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特開2022-138240遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具、遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置、遠隔操作剪刀類具の開閉制御システム
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  • 特開-遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具、遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置、遠隔操作剪刀類具の開閉制御システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138240
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具、遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置、遠隔操作剪刀類具の開閉制御システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20220915BHJP
   A61B 17/28 20060101ALI20220915BHJP
   A61B 17/3201 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61B34/35
A61B17/28
A61B17/3201
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038018
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】513048575
【氏名又は名称】一般財団法人グローバルヘルスケア財団
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 衆治
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF15
4C160GG08
4C160GG14
(57)【要約】
【課題】手術用剪刀類具を備える遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具、このような遠隔操作剪刀類具の作用部の開閉移動を制御する開閉制御装置、及び、遠隔操作剪刀類具の開閉制御システムを提供すること。
【解決手段】遠隔操作剪刀類具10,210,310の開閉制御システム100,200,300は、空腔VC内に配置される遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具と、その被駆動部23,223,323の離間接近移動MVを遠隔制御する開閉制御装置50,350とを備える。遠隔操作剪刀類具は、外部磁界OMFにより被駆動部を離間接近移動させる永久磁石体30,230,330を有し、開閉制御装置は、永久磁石体の周囲に配置されて外部磁界を発生させる複数の外部電磁石53A,353Aと、外部電磁石の駆動電源52,352と、駆動電源で流す電磁石電流IMを制御して、外部磁界を制御し、永久磁石体の移動を制御する磁石移動制御部51,351と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉移動によって対象物に作用を及ぼす一対の作用部、及び、
互いに離間又は接近する離間接近移動によって、上記一対の作用部を開閉移動させる一対の被駆動部を有する
手術用剪刀類具と、
上記手術用剪刀類具の上記一対の被駆動部にそれぞれ装着され、
外部磁界による磁力を受けて、上記一対の被駆動部を上記離間接近移動させる永久磁石体と、を備える
遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具。
【請求項2】
少なくとも前記一対の被駆動部は、非磁性体からなる
請求項1に記載の遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具。
【請求項3】
体腔又は管腔臓器の内腔である空腔内に配置される、
開閉移動によって対象物に作用を及ぼす一対の作用部、及び、
互いに離間又は接近する離間接近移動によって、上記一対の作用部を開閉移動させる一対の被駆動部を有する
遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具における、上記一対の被駆動部の上記離間接近移動を遠隔制御する
遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置であって、
上記遠隔操作剪刀類具は、
上記一対の被駆動部にそれぞれ装着され、外部磁界による磁力を受けて移動して、上記一対の被駆動部を上記離間接近移動させる永久磁石体を有しており、
上記開閉制御装置は、
上記遠隔操作剪刀類具の上記永久磁石体の周囲に配置されて、上記外部磁界を発生させる複数の外部電磁石と、
複数の上記外部電磁石に電磁石電流を流す駆動電源と、
上記駆動電源で流す上記電磁石電流をそれぞれ制御して、発生する上記外部磁界を制御し、上記遠隔操作剪刀類具の上記永久磁石体の移動を制御する磁石移動制御部と、を備える
遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置であって、
前記複数の外部電磁石の少なくともいずれかは、体外に配置される
遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置であって、
前記複数の外部電磁石のいずれも、体外に配置される
遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置。
【請求項6】
請求項3に記載の遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置であって、
前記外部電磁石と、
上記外部電磁石を先端部に支持すると共に、
後端部から上記外部電磁石の一対の端子を延出する
支持部材と、を有し、
上記支持部材の先端部及び上記外部電磁石を前記体腔内に位置させると共に、
上記支持部材の後端部を体外に位置させ、
一対の端子を前記駆動電源に接続可能とした
磁石挿入具を含む
遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置であって、
前記磁石挿入具は、
前記支持部材の先端部に支持され、前記体腔内に位置させる前記外部電磁石の位置を変更する位置変更アクチュエータを有し、
前記磁石移動制御部は、
上記位置変更アクチュエータを駆動して、上記外部電磁石の位置を制御する位置制御部を有する
遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置であって、
前記磁石挿入具は、
前記支持部材の先端部に支持され、前記体腔内に位置させる前記外部電磁石の姿勢を変更する姿勢変更アクチュエータを有し、
前記磁石移動制御部は、
上記位置変更アクチュエータ357を駆動して、上記外部電磁石の姿勢を制御する姿勢制御部を有する
遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置。
【請求項9】
体腔又は管腔臓器の内腔である空腔内に配置される、
開閉移動によって対象物に作用を及ぼす一対の作用部、及び、
互いに離間又は接近する離間接近移動によって、上記一対の作用部を開閉移動させる一対の被駆動部を有する
遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具と、
上記遠隔操作剪刀類具における上記一対の被駆動部の上記離間接近移動を遠隔制御する開閉制御装置と、を備える
遠隔操作剪刀類具の開閉制御システムであって、
上記遠隔操作剪刀類具は、
上記一対の被駆動部にそれぞれ装着され、外部磁界による磁力を受けて移動して、上記一対の被駆動部を離間接近移動させる永久磁石体を有しており、
