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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138220
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】大豆ミート食品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/00 20210101AFI20220915BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20220915BHJP
   A23L 11/45 20210101ALI20220915BHJP
【FI】
A23L11/00 A
A23L13/00 Z
A23L11/45 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037978
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】594206819
【氏名又は名称】登喜和冷凍食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】登内 英雄
【テーマコード(参考)】
4B020
4B042
【Fターム(参考)】
4B020LB19
4B020LC04
4B020LG04
4B020LP03
4B020LP27
4B042AC05
4B042AD36
4B042AK13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】加工原材料を大豆原料製品のみに限定しつつ、結着性、保水性がよく、食肉食感を有する大豆ミート食品とその製造方法を提供する。
【解決手段】高野豆腐粉末を3重量%~15重量%、大豆粉を10重量%~30重量%となるように適宜組合せ、水分を加え容器詰めをした後、85℃~130℃で加熱をする。好ましくは、前記加熱時間は5分~120分間である。前記高野豆腐粉末と前記大豆粉配合時に食肉食感を強化するために、さらに粉末状、フレーク状、粒状の大豆タンパクいずれか1つまたは複数を混合して固形分40重量%以上に増量することが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高野豆腐粉末を3重量%~15重量%、大豆粉を10重量%~30重量%となるように適宜組合せ、水分を加え容器詰めをした後、85℃~130℃で加熱をすることを特徴とする大豆ミート食品の製造方法。
【請求項2】
前記加熱時間が5分~120分間である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記高野豆腐粉末と前記大豆粉配合時に食肉食感を強化するために、さらに粉末状、フレーク状、粒状の大豆タンパクいずれか1つまたは複数を混合して固形分40重量%以上に増量し、水分60重量%以下の食品を作る請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記請求項1~3のいずれかの方法により得られる、食肉食感を有し、水分60重量%以下の食品。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆を原材料とした食肉食感を有する大豆ミート食品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆を原材料として加工した食品には、豆乳・豆腐・油揚げ・湯葉・高野豆腐(凍り豆腐)等の伝統食品と、大豆タンパク食品群の二系統があり、最近では大豆タンパクを原料とする様々な大豆ミートと呼ばれる食品の開発が盛んである。
【0003】
大豆ミートとは、食肉代用できるという意味から、水分濃度は大半が60%未満のものを目指して作られており、従来からの伝統的大豆加工食品とは、固形分の食感や水分濃度が明らかに異なる領域の新しい食品群である。そのような大豆ミート技術として、例えば、特開2008-61592、特開2021-27812がある。
【0004】
現在、市場に出回っている大豆ミートとしては、大豆タンパク100%をさらに味付け加工した製品や、小麦粉・澱粉・乳タンパク・大豆油・大豆粉・卵白等を混合して、固形分濃度と食感と味を工夫して食べやすく仕上げているハム・ソーセージ状の製品がある。
【0005】
さらに、市場では豆腐ハンバーグ、豆腐ステーキ、豆腐つくね等の製品が販売されており、豆腐を肉加工食の増量材料として家庭での手作り加工も含め当たり前の使い方として定着している状況がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-61592
