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特開2022-13815二重ルーメン吸引を行う隔離されたステント留置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013815
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】二重ルーメン吸引を行う隔離されたステント留置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20220111BHJP
   A61F 2/86 20130101ALI20220111BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20220111BHJP
【FI】
A61F2/966
A61F2/86
A61M25/10 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021106396
(22)【出願日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】16/914,881
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515248931
【氏名又は名称】ニューラヴィ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】カール・キーティング
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ケリー
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA09
4C267AA41
4C267BB06
4C267BB11
4C267BB28
4C267CC08
4C267DD01
4C267HH08
4C267HH09
(57)【要約】
【課題】血管内病変部の隔離されたステント留置のためのカテーテルベースのシステムを提供すること。
【解決手段】血管内病変部の隔離されたステント留置のためのカテーテルベースのシステムが、バルーン拡張型ステント又は自己拡張型ステントを間に有する2つの拡張可能な閉塞装置を含むことができる。拡張可能な閉塞装置を病変部に対して遠位方向及び近位方向に拡張して血管系を閉塞することができる。拡張可能な閉塞装置間に形成された空洞内に治療剤を注入することができる。治療剤との接着を防止するために、一方又は双方の閉塞装置にコーティングを施すことができる。閉塞装置が適所にある間に、病変部全体にわたってステントを展開することができる。ステント留置中に剥離した断片を吸引することができる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内治療システムであって、
バルーンガイドカテーテルであって、
遠位端と、
近位端と、
前記遠位端に近接して配置されたバルーンと、
前記バルーンと連通する膨張ルーメンと、
薬物送達ルーメンと、
装置送達ルーメンと、
を含む、バルーンガイドカテーテルと、
前記バルーンガイドカテーテルの前記装置送達ルーメン内に配置されるようにサイズ決めされた送達チューブであって、拡張可能な閉塞要素をその上に含む、送達チューブと、
を備える、血管内治療システム。
【請求項2】
前記送達チューブを取り囲み、前記拡張可能な閉塞要素に対して近位方向に配置されたステントを更に備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ステントを取り囲むシースを更に備え、
前記ステントは自己拡張可能であり、
前記シースは、前記ステントの拡張を阻止するように配置され、
前記シースは、前記ステントの拡張を可能にするように移動可能である、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記拡張可能な閉塞要素は自己拡張可能であり、
前記シースは、前記拡張可能な閉塞要素の拡張を阻止するように配置され、
前記シースは、前記拡張可能な閉塞要素の拡張を可能にするように移動可能である、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記拡張可能な閉塞要素は膨張可能である、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記送達チューブは血管形成バルーンを更に含み、
前記ステントは前記血管形成バルーンを取り囲む、
請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記送達チューブと、前記バルーンガイドカテーテル上の前記バルーンとはそれぞれ、血管内病変部封止剤との接着を阻害するのに有効なコーティングをその上に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記薬物送達ルーメンは、血管内病変部封止剤との接着を阻害するためのコーティングをその中に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
血管内治療システムを構築するための方法であって、前記方法は、
上に設けられた第1の拡張可能な要素と、第1のルーメンと、第2のルーメンと、を含むガイドカテーテルを選択することと、
前記第2のルーメン内に配置されるようにサイズ決めされた送達チューブを選択することであって、前記送達チューブは、第2の拡張可能な閉塞要素をその上に含む、ことと、
前記送達チューブの上にステントを畳み込むことと、
前記第1の拡張可能な閉塞要素、前記第2の拡張可能な閉塞要素、前記ステント、及び前記第1のルーメンの内側に1つ以上のコーティングを施すことであって、前記1つ以上のコーティングは、血管内病変部封止剤との接着を阻害するのに有効である、ことと、
を含む、方法。
【請求項10】
シースを前記ステントの上に配置することによって、前記ステントの拡張を阻止する工程と、
血管形成バルーンを前記ステントの下に配置する工程と、
のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、医療処置のための装置及び方法に関し、より詳細には、頭蓋内アテローム性動脈硬化(intracranial atherosclerosis disease:ICAD)に関連する病変部などの血管内病変部を治療するための装置及び治療に関する。
【背景技術】
【0002】
