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特開2022-13829フィルムセンサ及びそれを備えるタッチディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013829
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】フィルムセンサ及びそれを備えるタッチディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20220111BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20220111BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20220111BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20220111BHJP
   C08F 36/00 20060101ALI20220111BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20220111BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G06F3/041 495
H05K1/09 A
H05K1/16 B
G06F3/041 640
C08F20/00 510
C08F36/00 510
B32B5/02
B32B15/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106996
(22)【出願日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】202010622898.1
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519308156
【氏名又は名称】ティーピーケイ アドバンスド ソリューションズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TPK ADVANCED SOLUTIONS INC
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ディン ジージュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ハン
(72)【発明者】
【氏名】シュー ユンガオ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ リーフアン
(72)【発明者】
【氏名】ルー リーデー
【テーマコード(参考)】
4E351
4F100
【Fターム(参考)】
4E351BB32
4E351DD04
4E351DD05
4E351DD06
4E351DD19
4E351GG09
4F100AB01B
4F100AK25C
4F100AN00C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB00C
4F100CB00E
4F100DG01B
4F100GB41
4F100GB61
4F100JD04C
4F100JD04D
4F100JG01B
4F100JG04B
4F100JG05C
4F100JG05D
4F100JL00C
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い信頼性を有するフィルムセンサ及びフィルムセンサを備えるタッチディスプレイを提供する。
【解決手段】フィルムセンサ1は、基板11、金属ナノワイヤ層12、光学接着剤層13及びパッシベーション層14を備える。金属ナノワイヤ層は、基板上に形成され、互いに間隔を置いて配置された複数の電極ワイヤ121及び複数の絶縁部122を備える。光学接着剤層は、金属ナノワイヤ層上に形成され、65℃の高温、90%の高い相対湿度、及び5Vの直流電圧で240時間実施される耐候性試験において、電極ワイヤの線抵抗の変化が10%未満であり、隣り合う2本の電極ワイヤ間の絶縁抵抗が300MΩより大きくなるように金属ナノワイヤ層と合わせられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された金属ナノワイヤ層であって、前記金属ナノワイヤ層が、互いに間隔を置いて配置された複数の電極ワイヤを備える、前記金属ナノワイヤ層と、
前記金属ナノワイヤ層上に配置された光学接着剤層であって、温度65℃、相対湿度90%、直流電圧5V、240時間の耐候性試験において、前記複数の電極ワイヤの線抵抗の変化が10%未満、前記複数の電極ワイヤの隣り合う2本の電極ワイヤ間の絶縁抵抗が300MΩより大きくなるように、前記光学接着剤層が前記金属ナノワイヤ層に合わせられている前記光学接着剤層と、
を備える、フィルムセンサ。
