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特開2022-138126ポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置
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  • 特開-ポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138126
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】ポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026240
(22)【出願日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0031079
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】オ、デソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンファン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム、フンシク
【テーマコード(参考)】
4F071
【Fターム(参考)】
4F071AA56
4F071AA88
4F071AF20Y
4F071AF25Y
4F071AF30Y
4F071AF34Y
4F071AH12
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光学特性および機械的特性に優れたポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】ポリアミド系重合体を含み、数式1で表示される塑性特性値が18.45%~19.97%であるポリアミド系フィルムとする。
[数式1]塑性特性値(%)=(100-nIT)/(HIT/HM)
前記数式1において、nIT、HITおよびHMはナノインデンタによりISO14577規格に基づいて測定され、nITは弾性率(%)、HITはインデンテーション硬度(N/mm)、HMは複合硬度(N/mm)である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系重合体を含み、
下記数式1で表示される塑性特性値が18.45%~19.97%である、ポリアミド系フィルム:
[数1]
塑性特性値(%)=(100-nIT)/(HIT/HM)
前記数式1において、nIT、HITおよびHMは、ナノインデンタによりISO14577規格に基づいて測定され、
nITは弾性率(%)、HITはインデンテーション硬度(N/mm)、HMは複合硬度(N/mm)である。
【請求項2】
前記ポリアミド系重合体は、アミド系繰り返し単位およびイミド系繰り返し単位を100:0~90:10のモル比で含む、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項3】
前記アミド系繰り返し単位は、第1ジカルボニル化合物に由来の第1アミド系繰り返し単位と、第2ジカルボニル化合物に由来の第2アミド系繰り返し単位とを含み、
前記第1ジカルボニル化合物内の2つのカルボニル基間の角度は、前記第1ジカルボニル化合物内の2つのカルボニル基間の角度よりも大きく、
前記第1ジカルボニル化合物由来の繰り返し単位と、前記第2ジカルボニル化合物由来の繰り返し単位とのモル比は25:75~75:25である、請求項2に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項4】
フィルムの厚さ50μmを基準に、
モジュラスが6GPa以上であり、
透過度が80%以上であり、
ヘイズが1%以下であり、
黄色度が3以下である、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項5】
ポリアミド系重合体を含み、
下記数式2で表示される弾性特性値が67%~69.5%であり、
下記数式3で表示される第2塑性特性値が384%~416%である、ポリアミド系フィルム:
[数2]
弾性特性値(%)=nIT/{EIT/(EIT+HIT)}
(前記数式2において、nIT、EITおよびHITは、ナノインデンタによりISO14577規格に基づいて測定され、
nITは弾性率(%)、EITはインデンテーションモジュラス(GPa)、HITはインデンテーション硬度(N/mm)である。)
[数3]
第2塑性特性値(%)=(1-nIT)/{HIT/(EIT+HIT)}
(前記数式3において、nIT、EITおよびHITは、ナノインデンタによりISO14577規格に基づいて測定され、
nITは弾性率(%)、EITはインデンテーションモジュラス(GPa)、HITはインデンテーション硬度(N/mm)である。)。
【請求項6】
請求項1に記載のポリアミド系フィルムの製造方法であって、
有機溶媒上でジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合してポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階と、
前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階と、
前記ゲルシートを熱処理する段階と、を含む、ポリアミド系フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを重合する段階は、
前記ジアミン化合物と、第1ジカルボニル化合物および第2ジカルボニル化合物とを反応させて、粘度10000cps~150000cpsの第1重合体溶液を形成する段階と、
前記第1重合体溶液と追加の第2ジカルボニル化合物とを反応させて、粘度200000cps~350000cpsの第2重合体溶液を形成する段階とを含む、請求項6に記載のポリアミド系フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記第1重合体溶液を形成する段階において、
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、前記ジアミン化合物と順次反応し、
前記ジカルボニル化合物の投入前に、前記ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物とを反応させる段階をさらに含む、請求項7に記載のポリアミド系フィルムの製造方法。
【請求項9】
ポリアミド系フィルムおよび機能層を含み、
前記ポリアミド系フィルムは、下記数式1で表示される塑性特性値が18.45%~19.97%である、ディスプレイ装置用カバーウィンドウ:
[数1]
塑性特性値(%)=(100-nIT)/(HIT/HM)
前記数式1において、nIT、HITおよびHMはナノインデンタによりISO14577規格に基づいて測定され、
nITは弾性率(%)、HITはインデンテーション硬度(N/mm)、HMは複合硬度(N/mm)である。
【請求項10】
表示部と、
前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、
前記カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムおよび機能層を含み、
前記ポリアミド系フィルムは、下記数式1で表示される塑性特性値が18.45%~19.97%である、ディスプレイ装置:
[数1]
塑性特性値(%)=(100-nIT)/(HIT/HM)
前記数式1において、nIT、HITおよびHMはナノインデンタによりISO14577規格に基づいて測定され、
nITは弾性率(%)、HITはインデンテーション硬度(N/mm)、HMは複合硬度(N/mm)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、ポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド系重合体は、摩擦、熱、および化学的な抵抗力に優れ、1次電気絶縁材、コーティング剤、接着剤、押出用樹脂、耐熱塗料、耐熱板、耐熱接着剤、耐熱繊維、および耐熱フィルムなどに応用される。
【0003】
ポリアミドは、様々な分野で活用されている。例えば、ポリアミドは、粉末状に作られ金属または磁石ワイヤなどのコーティング剤として使用され、用途に応じて他の添加剤と混合して使用される。また、ポリアミドは、フッ素重合体とともに装飾や腐食防止のための塗料として使用され、フッ素重合体を金属基板に接着させる役割をする。また、ポリアミドは、厨房調理器具にコーティングをするためにも使用され、耐熱性と耐薬品性の特徴があって、ガス分離に使用するメンブレンとしても使用され、天然ガス油井において二酸化炭素、硫化水素および不純物のような汚染物をろ過する装置にも使用される。
【0004】
最近では、ポリアミドをフィルム化することにより、より安価でありながらも光学的、機械的、および熱的特性に優れたポリアミド系フィルムが開発されている。このようなポリアミド系フィルムは、有機発光ダイオード(OLED、organic light-emitting diode)または液晶ディスプレイ(LCD、liquid-crystal display)などのディスプレイ材料に適用可能であり、位相差物性の実現時に、反射防止フィルム、補償フィルム、または位相差フィルムに適用可能である。
【0005】
このようなポリアミド系フィルムをフォルダブルディスプレイ、フレキシブルディスプレイなどに適用する際には、透明性、無色性などの光学特性、および柔軟性、硬度などの機械的物性が求められる。しかし、一般的に光学特性と機械的物性とはトレードオフの関係にあり、機械的物性を向上させると、光学特性が低下され得る。
【0006】
したがって、機械的物性と光学特性とがともに向上されたポリアミド系フィルムに対する研究が持続的に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実現例は、光学特性および機械的特性に優れたポリアミド系フィルム、これを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置を提供することである。
