IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マニュファクチュール・ドルロジュリ・オードマ・ピゲ・ソシエテ・アノニムの特許一覧

特開2022-138138モアレ効果を利用した表示部を搭載した時計
<>
  • 特開-モアレ効果を利用した表示部を搭載した時計 図1
  • 特開-モアレ効果を利用した表示部を搭載した時計 図2
  • 特開-モアレ効果を利用した表示部を搭載した時計 図3
  • 特開-モアレ効果を利用した表示部を搭載した時計 図4
  • 特開-モアレ効果を利用した表示部を搭載した時計 図5
  • 特開-モアレ効果を利用した表示部を搭載した時計 図6
  • 特開-モアレ効果を利用した表示部を搭載した時計 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138138
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】モアレ効果を利用した表示部を搭載した時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 45/00 20060101AFI20220914BHJP
   G04B 19/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
G04B45/00 A
G04B19/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033291
(22)【出願日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】00253/21
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(71)【出願人】
【識別番号】520110814
【氏名又は名称】マニュファクチュール・ドルロジュリ・オーデマ・ピゲ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・マルテル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】モアレ効果を利用して、クロノグラフやカウントダウンの複雑機構の作動又は停止を一目で判断できて、時刻情報を読み取れる時計を提供する。
【解決手段】表示部は、時間情報の指標を備えた可動ディスクを備え、可動ディスクと固定体10の一方は、360°にわたって配置された複数の開口部26を備え、可動ディスク及び固定体10の一方は、第1視覚的外観を持つ第1パターンセット27と、第2視覚的外観を持つ第2パターンセット28とを備える複数パターンの繰り返しを有するマーキングを備え、第1視覚的外観を持つパターンは、第2視覚的外観を持つパターンと360°にわたって交互に配置され、複数の開口部26は、可動ディスクを回転させたときにモアレ効果が得られるように、マーキングの複数パターンを徐々に隠す複数の部分30によって互いに分離されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロノグラフ又はカウントダウンタイプの複雑機構と、
固定体(10)と、
クロノグラフ又はカウントダウンに関連する時刻情報を表示するモアレ効果を持つ表示部(20)であって、時間情報の指標(24)を持つ可動ディスク(22)を備えた前記表示部と
を含む時計のムーブメントを備えた、時計であって、
可動ディスク(22)は、一方で前記時計のムーブメントと係合して軸(23)に接続されていて、他方で固定体(10)の上又は下で回転するように配置されていて、
可動ディスク(22)及び固定体(10)の一方は、360°にわたって配置された複数の開口部(26)を備えていて、
可動ディスク(22)及び固定体(10)の他方は、
第1視覚的外観を持つ第1パターンセット(27)と、
第2視覚的外観を持つ第2パターンセット(28)と、
を備える複数のパターンの繰り返しを伴うマーキングを備えていて、
可動ディスク(22)が回転されるときにモアレ効果を作り出す前記マーキングの前記複数のパターンを徐々に隠すことが意図されている複数の部分(30)によって、前記複数の開口部(26)が互いに分離されている、前記時計。
【請求項2】