アテローム性動脈硬化は、血管系内の血管のルーメン内の空間を狭小化及び低減する病変部から生じる。このような病変部は、通常、プラークから構成されるが、このプラークは、脂肪、コレステロール、カルシウム、又は血液の他の成分であり得る。重度の閉塞又は閉鎖は、異なる器官及び身体の部分への酸素化血液の流れを妨害し、心臓発作又は脳卒中などの他の心血管障害をもたらし得る。血管の狭小化、又は狭窄は、血塊及び他の塞栓が、このような場所、特に血管の直径が既に小さい神経血管内に留まり得るリスクを高める。ICADは、脳に血液を供給するこれらの動脈及び血管の狭小化であり、虚血性脳卒中の最も一般的な近因である。
【0003】
血管の閉塞に対する処置には、抗凝固剤又は抗血小板剤などの薬物の使用と共に、例えば外科的な血管内膜除去術、血管形成術、及びステント留置などの医療処置を挙げることができる。血管内血管再生治療(ERTにおける最近の成功の多くは、安全な血栓除去装置の更なる開発にあった。ステントリーバ(stentriever)、直接吸引システム、及び他の血塊回収装置などの装置は、より良好な臨床転帰に強く関連している。しかしながら、これらの装置は、閉塞した塞栓を除去及び回収することによって血管を再開通させるように主に設計されている。閉塞部位に有意狭窄が存在する場合、十分な再開通が生じない場合があり、移植されたステントの必要性を増加させる。
【0004】
神経血管内の血塊及び病変部に対処するための治療方法は、特に狭窄の程度、標的閉塞部位の形状(すなわち、動脈幹、分岐など)、及び患者の全体的状態に依存する。例えば、機械的処置は、多くの場合、医療装置を使用して閉塞性血塊を回収し、次いでバルーン及びステントを利用して狭小化された動脈を開くことを伴う。ステントリーバ又は他の血塊回収装置の使用に続いて、バルーンを標的部位に送達させ、膨張させて、狭窄を拡張する。次いで、バルーンを除去し、ステント送達装置のためのカテーテルを介して交換することができる。所望の場合には、ステントを適所に配置した後に、ステント内でバルーンを膨張させて、ステントスキャフォールドフレームのストラットを血管の内壁にしっかりと押し付けることができる。
【0005】
ICADの場合、複数の装置を使用した長時間に及ぶ閉塞の処置及び/又は横断により、ICADが破裂又は断片化する可能性を高めてしまうおそれがある。このような断片としては、血塊、プラーク、及び他の血栓残屑が挙げられるが、これらに限定されない。断片は、広範囲の発作あるいは死亡を引き起こす血管の閉塞をもたらし得る。ICADを診断することが困難であるため、医師は、治療中に複数回病変部を横切る必要があり得るが、それによって、破裂又は断片化の可能性が更に増加することになり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、血管内閉塞、具体的にはICADに対する治療に引き続き取り組み、しかも改善するためのシステム及び装置が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、バルーン拡張型ステント又は自己拡張型ステントを間に有する2つの拡張可能な閉塞装置を含むことができる血管内病変部の隔離されたステント留置のためのカテーテルベースのシステムを提供することである。拡張可能な閉塞装置を病変部に対して遠位方向及び近位方向に拡張して血管系を閉塞することができる。拡張可能な閉塞装置間に形成された空洞内に治療剤を注入することができる。治療剤との接着を防止するために、一方又は双方の閉塞装置にコーティングを施すことができる。閉塞装置が適所にある間に、病変部全体にわたってステントを展開することができる。ステント留置中に剥離した断片を吸引することができる。
【0008】
例示的な血管内治療システムが、バルーンガイドカテーテル及び送達チューブを含むことができる。バルーンガイドカテーテルは、遠位端及び近位端を含むことができる。遠位端に近接してバルーンを配置することができる。バルーンガイドカテーテルは、バルーンと連通可能な膨張ルーメン、薬物送達ルーメン、及び装置送達ルーメンを含む複数のルーメンを含むことができる。送達チューブは、装置送達ルーメン内に配置されるようにサイズ決めすることができる。拡張可能な閉塞要素を送達チューブ上に配置することができる。
【0009】
システムは、送達チューブを取り囲むステントを更に含むことができる。ステントを、拡張可能な閉塞要素に対して近位方向に配置することができる。
【0010】
システムは、ステントを取り囲むシースを更に含むことができる。一例では、ステントは自己拡張型であってもよい。シースは、ステントの拡張を阻止するように配置することができ、ステントの拡張を可能にするように移動可能であってもよい。
【0011】
拡張可能な閉塞要素は、自己拡張可能であってもよい。シースは、拡張可能な閉塞要素の拡張を阻止するように配置することができ、拡張可能な閉塞要素の拡張を可能にするように移動可能であってもよい。あるいは、拡張可能な閉塞要素は膨張可能であってもよい。
【0012】
送達チューブは、血管形成バルーンを更に含むことができる。ステントは、血管形成バルーンを取り囲むことができる。
【0013】
一例では、送達チューブと、バルーンガイドカテーテル上に配置されたバルーンとはそれぞれ、血管内病変部封止剤との接着を効果的に阻害するためのコーティングを有することができる。
【0014】
一例では、薬物送達ルーメンは、血管内病変部封止剤との接着を阻害するためのコーティングをその中に含むことができる。コーティングは、PTFE、プラズマ処理、フルオロポリマー、及び他の低摩擦ポリマーなどの低摩擦材料を含むことができる。
【0015】
血管内病変部を治療するための例示的な方法が、任意の順序で提示される以下の工程のうちの1つ以上を含んでもよい。本方法は、当業者によって認識及び理解される追加の工程を更に含んでもよい。
【0016】
本方法は、病変部に対して遠位方向に配置された遠位側閉塞要素を拡張させること及び、病変部に対して近位方向に配置された近位側閉塞要素を拡張させることによって、病変部を含む隔離された空洞を形成することを含むことができる。一例では、遠位側閉塞要素及び近位側閉塞要素は、各要素を膨張させることによって拡張させることができる。
【0017】
本方法は、隔離された空洞内に第1のカテーテルルーメンを介して液体を注入することを含んでもよい。一例では、隔離された空洞内に第1のカテーテルルーメンを介して血管内病変部封止剤を注入してもよい。
【0018】
本方法は、隔離された空洞を第2のカテーテルルーメンを介して吸引することを含み得る。
【0019】
本方法は、隔離された空洞内で病変部全体にわたってステントを拡張させることを更に含み得る。一例では、ステント上に配置された血管形成バルーンを膨張させて、病変部全体にわたってステントを拡張させることができる。
【0020】
一例では、本方法は、第1に遠位側閉塞要素を拡張させること、第2に近位側閉塞要素を拡張させること、第3に隔離された空洞内に第1のカテーテルルーメンを介して液体を注入すること及び、第4に隔離された空洞内で病変部全体にわたってステントを拡張させることを含むことができる。
