IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社テストラムの特許一覧

特開2022-138286RFIDタグ用のアンテナ装置、およびRFIDタグ検査装置
<>
  • 特開-RFIDタグ用のアンテナ装置、およびRFIDタグ検査装置 図1
  • 特開-RFIDタグ用のアンテナ装置、およびRFIDタグ検査装置 図2
  • 特開-RFIDタグ用のアンテナ装置、およびRFIDタグ検査装置 図3
  • 特開-RFIDタグ用のアンテナ装置、およびRFIDタグ検査装置 図4
  • 特開-RFIDタグ用のアンテナ装置、およびRFIDタグ検査装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138286
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】RFIDタグ用のアンテナ装置、およびRFIDタグ検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/52 20060101AFI20220915BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20220915BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20220915BHJP
   H01Q 9/30 20060101ALN20220915BHJP
【FI】
H01Q1/52
G06K7/10 240
H04B5/02
H01Q9/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038083
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】502432497
【氏名又は名称】株式会社テストラム
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】沖本 純一
【テーマコード(参考)】
5J046
5K012
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J046AA19
5J046AB06
5J046UA02
5J046UA03
5K012AA05
5K012AC01
5K012AC08
5K012AC10
(57)【要約】
【課題】アンテナ間の干渉を低減できるとともに、アンテナを配置するのに必要なスペースを節約できるRFIDタグ用のアンテナ装置を提供する。
【解決手段】RFIDタグ用のアンテナ装置10は、RFIDタグ15に対して電波を送信する第1のアンテナ11と、電波を受信したRFIDタグ15から発信される応答波を受信する第2のアンテナ12と、第1のアンテナ11および第2のアンテナ12のうちの1つをそれぞれ有する1対の金属板13A、13Bとを備え、1対の金属板13A、13Bそれぞれの一端部が接続され、1対の金属板13A、13Bにおいて、第1のアンテナ11を有する金属板13Aと第2のアンテナ12を有する金属板13Bとが、角度をなすように対向して配置され、第1のアンテナ11および第2のアンテナ12がそれぞれ、1対の金属板13A、13Bの対向する面とは反対側の面のそれぞれから突出するように配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグ用のアンテナ装置であって、
RFIDタグに対して電波を送信する第1のアンテナと、
前記電波を受信した前記RFIDタグから発信される応答波を受信する第2のアンテナと、
前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナのうちの1つをそれぞれ有する1対の金属板と、
を備え、
前記1対の金属板それぞれの一端部が接続され、
前記1対の金属板において、前記第1のアンテナを有する金属板と前記第2のアンテナを有する金属板とが、角度(θ)をなすように対向して配置され、
前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナがそれぞれ、前記1対の金属板の対向する面とは反対側の面のそれぞれから突出するように配置される、
RFIDタグ用のアンテナ装置。
【請求項2】
前記角度(θ)が15°~60°である、請求項1に記載のRFIDタグ用のアンテナ装置。
【請求項3】