【0008】
一実現例は、光学特性および機械的特性に優れたポリアミド系フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、下記数式1で表示される塑性特性値が18.45%~19.97%である。
[数1]
塑性特性値(%)=(100-nIT)/(HIT/HM)
【0010】
前記数式1において、nIT、HITおよびHMはナノインデンタによりISO14577規格に基づいて測定され、nITは弾性率(%)、HITはインデンテーション硬度(N/mm)、HMは複合硬度(N/mm)である。
【0011】
実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、下記数式2で表示される弾性特性値が67%~69.5%である。
[数2]
弾性特性値(%)=nIT/{EIT/(EIT+HIT)}
【0012】
前記数式2において、nIT、EITおよびHITは、ナノインデンタによりISO14577規格に基づいて測定され、nITは弾性率(%)、EITはインデンテーションモジュラス(GPa)、HITはインデンテーション硬度(N/mm)である。
【0013】
実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、下記数式3で表示される第2塑性特性値が384%~416%である。
[数3]
第2塑性特性値(%)=(1-nIT)/{HIT/(EIT+HIT)}
【0014】
前記数式3において、nIT、EITおよびHITは、ナノインデンタによりISO14577規格に基づいて測定され、nITは弾性率(%)、EITはインデンテーションモジュラス(GPa)、HITはインデンテーション硬度(N/mm)である。
【0015】
実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒上でジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合してポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階と、前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階と、を含む。
【0016】
実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムおよび機能層を含み、前記ポリアミド系フィルムは、前記数式1で表示される塑性特性値が18.45%~19.97%である。
【0017】
実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウはポリアミド系フィルムおよび機能層を含み、前記ポリアミド系フィルムは前記数式1で表示される塑性特性値が18.45%~19.97%である。
【発明の効果】
【0018】
実現例によるポリアミド系フィルムは、所定範囲の塑性特性値を有することにより、光学特性に優れるとともに、深部および表面の機械的物性がともに向上され得る。したがって、硬度、弾性および圧入に対する復元力に優れたポリアミド系フィルムが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な分解図である。
図2図2は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な斜視図である。
図3図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な断面図である。
図4図4は、一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法の概略的手順を示すフロー図である。
図5図5は、ポリアミド系フィルムの機械的物性を測定する際、ナノインデタに適用するチップ(tip)を示す概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実現例について添付の図面を参考にして詳細に説明する。しかし、実現例は様々な異なる形態で実現されてよく、本明細書で説明する実現例に限定されない。
【0021】
本明細書において、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などが、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものとして記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。また、明細書全体に亘って、同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0022】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0023】
本明細書において単数表現は、特別な説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味で解釈される。
【0024】
また、本明細書に記載されている構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特に記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0025】
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別するためにのみ用いられる。
【0026】
また、本明細書において「置換された」ということは、特に記載がない限り、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換の脂環式有機基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換されたことを意味し、前記列挙された置換基は互いに結合して環を形成し得る。
【0027】
[ポリアミド系フィルム]
実現例は、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性を有するのみならず、モジュラス、硬度、復元力などの機械的特性に優れたポリアミド系フィルムを提供する。
【0028】
一実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含む。
前記ポリアミド系フィルムは、下記数式1で表示される塑性特性値が18.45%~19.97%
[数1]
塑性特性値(%)=(100-nIT)/(HIT/HM)
【0029】
前記数式1において、nIT、HITおよびHMはナノインデンタによりISO14577規格に基づいて測定され、nITは弾性率(%)、HITはインデンテーション硬度(N/mm)、HMは複合硬度(N/mm)である。
【0030】
例えば、nIT(弾性率)は、ナノインデンタを介してフィルムを圧入し、圧入を解除しながら得られた力-圧入深さグラフにおいて、圧入時の仕事量および圧入解除時の仕事量の和に対する圧入解除時の仕事量の百分率と定義され得る。前記圧入解除時の仕事量は、圧入によって変形したフィルムが復元する仕事量と関連付けられ得る。そして、総変形による仕事量から復元時の仕事量を引いた部分が塑性仕事量と定義され、総変形による仕事量に対する塑性仕事量の百分率が塑性率と定義され得る。塑性率は、下記数式4で表示され得る。
[数4]
塑性率(%)=(総変形仕事量-復元仕事量)/(総変形仕事量)×100=100‐nIT
【0031】
HITは、フィルムの表面から数十nm~数百nmの深さに対する圧入硬度を示し得る。例えば、HITは、フィルムの弾性(elasticity)特性および塑性(plasticity)特性のうち、塑性特性と関連付けられ得る。
【0032】
HMはマルテンス硬度(Martens Hardness)であり、圧入に対する弾性および塑性の複合物性を示し得る。
【0033】
これにより、前記数式1の塑性特性値は、前記塑性率と、フィルム表面の塑性特性およびフィルム全体の弾性、並びに塑性複合物性の関係と定義され得る。前記塑性特性値が18.45%~19.97%に調整されると、ポリアミド系フィルムの光透過率、ヘイズ、黄色度などの光学特性と、柔軟性、圧入に対する抵抗性、圧入に対する復元性などの機械的物性とがともに改善され得る。
【0034】
一部の実現例において、前記塑性特性値は、18.45%~19.95%、18.45%~19.93%、18.5%~19.97%、18.5%~19.95%、18.5%~19.93%、18.7%~19.97%、18.7%~19.95%、18.7%~19.93%、19%~19.97%、19%~19.95%、または19%~19.93%であり得る。この場合、前記光学特性および機械的物性が向上され得る。
【0035】
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、下記数式2で表示される弾性特性値が67%~69.5%であり得る。
[数2]
弾性特性値(%)=nIT/{EIT/(EIT+HIT)}
【0036】
前記数式2において、nIT、EITおよびHITは、ナノインデンタによりISO14577規格に基づいて測定され、nITは弾性率(%)、EITはインデンテーションモジュラス(GPa)、HITはインデンテーション硬度(N/mm)である。
【0037】
EITは、フィルムの表面から数十nm~数百nmの深さに対する圧入モジュラスを示し得る。例えば、EITは、フィルムの弾性特性および塑性特性のうち、弾性特性と関連付けられ得る。
【0038】
これにより、前記数式2の弾性特性値は、フィルム表面の弾性および塑性成分と復元力との関係と定義され得る。前記弾性特性値が67%~69.5%に調整されると、ポリアミド系フィルムの光透過率、ヘイズ、黄色度などの光学特性と、柔軟性、圧入に対する抵抗性、圧入に対する復元性などの機械的物性とがともに改善され得る。
【0039】
好ましくは、前記弾性特性値は、67%~69%、67%~68.8%、67.5%~69.5%、67.5%~69%、67.5%~68.8%、68%~69.5%、68%~69%、68%~68.8%、68.2%~69.5%、68.2%~69%、または68.2%~68.8%であり得る。