【0021】
遠位側閉塞要素のシースを外して遠位側閉塞要素を自己拡張させることによって、遠位側閉塞要素を拡張させてもよい。ステントのシースを外してステントを自己拡張させることによって、病変部全体にわたってステントを拡張させてもよい。
【0022】
本方法は、隔離された空洞内で病変部全体にわたってステントを拡張させる前、及び、隔離された空洞内で病変部全体にわたってステントを拡張させた後に、隔離された空洞を第2のカテーテルルーメンを介して吸引することを更に含むことができる。
【0023】
本方法は、隔離された空洞内に第1のカテーテルルーメンを介して生理食塩水溶液を注入すると同時に、隔離された空洞を第2のカテーテルルーメンを介して吸引することを更に含むことができる。
【0024】
本方法は、遠位側閉塞要素を含む送達チューブを第2のカテーテルルーメンを通して並進させることを更に含むことができる。
【0025】
血管内治療システムを構築するための例示的な方法が、第1の拡張可能な要素、第1のルーメン、及び第2のルーメンを有するガイドカテーテルを選択することを含むことができる。本方法は、ガイドカテーテルの第2のルーメン内に配置されるようにサイズ決めされた送達チューブを選択することを含むことができる。送達チューブは、第2の拡張可能な閉塞要素を含むことができる。本方法は、送達チューブの上にステントを畳み込むことを含むことができる。本方法は、ガイドカテーテルの第1の拡張可能な閉塞要素、第2の拡張可能な閉塞要素、ステント、及びガイドカテーテルの第1のルーメンの内側に1つ以上のコーティングを施すことを含み得る。コーティングは、血管内病変部封止剤との接着を効果的に阻害することができる。
【0026】
本方法は、シースをステントの上に配置することによって、ステントの拡張を阻止することを更に含むことができる。
【0027】
本方法は、血管形成バルーンをステントの下に配置することを更に含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の上記及び更なる態様は、添付の図面と併せて以下の説明を参照して更に考察され、様々な図面において、同様の数字は、同様の構造要素及び特徴を示す。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の原理を例示することが重視されている。図は、限定としてではなく単なる例示として、本発明の装置の1つ以上の実施形態を描写している。
図1A】本発明の態様による治療工程中の血管内治療システムの図である。
図1B図1Aに示す治療システムの断面図である。
図1C図1Aに示す治療システムの断面図である。
図2A】本発明の態様による、図1A図1Cに示す治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図2B】本発明の態様による、図1A図1Cに示す治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図2C】本発明の態様による、図1A図1Cに示す治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図2D】本発明の態様による、図1A図1Cに示す治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図2E】本発明の態様による、図1A図1Cに示す治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図2F】本発明の態様による、図1A図1Cに示す治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図2G】本発明の態様による、図1A図1Cに示す治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図2H】本発明の態様による、図1A図1Cに示す治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図2I】本発明の態様による、図1A図1Cに示す治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図2J】本発明の態様による、図1A図1Cに示す治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図3A】本発明の態様による、代替的治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図3B図3Aに示す治療システムの断面図である。
図3C図3Aに示す治療システムの断面図である。
図3D】本発明の態様による、代替的治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図4A】本発明の態様による、別の代替的治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図4B】本発明の態様による、別の代替的治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図4C】本発明の態様による、別の代替的治療システムを使用して血管内病変部を治療する工程を示す図である。
図5A】本発明の態様による、血管内治療システムのカテーテルの断面の変形例を示す。
図5B】本発明の態様による、血管内治療システムのカテーテルの断面の変形例を示す。
図5C】本発明の態様による、血管内治療システムのカテーテルの断面の変形例を示す。
図6】本発明の態様による、血管内病変部を治療するための各工程を概説するフロー図である。
図7】本発明の態様による、血管内治療システムを構築するための各工程を概説するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1Aは、血管BV内の病変部Pの治療中の血管内治療システム100aの図である。図1B及び図1Cは、図1Aに示す治療システム100aの断面図である。図2A図2Jは、図1に示す治療システム100aを用いた治療工程を示す。図1A図1C及び図2A図2Jを集合的に参照すると、治療システム100aは、バルーンガイドカテーテル102と、送達チューブ108a上に担持されたステント110aを有する送達チューブ108aとを含むことができる。システム100aは、隔離された空洞Cを血管BV内に形成し、ステント110a及び/又は薬物及び吸引などの他の治療を、隔離された空洞C内の病変部Pに送達するように構成することができる。システム100aは、長手方向軸10に沿って細長い。
【0030】
バルーンガイドカテーテル102は、遠位端124を含むことができる。バルーンガイドカテーテル102は、バルーンガイドカテーテル102の遠位端124に近接して配置された拡張可能要素112(以下、「近位側バルーン」)を更に含むことができる。