上記開閉制御装置は、
上記遠隔操作剪刀類具の上記永久磁石体の周囲に配置されて、上記外部磁界を発生させる複数の外部電磁石と、
複数の上記外部電磁石に電磁石電流を流す駆動電源と、
上記駆動電源で流す上記電磁石電流をそれぞれ制御して、発生する上記外部磁界を制御し、上記遠隔操作剪刀類具の上記永久磁石体の移動を制御する磁石移動制御部と、を有する
遠隔操作剪刀類具の開閉制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉗子、鑷子、剪刀などの手術用剪刀類具を備える遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具、このような遠隔操作剪刀類具の作用部の開閉移動を制御する開閉制御装置、及び、遠隔操作剪刀類具の開閉制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人や動物の外科手術において、患部組織や糸などの部材を挟持したり押し拡げたり患部等を剪断したりするのに用いる、鉗子、鑷子、剪刀など手術用器具(以下、これらの器具を「手術用剪刀類具」ともいう。)を用いる場合が有る。これらを用いる場合には、手術用剪刀類具のうち一対の被操作部を術者の手指で操作する、具体的には、被操作部を相互に離間させたり接近させるように離間接近移動させる。これにより、一対の作用部を開閉移動させる。具体的には、臓器の組織を挟持などする一対の挟持部や患部等を剪断により切断する一対の刃部などを開閉させる。
【0003】
そのほか、手術支援ロボットシステムにおいて、鉗子等をロボットアームの先端に装着して作動可能とし、患者の体腔に開けた穴を通じてロボットアームを差し込み、装着した鉗子等を操作する場合も有る。例えばこのような技術として、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-126450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、手術の場所が術者の手指やロボットアームを差し込んだり操作したりすることが困難な部位である場合や、極小の手術用剪刀類具を用いたい場合など、手術用剪刀類具を体腔又は管腔臓器の内腔である空腔内に配置した上で、手術用剪刀類具を体外などの空腔外から非接触で遠隔操作したい場合がある。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、手術用剪刀類具を備える遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具、このような遠隔操作剪刀類具の作用部の開閉移動を制御する開閉制御装置、及び、遠隔操作剪刀類具の開閉制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、開閉移動によって対象物に作用を及ぼす一対の作用部、及び、互いに離間又は接近する離間接近移動によって、上記一対の作用部を開閉移動させる一対の被駆動部を有する手術用剪刀類具と、上記手術用剪刀類具の上記一対の被駆動部にそれぞれ装着され、外部磁界による磁力を受けて、上記一対の被駆動部を上記離間接近移動させる永久磁石体と、を備える遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具である。
【0007】
上述の遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具は、一対の作用部及び一対の被駆動部を有する手術用剪刀類具のほか、一対の被駆動部にそれぞれ装着されて、これを離間接近移動させる永久磁石体を備えている。これにより、外部磁界を適宜変化させることで、一対の被駆動部にそれぞれ設けた永久磁石体に磁力を与えて、一対の被駆動部を離間接近移動させることができ、非接触での遠隔操作により、手術用剪刀類具の一対の作用部を開閉させて、患部等の対象物に切断又は挟持などの作用を及ぼすことができる。
【0008】
なお、一方の被駆動部に装着される永久磁石体と、他方の被駆動部に装着される永久磁石体とは、互いに同形で、相互に対称の配置としても良いし、一方の被駆動部と他方の被駆動部との形態の違い、役割の違いなどに応じて、異なる形態や数の永久磁石を用いたり、非対称に配置したりすることもできる。
また、上述の遠隔操作剪刀具類では、手術用剪刀類具の被駆動部に永久磁石体を装着するが、手術用剪刀類具の他の部位に、被駆動部の駆動とは異なる作用や磁力を及ぼすため、例えば、手術用剪刀類具の姿勢や向きを保持したり変更したりするのに用いる磁力を得るため、別途、他の永久磁石体を装着することもできる。
【0009】
(2)ここで、少なくとも前記一対の被駆動部は、非磁性体からなる(1)の遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具とすると良い。
【0010】
被駆動部に装着した永久磁石体によって被駆動部が磁化(磁石化)した場合には、磁化した被駆動部によって外部磁界が乱されるので、手術用剪刀類具の一対の被駆動部に装着した永久磁石体の移動を、外部磁界で適切に制御し難くなる場合が生じ得る。これに対し、この遠隔操作剪刀類具では、少なくとも一対の被駆動部は非磁性体からなり、被駆動部に装着した永久磁石体によって被駆動部が磁化しないので、被駆動部が磁化した場合に比して、外部磁界による永久磁石体の移動を制御の難化を防止できる。
【0011】
なお、一対の被駆動部などを構成する非磁性体としては、例えば、非磁性の、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金、オーステナイト系ステンレスなどの金属、PTFE、シリコーン樹脂、ポリエチレン、PETなどの樹脂、アルミナなどのセラミック、ホウケイ酸ガラスなどのガラスが挙げられる。
【0012】
さらに手術用剪刀類具の全体が非磁性体からなる上述の遠隔操作剪刀類具とするのが好ましい。永久磁石体を装着する被駆動部に近接する作用部や支点部なども非磁性体とすることで、これらの部分が磁化することによる影響も低減することができる。
【0013】
(3)他の態様は、体腔又は管腔臓器の内腔である空腔内に配置される、開閉移動によって対象物に作用を及ぼす一対の作用部、及び、互いに離間又は接近する離間接近移動によって、上記一対の作用部を開閉移動させる一対の被駆動部を有する遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具における、上記一対の被駆動部の上記離間接近移動を遠隔制御する遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置であって、上記遠隔操作剪刀類具は、上記一対の被駆動部にそれぞれ装着され、外部磁界による磁力を受けて移動して、上記一対の被駆動部を上記離間接近移動させる永久磁石体を有しており、上記開閉制御装置は、上記遠隔操作剪刀類具の上記永久磁石体の周囲に配置されて、上記外部磁界を発生させる複数の外部電磁石と、複数の上記外部電磁石に電磁石電流を流す駆動電源と、上記駆動電源で流す上記電磁石電流をそれぞれ制御して、発生する上記外部磁界を制御し、上記遠隔操作剪刀類具の上記永久磁石体の移動を制御する磁石移動制御部と、を備える遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置である。
【0014】
上述の開閉制御装置は、外部磁界を発生させる複数の外部電磁石と、電磁石電流を流す駆動電源と、外部磁界を制御する磁石移動制御部と、を備えており、遠隔操作剪刀類具における永久磁石体の移動を制御することができる。これにより、非接触での遠隔操作により、遠隔操作剪刀類具の一対の作用部を開閉移動させて、患部等の対象物に切断や挟持などの作用を及ぼすことができる。
【0015】
(4)(3)に記載の遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置であって、前記複数の外部電磁石の少なくともいずれかは、体外に配置される遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置とすると良い。
【0016】
