(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138146
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】汚染土壌処理装置
(51)【国際特許分類】
B09C 1/06 20060101AFI20220914BHJP
B01D 50/00 20220101ALI20220914BHJP
G21F 9/28 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B09C1/06 ZAB
B01D50/00 501C
B01D50/00 501G
B01D50/00 501J
G21F9/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035231
(22)【出願日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2021037673
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、中間貯蔵・環境安全事業株式会社、「令和3年度除去土壌等の減容等技術実証事業(その4)」(環境省)委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】507234438
【氏名又は名称】広島県公立大学法人
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】三苫 好治
(72)【発明者】
【氏名】石渡 寛之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝行
(72)【発明者】
【氏名】地井 直行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友祐
(72)【発明者】
【氏名】岩田 光司
(72)【発明者】
【氏名】岩間 祐一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 貴広
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB03
4D004AB07
4D004AB09
4D004CA08
4D004CA15
4D004CA22
4D004CA42
4D004CB09
4D004CB26
4D004CB31
4D004CB42
4D004CB43
4D004DA02
4D004DA09
4D004DA11
4D004DA12
4D004DA20
(57)【要約】
【課題】コンパクトであり余分な廃棄物を発生させることなく汚染土壌を効率的に処理できる汚染土壌処理装置を提供する。
【解決手段】流動化手段を備え、連続供給される汚染土壌を流動化させながら熱風発生装置25より供給される熱風と接触させ、加熱された汚染土壌を排出する加熱炉11と、前記熱風を含む、前記加熱炉11から排出される排ガス中の固体を捕集する集じん装置41と、を備え、前記固体が汚染土壌及び汚染土壌を起源とする粉じんを含み、前記加熱炉11と前記集じん装置41とが連通し、前記排ガスが前記加熱炉11から前記集じん装置41に直接送られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動化手段を備え、連続供給される汚染土壌を流動化させながら熱風発生手段より供給される熱風と接触させ、加熱された汚染土壌を排出する加熱炉と、
前記熱風を含む、前記加熱炉から排出される排ガス中の固体を捕集する集じん装置と、
を備え、
前記固体が汚染土壌及び汚染土壌を起源とする粉じんを含み、
前記加熱炉と前記集じん装置とが連通し、前記排ガスが前記加熱炉から前記集じん装置に直接送られることを特徴とする汚染土壌処理装置。
【請求項2】
前記加熱炉に連続供給される汚染土壌は、有機物を含み、
前記固体には、前記有機物及び前記有機物を起源とする固形分が含まれることを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌処理装置。
【請求項3】
前記集じん装置は、2つ以上又は2種以上の集じん装置が直列に配置されてなり、前記排ガス中の固体を分級可能なことを特徴とする請求項1又は2に記載の汚染土壌処理装置。
【請求項4】
前記流動化手段は、供給される汚染土壌の表面が研磨されるように流動化させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の汚染土壌処理装置。
【請求項5】
前記加熱炉が、内燃式のロータリーキルンであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の汚染土壌処理装置。
【請求項6】
前記ロータリーキルンは、前記汚染土壌を掻き揚げる掻き揚げ手段を備え、
前記掻き揚げ手段が、前記流動化手段の一部であることを特徴とする請求項5に記載の汚染土壌処理装置。
【請求項7】
さらに前記加熱炉に汚染土壌を供給する汚染土壌供給装置と、
前記熱風発生手段、前記流動化手段及び前記汚染土壌供給装置を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記加熱炉から排出される汚染土壌の含水率及び粒径が設定された値となるように熱風量、流動状態、汚染土壌供給量のうち1種以上を制御することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の汚染土壌処理装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記加熱炉から排出される汚染土壌の含水率及び粒径が設定された値となるように制御するとき、燃料消費量が最小及び/又は汚染土壌供給量が最大になるように熱風量、流動状態、汚染土壌供給量のうち1種以上を制御することを特徴とする請求項7に記載の汚染土壌処理装置。
【請求項9】
前記加熱炉に、空気及び/又は前記固体が除去された前記排ガスの少なくとも一部を供給するガス供給手段を備え、
前記ガス供給手段を通じて供給される空気及び/又は排ガスは、前記熱風と混合され前記汚染土壌と接触し、
前記制御手段は、前記ガス供給手段を制御し、前記加熱炉から排出される汚染土壌の粒径が設定された値となるように加熱炉内のガス流速を制御することを特徴とする請求項7又は8に記載の汚染土壌処理装置。
【請求項10】
前記制御装置は、予め取得された汚染土壌の性状と操作条件と分級結果とが記憶された参照データベースを備え、
前記参照データベースを参照し、汚染土壌の性状に応じ熱風量、流動状態及び汚染土壌供給量のうち1種以上を制御し、又は熱風量、流動状態、汚染土壌供給量、空気及び/又は排ガスの供給量のうち1種以上を制御することを特徴とする請求項7から9いずれか1項に記載の汚染土壌処理装置。
【請求項11】
前記汚染土壌の性状には粒度分布、含水率、有機物の種類・含有量が含まれ、
前記操作条件には、熱風量、流動状態と相関する前記流動化手段の回転数、汚染土壌供給量が含まれ、又は熱風量、流動状態と相関する前記流動化手段の回転数、汚染土壌供給量、空気及び/又は排ガスの供給量が含まれ、
前記分級結果には、評価値が含まれ、
前記制御装置は、前記参照データベースを参照し、汚染土壌の性状に応じ前記評価値が最大となるように熱風量、流動状態及び汚染土壌供給量のうち1種以上を制御し、又は熱風量、流動状態、汚染土壌供給量、空気及び/又は排ガスの供給量のうち1種以上を制御することを特徴とする請求項10に記載の汚染土壌処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染された土壌の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性セシウム汚染土(以下、汚染土壌)の浄化方法は、湿式処理法と乾式処理法とに大別できる。湿式処理法としては、例えば汚染土壌を湿式ふるいに投入し、粒径2mm超の礫・粗砂を回収し、次いで、粒径2mm以下の残りの土をハイドロサイクロン(遠心分離機)にかけ、粒径0.063~2mmの土と粒径0.063mm以下の濃縮汚染土に再分級し、粒径0.063~2mmの土は、スクラビング処理によりセシウム付着部を効果的に剥がし取ることで回収する方法がある。