【0031】
近位側バルーン112は、畳込構成と拡張構成とを有することができる。畳込構成では、近位側バルーン112の拡張可能な材料をバルーンガイドカテーテル102の周囲に畳み込んで、バルーンガイドカテーテル102が血管系を通過することを可能にすることができる。拡張構成では、近位側バルーン112は膨張ルーメン128を介して膨張され得る。近位側バルーン112は、近位側バルーン112が血管BVの内壁に当接するように拡張され得る。
【0032】
あるいは、近位側拡張可能要素112は、多孔質材料製であってもよい。近位側拡張可能要素112の細孔は、病変部Pから剥離した断片Fが近位側拡張可能要素112を通過するのを阻止するようにサイズ決めすることができる。近位側拡張可能要素112の細孔は、血液の通過を可能にするようにサイズ決めすることができる。
【0033】
バルーンガイドカテーテル102は、1つ以上のルーメンを含むことができる。各ルーメンは、同じ又は異なる時点で互いから独立して使用することができる。各ルーメン116、118、128は、本明細書に図示及び説明するシステム100a~100cの薬物及び/又は構成要素の吸引及び送達を含む複数のタスクを容易にすることができる。一例では、各ルーメンを同時に使用して、複数の異なる治療工程を実行することができる。バルーンガイドカテーテル102は、薬物送達ルーメン118を含むことができる。薬物送達ルーメン118は、システム100aのユーザが、ICAD治療剤120を含む薬物をシステム100aを通して所望の位置に直接送達することを可能にすることができる。薬物送達ルーメン118は、1つ以上のライナーを有する低摩擦材料及び/又は標準的な材料を含むことができる。ライナーは、PTFE、ポリイミド、HDPE、及び他の同様の低摩擦ポリマーを含むことができる。あるいは、又はそれに加えて、薬物送達ルーメン118は、ICAD治療剤120が薬物送達ルーメン118に付着するのを阻害する材料の1つ以上のコーティングを有することができる。薬物送達ルーメン118のコーティングは、ICAD治療剤120の送達を容易にし、残余のICAD治療剤120が薬物送達ルーメン118内に残存するのを防止することができる。コーティングは、PTFE、プラズマ処理、フルオロポリマー、及び他の低摩擦ポリマーなどの低摩擦材料を含むことができる。バルーンガイドカテーテル102は、装置送達ルーメン116を更に含むことができる。装置送達ルーメン116は、送達チューブ108などの装置送達ルーメン116内に収まるようにサイズ決めされた構成要素を血管系内の適切な位置へと送達することを容易にしてもよい。一例では、装置送達ルーメン116を吸引に使用してもよい。バルーンガイドカテーテル102はまた、図4Bに示すような膨張ルーメン128を含むことができる。膨張ルーメン128は近位側バルーン112と流体連通することができ、近位側バルーン112を膨張及び収縮させるために使用することができる。バルーンガイドカテーテル102は、治療システム100aが病変部Pに配置されている時に、バルーンガイドカテーテル102の近位端を患者の外側に配置することができるように、十分に長くすることができる。そのような構成となっていることで、ユーザ(例えば、医師)は、バルーンガイドカテーテル102の近位端を操作して、バルーンガイドカテーテル102の遠位端124を配置することができる。
【0034】
送達チューブ108aは、バルーンガイドカテーテル102の装置送達ルーメン116内に配置することができる。送達チューブ108aは、バルーンガイドカテーテル102の装置送達ルーメン116を通って並進可能であるようにサイズ決めすることができる。送達チューブ108aは、バルーンガイドカテーテル102を通って前進し、バルーンガイドカテーテル102の遠位端124から遠位方向14に延びることができる。送達チューブ108aは、病変部P全体にわたって配置されている時に、病変部Pから遠位方向14に更に延びることができる。
【0035】
送達チューブ108aは、遠位側バルーン114aを含むことができる。遠位側バルーン114aは、遠位側バルーン114aが血管BVの内壁に当接することができるように拡張可能であってもよい。送達チューブ108aは、遠位側バルーン114aを膨張させるための膨張ルーメン132を含むことができる。
【0036】
システム100aは、図1Cの断面図及び図2Aの輪郭に示されるように、送達チューブ108aを取り囲むステント110aを含むことができる。ステント110aは、送達チューブ108a上の遠位側バルーン114aから近位方向12に配置することができる。システム100が治療用に配置されると、ステント110aを近位側バルーン112から遠位方向14に配置することができる。システム100aは、送達チューブ108a及びステント110aを取り囲むシース106を含むことができる。シースは、ステント110aの自己拡張を阻止することができる。
【0037】
近位側バルーン112は、遠位側バルーン114aから近位方向12に配置することができる。近位側バルーン112と遠位側バルーン114aとの間に、隔離された空洞Cを形成することができる。隔離された空洞Cは、病変部Pを含むことができる。近位側バルーン112及び遠位側バルーン114aが拡張構成にある場合、近位側バルーン112及び遠位側バルーン114aは、病変部Pからの断片Fが病変部Pから離れて移動するのを防止することができる。
【0038】
システム100aは、ガイドワイヤ104に沿って送達することができる。ガイドワイヤ104は、病変部Pの部位へのシステム100aの操作を容易にすることができる。
【0039】
図2A図2Jは、送達チューブ108a上に遠位側バルーン114aを含む治療システム100aを使用して血管内病変部Pを治療する工程を示す一連の図である。
【0040】
図2Aでは、血管内治療システム100aを血管系を通して病変部Pへと前進させることができる。図2Aに示す位置に到達させるには、最初にガイドワイヤ104を患者の血管系を通して延ばして、病変部P全体にわたって配置することができる。次いで、バルーンガイドカテーテル102及び送達チューブ108aを、ガイドワイヤ104に沿って遠位方向14に図示の位置まで並進させることができる。バルーンガイドカテーテル102を、近位側バルーン112が病変部Pから近位方向12になるまで前進させることができる。次いで、遠位側バルーン114aを畳込構成で含む送達チューブ108aを、バルーンガイドカテーテル102の装置送達ルーメン116を通って並進させ、カテーテル102の遠位端124から延ばすことができる。送達チューブ108aを、畳み込まれた遠位側バルーン114aが病変部Pから遠位方向14になるまで延ばすことができる。畳込構成のステント110aを、遠位側バルーン114aと近位側バルーン112との間に配置することができる。血管内治療システム100aが血管BV内に配置されている間に、シース106をステント110a上に配置することができる。シース106は、ステント110aが望ましくない時点又は位置で自己拡張することを防止することができる。
