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  • 特開-積層フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138299
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20220915BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20220915BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20220915BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220915BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B7/027
B32B27/28 102
B32B27/20 Z
B32B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038102
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】遠山 亮太
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA08B
4F100AK03A
4F100AK04B
4F100AK06D
4F100AK07B
4F100AK07E
4F100AK25A
4F100AK51A
4F100AK69C
4F100AK71A
4F100AL07E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10E
4F100CA22A
4F100CA23B
4F100CB00E
4F100DE01A
4F100DJ00B
4F100EJ37B
4F100GB23
4F100JA04D
4F100JA06
4F100JA07
4F100JD03C
4F100JL11E
4F100YY00A
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】高いガスバリア性を維持しつつ、製造工程の簡易化及びコストの削減が可能な積層フィルムを提供する。
【解決手段】ガスバリア性を有する積層フィルムは、インク受容層、基材層、ガスバリア層及び低融点樹脂層をこの順に有する。前記基材層が、ポリオレフィン系樹脂を含有する。前記ガスバリア層が、ガスバリア性樹脂を含有する。前記低融点樹脂層が、融点が135℃以下の低融点樹脂を含有する。前記インク受容層が、樹脂粒子のエマルジョン由来の成分を含有し、前記樹脂粒子の体積平均粒径が0.01~3.0μmである。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア性を有する積層フィルムであって、
インク受容層、基材層、ガスバリア層及び低融点樹脂層をこの順に有し、
前記基材層が、ポリオレフィン系樹脂を含有し、
前記ガスバリア層が、ガスバリア性樹脂を含有し、
前記低融点樹脂層が、融点が135℃以下の低融点樹脂を含有し、
前記インク受容層が、樹脂粒子のエマルジョン由来の成分を含有し、前記樹脂粒子の体積平均粒径が0.01~3.0μmである
積層フィルム。
【請求項2】
前記積層フィルムの酸素透過度は、温度23℃、相対湿度90%RHにおいて、15cm/(m・24h・atm)以下である
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記ガスバリア性樹脂が、エチレン・ビニルアルコール共重合体又はポリビニルアルコール樹脂である
請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記樹脂粒子が、ウレタン系樹脂又はオレフィン系共重合体である
請求項1~3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記低融点樹脂が、低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒系ポリオレフィンである
請求項1~4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記ガスバリア層の両面に接着剤層をさらに有する
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記基材層が、前記ポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂の少なくとも一方と、フィラーと、を含有する樹脂フィルムである
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記基材層が、少なくとも1軸方向に延伸された多孔質延伸フィルムである
請求項7に記載の積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性を有する積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品又は化粧品等の包装材料として、内容物の劣化を抑えるため、水蒸気、酸素ガス等の透過を抑えるガスバリアフィルムが広く用いられている。一般に、ガスバリアフィルムは、ガスバリア層の他、基材層及びヒートシール層等を有する積層フィルムである。ガスバリア層としては、ビニルアルコール樹脂(PVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン樹脂等のガスバリア性の高い樹脂フィルムが用いられる(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/104237号公報