この開閉制御装置では、複数の外部電磁石の少なくともいずれかは体外に配置される。体外に配置された外部電磁石は、その構造、材質、流しうる電流の大きさ、配置などについて自由度を高くできるので、設計や制御が容易にできる。
【0017】
なお、体外の外部電磁石は、その位置や姿勢が固定されていても良いが、一部または全部の体外の外部電磁石について、体外である範囲内で、その位置或いはその姿勢が変更可能とされていてもよい。この場合には、遠隔操作剪刀類具を用いた手術において、用いる遠隔操作剪刀類具の種類や手術の部位などに応じて、外部電磁石の体外の位置や姿勢を変更することで、より適切な外部磁界を発生させることができる。
【0018】
(5)さらに(4)に記載の遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置であって、前記複数の外部電磁石のいずれも、体外に配置される遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置とすると良い。
【0019】
この開閉制御装置では、用いる複数の外部電磁石のいずれをも体外に配置しているので、構造、材質など自由度が高く、特に設計や制御が容易にできる。
【0020】
(6)或いは(3)に記載の遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置であって、前記外部電磁石と、上記外部電磁石を先端部に支持すると共に、後端部から上記外部電磁石の一対の端子を延出する支持部材と、を有し、上記支持部材の先端部及び上記外部電磁石を前記体腔内に位置させると共に、上記支持部材の後端部を体外に位置させ、一対の端子を前記駆動電源に接続可能とした磁石挿入具を含む遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置とすると良い。
【0021】
この開閉制御装置では、支持部材の先端部に外部電磁石を支持し、支持部材の後端部から導出した外部電磁石の一対の端子を駆動電源に接続可能とした磁石挿入具を含む。このため、磁石挿入具の外部電磁石を、体内の深部などに位置する空腔内に配置した遠隔操作剪刀類具の近くに配置して、その外部電磁石の発生する磁界を制御するなど、腔鏡下手術に近似した手法で、遠隔操作剪刀類具の開閉を遠隔操作することができる。
【0022】
(7)更に(6)に記載の遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置であって、前記磁石挿入具は、前記支持部材の先端部に支持され、前記体腔内に位置させる前記外部電磁石の位置を変更する位置変更アクチュエータを有し、前記磁石移動制御部は、上記位置変更アクチュエータを駆動して、上記外部電磁石の位置を制御する位置制御部を有する遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置とすると良い。
【0023】
この開閉制御装置は、磁石挿入具を有しており、腔鏡下手術と同様、体に穿孔した穴を通じて、磁石挿入具の支持部材の先端部及び外部電磁石を体腔内に挿入する。しかし、外部電磁石の体腔内における位置を変化させたい場合(外部電磁石を移動させたい場合)がある。また、人体等は呼吸や拍動その他によって、各部が移動することにより、外部電磁石が移動(位置変動)してしまう場合もある。
【0024】
これに対し、この開閉制御装置では、磁石挿入具に外部電磁石の三次元的な位置(例えば、xyz直交座標系における座標(x,y,z)で示す位置)を変更する位置変更アクチュエータを有している。加えて、磁石移動制御部は、位置変更アクチュエータを駆動して外部電磁石の位置を制御する位置制御部を有している。このため、体内における挿入した外部電磁石の位置を容易に移動させることができる。また、呼吸等による外部磁石の位置変動を抑制し、所望の位置を保つように制御することもできる。
【0025】
なお、位置変更アクチュエータ及びこれを制御する位置制御部としては、例えば支持部材が直管状である場合において、外部電磁石を支持部材の軸線(例えばこれをx軸とする)に沿う方向に進退可能にした位置変更アクチュエータ及びこれを制御する位置制御部、さらに軸線(x軸)に直交する方向にも移動可能にした位置変更アクチュエータ及び位置制御部などが挙げられる。
【0026】
(8)さらに(6)又は(7)に記載の遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置であって、前記磁石挿入具は、前記支持部材の先端部に支持され、前記体腔内に位置させる前記外部電磁石の姿勢を変更する姿勢変更アクチュエータを有し、前記磁石移動制御部は、上記位置変更アクチュエータ357を駆動して、上記外部電磁石の姿勢を制御する姿勢制御部を有する遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置とすると良い。
【0027】
この開閉制御装置では、磁石挿入具を有しており、腔鏡下手術と同様、体に穿孔した穴を通じて、磁石挿入具の支持部材の先端部及び外部電磁石を体腔内に挿入する。ところで、外部電磁石は、発生する磁界に方向性を持っている。即ち、外部電磁石の三次元的な位置(問えば、座標(x,y,z))が同じでも、外部電磁石の三次元的な姿勢(ロール、ヨー、ピッチ。xyz軸の各軸線周りの回転角度)によって、発生する磁界のパターンが異なる。このような外部電磁石の体腔内における姿勢を変化させたい場合がある。また、人体等は呼吸や拍動その他によって、体の各部が移動することにより、外部電磁石が移動(姿勢変動)してしまう場合もある。
【0028】
これに対し、この開閉制御装置では、磁石挿入具に外部電磁石の姿勢(例えば、ヨー及びピッチ)を変更する姿勢変更アクチュエータを有している。加えて、磁石移動制御部は、姿勢変更アクチュエータを駆動して外部電磁石の姿勢を制御する姿勢制御部を有している。このため、体内における挿入した外部電磁石の姿勢を容易に移動させることができる。また、呼吸等による外部磁石の姿勢変動を抑制し、所望の姿勢を保つように制御することもできる。
【0029】
なお、姿勢変更アクチュエータ及びこれを制御する姿勢制御部としては、例えば支持部材の先端部付近に設けて、先端部に支持させた外部電磁石の姿勢を変更可能にした姿勢変更アクチュエータ及びこれを制御する姿勢制御部が挙げられる。更に具体的には、支持部材が直管状であり、外部電磁石が直棒状のヨークと、この周りに捲回した電磁コイルからなるものである場合において、外部電磁石及び支持部材の先端部を、外部電磁石(ヨーク)の軸線方向を、支持部材の先端部付近に設けた姿勢変更アクチュエータを中心に首振り状に変更可能にしたものが挙げられる。
【0030】
(9)さらに他の態様は、体腔又は管腔臓器の内腔である空腔内に配置される、開閉移動によって対象物に作用を及ぼす一対の作用部、及び、互いに離間又は接近する離間接近移動によって、上記一対の作用部を開閉移動させる一対の被駆動部を有する遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具と、上記遠隔操作剪刀類具における上記一対の被駆動部の上記離間接近移動を遠隔制御する開閉制御装置と、を備える遠隔操作剪刀類具の開閉制御システムであって、上記遠隔操作剪刀類具は、上記一対の被駆動部にそれぞれ装着され、外部磁界による磁力を受けて移動して、上記一対の被駆動部を離間接近移動させる永久磁石体を有しており、上記開閉制御装置は、上記遠隔操作剪刀類具の上記永久磁石体の周囲に配置されて、上記外部磁界を発生させる複数の外部電磁石と、複数の上記外部電磁石に電磁石電流を流す駆動電源と、上記駆動電源で流す上記電磁石電流をそれぞれ制御して、発生する上記外部磁界を制御し、上記遠隔操作剪刀類具の上記永久磁石体の移動を制御する磁石移動制御部と、を有する遠隔操作剪刀類具の開閉制御システムである。
【0031】
上述の開閉制御システムは、遠隔操作剪刀類具と開閉制御装置とを備えている。このうち、遠隔操作剪刀類具は永久磁石体を有している一方、開閉制御装置は、外部磁界を発生させる複数の外部電磁石と、電磁石電流を流す駆動電源と、外部磁界を制御し、手術用剪刀類具の永久磁石体の移動を制御する磁石移動制御部と、を備える。このためこの開閉制御システムでは、非接触での遠隔操作により、遠隔操作剪刀類具の一対の作用部を開閉させて、患部等の対象物に切断又は挟持などの作用を及ぼすことができる。