【0041】
図2Bでは、遠位側バルーン114aを膨張させて、血管BVの壁に円周方向に当接させることができる。同様に、近位側バルーン112をバルーンガイドカテーテル102の膨張ルーメン128を介して膨張させて、血管BVの壁に円周方向に当接させることができる。拡張された遠位側バルーン114a及び拡張された近位側バルーン112は、隔離された空洞Cを血管BV内に形成することができる。遠位側バルーン114aは、近位側バルーン112よりも前、後、又はこれと同時に膨張するように構成することができる。
【0042】
図2Cでは、隔離された空洞C内にICAD治療剤120を放出することができる。ICAD治療剤120を、バルーンガイドカテーテル102の薬物送達ルーメン118を通して送達することができる。バルーン112、114aは、治療剤を空洞C内に閉じ込めることにより、治療剤120が治療領域から離れて移動するのを阻止することができる。
【0043】
ICAD治療剤120は、病変部Pを安定化させ、及び/又は、病変部Pに対するシールを形成するように設計された1つ以上の薬物又は流体であってもよい。一例では、ICAD治療剤120は、1つ以上の抗血小板及び/又は抗凝固薬であってもよい。ICAD治療剤120は、血管形成術及び/又はステント留置による病変部Pの治療の際に形状を変えることができる可撓性封止材料であってもよい。更に、ICAD治療剤120は、毛管通路を開いた状態に維持することを容易にしてもよい。一例では、ICAD治療剤120は、図2Cに示すように、拡張した閉塞要素112、114aを通して血管BV内の特定の位置に送達され、そのような特定の位置に閉じ込められることによって、血栓症を局所的に予防することができる。ICAD治療剤120は、所定の期間にわたって放出されてもよい。ICAD治療剤120を放出することができる期間は、病変部Pの大きさ、病変部Pの位置、ICAD治療剤の種類、及び他の要因に基づいてもよい。一例では、ICAD治療剤120は、システム100aが破裂した病変部Pと接触すると放出されてもよい。病変部Pが破裂すると、ICAD治療剤120が放出され、血管BV内の残りの部分病変部Pの外表面上にシールを形成することができる。別の一例では、ICAD治療剤120は、血流が停滞するか又はごく僅かになると放出されてもよい。
【0044】
いくつかの治療では、バルーンガイドカテーテル102の吸引ルーメン116を通して吸引を施し、治療剤120の添加による空洞C内の圧力上昇を防止することができる。
【0045】
図2Dでは、ICAD治療剤120が病変部Pの外表面に付着して、シールを形成することができる。一例では、ICAD治療剤120は、血管BVの内壁に更に付着することができる。あるいは、ICAD治療剤120は、治療剤120が血管BVの内皮層に付着しないように設計することができる。病変部Pに対するICAD治療剤120のシールは、血管形成バルーン126を膨張及び収縮させること、及び/又は、病変部P全体にわたってステント110a、110bを拡張させることを含む血管内治療工程中にシールが形状を変えることができるように、可撓性であってもよい。隔離された空洞Cは、吸引ルーメン116を介して吸引されてもよい。一例では、装置送達ルーメン116は、吸引源がシステム100aに接続されている時に吸引ルーメンとして機能することができる。
【0046】
いくつかの治療では、空洞C内における陰圧及び血管の圧潰を防止するために、吸引と同時に生理食塩水溶液及び/又はICAD治療剤120を薬物送達ルーメン118を通して供給することができる。
【0047】
図2Eでは、ステント110aを取り囲むシース106を近位方向12に移動させて、ステント110aを露出させることができる。ステント110aを、血管BVのルーメン内で自己拡張させて、病変部Pのプラーク内に押し込むことができる。ステント110aは、シース106が近位方向12に移動すると自己拡張して拡張構成となることができる材料から作製されてもよい。一例では、ステント110aは形状記憶材料から作製されてもよい。あるいは、又はそれに加えて、ステント110aは超弾性材料から作製されてもよい。一実施例では、超格子合金は、ニチノール又は類似の特性の合金であり得る。ステント110aは、ステント110aが拡張構成にある時に血管BVを開いた状態に保つことができる。
【0048】
ステント110aが病変部Pを圧迫すると、断片Fを剥離させることができる。拡張された遠位側バルーン114a及び拡張された近位側バルーン112は、隔離された空洞C内に断片Fを閉じ込めることができ、断片Fが血管を通って近位方向又は遠位方向に移動するのを防ぐことができる。吸引を実施すると、断片Fを血管BVから除去することができる。バルーンガイドカテーテル102の装置送達ルーメン116は、送達チューブ108aがその中を通って延びている間に、断片Fがバルーンガイドカテーテル102のルーメンに入るための通路を提供するような寸法とすることができる。一例では、ステント110aが血管BVのルーメン全体にわたって、かつ病変部P全体にわたって拡張されている間に、生理食塩水溶液130を隔離された空洞C内に注入することができる。同時に又は続いて、隔離された空洞Cを吸引ルーメン116を通して吸引することができる。一例では、生理食塩水溶液を隔離された空洞C内に注入すると共に、同じ速度で吸引することによって、近位側バルーン112及び遠位側バルーン114aを拡張構成に維持することができる。生理食塩水溶液を注入及び吸引することによって、病変部の断片を継続的に剥離させ、続いて血管BVから除去することができる。
【0049】
いくつかの治療では、生理食塩水溶液の供給速度及び吸引速度を制御して、空洞C内の圧力を管理することができる。
【0050】
図2Fでは、吸引は、吸引ルーメン116を介して継続し、病変部Pのより多くの断片Fを剥離させることができる。病変部Pから剥離した断片Fを、隔離された空洞Cに継続的に閉じ込め、バルーンガイドカテーテル102の装置送達ルーメン116を通して除去することができる。
【0051】
図2Gでは、遠位側バルーン114aを収縮させることができ、一方で近位側バルーン112を膨張させたままにすることができる。断片Fの吸引は継続することができる。
【0052】