【請求項2】
前記光学接着剤層は、非紫外線硬化型アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される光学接着剤からなり、
前記非紫外線硬化型アクリル系接着剤からなる前記光学接着剤層は、周波数100kHzでの誘電率が4未満、吸水率が0.3%未満、温度38℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が400g/m/日未満であり、
前記ゴム系接着剤からなる前記光学接着剤層は、周波数100kHzでの誘電率が4未満、吸水率が0.3%未満、温度38℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が100g/m/日未満である、
請求項1に記載のフィルムセンサ。
【請求項3】
前記光学接着剤層の厚さは、25μm以上250μm以下である、請求項2に記載のフィルムセンサ。
【請求項4】
前記複数の電極ワイヤの隣り合う電極ワイヤの間に、複数の受容スペースのそれぞれが画定されており、
前記金属ナノワイヤ層は、前記複数の受容スペースのそれぞれに配置された複数の絶縁部をさらに含む、
請求項1~3の何れか一項に記載のフィルムセンサ。
【請求項5】
前記金属ナノワイヤ層と前記光学接着剤層との間に配置されたパッシベーション層をさらに備える、請求項1~4の何れか一項に記載のフィルムセンサ。
【請求項6】
前記パッシベーション層は、周波数100kHzにおける誘電率が4未満であり、温度38℃、相対湿度90%における水蒸気透過率が12g/m/日未満である、請求項5に記載のフィルムセンサ。
【請求項7】
前記パッシベーション層の厚さは、0.2μm以上10μm以下である、請求項5又は6に記載のフィルムセンサ。
【請求項8】
前記複数の電極ワイヤの隣り合う2本の電極ワイヤは、10μm以上50μm以下の距離を空けて配置されている、請求項1~7の何れか一項に記載のフィルムセンサ。
【請求項9】
ディスプレイモジュールと、
前記ディスプレイモジュールと統合された請求項1に記載のフィルムセンサと、
を備える、タッチディスプレイ。
【請求項10】
前記ディスプレイモジュールと前記フィルムセンサとの間に接着剤層を備え、前記接着剤層を介して前記フィルムセンサが前記ディスプレイモジュールに接着されている、請求項9記載のタッチディスプレイ。
【請求項11】
前記ディスプレイモジュールは、パッケージ基板、偏光子、電極キャリアからなる群から選択される板状部材を備え、前記フィルムセンサは、前記ディスプレイモジュールの前記板状部材に接着されている、請求項10に記載のタッチディスプレイ。
【請求項12】
前記フィルムセンサの前記基板は、前記板状部材の基板として用いられる、請求項11に記載のタッチディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムセンサに関し、より詳細には、金属ナノワイヤを備えるフィルムセンサに関する。また、本発明は、フィルムセンサを備えるタッチディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチスクリーンは、様々な電子製品、特に移動通信製品において広く使用されている。また、これらの製品の携帯性を容易にするために、折り畳み可能なタッチスクリーンがさらに開発されている。
【0003】
ディスプレイパネルに一般的に使用される透明導電性材料は、酸化インジウムスズ(ITO)である。しかし、ITOからなるフィルムは壊れやすく、可撓性(flexibility)がないため、携帯電子機器への応用は限られている。このため、ITOに代わる、可撓性を有する透明な導電性フィルムの開発は、当該技術分野の重要なプロジェクトの1つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
比較的よく開発されているITOの代替材料は、金属ナノワイヤである。導電性回路は、金属ナノワイヤを含むコーティング層をパターニングすることによって形成することができ、さらに、フィルムセンサを形成するために使用することができる。しかしながら、金属ナノワイヤを含む既存のフィルムセンサは、特定の使用条件下では、導電回路の開回路又は短絡の影響を受けやすく、製品機能の障害をもたらす。従って、信頼性を向上させた金属ナノワイヤを含むフィルムセンサを提供することは、現在、研究開発の課題である。
【0005】