【0032】
なお、上記(1)~(4)において、遠隔操作剪刀類具は、前述のように、人や動物の外科手術において、組織などを挟持したり押し拡げたり、患部等を切断したりするのに用いる、鉗子、鑷子、剪刀などの手術用剪刀類具を有している。これらの手術用剪刀類具には、ローマ型鋏タイプとギリシア型鋏タイプの手術用剪刀類具が含まれる。このうち、ローマ型鋏タイプは、二つの部材をX字形に組み合わせて刃と刃が合わさるようにして支軸(要,支点)で回動可能に支持し、支軸(支点)が刃(作用部・作用点)と操作部(被駆動部・力点)との中間に存在する形態である。一方、ギリシア型鋏タイプは、両端部分に刃を設けた一つの部材をU字形やV字型に曲げてこの部分を支点とし、両端側の刃と刃が互いに合わさるようにし、刃(作用部・作用点)と支点との中間に握り部(被駆動部・力点)が存在している形態であり、例えば、日本でいう握り鋏、spring scissorsの形態である。
【0033】
手術用剪刀類具のうち、一対の作用部は、開閉移動によって、臓器などの組織や糸などの手術に用いる部材である対象物に対して、挟持、押し拡げ、引張り、押圧、剪断(切断)などの作用を及ぼす部位である。例えば、手術用剪刀類具が、鉗子、鑷子である場合には、これらのうち、臓器の組織や糸などの部材を挟持したり押し拡げたり引っ張ったり押圧したりする一対の挟持部が該当する。また、手術用剪刀類具が、剪刀(鋏)である場合には、このうち、患部等を剪断により切断する刃部を設けた一対の刃体部が該当する。
一方、手術用剪刀類具のうち一対の被駆動部は、一対の作用部を開閉移動させるに当たり、遠隔操作された永久磁石体で移動される部位であり、この被駆動部同士を互いに離間又は接近する離間接近移動によって一対の作用部を開閉移動させる部位である。
【0034】
また、一対の被駆動部にそれぞれ装着する永久磁石体に用いる永久磁石としては、例えばネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石などが挙げられる。永久磁石体には、例えば一方面にN極、他方面にS極の一対の磁極を有する永久磁石を複数個用いることもできる。また、3つ以上の磁極を設けた永久磁石を用いることもできる。また、永久磁石体(永久磁石)の形態も、円板形状、矩形板状、円筒形状、その他、装着する被駆動部の形態を考慮して適宜選択することができる。さらに、一方の被駆動部と他方の被駆動部とに、異なる形態の永久磁石体を装着しても良いし、装着する永久磁石体の磁極配置を対称としても非対称としても良い。また、永久磁石体は、一対の被駆動部にそれぞれ接着剤やカシメ固定などで固着して装着することもできるし、永久磁石をホルダーに保持させた永久磁石体を被駆動部に着脱可能に装着するようにしても良い。このように永久磁石体を被駆動部へ着脱可能に構成すると、遠隔操作剪刀類具を洗浄、消毒などする際に、手術用剪刀類具と永久磁石体とを、別々にして洗浄等をすることができるので、ぞれぞれに適する洗浄手法で洗浄できる利点が有る。
【0035】
体腔には、頭蓋腔、胸腔、腹腔が含まれる。また、管腔臓器には、消化管、尿路、血管等が挙げられる。遠隔操作剪刀類具は、体腔又は管腔臓器の内腔である空腔内に配置する一方、開閉制御装置の複数の外部電磁石は、遠隔操作剪刀類具の永久磁石体の周囲に配置する。具体的には、体腔内に配置した遠隔操作剪刀類具を体外に配置した複数の外部電磁石で操作する場合や、管腔臓器の内腔内に配置した遠隔操作剪刀類具を当該臓器外の体腔内あるいは体外に配置した複数の外部電磁石で操作する場合、体腔内に配置した遠隔操作剪刀類具を体腔内であるが非接触に配置した複数の外部電磁石で操作する場合を含む。
【0036】
開閉制御装置における複数の外部電磁石の配置形態としては、遠隔操作剪刀類具の一対の被駆動部に装着した永久磁石体の周囲に配置して、永久磁石体を移動させ得る外部磁界を発生できる配置の形態であれば、適宜採用できる。例えば、空腔内に遠隔操作剪刀類具を配置する一方、体外に一方の磁極を内側に向けた多数の外部電磁石を環状にかつ1段又は複数段に配置する配置形態が挙げられる。また、空腔内に遠隔操作剪刀類具を配置する一方、体外から体腔内の適切な位置に、一方の磁極を内側に向けた外部電磁石を複数挿入して配置する配置形態も挙げられる。これらの配置形態において、適切な1又は複数の外部電磁石を励磁して内側にN極あるいはS極をそれぞれ発生させて、永久磁石体の周囲に生じる外部磁界のパターンを変化させて、空腔内に配置された遠隔操作剪刀類具の一対の永久磁石体を、それぞれ所望の位置に移動させたり停止させたりすることにより、一対の被駆動部を離間接近移動させて、一対の作用部を開閉させる。また、体外に配置した、或いは、体外から体腔内に挿入配置した外部電磁石で生成する磁界の強さを、この外部電磁石に流す電流の増減よって変更するほか、外部電磁石の位置を移動させて、永久磁石体で受ける磁力を変化させ、空腔内に配置した遠隔操作剪刀類具の一対の永久磁石体を、それぞれ所望の位置に移動させたり停止させたりすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】実施形態1及び変形形態に係る遠隔操作剪刀類具の開閉制御システムの構成を示す説明図である。
図2】実施形態1及び変形形態に係り、外部磁界発生装置の形態を示す説明図である。
図3】実施形態1,2に係る遠隔操作剪刀類具の形態を示す説明図である。
図4】変形形態に係る遠隔操作剪刀類具の形態を示す説明図である。
図5】実施形態1,2及び変形形態に係り、外部電磁石に生じさせる外部磁界を変化させることで、遠隔操作剪刀類具の一対の被駆動部に装着した永久磁石体を移動させて、一対の作用部を閉移動及び開移動させる原理を示す説明図であり、(a)は外部電磁石の内側にS極を生成した場合を、(b)は外部電磁石の内側に(a)よりも強いS極(SSで示す)を生成した場合を、(c)は外部電磁石の内側に強いN極(NNで示す)を生成した場合を、(d)は外部電磁石の内側にN極を生成した場合を示す。
図6】実施形態2に係る遠隔操作剪刀類具の開閉制御システムの構成を示す説明図である。
図7】実施形態2に係り、磁石挿入具の構成を示す説明図である。
図8】実施形態2に係り、ベッドに設けた外部電磁石の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(実施形態1及び変形形態)
以下、本発明の実施形態1及び変形形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に本実施形態1及び変形形態に係る遠隔操作剪刀類具10,210の開閉制御システム(以下、単にシステムという)100,200の概略構成を、図2にシステム100,200のうち人体BD内の遠隔操作剪刀類具10,210を遠隔操作する外部磁界発生装置53の形態を、図3に実施形態1に係る遠隔操作剪刀類具10の形態を示す。また、図4に変形形態に係る遠隔操作剪刀類具210の形態を示す。図1図2に示すシステム100,200は、遠隔操作剪刀類具10,210と、これを制御する開閉制御装置50とを備えている。
【0039】
まずは実施形態1に係るシステム100に用いる遠隔操作剪刀類具10について説明する。遠隔操作剪刀類具10は、図3に示すように、手術用剪刀類具(以下、単に剪刀類具ともいう)20と、この剪刀類具20に装着した一対の永久磁石体30とを有しており、永久磁石体30を後述する外部磁界OMFで移動させることにより、剪刀類具20を遠隔操作可能となっている。
【0040】
このうち、本実施形態1に係る剪刀類具20は、具体的には、第1刃体部21A及び第1被駆動部23Aを有する第1部材20Aと、第2刃体部21B及び第2被駆動部23Bを有する第2部材20Bとを支点部22でX字形に組み合わせたローマ型鋏(剪刀)である。第1刃体部21Aと第2刃体部21Bとは、患部組織や糸などの対象物を剪断可能に互いの刃部21AB,21BBが合わさった状態を維持した開閉移動OCV(開移動OV及び閉移動CV,図3参照)が可能な、一対の刃体部21を成している。また、第1被駆動部23Aと第2被駆動部23Bとは、相互に離間接近移動MV(離間移動DMV及び接近移動AMV,図3参照)することにより、一対の刃体部21を開閉移動OCVさせることができるように構成された一対の被駆動部23を成す。この一対の被駆動部23(第1被駆動部23A,第2被駆動部23B)には、それぞれ前述の永久磁石体30(第1永久磁石体30A,第2永久磁石体30B)が装着されている。