図2Hでは、収縮した遠位側バルーン114aを含む送達チューブ108aは、バルーンガイドカテーテル102の装置送達ルーメン116内に後退させることができる。拡張されたステント110aは、隔離された空洞C内の病変部P全体にわたって留まることができる。病変部Pの剥離した断片Fを、バルーンガイドカテーテル102のルーメンを通して継続的に除去できるように、吸引ルーメン116を介して吸引を継続することができる。送達チューブ108aがバルーンガイドカテーテル102の遠位端124から延びている間に吸引するには大きすぎる断片を、送達チューブ108aがバルーンガイドカテーテル102内へと近位方向に移動した後に、バルーンガイドカテーテル102内に吸引してもよい。
【0053】
図2Iでは、近位側バルーン112を収縮させることができる。拡張されたステント110aは、病変部P全体にわたって留まってもよい。ICAD治療剤120は、残りの病変部Pの外表面に沿って、かつ血管BVの内壁に沿ってシールとして留まり、血管BVを開いたままに保つことができる。
【0054】
図2Jでは、近位側バルーン112を含むバルーンガイドカテーテル102を血管BVから除去することができる。拡張されたステント110aを血管BV内に移植してもよく、ICAD治療剤120は、血管BVの病変部P及び/又は病変部Pに近い内壁の周囲のシールとして血管BV内に留まることができる。拡張されたステント110aとICAD治療120シールとの組み合わせは、血管BVを開いた状態に保つことができる。
【0055】
一例では、ステント110aは、ICAD治療剤120の注入前に展開されてもよい。本明細書に記載するように遠位側バルーン114a及び近位側バルーン112を拡張させる際に、ステント110aを取り囲むシース106を近位方向12に移動させて、ステント110aを露出させることができる。ステント110aを、血管BVのルーメン内で自己拡張させて、病変部Pのプラーク内に押し込んでもよい。ステント110aが病変部Pのプラークを圧迫すると、断片Fを剥離させることができる。剥離した断片Fを除去するために、隔離された空洞Cを吸引ルーメン116を通して吸引することができる。剥離した断片Fを吸引した後に、図2Cに記載するように、ICAD治療剤120を隔離された空洞内に放出することができる。吸引ルーメン116を介した吸引は、ICAD治療剤120と、ICAD治療剤120の放出の結果として剥離した全ての断片Fとを吸引することができる。ICAD治療剤120を吸引する際に、隔離された空洞C内に生理食塩水溶液を放出することができる。遠位側バルーン114a及び近位側バルーン112は収縮することができ、ステント110aは、病変部P全体にわたって拡張されたままであってもよい。
【0056】
図3A及び図3Dは、図1A図1C及び図2A図2Jに示すバルーンガイドカテーテル102と、遠位側バルーン114aの代わりに遠位側自己拡張要素114bが使用されることを除いて図1A図1C及び図2A図2Jに示す送達チューブ108aと同様の構造を有する送達チューブ108bと、を有する治療システム100bを使用して血管内病変部Pを治療する工程を示す一連の図である。図3B及び図3Cは、図3Aに示すシステム100bの断面図である。
【0057】
図3A図3Dは、送達チューブ108b上に配置された自己拡張型の遠位側閉塞要素114bを含む血管内治療システム100bを示す。システム100bが図3Aに示すように病変部P全体にわたって配置されると、自己拡張要素114bの拡張をシース106によって阻止することができる。ステント110aの自己拡張も、シース106によって阻止することができる。図3Dに示すように、シースは、自己拡張要素114bが血管BVの壁に円周方向に当接することを可能にするために、近位方向に後退させることができる。自己拡張要素は、膨張時に血管BVを効果的に封止するために、流体に対して不透過性であってもよい。遠位側閉塞要素114bは、ポリウレタンなどの形状記憶ポリマーを含む形状記憶材料製であってもよい。治療は、図2B図2Jに示す工程に従って進行してもよい。近位側バルーン112は、遠位側閉塞要素114bの拡張の前、後、又はこれと同時に膨張させることができる。ステント110aは自己拡張可能であってもよく、シース106は、ステント110aが自己拡張することを可能にするために、近位方向に引っ張られてもよい。送達チューブ108bは、ステント110a及び遠位側閉塞要素114bの両方が自己拡張可能である場合は、膨張ルーメン132(図1Bを参照)を含む必要はない。
【0058】
図4A図4Cは、別の代替的治療システム100cを使用して血管内病変部Pを治療する工程を示す一連の図である。図4A図4Cに示す血管内治療システム100cは、図1図2A図2J、及び図3A図3Bに示すバルーンガイドカテーテル102並びに、自己拡張型ステント110aの代わりにバルーン拡張型ステント110bが使用されることを除いて図1及び図2A図2Jに示す送達チューブ108aと同様の構造を有する送達チューブ108cを有することができる。システム100cは、ステント110b及び遠位側バルーン114aのいずれも、それぞれの自己拡張を阻止するためにシース106に依存しない場合には、シース106を含まなくてもよい。あるいは、図4A図4Cに示す血管内治療システム100cは、自己拡張型ステント110aの代わりにバルーン拡張型ステント110bが使用されることを除いて図3A及び図3Bに示す送達チューブ108bと同様の構成を有する送達チューブ108cを有することができる。システムが自己拡張型遠位側閉塞要素114bを含む場合、システム100cは、図3Aに示すように遠位側閉塞要素114bの拡張を阻止するように配置することができ、かつ遠位側閉塞要素114bの拡張を可能にするように移動させることができるシース106を含んでもよい。
【0059】
システム100cは、送達チューブ108c上に配置された血管形成バルーン126を更に含むことができる。血管形成バルーン126は、遠位側バルーン114aから近位方向に送達チューブ108c上に配置されてもよい。
【0060】
図4Aでは、システム100cは、近位側バルーン112及び遠位側バルーンを拡張することによって、又は自己拡張要素114a、114bを自己拡張させることによって、隔離された空洞Cを形成することができる。遠位側閉塞要素114a、114bの拡張は、遠位側閉塞要素が膨張可能である場合は図2A及び図2Bに示す工程によって達成することができ、遠位側閉塞要素が自己拡張可能である場合は図3A及び図3Bに示す工程によって達成することができる。ステント110bは、拡張を阻止するためにシースに収められる必要はない。図4Aに示す工程に続いて、治療は、図2C及び図2Dに示すのと同様の治療剤120の送達及び吸引を含むことができる。
【0061】