【0040】
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、下記数式3で表示される第2塑性特性値が384%~416%である。
[数3]
第2塑性特性値(%)=(1‐nIT)/{HIT/(EIT+HIT)}
【0041】
前記数式3において、nIT、EITおよびHITは、ナノインデンタによりISO14577規格に基づいて測定され、nITは弾性率(%)、EITはインデンテーションモジュラス(GPa)、HITはインデンテーション硬度(N/mm)である。
【0042】
前記数式3の第2塑性特性値は、前記塑性率と、フィルム表面の弾性および塑性成分との関係と定義され得る。前記第2塑性特性値が384%~416%に調整されると、ポリアミド系フィルムの光透過率、ヘイズ、黄色度などの光学特性と、柔軟性、圧入に対する抵抗性、圧入に対する復元性などの機械的物性とがともに改善され得る。
【0043】
好ましくは、前記第2塑性特性値は、384%~412%、384%~410%、388%~416%、388%~412%、388%~410%、390%~416%、390%~412%、または390%~410%であり得る。
【0044】
実現例によるポリアミド系フィルムのx方向屈折率(n)は、1.60~1.70、1.61~1.69、1.62~1.68、1.64~1.68、1.64~1.66、または1.64~1.65であり得る。
【0045】
また、ポリアミド系フィルムのy方向屈折率(n)は、1.60~1.70、1.61~1.69、1.62~1.68、1.63~1.68、1.63~1.66、または1.63~1.64であり得る。
【0046】
さらに、ポリアミド系フィルムのz方向屈折率(n)は、1.50~1.60、1.51~1.59、1.52~1.58、1.53~1.58、1.54~1.58、または1.54~1.56であり得る。
【0047】
前記ポリアミド系フィルムのx方向屈折率、y方向屈折率およびz方向屈折率の値が前記範囲であると、前記フィルムをディスプレイ装置に適用する際、前からだけでなく横から見ても視認性に優れ、広い視野角を実現し得る。
【0048】
実現例によるポリアミド系フィルムの面内位相差(R)は、800nm以下であり得る。具体的に、前記ポリアミド系フィルムの面内位相差(R)は、700nm以下、600nm以下、550nm以下、100nm~800nm、200nm~800nm、200nm~700nm、300nm~700nm、300nm~600nm、または300nm~540nmであり得る。
【0049】
また、実現例によるポリアミド系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、5000nm以下であり得る。具体的に、前記ポリアミド系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、4800nm以下、4700nm以下、4650nm以下、1000nm~5000nm、1500nm~5000nm、2000nm~5000nm、2500nm~5000nm、3000nm~5000nm、3500nm~5000nm、4000nm~5000nm、3000nm~4800nm、3000nm~4700nm、4000nm~4700nm、または4200nm~4650nmであり得る。
【0050】
なお、前記面内位相差(in-plane retardation、R)は、フィルムの平面内の直交する2つの軸の屈折率の異方性(△nxy=|n-n|)とフィルム厚さ(d)との積(△nxy×d)で定義されるパラメータとして、光学的等方性または異方性を示す尺度である。
【0051】
また、厚さ方向位相差(thickness direction retardation、Rth)とは、フィルムの厚さ方向の断面から見たときの2つの複屈折である△nxz(=|n-n|)および△nyz(=|n-n|)にそれぞれフィルムの厚さ(d)を乗じて得られる位相差の平均と定義されるパラメータである。
【0052】
前記ポリアミド系フィルムの面内位相差および厚さ方向位相差の値が前記範囲であると、前記フィルムをディスプレイ装置に適用する際、光学歪みおよび色相歪みを最小化することができ、側面から光が漏れてくる光漏れ現象も最小化し得る。
【0053】
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体に加えて、フィラーをさらに含み得る。
【0054】
前記フィラーの平均粒径は60nm~180nmであり得る。具体的に、前記フィラーの平均粒径は、80nm~180nm、100nm~180nm、110nm~160nm、120nm~160nm、または130nm~150nmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0055】
前記フィラーの平均粒径が前記範囲であると、他の無機系フィラーと比較したとき、相対的に多い量を投入しても、光学特性の低下が発生しない。
【0056】
前記フィラーの屈折率は1.55~1.75であり得る。具体的に、前記フィラーの屈折率は、1.60~1.75、1.60~1.70、1.60~1.68、または1.62~1.65であり得るが、これに限定されるものではない。
【0057】
前記フィラーの屈折率が前記範囲を満足することにより、n、nおよびnに関する複屈折値が適切に調整され、フィルムの様々な角度における輝度が改善され得る。
【0058】
一方、前記フィラーの屈折率が前記範囲から外れると、フィルム上でフィラーの存在が目視されたり、フィラーに起因してヘイズが上昇したりする問題が発生し得る。
【0059】
前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~3000ppmであり得る。具体的に、前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~2500ppm、100ppm~2200ppm、200ppm~2500ppm、200ppm~2200ppm、250ppm~2100ppm、または300ppm~2000ppmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0060】
前記フィラーの含有量が前記範囲から外れると、フィルムのヘイズが急激に増加し、フィルム表面にフィラー同士の凝集現象が発生して異物感が目視されたり、生産工程において走行に問題が発生したり、巻脆性が低下し得る。
【0061】
前記フィラーは、例えば、シリカおよび硫酸バリウムを含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0062】
前記フィラーは、粒子状で含まれ得る。また、前記フィラーは、表面に特殊なコーティング処理がなされていない状態であり、フィルム全体にむらなく分散され得る。
【0063】
前記ポリアミド系フィルムが前記フィラーを含むことにより、前記フィルムは、光学特性の低下することなく、広い視野角を確保し得る。
【0064】
前記ポリアミド系フィルム内の残留溶媒含有量は、1500ppm以下であり得る。例えば、前記残留溶媒の含有量は、1200ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、500ppm以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0065】
前記残留溶媒は、フィルム製造時に揮発されず、最終的に製造されたフィルムに残っている溶媒の量のことを意味する。
【0066】
前記ポリアミド系フィルム内の残留溶媒の含有量が前記範囲を超えると、フィルムの耐久性が低下し、輝度にも影響を与え得る。
【0067】
実現例によるポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が3mmとなるようにフォルディングする際、破断するまでのフォルディング回数が20万回以上であり得る。
【0068】
前記フォルディング回数は、フィルムの曲率半径が3mmとなるように曲げて広げることを1回とする。
【0069】
前記ポリアミド系フィルムが、前述の範囲のフォルディング回数を満足することにより、フォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0070】
実現例によるポリアミド系フィルムの表面粗さは、0.01μm~0.07μmであり得る。具体的に、前記表面粗さは、0.01μm~0.07μmまたは0.01μm~0.06μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0071】
前記ポリアミド系フィルムの表面粗さが前記範囲を満足することにより、面光源の法線方向からの角度が大きくなる場合にも、高い輝度を実現するのに有利であり得る。
【0072】
一実現例によるポリアミド系フィルムはポリアミド系重合体を含み、前記ポリアミド系重合体はアミド繰り返し単位を含み、必要に応じてイミド繰り返し単位をも含み得る。
【0073】
一部の実現例において、前記ポリアミド系重合体は、アミド系繰り返し単位とイミド系繰り返し単位とを100:0~90:10のモル比で含み得る。この場合、ポリアミド系フィルムの柔軟性、機械的強度、圧入抵抗力/復元力などの機械的特性と、透明性、透過率、ヘイズなどの光学特性とがともに改善され得る。好ましくは、前記ポリアミド系重合体は、アミド系繰り返し単位とイミド系繰り返し単位とを99:1~97:3または99:1~95:5のモル比で含み得る。
【0074】
前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物およびジカルボニル化合物を含む反応物が同時または順次反応して形成され得る。具体的に、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とが重合して形成され得る。
【0075】
または、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して形成され得る。この際、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位とを含み得る。