【0041】
本実施形態1の剪刀類具20においては、一対の被駆動部23(第1被駆動部23A,第2被駆動部23B)を含め、第1部材20A、第2部材20B及び支点部22は、いずれも磁石に付かない(吸引されない)オーステナイト系ステンレス(具体的にはSUS304)からなる。なお本実施形態1では、剪刀類具20のうち、一対の被駆動部23のみならず全体をSUS304で構成した。但し、少なくとも永久磁石体30を装着する一対の被駆動部23は、永久磁石体30の装着によって自身も磁石とならない材料、即ち非磁性材料(常磁性体,反磁性体)で構成するのが良く、より好ましくは剪刀類具20全体が非磁性材料で構成すると良い。非磁性材料としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、オーステナイト系ステンレスなどの非磁性の金属や、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化ケイ素などの非磁性のセラミック、PTFE、ポリエチレン、PET、塩化ビニルなどの非磁性の樹脂や炭素繊維を用いると良い。後述する変形形態の剪刀類具220についても同様である。
【0042】
一対の永久磁石体30(第1永久磁石体30A,第2永久磁石体30B)は、一対の被駆動部23(第1被駆動部23A,第2被駆動部23B)にそれぞれ装着可能な形態である。本実施形態1では、永久磁石体30は、図3において被駆動部23が延びる上下方向に長い略直方体形状であり、厚み方向(図3において左右方向)に着磁されている。一対の永久磁石体30は、それぞれ、図3に示すように、第1被駆動部23A及び第2被駆動部23Bの外側に図示しない接着剤により固着することで装着されており、内側がN極、外側がS極となるように装着されている。この永久磁石体30は、後述する開閉制御装置50によって、永久磁石体30A,30B自身の周囲に生成される外部磁界OMFから受ける磁力MFによって移動(図3において左右方向に移動)することで、この永久磁石体30が装着された一対の被駆動部23を離間接近移動MVさせる。これにより、剪刀類具20の一対の刃体部21(第1刃体部21A,第2刃体部21B)を開閉移動OCVさせることができる。
【0043】
次に変形形態に係るシステム200に用いる、遠隔操作剪刀類具210について説明する。遠隔操作剪刀類具210は、図4に示すように、剪刀類具220と、この剪刀類具220に装着した一対の永久磁石体230とを有しており、実施形態1の遠隔操作剪刀類具10と同様、永久磁石体230を後述する外部磁界OMFで移動させることにより、剪刀類具220を遠隔操作可能となっている。
【0044】
このうち、本変形形態に係る剪刀類具220は、具体的には、第1挟持部221A及び第1被駆動部223Aを有する第1部材220Aと、第2挟持部221B及び第2被駆動部223Bを有する第2部材220Bとを支点部222でX字形に組み合わせたローマ型鋏タイプの鉗子である。第1挟持部221Aと第2挟持部221Bとは、互いに接近してこれら間に存在する患部組織や糸などの対象物を挟持したり、挟持した対象物を引っ張ったり、第1挟持部221Aと第2挟持部221Bとで対象物を押し拡げたりする開閉移動OCV(開移動OV及び閉移動CV,図4参照)が可能な、一対の挟持部221を成している。また、第1被駆動部223Aと第2被駆動部223Bとは、相互に離間接近移動MV(離間移動DMV及び接近移動AMV,図4参照)することにより、一対の挟持部221を開閉移動OCVさせることができるように構成された一対の被駆動部223を成す。この一対の被駆動部223(第1被駆動部223A,第2被駆動部223B)には、それぞれ前述の永久磁石体230(第1永久磁石体230A,第2永久磁石体230B)が装着されている。
【0045】
本変形形態の剪刀類具220も、一対の被駆動部223を含め、第1部材220A、第2部材220B及び支点部222は、いずれも磁石に付かないオーステナイト系ステンレス(具体的にはSUS304)からなる。なお本変形形態でも、剪刀類具220の全体をSUS304で構成した。
【0046】
次いで、一対の永久磁石体230(第1永久磁石体230A,第2永久磁石体230B)について説明する。実施形態1の遠隔操作剪刀類具10では、一対の永久磁石体30を一対の被駆動部23にそれぞれ固着して装着した。これに対し、本変形形態の遠隔操作剪刀類具210では、一対の被駆動部223(第1被駆動部223A,第2被駆動部223B)のうち、基端側(図4において下方)の基端部223AK,223BKに、それぞれ、永久磁石体230を着脱可能に装着している。
【0047】
即ち、本変形形態では、第1永久磁石体230A,第2永久磁石体230Bはいずれも、SUS304からなる筒状のスリーブ230AS,230BSと、これにカシメ固定された永久磁石230AM,230BMとからなる。そして、図4に示すように、スリーブ230AS,230BSに、被駆動部223の基端部223AK,223BKを差し込むことで、第1永久磁石体230Aを第1被駆動部223Aに、第2永久磁石体230Bを第2被駆動部223Bに装着可能となっている。このようにすることで、遠隔操作剪刀類具10を洗浄したり滅菌消毒したりする場合などにおいて、一対の永久磁石体230と、剪刀類具220とを分離して、それぞれに適する処理を行うことができる、永久磁石体230の取り替えが可能となるなどのメリットを生じる。
【0048】
なお、本変形形態で永久磁石体230に用いる永久磁石230AM,230BMには、実施形態1で永久磁石体30として用いたのと同様の永久磁石を用いることができ、例えば、内側がN極、外側がS極となるようにスリーブ230AS,230BSに装着することができる。この永久磁石体230も、次述する開閉制御装置50によって、永久磁石230AM,230BM自身の周囲に生成される外部磁界OMFから受ける磁力MFによって移動(図4において左右方向に移動)することで、この永久磁石体230が装着された一対の被駆動部223を離間接近移動MVさせる。これにより、剪刀類具220の一対の挟持部221(第1挟持部221A,第2挟持部221B)を開閉移動OCVさせることができる。
【0049】
次いで、本実施形態1及び変形形態のシステム100,200のうち、開閉制御装置50(図1図2参照)について説明する。この開閉制御装置50(図1図2参照)は、一対の永久磁石体30の移動を、ひいては剪刀類具20の一対の刃体部21の開閉移動を遠隔制御する装置であり、電源制御装置51、駆動電源52、及び、外部磁界発生装置53を有する。このうち、外部磁界発生装置53は、複数(本実施形態1では60ヶ=12ヶ×5段)の外部電磁石53Aと、共通ヨーク53Bと、これらを収容する筐体53Cとを有する。
【0050】
このうち複数の外部電磁石53Aは、本実施形態1ではいずれも同一形状であり、円筒状の軟磁性材で透磁率の高い塊状鋼材(鋳鋼)からなるヨーク(鉄心)53A1と、ヨーク53A1の周囲に捲回されたコイル53A2とからなる。このコイル53A2の両端は、第1端子53A2a及び第2端子53A2bとして、筐体53Cの筐体外周壁53C2に延出しており、接続配線54を通じて、駆動電源52に接続している。
【0051】
駆動電源52から複数の外部電磁石53Aのコイル53A2にそれぞれ電磁石電流IM(n)(nは序数であり、本実施形態ではnは第1~第60)を流すことで、これらの外部電磁石53Aの周囲に、外部磁界OMFが形成される。本実施形態1では、ヨーク53A1の内側端面53A1iが内側を向くように配置した12個の外部電磁石53Aを、互いに放射状に等間隔で並べ、これを5段に亘って円筒状に積層した形態に配置してある(図1図2参照)。これにより、60個の外部電磁石53Aの内側には、遠隔操作剪刀類具10の永久磁石体30を保持したり移動させたりするのに用いる外部磁界OMFを生成できる。そして、60個の外部電磁石53Aにそれぞれ流す電磁石電流IM(n)の大きさや向き(正負)を適宜変化させることで、生成される外部磁界OMFのパターンや各部における磁界の強さを変えることができる。
【0052】