本開示の目的は、高い信頼性を有するフィルムセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様によれば、基板、金属ナノワイヤ層、及び光学接着剤層を備えるフィルムセンサが提供される。金属ナノワイヤ層は、基板上に形成され、互いに間隔を置いて配置された複数の電極ワイヤを備える。光学接着剤層は、金属ナノワイヤ層上に形成され、65℃の高温、90%の高い相対湿度、及び5Vの直流電圧で240時間実施される耐候性試験において、複数の電極ワイヤの線抵抗の変化が10%未満であり、隣り合う2本の電極ワイヤ間の絶縁抵抗が300MΩより大きくなるように、光学接着剤層は金属ナノワイヤ層と合わせられている。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、ディスプレイモジュールと、前記ディスプレイモジュールと統合されたフィルムセンサとを備えるタッチディスプレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の他の特徴及び利点は、添付図面を参照した実施形態の以下の詳細な説明において明らかになるであろう。
図1】本開示におけるフィルムセンサの一実施形態を概略的に示す部分断面図である。
図2】本開示におけるタッチディスプレイの一実施形態を概略的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示をより詳細に説明する前に、いくつかの構成要素は、便宜的な説明のために図中に誇張して示されており、スケールが異なることに留意されたい。「上」、「下」等の相対的な用語は、ここでは、図に示されるように、別の要素に対する1つの要素の絶対的な位置ではなく相対的な位置を記述するために使用することができる。さらに、「上に配置された」又は「上に形成された」という用語は、特に断らない限り、直接上に配置又は形成された状態と、間接的に上に配置又は形成された状態とを含み得る。
【0010】
本開示におけるフィルムセンサは、基板、金属ナノワイヤ層、及び光学接着剤層(optical adhesive layer)を備える。金属ナノワイヤ層は、基板上に形成され、互いに間隔を置いて配置された複数の電極ワイヤ(electrode wires)を備える。光学接着剤層は、金属ナノワイヤ層上に形成され、65℃の高温、90%の高い相対湿度(relative humidity)、及び5Vの直流電圧で240時間実施される耐候性試験(weathering test)において、電極ワイヤの線抵抗(line resistance)の変化が10%未満であり、隣り合う2本の電極ワイヤ間の絶縁抵抗(insulation resistance)が300MΩより大きくなるように、光学接着剤層は金属ナノワイヤ層と合わせられている(be matched with)。
【0011】
特定の実施態様において、光学接着剤層は、非紫外線硬化型アクリル接着剤(non-ultraviolet curable acrylic adhesive material)、ゴム接着剤(rubber adhesive material)、又はこれらの組合せからなる群から選択される光学接着剤で構成される。非紫外線硬化型アクリル系接着剤からなる光接着剤層は、周波数100kHzでの誘電率(dielectric constant)が4未満、吸水率(water absorption rate)が0.3%未満、温度38℃、相対湿度90%での水蒸気透過率(water vapor transmission rate)が400g/m/日未満である。ゴム系接着剤からなる光接着剤層は、周波数100kHzにおける誘電率が4未満、吸水率が0.3%未満、温度38℃、相対湿度90%における水蒸気透過率が100g/m/日未満である。
【0012】
特定の実施態様において、光学接着剤層は、25μm以上250μm以下の範囲の厚さを有する。
【0013】
特定の実施形態では、複数の電極ワイヤの隣り合う電極ワイヤの間に、複数の受容スペース(receiving spaces)のそれぞれが画定されており、金属ナノワイヤ層は、複数の受容スペース内にそれぞれ受容される複数の絶縁部(insulation portions)をさらに含む。
【0014】
特定の実施形態では、絶縁部は、電極ワイヤのパターニング後に形成される。
【0015】
特定の実施形態では、フィルムセンサは、金属ナノワイヤ層と光学接着剤層との間に形成されたパッシベーション層(passivation layer)をさらに含む。
【0016】
特定の実施形態では、パッシベーション層は、周波数100kHzにおける4未満の誘電率、及び温度38℃及び相対湿度90%における12g/m/日未満の水蒸気透過率を有する。
【0017】
特定の実施形態では、パッシベーション層は、0.2μm以上10μm以下の範囲の厚さを有する。
【0018】
特定の実施形態では、隣り合う2本の電極ワイヤは、10μm以上50μm以下の範囲の距離だけ互いに離間している。
【0019】
本開示におけるタッチディスプレイは、ディスプレイモジュールと、ディスプレイモジュールと統合された上述のフィルムセンサとを備える。
【0020】
特定の実施形態では、タッチディスプレイは、ディスプレイモジュールとフィルムセンサとの間に配置された接着剤層(adhesive layer)をさらに備え、フィルムセンサが当該接着剤層を介してディスプレイモジュールに接着されることを可能にする。
【0021】