【0076】
一実現例によるポリアミド系フィルムは、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とが重合されアミド結合を形成したポリアミド系重合体を含み得る。前記ポリアミド系重合体は、必要に応じてジアンヒドリド化合物がさらに重合されイミド結合を形成したポリアミド-イミド系重合体を含んでも良い。
【0077】
前記ジアミン化合物は、前記ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して共重合体を形成する化合物である。
【0078】
前記ジアミン化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアミン化合物であり得る。例えば、前記ジアミン化合物は、下記化学式1の化合物であり得る。
[化1]
【0079】
前記化学式1において、Eは、置換または非置換の2価のC-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC-C30アルキレン基、置換または非置換のC-C30アルケニレン基、置換または非置換のC-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-C(CH-、および-C(CF-の中から選択され得る。
【0080】
eは1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合、Eは互いに同一または異なり得る。
【0081】
前記化学式1の(E)は、下記化学式1-1a~1-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0082】
具体的に、前記化学式1の(E)は、下記化学式1-1b~1-13bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0083】
より具体的に、前記化学式1の(E)は、前記化学式1-6bで表される基または前記化学式1-9bで表される基であり得る。
【0084】
一実現例において、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物またはエーテル基(-O-)を有する化合物を含み得る。
【0085】
前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0086】
他の実現例において、前記ジアミン化合物は1種のジアミン化合物を使用し得る。すなわち、前記ジアミン化合物は単一成分からなり得る。
【0087】
例えば、前記ジアミン化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-Bis(trifluoromethyl)-4,4'-diaminodiphenyl、TFDB)を含み得るが、これに限定されるものではない。

【0088】
前記ジカルボニル化合物は特に制限されないが、例えば、下記化学式3の化合物であり得る。
[化3]

【0089】
前記化学式3において、Jは、置換または非置換の2価のC-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC-C30アルキレン基、置換または非置換のC-C30アルケニレン基、置換または非置換のC-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-C(CH-、および-C(CF-の中から選択され得る。
【0090】
jは1~5の整数の中から選択され、jが2以上の場合、Jは互いに同一または異なり得る。
Xはハロゲン原子である。具体的に、XはF、Cl、Br、I等であり得る。より具体的に、XはClであり得るが、これに限定されるものではない。
【0091】
前記化学式3の(J)は、下記化学式3-1a~3-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0092】
具体的に、前記化学式3の(J)は、下記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。

【0093】
より具体的に、前記化学式3の(J)は、前記化学式3-1bで表される基、前記化学式3-2bで表される基、3-3bで表される基、または3-8bで表される基であり得る。
【0094】
一実現例において、前記ジカルボニル化合物は、互いに異なる少なくとも2種のジカルボニル化合物を混合して使用し得る。前記ジカルボニル化合物が2種以上使用される場合、前記ジカルボニル化合物は、前記化学式3において(J)が前記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択される2種以上が使用され得る。
【0095】
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、芳香族構造を含む芳香族ジカルボニル化合物であり得る。
【0096】
前記ジカルボニル化合物は、下記のような構造を有するテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(1,1'-biphenyl-4,4'-dicarbonyl dichloride、BPDC)、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)、またはその組み合わせを含み得るが、これに限定されるものではない。好ましくは、TPCおよびIPCがともに使用され得る。
【0097】
一実現例において、前記ポリアミド系重合体は、2種以上のアミド系繰り返し単位を含み得る。
【0098】
例えば、前記2種以上のアミド系繰り返し単位は、第1アミド系繰り返し単位および第2アミド系繰り返し単位を含み得る。前記第1アミド系繰り返し単位は、第1ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応して形成され、前記第2アミド系繰り返し単位は、第2ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応して形成され得る。
【0099】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに異なる化合物であり得る。
【0100】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ2つのカルボニル基を含み得る。前記第1ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基間の角度は、前記第2ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基間の角度よりも大きくて良い。
【0101】
実施例において、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに構造異性体の関係であり得る。構造異性体の関係にある2種のジカルボニル化合物を用いることにより、前記数式1、数式2および/または数式3を満足するポリアミド系重合体およびフィルムを形成することができ、これにより、ポリアミド系重合体の光学特性および機械的特性を向上させ得る。
【0102】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ芳香族ジカルボニル化合物(aromatic dicarbonyl compound)であり得る。一部の実現例において、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ1個のベンゼン環(フェニル基)を有し得る。
【0103】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が互いに異なる芳香族ジカルボニル化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【0104】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物がそれぞれ芳香族ジカルボニル化合物の場合、ベンゼン環を含んでいるので、製造されたポリアミド系重合体を含むフィルムの表面硬度および引張強度のような機械的物性を向上させるのに寄与し得る。
【0105】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基の間角は160°~180°であり、前記第2ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基の間角は80°~140°であり得る。
【0106】
例えば、前記ジカルボニル化合物は、第1ジカルボニル化合物および/または第2ジカルボニル化合物を含み得る。
【0107】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物はTPCを含み、前記第2ジカルボニル化合物はIPCを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0108】
前記第1ジカルボニル化合物としてTPC、前記第2ジカルボニル化合物としてIPCを適切に組み合わせて使用すると、製造されたポリアミド系重合体を含むフィルムは、高い耐酸化性、生産性、透光率、透明度、硬度、モジュラスなどを有することができ、ヘイズが低く圧入に対する抵抗力および復元力に優れ得る。
【0109】
前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、下記化学式Bで表される繰り返し単位を形成し得る。
[化B]

前記化学式Bにおいて、E、J、e、およびjに関する説明は前述の通りである。
【0110】
例えば、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、化学式B-1およびB-2で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0111】
[化B-1]