前記1対の金属板がほぼV字形状になるように配置される、請求項1または請求項2に記載のRFIDタグ用のアンテナ装置。
【請求項4】
前記1対の金属板が、1枚の金属板を折り曲げることにより、または複数枚の金属板を接合することにより、形成される、請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載のRFIDタグ用のアンテナ装置。
【請求項5】
前記1対の金属板を構成する金属板の幅(W)が、15cm~60cmである、請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載のRFIDタグ用のアンテナ装置。
【請求項6】
さらに、前記第1のアンテナに高周波電流を供給する第1の給電線、および前記第2のアンテナから高周波電流を伝送する第2の給電線を備え、
前記第1の給電線および前記第2の給電線が、前記1対の金属板間を通るように配置される、
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載のRFIDタグ用のアンテナ装置。
【請求項7】
RFIDタグ検査装置であって、
RFIDタグに対して電波を送信する第1のアンテナと、
前記電波を受信した前記RFIDタグから発信される応答波を受信する第2のアンテナと、
前記電波を送信するための第1の信号を前記第1のアンテナに出力する送信回路と、
前記応答波を受信した前記第2のアンテナから第2の信号が入力される受信回路と、
を備え、
前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナのうちの1つが、1対の金属板のそれぞれに配置され、
前記1対の金属板それぞれの一端部が接続され、
前記1対の金属板において、前記第1のアンテナを有する金属板と前記第2のアンテナを有する金属板とが、角度(θ)をなすように対向して配置され、
前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナがそれぞれ、前記1対の金属板の対向する面とは反対側の面のそれぞれから突出するように配置される、
RFIDタグ検査装置。
【請求項8】
前記角度(θ)が15°~60°である、請求項7に記載のRFIDタグ検査装置。
【請求項9】
前記1対の金属板を構成する金属板の幅(W)が、15cm~60cmである、請求項7または請求項8に記載のRFIDタグ検査装置。
【請求項10】
さらに、前記第1のアンテナに高周波電流を供給する第1の給電線、および前記第2のアンテナから高周波電流を伝送する第2の給電線を備え、
前記第1の給電線および前記第2の給電線が、前記1対の金属板間を通るように配置される、
請求項7から請求項9のうちのいずれか一項に記載のRFIDタグ検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency Identification)タグ用のアンテナ装置、およびRFIDタグ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナ装置を介して、UHF(Ultra High Frequency:極超短波)帯RFIDタグの性能を評価する検査機器が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この検査機器では通常、周波数800MHz~1000MHzによりRFIDタグと通信し、RFIDタグと一定品質により通信できれば良品として、そしてRFIDタグと一定品質により通信できなければ不良品として、RFIDタグを選別する(RFIDタグの良否を評価する。)。
【0003】
UHF帯RFIDタグの検査機器に使用されるアンテナ装置としては、例えば、
(1)直線偏波型のパッチアンテナを送信用と受信用にそれぞれ1つ、RFIDタグを挟んでRFIDタグから見て上下に配置するように構成されたもの
(2)サーキュレーターを使用して1つの直線偏波型パッチアンテナを形成するように構成されたもの
が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-79687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した(1)のアンテナ装置では、送信用アンテナは、UHF帯RFIDタグに対して、電力を供給するために、所定以上の高周波電力による電波信号(電波)を電力供給信号として送信する必要がある。しかしながら、このアンテナ装置の送信用アンテナと受信用アンテナの位置が近い場合、送信用アンテナから電力供給信号が受信用アンテナへ漏えいして、RFIDタグから受信用アンテナへの応答信号(応答波)に干渉する。このため、アンテナ装置の信号処理回路において、ダイナミックレンジの低下が生じていた。