さらに外部磁界発生装置53は、軟磁性材で透磁率の高い塊状鋼材からなる環状の共通ヨーク53Bも有している(図1参照)。この共通ヨーク53Bは、放射状に並べた各外部電磁石53Aのヨーク53A1の外側端面53A1oに、内周面53Biが密接するように配置されており、外側端面53A1oを通る磁力線(図示しない)が、リング状の共通ヨーク53B内をも通るようにしてある。これによって、磁力線が環状の共通ヨーク53Bよりも外側に漏れにくくしてあり、漏れた磁力線による外部機器等への影響、外部機器等による外部磁界OMFへの影響を抑制している。
【0053】
なお、生成したい外部磁界OMFの範囲や強さなどに応じて、外部電磁石53Aの大きさやヨーク53A1の形態、外部電磁石53Aの数や配置、共通ヨーク53Bの形態や配置を定めると良い。また本実施形態1では、各々のヨーク53A1と共通ヨーク53Bとを別に形成したが、これらを一体に形成し、ヨーク部分にコイル53A2を捲回して、複数の外部電磁石53Aを形成しても良い。
【0054】
さらに筐体53Cは、筐体内周壁53C1の内側が空洞とされた円筒状(ドーナツ状)の形態を有しており、複数の外部電磁石53A及び共通ヨーク53Bを内部に収容している。具体的には、筐体内周壁53C1に、ヨーク53A1の内側端面53A1iが接するように配置されている一方、前述したように、筐体外周壁53C2に、コイル53A2の第1端子53A2aと第2端子53A2bが延出している。
【0055】
コイル53A2の第1端子53A2a及び第2端子53A2bには、接続配線54を通じて駆動電源52が接続されている。この駆動電源52は、接続配線54を通じて、各々の外部電磁石53Aのコイル53A2に、正又は負の適宜の大きさの直流電流を電磁石電流IM(n)(例えばIM(1),…,IM(11)…)として流すことが可能な電源である。
【0056】
筐体53Cの筐体内周壁53C1の内側には、例えば図1図2に示すように、ベッドEEに載せられた対象物OJである人体BDが挿入される。なお、人体BD内の空腔VC内(本例では腹腔内)には、予め遠隔操作剪刀類具10(或いは後述する遠隔操作剪刀類具210)が挿入されているとする。
【0057】
電源制御装置51は、この駆動電源52が各外部電磁石53Aに向けて流す電磁石電流IM(n)の大きさをそれぞれ制御する装置であり、図示しないコンピュータ、ディスプレイを有しており、コンピュータは、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等、一般的なハードウエアを備えており、ROMには、OS(Operating System)、外部磁界制御プログラムなどの各プログラム、各種データ等が格納されている。OSおよびプログラム等は、RAMに展開され、CPUによって実行される。この電源制御装置51は、外部磁界制御プログラムの実行により、術野解析部51A、磁界解析部51B、外部磁界設定部51C、及び、電流設定部51Dとして機能する。
【0058】
遠隔操作剪刀類具10を開閉制御装置50で遠隔操作するに当たっては、具体的にはまず、術野解析部51Aにおいて、術野における、具体的には本実施形態1では人体BDの空腔VC或いは更にはその周囲における、人体BDの各臓器や遠隔操作剪刀類具10などの三次元的な位置や形態を解析する。なお、遠隔操作剪刀類具10の遠隔操作に並行して、別途、X線撮影やCT,MRIなど撮影を行い、これら他機器のデータDTを用いて、この術野解析部51Aにおける解析に用いると良い。
【0059】
次いで磁界解析部51Bでは、術野解析部51Aで得た各臓器及び遠隔操作剪刀類具10,210の位置や形態の解析結果から、外部磁界発生装置53によって筐体内周壁53C1の内側に現在生成している外部磁界OMFと、遠隔操作剪刀類具10,210の永久磁石体30,230による生じる磁石磁界とによる合成磁界が、どのような形態(パターンや強さ)になっているかを解析する。
【0060】
さらに、別途、電源制御装置51に入力された、遠隔操作剪刀類具10の一対の刃体部21(又は後述する遠隔操作剪刀類具210の一対の挟持部221)をどのように開閉移動OCV(開移動OVまたは閉移動CV)させるのかの指示を受け取る。そしてこの指示に基づき、指示された開閉移動OCVを生じさせるのに、一対の永久磁石体30,230をどのように移動させ、一対の被駆動部23,223をどのように離間接近移動MV(離間移動DMV又は接近移動AMV)させるのかを解析する。さらに、得られた一対の被駆動部23,223の離間接近移動MVを実現するためには、現在の合成磁界の形態を、どのように変化させれば良いのか、合成磁界の変化パターンを解析する。
【0061】
次いで外部磁界設定部51Cでは、得られた合成磁界の変化パターンを実現するために、外部磁界発生装置53で生成する外部磁界OMFの形態(パターンや強さ)をどのように変化させるかを解析し、変化パターンを設定する。
【0062】
さらに、電流設定部51Dでは、外部磁界設定部51Cで設定した外部磁界OMFの形態の変化パターンに基づいて、各外部電磁石53Aのコイル53A2にそれぞれ流す電磁石電流IM(n)の大きさや変化パターンを設定する。
【0063】
そして、この電流設定部51Dは、設定された変化パターンに基づいて、駆動電源52が各外部電磁石53A流す電磁石電流IM(n)を制御し、外部磁界発生装置53で生成する外部磁界OMFの形態を変化させて、一対の永久磁石体30,230を移動させて、一対の被駆動部23,223を離間接近移動MVさせる。これにより、遠隔操作剪刀類具10の一対の刃体部21(又は後述する遠隔操作剪刀類具210の一対の挟持部221)について、所望の開閉移動OCVを生じさせることができる。
【0064】
これにより、本実施形態1及び後述する変形形態の遠隔操作剪刀類具10,210では、一対の刃体部21や一対の挟持部221において、所望の開閉移動OCVを行わせることができ、図3図4において破線で示す対象物OJを剪断したり挟持したり、あるいは、閉じた一対の刃体部21や一対の挟持部221を開移動OVさせることができる。
【0065】
このように、図1に示す本実施形態1等の遠隔操作剪刀類具10,210及び開閉制御装置50を備えるシステム100,200では、非接触で遠隔操作により、例えば人体BDの空腔VC内に配置した遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具10,210について一対の刃体部21を開閉移動OCVさせることができる。
【0066】
次いで、図5を参照して、遠隔操作剪刀類具10を外部電磁石53Aで生成した外部磁界OMFによって遠隔操作する原理を説明する。なお簡単化のため、遠隔操作剪刀類具10を中央に配置し、その永久磁石体30にそれぞれ対向する2つの外部電磁石53Aが存在する場合で説明する。また、一対の永久磁石体30は外側がS極、内側がN極となるように装着されているとする。なお、以下の説明は、変形形態に係る遠隔操作剪刀類具210についても同様である。
【0067】
図5(a)に示すように、まず遠隔操作剪刀類具10は、一対の刃体部21がやや開いた状態であるとする。ここで、2つの外部電磁石53Aに電磁石電流IM(n),IM(n’)をそれぞれ流して、いずれの外部電磁石53Aにも、内側にS極を発生させたとする(n’はnとは異なる序数(n≠n’)であり、本実施形態ではn,n’は第1~第60)。すると、2つの外部電磁石53Aによって生成された外部磁界OMFにより、遠隔操作剪刀類具10の永久磁石体30はそれぞれ内側に向く磁力MFを受ける。外部電磁石53AのS極と永久磁石体30の外側のS極とが反発するためである。このため、永久磁石体30は内側に移動し、これに伴って、永久磁石体30が装着された一対の被駆動部23は互いに接近移動AMVする。これにより、一対の刃体部21が互いに閉移動CVする。
【0068】
但し、永久磁石体30が内側に移動するほど、それぞれの外部電磁石53Aが生成するS極から遠ざかることになるので、外部磁界OMFから受ける磁力MF(反発力)が減少するので、永久磁石体30は内側に移動し難くなる。
【0069】
