(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138140
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20220914BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20220914BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20220914BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20220914BHJP
C08L 47/00 20060101ALI20220914BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220914BHJP
C08L 57/02 20060101ALI20220914BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L7/00
C08L15/00
C08L45/00
C08L47/00
C08K3/36
C08L57/02
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022034051
(22)【出願日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】63/158,614
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ジャン-マリー・カエ
(72)【発明者】
【氏名】カルロ・カンツ
(72)【発明者】
【氏名】マリク・ジェロウル-マツォウツ
(72)【発明者】
【氏名】メロディエ・ドゥブリュイル
(72)【発明者】
【氏名】マリアム・ラークマン
(72)【発明者】
【氏名】セシリア・アグイア・ダ・シルバ
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC33
4J002AC01Y
4J002AC08W
4J002AC08X
4J002AC11W
4J002AC11X
4J002AE00U
4J002BA01Z
4J002BL02Y
4J002DA036
4J002DJ016
4J002EX087
4J002FD016
4J002FD02U
4J002GN01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】先進的なヒステリシス/転がり抵抗性能およびまた良好なウェット性能を有するゴム組成物を提供する。
【解決手段】-49℃~-15℃の範囲内のガラス転移温度を有する、第1のスチレンブタジエンゴム、および-50℃~-89℃の範囲内のガラス転移温度を有する、第2のスチレンブタジエンゴムを含むスチレンブタジエンゴム70phr~100phrを含むゴム組成物を対象とする。さらに、ゴム組成物は、天然ゴムおよび合成ポリイソプレンゴムのうちの1つまたは複数10phr~30phr、シリカ40phr~70phr、ならびにC5樹脂、CPD樹脂、DCPD樹脂、C9修飾C5樹脂、C9修飾CPD樹脂、およびC9修飾DCPD樹脂のうちの1つまたは複数から選択される、少なくとも1種の炭化水素樹脂10phr~40phrを含む。別の態様において、本発明は、前述のゴム組成物を含むタイヤトレッドを含むタイヤを対象とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-49℃~-15℃の範囲内のガラス転移温度を有する第1のスチレンブタジエンゴムと、-50℃~-89℃の範囲内のガラス転移温度を有する第2のスチレンブタジエンゴムとを含むスチレンブタジエンゴムを70phr~90phr;
天然ゴムおよび合成ポリイソプレンゴムからなる群から選択される、1つまたは複数の部材を10phr~30phr;
シリカを40phr~70phr;ならびに
C5樹脂、CPD樹脂、DCPD樹脂、C9修飾C5樹脂、C9修飾CPD樹脂、C9修飾DCPD樹脂のうちの1つまたは複数から選択される、少なくとも1種の炭化水素樹脂を10phr~40phr
含むゴム組成物。
【請求項2】
樹脂が、80℃~150℃の範囲内の軟化点、および500g/モル~1000g/モルの範囲内の重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
樹脂が、
90℃~110℃の範囲内の軟化点;
500g/モル~800g/モルの範囲内の重量平均分子量;
30℃~60℃の範囲内のガラス転移温度
のうちの1つまたは複数を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
樹脂が、C9修飾CPD樹脂およびC9修飾DCPD樹脂のうちの1つもしくは複数から選択され;ならびに/または樹脂が、5%~15%の範囲内の芳香族プロトン含有率を有することを特徴とする、請求項1から3の1つまたは複数の項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記樹脂が、少なくとも部分的に水素化されることを特徴とする、請求項1から4の1つまたは複数の項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ゴム組成物が、前記シリカ50phr~65phrを含むことを特徴とする、請求項1から5の1つまたは複数の項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記シリカが、190m2/g~260m2/gの範囲内、好ましくは205m2/g~260m2/gの範囲内のBET表面積を有することを特徴とする、請求項1から6の1つまたは複数の項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
カーボンブラック0.1phr~10phr;
補強シラン4phr~8phr;
ブロック化メルカプトシラン4phr~7phr;
液体可塑剤0phr~10phr
