【0177】
1 : 不活化システム
2 : 部屋
10 : 不活化装置
11 : 台座
12 : 光源部
12a : 出射窓
13 : 照射領域変更機構
13a : 第一回動機構
13b : 第二回動機構
13c : 第三回動機構
14 : ミラー
15,15a,15b : 第一人感センサ
16 : 第二人感センサ
17 : 距離センサ
20 : 操作パネル
21 : スマートフォン
30 : 制御部
31 : 受信部
32 : 点灯制御部
33 : 駆動部
34 : 記憶部
34a : パターン記憶部
34b : 方向データ記憶部
35 : タイマ
A1 : 第一空間
A2 : 第二空間
L1 : 紫外光
Lx : 主光線
T1,T2 : 期間
V1,V2 : ウイルス
X1,X1a,X1b,X2 : 検知領域