表示部は、クロノグラフ又はカウントダウンの計時装置(20)であり、計時装置(20)は、回転軸が計時装置(20)の中心軸と同軸である可動ディスク(22)を備えていて、
時間情報の前記指標が、可動ディスク(22)上に配置された区間(24)の形態、あるいは可動ディスク(22)の軸(23)に取り付けられた時計の針の形態であることで、計時装置(20)が時間情報を示せる、請求項1に記載の時計。
【請求項3】
計時装置(20)は秒の計時装置であり、可動ディスク(20)は、毎分1回転の速度で駆動される時計のムーブメントと係合しているので前記指標(24)は秒を示す、請求項2に記載の時計。
【請求項4】
固定体(10)は、文字盤に取り付けられていて、前記マーキングを持つ第1環状帯(32)を備えていて、
可動ディスク(22)は、固定体の上に配置されていて、360°に配置された開口部(26)を持つ第2環状帯(34)を備えている、請求項2に記載の時計。
【請求項5】
前記開口部(26)間の間隔幅は、同じ視覚的外観のパターン間の角度ピッチより小さいので、モアレ効果は、可動ディスク(22)の回転方向に発生する、請求項4に記載の時計。
【請求項6】
前記開口部(26)間の間隔幅は、同じ視覚的外観のパターン間の角度ピッチより大きいので、モアレ効果は、可動ディスク(22)の回転方向に発生する、請求項4に記載の時計。
【請求項7】
開口部の数(N)は30に等しく、可動ディスク(22)は60秒で1回転するように配置されているため、前記ムーブメントの複雑機構が動いているとき、モアレ効果により可動ディスク(22)が2秒で1回転するような錯覚を呈する、請求項5に記載の時計。
【請求項8】
計時装置(20)は、前記マーキングを備える第1環状領域(36)を有し、第1環状領域(36)は、可動ディスク(22)の一部であり、前記可動ディスクは、固定体(10)の下に配置されていて、
固定体(10)は、第1の環状領域(36)に重ね合わされた第2環状領域(38)を有し、第2の環状領域(38)は、360°にわたって配置された前記複数の開口部を持つ、請求項2に記載の時計。
【請求項9】
第2環状領域は、N個の開口(26)を備え、前記マーキングは、同じ視覚的態様のN-1個のパターンを備えている請求項8に記載の時計。
【請求項10】
第2環状領域は、N個の開口(26)を備え、前記マーキングは、同じ視覚的態様のN+1個のパターンを備えている、請求項8に記載の時計。
【請求項11】
Nは、29と、30と、31との中のいずれかである、請求項9又は10に記載の時計。
【請求項12】
時間情報の指標(24)は、マーキングの複数のパターンの第1視覚的外観及び第2視覚的外観とは異なる視覚的外観を持っている、請求項1に記載の時計。
【請求項13】
時間情報の指標(24)は、マーキングの複数のパターンの第1視覚的外観及び第2視覚的外観とは異なる視覚的外観を持っていて、
指標(24)の1部分の他の部分が、固定体(10)の部分(30)に隠されている一方で2つの開口部(26)の間で指標(24)の前記1部分が時間情報を示すべく、時間情報の指標(24)のサイズが、指標(24)の前記1部分が1つの開口部(26)を通して見えるサイズとされているので、前記時間情報の前記指標は可動ディスク(22)が回転しているときに常に見えている、請求項12に記載の時計。
【請求項14】
Nが前記開口部の数であるところで、前記第1パターンセットの複数のパターンのそれぞれが360/(N-1)/2度に等しく、かつ第2パターンセットの複数のパターンのそれぞれは360/(N+1)/2度に等しい角度ピッチで間隔をあけた、切り取られたところのある角張った扇型の形である、請求項1に記載の時計。
【請求項15】
マーキングの複数のパターンの第1及び第2の視覚的外観(27、28)の1つは、複数の前記開口部を備えた可動ディスク(22)又は複数の前記開口部を備えた固定体(10)の視覚的外観と同一である、請求項1に記載の時計。
【請求項16】
前記第1の視覚的側面(27)と前記第2の視覚的側面(28)との間には高いコントラストがあり、第1及び第2の視覚的側面の1つは、例えば、均一な黒色であり、第1及び第2の視覚的外観の他方は、例えば、均一な白い色である、請求項15に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の複雑機構が作動しているか停止しているかを迅速に示すモアレ効果を有する表示部を備えた時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モアレ効果を利用した表示部を搭載した時計は既知である。