のうちの1つまたは複数をさらに含むことを特徴とする、請求項1から7の1つまたは複数の項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記第1のスチレンブタジエンゴム40phr~65phrおよび前記第2のスチレンブタジエンゴム25phr~50phrを含むことを特徴とする、請求項1から8の1つまたは複数の項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記第1のスチレンブタジエンおよび前記第2のスチレンブタジエンのうちの少なくとも一方が、前記シリカにカップリングするように構成された、少なくとも1つの官能基を含み、任意に、前記官能基が、ポリシロキシ、アルキルシロキシ、アミノアルキルシロキシ、スズアミノ、アミノシロキサン、およびアミノシランの各基のうちの1つまたは複数から選択されることを特徴とする、請求項1から9の1つまたは複数の項に記載のゴム組成物。
【請求項11】
それぞれのスチレンブタジエンゴムが、シリカにカップリングするように構成された、少なくとも1つの官能基を含み;任意で、前記第1のスチレンブタジエンゴムおよび前記第2のスチレンブタジエンゴムのうちの一方のスチレンブタジエンゴムが、アミノシラン基で官能化されており、前記第1のスチレンブタジエンゴムおよび前記第2のスチレンブタジエンゴムのうちの他方が、アミノシロキサン基で官能化されていることを特徴とする、請求項1から10の1つまたは複数の項に記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記第1のスチレンブタジエンゴムが、-20℃~-35℃の範囲内のガラス転移温度を有し、前記第2のスチレンブタジエンゴムが、-55℃~-69℃の範囲内のガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1から11の1つまたは複数の項に記載のゴム組成物。
【請求項13】
樹脂15phr~30phrを含むことを特徴とする、請求項1から12の1つまたは複数の項に記載のゴム組成物。
【請求項14】
前記ゴム組成物の前記ガラス転移温度が、-25℃~-15℃の範囲内であることを特徴とする、請求項1から13の1つまたは複数の項に記載のゴム組成物。
【請求項15】
トレッド(10)を有するタイヤ(1)であって、前記トレッド(10)が、請求項1から14の1つまたは複数の項に記載のゴム組成物を含む、タイヤ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、特に、トレッドゴム組成物、およびゴム組成物を含むタイヤ、とりわけ上記ゴム組成物を含むトレッドを含むタイヤを対象とする。
【背景技術】
【0002】
タイヤ分野で知られているように、従来、少なくとも別の特質におけるかなりのトレードオフなく、同時に複数のタイヤの特質を改善することは難しかった。そのような矛盾の1つは、転がり抵抗とウェット性能との間に存在する。転がり抵抗が改善される場合、典型的には、ウェットグリップにおけるトレードオフがある。しかし、転がり抵抗を限定することは、エネルギー効率を増すために重要である。別の潜在的な課題は、限られたレベルで摩耗を維持することにあり、これは、急速なタイヤ摩耗を避けるのに役立ち、好ましくは、良好なライド特性およびハンドリング特性を共に有する持続可能な製品を提供するのに役立つ。
【0003】
したがって、新規のゴムコンパウンド、特に、複数の前述の特性の間のバランスを改善するトレッドゴムコンパウンドを提供することは、依然として望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,698,643号
【特許文献2】米国特許第5,451,646号
【特許文献3】米国特許第6,608,125号
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0130535号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、62版
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)
【非特許文献3】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978年)、344~346頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、先進的なヒステリシス/転がり抵抗性能およびまた良好なウェット性能を有するゴム組成物を提供することを第1の目的とすることができる。
本発明は、タイヤトレッドにおいて使用される場合、前述の特性における改善、および/または改善された摩耗特性もしくはトレッド摩耗特性を有するゴム組成物を提供することを別の目的とすることができる。
【0007】
本発明は、独立クレームの範囲によって定義される。好ましい実施形態は、従属クレームおよび以下に提供される発明の概要において提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の第1の態様において、-15℃~-49℃の範囲内のガラス転移温度を有する、第1のスチレンブタジエンゴム、および-50℃~-89℃の範囲内のガラス転移温度を有する、第2のスチレンブタジエンゴムを含むスチレンブタジエンゴム(好ましくは溶液重合スチレンブタジエンゴム)70phr~90phr、ならびに天然ゴムおよび合成ポリイソプレンのうちの1つまたは複数10phr~30phr、シリカ40phr~70phr、ならびにC5(脂肪族)樹脂、CPD(シクロペンタジエン)樹脂、DCPD(ジシクロペンタジエン)樹脂、C9(芳香族)修飾C5樹脂、C9修飾CPD樹脂、C9修飾DCPD樹脂のうちの1つまたは複数から選択される、少なくとも1種の炭化水素樹脂10phr~40phrを含む、ゴム組成物が提供される。
【0009】
前述の樹脂タイプ、ならびに相対的に高いガラス転移温度を有するスチレンブタジエンゴムおよび相対的に低いガラス転移温度を有するスチレンブタジエンゴムと組み合わせて、限られた量のシリカを含む、そのようなゴム組成物は、ウェットグリップ特性を本質的に維持しながら、またはさらに改善しながら、ヒステリシス特性または転がり抵抗性能それぞれのさらなる改善を可能にする。