特定の実施形態では、ディスプレイモジュールは、パッケージ基板(package substrate)、偏光子(polarizer)、又は電極キャリア(electrode carrier)からなる群から選択される板状部材(plate member)を備え、フィルムセンサは、ディスプレイモジュールの板状部材に接着される。
【0022】
特定の実施形態では、フィルムセンサの基板は、板状部材の基板として使用される。
【0023】
本発明によるフィルムセンサにおいて、65℃の高温、90%の高い相対湿度、及び5Vの直流電圧で240時間行われる耐候性試験において、電極ワイヤの線抵抗の変化が10%未満であり、隣り合う2本の電極ワイヤ間の絶縁抵抗が300MΩより大きくなるように、光学接着剤層は金属ナノワイヤ層と合わせられるように設計される。これにより、フィルムセンサの信頼性を向上させることができる。
【0024】
図1を参照すると、本開示におけるフィルムセンサ1の実施形態は、基板11、金属ナノワイヤ層12、及び光学接着剤層13を備える。
金属ナノワイヤ層12は、基板11上に形成され、互いに間隔を置いて配置された複数の電極ワイヤ121を備える。隣り合う2本の電極ワイヤ121は、10μm以上50μm以下の距離(ラインスペースともいう)だけ離れている。例えば、当該距離は、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、又は50μmであってもよい。
【0025】
光学接着剤層13は、金属ナノワイヤ層12上に形成されており、接着機能を提供し、フィルムセンサ1の信頼性を高める。具体的には、高温高湿(HTHH、すなわち65℃の高温及び90%の高い相対湿度)、5Vの直流電圧で240時間の耐候性試験において、電極ワイヤ121の線抵抗の変化が10%未満、隣り合う2本の電極ワイヤ121間の絶縁抵抗が300MΩより大きくなるように、光学接着剤層13と金属ナノワイヤ層12とを合わせる。いくつかの実施態様において、電極ワイヤ121の線抵抗の変化は、10%未満であり、電極ワイヤ121の隣り合う2本の間の絶縁抵抗は、300MΩより大きく、電極ワイヤ121間で短絡が発生することを抑制する。
【0026】
金属ナノワイヤ層12内の金属イオンが移動する可能性があるため、光学接着剤層13は、金属イオンの移動を効果的に減少させるように、金属ナノワイヤ層12と合わせられるように構成されるべきである。逆に、金属イオンの移動は、従来の導電性材料(例えば、ITO)を含むセンサでは生じない。したがって、センサが従来の導電性材料を備える場合には、導電性材料からなる層に合わせて光学接着剤を具体的に設けることは想定されていない。金属ナノワイヤ層12と合わせられる光学接着剤層13とは、光学接着剤層13に選択された光学接着剤が、金属ナノワイヤ層12の金属ナノワイヤ材料と合わせられる特性を有することを意味し、水分含有量が金属イオンの電解閾値未満に維持されるように制御されることによって、金属イオンの移動を効果的に減少させる。すなわち、光学接着剤層13の材料は、金属ナノワイヤ層12(例えば、金属ナノワイヤ層12の材料、金属ナノワイヤ層12の厚さ等)の特性に基づいて選択され、金属イオンの移動を阻害し、及び/又は、直流(DC)電圧バイアス電界が、フィルムセンサ1の内部及び/又は周囲に生成されるときに、電極ワイヤ121間及び/又は金属ナノワイヤ層12と別の導電層との間に金属イオン伝導経路を形成する機会を減少させる。いくつかの実施形態では、光学接着剤層13に適した材料を選択する際に、材料の誘電効果及び/又は透水性が考慮される。
【0027】
さらに、隣り合う2本の電極ワイヤ121の間の距離も、金属イオンの移動による製品機能障害(product function failure)の確率に影響を与え得る。距離が小さいほど、金属イオンの移動による製品機能障害の確率が高くなる。
【0028】
特定の実施態様において、光学接着剤層13は、25μm以上250μm以下の範囲の厚さを有する。特定の実施態様において、光学接着剤層13は、50μm以上150μm以下の範囲の厚さを有する。
【0029】
光学接着剤層13は、非紫外線硬化型アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される光接着剤からなる。非紫外線硬化型アクリル系接着剤からなる光学接着剤層13は、周波数100kHzでの誘電率が4未満(好ましくは3未満)、吸水率が0.3%未満(好ましくは0.25%未満)、温度38℃、相対湿度90%での水蒸気透過率(WVTR)が400g/m/日未満である。ゴム系接着剤からなる光学接着剤層13は、周波数100kHzでの誘電率が4未満(好ましくは3未満)、吸水率が0.3%未満(好ましくは0.25%未満)、温度38℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が100g/m/日未満である。
【0030】
特定の実施態様において、光学接着剤層13は、ゴム系接着剤で構成される。
【0031】