【0003】
例えば、特許文献1(US5586089)には、標準的な時針、分針、秒針に替えて、透明又は不透明な領域のパターンが印刷された複数のディスクを持つ時計が開示されている。これらのディスクが回転すると、複数のモアレ画像の形で板が重なり合うことで、新たなそして刺激的な視覚効果が生み出される。時、分、秒の表示は、ディスクの外周にある目盛りが、環状の文字盤に配置された1から12までの環状の目盛りを指し示すことで実現している。この解決手段には、繊細で透明なディスクが複数必要である。
【0004】
特許文献2(CH709374A1)には、2つの本体を重ね合わせた時計が記載されているが、この時計もモアレ効果を利用して、2つの本体の相対的な回転速度よりも速く回転する表示を実現している。
【0005】
先行技術の時計で使用されているモアレ効果は、ただ興味深い視覚効果をもたらすことを目的としているにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5586089号明細書
【特許文献2】スイス国特許出願公開第709374号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、モアレ効果を利用して、クロノグラフやカウントダウンなどの複雑機構の作動又は停止(オン又はオフ)を一目で判断できて、時刻情報を読み取れる時計を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、この課題は、特に、クロノグラフ又はカウントダウンタイプの複雑機構を含む時計ムーブメントと、固定された本体と、クロノグラフ又はカウントダウンに関連する時間情報を表示するモアレ効果を持つ表示部とを備える時計によって達成される。表示部は、時刻情報の表示器に接続された可動ディスクを備えている。可動ディスクは、一方では時計のムーブメントと係合する軸に接続され、他方では固定体の上又は下で回転するように配置されている。可動ディスクと固定体の一方には、360°にわたって配置されたN個の複数の開口部が設けられている。可動ディスク及び固定体の一方は、第1視覚的外観を持つ第1パターンセットと、第2視覚的外観を有する第2パターンセットとを持つ複数のパターンの繰り返しを有するマーキングを備えている。第1視覚的外観を持つパターンは、第2視覚的外観を持つパターンと360°にわたって交互に配置されている。複数の開口部は、可動ディスクの回転に伴ってモアレ効果を作り出すマーキングのパターンを徐々に隠す複数の部分によって互いに分離されている。
【0009】
また、固定体は、文字盤に接続されていてもよい。また、固定体は文字盤の一部で構成されていてもよい。
【0010】
ディスクは、固体であるディスクであってもよい。代替的に、ディスクはリングで形成されていてもよい。
【0011】
開口部に対する複数のパターンの変位が非常に速いため、クロノグラフやカウントダウン計時装置で表示される複雑機構が動作していることを一目で確認できる。また、時刻情報表示の変位により、この時刻表示を容易に読み取れる。
【0012】
また、時刻情報の指標は、固定体の下方の可動ディスクに表示され、開口部の1つを通して見えるようになっていてもよい。この第1実施形態では、時間情報の指標の幅は、開口部の間隔幅と同じかそれ以上であることが好ましく、時間情報の指標が常に少なくとも1つの開口部を通して見えるようになっている。この指標にどの開口部が重なっているかを確認することで、時間情報を読み取れる。
【0013】
第2実施形態では、時間情報の指標は、固定体の上の可動ディスクに表示され、したがって常に見えるようになっていてもよい。
【0014】
一実施形態によると、表示部は、その回転軸が計時装置の中心軸と同軸上にある可動ディスクで構成される計時装置である。
【0015】
時間情報の指標は、可動ディスク上に配置された扇型の形であっても、可動ディスクの軸に取り付けられた時計の針の形であってもよく、そのような形で計時装置が時間情報を示せるようになっている。
【0016】
複数のパターンは、放射状の扇型によって形成されてもよい。また、開口部は、放射状の開口部によって形成されてもよい。
【0017】
一実施形態では、計時装置は、秒の計時装置である。可動ディスクは、表示器が秒を示すように、1分間に1回転の割合で駆動されるように時計のムーブメントと係合している。