【0003】
乾式処理法としては、例えば汚染土壌に塩化カルシウムを添加し、これらを900℃以上に加熱し、放射性セシウムを揮発させ、放射性セシウムの含有率を低減させた土壌を得る方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また汚染土壌を攪拌乾燥装置により乾燥させた後、乾燥させた汚染土壌を衝撃式破砕装置により破砕させ、破砕した土壌を気流式分級装置で分級し、細粒土を隔離する処理方法もある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-19734号公報
【特許文献2】特開2013-208592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
湿式処理方法は、濁水(排水)が発生するためこの排水を処理する排水処理設備が必要となる。特許文献1に記載の処理方法は、乾式処理法のうち熱処理法に属するものであり、排水処理の問題はないがエネルギー消費量が多く処理コストが高くなる。
【0007】
特許文献2に記載の処理方法は、乾燥・解砕・分級の各操作により除染土壌を回収するものであり、各操作をそれぞれ独立した専用の装置で行っている。このような処理方法は、運転、制御が容易となる一方で、装置から装置へ汚染土壌を搬送するための装置が必要となる。この汚染土壌搬送装置は、搬送中に汚染土壌が飛散しないようにする対策も必要である。このため特許文献2に記載の処理方法を実現する処理設備は、装置の数が多くなり、設備も大掛かりとなり費用も高くなる。
【0008】
本発明の目的は、コンパクトであり余分な廃棄物を発生させることなく汚染土壌を効率的に処理できる汚染土壌処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、流動化手段を備え、連続供給される汚染土壌を流動化させながら熱風発生手段より供給される熱風と接触させ、加熱された汚染土壌を排出する加熱炉と、前記熱風を含む、前記加熱炉から排出される排ガス中の固体を捕集する集じん装置と、を備え、前記固体が汚染土壌及び汚染土壌を起源とする粉じんを含み、前記加熱炉と前記集じん装置とが連通し、前記排ガスが前記加熱炉から前記集じん装置に直接送られることを特徴とする汚染土壌処理装置である。
【0010】
本発明に係る汚染土壌処理装置において、前記加熱炉に連続供給される汚染土壌は、有機物を含み、前記固体には、前記有機物及び前記有機物を起源とする固形分が含まれることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る汚染土壌処理装置において、前記集じん装置は、2つ以上又は2種以上の集じん装置が直列に配置されてなり、前記排ガス中の固体を分級可能なことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る汚染土壌処理装置において、前記流動化手段は、供給される汚染土壌の表面が研磨されるように流動化させることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る汚染土壌処理装置において、前記加熱炉が、内燃式のロータリーキルンであることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る汚染土壌処理装置において、前記ロータリーキルンは、前記汚染土壌を掻き揚げる掻き揚げ手段を備え、前記掻き揚げ手段が、前記流動化手段の一部であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る汚染土壌処理装置は、さらに前記加熱炉に汚染土壌を供給する汚染土壌供給装置と、前記熱風発生手段、前記流動化手段及び前記汚染土壌供給装置を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記加熱炉から排出される汚染土壌の含水率及び粒径が設定された値となるように熱風量、流動状態、汚染土壌供給量のうち1種以上を制御することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る汚染土壌処理装置において、前記制御手段は、前記加熱炉から排出される汚染土壌の含水率及び粒径が設定された値となるように制御するとき、燃料消費量が最小及び/又は汚染土壌供給量が最大になるように熱風量、流動状態、汚染土壌供給量のうち1種以上を制御することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る汚染土壌処理装置は、前記加熱炉に、空気及び/又は前記固体が除去された前記排ガスの少なくとも一部を供給するガス供給手段を備え、前記ガス供給手段を通じて供給される空気及び/又は排ガスは、前記熱風と混合され前記汚染土壌と接触し、前記制御手段は、前記ガス供給手段を制御し、前記加熱炉から排出される汚染土壌の粒径が設定された値となるように加熱炉内のガス流速を制御することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る汚染土壌処理装置において、前記制御装置は、予め取得された汚染土壌の性状と操作条件と分級結果とが記憶された参照データベースを備え、前記参照データベースを参照し、汚染土壌の性状に応じ熱風量、流動状態及び汚染土壌供給量のうち1種以上を制御し、又は熱風量、流動状態、汚染土壌供給量、空気及び/又は排ガスの供給量のうち1種以上を制御することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る汚染土壌処理装置において、前記汚染土壌の性状には粒度分布、含水率、有機物の種類・含有量が含まれ、前記操作条件には、熱風量、流動状態と相関する前記流動化手段の回転数、汚染土壌供給量が含まれ、又は熱風量、流動状態と相関する前記流動化手段の回転数、汚染土壌供給量、空気及び/又は排ガスの供給量が含まれ、前記分級結果には、評価値が含まれ、前記制御装置は、前記参照データベースを参照し、汚染土壌の性状に応じ前記評価値が最大となるように熱風量、流動状態及び汚染土壌供給量のうち1種以上を制御し、又は熱風量、流動状態、汚染土壌供給量、空気及び/又は排ガスの供給量のうち1種以上を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コンパクトであり余分な廃棄物を発生させることなく汚染土壌を効率的に処理できる汚染土壌処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態の汚染土壌処理装置1の構成図である。
【
図2】本発明の第2実施形態の汚染土壌処理装置2の構成図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の汚染土壌処理装置2で使用する運転制御装置81の機能構成図である。
【
図4】本発明の第2実施形態の汚染土壌処理装置2で使用する運転制御装置81の制御手順を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2実施形態の汚染土壌処理装置2で使用する運転制御装置81の参照データベースの構成を示す図である。
【
図6】本発明の第2実施形態の汚染土壌処理装置の変形例である汚染土壌処理装置3の構成図である。