【0006】
送信用アンテナと受信用アンテナとの間の前述したような干渉を少なくするための最も簡単な対応策としては、送信用アンテナと受信用アンテナとの間隔を広げることが考えられる。しかしながら、送信用アンテナと受信用アンテナとの間の干渉を少なくするために、送信用アンテナと受信用アンテナとの間隔を広げようとすると、標準的なUHF帯1/4波長垂直接地アンテナの場合、少なくとも数メートル以上の間隔が必要であり、スペースの観点から課題があった。
このほかに、送信信号の受信回路への混入を排除する回路を、信号処理回路に設けるといった対応策が考えられるが、その設置により、回路規模が大きくなるとともに、コストの上昇を招く可能性があった。
【0007】
一方、前述した(2)のアンテナ装置では、使用するアンテナが1つで済む反面、一般的に高価格であるサーキュレーターを用意する必要があるため、コストが多くかかる傾向があった。
【0008】
そこで、本発明は、アンテナ間の干渉を低減することができるとともに、アンテナを配置するのに必要なスペースを節約することができる、RFIDタグ用のアンテナ装置、およびRFIDタグ検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するために、本発明の「RFIDタグ用のアンテナ装置」は、
RFIDタグに対して電波を送信する第1のアンテナと、
電波を受信したRFIDタグから発信される応答波を受信する第2のアンテナと、
第1のアンテナおよび第2のアンテナのうちの1つをそれぞれ有する1対の金属板と、
を備え、
1対の金属板それぞれの一端部が接続され、
1対の金属板において、第1のアンテナを有する金属板と第2のアンテナを有する金属板とが、角度(θ)をなすように対向して配置され、
第1のアンテナおよび第2のアンテナがそれぞれ、1対の金属板の対向する面とは反対側の面のそれぞれから突出するように配置される。
【0010】
好適には、角度(θ)は15°~60°である。
【0011】
好適には、1対の金属板はほぼV字形状になるように配置される。
【0012】
好適には、1対の金属板は、1枚の金属板を折り曲げることにより、または複数枚の金属板を接合することにより、形成される。
【0013】
好適には、1対の金属板を構成する金属板の幅(W)は、15cm~60cmである。
【0014】
さらに、第1のアンテナに高周波電流を供給する第1の給電線、および第2のアンテナから高周波電流を伝送する第2の給電線を備え、
第1の給電線および第2の給電線が、1対の金属板間を通るように配置される。
【0015】
また、前述した課題を解決するために、本発明の「RFIDタグ検査装置」は、
RFIDタグに対して電波を送信する第1のアンテナと、
電波を受信したRFIDタグから発信される応答波を受信する第2のアンテナと、
電波を送信するための第1の信号を第1のアンテナに出力する送信回路と、
応答波を受信した第2のアンテナから第2の信号が入力される受信回路と、
を備え、
第1のアンテナおよび第2のアンテナのうちの1つが、1対の金属板のそれぞれに配置され、
1対の金属板それぞれの一端部が接続され、
1対の金属板において、第1のアンテナを有する金属板と第2のアンテナを有する金属板とが、角度(θ)をなすように対向して配置され、
第1のアンテナおよび第2のアンテナがそれぞれ、1対の金属板の対向する面とは反対側の面のそれぞれから突出するように配置される。
【0016】
好適には、角度(θ)は15°~60°である。
【0017】
好適には、1対の金属板を構成する金属板の幅(W)は、15cm~60cmである。
【0018】
さらに、第1のアンテナに高周波電流を供給する第1の給電線、および第2のアンテナから高周波電流を伝送する第2の給電線を備え、
第1の給電線および第2の給電線が、1対の金属板間を通るように配置される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アンテナ間の干渉を低減するとともに、アンテナを配置するのに必要なスペースを節約する、RFIDタグ用のアンテナ装置、およびRFIDタグ検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る「RFIDタグ用のアンテナ装置」の構成を概略的に示す図である。