【0018】
固定体の上方に移動式ディスクを備えた第2実施形態では、計時装置は、マーキングを備える第1環状領域を備える。第1環状領域は、固定体と一体化している。固定体は、文字盤の一部であるか、又は、文字盤の上に追加される。可動ディスクは、360°にわたって配置された複数の開口部を備える第2環状領域を備える。
【0019】
開口部の数はNに等しい。
【0020】
第2実施形態の代替実施形態では、開口部の数Nは、第1視覚的外観を有するパターンの数よりも大きく、また、第2視覚的外観を有するパターンの数よりも大きい。そして、同じ視覚的様相の2つの隣接するパターンの中心線の間の角度間隔は、2つの隣り合う開口部の中心線の間の間隔よりも大きくなっている。例えば、開口部の数はNに等しく、各視覚的側面のパターンの数はN-1に等しくしてよい。そして、モアレ効果によって、開口部の背後にあるパターンの変位が、可動ディスクの回転方向に発生する。
【0021】
第2実施形態の別の代替案では、やはり固定体の上に可動ディスクがある場合、開口部の数Nは、第1視覚的観点を持つパターンの数(例えば、N+1)よりも小さく、また、第2視覚的観点を持つパターンの数よりも小さい。このように、同じ視覚的側面を持つ2つの隣り合うパターンの中心線の間の角度間隔は、2つの隣接する開口部の中心線の間の間隔よりも小さい。例えば、開口部の数はNに等しく、各視覚的側面のパターンの数はN+1に等しくしてよい。すると、モアレ効果によって、開口部の背後にあるパターンの変位が、可動ディスクの回転の逆方向に発生する。
【0022】
上述の第1実施形態に従って、パターンを備えた可動ディスクを、開口部を備えた固定体の下に配置することも可能であり、この反転によってもパターンの変位方向が逆転する。本実施形態の代替として、開口部の数Nは、第1外観を有する図柄の数(例えばN-1)よりも大きく、また第2外観を有する図柄の数よりも大きい。そして、モアレ効果によって、開口部の背後にあるパターンが可動ディスクの逆回転方向に変位することが発生する。
【0023】
この第1実施形態とは別の方法として、やはり固定体の下に可動ディスクがある場合、開口部の数Nは、第1視覚的側面を有するパターンの数(例えばN+1)よりも小さく、また第2視覚的側面を有するパターンの数よりも小さい。そして、モアレ効果により、開口部の背後にあるパターンが可動ディスクの回転方向に変位する。
【0024】
実際には可動ディスクは60秒で1回転するが、複雑機構の動作時に2秒間のモアレ効果を得るために、開口部の数N又はパターンの数を30に等しくしている。
【0025】
固定体の上の可動ディスクに、各種類の30個のパターンと29個又は31個の開口部を設けた実施形態は、時間情報表示を常に表示できるので有利である。
【0026】
一実施形態では、計時装置は、マーキングを含む第1環状領域を備える。第1環状領域は、可動ディスクの一部である。可動ディスクは、固定体の下、例えば、文字盤の下に配置される。固定体は、第1環状領域に重ねられた第2環状領域を備えている。第2環状領域は、360°にわたって配置された複数の開口部を備えている。
【0027】
一実施形態では、第2環状ゾーンはN個の開口部からなる。マーキングの一部は、N+2又はN-2パターンで構成されている。このタイプの実現により、対称的なモアレ効果を得られる。つまり、1つの軸上では2つの開口部が同時に黒く見え、垂直な軸上では2つの開口部が同時に白く見えることになる。
【0028】
一実施形態では、時間情報の指標は、マーキングのパターンの第1及び第2視覚的外観とは異なる視覚的外観を持つ。
【0029】
時間情報に表示部は、その一部が開口部から見えて時間情報を示し、他の部分は2つの開口部の間にある固定体の一部に隠されて、可動ディスクの回転時にも一部が見えるような大きさにしてもよい。
【0030】
一実施形態では、マーキングを形成する第1セットと第2セットのパターンは、それぞれが切り取られたところのある角張った扇型の形をしている。つの連続した同一のパターンの中心線の間の角度、例えば2つの黒色パターンの中心線の間の角度は、360/(N-1)/2度又は360/(N+1)/2度に等しく、ここでNは開口部の数である。N=30個の開口部を有する実施形態では、この角度は、例えば、360/29/2度又は360/31/2度であってもよい。
【0031】