【
図7】本発明の汚染土壌処理装置で使用可能な集じん装置の構成を示す図である。
【
図8】本発明の実施例1に記載の試験で使用した試験装置の構成を示す図である。
【
図9】本発明の実施例2に記載の試験で使用した試験装置の構成を示す図である。
【
図10】本発明の実施例2の事前試験の結果であって含水比に関する図である。
【
図11】本発明の実施例2の事前試験の結果であって粒度分布に関する図である。
【
図12】本発明の実施例2の事前試験の結果であって粒度分布に関する図である。
【
図13】本発明の実施例2の事前試験の結果であって土壌成分に関する図である。
【
図14】本発明の実施例2の事前試験の結果であって細粒分含有率に関する図である。
【
図15】本発明の実施例2の事前試験の結果であって粒度分布に関する図である。
【
図16】本発明の実施例2の事前試験の結果であって粒度分布に関する図である。
【
図17】本発明の実施例2の事前試験の結果であって有機物量に関する図である。
【
図18】本発明の実施例2の事前試験の結果であって質量比と細粒分除去率及び粗粒分混入率との関係を示す図である。
【
図19】本発明の実施例2の事前試験の結果であって細粒分除去率と有機物除去率との関係を示す図である。
【
図20】本発明の実施例2の事前試験の結果であってドライヤ静圧と細粒側の質量率との関係を示す図である。
【
図21】本発明の実施例2の事前試験の結果であって風量と細粒側の質量率との関係を示す図である。
【
図22】本発明の実施例2の実証試験の結果であって含水比に関する図である。
【
図23】本発明の実施例2の実証試験の結果であって粒度分布に関する図である。
【
図24】本発明の実施例2の実証試験の結果であって粒度分布に関する図である。
【
図25】本発明の実施例2の実証試験の結果であって土壌成分に関する図である。
【
図26】本発明の実施例2の実証試験の結果であって細粒分含有率に関する図である。
【
図27】本発明の実施例2の実証試験の結果であって粒度分布に関する図である。
【
図28】本発明の実施例2の実証試験の結果であって粒度分布に関する図である。
【
図29】本発明の実施例2の実証試験の結果であって有機物量に関する図である。
【
図30】本発明の実施例2の実証試験の結果であって質量比と細粒分除去率及び粗粒分混入率との関係を示す図である。
【
図31】本発明の実施例2の実証試験の結果であって細粒分除去率と有機物除去率との関係を示す図である。
【
図32】本発明の実施例2の実証試験の結果であって放射性Cs濃度に関する図である。
【
図33】本発明の実施例2の実証試験の結果であって除染率に関する図である。
【
図34】本発明の実施例2の実証試験の結果であって細粒分除去率と除染率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1(A)は、本発明の第1実施形態の汚染土壌処理装置1の構成図であり、
図1(B)は、加熱炉11における汚染土壌の流動状態を模式的に示す図である。汚染土壌処理装置1は、加熱炉内で汚染土壌を乾燥させ、さらに汚染土壌を乾式分級し、汚染濃度の高い土壌を区分けすることで汚染土壌を浄化するものであり、供給される汚染土壌と熱風とを接触させる加熱炉11と、加熱炉11に汚染土壌を供給する汚染土壌供給装置31と、加熱炉11から排出される排ガス中の固体を捕集する集じん装置41と、排風機61とを含む。
【0023】
処理対象である汚染土壌は、特に限定されるものではないが、代表的には放射性物質、重金属、ダイオキシン類、PCB、農薬、残留性有機汚染物質(POPs)などが固着、吸着又は付着した土壌である。放射性物質としては、セシウムCs、プルトニウムPu、ウランU、ラジウムRaなどが挙げられる。汚染土壌は、水分を含んでいてもよく、また植物、木の葉、木くず、根毛などの有機物を含んでいてもよい。また汚染土壌には、塊状物が含まれることがあるが、このような汚染土壌も基本的には前処理を行うことなく処理できる。
【0024】
加熱炉11は、内燃式のロータリーキルン11であり、キルン本体12とキルン本体12を回転させる駆動装置21、キルン本体12に熱風を供給する熱風発生装置25とを備え、汚染土壌供給装置31により連続供給される汚染土壌を流動化させながら、熱風発生装置25から供給される熱風と接触させる。加熱炉11は、汚染土壌供給装置31により連続供給される汚染土壌を流動化させながら、熱風発生装置25から供給される熱風と接触させることができる装置であればよく、例えば熱風発生装置を備える横型攪拌装置でもよい。内燃式のロータリーキルン11は、大型も容易でコストも比較的安価であり、加熱炉11として好ましい。
【0025】
キルン本体12は、入口部が出口部より僅かに高く、入口から出口に向け僅かに傾斜した状態で駆動装置21に回転自在に支持されている。キルン本体12は、円筒状であり、内部に汚染土壌を掻き揚げる掻き揚げ羽根13が円周方向に複数取付けられている。掻き揚げ羽根13は、キルン本体12に固定されており、キルン本体12と一体的に回転する。
【0026】
掻き揚げ羽根13の形状・構造は特に問われないが、熱風との接触面積が広くなるように汚染土壌を掻き揚げ、撹拌するものが好ましい。例えば、キルン本体12内において汚染土壌を高い位置まで持ち上げ落下させるようなものがよい。またキルン本体12及び掻き揚げ羽根13は、汚染土壌粒子の表面が研磨されるように汚染土壌を流動化させるものが好ましい。
【0027】
キルン本体12の入口側端部は、キルン本体12に気密可能に取付けられたカバー15で覆われている。一方、キルン本体12の出口側端部は、キルン本体12に気密可能に取付けられたフード16で覆われている。カバー15及びフード16は、固定されている。ここで入口部は、汚染土壌が供給される側である。
【0028】
フード16の底部には汚染土壌を排出する排出装置18が取り付けられている。本実施形態においては、排出装置18としてロータリーバルブを示すが排出装置18はこれに限定されるものではない。キルン本体12は、負圧であるため排出装置18は、キルン本体12に対してシールした状態で汚染土壌を排出できるものがよい。またフード16の上部には排ガスの排気口19が設けられている。
【0029】
加熱炉11は、供給される汚染土壌を乾燥する乾燥機としての機能の他、風力分級装置としての機能も備える。加熱炉11において、熱風発生装置25から供給される熱風を主とする気体(排ガス)は、汚染土壌を分級するように作用する。キルン本体12内の気体の流速を大きくすれば、排気口19から排出される排ガスに含まれる固体(汚染土壌)の量は多くなり、排出装置18から排出される汚染土壌の量が減少し、また平均粒径が大きくなる。
【0030】
加熱炉11は、設定された汚染土壌の供給量、性状に基づき排出装置18から排出される汚染土壌(排出土壌)の粒径が、予め定める粒径(以下、分級点)となるようにキルン本体12内の気体の流速、キルン本体12の大きさが決められる。汚染土壌の性状には粒度分布、含水率、有機物の種類、有機物の含有量が含まれる。
【0031】
駆動装置21は、キルン本体12を回転自在に支持し、掻き揚げ羽根13が汚染土壌を掻き揚げる方向にキルン本体12を回転させる。駆動装置21は、キルン本体12の回転数を可変なものが好ましい。駆動装置21は、キルン本体12内において汚染土壌が十分に掻き揚げられ、また汚染土壌が十分に流動化され、汚染土壌粒子の表面が研磨されるようにキルン本体12を回転させる。
【0032】
熱風発生装置25は、キルン本体12の入口側に設置され、燃料を燃焼させ発生した熱風をキルン本体12に直接送り込む。本実施形態の加熱炉11は、熱風の移動方向が汚染土壌の移動方向と並行なパラレルフローであるが、熱風の移動方向と汚染土壌の移動方向とが対向するクロスフローであってもよい。
【0033】