特定の実施形態では、複数の電極ワイヤ121の隣り合う電極ワイヤ121の間に受容スペースが画定されており、金属ナノワイヤ層12は、さらに、受容スペース内にそれぞれ受容される複数の絶縁部122を備える。金属ナノワイヤ層12を形成するプロセスは、以下にさらに記載される。
【0032】
特定の実施形態では、金属ナノワイヤ層12は、金属ナノワイヤを含む分散液又はスラリーを塗布し、その後、乾燥/硬化、パターニング等のステップを行うことによって形成される。塗布工程の例には、スクリーン印刷、ノズルコーティング、及びロールコーティングが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ロールツーロールプロセス(roll-to-roll process)を使用して、金属ナノワイヤを含む分散液又はスラリーを、連続的に供給される基板の表面に塗布する。
【0033】
金属ナノワイヤを含む分散液は、水、アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素、又は芳香族化合物(例えばベンゼン、トルエン、キシレン等)等の溶媒を含み得る。
【0034】
金属ナノワイヤを含む分散液は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、2-ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、スルホン酸塩、硫酸塩、ジスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、リン酸塩、フッ素含有界面活性剤(fluorine-containing surfactants)等の、添加剤、界面活性剤、又は接着剤をさらに含み得る。
【0035】
金属ナノワイヤ層12は、銀ナノワイヤ層、金ナノワイヤ層、又は銅ナノワイヤ層であってもよい。具体的には、本明細書で使用される金属ナノワイヤは、金属のナノワイヤ、金属合金のナノワイヤ、又はそれらの組み合わせを含み得る。金属ナノワイヤ層12内の金属ナノワイヤの数は、本開示によってクレームされる保護範囲に影響しない。
【0036】
単一の金属ナノワイヤの少なくとも1つの断面寸法(すなわち、断面直径)は、500nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満である。本開示において「ワイヤ」として知られる金属ナノ構造体は、主に、例えば10から10万の間の高いアスペクト比によって特徴付けられる。より具体的には、金属ナノワイヤのアスペクト比(長さ:断面直径)は、10より大きく、好ましくは50より大きく、より好ましくは100より大きくてもよい。金属ナノワイヤは、任意の金属で作製することができる。金属の例としては、銀、金、銅、ニッケル、及び/又は金メッキ銀が挙げられるが、これらに限定されない。絹、繊維、チューブ(例えば、カーボンナノチューブ)等のような他の用語は、それらが上記と同じ寸法及び高いアスペクト比を有する場合、本開示の範囲内に包含される。
【0037】
特定の実施形態では、金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤ又は銀ナノファイバであってもよく、約20nm以上約100nm以下の範囲の平均直径及び約20μm以上約100μm以下の範囲の平均長、好ましくは約20nm以上約70nm以下の範囲の平均直径及び約20μm以上約70μm以下の範囲の平均長(すなわち、1000のアスペクト比)を有してもよい。特定の実施形態では、金属ナノワイヤは、約70nm以上約80nm以下の範囲の平均直径及び約80μmの平均長さを有してもよい。
【0038】
乾燥/硬化工程は、主に溶媒等の物質を蒸発させ、金属ナノワイヤを基板表面にランダムに分布させる工程である。好ましくは、金属ナノワイヤは、剥離することなく基板の表面に接着され、金属ナノワイヤ層12が形成され、金属ナノワイヤは、互いに接触して、連続した電流経路を提供し、それによって、導電性ネットワークを形成することができる。
【0039】
また、金属ナノワイヤ層12の導電性を高めるために、さらに後処理が行われてもよい。後処理は、加熱処理(heating treatment)、プラズマ処理(plasma treatment)、コロナ放電処理(corona discharge treatment)、紫外線/オゾン処理(ultraviolet/ozone treatment)、及び/又は加圧処理(pressure treatment)等の処理ステップを含み得る。例えば、金属ナノワイヤ層12を形成するための硬化ステップの後、ローラーを使用して、その上に圧力を加えてもよい。特定の実施形態では、50psi以上3400psi以下、好ましくは100psi以上1000psi以下、より好ましくは200psi以上800psi以下、又は300psi以上500psi以下の範囲の圧力が、1つ以上のローラーを用いて、金属ナノワイヤ層12に印加されてもよい。特定の実施形態では、加熱処理及び加圧処理は、後処理のために同時に実施されてもよい。具体的には、金属ナノワイヤ層12は、加熱中に、1つ以上のローラーを用いてプレスされ得る。