第1パターンセットは、例えば、360/(N-1)/2度又は360/(N+1)/2度の角張った扇型で、例えば、開口部の数N=30の場合は約6度の扇型を包含している。
【0032】
一実施形態では、マーキングのパターンの第1及び第2視覚的外観の一方は、開口部を備えた移動体の視覚的外観と同一であり、それぞれ開口部を備えた固定体の視覚的外観と同一である。これにより、モアレ効果が最大限に発揮される。例えば、マーキングが黒と白のパターンを交互に備えている場合、開口部を備えた移動体又はディスクは、有利には黒又は白のいずれかである。
【0033】
一実施形態では、第1視覚的側面と第2視覚的側面の間に高いコントラストがある。第1視覚的側面と第2視覚的側面の一方は、例えば、均一な黒色であり、第1視覚的側面と第2視覚的側面の他方は、例えば、均一な白色である。
【0034】
本発明の実施形態の例は、添付の図によって示された説明に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、第1実施形態による、時間情報の表示とモアレ効果のある動画を組み合わせた計時装置を備えた時計の文字盤の部分図である。
図2図2は、図1の文字盤の下に配置された可動ディスクを計時装置に対応させた上面図である。
図3図3は、第2実施形態による計時装置の固定体の上に装着されることを意図した可動ディスクの上面図である。
図4図4は、第2実施形態の代替案による計時装置の固定体の上に取り付けられることを意図した可動ディスクの上面図である。
図5図5は、第2実施形態の代替案による、その上に図3又は図4の可動式ディスクが取り付けられている環状のマーキングを備える時計の計時装置の固定部分の上面図である。
図6図6は、図5の計時装置の固定部に、図3の可動ディスクを揺動可能に取り付けた状態を示す。
図7図7は、図4の可動ディスクを図5の計時装置の固定部に揺動可能に取り付けた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1及び図2に示す本発明の第1実施形態では、時計(図示せず)は、一方で時刻情報を表示し、他方でモアレ効果を持つ動画を作り出すように構成された計時装置20(カウンタ20)を備えている。
【0037】
計時装置20は、固定体10と可動ディスク22(図2)とを備える。本実施形態例では、固定体10は、文字盤の一部、例えば、文字盤の環状部分によって構成されている。また、固定体を、例えば文字盤の環状部分に取り付けられた部品や、例えばムーブメントのブリッジなどの形態で提供し得る。このようにして、固定体は、時計のムーブメントの板に対して固定される。
【0038】
計時装置20は、例えば、クロノグラフの秒数計時装置や、カウントダウン機能の秒数計時装置であってもよい。計時装置20は、360°にわたって配置された複数の開口部26を持つ周辺環状帯38を備えている。これらの開口部26は、固定体10に形成されている。
【0039】
この第1実施形態では、図2の可動式ディスク22が、図1による固定体10の下に配置されている。ディスク22は、その中心に開口部40を持っていて、例えば打ち込みによって軸23に確実に取り付けられるようになっている。軸23は、計時装置20の中央の開口部を通過し、回転駆動できるように時計の動きと係合するように配置されたピニオン(図示せず)を持っている。計時装置の上の軸23には、時計の針を取り付けられる。
【0040】
可動ディスク22は、第1視覚的外観27を有する第1セットのパターンと、第2視覚的外観28を有する第2セットのパターンとを備えるパターンの繰り返しを持つマーキングを備えた周辺環状領域36を備える。
【0041】
第1セットと第2セットのマーキングのパターンの視覚的観点の選択は、美的な観点だけでなく、技術的な観点からも決定される。なぜなら、第1視覚的外観と第2視覚的外観の間に高いコントラストがあればこそ、例えば、クロノグラフ機能が作動しているか停止しているかを一目でわかるようになるようにモアレ効果が最適化されるからである。
【0042】
非限定的な一例として、第1視覚的外観は均一な黒色であり、第2視覚的外観は均一な白色である。マーキングのパターンは、マーキングを構成する第1セット及び第2セットのパターンの間にコントラストが得られる限り、不均一な視覚的外観を持ち得ることに留意すべきである。
【0043】
図2によると、第1外観を持つパターンは、第2外観を持つパターンと360°にわたって交互に周辺環状領域36に配置されている。
【0044】