【0010】
一実施形態において、樹脂、特に炭化水素樹脂は、80℃~150℃の範囲内、好ましくは90℃~110℃の範囲内の軟化点;500g/モル~1000g/モルの範囲内、好ましくは500g/モル~800g/モルの範囲内の重量平均分子量;ならびに30℃~60℃、好ましくは40℃~60℃、またはさらに好ましくは40℃~55℃の範囲内のガラス転移温度;NMR分析によって求められる、5%~15%、好ましくは8%~12%の範囲内の芳香族プロトン含有率(または言いかえれば、芳香性)のうちの1つまたは複数を有する。重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン校正標準を使用したASTM 5296-11に従って、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して求められる。
【0011】
そのような樹脂タイプは、本発明者らによって、特に好ましい候補として特定された。
なお別の実施形態において、上記の樹脂は、水素化(好ましくは完全水素化)炭化水素樹脂である。
【0012】
なお別の実施形態において、C5樹脂は、以下のモノマー:1,3-ペンタジエン(例えばcisまたはtrans)、2-メチル-2-ブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、およびジシクロペンタジエンのうちの1つまたは複数からつくられた脂肪族樹脂である。
【0013】
なお別の実施形態において、C9修飾樹脂は、好ましくは、インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、およびメチルスチレン(例えば、アルファ-メチルスチレン)の群から選択される、1つもしくは複数の芳香族モノマーで修飾されたか、または官能化された樹脂(例えばC5樹脂)である。
【0014】
なお別の実施形態において、ゴム組成物は、シリカ50phr~65phrを含む。この範囲は、本発明者らによって、本発明の組成物について、最も好ましい範囲として特定された。
【0015】
また別の実施形態において、シリカは、190m2/g~260m2/g、好ましくは205m2/g~260m2/gの範囲内のBET表面積を有する。特に、そのような相対的に高い表面積のシリカは、本発明の組成物において最も望ましいと見出された。
【0016】
なお別の実施形態において、ゴム組成物は、カーボンブラック0.1phr~10phr、好ましくは0.5phr~5phrをさらに含む。特に、本発明の組成物は、限られた量のカーボンブラックを含むことが望ましい。
【0017】
なお別の実施形態において、ゴム組成物は、シラン4phr~10phr、好ましくはブロック化メルカプトシラン、例えば、好ましくは3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン4phr~8phrをさらに含む。後者のシランの存在は、限られた、さらなるトレードオフで、転がり抵抗特性をさらに改善するために特に好ましい。
【0018】
なお別の実施形態において、ゴム組成物は、液体可塑剤(例えば、オイル、液体樹脂、および/または液体ジエン系ポリマー)0phr~10phrを含む。本文脈において、用語液体可塑剤は、可塑剤が温度23℃で液体状態であることを意味する。好ましくは、組成物は、液体可塑剤5phr未満、特にオイル5phr未満を含む。
【0019】
なお別の実施形態において、ゴム組成物は、第1のスチレンブタジエンゴム40phr~65(好ましくは60)phrおよび/または第2のスチレンブタジエンゴム25phr(好ましくは30phr)~50phrを含み、好ましくは第2のスチレンブタジエンゴムよりも第1のスチレンブタジエンゴムを少なくとも5phrより多く含む。
【0020】
なお別の実施形態において、ゴム組成物は、天然ゴムもしくは合成ポリイソプレン15phr~25phr、および/または好ましくは天然ゴムもしくは合成ポリイソプレンゴム23phr未満を含む。特に、天然ゴムまたは合成ポリイソプレンゴムの、クレームの範囲は、良好な引張特性を実現するために特に望ましいことが見出された。
【0021】
なお別の実施形態において、第1のスチレンブタジエンゴムおよび第2のスチレンブタジエンゴムのうちの少なくとも一方は、シリカにカップリングするように構成された、少なくとも1つの官能基を含む。そのような官能基は、好ましくは、ポリシロキシ、アルキルシロキシ、アミノアルキルシロキシ、スズアミノ、アミノシロキサン、およびアミノシランの各基のうちの1つまたは複数から選択される。好ましくは、官能基は、スチレンブタジエンゴムのうちの1つまたは複数の、1つまたは複数の分子鎖末端に位置する。
【0022】
なお別の実施形態において、両方のスチレンブタジエンゴムは、シリカにカップリングするように構成された、少なくとも1つの官能基を含む。
なお別の実施形態において、第1のスチレンブタジエンゴムおよび第2のスチレンブタジエンゴムのうちの一方は、少なくとも1つのアミノシラン基(好ましくは両方の分子鎖末端での、好ましくは少なくとも1つまたはさらに複数での)で官能化され、第1のスチレンブタジエンゴムおよび第2のスチレンブタジエンゴムのうちの他方は、少なくとも1つのアミノシロキサン基(好ましくは、少なくとも1つの分子鎖末端での)で官能化される。
【0023】
なお別の実施形態において、第1のスチレンブタジエンゴムは、-20℃~-40℃、好ましくは-20℃~-35℃の範囲内のガラス転移温度を有し、および/または第2のスチレンブタジエンゴムは、-51℃~-69℃、好ましくは-55℃~-69℃の範囲内のガラス転移温度を有する。
【0024】
とりわけ、高いTgのスチレンブタジエンゴムと低いTgのスチレンブタジエンゴムとの組み合わせにより、特に1つだけの相対的に高いTgのスチレンブタジエンゴムの使用と比較して、トラクションと摩耗との間のより良好なバランスを実現することができる。
【0025】