【特許文献2】国際公開第2017/209212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
なかでもエチレン・ビニルアルコール共重合体はガスバリア性に優れるが、このガスバリア性は水の影響を受けて低下しやすいことが知られている。高いガスバリア性を維持するためには、ガスバリア層の両面にポリオレフィン系樹脂フィルム等を積層して水バリア層を設ける必要があった。
【0005】
しかし、このような多層化は、材料及び製造工程数を増加させるため、コストの上昇を招く。また、親水性の低い水バリア層はインクの密着性が低いため、積層フィルムの印刷性をも低下させる。インクの剥がれを抑えるため、印刷後に塗工によって保護層を設ける必要があり、さらなる多層化によるコスト上昇をもたらしていた。
【0006】
本発明は、高いガスバリア性を維持しつつ、製造工程の簡易化及びコストの削減が可能な積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、積層フィルムにおいて各層を特定の順番に配置し、フィルム表面に特定のインク受容層を設ければ、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
(1)ガスバリア性を有する積層フィルムであって、
インク受容層、基材層、ガスバリア層及び低融点樹脂層をこの順に有し、
前記基材層が、ポリオレフィン系樹脂を含有し、
前記ガスバリア層が、ガスバリア性樹脂を含有し、
前記低融点樹脂層が、融点が135℃以下の低融点樹脂を含有し、
前記インク受容層が、樹脂粒子のエマルジョン由来の成分を含有し、前記樹脂粒子の体積平均粒径が0.01~3.0μmである
積層フィルム。
【0009】
(2)前記積層フィルムの酸素透過度は、温度23℃、相対湿度90%RHにおいて、15cm/(m・24h・atm)以下である
前記(1)に記載の積層フィルム。
【0010】
(3)前記ガスバリア性樹脂が、エチレン・ビニルアルコール共重合体又はポリビニルアルコール樹脂である
前記(1)又は(2)に記載の積層フィルム。
【0011】
(4)前記樹脂粒子が、ウレタン系樹脂又はオレフィン系共重合体である
前記(1)~(3)のいずれかに記載の積層フィルム。
【0012】
(5)前記低融点樹脂が、低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒系ポリオレフィンである
前記(1)~(4)のいずれかに記載の積層フィルム。
【0013】
(6)前記ガスバリア層の両面に接着剤層をさらに有する
前記(1)~(5)のいずれかに記載の積層フィルム。
【0014】
(7)前記基材層が、前記ポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂の少なくとも一方と、フィラーと、を含有する樹脂フィルムである
前記(1)~(6)のいずれかに記載の積層フィルム。
【0015】
(8)前記基材層が、少なくとも1軸方向に延伸された多孔質延伸フィルムである
前記(7)に記載の積層フィルム。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高いガスバリア性を維持しつつ、製造工程の簡易化及びコストの削減が可能な積層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】積層フィルムの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。以下は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれに限定されない。
【0019】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。
【0020】
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムは、インク受容層、基材層、ガスバリア層及び低融点樹脂層をこの順を有する。具体的には、ガスバリア層の一方の面上に基材層が設けられ、その上にインク受容層が設けられる。ガスバリア層のもう一方の面上には低融点樹脂層が設けられる。
【0021】
一般に、ガスバリア層のガスバリア性は、水の影響を受けて低下しやすい。しかし、本発明の積層フィルムでは、基材層と低融点樹脂層の間にガスバリア層が配置される。基材層及び低融点樹脂層によってガスバリア層の水との接触が遮蔽されるため、高湿度下においてもガスバリア性が低下しにくい積層フィルムが得られる。積層フィルムに通常設けられる基材層及び低融点樹脂層がガスバリア層の両面を覆うことにより、新たな水バリア層の追加が不要であるため、層構成を単純化することができる。
【0022】
また、本発明においては、基材層上にインク受容層が設けられる。インク受容層は、体積平均粒径が0.01~3.0μmである樹脂粒子のエマルジョン由来の成分を含む。この成分はインクとの密着性が高いだけでなく、基材層との密着性も高く、接着剤を使用することなく、基材層上に直接積層できる。基材層はポリオレフィン系樹脂を含有し、インクとの密着性が低いため、基材層上に印刷する場合は、印刷後に保護層の形成が必要である。しかし、上記インク受容層によってこのような保護層を不要とすることができる。