図4Bでは、血管形成バルーン126を膨張させることができる。血管形成バルーンが膨張すると、血管形成バルーン126を覆うステント110bも拡張することができる。血管形成バルーン126を膨張させて、ステント110bを病変部P内に押し込むことができる。いくつかの治療では、血管形成バルーン126は血管BVを拡張させることができる。一例では、血管形成バルーン126は、血管形成バルーン126が所望のサイズに拡張することを可能にする柔軟な膜を含むことができる。血管形成バルーン126は、血管形成バルーン126の拡張後のサイズを制限するように構成された非柔軟なラップを更に含むことができる。血管形成バルーン126は、近位側バルーン112及び遠位側閉塞要素114a、114bが膨張したままである間に膨張させることができる。
【0062】
図4Cでは、血管形成バルーン126は、ステント110bが病変部Pに対して拡張され、血管BV内に移植されたままである間に収縮させることができる。血管形成バルーン126の膨張及び収縮は、病変部Pの断片Fを剥離させることができる。断片Fが病変部Pから流れ出すことを、拡張した近位側バルーン112及び遠位側バルーン114aによって阻止することができる。図4Cに示す工程に続いて、治療工程は、図2E図2Jに示すように進行することができる。
【0063】
一例では、血管内病変部Pを治療するためのシーケンスは、特定の順序で実行することができる。いくつかの治療では、遠位側閉塞要素114a、114b及び近位側バルーン112を同時に拡張させることができる。あるいは、最初に遠位側閉塞要素114a、114bを最初に拡張させて下流への血流を遮断し、次いで、近位側バルーン112を拡張させて病変部Pへの血流を遮断することができる。あるいは、システム100aが病変部Pを横断する前に、近位側バルーン112を最初に膨張させてもよい。
【0064】
近位側バルーン112及び遠位側閉塞要素114a、114bの拡張の順序にかかわらず、拡張後の近位側バルーン112及び遠位側閉塞要素114a、114bが病変部Pを含む隔離された空洞Cの形成に有効であってもよい。次に、隔離された空洞C内に薬物送達ルーメン118を介してICAD治療剤120を注入してもよい。最後に、送達チューブ108a~c上に配置されたステント110a、110bを、隔離された空洞内で病変部内に拡張させ、血管BV内に移植することができる。ステント110a、110bは、病変部Pのプラークを圧迫して、断片Fを剥離させることができる。
【0065】
いくつかの治療では、ステント110a、110bを病変部P内に拡張する前、及び病変部全体にわたってステント110a、110bを拡張させた後に、隔離された空洞Cを吸引してもよい。あるいは、ステント110a、110bを病変部P全体にわたって拡張した後にのみ、隔離された空洞Cを吸引してもよい。あるいは、ステント110aが血管BV内で自己拡張している間に、隔離された空洞Cを同時に吸引してもよい。
【0066】
一例では、血管内治療システム100a~cの送達チューブ108a~c及びバルーンガイドカテーテル102は、ICAD治療剤120との接着を阻害するための材料の1つ以上のコーティングを有することができる。更に、一例では、近位側バルーン112及び遠位側閉塞要素114a、114bは、ICAD治療剤120との接着を阻害するための材料の1つ以上のコーティングを有することができる。
【0067】
図5A図5Cは、血管内治療システム100a~cのバルーンガイドカテーテル102の断面の変形例を示す。図4Aは、遠位端124及び近位端122と、カテーテル102の遠位端124に近接して配置されたバルーン112とを有するバルーンガイドカテーテル102を示す。バルーンガイドカテーテル102は、システム100a~cの薬物及び/又は構成要素の吸引及び送達を含む複数の作業を各ルーメンが容易にすることができるように、1つ以上のルーメンを含むことができる。
【0068】
図5Bは、バルーンガイドカテーテル102の近位側バルーン112に対する近位部分の断面図を示す。バルーンガイドカテーテル102は、装置送達ルーメン116、薬物送達ルーメン118、及び膨張ルーメン128を含むことができる。送達チューブ108a~cは、装置送達ルーメン116内に嵌合するようにサイズ決めすることができる。装置送達ルーメン116はまた、吸引ルーメンであってもよい。薬物送達ルーメン118は、血管BV内の隔離された空洞CへのICAD治療剤120及び生理食塩水溶液の送達を容易にすることができる。膨張ルーメン128は近位側バルーン112と流体連通することができ、近位側バルーン112を膨張及び収縮させるように構成することができる。
【0069】
図5Cは、バルーンガイドカテーテル102の遠位端124の断面図を示す。遠位端124において、バルーンガイドカテーテル102は、装置送達ルーメン116及び薬物送達ルーメン118を含むことができる。
【0070】
図6は、血管内病変部の治療のための方法200のフロー図である。工程202において、病変部を取り囲む血管内に、隔離された空洞を形成することができる。
【0071】
工程204において、隔離された空洞内に、第1のカテーテルルーメンを介して液体を注入することができる。液体は、病変部を安定化させ、及び/又は、病変部に対するシールを形成するように設計されたICAD治療剤であってもよい。
【0072】
工程206において、隔離された空洞を、第2のカテーテルルーメンを介して吸引することができる。第2のカテーテルルーメンは、第1のカテーテルルーメンから独立していてもよい。
【0073】
工程208において、隔離された空洞内で、病変部全体にわたってステントを拡張させることができる。
【0074】
図7は、血管内病変部の治療のための方法300のフロー図である。工程302において、その中を貫通する2つ以上のルーメンと、第1の拡張可能な閉塞要素とを有するガイドカテーテルが選択される。ガイドカテーテルは、本明細書に例示及び記載されるバルーンガイドカテーテル、その変形形態、又は本明細書の教示によって当業者に認識され理解されるこれらの代替物であってもよい。
【0075】
工程304において、ガイドカテーテルのルーメン内で並進可能であり、第2の拡張可能な要素を有する送達チューブを選択することができる。送達チューブは、本明細書に例示及び記載される送達チューブ108a~c、その変形形態、又は本明細書の教示によって当業者に認識され理解されるこれらの代替物であってもよい。
【0076】
工程306において、ステントを送達チューブ上に畳み込むことができる。
【0077】
工程308において、ガイドカテーテルの第1及び第2の拡張可能な要素並びに、送達チューブがその中を通って並進可能であるルーメンとは異なるルーメンを、これらのような構成要素と血管内病変部封止剤との接着を阻害するのに有効な材料でコーティングすることができる。
【0078】
本明細書に含まれる記述は、本発明の実施形態の例であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。本明細書で説明されるように、本発明は、代替的な材料、代替的な装置構成、代替的な治療工程などを含む、血管内治療システムの多くの変形及び修正を企図する。これらの修正は、本発明が関連する当業者には明らかであり、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【0079】