図2図1に示した「RFIDタグ用のアンテナ装置」のうちの一部を説明する図である。
図3図1に示した「RFIDタグ用のアンテナ装置」のうちの一部を説明する図である。
図4】本発明の一実施形態に係る「RFIDタグ検査装置」の構成を概略的に示す図である。
図5】1対の金属板を構成する金属板間の角度、および金属板の幅に対する、送信用アンテナと受信用アンテナとの間のアイソレーションの周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の「RFIDタグ用のアンテナ装置」の実施形態を、図面に従って説明する。
【0022】
(実施形態1)
<RFIDタグ用のアンテナ装置の概略>
図1は、本発明の実施形態によって実施される「RFIDタグ用のアンテナ装置」の構成を概略的に示している。
図1に示すように、本実施形態に係るRFIDタグ用のアンテナ装置10は、第1のアンテナとしての送信用アンテナ11と、第2のアンテナとしての受信用アンテナ12と、送信用アンテナ11および受信用アンテナ12のうちの1つをそれぞれ有する1対の金属板13A、13Bと、第1の給電線14Aおよび第2の給電線14Bとを備えている。
【0023】
<第1のアンテナおよび第2のアンテナ>
第1のアンテナとしての送信用アンテナ11は、RFIDタグ15に対して電波(電磁波)を送信するために設けられている。
一方、第2のアンテナとしての受信用アンテナ12は、前述の電波を受信したRFIDタグ15から発信される応答波を受信するために設けられている。
送信用アンテナ11と受信用アンテナ12とは、RFIDタグ15から見て上方に配置される。
【0024】
送信用アンテナ11および受信用アンテナ12は、線状または棒状のアンテナであり、その長さが5cm~10cmである。送信用アンテナ11および受信用アンテナ12には、例えば金属製の1/4波長垂直接地アンテナが用いられる。1/4波長垂直接地アンテナは、設置の容易性などの観点から、1/4波長ホイップアンテナ(モノポールアンテナ、ユニポールアンテナなどとも呼ばれる。)が好ましい。
【0025】
<金属板とそれへのアンテナの配置>
第1のアンテナとしての送信用アンテナ11と、第2のアンテナとしての受信用アンテナ12とは、1対の金属板のそれぞれ13A、13Bに配置されている。
1対の金属板13A、13Bは、それぞれの一方の端部が接続されている。
1対の金属板13A、13Bにおいて、送信用アンテナ11を有する金属板13Aと受信用アンテナ12を有する金属板13Bとは、図2に示すように、角度(θ)をなすように対向して配置されている。この角度(θ)は、後述するとおり、アンテナ間の干渉を効果的に低減するように、15°~60°であることが好ましく、後述するとおり、アンテナ間の干渉をさらに効果的に低減するように、30°がより好ましい。
1対の金属板13A、13Bは、それぞれの一方の端部が接続される接続点から、それぞれの他方の端部の方に向かって末広がりとなっており、全体としてV字形状になるように配置される。
【0026】
1対の金属板13A、13Bは、1枚の金属板を機械もしくは工具などを用いて折り曲げることにより、または、2枚以上の金属板を溶接したり、2枚以上の金属板を、締結具などを用いて締め付けたりして接合することにより、形成される。
【0027】
1対の金属板13A、13Bを形成するのに用いられる金属板は、例えば、アルミニウム(アルミ)製の板、ステンレス製の板である。1対の金属板13A、13Bを形成するのに用いられる金属板は、アルミニウム製の板(例えば、アルミ板)が好ましい。これは、軽いこと、耐食性に富むこと、加工しやすいこと、および非磁性体であることなどの理由による。
【0028】
1対の金属板13A、13Bを構成する金属板の幅(W)(図3を参照)は、後述するとおり、アンテナ間の干渉を効果的に低減するように、15cm~60cmであることが好ましく、後述するとおり、アンテナ間の干渉をさらに効果的に低減するように、30cmがより好ましい。
一方、1対の金属板のそれぞれ13A、13Bの長さ(L)(図3を参照)は、前述した、1対の金属板13A、13Bを構成する金属板の幅(W)、および後述する、1対の金属板のそれぞれ13A、13Bの表面積を考慮して、15cm~60cmであることが好ましい。
【0029】
送信用アンテナ11および受信用アンテナ12はそれぞれ、1対の金属板13A、13Bの対向する面とは反対側の面のそれぞれから、コネクター(接栓)などを介して突出するように配置されている。