【0023】
このように、本発明の積層フィルムは、高いガスバリア性を維持するための多層化が不要な特定の層構成を有する。多層化のための原料及び製造設備が不要であるため、製造コストの削減が可能である。さらに、上記インク受容層によって積層フィルムのガスバリア性が向上することも判明し、ガスバリアフィルムとしての有用性をより高めることができた。
以下、各層について説明する。
【0024】
(ガスバリア層)
ガスバリア層は、ガスバリア性樹脂を含有し、酸素ガス、水蒸気、二酸化炭素ガス、又は窒素ガス等のガスの透過を抑える。ガスバリア層は、1層でもよいが、2層以上設けられてもよい。ガスバリア層は、柔軟性、耐衝撃性、又は耐ピンホール性の観点から、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。
【0025】
ガスバリア性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、アクリルニトリル樹脂(AN)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ナイロン6(PA6)等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0026】
なかでもガスバリア性が高く、成形性が良好なポリビニルアルコール樹脂及びエチレン・ビニルアルコール共重合体の少なくとも1つを含むビニルアルコール系樹脂が好ましく、成形性の高さからエチレン・ビニルアルコール共重合体がより好ましい。
【0027】
エチレン・ビニルアルコール共重合体は、成形性に影響する融点を低くする観点から、同エチレン含有量は、30モル%以上が好ましく、40モル%以上が好ましい。ガスバリア性を高くする観点から、同エチレン含有量は、60モル%以下が好ましく、50モル%以上が好ましい。ここで、エチレン含有量とは、エチレン・ビニルアルコール共重合体の単量体単位の総数に対するエチレン単位の数の割合を意味する。
【0028】
<エチレン・ビニルアルコール共重合体>
ガスバリア層に使用されるエチレン・ビニルアルコール共重合体は、エチレン由来の構造単位とビニルアルコール構造単位を主に有する重合体である。本発明の効果を阻害しないのであれば、エチレン・ビニルアルコール共重合体は、エチレン及びビニルアルコール以外の他の構造単位を1種以上含むことができる。
【0029】
エチレン・ビニルアルコール共重合体は、通常、エチレンとビニルエステルとを重合し、得られたエチレン・ビニルエステル共重合体をケン化することにより製造することができる。このようにして製造されたエチレン・ビニルアルコール共重合体は、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むことがある。
【0030】
エチレン・ビニルアルコール共重合体のケン化度は、溶融成形性、ガスバリア性、耐着色性又は耐湿性の観点から、80モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上が特に好ましい。エチレン・ビニルアルコール共重合体のケン化度の上限は100モル%でもよいが、100モル%未満でも十分なガスバリア性が得られるため、コストの観点から、99.99モル%以下が好ましい。なお、上記ケン化度は、エチレン・ビニルアルコール共重合体中のビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の総数に対するビニルアルコール単位の数の割合を意味する。エチレン・ビニルアルコール共重合体のケン化度は、JIS-K-6726:1994に準拠して測定され得る。
【0031】
エチレン・ビニルアルコール共重合体が有する高いガスバリア性を阻害しないのであれば、エチレン・ビニルアルコール共重合体に、上述したような他のガスバリア性樹脂が併用されていてもよい。
【0032】
成形性の観点からは、エチレン・ビニルアルコール共重合体の融点は、175℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、165℃以下がさらに好ましい。
【0033】
ガスバリア層は、必要に応じて添加剤を含有することができるが、ガスバリア性の観点から、ガスバリア性樹脂からなるフィルムであることが好ましい。
【0034】
<酸素透過度>
ガスバリア層のガスバリア性を意味する酸素透過度は、温度23℃、相対湿度50%RHの湿度環境下において、15cm/(m・24h・atm)以下が好ましく、10cm/(m・24h・atm)以下がより好ましい。
また、ガスバリア層の酸素透過度は、温度23℃、相対湿度90%の高湿度環境下において、50cm/(m・24h・atm)以下が好ましく、30cm/(m・24h・atm)以下がより好ましく、11cm/(m・24h・atm)以下がさらに好ましい。
いずれの湿度下においても、同酸素ガス透過度の下限は0cm/(m・24h・atm)でもよいが、適切な厚み等を考慮すると通常は0.001cm/(m・24h・atm)以上である。
【0035】
(基材層)
基材層は、機械的強度に優れたポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂フィルムであり、積層フィルムの支持体として設けられる。ポリオレフィン系樹脂は防湿性に優れるため、ガスバリア層への水を遮蔽することもでき、ガスバリア層の湿度影響を抑える働きも合わせ持つ。基材層は、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物をフィルム成形することによって形成され得る。機械的強度の観点からは、基材層は、ポリオレフィン系樹脂の2軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0036】