キルン本体12は、入口側の圧力を検出する圧力検出器27、キルン本体12内の出口部の汚染土壌の温度を検出する温度検出器28を備え、それぞれ圧力コントローラ67、温度コントローラ65とつながる。圧力コントローラ67は、キルン本体12の入口側圧力が予め設定された圧力になるように電動式ダンパ62の開度を調節する。また温度コントローラ65は、出口部の汚染土壌の温度が予め設定された温度になるように熱風発生装置25を調節する。
【0034】
汚染土壌供給装置31は、加熱炉11に汚染土壌を定量供給する装置であり、ホッパー32を備えるスクリューフィーダ33と、スクリューフィーダ33と加熱炉11とをつなぐ供給管34とを備える。土壌の定量供給装置としては、スクリューフィーダの他にテーブルフィーダ等があり、汚染土壌供給装置31としてテーブルフィーダ等を使用してもよい。汚染土壌供給装置31は、汚染土壌を定量供給可能であるとともに供給速度によらずマテリアルシールできるものが好ましい。
【0035】
汚染土壌供給装置31は、供給管34を介して加熱炉11と連通するためマテリアルシールができていない場合、加熱炉11内が負圧になると汚染土壌供給装置31を通じて空気が加熱炉11内に漏れ込む。完全なマテリアルシールが形成されず空気が漏れ込む場合であっても、汚染土壌の供給量により漏れ込む空気量が変動しないことが好ましい。汚染土壌の供給量により加熱炉11内に漏れ込む空気量が変動すると運転、制御が難しくなる。
【0036】
集じん装置41は、加熱炉11の排気口19に連結し、加熱炉11から排出される排ガスに含まれる固体を捕集する。加熱炉11から排出される排ガスの主たるものは、熱風発生装置から供給され汚染土壌を加熱した後の熱風であり、この他に、汚染土壌に含まれていた水分に起因する水蒸気、キルン本体12に漏れ込む空気が含まれる。排ガスに含まれる固体は、汚染土壌のうち粒径の小さいもの、キルン本体12内で発生した汚染土壌の研磨物、粉じん、供給された汚染土壌に含まれていた有機物、有機物の破砕物、炭化物、灰化物である。
【0037】
集じん装置41は、捕集する粒径が異なる3種類の乾式集じん装置で構成される。本実施形態においては、上流から下流に向かって捕集する粒径が小さくなるように慣性力式集じん装置であるバッフル式集じん装置43、遠心力式集じん装置であるサイクロン45、ろ過式集じん装置であるバグフィルタ47の順番に、これらが直列に配置されている。
【0038】
ここで使用するバッフル式集じん装置43、サイクロン45、バグフィルタ47は、捕集すべき粒子径に対応した仕様となっているが、装置自体は公知の集じん装置と変わりない。バッフル式集じん装置43、サイクロン45、バグフィルタ47は、それぞれ捕集した固体を払い出すための排出装置44、46、48を備える。ここでは、排出装置44、46、48は、ロータリーバルブである。
【0039】
排風機61は、バグフィルタ47の下流に設置され、集じん装置41を経由して加熱炉11とつながる。排風機61とバグフィルタ47とを結ぶ管路の途中に排風量を調節する電動式ダンパ62が設けられている。
【0040】
汚染土壌処理装置1の運転要領及び作用効果について説明する。汚染土壌供給装置31から加熱炉11に連続供給される汚染土壌は、キルン本体12内を入口から出口に向かって移動する過程で撹拌・掻き揚げられ、供給される熱風と接触し加熱される。キルン本体12内は、温度コントローラ65及び圧力コントローラ67を通じて予め定める温度、圧力に制御されている。
【0041】
具体的には、温度検出器28で検出される温度が設定された温度T0となるように熱風発生量を調節する。なお熱風発生量は、熱風供給量、熱風量と換言できる。温度T0は、供給される汚染土壌が十分に乾燥する最低温度、又は最低温度+α(余裕代)である。温度T0は、予備テスト等を行い決定するのが好ましい。
【0042】
また圧力コントローラ67は、圧力検出器27で検出される圧力が設定された圧力P0となるように排風量を調節する。圧力P0は、キルン本体12内の入口側において大気圧又は大気圧よりも僅かに低い圧力である。キルン本体12内の入口側圧力を、大気圧又は大気圧よりも僅かに負圧にすることで汚染土壌がキルン本体12から外部に噴出することを防止できる。
【0043】
駆動装置21は、キルン本体12を予め定められた回転数N0で回転させる。回転数N0は、キルン本体12内において汚染土壌が十分に掻き揚げられ、また汚染土壌が十分に流動化され、汚染土壌粒子の表面が研磨される回転数である。この回転数N0は、予備テスト等を行い決定するのが好ましい。
【0044】
水分を含む汚染土壌は加熱炉11で乾燥され、加熱・乾燥した汚染土壌の一部(排出土壌)は、キルン本体12の末端からフード16に流れ込み、排出装置18を介して連続的に排出される。他の汚染土壌は、排ガスに同伴し、排気口19から集じん装置41に送られる。排ガスに含まれる固体は、バッフル式集じん装置43、サイクロン45、バグフィルタ47で補修され、排出装置44、46、48を介して連続的に排出される。排出される固体は、排出装置18、排出装置44、排出装置46、排出装置48の順に粒径が小さくなる。
【0045】
汚染土壌処理装置1は、汚染土壌供給量、熱風発生量、キルン本体の回転を可変可能なため、排出土壌が所望の分級点となるように汚染土壌供給量、熱風発生量、キルン本体の回転を適宜調節することができる。
【0046】
供給する汚染土壌に含まれ塊状物は、キルン本体12内で解砕される。また供給する汚染土壌に含まれる植物、木の葉、木くず、根毛などの有機物は、そのままの形状、又は破砕・粉砕され、又は炭化物・灰化物となり、排ガスに同伴し集じん装置41に送られ、ここで捕集される。
【0047】
放射性セシウムなど汚染物質が表面に固着、吸着又は付着した土壌は、粒径が小さいほど汚染濃度が高いことが知られている。このような汚染土壌を汚染土壌処理装置1で処理すると、排出装置18から排出される汚染土壌(排出土壌)は汚染濃度が低く、バッフル式集じん装置43、サイクロン45、バグフィルタ47の順番で排出される固体の汚染濃度が高くなる。
【0048】
このように汚染土壌処理装置1は、汚染濃度の異なる土壌を分別回収できるので除染が可能となる。また汚染土壌処理装置1は、加熱炉11が汚染土壌粒子の表面が研磨されるように汚染土壌を流動化せるため、表面が研磨され汚染濃度がより低下した汚染土壌を回収することができる。
【0049】
以上のように汚染土壌処理装置1は、水分、塊状物、有機物を含む汚染土壌など種々の汚染土壌を処理できる。また汚染土壌処理装置1は、加熱炉11と集じん装置41とが直通するため、加熱炉11から排出される排ガスを直接、集じん装置41に導くため装置がコンパクトとなる。これらの点は、後述の汚染土壌処理装置2、3についても同じである。
【0050】
図2は、本発明の第2実施形態の汚染土壌処理装置2の構成図である。
図3は、汚染土壌処理装置2で使用する運転制御装置81の機能構成図、
図4は、運転制御装置81の制御手順を示すフローチャートである。
図1に記載の第1実施形態の汚染土壌処理装置1と同一構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
汚染土壌処理装置2は、汚染土壌処理装置1と基本構成を同じくするが、以下の点で汚染土壌処理装置1と異なる。第1に汚染土壌処理装置2は、キルン本体12に空気を送る空気供給装置71を備える。本実施形態において空気供給装置71は、空気供給量を調節する空気供給弁73、空気供給弁73とカバー15とをつなぐ空気供給管75で構成される。空気供給装置71を介して送り込まれる空気は、キルン本体12内のガス流量・ガス流速を大きくさせるためのものであり、この空気は、熱風と混合され最終的には排ガスとなる。
【0052】