〔実施の態様〕
(1) 血管内治療システムであって、
バルーンガイドカテーテルであって、
遠位端と、
近位端と、
前記遠位端に近接して配置されたバルーンと、
前記バルーンと連通する膨張ルーメンと、
薬物送達ルーメンと、
装置送達ルーメンと、
を含む、バルーンガイドカテーテルと、
前記バルーンガイドカテーテルの前記装置送達ルーメン内に配置されるようにサイズ決めされた送達チューブであって、拡張可能な閉塞要素をその上に含む、送達チューブと、
を備える、血管内治療システム。
(2) 前記送達チューブを取り囲み、前記拡張可能な閉塞要素に対して近位方向に配置されたステントを更に備える、
実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記ステントを取り囲むシースを更に備え、
前記ステントは自己拡張可能であり、
前記シースは、前記ステントの拡張を阻止するように配置され、
前記シースは、前記ステントの拡張を可能にするように移動可能である、
実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記拡張可能な閉塞要素は自己拡張可能であり、
前記シースは、前記拡張可能な閉塞要素の拡張を阻止するように配置され、
前記シースは、前記拡張可能な閉塞要素の拡張を可能にするように移動可能である、
実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記拡張可能な閉塞要素は膨張可能である、実施態様3に記載のシステム。
【0080】
(6) 前記送達チューブは血管形成バルーンを更に含み、
前記ステントは前記血管形成バルーンを取り囲む、
実施態様2に記載のシステム。
(7) 前記送達チューブと、前記バルーンガイドカテーテル上の前記バルーンとはそれぞれ、血管内病変部封止剤との接着を阻害するのに有効なコーティングをその上に含む、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記薬物送達ルーメンは、血管内病変部封止剤との接着を阻害するためのコーティングをその中に含む、実施態様1に記載のシステム。
(9) 血管内の血管内病変部を治療するための方法であって、
前記病変部に対して遠位方向に配置された遠位側閉塞要素を拡張させること及び、前記病変部に対して近位方向に配置された近位側閉塞要素を拡張させることによって、前記血管内に隔離された空洞を形成することであって、前記隔離された空洞が前記病変部を含む、ことと
前記隔離された空洞内に第1のカテーテルルーメンを介して液体を注入することと、
前記隔離された空洞を、第2のカテーテルルーメンを介して吸引することと、
を含む、方法。
(10) 前記隔離された空洞内で前記病変部全体にわたってステントを拡張させることを更に含む、
実施態様9に記載の方法。
【0081】
(11) 前記隔離された空洞内に前記第1のカテーテルルーメンを介して前記液体を注入する前記工程は、前記隔離された空洞内に前記第1のカテーテルルーメンを介して血管内病変部封止剤を注入することを更に含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 工程が、
前記遠位側閉塞要素を拡張させることと、
前記近位側閉塞要素を拡張させることと、
前記隔離された空洞内に前記第1のカテーテルルーメンを介して前記液体を注入することと、
前記隔離された空洞内で前記病変部全体にわたって前記ステントを拡張させることと、
の順序で行われる、実施態様10に記載の方法。
(13) 前記遠位側閉塞要素を拡張させる前記工程は、
前記遠位側閉塞要素のシースを外して、前記遠位側閉塞要素を自己拡張させることを更に含み、
前記隔離された空洞内で前記病変部全体にわたって前記ステントを拡張させる前記工程は、
前記ステントのシースを外して前記ステントを自己拡張させることを更に含む、
実施態様12に記載の方法。
(14) 前記隔離された空洞内で前記病変部全体にわたって前記ステントを拡張させる前、及び、前記隔離された空洞内で前記病変部全体にわたって前記ステントを拡張させた後に、前記隔離された空洞を前記第2のカテーテルルーメンを介して吸引することを更に含む、
実施態様10に記載の方法。
(15) 前記工程は、
前記隔離された空洞を前記血管内に形成することであって、前記隔離された空洞が前記病変部を含む、ことと、
前記隔離された空洞内で前記病変部全体にわたって前記ステントを拡張させることと、
前記病変部から断片を吸引することと、
前記隔離された空洞内に前記第1のカテーテルルーメンを介して前記液体を注入することであって、前記液体が病変部治療剤を含む、ことと、
前記治療剤を含む前記液体を吸引することと、
前記隔離された空洞内に生理食塩水溶液を注入することと、
前記遠位側閉塞要素及び前記近位側閉塞要素を畳み込むことと、
の順序で行われる、実施態様10に記載の方法。
【0082】
(16) 前記隔離された空洞内で前記病変部全体にわたって前記ステントを拡張させることは、上に前記ステントが配置された血管形成バルーンを膨張させることを更に含む、実施態様10に記載の方法。
(17) 前記隔離された空洞内に前記第1のカテーテルルーメンを介して生理食塩水溶液を注入すると同時に、前記隔離された空洞を前記第2のカテーテルルーメンを介して吸引することを更に含む、
実施態様9に記載の方法。
(18) 前記遠位側閉塞要素を上に含む細長い部材を、前記第2のカテーテルルーメンを通して並進させることを更に含む、
実施態様9に記載の方法。
(19) 血管内治療システムを構築するための方法であって、前記方法は、
上に設けられた第1の拡張可能な要素と、第1のルーメンと、第2のルーメンと、を含むガイドカテーテルを選択することと、
前記第2のルーメン内に配置されるようにサイズ決めされた送達チューブを選択することであって、前記送達チューブは、第2の拡張可能な閉塞要素をその上に含む、ことと、
前記送達チューブの上にステントを畳み込むことと、
前記第1の拡張可能な閉塞要素、前記第2の拡張可能な閉塞要素、前記ステント、及び前記第1のルーメンの内側に1つ以上のコーティングを施すことであって、前記1つ以上のコーティングは、血管内病変部封止剤との接着を阻害するのに有効である、ことと、
を含む、方法。
(20) シースを前記ステントの上に配置することによって、前記ステントの拡張を阻止する工程と、
血管形成バルーンを前記ステントの下に配置する工程と、
のうちの少なくとも1つを更に含む、実施態様19に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
【外国語明細書】