<ポリオレフィン系樹脂>
ポリオレフィン系樹脂の具体的な例としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、又はポリメチル-1-ペンテン等が挙げられる。
【0037】
ポリプロピレン系樹脂としては、主なモノマーにプロピレンが用いられるのであれば特に限定されない。例えば、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体又はシンジオタクティック重合体等が挙げられる。また、主成分となるプロピレンと、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、又は1-オクテン等のα-オレフィンとの共重合体である、プロピレン-α-オレフィン共重合体等を使用することもできる。共重合体は、モノマー成分が2元系でも3元系以上の多元系でもよく、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。また、プロピレン単独重合体とプロピレン共重合体とを併用してもよい。
【0038】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば密度が0.940~0.965g/cmの高密度ポリエチレン、密度が0.920~0.935g/cmの中密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm以上0.920g/cm未満の直鎖線状低密度ポリエチレン、エチレン等を主体とし、プロピレン、ブテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4-メチルペンテン-1等のα-オレフィンを共重合させた共重合体、マレイン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体の金属塩(金属は亜鉛、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、エチレン-環状オレフィン共重合体、又はマレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられる。
【0039】
また、ポリオレフィン系樹脂としては、その樹脂フィルムの接着性又は成形性の向上の観点から、そのグラフト変性物を必要に応じて使用することもできる。
グラフト変性には公知の手法を用いることができる。具体的には、グラフトモノマーとして不飽和カルボン酸又はその誘導体を用いたグラフト変性物を挙げることができる。上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、又はシトラコン酸等を挙げることができる。上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、上記不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル化物、アミド化物、イミド化物、又は金属塩等を挙げることができる。
【0040】
具体的なグラフトモノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸-N-モノエチルアミド、マレイン酸-N,N-ジエチルアミド、マレイン酸-N-モノブチルアミド、マレイン酸-N,N-ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸-N-モノエチルアミド、フマル酸-N,N-ジエチルアミド、フマル酸-N-モノブチルアミド、フマル酸-N,N-ジブチルアミド、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、又は(メタ)アクリル酸カリウム等を挙げることができる。
【0041】
グラフトモノマーは、ポリオレフィン系樹脂に対して、通常0.005~10質量%、好ましくは0.01~5質量%用いることができる。
【0042】
基材層に用いるポリオレフィン系樹脂としては、上記の中から1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。防湿性、成形性、機械的強度又はコスト等の観点からは、基材層は、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂の樹脂フィルムであることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。なかでも、プロピレン単独重合体が基材層の主原料として取扱いやすく、好ましい。
【0043】
ポリプロピレン系樹脂の樹脂フィルムには、フィルム成形性の観点から、プロピレン単独重合体と融点が同等程度以下の樹脂を併用することが可能である。そのような樹脂としてはポリエチレン系樹脂、具体的には高密度又は低密度のポリエチレンが挙げられる。ポリエチレン系樹脂の配合量は、例えば2~25質量%とすることができる。
【0044】