計時装置20の周辺環状領域38は、固定体10に設けられたN個の開口部26を備える。開口部26(図1)は、ディスク22が回転したときにモアレ効果をもたらすために、移動式ディスク22のマーキングのパターンを徐々に覆うように意図された固定体の複数の部分30によって、互いに分離されている。
【0045】
可動ディスク22の周辺環状領域36に配置されたマーキングは、第1セットと第2セットとで異なる数のパターンを備えている。一例として、マーキングは、各種類のN-1、N+1、N-2又はN+2のパターンを備えることがある。
【0046】
図1及び図2に示す代替実施形態では、計時装置20の固定本体10の周辺環状領域38は、N=30個の開口部26を持つ一方で、可動ディスク22のマーキングは、第1視覚的側面27のパターン、例えば黒色のカラーパターンと、第2視覚的側面28のパターン、例えば白色のカラーパターンとが交互に配置されたN個未満の数のパターンを持つ。指標24は、マーキングと一体化している。
【0047】
この例では、可動ディスク22の周辺環状領域36のマーキングは、以下を備えている。
・黒色パターンのそれぞれは切り取られた角度の区間の形をしていて、互いに360/(N-1)/2度(Nは開口部の数)の角度ピッチで離されている、28個の黒色パターン。黒色のパターンは28個しか見えないが、これらのパターンの360度にわたる規則的な間隔は29個のパターンに相当する。この例では26個の開口部の数が30個なので、1つの切り取られた扇型(セクター)の角度は6.2°となっている。
・6.2°の角度を持つ切り取られた角度の区間の形をしていて、黒色パターンと交互に配置されている、27個の白色パターン。
・他の白色パターンよりも幅の狭い、例えば3.1°の角度で切り取られた角度の区間の形をした2個の白色パターン。そして
・第1パターン27及び第2パターン28に対してコントラストがはっきりしている視覚的外観を持つ第3パターン24。
【0048】
この第3パターン24も切り取られた角度の区間の形をしているが、この例では、黒色パターンよりも広い角度、例えば12.4°以上にわたって延在している。この第3パターン24は、2つの比較的狭い白色の角度の区間の間に配置されていて、時間情報(好ましくは秒)の指標の機能を提供している。このパターンの幅は、この例では、2つの黒色区間の角度幅に対応していて、一方は固定体の開口部26の1つで見え、他方は開口部の間に位置する固定体の部分30の1つで隠されているため、固定体の開口部26の1つを通して常に見える指標となっている。
【0049】
例えば、パターン24は、クロノグラフの秒数計時装置20の秒数の指標であってもよい。計時装置20がスタートすると、パターン24は現在の秒を2刻みで示す。
【0050】
黒い角張った扇型が開口部26の1つから完全に見えるとき、その区間は1秒かけて固定体10の部分30の1つの下に隠れ、次に1秒かけて次の開口部に再び現れる。このようにして、黒い角張った扇型が2秒で1回転するような印象を与える視覚効果が観察され、この印象を「モアレ効果」と名付ける。モアレ効果は、本実施形態では、可動ディスクの回転と逆方向に移動する。
【0051】
また、開口部の数Nよりも多い数の各視覚的側面のパターンを設けることで、可動ディスクの回転方向に移動するモアレ効果の実現も可能である。一例として、固定体に30個の開口部を設け、可動ディスクに各色31個のパターンを設けることもあり得るだろう。
【0052】
図示されていない別の実施形態によると、可動ディスク22の軸23に接続された秒針によって、例えば駆動によって秒が表示される。
【0053】
この場合、可動ディスク22の周辺環状領域36のマーキングは、例えば、それぞれが6.2°の角度を持つ切り取られた角度の区間の形をした、例えば黒色の第1視覚的外観の29個のパターンと、それぞれが6.2°の角度を有する切り取られた角度の区間の形をした、例えば白色の第2視覚的外観の29個のパターンとを備えてよい。白パターンは黒パターンと交互に配置されている。本実施形態は、秒表示の解像度を向上できるという有利点がある。
【0054】
図3から図7は、例えば文字盤に連結された固定体の上に開口部を設けた可動ディスク22を備えた第2実施形態による、時計の固定体を伴わない計時装置の要素を示す。図3によると、可動ディスク22は、360°にわたって互いに規則的に間隔を空けて配置されたN個の開口部26を備えた周辺環状ゾーン34から構成されている。図5に示す環状マーキングは、各種類のN-1個のパターンで構成されている。この例では、可動ディスク22は、N=31個の開口部26を持ち、環状マーキングは、(N-1)=30個の黒パターンと、(N-1)=30個の白パターンとを持つ。