なお別の実施形態において、第1のスチレンブタジエンゴムは、5%~50%、好ましくは10%~35%、および最も好ましくは20%~35%の範囲内の結合スチレン含有率を有し;ならびに/または第2のスチレンブタジエンゴムは、5%~30%の範囲内、好ましくは5%~15%の範囲内の結合スチレン含有率を有する。
【0026】
また別の実施形態において、ゴム組成物は、樹脂を15phr~35phr、好ましくは最大で30phrまで含む。例えば、ゴム組成物は、樹脂15phr~30phrを含むことができる。
【0027】
なお別の実施形態において、ゴム組成物は、1,6-ビス(N,N-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを含む。特に、この架橋剤は、前述の実施形態のうちの1つまたは複数に従って、ゴム組成物の耐摩耗性をさらに改善するものと考えられる。
【0028】
なお別の実施形態において、ゴム組成物のガラス転移温度は、-25℃~-15℃の範囲内である。特に、より低いガラス転移温度は、ウェット性能を低減することになる。
一実施形態において、ゴム組成物は、少なくとも1種の、追加のジエン系ゴムを含むことができる。代表的な合成ポリマーは、ブタジエンならびにその同族体および誘導体、例えば、メチルブタジエン、ジメチルブタジエンおよびペンタジエンの単独重合生成物、ならびにブタジエンまたはその同族体もしくは誘導体から形成されたものなどの、他の不飽和モノマーとのコポリマーであってもよい。後者の中には、アセチレン、例えば、ビニルアセチレン;オレフィン、例えばイソプレンと共重合してブチルゴムを形成するイソブチレン;ビニル化合物、例えば、アクリル酸、アクリロニトリル(ブタジエンと重合してNBRを形成する)、メタクリル酸およびスチレン(後者は、ブタジエンと重合してSBRを形成する。)、ならびにビニルエステルおよび様々な不飽和アルデヒド、ケトンおよびエーテル、例えばアクロレイン、メチルイソプロペニルケトンおよびビニルエチルエーテルであってもよい。合成ゴムの特定の例としては、ネオプレン(ポリクロロプレン)、ポリブタジエン(cis1,4-ポリブタジエンを含む)、ポリイソプレン(cis1,4-ポリイソプレンを含む)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、例えばクロロブチルゴムまたはブロモブチルゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートなどのモノマーとの、1,3-ブタジエンまたはイソプレンのコポリマー、ならびに、またエチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)としても知られるエチレン/プロピレンターポリマー、および特に、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンターポリマーが含まれる。使用されてもよいゴムの追加の例としては、アルコキシシリル末端官能化溶液重合ポリマー(SBR、PBR、IBRおよびSIBR)、シリコンカップリング化、およびスズカップリング化星形分枝高分子が含まれる。好ましいゴムまたはエラストマーは、一般に、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエンおよびSSBRを含むSBRであってもよい。
【0029】
別の実施形態において、20~28パーセントの結合スチレンのスチレン含有率を有する乳化重合由来のスチレン/ブタジエン(ESBR)、または幾つかの用途に対して、中程度から比較的高い結合スチレン含有率、すなわち、30~45パーセントの結合スチレン含有率を有するESBRが使用されてもよい。多くの場合において、ESBRは、26~31パーセントの範囲内である結合スチレン含有率を有することになる。乳化重合で調製されたスチレン-ブタジエンゴム(ESBR)とは、スチレンおよび1,3-ブタジエンが水性乳剤として共重合されることを意味することができる。そのようなことは、当業者に周知されている。結合スチレン含有率は、例えば、5パーセントから50パーセントまで多様であってもよい。一態様において、ESBRはまた、アクリロニトリルも含んで、例えば、ターポリマー中に結合アクリロニトリルを2~30重量パーセントの量のESBARとしてターポリマーゴムを形成することができる。コポリマー中に結合アクリロニトリルを2~40重量パーセント含有する、乳化重合で調製したスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴムは、またジエン系ゴムとして企図されてもよい。
【0030】
別の実施形態において、例えば、クレームのスチレンブタジエンゴムについて溶液重合で調製された(または溶液重合された)SBR(SSBR)が使用されてもよい。SSBRは、好都合には、例えば不活性有機溶媒中でアニオン重合によって調製することができる。とりわけ、SSBRは、開始剤として有機リチウム化合物を使用して炭化水素溶媒中で、スチレンおよび1,3-ブタジエンモノマーの共重合によって合成することができる。なお別の実施形態において、溶液スチレンブタジエンゴムは、スズカップリング化ポリマーである。なお別の実施形態において、SSBRは、シリカとの相溶性を改善するために官能化される。追加で、または代替として、SSBRはチオ官能化される。これにより、コンパウンドの剛性および/またはそのヒステリシス挙動が改善される。したがって、例えば、SSBRは、チオ官能化されてもよく、ブタジエンおよびスチレンのスズカップリング化溶液重合コポリマーであってもよい。
【0031】
一実施形態において、合成または天然のポリイソプレンゴムを使用してもよい。合成cis-1,4-ポリイソプレンおよび天然ゴムは、それ自体はゴム技術の当業者に周知されている。特に、合成cis-1,4-ポリイソプレンのcis-1,4-微細構造含有率は、典型的には少なくとも90%であり、より典型的には少なくとも95%である。一部の場合において、合成cis-1,4-ポリイソプレンは、95%~99%の範囲内であるcis-1,4-微細構造含有率を有することになる。
【0032】