基材層に用いるポリオレフィン系樹脂としては、得られる積層フィルムの温度38℃、相対湿度90%RHにおける透湿度を0.01~10g/(m・24h)の範囲とするものを好ましく用いることができる。積層フィルムの透湿度が上記上限値以下であれば、外部の湿度による積層フィルムのガスバリア性能の変化を抑えやすい。また、吸湿性が高い内容物を包装して保管した場合にも吸湿による内容物の物性変化を抑えやすい。一方、積層フィルムの透湿度を下げるために基材層の厚みを増やすと、積層フィルムの柔軟性が低下して印刷や型抜き加工の適性が低下し、袋又は容器への加工が難しくなる傾向がある。よって、実用の観点からは上記透湿度は上記下限値以上が好ましい。
【0045】
基材層は、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂のみを用いた樹脂フィルムであってもよいし、本発明の効果を阻害しない範囲でポリオレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂が配合されていてもよい。併用できる熱可塑性樹脂としては、例えば、ナイロン-6、ナイロン-6,6等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートあるいはその共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート又はポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート;アタクティックポリスチレン又はシンジオタクティックポリスチレン等のスチレン系樹脂等が挙げられる。
【0046】
<フィラー>
基材層は、フィラーを含有してもよい。使用できるフィラーとしては、例えば無機フィラー又は有機フィラー等が挙げられる。フィラーにより、フィルムの白色度又は不透明度の調整が容易となる。また、フィルム内部に空孔が形成されやすく、基材層、ひいては積層フィルムの軽量化が可能となる。基材層が多孔質であると、積層フィルムの断熱性も向上しやすい。基材層がポリプロピレン系樹脂にポリエチレン系樹脂が配合された樹脂フィルムであると、フィラーの配合によりフィブリル状の空孔が形成されやすく、好ましい。
【0047】
<<無機フィラー>>
無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、又はガラスファイバー等の無機粒子を使用することができる。無機フィラーのレーザー回折による粒度分布計で測定した平均粒径は、通常は0.01~15μmであり、好ましくは0.1~5μmである。
【0048】
<<有機フィラー>>
有機フィラーとしては、基材層の主成分であるポリオレフィン系樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。そのような有機フィラーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、又はポリメタクリレート等のポリマーであって、ポリオレフィン系樹脂の融点よりも高い融点(例えば170~300℃)又は高いガラス転移温度(例えば170~280℃)を有し、かつ非相溶の有機粒子を使用できる。
【0049】
フィラーとしては、上記無機フィラー及び有機フィラーをそれぞれ単独で用いることもできるし、併用することもできる。
基材層におけるフィラーの含有量(無機フィラーと有機フィラーを併用する場合は、その合計量)は、0~60質量%であることが好ましく、0~50質量%がより好ましい。
【0050】
<その他の成分>
基材層は、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤、又は核剤等をさらに含有することができる。
熱安定剤としては、例えば立体障害フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、又はアミン系酸化防止剤等を、通常0.001~1質量%の範囲内で使用することができる。
光安定剤としては、例えば立体障害アミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、又はベンゾフェノン系光安定剤を、通常0.001~1質量%の範囲内で使用することができる。
分散剤又は滑剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はそれらの塩等が挙げられる。これらは、例えばフィラーを分散させる目的で、通常0.01~4質量%の範囲内で使用することができる。
【0051】
<基材層の構造>
基材層は、単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造のものであってもよい。多層化により、機械特性、筆記性、耐擦過性又は2次加工適性等の様々な機能を基材層に付与することが可能となる。
【0052】
<延伸フィルム>
基材層は、少なくとも1軸方向に延伸された延伸フィルムを含むことが好ましく、内部に空孔を有する多孔質延伸フィルムを含むことがより好ましい。延伸フィルムを含む基材層は、防湿性及び機械的強度が高く、厚みの均一性に優れているため、後加工性に優れた積層フィルムを得ることができる。
基材層が多層構造である場合、各層の延伸軸数は、1軸/1軸、1軸/2軸、2軸/1軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、2軸/1軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/1軸、又は2軸/2軸/2軸であってもよい。
【0053】
<空孔率>