送信用アンテナ11および受信用アンテナ12はそれぞれ、1対の金属板13A、13Bの対向する面とは反対側の面それぞれの中央付近に配置されることが好ましい。このように配置されることにより、送信用アンテナ11および受信用アンテナ12はそれぞれ、金属板13A、13Bの全方向に対して満遍なく、安定した電波放射特性をもたらすことができる。
【0030】
本実施形態に係るRFIDタグ用のアンテナ装置10では、図2に示すように、送信用アンテナ11および受信用アンテナ12はそれぞれ、一対の金属板のそれぞれ13A、13Bの中央付近から、コネクター21A、21Bを介して突出するように配置されている。コネクター21A、21Bは、アンテナベースに着脱自在に取り付けられる。
【0031】
1対の金属板のそれぞれ13A、13Bは、送信用アンテナ11および受信用アンテナ12をそれぞれ支持するのと同時に、グラウンドとしても機能する。
【0032】
1対の金属板のそれぞれ13A、13Bの表面積は、接地(アース)の確保および取り扱いなどの観点から、300cm~3000cmであることが好ましい。
【0033】
<第1の給電線および第2の給電線>
さらに、本実施形態に係るRFIDタグ用のアンテナ装置10は、図1に示すように、第1の給電線14Aおよび第2の給電線14Bを備えている。
第1の給電線14Aは、送信用アンテナ11に高周波電流を供給する。
一方、第2の給電線14Bは、受信用アンテナ12から高周波電流を伝送する。
第1の給電線14Aおよび第2の給電線14Bは、1対の金属板13Aと13Bとの間(アンテナが配置されていない面の間に形成された空間)を通るように配置されている。
第1の給電線14Aおよび第2の給電線14Bに用いられる給電線としては、ケーブルなどの伝送線路が挙げられるが、これに限定されない。
【0034】
<RFIDタグ>
本実施形態では、RFIDタグ15は、ラベル型、カード型、コイン型、スティック型、角型など、さまざまな形状であってもよい。
ここで、RFIDタグとは、RFIDにおいて用いられるデータキャリアをいう。RFIDタグは、RFタグ、無線ICタグ、非接触ICタグ、無線タグ、IDタグ、ICタグ、電子タグなどと呼ばれることがある。
また、RFIDには、ICカード(例えば、非接触ICカード)なども含まれるものとする。
【0035】
<RFIDタグ用のアンテナ装置の動作>
前述したように構成されたRFIDタグ用のアンテナ装置10について、その動作を説明する。
【0036】
まず、RFIDタグ15への出力電波が、第1のアンテナとしての送信用アンテナ11に出力される。送信用アンテナ11は、この電波をRFIDタグ15に送信する。すると、電波を受信したRFIDタグ15は、電波に反応して応答波を発信する。次いで、第2のアンテナとしての受信用アンテナ12は、応答波を受信し、その信号を出力する。
【0037】
<RFIDタグ用のアンテナ装置の奏する効果>
このように、本実施形態に係るRFIDタグ用のアンテナ装置10は、RFIDタグ15に対して電波を送信するための送信用アンテナ(第1のアンテナ)11を有する金属板13Aと、電波を受信したRFIDタグ15から発信される応答波を受信するための受信用アンテナ(第2のアンテナ)12を有する金属板13Bとが、角度(θ)(図2を参照)をなすように対向して配置されている。さらに、送信用アンテナ11および受信用アンテナ12はそれぞれ、1対の金属板13A、13Bの対向する面とは反対側の面のそれぞれから突出するように配置されている。
これによって、送信用アンテナ11から漏えいする電力供給信号は減衰するため、RFIDタグ15から受信用アンテナ12への応答波に対する干渉が低減する。したがって、送信用アンテナ11と受信用アンテナ12との間の干渉を低減することができる。
加えて、前述したような構成を有することにより、送信用アンテナ11および受信用アンテナ12からの放射電波の進路を、両アンテナから見て下方に位置する金属板の下端(1対の金属板13A、13Bの、それぞれの一方の端部が接続される接続点とその付近の部分)が妨げない。このため、RFIDタグ15に対して送信用アンテナ11および受信用アンテナ12の偏波面を整合させつつ、送信用アンテナ11および受信用アンテナ12から見て下方に配置されたRFIDタグ15の全面に電波を照射することができる。その結果、送信用アンテナ11および受信用アンテナ12の利得低下が起こらない。
【0038】