一実施形態において、cis-1,4-ポリブタジエンゴム(BRまたはPBD)が使用される。適切なポリブタジエンゴムは、例えば1,3-ブタジエンの有機溶液重合によって調製することができる。BRは、好都合には、例えば、少なくとも90パーセントのcis-1,4-微細構造含有率(「高cis」含有率)、および-95℃~-110℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とすることができる。The Goodyear Tire & Rubber CompanyからBudene(登録商標)1207、Budene(登録商標)1208、Budene(登録商標)1223またはBudene(登録商標)1280などの適切なポリブタジエンゴムが市販されている。これらの高cis-1,4-ポリブタジエンゴムは、例えば、米国特許第5,698,643号および米国特許第5,451,646号に記載のように(1)有機ニッケル化合物、(2)有機アルミニウム化合物、および(3)フッ素含有化合物の混合物を含むニッケル触媒系を使用して合成することができる。別の好ましい実施形態において、ゴム組成物は、PBDを本質的に含まないか、または含まない。
【0033】
エラストマーの、ガラス転移温度すなわちTgは、その未硬化状態のそれぞれのエラストマーのガラス転移温度を表す。エラストマー組成物のガラス転移温度は、その硬化状態のエラストマー組成物のガラス転移温度を表す。本明細書において、Tgは、示差走査熱量計(DSC)によってASTM D3418に従って毎分10℃の温度上昇率でピーク中央値として求められる。
【0034】
樹脂のTgは、示差走査熱量計(DSC)によってASTM D6604または同等物に従って毎分10℃の温度上昇率でピーク中央値として求められる。好ましくは、本明細書において、樹脂は、ASTM E28によって求められ、任意にリングアンドボール軟化点とも称されてもよい、100℃より高い軟化点を有する。
【0035】
本明細書において、および慣行的実務に従って使用される用語「phr」は、「ゴムまたはエラストマー100重量部当たりの各材料の重量部」を指す。一般に、この慣例を使用して、ゴム組成物は100重量部のゴム/エラストマーで構成される。クレームの組成は、クレームのゴム/エラストマーのphr値がクレームのphr範囲と一致し、かつ組成のすべてのゴム/エラストマーの量が合計100部のゴムに帰着する限り、クレームに明示的に挙げられる以外のゴム/エラストマーを含んでもよい。例として、組成は、SBR、SSBR、ESBR、PBD/BR、NR、および/または合成ポリイソプレンなどの、1種または複数の追加のジエン系ゴムを、1phr~10phr、または1phr~5phrさらに含んでもよい。別の例において、組成は、追加のジエン系ゴムを5phr未満、好ましくは3phr未満含んでもよく、または、またそのような追加のジエン系ゴムを本質的に含まなくてもよい。用語「コンパウンド」、「組成物」、および「配合物」は、本明細書において他の方法で示されなければ、交換して使用することができる。用語「ゴム」および「エラストマー」もまた、本明細書において他の方法で示されなければ、交換して使用することができる。
【0036】
一実施形態において、ゴム組成物はまたオイル、特にプロセスオイルを含んでもよい。エラストマーを増量するために典型的に使用される増量油として、プロセスオイルがゴム組成物に含まれていてもよい。プロセスオイルはまた、ゴム配合時のオイルの直接添加によってゴム組成物に含まれてもよい。使用されるプロセスオイルは、エラストマー中に存在する増量油、および配合時に添加されるプロセス油の両方に含まれていてもよい。適切な油は、芳香族、パラフィン、ナフテン、植物油、ならびにMES、TDAE、SRAEおよび重質ナフテン油などの低PCA油を含む、当業界で公知である様々なオイルを含んでいてもよい。適切な低PCA油は、IP346法によって求めて3重量パーセント未満の多環式芳香族含有率を有するものを含んでいてもよい。IP346法の手順は、the Institute of Petroleum, United Kingdomによって発行された、Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、62版に見出すことができる。使用され得る植物油の、一部の代表的な例は、ダイズ油、ヒマワリ油、キャノーラ(菜種)油、コーン油、ココナッツ油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、およびサフラワー油を含む。ダイズ油およびコーン油は、典型的には、好ましい植物油である。
【0037】
ゴムコンパウンドに使用されてもよい一般に使用される珪質顔料は、例えば、従来の火成および沈降珪質顔料(シリカ)を含む。一実施形態において、沈降シリカが使用される。従来の珪質顔料は、例えば、可溶性ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウムの酸性化によって得られるものなどの沈降シリカであってもよい。そのような従来のシリカは、例えば窒素ガスを使用して測定するBET表面積を有することを特徴とすることができる。一実施形態において、BET表面積は、1グラム当たり100~300平方メートルの範囲にあってもよい。別の実施形態において、BET表面積は、1グラム当たり200~300平方メートルの範囲であってもよい。本発明の実施形態において、上記表面積は、好ましくは相対的に高い。BET表面積は、ASTM D6556または同等物に従って求められ、Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)に記載されている。
【0038】