そこで、図5(b)に示すように、2つの外部電磁石53Aにより大きな(矢印2つで示す)電磁石電流IM(n),IM(n’)をそれぞれ流して、いずれの外部電磁石53Aについても、内側により強いS極(SSで示す)を発生させる。すると、生成された外部磁界OMFから、遠隔操作剪刀類具10の永久磁石体30はそれぞれ内側に向くより強い磁力MFを受ける。このため、永久磁石体30はさらに内側に移動させることができ、これに伴って、永久磁石体30が装着された一対の被駆動部23もさらに接近移動AMVさせることができる。これにより、一対の刃体部21も大きく(矢印2つで示す)閉移動CVさせることができ、図5(b)に示すように、一対の刃体部21をほぼ閉じた状態とすることができる。
【0070】
その後、図5(c)に示すように、2つの外部電磁石53Aに、図5(b)とは逆向きの大きな(矢印2つで示す)電磁石電流IM(n),IM(n’)をそれぞれ流して、いずれの外部電磁石53Aについても、内側に強いN極(NNで示す)を発生させる。すると、生成された外部磁界OMFから、遠隔操作剪刀類具10の永久磁石体30はそれぞれ外側に向く強い磁力MFを受ける。永久磁石体30の外側のS極が外部電磁石53AのN極に吸引されるためである。このため、図5(b)とは逆に、永久磁石体30を外側に向けて移動させることができ、これに伴って、永久磁石体30が装着された一対の被駆動部23も離間移動DMVさせることができる。これにより、一対の刃体部21も開移動OVさせることができ、一対の刃体部21を徐々に開かせることができる。
【0071】
但し、永久磁石体30が外側に移動するほど、それぞれの外部電磁石53Aが生成するN極に近づくことになるので、外部磁界OMFから受ける磁力MF(吸引力)が増大する。このため、永久磁石体30が外側に移動するほど、外側への移動が容易になり、一対の刃体部21が開きすぎになる虞がある。
【0072】
そこで、図5(d)に示すように、2つの外部電磁石53Aに、図5(c)よりも少ない(矢印1つで示す)電磁石電流IM(n),IM(n’)をそれぞれ流して、いずれの外部電磁石53Aについても、内側に相対的に弱いN極(Nで示す)を発生させる。これにより、遠隔操作剪刀類具10の永久磁石体30は、外部磁界OMFから外側に向く比較的弱い磁力MFを受ける。このため、永久磁石体30は徐々に外側に移動させることができ、これに伴って、永久磁石体30が装着された一対の被駆動部23をさらに離間移動DMVさせることができる。これにより、一対の刃体部21も大きく(矢印2つで示す)開移動OVさせることができ、図5(d)に示すように、一対の刃体部21を大きく開いた状態とすることができる。
【0073】
なお、一対の刃体部21の開き具合が所望の大きさとなった時点で、電磁石電流IM(n),IM(n’)をゼロとすることで、一対の永久磁石体30の移動や、一対の被駆動部23の離間接近移動MV、一対の刃体部21の開閉移動OCVを停止させることができる。
【0074】
上記説明では、2つの外部電磁石53Aに流す電磁石電流IM(n),IM(n’)を同様に変化させた例を示した。しかし、遠隔操作剪刀類具10の位置や姿勢、一対の刃体部21の開き具合、所望の動作などに応じて、適切な外部磁界OMFを生成するため、2つ外部電磁石53Aに流す電磁石電流IM(n),IM(n’)をそれぞれ別に変化させることもできる。
【0075】
容易に理解できるように、図1図2に示すように多数の外部電磁石53Aを用いた外部磁界発生装置53でも、遠隔操作剪刀類具10の位置や姿勢、一対の刃体部21の開き具合、所望の動作などに応じて、適切な外部磁界OMFを生成するため、前述の電源制御装置51の電流設定部51Dにおいて、各外部電磁石53Aに流す電磁石電流IM(n)をそれぞれ適切に設定する。
【0076】
実施形態1及び変形形態のシステム100,200では、人体BDの体腔VCBである空腔VC内に配置した遠隔操作剪刀類具10,210を、人体BDの体外OBDを取り囲む筒状の外部磁界発生装置53を有する開閉制御装置50で遠隔操作する例を示した(図1図2参照)。
【0077】
そして、この実施形態1等では、外部電磁石の位置や姿勢が固定されて変更できない外部磁界発生装置、具合的には、ヨーク53A1が円筒状の共通ヨーク53Bに固定され、かつ、ヨーク53A1の内側端面53A1iが径方向内側を向く姿勢とされた多数の外部電磁石53Aを用いた外部磁界発生装置53を例示した。
複数の外部電磁石のうち、その一部又は全部の位置や姿勢を変更可能とした外部磁界発生装置を用いることもできる。
【0078】
(実施形態2)
また実施形態1等では、外部電磁石53Aの位置を予め固定した外部磁界発生装置53を用いたが、例えば、支持部材の先端部に外部電磁石を取り付けた磁石挿入具を複数用意し、遠隔操作したい遠隔操作剪刀類具の形態や大きさ、配置する空腔VCの大きさや位置等を考慮して外部電磁石を人体BDの体外或いは体内(空腔内)の適切な位置にそれぞれ配置し、これらの外部電磁石を用いて遠隔操作剪刀類具を遠隔操作するようにしても良い。このような本実施形態2に係る遠隔操作剪刀類具310の開閉制御システム300を、図6図8を参照して説明する。但し、実施形態1等とは異なる部分を中心に説明し、同様な部分の説明は省略或いは簡略化する。
【0079】
本実施形態2のシステム300に用いる遠隔操作剪刀類具310(図3参照)は、実施形態1で用いた遠隔操作剪刀類具10とは、大きさが小さい点で異なるが、同材同形状である。このため、遠隔操作剪刀類具310についての説明は、省略する。この遠隔操作剪刀類具310も、実施形態1の遠隔操作剪刀類具10と同様、永久磁石体330を後述する外部磁界OMFで移動させることにより、剪刀類具320を遠隔操作可能である。但し本実施形態2では、遠隔操作剪刀類具310は、人体BDの体腔VCB内の管腔臓器ORが有する内腔VCO内に配置されているものとして説明を行う(図6参照)。
【0080】
次いで、本実施形態3のシステム300のうち、開閉制御装置350(図6参照)について説明する。この開閉制御装置350は、遠隔操作剪刀類具310の一対の永久磁石体330の移動を、ひいては剪刀類具320の一対の刃体部321の開閉移動を遠隔制御する装置であり、電源制御装置351、駆動電源352、及び、外部磁界発生装置353を有する。
【0081】
外部磁界発生装置353は、外部電磁石353Aとして、体外OBDに配置される複数(図6では3個のみ示す)の体外外部電磁石353AK、及び、磁石挿入具359にそれぞれ設けられ、体腔VCB内に配置される複数(図6では4個のみ示す)の可動外部電磁石353AMを有する。
【0082】
このうち、各々の体外外部電磁石353AK(図6図8参照)は、直棒状のヨーク353AK1と、この周囲に捲回されたコイル353AK2とからなり、いずれも、人体BDの体外OBDであるベッドEEに埋め込み配置されており、コイル353AK2の第1端子353AK2a及び第2端子353AK2bは、それぞれ、駆動電源352に接続されている。各々の体外外部電磁石353AKは、ベッドEE上に仰臥された人体BDを通じて、体腔VCB内に外部磁界OMFを生成する。
【0083】
なお、図6では体外外部電磁石353AKを3個のみ示したが、更に多数の体外外部電磁石353AKをベッドEE内(例えば、ベッドEEの長手方向(図6において紙面に垂直な方向)に所定の間隔を空けて格子状)に埋め込み配置すると良い。
また、ベッドEEのみならず、人体BDの体外OBDとなる場所のうち、次述する磁石挿入具359の設置や動作に支障の無い領域に、1または複数の体外外部電磁石353AKを配置するようにしても良い。あるいは、実施形態1の外部磁界発生装置53(図1図2参照)のうち、上方が開放し、下方の約半分のみを用いる略半円筒形態とし、これに外部電磁石53Aに代えた体外外部電磁石353AKを用いるようにしても良い。
【0084】
一方、可動外部電磁石353AMを有する磁石挿入具359(図6図7参照)は、直管状の管状支持部材355と、その先端部355Sに片持ち状に支持された可動外部電磁石353AMと、人体BDに穿孔したポート設置孔PHに挿入固定される円筒状のポート6と、このポート356に固定され、管状支持部材355の周囲を把持し、この管状支持部材355を移動させる位置変更アクチュエータ357と、管状支持部材355の先端部355Sの周囲に設けられ、先端部355S及びこれに支持された可動外部電磁石353AMを首振り状に移動させてこれらの姿勢を変更する姿勢変更アクチュエータ358とを有する。
【0085】