キルン本体12は、負圧に制御されるため空気供給弁73を開けば、外部の空気がキルン本体12に吸引される。キルン本体12の内外の圧力差が小さく、所定量の空気を吸引できない場合は、空気供給弁73の上流に送風機、押込通風機を設ければよい。
【0053】
第2に汚染土壌処理装置2は、汚染土壌処理装置2の運転を制御する運転制御装置81を備える。汚染土壌処理装置2は、第1実施形態の汚染土壌処理装置1と同様に、乾式分級を用い汚染土壌を予め定める粒径に区分けし、これらを分別回収するものである。汚染土壌処理装置2においても汚染土壌処理装置1と同様に、キルン本体12内のガス流速が基本的に分級点を決める。つまりキルン本体12内のガス流速を制御することで汚染土壌を所望する粒径に区分けることができる。本実施形態の汚染土壌処理装置2においては、種々の性状の汚染土壌に対応すべく、運転制御装置81が汚染土壌の性状に対応し各装置を制御する。
【0054】
運転制御装置81は、データを入力し又はデータ・信号を受信可能なデータ入力手段83と、データ及び運転制御プログラム91を記憶する記憶手段85と、各手段を制御する制御手段87と、データ・信号を送信可能なデータ出力手段89とを備える。第1実施形態の汚染土壌処理装置1においては、温度コントローラ65、圧力コントローラ67が、加熱炉11内を所定の温度・圧力に制御するが、汚染土壌処理装置2では運転制御装置81がその役割を担う。このため汚染土壌処理装置2には、温度コントローラ65、圧力コントローラ67は特に設けられていない。
【0055】
運転制御装置81の制御要領を説明する。運転制御装置81は、データ入力手段83を介して汚染土壌の性状データが入力されると、制御手段87が、記憶手段85に格納された運転制御プログラム91を読み出し、汚染土壌の性状に適した汚染土壌供給量及び熱風発生量等を算出する。制御手段87は、算出された土壌供給量及び熱風発生量等となるようにデータ出力手段89を介して汚染土壌供給装置31、熱風発生装置25等に制御信号を送信する。
【0056】
汚染土壌供給量及び熱風発生量等の具体的な算出要領を説明する。運転制御プログラム91には、分級に必要なキルン本体12内のガス流速U0、水を含む汚染土壌を温度T0まで加熱するに必要な熱風発生量、水を含む汚染土壌を温度T0まで加熱するに必要な加熱炉11内の滞留時間θ0が与えられている。熱風発生量は、例えば含水率をパラメータとし、汚染土壌供給量と熱風発生量の相関式又は相関データとして与えられる。ガス流速U0、温度T0、滞留時間θ0、熱風発生量等は、予備テストを通じて取得されるのがよく、ガス流速U0は、ガス流速U0±β(微小流速)のように幅を持たせてもよい。
【0057】
運転制御装置81は、データ入力手段83を介して汚染土壌の性状データが与えられると(ステップS1)、汚染土壌供給量と熱風発生量との相関式又は相関データに基づき、温度T0を満足する汚染土壌供給量F及び熱風発生量Qを算出する(ステップS2)。ステップS2において得られた汚染土壌供給量のうち滞留時間θ0を満足する汚染土壌供給量F及びそれに対応した熱風発生量Qを選出する(ステップS3)。
【0058】
次にステップS3で得られた熱風発生量Qとキルン本体12の断面積(有効断面積)とからキルン本体12の内のガス流速Uを算出し(ステップS4)、ガス流速Uがガス流速U0の範囲内か判断する(ステップS5)。ステップS5でガス流速Uが、ガス流速U0の範囲内であれば、汚染土壌供給量Fが最大のものを選出する(ステップS6)。これにより汚染土壌供給量Fが最大でかつ燃料消費量Qが最小の条件で汚染土壌の処理が行える。
【0059】
一方、ステップS5でガス流速Uがガス流速U0の範囲外の場合、ガス流速Uがガス流速U0の範囲内となるように空気供給装置71から空気を供給する(ステップS7)。空気供給に伴い温度検出器28で検出する排出汚染土壌の温度Tが、温度T0以上か否か判断する(ステップS8)。ステップS8で、排出汚染土壌の温度Tが温度T0以上の場合にはステップS7の条件で制御する(ステップS9)。一方、ステップS8で排出汚染土壌の温度Tが温度T0を下回る場合には、熱風発生量Qを増大させ、ガス流速Uがガス流速U0を満足しかつ、温度Tが温度T0を満足するように制御する(ステップS10)。
【0060】
キルン本体12の回転数は、汚染土壌が十分に流動化、掻き揚げられ、さらには汚染土壌粒子の表面が研磨される回転数に設定される。このような回転数は、予備テストを行い決めるのがよい。汚染土壌粒子は表面が研磨されることは好ましいが、破砕されることは好ましくない。粒径の大きい土壌粒子は汚染濃度が低く、排出土壌となるが、このような粒子が2分されると排ガスに同伴し、集じん装置41で回収されてしまう。これは他の実施形態でも同じである。
【0061】
本実施形態の汚染土壌処理装置2は、掻き揚げ羽根13が土壌の搬送能力を備えていないため回転数を増減させても掻き揚げ羽根13に起因して滞留時間θが変化することはない。但し、キルン本体12が出口に向け下がり勾配となっているので、キルン本体12の回転数を増加させると滞留時間θが短くなる可能性がある。予備テストを行い、予めキルン本体12の回転数Nと汚染土壌の加熱炉11内での滞留時間θとの関係を把握し、運転制御に反映させるのがよい。これは他の実施形態でも同じである。
【0062】
以上により含水率など性状が異なる汚染土壌に対しても所望の分級結果を得ることができる。また汚染土壌供給量Fを最大化し、また燃料消費量Qが最少の条件で汚染土壌の処理が行えるので効率的かつ効果的である。なお、粒径分布の異なる汚染土壌を処理する場合には、予備テストを行い分級に適したガス流速U0を算出し、これを満足するように運転条件を算出すればよい。
図4に示す制御手順は、運転制御方法の一例であり、これに限定されるものではない。
【0063】
運転制御装置81の他の制御要領を説明する。汚染土壌の性状と運転条件と分級結果との関係を予め取得し、これらを紐付けした参照データベースを作成し、参照データベースから汚染土壌の性状に合致するものを選定し、これに基づき運転を制御するようにしてもよい。
図5にデータベースの構成の一例を示す。参照データベースは、記憶手段85に格納される。
【0064】
図5に示す参照データベースにおいて、汚染土壌の性状には、粒度分布、含水率、有機物の種類、有機物の含有量が含まれ、操作条件には、汚染土壌供給量、熱風供給量、空気供給量、加熱炉11の回転数が含まれる。粒度分布PT1~PT2の区別は、例えば、分級点など予め設定された粒径を基準とし、その粒径以下の土壌の重量割合で区別してもよい。有機物の種類O0~O2の区分けは、例えばO0は、有機物なし、O1は、主に木の葉、木くずを含む土壌、O2は、主に根毛を含む土壌としてもよい。
図5において、有機物含有量OW0は、有機物含有量がゼロであり、空気供給量AF0は、空気供給装置71から空気供給を行わない場合を示す。
【0065】
図5における分級結果の評価値Z1~Z18は、所望の分級結果に近い結果が得られたものほど評価値が高く設定されている。例えば分級点など予め設定された粒径を基準とし、その粒径以下の土壌の回収割合を評価値としてもよい。例えば分級点75μmとし、供給汚染土壌の75μm以下の土壌の割合が30wt%であり、集じん装置41で回収された土壌の割合が24wt%であれば、評価値=24/30×100=80とする。なお
図5において、評価値Z1~Z18は、数字の大きいものほど評価値が高い訳ではない。
【0066】
運転制御装置81の具体的な制御要領を説明する。運転制御装置81は、データ入力手段83を介して汚染土壌の性状データが与えられると記憶手段85から参照データベースを読み出し、汚染土壌の性状に一致する操作条件を選出し、これに基づき各装置を制御する。このとき汚染土壌の性状が部分的にしか一致しない場合であっても、選出される操作条件が1つであれば、その条件で各装置を制御する。
【0067】