本実施形態に係るRFIDタグ用のアンテナ装置10では、前述したような構成を有することにより、送信用アンテナ11と受信用アンテナ12との間の干渉を低減できるため、送信信号の受信回路への混入を排除する回路などをわざわざ設ける必要もない。この点において、本実施形態に係るRFIDタグ用のアンテナ装置10は、回路規模およびコストの面でも優れている。
【0039】
加えて、送信用アンテナ11と受信用アンテナ12とを配置する際、標準的な1/4波長垂直接地アンテナを用いても、送信用アンテナ11と受信用アンテナ12との間隔は少なくて済み、両アンテナを同一の筐体内に収納できるなど、アンテナを配置するのに必要なスペースを節約することができる。
【0040】
なお、前述したように、1対の金属板13A、13Bにおいて、送信用アンテナ11を有する金属板13Aと受信用アンテナ12を有する金属板13Bとの角度(θ)(図2を参照)は、15°~60°であることが好ましい。これとともに、1対の金属板13A、13Bを構成する金属板の幅(W)(図3を参照)は、15cm~60cmであることが好ましい。このような範囲とすることにより、送信用アンテナ11と受信用アンテナ12との間の干渉を効果的に低減することができる。
さらに、前述したように、1対の金属板13A、13Bにおいて、送信用アンテナ11を有する金属板13Aと受信用アンテナ12を有する金属板13Bとの角度(θ)は、30°であることがより好ましい。これとともに、1対の金属板13A、13Bを構成する金属板の幅(W)(図3を参照)は、30cmであることがより好ましい。このような数値とすることにより、送信用アンテナ11と受信用アンテナ12との間の干渉をさらに効果的に低減することができる。
【0041】
また、本実施形態に係るRFIDタグ用のアンテナ装置10は、アンテナに高周波電流をそれぞれ供給、伝送する、第1の給電線14Aおよび第2の給電線14Bが、1対の金属板13Aと13Bとの間を通るように配置されている。
これによって、送信用アンテナ11および受信用アンテナ12の電波の送受信特性および送受信パターンに影響を及ぼすことなく、第1の給電線14Aおよび第2の給電線14Bは、アンテナに高周波電流をそれぞれ供給、伝送することが可能となる。
【0042】
次に、本発明の「RFIDタグ検査装置」の実施形態を、図面に従って説明する。
【0043】
(実施形態2)
<RFIDタグ検査装置>
図4は、本発明の実施形態によって実施される「RFIDタグ検査装置」の構成を概略的に示している。
図4に示すように、本実施形態に係るRFIDタグ検査装置40は、第1のアンテナとしての送信用アンテナ41と、第2のアンテナとしての受信用アンテナ42と、制御部44とを備えている。
【0044】
RFIDタグ検査装置40は、RFIDタグ47の性能を評価するための検査装置である。RFIDタグ検査装置40の検査により、RFIDタグ47の良否が評価され、RFIDタグ47が選別される。
【0045】
第1のアンテナとしての送信用アンテナ41、および第2のアンテナとしての受信用アンテナ42についてはそれぞれ、実施形態1の送信用アンテナ11および受信用アンテナ12と同様である(実施形態1の項目<第1のアンテナおよび第2のアンテナ>を参照)ため、説明を省略する。
【0046】
第1のアンテナとしての送信用アンテナ41と、第2のアンテナとしての受信用アンテナ42とは、1対の金属板のそれぞれ43A、43Bに配置されている。
1対の金属板43A、43Bについてはそれぞれ、実施形態1の1対の金属板13A、13Bと同様である(実施形態1の項目<金属板とそれへのアンテナの配置>を参照)ため、説明を省略する。
また、送信用アンテナ41と受信用アンテナ42の、1対の金属板のそれぞれ43A、43Bへの配置についても、実施形態1による、送信用アンテナ11と受信用アンテナ12の、1対の金属板のそれぞれ13A、13Bへの配置と同様である(実施形態1の項目<金属板とそれへのアンテナの配置>を参照)ため、説明を省略する。
【0047】
制御部44は、送信回路45と、受信回路46とを備えている。
送信回路45は、送信用アンテナ41に対して電波を送信するための第1の信号を出力するために設けられている。
一方、受信回路46は、受信用アンテナ42から第2の信号が入力されるように設けられている。
【0048】
さらに、本実施形態に係るRFIDタグ検査装置40は、第1の給電線および第2の給電線を備えている(図示しない。)。
第1の給電線は、送信回路45と送信用アンテナ41とを接続し、送信用アンテナ41に高周波電流を供給する。