なお別の実施形態において、ゴム組成物は、事前シラン化された、沈降シリカを含むことができる。別の実施形態において、使用される、事前シラン化、または言いかえれば、事前疎水化された、沈降シリカは、それをゴム組成物に添加する前に、少なくとも1種のシランで処理することによって、疎水化される。適切なシランは、これらに限定されないが、アルキルシラン、アルコキシシラン、有機アルコキシシリルポリスルフィド、および有機メルカプトアルコキシシランを含む。本発明の実施における使用に適切な、事前処理されたシリカ(すなわち、シランで事前に表面処理されたシリカ)の、一部の、限定されない例は、これらに限定されないが、メルカプトシランで事前処理された、Ciptane(登録商標)255 LDおよびCiptane(登録商標)LP(PPG Industries)のシリカ、ならびに有機シランビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(Si69)とUltrasil(登録商標)VN3シリカとの反応生成物であるCoupsil(登録商標)8113(Degussa)、ならびにCoupsil(登録商標)6508、PPG IndustriesからのAgilon(登録商標)400シリカ、PPG IndustriesからのAgilon(登録商標)454シリカ、およびPPG IndustriesからのAgilon(登録商標)458シリカを含む。
【0039】
一実施形態において、ゴム組成物は、ゴム組成物への(添加)沈降シリカの添加を除く(それによって、非事前シラン化沈降シリカの添加を除く)。
一実施形態において、ゴム組成物は、カーボンブラックを含むことができる。そのようなカーボンブラックの、一部の代表的な例には、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990およびN991等級が含まれる。これらのカーボンブラックは、9g/kg~145g/kgの範囲のヨウ素吸収、および34cm3/100g~150cm3/100gの範囲のDBP数を有する。ヨウ素吸収値は、適切には、ASTM D1510または同等物に従って求めることができる。
【0040】
一実施形態において、ゴム組成物は、硫黄含有有機ケイ素化合物またはシランを含んでいてもよい。適切な硫黄含有有機ケイ素化合物の例は、式:
【0041】
【0042】
である[式中、Zは、
【0043】
【0044】
からなる群から選択され、式中、R1は、1~4個の炭素原子のアルキル基、シクロヘキシルまたはフェニルであり;R2は、1~8個の炭素原子のアルコキシ、または5~8個の炭素原子のシクロアルコキシであり;Alkは、1~18個の炭素原子の二価炭化水素であり、nは整数2~8である。]。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリメトキシまたはトリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドである。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、および/または3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。したがって、式Iについて、Zは、
【0045】
【0046】
であり得る[式中、R2は、2~4個の炭素原子、代替として2個の炭素原子のアルコキシであり;Alkは、2~4個の炭素原子、代替として3個の炭素原子の二価炭化水素であり;nは、整数2~5、代替として2または4である。]。別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物には、米国特許第6,608,125号に開示されている化合物が含まれる。好ましい一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物には、3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン、Momentive Performance MaterialsからNXT(商標)として市販されているCH3(CH2)6C(=O)-S-CH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3が含まれる。別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物には、米国特許出願公開第2003/0130535号に開示されているものが含まれる。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物はDegussaからのSi-363である。ゴム組成物中の硫黄含有有機ケイ素化合物の量は、使用される他の添加剤のレベルに依存して様々であってもよい。
【0047】
ゴム組成物が、例えば、硫黄供与体、硬化助剤、例えば、活性剤および遅延剤、ならびにオイルなどの加工添加剤、粘着性樹脂および可塑剤を含む樹脂、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤およびオゾン劣化防止剤および釈解薬などの様々な一般に使用される添加材料との、様々な構成要素の硫黄加硫性ゴムの混合などのゴム配合技術において一般に公知の方法によって配合することができることは、当業者によって容易に理解される。当業者に知られているように、硫黄加硫性材料および硫黄加硫材料(ゴム)の意図される使用に応じて、上記に挙げた添加剤が選択され、一般に従来の量で使用される。硫黄供与体の、一部の代表的な例は、元素の硫黄(遊離の硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマーのポリスルフィドおよび硫黄オレフィン付加物を含む。一実施形態において、硫黄加硫剤は元素の硫黄である。硫黄加硫剤は、例えば、0.5phr~8phrの範囲、代替として1.5phr~6phrの範囲内の量で使用されてもよい。典型的な量の粘着性付与樹脂は、使用される場合、例えば0.5phr~5phr、通常1phr~5phrを含む。しかし、好ましい実施形態において、組成物は、そのような粘着性付与樹脂を含まない。典型的な量の抗酸化剤は、使用される場合、例えば1phr~5phrを含んでもよい。代表的な抗酸化剤は、例えばジフェニル-p-フェニレンジアミン他、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978年)、344~346頁に開示されているものなどであってもよい。オゾン劣化防止剤の典型的な量は、使用される場合、例えば1phr~5phrを含んでもよい。使用される場合、ステアリン酸を含むことができる脂肪酸の典型的な量は、例えば0.5phr~3phrを含んでもよい。ワックスの典型的な量は、使用される場合、例えば1phr~5phrを含んでもよい。多くの場合において、微晶質ワックスが使用される。釈解剤の典型的な量は、使用される場合、例えば0.1phr~1phrを含んでいてもよい。典型的な釈解剤は、例えばペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドであってもよい。