汚染土壌の性状が部分的にしか一致しない場合であって、操作条件が複数選出される場合は、評価値の最も高い操作条件を選定し、その条件で各装置を制御する。汚染土壌の性状が参照データベースに記載の汚染土壌の性状と一致しない場合、最も近い性状のものを選定し、その条件で各装置を制御する。
【0068】
汚染土壌処理装置2により汚染土壌を処理した後は、そのデータを参照データベースに追加するのがよい。データが蓄積されることで精度が向上する。
【0069】
以上からなる運転制御装置81は、運転制御プログラム91を格納したプログラマブルロジックコントローラ、コンピュータなど公知の制御装置を用いて容易に実現することができる。
【0070】
本発明の第2実施形態の汚染土壌処理装置2は、各装置を制御する運転制御装置81を備えるので、含水率、粒度分布、有機物の種類・含有量などが異なる種々の汚染土壌を処理する場合に好適に用いることができる。また参照データベースを使用すれば、事前に分級結果を予測することも可能であり、効率的かつ効果的な分級が行える。
【0071】
図6は、本発明の第2実施形態の汚染土壌処理装置2の変形例である汚染土壌処理装置3の構成図である。
図2に示す第2実施形態の汚染土壌処理装置2と同一構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
汚染土壌処理装置3は、放射線汚染土壌を処理対象とするものであり、フード16の下部に設置され排出土壌の放射線濃度を検出する放射線濃度検出器30を備える。運転制御装置81は、排出土壌の放射線濃度が予め設定された濃度となるように各装置を制御する。
【0073】
汚染土壌の放射線濃度は、粒径の小さいものほど高いため排出土壌の放射線濃度が予め設定された濃度よりも高い場合には、分級点の粒径が大きくなるように制御する。具体的には、排ガスに含まれる固体の粒径が大きくなるようにキルン本体12内のガス流速が高くなるように制御する。
【0074】
汚染土壌処理装置3は、所望の放射線濃度の汚染土壌を回収できるため放射線汚染土壌の除染に好適に使用することができる。さらに除染土の磁性化・磁選技術と組み合わせることでより高度な除染・減容化処理を提供することができる。これについては、第1及び第2実施形態の汚染土壌処理装置1、2も同じである。
【0075】
以上、第1及び第2実施形態の汚染土壌処理装置1、2、さらには第2実施形態の変形例である汚染土壌処理装置3を用いて本発明に係る汚染土壌処理装置を説明したが、本発明に係る汚染土壌処理装置は、上記実施形態に限定されるものではなく要旨を変更しない範囲で変更することができる。
【0076】
上記実施形態では、集じん装置41として捕集原理の異なる3種類の集じん装置を直列に配置する例を示したが、これに限定されるものではない。集じん装置41は、排ガス量、排ガスに含まれる固体濃度、固体の粒径に応じて、固体を効率的に補修できるように集じん装置を配置すればよい。
【0077】
図7は、本発明に係る汚染土壌処理装置において使用可能な集じん装置の構成を示す図である。排ガスに含まれる固体濃度が低い場合には、
図7(A)に示すように集じん装置が1つでもよい。排ガスに含まれる固体の粒度分布が広い場合には、
図7(B)に示すように型式の異なる集じん装置を4つ又は5つ以上直列配置したものを好適に使用することができる。また排ガス量が多く、かつ排ガス中の固体濃度が高い場合には、
図7(C)に示される部分的に集じん装置を並列配置したもの、
図7(D)のように2系統に分け配置してもよい。
【0078】
第2実施形態及びその変形例である汚染土壌処理装置2、3では、加熱炉11内のガス流速Uを調節するための空気供給装置71を備えるが、第1実施形態の汚染土壌処理装置1においても空気供給装置71を設置してよい。また汚染土壌処理装置1、2、3において、加熱炉11内のガス流速Uを調節するためのガスとして、空気供給装置71に代えて、または空気供給装置71とともに固体が除去された排ガスの一部を加熱炉11に供給するガス供給手段を設けてもよい。
【0079】
上記実施形態では、加熱炉11として熱風発生装置25がキルン本体12に直付けされたロータリーキルン11を示したが、熱風発生装置25とキルン本体12とが分離していてもよい。要すれば、加熱炉本体に所定量の熱風を供給できればよい。これは加熱炉11にロータリーキルン以外の装置を使用した場合も同じである。
【0080】
上記汚染土壌処理装置1、2、3において、加熱炉11の内の土壌の滞留時間を増加させる目的で、キルン本体12の出口部にキルン本体12と一緒に回転する堰を設けてもよい。この堰は、ドーナツ状の円板などをキルン本体12の出口部に固定することで設けることができる。キルン本体12に堰を設ける代わりに、キルン本体12の出口部であってフード16に堰を設けてもよい。フード16に設ける堰は、キルン本体12と分離しているので回転しない。フード16に設ける堰は、高さを調節可能な可動堰としてもよい。このような堰は、板材で容易に形成することができる。
【0081】
また上記汚染土壌処理装置1、2、3において、粗粒分がショートパスして集じん装置41側に混入することを防止する目的で、フード16の上部の排気口19に衝突板を設けてもよい。また上記汚染土壌処理装置1、2、3において、排出装置18として一重ダンパ、二重ダンパ、スクリューフィーダ(抜出し機)、コンベアを用いてもよい。
【0082】
汚染土壌処理装置において、性状の異なる汚染土壌を適切に処理するには、
図5に示すように多くの変数(運転パラメータ)が関与する。このため参照データベースを、予備テスト結果を学習データとし、学習モデルを用いこれを機械学習させ作成するようにしてもよい。このとき新たに実験データが得られればこれを学習データとして加えることが好ましい。
【0083】
図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。また本発明は、後述の実施例に限定されるものではない。
【実施例0084】
<実施例1>
加熱炉に内燃式のロータリーキルン、集じん装置にバグフィルタ(BF)を用い、試験土を定量供給し、試料土を乾燥すると同時に風力分級する試験を行った。加熱炉には、日工株式会社製のマルチドライヤNMD-100(外径φ1,100mm、長さL3,500mm,バーナNTB-1S(燃焼量20~49L/h;燃料-灯油),バーナファン風量40.0m
3/min,電動機3.7kW,2P,インバータ)を使用した。試験装置のフロー図を
図8に示した。
【0085】
試験土には市販のまさ土を使用した。表1に試験に使用したまさ土の物性を示した。試験土の自然含水比は13.5%であった。
【0086】
【0087】
材料供給量、キルン内風速、キルン回転数を変化させ試験を行い、試験土の乾燥状態の把握、排出ベルコンおよびバグフィルタに捕集された試料の排出量及び粒度分布等を測定した。風量は、排気室出口の排ガス酸素濃度より、キルン内風速は、ドライヤ熱風量と全体の排ガス量より算出した。
【0088】
試験Run5-1,Run5-2
ロータリーキルン内に試験土を1,000kg/hにて投入し、キルン回転数60Hz、キルン内風速を0.52m/s(Run5-1)、0.64m/s(Run5-2)、Run5-1の排ガス設定温度を130℃、Run5-2の排ガス設定温度を180℃とし、風力分級を行った。排出ベルコンから排出される試験土の温度は、Run5-1において120℃、Run5-2において165℃であった。なお、試験土は、112℃まで加熱すれば含水比が概ね1%以下となり、十分に乾燥できることを確認済である。
【0089】
試験の結果、バグフィルタBFで回収された細粒分は、投入土の重量割合でRun5-1で6.3%、Run5-2で7.7%であった。それら細粒分の粒度組成(シルト・粘土分の割合)は、Run5-1で86.1%(シルト:8.5%、粘土:17.6%)、Run5-2で91.8%(シルト:74.3%、粘土:17.5%)であった。これらからキルン内風速を制御することで、細粒分(シルト・粘土分)を選択的に風力分級できることがわかった。またシルト分の割合は処理前(原土)よりも増えており、砂分の磨鉱効果が確認された。