【特許文献2】特開2021-27812
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来製品と一線を画すべく、加工原材料を大豆原料製品のみに限定しつつ、結着性、保水性がよく、食肉食感を有する大豆ミート食品とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は次の製造方法及びそれにより得られる大豆ミート食品である。
(1) 高野豆腐粉末を3重量%~15重量%、大豆粉を10重量%~30重量%となるように適宜組合せ、水分を加え容器詰めをした後、85℃~130℃で加熱をすることを特徴とする大豆ミート食品の製造方法。
(2) 前記(1)の加熱時間が5分~120分間である方法。
(3) 前記(1)の高野豆腐粉末と前記大豆粉配合時に食肉食感を強化するために、さらに粉末状、フレーク状、粒状の大豆タンパクいずれか1つまたは複数を混合して固形分40重量%以上に増量し、水分60重量%以下の食品を作る方法。
(4) 前記(1)~(3)のいずれかの方法により得られる、食肉食感を有し、水分60重量%以下の食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加工原材料を大豆原料製品のみに限定しつつ、結着性、保水性がよく、食肉食感を有する大豆ミート食品とその製造方法が得られる。
【0010】
高野豆腐は、豆腐と異なり、凍結変成、凍結熟成によるレジスタントタンパクを多く持っていることで、たんぱく質が食物繊維のような物性に変化している。いわゆるネットワーク化したスポンジ組織に仕上がった高野豆腐は、乾燥食品であるため吸水力が強く、また加熱成形性が高く、求める水分値に合せて配合率を自由に調整でき、他の大豆食材と混合結着させるのに大変都合の良い働きをしてくれる。これは豆腐を原料とする製品には見られない特徴である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記各方法において、「高野豆腐粉末」とは、乾物の四角い高野豆腐を粉砕したものである。「高野豆腐」は、周知のように、豆腐を固めに作り凍結乾燥したものである。「粉末」は、必ずしも粒の形状や大きさが均一である必要はなく、様々なものが適宜混合されていてもよい。通常は、最長幅のサイズが3mm以下のものである。このような高野豆腐粉末は、例えば、本出願人会社から「鶴羽二重(登録商標)粉豆腐」として市販されている。
【0012】
「大豆粉」は、脱皮工程、乾燥工程及び粉砕工程等を経て得られる、均一微細に粉砕された大豆粉末である。一般に流通している大豆粉は、加熱脱臭タイプと生タイプの2種類があり、共に加水加熱すると大豆本来の甘味・香ばし味が強く出てくる。しかしこれ単体では結着性が弱いためプレート成型に不向きなものである。特に限定するものではないが、生タイプにおいては、全粒豆腐原料にも使われており高野豆腐との相性も良いと考えて、例えば、日清オイリオグループ(株)販売の生大豆粉「ソーヤフラワーNSA」が使用可能である。
【0013】
本発明においては高野豆腐粉末と大豆粉の配合比率が重要であり、高野豆腐粉末が3重量%~15重量%、大豆粉が10重量%~30重量%の組み合わせである。高野豆腐粉末が3重量%以下及び大豆粉が10重量%以下であれば、固形化が難しくなる。高野豆腐粉末が15重量%以上及び大豆粉が30重量%以上であると成形品が脆くなる。
【0014】
高野豆腐粉末と大豆粉に添加可能な「大豆タンパク」としては、、おからのほかに、豆乳、乾燥豆腐、大豆タンパクカード、粉状分離大豆タンパク、粉状濃縮大豆タンパク、紡糸性繊維状大豆タンパク、構造性繊維状大豆タンパク、粒状大豆タンパク、塊状・フレーク状・棒状・サイコロ状大豆タンパク等多種多様な形態があるにもおからのほかに、乾燥豆腐、大豆タンパクカード、粉末状分離大豆タンパク、粉末状濃縮大豆タンパク、紡糸性繊維状大豆タンパク、構造性繊維状大豆タンパク、粒状大豆タンパク、塊状・フレーク状・棒状・サイコロ状大豆タンパク等多種多様な形態があり、市販品が容易に入手可能である。
【0015】
「粉末状の大豆タンパク」は均一微細に粉砕された粉末であり、その市販品としては、例えば、昭和産業(株)の「昭和フレッシュM-600」が使用可能である。市販品の「フレーク状の大豆タンパク」としては、例えば、日清オイリオグループ(株)の「ニューコミテックス(登録商標)K313」が使用可能である。市販品の「粒状の大豆タンパク」としては、例えば、日清オイリオグループ(株)の大粒用「ニューソイミー(登録商標)S50」、小粒用「ニューソイミー(登録商標)K30」が使用可能である。
【0016】