前記化学式B-1のyは1~400の整数である。
【0112】
[化B-2]

前記化学式B-2のyは1~400の整数である。
【0113】
一部の実現例において、前記第1アミド系繰り返し単位と前記第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、25:75~75:25であり得る。前記第1および第2アミド系繰り返し単位のモル比を前述の範囲に設定することにより、ポリアミド系フィルムの前記塑性特性値および前記弾性特性値を前記数式1~3を満足する範囲で調整し得る。したがって、ポリアミド系フィルムのヘイズ、透光率、黄色度、モジュラス、硬度、および復元力を改善させ得る。好ましくは、前記第1アミド系繰り返し単位と前記第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、30:70~75:25、35:65~75:25、または40:60~75:25であり得る。
【0114】
前記ジアンヒドリド化合物は、特に制限されないが、環状ジアンヒドリド化合物を含み得る。例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、ポリアミド系樹脂の複屈折特性を減少させ、ポリアミド系フィルムの透過度などの光学特性を向上させ得る。
【0115】
一部の実現例において、前記環状ジアンヒドリド化合物は、脂環式ジアンヒドリド化合物または芳香族ジアンヒドリド化合物を含み得る。
【0116】
前記脂環式ジアンヒドリド化合物は、脂環式環構造に2個のアンヒドリド基が置換された化合物を含み得る。前記脂環式環構造は、4個~12個の炭素を含み、全体的に飽和されるか、または部分的に不飽和となり得る。前記脂環式ジアンヒドリド化合物は、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(1,2,3,4-Cyclobutanetetracarboxylic dianhydride:CBDA)を含み得る。
【0117】
前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、炭素数6~30の芳香族環に2個のアンヒドリド基が置換された化合物を含み得る。前記芳香族環は、ベンゼン、ナフタレンなどの縮合環またはビフェニルなどの連結環を含み得る。例えば、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-Biphenyltetracarboxylic dianhydride:BPDA)を含み得る。
【0118】
前記ジアンヒドリド化合物の前記2個のアンヒドリド基は、環状炭化水素基に直接置換されてもよく、前記脂環式または前記芳香族環において互いに対称となる位置に置換され得る。これにより、ポリアミド系フィルムの硬度および圧入の復元力が向上され得る。
【0119】
一実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を含まなくてもよい。例えば、前記ジアンヒドリド化合物がフッ素基を含む場合、フィルムの塑性(plasticity)成分が過剰に増加することがあり、これにより、柔軟性および圧入に対する復元力が低下し得る。
【0120】
例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2で表される化合物を含み得る。
[化2]

【0121】
前記化学式2において、Gは置換または非置換の4価のC-C12脂環式基、置換または非置換の4価のC-C12ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC-C30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合され縮合環を形成するか、-O-、-S-、-C(=O)-、および-S(=O)-の中から選択された連結基によって連結され得る。
【0122】
前記化学式2におけるGは、下記化学式2-1a~2-9aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。

【0123】
例えば、前記化学式2におけるGは、前記化学式2-1aで表される基または前記化学式2-5aで表される基であり得る。
【0124】
前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とは、重合してアミド酸(amic acid)基を形成し得る。
【0125】
次いで、前記アミド酸基は、脱水反応によりイミド基に転換され得、この場合、ポリイミドセグメント(segment)およびポリアミドセグメントを含むポリアミド-イミド系重合体が形成され得る。
【0126】
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に厚さ偏差が4μm以下であり得る。前記厚さ偏差は、前記フィルムの任意の(random)の位置の10個のポイントを測定した厚さの平均に対する最大値または最小値間の偏差のことを意味し得る。この場合、前記ポリアミド系フィルムは、均一な厚さを有し、各ポイントにおける光学特性および機械的特性が均一に表れ得る。
【0127】
前記ポリアミド系フィルムのヘイズが1%以下であり得る。例えば、前記ヘイズは0.7%以下または0.5%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0128】
前記ポリアミド系フィルムの透過度は80%以上であり得る。例えば、前記透過度は、82%以上、85%以上、88%以上、89%以上、80%~99%、88%~99%、または89%~99%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0129】
前記ポリアミド系フィルムの黄色度(yellow index)は3以下であり得る。例えば、前記黄色度が2.8以下または2.5以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0130】
前記ポリアミド系フィルムのモジュラスが6GPa以上であり得る。具体的に、前記モジュラスは、6.3GPa以上または6.5GPa以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0131】
前記ポリアミド系フィルムの圧縮強度は、0.4kgf/μm以上であり得る。具体的に、前記圧縮強度は、0.45kgf/μm以上または0.46kgf/μm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0132】
前記ポリアミド系フィルムをUTM圧縮モードで2.5mm球状のチップを用いて、10mm/minの速度で穿孔する際、クラックを含む穿孔最大径(mm)が60mm以下である。具体的に、前記穿孔最大径が、5mm~60mm、10mm~60mm、15mm~60mm、20mm~60mm、25mm~60mm、または25mm~58mmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0133】
前記ポリアミド系フィルムは、表面硬度がHB以上であり得る。具体的に、前記表面硬度がH以上または2H以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0134】
前記ポリアミド系フィルムは、引張強度が15kgf/mm以上であり得る。具体的に、前記引張強度が、18kgf/mm以上、20kgf/mm以上、21kgf/mm以上、または22kgf/mm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0135】
前記ポリアミド系フィルムは、伸び率が15%以上であり得る。具体的に、前記伸び率が、16%以上、17%以上、または17.5%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0136】
実現例によるポリアミド系フィルムは、低いヘイズ、低い黄色度、高い透過度などの優れた光学物性のみならず、モジュラス、硬度、弾性率などの優れた機械的物性を有し得る。
【0137】
前述の前記ポリアミド系フィルムの各物性は、40μm~60μmの厚さを基準とする。例えば、前記ポリアミド系フィルムの各物性は、50μmの厚さを基準とする。
【0138】
前述のポリアミド系フィルムの構成成分および物性に関する特徴は、互いに組み合わされ得る。
【0139】
例えば、前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、透過度が80%以上であり、ヘイズが1%以下であり、黄色度が3以下であり得る。
【0140】
また、前記ポリアミド系フィルムの前述した数式1~3の塑性特性値および弾性特性値は、前記ポリアミド系フィルムをなす成分の化学的、物理的な物性とともに、後述する前記ポリアミド系フィルムの製造方法において各段階の工程条件が総合されて調整され得る。
【0141】
例えば、ポリアミド系フィルムをなす成分の組成と含有量、フィルム製造工程における重合条件および熱処理条件などと、すべてのものが総合され、目的とする範囲の塑性特性値および/または弾性特性値を実現し得る
【0142】
[ディスプレイ装置用カバーウィンドウ]
一実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムおよび機能層を含む。
【0143】
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、前記数式1で表示される塑性特性値が18.45%~19.97%である。
【0144】
前記ポリアミド系フィルムに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0145】
前記ディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0146】
前記ポリアミド系フィルムは、前述の範囲の塑性特性値および/または弾性特性値を有することにより、優れた光学特性および機械的特性を有し得る。
【0147】
[ディスプレイ装置]