【0090】
試験Run4-1,Run4-2
ロータリーキルン内に試験土を500kg/hにて投入し、キルン内風速を0.6m/sとし、キルン回転数を30Hz(Run4-1)、15Hz(Run4-2)とし風力分級を行った。その結果、バグフィルタBFで回収された細粒分は、投入土の重量割合でRun4-1で17.0%、Run4-2で17.0%となった。キルン回転数を下げることで(60Hz→30Hz)、キルン内の保有土量および掻き上げ土量が増加し、バグフィルタBFへ風力分級する量を制御できることがわかった。
【0091】
<実施例2>
図9に試験装置を示した。この試験装置は、実施例1で使用した
図8に示す試験装置と同じであるが次の2点が異なる。第1にバグフィルタに捕集された細粒分を回収する際に細粒分が粗粒側に混入することを防止する細粒分/粗粒分区画用壁をバグフィルタの下部に設けた。第2に偶発的に細粒側に混入する砂・礫等を防ぐ目的でバグフィルタの上部に網(異物混入防止用ネット)を設けた。
【0092】
試験要領は、基本的に実施例1と同じであり、キルンからの排出物を粗粒側又は粗粒分側、バクフィルタの回収物を細粒側又は細粒分側とした。粗粒側又は粗粒分側を風選(大)と表現し、細粒側又は細粒分側を風選(小)と表現する場合がある。処理後は、試験後、乾燥及び風力分級後と同じ意味である。
【0093】
試験の評価項目は、次の通りである。
(1)放射性セシウムCsの除去
試験土(処理前)の放射能濃度に対し、処理後の粗粒側の放射能濃度の低減化として除染率を評価した。除染率の算出式は、下記の通りである。
【数1】
【0094】
(2)細粒分の除去と処理後の細粒側に含まれる粗粒分の量
汚染濃度が高いと考えられる細粒分について、試験土(処理前)と処理後の粗粒側とに含まれる細粒分の量を比較し、除去された割合として細粒分除去率で評価した。また、処理後の細粒側に含まれる粗粒分の割合として粗粒分混入率により、風力分級の評価を行った。それぞれの評価式は、下記の通りである。細粒分は、シルト分(5~75μm)及び粘土分(5μm以下)、粗粒分は、礫分(2mm以上)及び砂分(75μm~2mm)とし、粒度分布測定結果から算出した。
【数2】
【0095】
(3)処理後の有機物量の変化の確認
風力分級において有機物を細粒分側に捕集することは、有機物に付着する放射性物質が細粒分側に移行することで、粗粒分の汚染濃度の低下に寄与すると考えられる。さらに粗粒分を建設資材などへ再生利用することを想定した場合、粗粒分に含まれる有機物の分解等の経年劣化が懸念されるため、有機物は可能な限り粗粒分から除去するのが望ましい。そこで、処理後の有機物量の変化について、試験土(処理前)に含まれる有機物量から処理後の粗粒側に含まれる有機物量を減少した割合として有機物除去率として評価した。有機物量については強熱減量を有機物量として評価した。評価式は、下記の通りである。
【数3】
【0096】
(4)乾燥評価(含水比/含水率)
この処理では分級処理と合わせて乾燥処理も行われる。乾燥の評価については、含水比または含水率で評価した。本論では主に含水比での評価を行った。なお、含水比および含水率の算出式は、下記の通りである。本論では、乾燥した土を対象としていることから、絶乾の乾土での評価を行う。
【数4】
【0097】
試験内容は次の通りである。
試験土には、実証試験では除去土壌を、事前試験では模擬試験土を使用した。除去土壌及び模擬試験土の主な仕様を表2に示した。なお、模擬試験土は、除去土壌を土質的に模擬した土壌である。
【0098】
【0099】
事前試験の条件
事前試験の条件(運転条件)を表3に示した。本試験では、模擬試験土の供給量(材料供給量,処理速度)を800,1000,1600kg/h、キルン設定静圧を-30,-100Pa、排ガス設定温度を130,150℃、キルン回転数を6.7,13.4rpmとした。また運転条件の試験パラメータについて整理した内容を表4に示した。
【0100】
【0101】
【0102】
事前試験の結果
表3の条件で行った試験結果を表5に示した。表5の結果を用いて、模擬試験土から発生する水蒸気量およびバーナの燃料の消費に伴い発生する排ガス量について試算した結果を表6に示した。表6の含水比の投入前は、模擬試験土の含水比を示し、投入後の大、小、平均は、それぞれ処理後の粗粒側、細粒側、粗粒側と細粒側とを平均した含水比を示す。
【0103】
【0104】
【0105】
表6の値を算出するために使用した式を下記に記す。空気比は、バーナに供給される燃料をバーナで完全燃焼させる場合に必要な理論空気量に対して過剰に供給された空気量の比率を示す。式は以下の式を用いた。O
2濃度は、実測値を使用した。
【数5】
【0106】
水蒸気発生量(単位時間)は、装置に投入した土壌に対し乾燥処理により発生する単位時間当たりの水蒸気量を示す。以下に示すように土壌中に含まれる水分を気体状態の体積に換算して算出した。式(9)において、処理土壌含水比は、処理後の粗粒側及び細粒側を合算した土壌の含水比である。
【数6】
【0107】
燃焼排ガス量(単位時間)は、バーナに供給される燃料を燃焼することで単位時間当たりに発生する排ガス量を示す。以下の式を用いて算出した。ここで燃焼量(単位時間)は実測値を使用した。また理論乾き量・理論湿り量は、燃料が灯油の時の値を使用した。
【数7】
【0108】
総排ガス量(単位時間)は、試験装置から発生する単位時間当たりの排ガス量を示す。試験装置から生じる排ガス量は、土壌の乾燥による水蒸気と燃焼に伴う排ガスとの総計で評価した。算出式を以下に示した。
【数8】
【0109】
試験装置の機械特性の確認
試験装置の特性として装置内で発生する風量について、表6に示される試算結果を用いて評価した。装置内で発生する風量については、材料排出部での空気の流入が無く総排ガス量と装置内の風量は同等という仮定に基づいて評価を行った。また、総排ガス量のうち、水蒸気発生量については投入する試験土の含水比により発生量も変動することから、装置内で発生する風量について評価する際には燃焼排ガス量だけを用いて検討を進めた。
【0110】
キルン設定静圧の値が高くなると、バーナから供給される風量が高くなる傾向になることを確認した。なお、ドライヤ静圧の値が高くなるに従い装置の接続部に存在する隙間部からの侵入空気量が増加し装置内の風量も増加することは乾燥装置として一般的な特性である。ドライヤ静圧の値が高くなるとは、負の値(絶対値)が大きくなることを意味する。排ガス温度を高く設定した場合、装置内の風量も増加する傾向にあることを確認した。
【0111】
試験土供給量の減少に伴い風量は増加する傾向にあることを確認した。なお、試験土供給量の減少に伴う燃焼量の減少については、処理対象物の量が減少することでバーナの燃焼量も減少するという点で乾燥装置として正常な傾向である。一方で、排ガス中に含まれるO2濃度から求められる空気比が、試験土供給量の減少に伴い増加することが確認できる。これは、バーナの燃焼量の減少に伴い、装置の接続部等に存在する隙間部からの侵入空気量と排出口等の隙間からの漏れ空気量のバランスが変動し、装置内の排ガス量が変化し風量も変化したものと推測される。
【0112】
キルン回転数の増加とともに風量が増加する傾向にあることを確認した。キルン回転数が上がると、装置内の試験土がキルンの内壁に設けられている羽により持ち上げられ、落とされる回数も増えるためベールも多く形成される。これによりバーナが生じる熱風と試験土との熱交換が促進され、排ガス温度が一時的に下がる。そのため、排ガス温度と排ガス設定温度の間の差を解消するためにバーナ開度が上がり排ガス量が増加し風量も増加するものと考えられる。