味付けは、高野豆腐粉末に吸水させる水分を調味液に使うことで、塩分濃度0.001%~2%以下の範囲になるよう調整することができ、同時に非動物系調味ベースを適宜配合することができる。「非動物系」という用語は、動物由来の成分を含まないものを指す。そのような調味ベースは、非動物系原料にのみ由来する植物性成分および/または合成成分、例えば植物性原料に由来する合成成分を含む。
【0017】
この加工製造によって出来上がる食品は、食欲増進のため肉風味を感じさせる必要があるため、非動物系の香りフレーバーを添加することもできる。非動物系」という用語は、動物由来の成分を含まないものを指す。そのような香りフレーバーは、非動物系原料にのみ由来する植物性成分および/または合成成分、例えば植物性原料に由来する合成成分を含む。
【0018】
[実施例]
以下、本発明の実施例として、高野豆腐と大豆粉の混合比率を変えたり、他の添加物を加えたりして行った、食肉食感を有する大豆ミートのプレートベース生地作成方法を記載する。併せて、開発過程において行った、大豆ミートとしては好ましくない配合例を比較例として記載する。
【0019】
なお、以下の実施例、比較例において使用した材料は次のとおりである。
【表1】
【0020】
また、パーセント(%)の表示は重量パーセントである。
【実施例0021】
高野豆腐粉末と大豆粉にそれぞれ加水して様々な水分濃度を設定した後、各種水混合液を袋充てんし、95℃60分加熱して、単独で結着しゲル化した状態を作り実験結果を比較した。
【表2】
【0022】
(考察)
固形化した成型品は粘度ある、なめらかな軟らかい粒食感を維持する効果があり、食べやすい。高野豆腐粉末は、ゆるめの結着力を持ち、保水性が強いだけでなく、吸水力がある。大豆本来の香ばしい味を消さないで上手に残すことができる。ただし、高野豆腐粉末の配合量は大豆粉を越えるべきでない。
【実施例0023】
高野豆腐粉末、大豆粉及び粉末タンパクにそれぞれ加水して様々な水分濃度を設定した後、各種水混合液を袋充てんし、95℃60分加熱して、単独で結着しゲル化した状態を作り実験結果を比較した。
【表3】
【0024】
(考察)
粉末大豆タンパクは結着性が高野豆腐粉末より優位にあるので、味覚の欠点を理解して少量であれば有効活用できる。
【実施例0025】
高野豆腐粉末、大豆粉、粉末タンパク及び粒状タンパク(大粒)にそれぞれ加水して様々な水分濃度を設定した後、各種水混合液を袋充てんし、95℃60分加熱して、単独で結着しゲル化した状態を作り実験結果を比較した。
【表4】
【0026】
(考察)
粉末大豆タンパク無しでは、脆い感じになる。粉末大豆タンパクは味覚、結着性から5%程度が有効な配合比と思われる。
【実施例0027】
実施例3の粉末材料にフレーク大豆タンパク及び粒状大豆タンパク(小粒、大粒)を加え、フレーク水分60%の大豆ミート風プレートとした。
【表5】

【表6】
【実施例0028】
加熱殺菌条件についてみるため、上記実施例4の水分60%配合4品について、加熱殺菌条件を以下2種類実施した。
a) 95℃、60分の加熱
b) 120℃、10分の加熱
【0029】
この4品は共通して固形分40%であることから、低温度域で加熱殺菌後に冷凍保管しても品質の変化はほとんど起こらないことを確認済みであるので、冷凍食品として長期保存が可能になる。また、新たに高温度域で120℃までの加熱殺菌をしても、10分までの短時間であれば、若干の加熱による変色で色が濃くなる変化はあるが、常温保存に耐えられる品質を確保できることも確認したので、常温保管できるレトルト食品として長期常温保存が可能になる。
【0030】
よって、この加熱可能な温度域を設定するにあたり、85℃~130℃の範囲でのすべての温度で加熱殺菌が可能な食品として定義できる。
【0031】
上記各実施例の方法により成形される大豆ミートはプレート状であるので、そこから定法により容易に、ハム状やソーセージ状に加工することができる。
[比較例1]
【0032】
粉末大豆タンパク固形分と水のみを使用した場合である。
【表7】
【0033】
(考察)
総体的に渋みが強く、市販練り製品の味覚に類似している。単独使用の場合、固形分15%以上(水分85%以下)の配合量は必要である。
[比較例2]
【0034】
高野豆腐粉末固形分と水のみを使用した場合である。
【表8】
【0035】
(考察)
特に違和感なく食べやすい。自己主張のないおとなしい味で、多く使うと大豆のうま味を押さえてしまう感じである。単独使用の場合、固形分15%以上(水分85%以下)の配合量は必要である。
[比較例3]
【0036】
粉末大豆タンパクと大豆粉と水を配合した場合である。
【表9】
【0037】
(考察)
成型品は表面が乾きやすく硬くなりやすい性質で、口に入れるとほぐれにくい。粉末大豆タンパクは保形性を強化するには効果的材料である。10%配合は多すぎる。結着性は強いが大豆の味を抑え渋みが違和感となる心配がある。配合比5%程度が効果的と思われる。