【0055】
各開口部26は、形状及びサイズが同一である。開口部は、例えば、切り取り部分のあるとがった扇型又は丸めの扇型の形であってもよい。可動ディスクの周辺環状領域は、例えば、2つの開口部の間に配置された線、又は、時計の針の形をした時間指標24をさらに備える。
【0056】
可動ディスク22は、例えば、秒の可動部であり得る。秒の移動部は、複雑機構を持たない機械式ムーブメントを搭載した時計の秒を示すものを意図することがある。有利な1実施形態では、可動ディスク22の使用は、クロノグラフ又はカウントダウンタイプの1つ又は複数の複雑機構を備えた機械式ムーブメントを備える時計に特に適している。
【0057】
この実施形態によると、図3又は図4の可動ディスク22は、秒の軸(図示せず)と同心の環状領域32を構成する計時装置の固定体の中央開口部40のレベルで、ダイヤルを通過する秒の軸で駆動される(図5)。環状領域32は、例えば、360°にわたって環状領域内に隣り合って配置された、切り取られた部分があり角張った扇型の形をした同一形状のパターンの繰り返しからなるマーキングを備える。
【0058】
このパターンの繰り返しは、黒パターンのような第1視覚的外観27を持つパターンの第1セットと、白パターンのような第2視覚的外観28を持つパターンの第2セットとを備える。第1視覚的外観を持つパターン27は、第2視覚的外観を持つパターン28と360°にわたって交互に配置されている。
【0059】
一実施形態では、図3の可動ディスクは、N=31個の開口部26からなり、図6に示すように、可動ディスク22の周辺環状ゾーン34が図5の固定体の環状マーキングと重なるように、秒の軸方向に駆動される。クロノグラフを作動させると、可動ディスク22は60秒で完全に回転し、モアレ効果により可動ディスク22が実際よりもずっと速く回転しているような印象を与える。この例によると、図5に示された固定体のマーキングの区間の間の角度ピッチは、360/(N-1)/2度に等しく、Nは開口部の数であり、切り取られた部分がある扇型の間のピッチは6度となる。
【0060】
例として、図5の固定体の環状マーキングが、第1視覚的側面の30のパターンと第2視覚的側面の30のパターンの間に挟まれていて、可動ディスク22の環状ゾーン34がパターンの形状と同じ形状のN=31の開口部26からなる場合、図6によるように固定体のマーキング上に可動ディスクを重ね合わせると、クロノグラフが作動したときに可動ディスク22の回転と同じ方向に回転するモアレ効果が生じ、可動ディスクが2秒間隔で回転するという錯視の印象を与える。
【0061】
可動ディスク22上に線で描かれた秒の指標24は、しかしながら、可動ディスクが2秒ではなく60秒で完全に回転することを示す。このモアレ効果により、クロノグラフが停止しているのか作動しているのかが一目でわかるという有利点がある。
【0062】
図4の可動ディスク22の環状帯34がパターンの形状と同一のN=29個の開口部を持っている場合は、図5によるように固定体のマーキングに可動ディスクを重ね合わせると、クロノグラフが作動したときに可動ディスク22の方向とは反対の方向に回転するモアレ効果が生じる(図7)。
【0063】
マーキングの視覚的外観と開口部の数を変えることで、モアレ効果の周期の変更が可能である。例えば、可動ディスク22及び固定体10の一方がN=60個の開口部を持ち、可動ディスク及び固定体の他方が、第1視覚的観点を持つ59個の角張った扇型及び第2視覚的観点を持つ59個の角張った扇型を備えるマーキングを持つものとしてもよい。この場合、モアレ効果の周期は、1分間に1回転の速度で駆動される可動ディスクの場合、1秒となる。しかし、サイズの制約を考慮すると、モアレ効果の周期は2秒が好ましい。
【0064】
このモアレ効果は、特定の機能、特にクロノグラフなどの時計のムーブメントの複雑機構が作動しているか停止しているかを一目で示せるという技術的利点がある。
【0065】
さらに、この表示部は、1枚の可動ディスクで2種類の異なる回転速度、あるいは2種類の異なる回転方向を認識できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7