【0048】
促進剤は、加硫のために必要とされる時間および/または温度を制御し、加硫物の特性を改善するために使用することが好ましいが、必要ではないこともある。一実施形態において、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されてもよい。一次促進剤(複数可)は、0.5phr~4phr、代替として0.8phr~1.5phrの範囲の合計量において使用されてもよい。別の実施形態において、一次および二次促進剤の組み合わせが使用されてもよく、二次促進剤は、活性化し加硫物の特性を改善するために0.05phr~3phrなどのより少ない量で使用される。これらの促進剤の組み合わせは、最終的な特性に相乗効果を生み出すと予想することができ、どちらかの促進剤の単独使用によって製造されたものより多少良好である。さらに、正常な加工温度に影響を受けないが、通常の加硫温度で満足すべき硬化を生ずる遅効性促進剤も使用されてもよい。加硫遅延剤もまた使用されてもよい。本発明において使用されてもよい適切な種類の促進剤は、例えばアミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびザンセートである。一実施形態において、一次促進剤はスルフェンアミドである。第2の促進剤が使用される場合、二次促進剤は、例えばグアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物であり得る。適切なグアニジンとしては、ジフェニルグアニジンなどが含まれる。適切なチウラムとしては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドおよびテトラベンジルチウラムジスルフィドが含まれる。
【0049】
ゴム組成物の混合は、ゴム混合技術における当業者に公知の方法によって達成することができる。例えば、原料は、典型的に、少なくとも2つの段階、すなわち、少なくとも1つの非生産的な(ノンプロダクティブ)混合段階、続いて生産的(プロダクティブ)混合段階において混合されてもよい。硫黄加硫剤を含む最終硬化薬は、典型的に、従来は「生産的」混合段階と呼ばれる最終段階において混合されてよく、ここで、典型的には、先行する非生産的混合段階(複数可)の混合温度(複数可)より低い、ある温度または最終温度で混合が行われる。「非生産的」および「生産的」混合段階という用語は、ゴム混合技術の当業者には周知されている。実施形態において、ゴム組成物は、熱機械的混合ステップにかけられてもよい。熱機械的混合ステップは、一般に、例えば140℃から190℃までのゴム温度を生ずるのに適切な期間、混合機または押出機での機械式作業を含む。熱機械的作業の好適な継続時間は、運転条件ならびに成分の量および性質の関数として変動する。例えば、熱機械的作業は1~20分であってもよい。
【0050】
本発明の第2の態様において、タイヤ、第1の態様および/またはその実施形態の1つのゴム組成物を含むタイヤが提供される。
一実施形態において、タイヤは、ゴム組成物を含むタイヤトレッドを含む。
【0051】
別の実施形態において、タイヤは夏用タイヤである。
なお別の実施形態において、タイヤは、互いの上面に少なくとも部分的に(タイヤの径方向において)配置された、少なくとも2つの層を含むトレッドキャップを有するタイヤトレッドを含み、ゴム組成物は、径方向最外側のトレッドキャップ層(運転時に地面に接触する)において提供される。追加で、または代替として、ゴム組成物は、径方向内側のトレッドキャップ層(径方向最外側のトレッドキャップ層の下に径方向に配置される)において提供される。
【0052】
なお別の実施形態において、ゴム組成物は、本質的にU字型の断面または本質的にL字型の断面を有する、径方向内側のトレッドキャップ層に含まれ、径方向内側のトレッドキャップ層は、運転時に、トレッドの、一方または両方のショルダー領域において道路に接触し、径方向外側または径方向最外側のトレッドキャップ層は、トレッドの中心領域において道路に接触し、場合によって、トレッドのショルダー領域の一方において道路と接触する。
【0053】
別の実施形態において、本発明のタイヤは、例えば、空気式タイヤまたは非空気式タイヤであってもよい。タイヤはまた、ラジアルまたはバイアスプライのタイヤであってもよい。好ましくは、タイヤはラジアル空気式タイヤである。
【0054】
一実施形態において、本発明の空気式タイヤの加硫は、例えば100℃~200℃の範囲の従来の温度で実行されてもよい。一実施形態において、加硫は110℃~180℃の範囲内の温度で行われる。プレスまたは型中での加熱、過熱蒸気または熱風を用いる加熱などの通常の加硫方法のうちのいずれを使用してもよい。そのようなタイヤは、当業者にとって公知で、容易に明白であろう様々な方法によって組み立て、成形、成型および硬化することができる。
【0055】
1つまたは複数の、態様、実施形態、またはその特徴は、本発明の範囲内で互いに組み合わせることができることが強調される。
本発明は、より詳細には、外周のトレッドを有する、全体的にトロイド型のカーカス、2つのサイドウォール、間隔の空いた2つのビード、ビードからビードに延びる少なくとも1つのプライ、および径方向に延び、上記トレッドを上記ビードに連結するサイドウォールで構成されるタイヤ(ire)であって、上記トレッドが、地面に接触するように合わせられ、外周のトレッドが、(a)-49℃~-15℃の範囲内のガラス転移温度を有する、第1のスチレンブタジエンゴム、および-50℃~-89℃の範囲内のガラス転移温度を有する、第2のスチレンブタジエンゴムを含むスチレンブタジエンゴム70phr~90phr;(b)天然ゴムおよび合成ポリイソプレンのうちの1つまたは複数10phr~30phr;(c)シリカ40phr~70phr;ならびに(d)C5樹脂、CPD樹脂、DCPD樹脂、C9修飾C5樹脂、C9修飾CPD樹脂、C9修飾DCPD樹脂のうちの1つまたは複数から選択される、少なくとも1種の炭化水素樹脂10phr~40phrを含むゴム組成物で構成される、タイヤを明らかにする。