一実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウがポリアミド系フィルムおよび機能層を含む。
【0148】
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、前記数式1で表示される塑性特性値が18.45%~19.97%である。
【0149】
前記ポリアミド系フィルムおよびカバーウィンドウに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0150】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的分解図である。図2は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的斜視図である。図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的断面図である。
具体的に、図1図3には、表示部400と、前記表示部400上に第1面101および第2面102を有するポリアミド系フィルム100と機能層200とを含むカバーウィンドウ300とが配置され、前記表示部400とカバーウィンドウ300との間に接着層500が配置されたディスプレイ装置が例示されている。
【0151】
前記表示部400は、画像が表示され得るものであり、フレキシブル(flexible)な特性を有し得る。
【0152】
前記表示部400は、画像を表示するための表示パネルであり得るが、例えば、液晶表示パネルまたは有機電界発光表示パネルであり得る。前記有機電界発光表示パネルは、前面偏光板および有機ELパネルを含み得る。
【0153】
前記前面偏光板は、前記有機ELパネルの前面上に配置され得る。具体的に、前記前面偏光板は、前記有機ELパネルにおいて、画像が表示される面に接着され得る。
【0154】
前記有機ELパネルは、ピクセル単位の自己発光によって画像を表示し得る。前記有機ELパネルは、有機EL基板および駆動基板を含み得る。前記有機EL基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機電界発光ユニットを含み得る。具体的に、それぞれ陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、および陽極を含み得る。前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動的に接続され得る。すなわち、前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動電流などの駆動信号を印加し得るように接続されることにより、前記有機電界発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機EL基板を駆動し得る。
【0155】
また、前記表示部400および前記カバーウィンドウ300の間に接着層500が含まれ得る。前記接着層は、光学的に透明な接着層であってよく、特に限定されない。
【0156】
前記カバーウィンドウ300は、前記表示部400上に配置され得る。前記カバーウィンドウは、実施例によるディスプレイ装置の最外郭に位置して、前記表示部を保護し得る。
【0157】
前記カバーウィンドウ300は、ポリアミド系フィルムおよび機能層を含み得る。前記機能層は、ハードコーティング層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。前記機能層は、前記ポリアミド系フィルムの少なくとも一面にコーティングされ得る。
【0158】
実現例によるポリアミド系フィルムの場合、ディスプレイ駆動方式やパネル内部のカラーフィルター、積層構造などの変更もなく簡単にディスプレイ装置の外部にフィルム状で適用して、均一な厚さ、低ヘイズ、高透光率、高透明性を有するディスプレイ装置を提供することができるため、過度の工程変更やコスト増加を必要としないので、生産コストを削減できるという利点もある。
【0159】
実現例によるポリアミド系フィルムは、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性を有するのみならず、優れた硬度、モジュラス、弾性率などの機械的特性を有し得る。
【0160】
また、実現例によるポリアミド系フィルムは、特定レベル以下の面内位相差および厚さ方向位相差を有することにより、光学歪みを最小化することができ、側面から光が漏れてくる光漏れ現象をも減少させ得る。
【0161】
前述の範囲の塑性特性値および/または弾性特性値を有するポリアミド系フィルムの場合、高い柔軟性だけでなく、優れた圧入抵抗力および復元力を有し得る。したがって、手またはスタイラスペン(Stylus pen)などによって持続的に圧力が加わるタッチ型ディスプレイ装置のカバーウィンドウに適用した場合、優れた耐久性および寿命を有し得る。
【0162】
[ポリアミド系フィルムの製造方法]
一実現例は、ポリアミド系フィルムの製造方法を提供する。
【0163】
一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合して、有機溶媒中でポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階と、前記重合体溶液をキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む。
【0164】
図4を参照すると、一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒中でジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合して、ポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階(S100)と、前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階(S200)と、前記ゲルシートを熱処理する段階(S300)とを含む。
【0165】
一部の実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、前記ポリアミド重合体溶液の粘度を調整する段階(S110)、前記ポリアミド重合体を熟成させる段階(S120)および/または前記ポリアミド重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。
【0166】
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体が主成分であるフィルムであって、前記ポリアミド系重合体は、構造単位としてアミド繰り返し単位を含む樹脂である。選択的に、前記ポリアミド系重合体は、イミド繰り返し単位を含んでも良い。
【0167】
前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、前記ポリアミド系重合体を調製するための重合体溶液は、反応器内で有機溶媒中にジアミン化合物およびジカルボニル化合物を同時または順次混合し、前記混合物を反応させて調製され得る(S100)。
【0168】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを混合および反応させてポリアミド(PA)溶液を調製する段階を含み得る。前記ポリアミド溶液は、アミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0169】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記ジカルボニル化合物として、互いに異なる2種のジカルボニル化合物を用いて行われ得る。この場合、前記2種のジカルボニル化合物は、同時または順次混合および反応され得る。好ましくは、第1ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応してプレポリマーが形成され、前記プレポリマーと第2ジカルボニル化合物とが反応して、前記ポリアミド系重合体が形成され得る。この場合、ポリアミド系重合体の前記塑性特性値および/または前記弾性特性値を容易に調整し得る。
【0170】
前記重合体溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来のアミド繰り返し単位を含む。
前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物に関する説明は前述の通りである。
【0171】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階以降、前記重合体溶液の粘度を調整する段階(S110)をさらに含み得る。前記重合体溶液の粘度は、常温基準200000cps~350000cpsに調整され得る。この場合、ポリアミド系フィルムの製膜性を向上させることにより、厚さ均一度を向上させ得る。
【0172】
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、有機溶媒中にジアミン化合物とジカルボニル化合物とを同時または順次混合および反応させて、第1重合体溶液を調製する段階と、前記ジカルボニル化合物を追加投入して目標粘度を有する第2重合体溶液を調製する段階とを含み得る。
【0173】
前記第1重合体溶液を調製する段階および第2重合体溶液を調製する段階の場合、調製された重合体溶液の粘度が異なり得る。例えば、前記第1重合体溶液よりも前記第2重合体溶液の粘度がより高くても良い。
【0174】
前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度と、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度とが異なり得る。例えば、前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度が、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度より速くても良い。