軽量化又は白色度の向上等の観点からは、基材層の空孔率は、0%を超えることが好ましい一方、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。空孔率が50%以下であれば、隣接して形成される空孔同士が繋がりにくく、連通孔による基材層の防湿性の低下を抑えやすい。
上記空孔率は、電子顕微鏡で観察したフィルムの断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率より求めることができる。
【0054】
(インク受容層)
インク受容層は、基材層上に設けられ、本発明の積層フィルムの最表面に位置する。インク受容層上には印刷によってインクが転写される。多層化を避ける観点からは、インク受容層は、基材層に隣接して設けられることが好ましい。
【0055】
インク受容層は、樹脂粒子のエマルジョン(以下、単にエマルジョンということがある。)由来の成分を含む。インク受容層は、エマルジョンを含む塗工液を、基材層の表面に塗工し、乾燥することにより、形成され得る。
【0056】
ここで、エマルジョン由来の成分とは、インク受容層用の塗工液中のエマルジョンの分散媒が揮発した後の残留成分である。例えば、残留成分は、エマルジョン中の樹脂粒子、及び必要に応じて添加されるその他の成分である。これらの成分はインク受容層を形成する過程で変性した変性体を含んでいてもよい。残留成分中の樹脂粒子は、インク受容層において粒子状に存在するが、印刷時の過熱によって溶融し、変形することがある。
【0057】
<エマルジョン>
エマルジョンは、分散媒中に微粒子状の樹脂粒子が乳化又は分散した液体である。本発明において、樹脂粒子とは、分散媒中に分散してエマルジョンを構成する微粒子状の樹脂をいう。取り扱いの容易性の観点からは、水性分散媒中に樹脂粒子が乳化又は分散したO/W系エマルジョンが好ましい。
【0058】
インク受容層がエマルジョンに由来する成分を含むことにより、オフセット印刷方式、溶融熱転写印刷方式、又は電子写真印刷方式等の各種印刷方式において良好なインク密着性及び印刷画像の経時安定性を得ることができる。
【0059】
これは、エマルジョンがインク受容層に疎水性を付与し、過度な親水化を抑えるためと推測される。このような作用により、インク受容層の周囲の水分がインク受容層上に転写されたインクと接触して過乳化状態となることが抑えられ、インク密着性及び印刷画像の経時安定性が改善される。その結果、上述のようにインクの剥がれを抑えるため、印刷後の保護層の形成が不要となる。また、印刷機の条件管理も容易となる。
【0060】
溶融熱転写印刷方式又は電子写真印刷方式等の加熱する印刷方式においては、インク受容層に含まれる樹脂粒子の一部が溶融して、溶融熱転写インク又はトナーと相溶し、溶融熱転写インク又はトナーがインク受容層に固定されやすい。この点もインク密着性向上の1つの要因であると推測される。
【0061】
<<樹脂粒子の体積平均粒径>>
本発明において、エマルジョンに含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は、0.01~3.0μmである。樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折型粒度分布測定装置(島津製作所製:SALD-2200)を用いて測定される。
【0062】
体積平均粒径が3.0μm以下であれば、インク受容層を設ける際の加熱乾燥条件によって、密に製膜することができ、インク受容層の平滑性が高まってインクとの密着性が向上する。また、体積平均粒径が0.01μm以上であれば、適度な粘度のエマルジョンの調製が容易であり、取扱い性が向上しやすい。
【0063】
上記樹脂粒子の体積平均粒径は、好ましくは0.05μm以上である一方、好ましくは2.0μm以下であり、より好ましくは1.6μm以下である。
【0064】
<<樹脂の種類>>
エマルジョン中の樹脂粒子として使用できる樹脂の種類としては、例えばウレタン系樹脂、オレフィン系共重合体又はスチレン系樹脂等が挙げられる。なかでも、インクとの密着性の観点から、ウレタン系樹脂又はオレフィン系共重合体が好ましく、ウレタン系樹脂がさらに好ましい。
【0065】
<<<ウレタン系樹脂>>>
ウレタン系樹脂としては、カチオン性のウレタン系樹脂を好ましく使用できる。カチオン性のウレタン系樹脂は、ポリウレタン樹脂骨格にカチオン性基を導入した共重合体である。この共重合体は、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られる3級アミノ基含有ポリオールを、ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン樹脂を生成した後、これを4級化剤で4級化することにより生成することができる。あるいは、N,N-ジアルキルアルカノールアミン類;N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、N-ブチル-N,N-ジエタノールアミン等のN-アルキル-N,N-ジアルカノールアミン類;及びトリアルカノールアミン類からなる群から選択される1種以上を、ポリオールの一部に添加した後、ポリイソシアネートと反応させてポリウレタン樹脂を生成し、これを4級化剤で4級化することによっても、生成することができる。
【0066】
<<<オレフィン系共重合体>>>