【0056】
本発明の、構造、操作、および利点は、添付の図面と併せて、以下の記述を考慮することでより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】トレッドおよびさらなるゴム成分を含むタイヤの略断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は空気式タイヤ1の略断面図である。タイヤ1は、トレッド10、インナーライナー13、4つのベルトプライ11を含むベルト構造、カーカスプライ9、2つのサイドウォール2、ならびにビード充填剤アペックス5およびビード4を含む、2つのビード領域3を有する。例示のタイヤ1は、例えば、トラックまたは乗用車などの車両のリムへの取り付けに適切である。
図1に示すように、ベルトプライ11は、オーバーレイプライ12によって被覆されてもよい。カーカスプライ9は、1対の軸方向の反対端部6を含み、そのそれぞれは、ビード4のそれぞれ1つに割り当てられる。カーカスプライ9の、各軸方向端部6は、各軸方向端部6に固定する位置に、それぞれのビード4で折り返し、回すことができる。カーカスプライ9の折り返し部分6は、2つのフリッパー8の軸方向外部表面と2つのチッパー7の軸方向内部表面とをはめ込むことができる。
図1に示すように、例示のトレッド10は、4つの周溝を有することができ、それぞれの溝は、本質的に、トレッド10にU字型の開口部を画定する。トレッド10は、本発明の実施形態に従って、本明細書に記載の、1つまたは複数のトレッドコンパウンドを含む。
【0059】
図1の実施形態は、例えば、アペックス5、チッパー7、フリッパー8、およびオーバーレイ12を含む複数のタイヤ成分を提案するが、そのような成分は、本発明に必須ではない。また、カーカスプライ9の折り返し端部は、本発明に必要ではなく、またはビード領域3の反対側を通り、ビート4の軸方向の外側ではなく、ビード4の軸方向の内側で終わることができる。タイヤはまた、例えば、多かれ少なかれ、4つの溝を有することもできた。本発明は、
図1に従って、描写され、記載された、タイヤ1の例に限定されるものではない。
【0060】
本発明の実施形態に従うゴム組成物の好ましい例、すなわち本発明実施例1~4(タイヤトレッド10について特に適切である)を、本発明に従わない、2つの比較例1および2と比較して表1に示す。すべての例は、天然ゴム(ポリイソプレン)およびスチレンブタジエンゴムの組み合わせを含む。特に、ポリイソプレンゴムの存在は、均衡の取れた引張特性に関して、本発明の組成物タイプに有益であると考えられる。さらに、表1に列挙されたように、すべての例は、高いTgのスチレンブタジエンゴムと低いTgのスチレンブタジエンゴムの組み合わせに基づく。
【0061】
すべての組成(比較例1以外)は、適量の、高い表面積のシリカに依存し、本発明実施例2および5は、さらにより高い表面積のシリカタイプを有する。本発明実施例は、ブロック化メルカプトシランをさらに含むが、比較例は、ビス-トリエトキシシリルプロピルジスルフィドタイプのシランに主に依存する。樹脂に関して、比較例はテルペン樹脂を有するが、本発明実施例は、DCPD樹脂タイプを含む。さらに、すべての実施例は、組成物の耐摩耗性を支えるために本質的に使用された1,6-ビス(N,N-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(BDBzTH)を含み、それは、多くのトレッドゴム組成物について重要な特性でもある。
【0062】
【0063】
表1において、上記で列挙されたゴム組成物は、同じ構造体の乗用車のタイヤのタイヤトレッドにおいて試験された。転がり抵抗およびウェット制動についての、これら試験の結果を以下の表2に示す。さらに、これらの組成物は、表2にも示されたように、その剛性特性および摩耗特性に関して試験された。
【0064】
比較例1(本発明に従わない)は、他の試験された組成物よりもかなり多くのシリカを含み、それは、他の試験された例と比較して、比較例1について認められた、より大きな剛性の理由であり得る。しかし、この比較において、比較例1の転がり抵抗は他の例と比較して有意に悪い。比較例2(やはり本発明に従わない)は、本発明実施例1および3と同じ充填剤組成を有し、このことは改善された転がり抵抗性能の1つの理由であり得るが、潜在的にはウェット制動性能の低下についても1つの理由であり得る。同時に、コンパウンド剛性は、比較例1と比較して、比較例2および本発明実施例1~4について低くなっており、このことはタイヤのライド特性およびハンドリング特性に影響を及ぼすかもしれない。さらに、比較例2は、比較例1について認められた摩耗よりも、有意に増加した摩耗を有する。
【0065】
本発明実施例のすべては、比較例1よりも有意に改善された転がり抵抗を有する。比較例2は、本発明実施例3および4よりもわずかにより良好な転がり抵抗性能を有し得るが、転がり抵抗、ウェット制動および摩耗の全体のバランスが、本発明実施例では改善される。本発明実施例1および2は、とりわけ転がり抵抗および摩耗における強度を有する。本発明実施例1は、ウェット性能および摩耗における極めて限られたトレードオフがあるが、転がり抵抗の有意な改善を示す。本発明実施例3は、改善された転がり抵抗およびウェット制動性能を同時に示す。特に、本発明実施例1、3、および5のウェット制動性能は、比較例2の同じ性能よりもかなり良好である。さらに、かなり転がり抵抗が改善されるとの観点からは、タイヤトレッドの下部のトレッドキャップ層において、本発明実施例のうちの1つまたは複数を使用することが有利でもある。そのような場合において、実施例の一部のわずかに増加した摩耗はあまり関係がなく、同じことがウェット制動性能にもあてはまる。しかし、本発明実施例は、タイヤトレッドの径方向最外側のトレッドキャップ層に好ましくは使用される。
【0066】
【外国語明細書】