例えば、金属ナノワイヤ層12は、金属ナノワイヤ層12の導電率を増加させるために、70℃以上200℃以下、好ましくは100℃以上175℃以下の範囲の温度に加熱しながら、ローラーを使用して、10psi以上500psi以下、好ましくは40psi以上100psi以下の範囲の圧力で印加され得る。特定の実施形態では、金属ナノワイヤ層12内の金属ナノワイヤは、還元剤に曝露することによって後処理されてもよい。例えば、金属ナノワイヤが銀ナノワイヤである場合、金属ナノワイヤ層12は、銀還元剤(silver-reducing agent)に曝露することによって後処理されてもよい。銀還元剤の例としては、ホウ水素化物(例えば水素化ホウ素ナトリウム)、ホウ窒化物(例えば、ジメチルアミノボラン)、及び/又はガス還元剤(例えば、水素(H)ガス)が挙げられるが、これらに限定されない。曝露時間は、約10秒以上約30分以下、好ましくは約1分以上約10分以下の範囲であり得る。上記加圧工程は、実用上の必要に応じて適切な工程を実施することができる。
【0040】
パターニング工程は、例えば、硬化後の金属ナノワイヤ層12を露光/現像(すなわち、周知のリソグラフィ手順)及びエッチング処理によって実施することができる。特定の実施形態では、金属ナノワイヤ層12は、以下に記載される特性を有する。
【0041】
可視光(例えば、約400nm以上約700nm以下の範囲の波長)の透過率は、約80%より大きくてもよく、表面抵抗(surface resistance)は、約10Ω/sq.以上約1000Ω/sq.以下の範囲であってもよい。特定の実施形態では、金属ナノワイヤ層12は、約85%より大きい可視光(例えば、約400nm以上約700nm以下の範囲の波長)の透過率、及び約50Ω/sq.以上約500Ω/sq.以下の範囲の表面抵抗を有していてもよい。
【0042】
本実施形態では、電極ワイヤ121をパターニングして形成した後、電極ワイヤ121の間に高分子材料を塗布し、硬化させてオーバーコート(OC)を形成することにより絶縁部122を形成する。絶縁部122を形成することにより、金属ナノワイヤ層12の電極ワイヤ121のうち、隣り合うもの同士の電気絶縁性を向上させることができる。絶縁部122のための例示的な材料としては、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリナフタレート(polynaphthalate)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリスチレン(polystyrene)、ポリビニルトルエン(polyvinyl toluene)、ポリビニルキシレン(polyvinyl xylene)、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリアミド-ポリイミド(polyamide-polyimide)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ポリスルフィド(polysulfide)、ポリスルホン(polysulfone)、ポリフェニレン(polyphenylene)、ポリフェニレンエーテル(polyphenylene ether)、ポリウレタン(polyurethane)、エポキシ樹脂(epoxy resin)、ポリシラン(polysilane)、シリコン(silicone)、及び/又はシリコン含有ポリ(アクリル酸)(silicon-containing poly(acrylic acid))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
特定の実施態様において、基板11に適した材料は、透明材料、例えば、可撓性透明材料(flexible transparent material)を備える。例示的な材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレン(PS)、及び/又はシルコオレフィンポリマー(COP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本実施形態では、フィルムセンサ1は、金属ナノワイヤ層12と光学接着剤層13との間に形成されたパッシベーション層14をさらに含む。具体的には、パッシベーション層14は、金属ナノワイヤ層12の表面上に形成され、次いで、パッシベーション層14が金属ナノワイヤ層12及び光学接着剤層13と直接接触するように、光学接着剤層13がパッシベーション層14の表面上に形成されてもよい。特定の実施形態では、光学層、機能層等は、必要な設計に従って、パッシベーション層14と金属ナノワイヤ層12との間、又はパッシベーション層14と光学接着剤層13との間にさらに配置されてもよい。
【0045】