オレフィン系共重合体としては、乳化性が良好な、カルボキシ基又はその塩を共重合成分として含有するものが好ましい。カルボキシ基又はその塩を共重合成分として含有するオレフィン系共重合体の代表例としては、オレフィン系単量体と不飽和カルボン酸又はその無水物との共重合体及びその塩等が例示できる。これらのオレフィン系共重合体は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
カルボキシ基又はその塩を共重合成分として含有するオレフィン系共重合体のなかでは、上記不飽和カルボン酸又はその無水物が共重合したオレフィン系共重合体を用いることが好ましい。このような共重合体の具体例としては、例えばエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)等のエチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ(土類)金属塩、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸グラフトポリエチレン、(無水)マレイン酸グラフトポリエチレン、(無水)マレイン酸グラフトエチレン-酢酸ビニル共重合体、(無水)マレイン酸グラフト(メタ)アクリル酸エステル-エチレン共重合体、(無水)マレイン酸グラフトポリプロピレン、(無水)マレイン酸グラフトエチレン-プロピレン共重合体、(無水)マレイン酸グラフトエチレンープロピレン-ブテン共重合体、(無水)マレイン酸グラフトエチレン-ブテン共重合体、又は(無水)マレイン酸グラフトプロピレン-ブテン共重合体等が挙げられる。
【0068】
オレフィン系共重合体のなかでも、インク及び基材層との密着性の観点から、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体等のエチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体、(無水)マレイン酸グラフトエチレン-酢酸ビニル共重合体、(無水)マレイン酸グラフト(メタ)アクリル酸エステル-エチレン共重合体、(無水)マレイン酸グラフトエチレン-プロピレン-ブテン共重合体、(無水)マレイン酸グラフトエチレン-ブテン共重合体、又は(無水)マレイン酸グラフトプロピレン-ブテン共重合体がより好ましく、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体がさらに好ましく、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)が特に好ましい。インク密着性の観点からは、これらの樹脂の融点又は軟化点が130℃以下であることがより好ましい。
【0069】
<<エマルジョン中の樹脂粒子の含有量>>
エマルジョンにおける樹脂粒子の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、同含有量は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。含有量が上記下限値以上又は上記上限値以下であれば、樹脂粒子の体積平均粒径が0.01~3.0μmのエマルジョンの調製が容易になる。
【0070】
<<インク受容層中のエマルジョン由来の成分の含有量>>
インク受容層におけるエマルジョンに由来する成分の固形分の含有量は、インク受容層の固形分全量に対して10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。同含有量は、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、積層フィルムの印刷性が高まりやすく、上記上限値以下であれば、エマルジョンの調製が容易になる。
【0071】
<<分散剤>>
エマルジョンには、必要に応じて分散剤が添加されていてもよい。これにより、オレフィン系共重合体を分散媒中に均一に分散させることができ、インク受容層表面の平滑性を高めやすい。
分散剤としては、非イオン性界面活性剤、非イオン性水溶性高分子、カチオン性界面活性剤及びカチオン性水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0072】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリ-ルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が例示できる。
非イオン性水溶性高分子としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール及びそれらの変性物、又はヒドロキシエチルセルローズ等が例示できる。
カチオン性界面活性剤としては、ステアリルアミン塩酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、又はトリメチルオクタデシルアンモニウムクロリド等が例示できる。
カチオン性水溶性高分子としては、四級アンモニウム塩構造あるいはホスホニウム塩構造を有するポリマー、窒素含有(メタ)アクリルポリマー、又は四級アンモニウム塩構造の窒素を有する(メタ)アクリル系ポリマー等が例示できる。
これらのなかで、基材層との密着性の観点から、窒素含有(メタ)アクリルポリマー、又は四級アンモニウム塩構造の窒素を有する(メタ)アクリル系ポリマー等のカチオン性水溶性高分子を用いることが特に好ましい。
【0073】
エマルジョンにおける分散剤の添加量は、固形分換算で、樹脂粒子の樹脂成分100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。同添加量は、40質量部以下であることが好ましく、35質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0074】