【0175】
一部の実現例において、前記第1重合体溶液を調製する際、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が順次前記ジアミン化合物と反応し得る。この場合、粘度10000cps~150000cpsの第1重合体溶液が形成され得る。好ましくは、前記第1重合体溶液の粘度は、10000cps~100000cps、10000cps~80000cps、10000cps~60000cps、20000cps~150000cps、20000cps~100000cps、20000cps~80000cps、20000cps~60000cps、40000cps~150000cps、40000cps~100000cps、40000cps~80000cps、または40000cps~60000cpsであり得る。
【0176】
前記第1重合体溶液に前記第2ジカルボニル化合物がさらに反応して、粘度200000cps~350000cpsの第2重合体溶液を形成し得る。例えば、前記第2ジカルボニル化合物が追加反応する段階が前記粘度調整段階として提供され得る。
【0177】
ポリアミド系重合体溶液の粘度が、前記第1重合体溶液および前記第2重合体溶液を経て調整されることにより、目的とする範囲の塑性特性値および弾性特性値が効果的に実現され得る。
【0178】
例えば、重合体溶液の粘度、塑性特性値および弾性特性値は、前記第1ジカルボニル化合物と第2ジカルボニル化合物との投入順序および投入量を制御することによって調整され得る。
【0179】
前記重合体溶液を調製するために用いられる前記第1ジカルボニル化合物と前記第2ジカルボニル化合物とのモル比は25:75~75:25であり、好ましくは、30:70~75:25、35:65~75:25または40:60~75:25であり得る。
【0180】
前記第1ジカルボニル化合物と前記第2ジカルボニル化合物がこのような割合で用いられることにより、前記塑性特性値および/または前記弾性特性値が前述の範囲にあるポリアミド系重合体を調製することができ、ポリアミド系フィルムのモジュラス、ヘイズ、透光度、黄色度などを改善し得る。
【0181】
一部の実現例において、前記重合体溶液(第1重合体溶液)を調製する際、ジアンヒドリド化合物をジアミン化合物と反応させてポリアミック酸またはポリイミドを形成した後、前記ポリアミック酸またはポリイミドを前記ジカルボニル化合物と反応させてポリアミド-イミドを含む重合体溶液を形成し得る。この際、前述のジアンヒドリド化合物が使用され、その使用量はジカルボニル化合物およびジアンヒドリド化合物の総量に対して1モル%~10モル%、好ましくは1モル%~3モル%または1モル%~5モル%であり得る。これにより、重合体溶液、第1重合体溶液および第2重合体溶液の粘度を目的とする範囲に調整することができ、目的とする塑性特性値および/または弾性特性値を有するポリアミド系フィルムを製造し得る。
【0182】
一実現例において、前記溶媒、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物の混合および反応は、-20℃~25℃の温度条件にて行われ得る。前記温度範囲から外れると、重合核の形成が少な過ぎるか多すぎて、目的とする塑性特性および弾性特性を有するポリアミド系重合体またはフィルムの製造が難しくなり得る。したがって、ポリアミド系フィルムの機械的特性および光学特性が低下し得る。また、前記重合体溶液の粘度が所定の範囲に未達となり得る。好ましくは、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物の混合および反応は、-20~20℃、-20~15℃、-20~10℃、-15~20℃、-15~15℃、-15~10℃、-10~20℃、-10~15℃、-10~10℃、-8~20℃、-8~15℃、-8~10℃、-5~20℃、-5~15℃、または-5~10℃の温度条件にて行われ得る。
【0183】
一実現例において、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との混合および反応は、0℃~50℃の温度条件にて行われ得る。前記温度範囲から外れると、重合核の形成が少なすぎるかまたは多すぎるため、目的とする塑性特性および弾性特性を有するポリアミド系重合体またはフィルムの製造が難しくなり得る。したがって、ポリアミド系フィルムの機械的特性および光学特性が低下し得る。また、前記重合体溶液の粘度が所定範囲に未達となり得る。好ましくは、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との混合および反応は、0℃~45℃、0℃~40℃、10℃~50℃、10℃~45℃、10℃~40℃、20℃~50℃、20℃~45℃、または20℃~40℃の温度条件にて行われ得る。
【0184】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は10重量%~30重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0185】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、キャスティング工程において、効果的にポリアミド系フィルムが製造され得る。また、製造されたポリアミド系フィルムは、向上されたモジュラスなどの機械的物性および低い黄色度などの光学物性を有し得る。
【0186】
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液のpHを調整する段階をさらに含み得る。この段階において、前記重合体溶液のpHは4~7に調整され、例えば、4.5~7に調整され得る。
【0187】
前記重合体溶液のpHは、pH調整剤を添加することにより調整され、前記pH調整剤は特に制限されないが、例えば、アルコキシアミン、アルキルアミンまたはアルカノールアミンなどのアミン系化合物を含み得る。
【0188】
前記重合体溶液のpHを前述の範囲で調整することにより、前記重合体溶液から製造されたフィルムの欠陥発生を阻止し、黄色度およびモジュラスの面で目的とする光学物性および機械的物性を実現し得る。
【0189】
前記pH調整剤は、前記重合体溶液内の単量体の総モル数を基準に、0.1モル%~10モル%の量で添加され得る。
【0190】
一実現例において、前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、およびクロロホルムからなる群より選択された1種以上であり得る。前記重合体溶液に用いられる有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0191】
前記重合体溶液は、-20℃~20℃、-20℃~10℃、-20℃~5℃、-20℃~0℃、または0℃~10℃にて保管され得る。
【0192】
前記温度で保管すると、前記重合体溶液の変質を防止することができ、含水率を低下させ、これにより製造されたフィルムの欠陥(defect)を防止し得る。
【0193】
一部の実現例において、前記重合体溶液または前記粘度調整された重合体溶液を熟成させ得る(S120)。
【0194】
前記熟成は、前記重合体溶液を、24時間以上、-10℃~10℃の温度条件に静置して行われ得る。この場合、前記重合体溶液に含まれているポリアミド系重合体または未反応物が、例えば、反応を仕上げたり、化学平衡をなしたりすることによって、前記重合体溶液が均質化され、これにより形成されたポリアミド系フィルムの機械的特性、光学特性および表面エネルギー特性がフィルムの全面積に対して実質的に均一となり得る。好ましくは、前記熟成は-5~10℃、-5~5℃または-3~5℃の温度条件にて行われ得る。
【0195】
一実現例において、前記ポリアミド系重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。前記脱気により前記重合体溶液中の水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、最終フィルムの優れた表面外観および機械的物性などを実現し得る。
【0196】
前記脱気は、真空脱泡または不活性ガスパージを含み得る。
前記真空脱泡は、前記重合体溶液が収容された反応器を0.1bar~0.7barに減圧した後、30分~3時間行われ得る。このような条件にて真空脱泡を行うことにより、前記重合体溶液内の気泡を低減させることができ、その結果、それにより製造されたフィルムの表面欠陥を防止し、ヘイズなどの優れた光学物性を実現し得る。
【0197】
具体的に、前記パージは、不活性ガスを用いて前記タンクの内部圧力を1気圧~2気圧でパージする方法により行われ得る。このような条件で前記パージを実施することにより、前記重合体溶液内部の水分を除去し、不純物を減少させることによって、反応収率を増加させることができ、ヘイズなどの優れた光学物性および優れた機械的物性などを実現し得る。
【0198】
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
【0199】
前記真空脱泡および前記不活性ガスパージは、別の工程で行われ得る。
【0200】
例えば、真空脱泡する工程が行われ、それ以降に不活性ガスでパージする工程が行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0201】
前記真空脱泡および/または前記不活性ガスパージを行うことにより、製造されたポリアミド系フィルム表面の物性が向上され得る。
【0202】
前述のように、有機溶媒中でポリアミド系重合体を含む溶液を調製した後、前記溶液にフィラーを投入しても良い。
【0203】
前記フィラーの平均粒径は60nm~180nmであり、屈折率は1.55~1.75であり、含有量はポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~3000ppmである。また、前記フィラーは、シリカまたは硫酸バリウムであり得る。
前記フィラーに関するさらに具体的な説明は、前述の通りである。
【0204】
前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造し得る(S200)。