【0113】
含水比について
含水比の結果を
図10に示した。図中P1~P6は、試験番号を表し、風選(大)は、粗粒側を、風選(小)は、細粒側を表す。
図10の結果から、本試験条件範囲内において細粒側・粗粒側ともに含水比は5%を下回っていた。
【0114】
粒度分布について
各試験条件における粒径加積曲線を
図11、
図12に、土壌成分の分布図を
図13に、細粒分含有率を
図14に示した。それぞれの結果から、粗粒側と細粒側に粗粒分と細粒分が分かれている様子が確認できる。
【0115】
キルンの回転の効果について
キルンの内壁には攪拌用の羽根が設置されており、キルンが回転することでキルン内の土壌は持ち上げられ、その後キルンの底部に落とす工程が繰り返される。この工程で発生する土壌粒子同士や壁面への衝突により土壌粒子表面に付着する細粒分の剥離、解砕の効果が期待できる。そこで、模擬試験土、処理後の粗粒分と細粒分とを足し合わせた粒度分布について評価した。結果を粒径加積曲線として
図15、
図16に示した。図中、大+小は、処理後の粗粒分と細粒分とを足し合わせたものを示す。
【0116】
粒径加積曲線を確認すると、模擬試験土(原土)と比較して処理後の粗粒分と細粒分との合算分の線図は、概ね細粒分が増加している傾向にある。特に試験土の供給速度を小さくし、キルン回転数を小さくした試験番号No.P6では細粒分が増加していることが明確である(
図16参照)。キルンの解砕・剥離の効果が表れたものと考えられる。
【0117】
有機物量について
各試験条件における強熱減量の結果を
図17に示した。全体的な傾向として、粗粒側より細粒側の方が強熱減量の値が高いことが確認できる。これは本処理により細粒側に有機物が移行したことを示しているといえる。なお、本試験装置は、有機物の燃焼が生じない温度範囲で乾燥している。
【0118】
細粒分除去率、粗粒分混入率、有機物除去率について
各試験条件における細粒分除去率、粗粒分混入率、および有機物除去率等の結果を表7に示した。
【0119】
【0120】
細粒側の配分率に焦点を当て、細粒分除去率と粗粒分混入率について評価した結果を
図18に示した。試験土(原土)に含まれる細粒分の割合はバラつきがあるため、ここでは細粒側の質量率に対し試験土(原土)に含まれる細粒分の質量率で除した値として質量比を用いて評価した。
【0121】
この結果から、細粒側の質量率と細粒分除去率は強い相関にあることが確認できる。細粒分除去率を向上するためには、細粒側の質量率を増加する必要がある。一方、細粒側の質量率と粗粒分混入率も強い相関にあることから、細粒側の質量率を高くすると、余分なものも細粒側に混入する。
【0122】
細粒分除去率と有機物除去率の関係を
図19に示した。細粒分除去率と有機物除去率は強い相関関係にあり、細粒分除去率の増加とともに有機物除去率も増加することが確認できる。
【0123】
機械特性との関係
ドライヤ静圧に対する細粒側の質量率および、細粒側に配分される粗粒分と細粒分の割合の変化について整理した結果を
図20に示した。
図20からドライヤ静圧の数値が負の方向に高くなるに従い、細粒側の質量率と細粒分の配分割合が高くなる傾向にある。しかし、粗粒分の配分割合も高くなっている。
【0124】
風量と細粒側の質量率および、細粒側に配分される粗粒分と細粒分の割合の変化について整理した結果を
図21に示した。
図21から風量の増加に伴い、細粒側の質量率ならびに細粒分の配分割合は低下するが、それとともに粗粒分の配分割合も低下する傾向にあることが確認できる。以上の結果から、細粒側の質量率の設定値を満たすドライヤ静圧の設定を行い、その後、風量の調整により細粒側に含まれる成分の調整を行うことで、熱減容風選別の分級特性の調整が可能と考えられる。
【0125】
実証試験
実証試験に使用した除去土壌の主な仕様を表8に示す。実証試験では、試験を行う前に使用した試験土毎に物性確認を行った。
【0126】
【0127】
実証試験の試験条件
除去土壌を用いた試験条条件(運転条件)を表9に示した。本試験では除去土壌の供給量(材料供給量,処理速度)を1000kg/h、キルン設定静圧を-30,-100Pa、排ガス設定温度を130,150℃、キルン回転数を6.7,13.4rpmとした。
【0128】
【0129】
実証試験の試験結果
表9の条件で試験を実施した結果を表10に示した。表10の結果を用いて、除去土壌から発生する水蒸気量およびバーナの燃料消費伴い発生する排ガス量について試算した結果を表11に示した。
【0130】
【0131】
【0132】
含水比について
含水比の結果を
図22に示す。図中の前、中、後は、試験の途中で試料を採取した時間を示す。W1~W4については、前は開始後20分経過時採取、中は開始後40分経過時採取、後は開始後60分経過時に採取した。W1‘については、前は開始後10分経過時採取、中は開始後20分経過時採取、後は開始後30分経過時に採取した。
図22の結果から本試験条件範囲内において、粗粒側及び細粒側とも含水率は3%以下であった。
【0133】
粒度分布について
粒径加積曲線の結果を
図23及び
図24に、土壌成分の分布図を
図25に、細粒分含有率を
図26に示した。それぞれの結果から粗粒側と細粒側に粗粒分と細粒分が分かれていることが分かる。
図23及び
図24は、前・中・後の平均値を用いた。
【0134】
キルンの回転の効果について
実除染土の粒度分布と、処理後の粗粒分と細粒分を足し合わせた粒度分布について粒径加積曲線を用いて評価した。なお、評価に当たり、前・中・後の平均で行った。結果を
図27及び
図28に示した。
【0135】
有機物量について
強熱減量の結果を
図29に示した。全体的な傾向として、粗粒側より細粒側の方が強熱減量の値が高いことが確認できる。これは本処理により細粒側に有機物が移行したことを示しているといえる。なお、本試験装置は、有機物の燃焼が生じない温度範囲で乾燥している。
【0136】
細粒分除去率、粗粒分混入率、有機物除去率について
各試験条件における細粒分除去率、粗粒分混入率、有機物除去率等の結果を表12に示した。
【0137】
【0138】
細粒側の配分率に焦点を当て、細粒分除去率と粗粒分混入率について評価した結果を
図30に示した。試験土(除去土壌)に含まれる細粒分の割合はバラつきがあるため、ここでは細粒側の質量率に対し試験土(除去土壌)に含まれる細粒分の質量率で除した値として質量比を用いて評価した。
【0139】
この結果から、細粒側の質量率と細粒分除去率は強い相関にあることが確認できる。細粒分除去率を向上するためには、細粒側の質量率を増加する必要がある。一方、細粒側の質量率と粗粒分混入率も強い相関にあることから、細粒側の質量率を高くすると、余分なものも細粒側に混入する。
【0140】
細粒分除去率と有機物除去率の関係を
図31に示した。細粒分除去率と有機物除去率は強い相関関係にあり、細粒分除去率の増加とともに有機物除去率も増加することが確認できる。
【0141】
放射性Cs濃度について
放射能濃度の評価にあたり、乾燥状態の土壌で評価する必要がある。このことから、乾燥時の土壌の放射能濃度は下記の式を用いて算出した。その結果を表中に含水無として記す。評価した結果の一覧を表13に示した。表13の内容を元に平均値を算出し、除染率について評価した結果を表14に示した。
【数9】
【0142】
【0143】
【0144】
処理後の放射性Cs濃度の結果を
図32に、除染率を
図33に、細粒分除去率と除染率との関係を
図34に示した。
図32の結果から、粗粒側と細粒側で放射性Cs濃度は変化し、細粒側の方が概ね高くなる傾向にあることが確認できる。また
図34に示すように細粒分除去率と除染率との間には強い相関関係がみられる。この結果から、細粒分除去率の増加に伴い除染率も増加することが確認できる。従って、細粒分を取り除くことで効率よく低濃度化の処理が行える。