このうち、可動外部電磁石353AM(図6図7参照)は、直棒状のヨーク353AM1と、この周囲に捲回されたコイル353AM2とからなり、管状支持部材355の後端部355K内を経由して、コイル353AM2の第1端子353AM2a及び第2端子353AM2bが延出している。これらの端子353AK2a,353AK2bも、それぞれ、駆動電源352に接続されている。この可動外部電磁石353AMは、図6に示すように、人体BDの体腔VCB内に挿入されて、この体腔VCB内に外部磁界OMFを生成する。
なお、本実施形態2の磁石挿入具359は、図7に示すように、可動外部電磁石353AM(ヨーク353AM1)の軸線が、管状支持部材355の軸線と一致する姿勢を基本姿勢とする。
【0086】
位置変更アクチュエータ357は、管状支持部材355の周囲を把持すると共に、この管状支持部材355をその軸線方向に移動(進退)させることができるほか、ポート356と管状支持部材355との隙間が許容する範囲内で、ポート356に対し管状支持部材355を傾けるように移動させることができるように構成されている。これにより、管状支持部材355の先端部355S及びこの先端部355Sに支持されている可動外部電磁石353AMの位置を、図6において直交する3つの両矢印で示すように、三次元的に移動させることができる。なお、位置変更アクチュエータ357による管状支持部材355の先端部355S及び可動外部電磁石353AMの位置の制御は、外部磁界設定部351Cの位置制御部351C1によって行う。
【0087】
また、姿勢変更アクチュエータ358は、管状支持部材355の先端部355Sの周囲を把持すると共に、この先端部355Sを屈曲させることにより、先端部355S及びこの先端部355Sに支持されている可動外部電磁石353AMの姿勢(具体的には、可動外部電磁石353AM(ヨーク353AM1)の軸線方向)を、姿勢変更アクチュエータ358を中心に首振り状に変更可能としている。即ち、ヨーイング(左右方向の偏角)及びピッチング(上下(あおり)方向の偏角)も変更可能にしている。この姿勢変更アクチュエータ358による管状支持部材355の先端部355S及び可動外部電磁石353AMの姿勢の制御は、外部磁界設定部351Cの姿勢制御部351C2によって行う。
【0088】
電源制御装置351の各部351A~351Dは、実施形態1の電源制御装置51の各部51A~51Dとほぼ同様であるので、説明を省略する。
但し、上述したように、外部磁界設定部351Cは、管状支持部材355の先端部355S及び可動外部電磁石353AMの位置の制御を行う位置制御部351C1、及び、可動外部電磁石353AM等の姿勢の制御を行う姿勢制御部351C2を備えている。
このため、外部磁界設定部351Cは、管状支持部材355の先端部355S及び可動外部電磁石353AMの位置及び姿勢の変更を加味して、得られた合成磁界の変化パターンを実現するために、外部磁界発生装置53で生成する外部磁界OMFの形態(パターンや強さ)をどのように変化させるかを解析し、変化パターンを設定する。また、必要に応じて、術野解析部51A及び磁界解析部51Bにおいて、管状支持部材355の先端部355S及び可動外部電磁石353AMの位置及び姿勢の変更をフィードバックして解析を行い、その結果を、位置制御部351C1及び姿勢制御部351C2における位置や姿勢の制御、外部磁界設定部351Cにおける外部磁界OMFの変化パターンを設定に反映する。また、電流設定部351Dでは、外部磁界設定部351Cで設定した外部磁界OMFの形態の変化パターンに基づいて、各外部電磁石53Aのコイル53A2にそれぞれ流す電磁石電流IM(n)の大きさや変化パターンを設定する。
【0089】
この実施形態2の開閉制御装置50でも、駆動電源352から各々の外部電磁石353A(複数の体外外部電磁石353AKと複数の可動外部電磁石353AM)のコイル353AK2、353AM2にそれぞれ電磁石電流IM(n)を流すことで、これらの外部電磁石353Aの周囲(人体BDの体腔VCB内、管腔臓器OR、及び管腔臓器OR内の内腔である空腔VC内)に、遠隔操作剪刀類具310の永久磁石体330を保持したり移動させたりするのに用いる外部磁界OMFを生成できる。そして、各々の外部電磁石353Aにそれぞれ流す電磁石電流IM(n)の大きさや向き(正負)、さらには、各々の可動外部電磁石353AMの位置や姿勢を適宜変化させることで、生成される外部磁界OMFのパターンや各部における磁界の強さを変えることができる。
【0090】
これにより、本実施形態2の遠隔操作剪刀類具310でも、一対の刃体部321において、所望の開閉移動OCVを行わせることができ、図3において破線で示す対象物OJを剪断したり、あるいは、閉じた一対の刃体部321を開移動OVさせることができる。
【0091】
このように、図6に示す本実施形態2の遠隔操作剪刀類具310及び開閉制御装置350を備えるシステム300では、非接触で遠隔操作により、例えば管腔臓器OR内の空腔VC内に配置した遠隔操作剪刀類具310について一対の刃体部321を開閉移動OCVさせることができる。
【0092】
以上において、本発明を実施形態1,2及び変形形態に即して説明したが、本発明は実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態1,2及び変形形態の遠隔操作剪刀類具10,210,310では、剪刀類具20,220,320として、ローマ型鋏タイプの手術用剪刀類具(図3図4参照)を用いた例を示した。しかし、ギリシア型鋏タイプの手術用剪刀類具に永久磁石体を装着した遠隔操作剪刀類具を用いることもできる。
【0093】
また、実施形態1の遠隔操作剪刀類具10(図3参照)では、第1被駆動部23Aに1つの第1永久磁石体30Aを、第2被駆動部23Bに1つの第2永久磁石体30Bを装着した例を示した。しかし、図3において、破線で示すように、第1被駆動部23Aに2つの第1永久磁石体30A,30Apを、第2被駆動部23Bに2つの第2永久磁石体30B,30Bpを装着してもよい。この場合において、第1永久磁石体30Ap及び第2永久磁石体30Bpを、第1永久磁石体30A及び第2永久磁石体30Bと同様に、外側がS極となり内側がN極となるように装着(固着)することができる。この場合には、図5を用いて説明したように外部磁界OMFから受ける一対の永久磁石体30が受ける磁力MFを大きくすることができる。一方、第1永久磁石体30Ap及び第2永久磁石体30Bpを、第1永久磁石体30A及び第2永久磁石体30Bとは逆に、外側がN極となり内側がS極となるように装着(固着)することもできる。この場合には、外部磁界OMFのパターンを更に微細に変化させることで、より微細な移動制御を行うことができる。この変形は、遠隔操作剪刀類具210,310(図3図4参照)に対しても、同様に適用できる。
【符号の説明】
【0094】
100,200,300 システム(遠隔操作剪刀類具の開閉制御システム)
10,210,310 遠隔操作剪刀類具(遠隔操作可能な遠隔操作剪刀類具)
20,220,320 剪刀類具(手術用剪刀類具)
21,321 一対の刃体部(一対の作用部)
23,223,323 一対の被駆動部
MV (一対の被駆動部の)離間接近移動
OCV (一対の刃体部、挟持部の)開閉移動
30,230,330 永久磁石体
50,350 開閉制御装置(遠隔操作剪刀類具の開閉制御装置)
51,351 電源制御装置(磁石移動制御部)
52,352 駆動電源
53,353 外部磁界発生装置
53A,353A,353AK,353AM 外部電磁石
353AK 体外外部電磁石
353AM 可動外部電磁石
IM(n),IM(n’),IM(1),IM(11) (外部電磁石に流す)電磁石電流
53C 筐体
355 (可動外部電磁石を支持する)管状支持部材(支持部材)
355S (管状支持部材の)先端部
355K (管状支持部材の)基端部
357 位置変更アクチュエータ
358 姿勢変更アクチュエータ
359 磁石挿入具
OJ 対象物
BD 人体(対象物)
OBD 体外
VC 空腔
VCB 体腔
VCO (管腔臓器の)内腔
OMF (開閉制御装置で生成される)外部磁界
MF (外部磁界から受ける)磁力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8