例えば、前記重合体溶液を支持体上で塗布、押出および/または乾燥してゲルシートを形成し得る。
【0205】
また、前記重合体溶液のキャスティング厚は200μm~700μmであり得る。前記重合体溶液が前記厚さ範囲にキャスティングされることにより、乾燥および熱処理を経て最終フィルムとして製造されたとき、適切な厚さと厚さ均一度とを確保し得る。
【0206】
前記重合体溶液は前述のように、常温にて200000cps~350000cpsであり得る。前記粘度範囲を満足することにより、前記重合体溶液がキャスティングされる際に欠陥なく均一な厚さにキャスティングされ、乾燥過程において局所的/部分的な厚さ変化もなく、実質的に均一な厚さのポリアミドフィルムを形成し得る。また、前述の塑性特性および弾性特性を有するフィルムが製造され得る。
【0207】
前記重合体溶液をキャスティングした後、60℃~150℃の温度にて5分~60分間乾燥してゲルシートを製造し得る。具体的に、前記重合体溶液を70℃~90℃の温度にて15分~40分間乾燥してゲルシートを製造し得る
【0208】
前記乾燥中に前記重合体溶液の溶媒が一部または全部揮発され、前記ゲルシートが製造され得る。
【0209】
乾燥されたゲルシートは、熱処理されてポリアミド系フィルムを形成し得る(S300)。
前記ゲルシートの熱処理は、例えば、熱硬化装置により行われ得る。
【0210】
前記熱硬化装置は、熱風により前記ゲルシートを熱処理し得る。
熱風による熱処理を行うと、熱量が均等に付与され得る。もし、熱量が均等に分布されないと、満足のいく表面粗さが実現できず、そうすると、表面エネルギーが上昇し過ぎたり、低下し過ぎたりし得る。
【0211】
前記ゲルシートの熱処理は、60℃~500℃の範囲で5分~200分間行われ得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、80℃~300℃の範囲で1.5℃/分~20℃/分の速度で昇温させながら10分~150分間行われ得る。
【0212】
この際、前記ゲルシートの熱処理開始温度は60℃以上であり得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理開始温度は80℃~180℃であり得る。
【0213】
また、熱処理中の最高温度は300℃~500℃であり得る。例えば、前記熱処理中の最高温度は、350℃~500℃、380℃~500℃、400℃~500℃、410℃~480℃、410℃~470℃、または410℃~450℃であり得る。
【0214】
一実現例によると、前記ゲルシートの熱処理は2段階以上で行われ得る。
具体的に、前記熱処理は、60℃~120℃の範囲で5分~30分間行われる第1熱風処理段階と、120℃~350℃の範囲で10分~120分間行われる第2熱風処理段階とを含み得る。
【0215】
このような条件にて熱処理することにより、前記ゲルシートが適切な表面硬度とモジュラスおよび表面エネルギーを有するように硬化され、前記硬化フィルムが高い光透過率および低いヘイズ、適正なレベルの光沢度を同時に確保し得る。
【0216】
一実現例によると、前記熱処理はIRヒーターを通過させる段階を含み得る。前記IRヒーターによる熱処理は、300℃以上の温度範囲で1分~30分間行われ得る。具体的に、前記IRヒーターによる熱処理は、300℃~500℃の温度範囲で1分~20分間行われ得る。
【0217】
前記ポリアミド系フィルムは、前述の製造方法によって製造されることにより、前述の数式1、2および/または3を満足することができ、光学的、機械的に優れた物性を示し得る。
【0218】
このような前記ポリアミド系フィルムは、柔軟性、透明性、特定レベルの輝度が求められる様々な用途に適用可能である。例えば、前記ポリアミド系フィルムは、太陽電池、ディスプレイ、半導体素子、センサーなどに適用され得る。
【0219】
特に、前記ポリアミド系フィルムは、優れた厚さ均一度および光学特性を有するので、ディスプレイ装置用カバーウィンドウおよびディスプレイ装置に有用に適用され、フォルディング特性に優れてフォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置にも有用に適用され得る。
【0220】
前記で述べた製造方法により製造されたポリアミド系フィルムに関する説明は、前述の通りである。
【0221】
(実施例)
前記の内容を下記実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は、本発明を例示するものであるのみ、実施例の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0222】
(実施例および比較例)
温度調整が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、10℃の窒素雰囲気下で、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)675gを満たした後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)64.0g(0.200mol)を徐々に投入しながら溶解させた。
【0223】
次いで、反応器内部の温度を30℃に上げ、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)1.77g(0.006mol)をゆっくり投入しながら反応溶液を2時間撹拌した。
【0224】
反応器の温度を10℃に下げ、テレフタロイルクロリド(TPC)30.37g(0.15mоl)をゆっくり投入しながら1時間撹拌した。そして、イソフタロイルクロリド(IPC)9.13g(0.05mol;全投入量に対して94mol%)を投入した後、1時間撹拌して第1重合体溶液を調製した。調製した第1重合体溶液の粘度は約50000cpsであった。
【0225】
そして、濃度10重量%のIPC溶液(DMAc溶媒)を1mL添加した後、30分間撹拌させる過程を繰り返して、粘度300000cpsの第2重合体溶液を調製した。
【0226】
前記第2重合体溶液を約0℃にて約一日放置した後、ガラス板に塗布して100℃の熱風で30分乾燥した。乾燥されたポリアミド重合体をガラス板から剥離し、ピンフレームに固定して80℃~300℃の温度範囲で2℃/分の速度で昇温しながら熱処理して、厚さ50μmのポリアミド系フィルムを得た。
【0227】
下記表1に、ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物の投入手順および投入量を記載した。投入手順は、最初に投入された種から、表1の上から下の方に記載しており、投入量はジアミン化合物100モル基準のモル数として記載した。
【0228】
実施例2においては、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)の代わりにブタン-1,2,3,4-テトラ無水物1.18g(0.006mol)が用いられ、比較例の場合は、下記表1に記載のように重合体の組成を異にして調製された。
【0229】
<評価例>
前記実施例および比較例において製造されたフィルムについて、下記のように物性を測定および評価し、その結果を下記表1に示した。
【0230】
(評価例1:モジュラス測定)
インストロン社の万能試験機UTM5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交した方向に10cm以上、および主収縮方向に10mmで切り、10cm間隔のクリップに装着した後、常温にて破断が起きるまで12.5mm/分の速度で伸しながら応力-ひずみ曲線(stress-strain curve)を得た。前記応力-ひずみ曲線において初期変形に対する荷重の傾きをモジュラス(GPa)とした。
【0231】
(評価例2:透過度およびヘイズ測定)
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを用いて、JIS K 7136規格に基づいて光透過度およびヘイズを測定した。
【0232】
(評価例3:黄色度測定)
黄色度(YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)によりd65、10°の条件で、ASTM-E313規格により測定した。
【0233】
(評価例4:機械的物性評価)
FISCHER社のFISCHERSCOPE HM2000を用いて、フィルムサンプルの複合硬度(Martens Hardness)、圧入硬度(Vickers Hardness)、インデンテーション硬度、インデンテーションモジュラス、弾性率、およびクリープ率を測定した。測定は、ISO14577-1:2015および14577-2:2015に準じて行われた。具体的に、図5に示す形状を有するダイヤモンドチップにより、フィルムを常温にて30mNの圧力で20秒間下方に押圧した後、5秒間維持(creep)し、再び上方に上昇させながら行われた。
【0234】
図5に示すナノインデンタチップは、変形されたビッカース(Vickers)インデンタであり得る。具体的に、底面が正方形であり、傾斜面の四隅が一点で会うピラミッド状を有するビッカースインデンタにおいて、底面が一辺に平行な方向(長手方向)に延びて幅方向に対向する2つの傾斜面と、長手方向に対向する傾斜面とのうち一傾斜面が会う一頂点と、前記幅方向に対向する2つの傾斜面と長手方向の残りの傾斜面が会う他頂点とが、0.5μm離隔(L)されたものであり得る。また、前記インデンタの先端部(試料接触部)が、曲率半径(R)0.2μm以下となるようにラウンド処理されたものであり得る。
【0235】
【表1】
【0236】
表1を参照すると、実現例による第1塑性特性値、第2塑性特性値および/または弾性特性値を有するフィルムの場合、圧入に対する抵抗力(硬度)、復元力(弾性率)、引張モジュラスなどの機械的特性が向上するとともに、優れた透過率、ヘイズ、黄色度などの光学特性を有することが確認された。
【符号の説明】
【0237】
100:ポリアミド系フィルム
101:第1面
102:第2面
200:機能層
300:カバーウィンドウ
400:表示部
500:接着層
図1
図2
図3
図4
図5