一方、第2の給電線は、受信回路46と受信用アンテナ42とを接続し、受信用アンテナ42から高周波電流を伝送する。
第1の給電線および第2の給電線は、1対の金属板43Aと43Bとの間(アンテナが配置されていない面の間に形成された空間)を通るように配置されている。
第1の給電線および第2の給電線に用いられる給電線としては、ケーブルなどの伝送線路が挙げられるが、これに限定されない。
【0049】
なお、RFIDタグ検査装置40の検査対象物であるRFIDタグ47については、実施形態1のRFIDタグ15と同様である(実施形態1の項目<RFIDタグ>を参照)ため、説明を省略する。
【0050】
<RFIDタグ検査装置の動作>
前述したように構成されたRFIDタグ検査装置40について、その動作を説明する。
【0051】
まず、送信回路45が、RFIDタグ47への出力電波を発生させ、これを第1のアンテナとしての送信用アンテナ41に出力する。送信用アンテナ41は、送信回路45から入力された第1の信号に基づき、この電波をRFIDタグ47に送信する。すると、電波を受信したRFIDタグ47は、電波に反応して応答波を発信する。次いで、第2のアンテナとしての受信用アンテナ42は、応答波を受信すると、第2の信号を受信回路46に出力する。
【0052】
RFIDタグ47の検査は、検査対象物のRFIDタグ47と通信するか否か、およびその受信周波数特性を判断することにより、行われる。具体的には、RFIDタグ47の検査は、受信用アンテナ42が応答波を受信したか否か、すなわち、受信回路46に第2の信号が入力されたか否か、およびその受信周波数特性を判断することにより、行われる。
前述した判断については、受信回路46自体がこれを実行する機能を有するようにすることができる。
【0053】
このようにして、RFIDタグ47と通信し、あらかじめ設定されたしきい値以上の周波数特性を有する信号を受信したと判断された場合は、このRFIDタグ47は良品となる。
一方、RFIDタグ47と通信しないと判断された場合、または、RFIDタグ47と通信しても、受信した信号の周波数特性が、あらかじめ設定されたしきい値未満であると判断された場合は、このRFIDタグ47は不良品となる。
【0054】
<RFIDタグ検査装置の奏する効果>
本実施形態に係るRFIDタグ検査装置40では、第1のアンテナとしての送信用アンテナ41、および第2のアンテナとしての受信用アンテナ42がそれぞれ、実施形態1に係るRFIDタグ用のアンテナ装置10における送信用アンテナ11および受信用アンテナ12と同様の構成を採用している。
さらに、本実施形態に係るRFIDタグ検査装置40では、1対の金属板43A、43Bがそれぞれ、実施形態1に係るRFIDタグ用のアンテナ装置10における1対の金属板13A、13Bと同様の構成を採用している。
前述した構成に加え、本実施形態に係るRFIDタグ検査装置40では、送信用アンテナ41と受信用アンテナ42の、1対の金属板のそれぞれ43A、43Bへの配置についても、実施形態1に係るRFIDタグ用のアンテナ装置10における、送信用アンテナ11と受信用アンテナ12の、1対の金属板のそれぞれ13A、13Bへの配置と同様である。
また、本実施形態に係るRFIDタグ検査装置40では、第1の給電線および第2の給電線が、実施形態1に係るRFIDタグ用のアンテナ装置10における第1の給電線14Aおよび第2の給電線14Bと同様に、1対の金属板間を通るように配置されている。
したがって、本実施形態に係るRFIDタグ検査装置40は、実施形態1に係るRFIDタグ用のアンテナ装置10と同様の効果を奏することができる。
【0055】
(実施例)
金属板としてアルミ板を用い、長さ20cm、幅15cmまたは30cm、および厚さ1.5mmのアルミ板(平板)を、30°または60°の角度をなすように2つに折り曲げて加工し、ほぼV字形状の1対のアルミ板を形成させた。次いで、1対のアルミ板の対向する面とは反対側の面の中央付近からそれぞれ、送信用アンテナおよび受信用アンテナ(いずれも1/4波長ホイップアンテナ)のうちの1つを突出させるように配置した。
こうして1対のアルミ板に配置された送信用アンテナと受信用アンテナとの間のアイソレーションを、UHF帯域の周波数(800MHz、850MHz、900MHz、950MHz、および1000MHz)において計測した。その結果を図5に示す。
【0056】