また、パッシベーション層14は、周波数100kHzでの誘電率が4未満(好ましくは3未満)、温度38℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が12g/m/日未満の特性を有する。パッシベーション層14は、0.2μm以上10μm以下の範囲の厚さを有してもよい。特定の実施形態では、厚さは2.5μm以上6.5μm以下の範囲であってもよい。パッシベーション層14に適した材料は、ドライフィルム(dry film)、フォトレジスト(photoresist)、インク(ink)等である。特定の実施形態では、インクは、例えば、硬化絶縁インク(curing insulation ink)であってもよく、硬化絶縁インクの硬化温度は110℃未満である。パッシベーション層14は、さらに水蒸気を遮断するように構成されており、高温高湿環境下におけるフィルムセンサ1の信頼性をさらに高めることができる。
【0046】
サンプルを高温高湿(すなわち、温度65℃、相対湿度90%)、直流電圧5Vの環境下で試験した結果を表1に示す。
【0047】
実施例1のサンプルは、パッシベーション層14が含まれていないことを除いて、図1に示される構成と同様の構成を有する。
実施例2のサンプルは、図1に示す構成を有し、光学接着剤層13及びパッシベーション層14が含まれる。
【0048】
比較例1のサンプルは、光学接着剤層13及びパッシベーション層14が含まれていないことを除いて、図1に示した構成と同様の構成を有する。
【0049】
比較例2のサンプルは、光学接着剤層13を含まない以外は、図1に示した構成と同様の構成を有する。
【表1】
【0050】
表1の結果は、光学接着剤層13が含まれている実施例1及び2のサンプルは、光学接着剤層13が含まれていない比較例1及び2のサンプルと比較して、高温高圧環境下での信頼性が有意に良好であることを示している。すなわち、本発明のフィルムセンサ1では、光学接着剤層13は、信頼性を効果的に高めるように設計されている。また、実施例2の結果からも分かるように、光学接着剤層13とパッシベーション層14とを共に含有させることにより、フィルムセンサ1の信頼性をさらに向上させることができる。
【0051】
図2を参照すると、タッチディスプレイ100は、上述したフィルムセンサ1と、ディスプレイモジュール2と、接着剤層3とを備える。ディスプレイモジュール2は、例えば、有機発光ダイオード(OLED)モジュール、液晶ディスプレイ(LCD)モジュール等であってもよい。また、本発明のフィルムセンサ1では、可撓性に優れた金属ナノワイヤ層12をタッチ電極として用いているため、ディスプレイモジュール2としてフレキシブルディスプレイモジュールを用いて、タッチディスプレイ100に折り畳み効果を持たせてもよい。接着剤層3は、ディスプレイモジュール2とフィルムセンサ1との間に配置される。
【0052】
本発明のフィルムセンサ1は、ディスプレイモジュール2と統合されている。具体的には、フィルムセンサ1は、ディスプレイモジュール2上に配置され、接着剤層3を介してディスプレイモジュール2に接着されている。フィルムセンサ1は、例えば、ディスプレイモジュール2のパッケージ基板、偏光子、電極キャリア等の板状部材に接着されていてもよいが、これらに限定されない。特定の実施形態では、小型化効果を達成するために、フィルムセンサ1の基板11を、ディスプレイモジュール2の板状部材の基板として直接使用して、フィルムセンサ1の金属ナノワイヤ層12を、ディスプレイモジュール2の板状部材の表面上に形成することを可能にしてもよい。
【0053】
以上に説明したように、本発明のフィルムセンサ1では、65℃の高温、90%の高い相対湿度、5Vの直流電圧で240時間行った耐候性試験において、電極ワイヤ121の線抵抗の変化率が10%未満、隣り合う2本の電極ワイヤ121間の絶縁抵抗が300MΩ以上となるように、光学接着剤層13を金属ナノワイヤ層12に整合させることで、フィルムセンサ1の信頼性を向上させている。
【0054】
上記の説明では、実施形態を十分に理解するために、説明の目的のために多数の具体的な詳細が示されている。しかしながら、当業者には明らかなように、1つ以上の他の実施形態は、これらの特定の詳細の一部なしに実施されてもよい。また、本明細書全体を通して、「1つの実施形態」、「実施形態」、順序番号の表示を伴う実施形態等への言及は、特定の特徴、構造、又は特性が本開示の実施に含まれ得ることを意味することも理解されるべきである。さらに、説明においては、開示を合理化し、種々の発明の態様の理解を助ける目的で、種々の特徴が単一の実施形態、図、又はそれらの説明において一緒にグループ化されることがあり、1つの実施形態からの1つ以上の特徴又は特定の詳細は、適宜、開示の実施において、別の実施形態からの1つ以上の特徴又は特定の詳細と共に実施され得ることを理解されたい。
【0055】
本開示は、例示的な実施形態と考えられるものに関連して説明されてきたが、本開示は、開示された実施形態に限定されるものではなく、最も広い解釈の思想及び範囲内に含まれる様々な構成をカバーし、そのような修正及び同等の構成をすべて包含することを意図していることが理解される。
図1
図2