図5を参照すると、白丸のプロット(○)により示す、アルミ板の幅を30cm、1対のアルミ板間の角度を30°として1対のアルミ板に配置された送信用アンテナと受信用アンテナとの間では、UHF帯域の周波数において、-25dB以下のアイソレーションが得られた。これに対して、黒丸のプロット(●)は、アルミ板の幅を30cm、1対のアルミ板間の角度を60°として1対のアルミ板に配置された送信用アンテナと受信用アンテナとの間のアイソレーションの周波数特性、そして三角形のプロット(△)は、アルミ板の幅を15cm、1対のアルミ板間の角度を30°として1対のアルミ板に配置された送信用アンテナと受信用アンテナとの間のアイソレーションの周波数特性をそれぞれ示す。これらと比較して、アルミ板の幅を30cm、1対のアルミ板間の角度を30°として1対のアルミ板に配置された送信用アンテナと受信用アンテナとの間でのアイソレーションの周波数特性は、良好であることが分かる。
【0057】
前述の結果から、特に、1対の金属板において、送信用アンテナを有する金属板と受信用アンテナを有する金属板との間の角度(θ)を30°、1対の金属板を構成する金属板の幅(W)を30cmとすることにより(「θ」および「W」はそれぞれ、図2および図3を参照)、アンテナ装置は、良好なアイソレーションの周波数特性を確保することができる。このため、アンテナ間の効果的な干渉低減につなげることができる。
【0058】
(他の実施形態)
本発明の例示的な実施形態の「RFIDタグ用のアンテナ装置」、および「RFIDタグ検査装置」について説明してきたが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形または変更が可能である。
【0059】
例えば、送信用アンテナ11および受信用アンテナ12、ならびに送信用アンテナ41および受信用アンテナ42に、反射器(リフレクター)または導波器(ディレクター)などを付加することにより、アンテナの利得を向上させてもよい。
【0060】
1対の金属板13A、13B、および1対の金属板43A、43Bは、1枚の金属板を機械もしくは工具などを用いて折り曲げることにより、または、2枚以上の金属板を溶接したり、2枚以上の金属板を、締結具などを用いて締め付けたりして接合することにより、形成されるものとして説明した。その際、1対の金属板13A、13B、および1対の金属板43A、43Bの、それぞれの一方の端部が接続される接続点付近の面は、曲面となるように加工されてもよい。
【0061】
送信用アンテナ11および受信用アンテナ12、ならびに送信用アンテナ41および受信用アンテナ42はそれぞれ、1対の金属板13A、13Bの対向する面とは反対側の面のそれぞれから、および1対の金属板43A、43Bの対向する面とは反対側の面のそれぞれから、コネクター(接栓)などを介して突出するように配置されているものとして説明した。これに関連して、アンテナ設置後にアンテナの向き、角度などを調整することができるように、ある程度柔軟性を持たせてアンテナの向き、角度などを変更することができる機構を備えた取付治具などをアンテナに取り付けてもよい。
【0062】
RFIDタグ検査装置40によるRFIDタグ47の検査は、受信用アンテナ42が応答波を受信したか否か、すなわち、受信回路46に第2の信号が入力されたか否かを判断することにより、行われ、この判断については、受信回路46自体がこれを実行する機能を有するようにすることができるものとして説明した。これに対して、受信回路46が、第2の信号が入力されたことを作業者に通知する機能を有することにより、前述した判断を作業者が行うようにしてもよい。または、受信回路46とは別に表示部を設け、この表示部において第2の信号の強度などの各種特性を表示し、これを検証することにより、前述の判断を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、RFIDタグ用のアンテナ装置、およびRFIDタグ検査装置として好適である。
【符号の説明】
【0064】
10 RFIDタグ用のアンテナ装置
11 送信用アンテナ(第1のアンテナ)
12 受信用アンテナ(第2のアンテナ)
13A、13B 1対の金属板
14A 第1の給電線
14B 第2の給電線
15 RFIDタグ
θ 送信用アンテナを有する金属板と受信用アンテナを有する金属板との角度
W 1対の金属板を構成する金属板の幅
40 RFIDタグ検査装置
41 送信用アンテナ(第1のアンテナ)
42 受信用アンテナ(第2のアンテナ)
43A、43B 1対の金属板
45 送信回路
46 受信回路
47 RFIDタグ

図1
図2
図3
図4
図5