分散剤の添加量が上記範囲内であれば、体積平均粒径が0.01~3.0μmになるように均一に樹脂粒子を分散させやすい。また、上記添加量が上記下限値以上であれば、分散剤としての十分な効果が得られやすい。逆に、上記添加量が上記上限値以下であれば、高温高湿環境下におけるインク密着性が改善されやすい。
【0075】
<<水性分散媒>>
エマルジョンの水性分散媒としては、用いる樹脂粒子を溶解しないか、溶解し難い水性分散媒を用いることができる。そのような水性分散媒の具体例としては、水の他、エタノール、イソプロパノール、又はアセトン等の溶媒と水との混合液等を挙げることができる。
【0076】
<エチレンイミン系樹脂>
インク受容層は、エチレンイミン系樹脂に由来する成分を含むことが好ましい。エチレンイミン系樹脂は、各種のインクとの親和性が高く、インク受容層表面のインクとの密着性を高める作用を有すると推測される。
塗工液中のエチレンイミン系樹脂の含有量は、固形分換算で、上記エマルジョンの固形分100質量部に対して1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい一方、25質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。同含有量が上記下限値以上であれば、インク密着性が向上しやすく、上記上限値以下であれば積層フィルムのブロッキングを減らしやすい。
【0077】
<その他の成分>
インク受容層は、必要に応じて帯電防止剤等のその他の添加剤を、印刷性を損なわない範囲で含有してもよい。
【0078】
<<帯電防止剤>>
帯電防止剤は、フィルム表面の帯電による埃の付着、又は印刷時の静電気によるトラブル等を減らすことができる。
帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、カチオン型、アニオン型、両性型、又はノニオン型の帯電防止剤等を用いることができる。また、低分子量型の帯電防止剤であってもよく、高分子量(ポリマー)型の帯電防止剤であってもよい。
【0079】
カチオン型の帯電防止剤としては、アンモニウム塩構造、又はホスホニウム塩構造等を有する帯電防止剤が例示できる。
アニオン型の帯電防止剤としては、スルホン酸、リン酸、又はカルボン酸等のアルカリ金属塩の構造を有する帯電防止剤が例示できる。これらの酸のアルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、又はカリウム塩等が例示できる。アニオン型の帯電防止剤は、分子構造中に、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸等のアルカリ金属塩の構造を有していてもよい。
【0080】
両性型の帯電防止剤としては、同一分子中に、カチオン型の帯電防止剤及びアニオン型の帯電防止剤の両方の構造を含有する帯電防止剤が例示できる。両性型の帯電防止剤は、ベタイン型の帯電防止剤であってもよい。
ノニオン型の帯電防止剤としては、アルキレンオキシド構造を有するエチレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合成分を分子鎖中に有する重合体等が例示できる。
その他の帯電防止剤としては、分子構造中にホウ素を有するポリマー型帯電防止剤が例示できる。
【0081】
帯電防止剤として、好ましくは窒素含有ポリマー型帯電防止剤が用いられ、より好ましくは第三級窒素又は第四級窒素含有アクリル系樹脂が用いられる。
これらの帯電防止剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
塗工液における帯電防止剤の添加量は、エマルジョンの固形分100質量部に対して2質量部以上であることが好ましい一方、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。帯電防止剤の添加量が上記範囲内であれば、印刷時に十分なインク転移性が得られやすい。
【0083】
(低融点樹脂層)
低融点樹脂層は、積層フィルムにヒートシール性を付与し、被着体への接着や、袋状又は容器状等の包装材料の成形を容易にする。低融点樹脂層は、基材層の全面に設けられてもよいし、全面のうちシールが必要な一部に設けられてもよい。
【0084】
本発明の積層フィルムは、そのガスバリア性を有効に活用して保存する内容物と外部の空気との接触を極力抑えるため、密封可能な袋、容器又は容器への蓋材等の形状に加工して用いることが望ましい。そのような加工方法の代表例として、ヒートシール加工が挙げられる。本発明の積層フィルムは、低融点樹脂層を設けることにより、ヒートシール加工によって袋又は容器の成形を容易に行うことができ、加工時間の短縮が可能となる。
【0085】
低融点樹脂層は、融点が135℃以下の低融点樹脂を含有する。低融点樹脂の融点は、120℃以下であることが好ましく、115℃以下がより好ましい。融点が135℃以下であれば、ヒートシール加工時に必要な熱量が少なく、短時間で低融点樹脂層同士を密着させやすい。夏場の高温条件で低融点樹脂層が軟化して、積層フィルムの保管時に自身がブロッキングしたり、ヒートシール加工した製品のヒートシール強度が低下したりすることを抑える観点からは、低融点樹脂の融点が60℃以上であることが好ましい。
【0086】
融点が135℃以下であれば、使用できる低融点樹脂としては特に限定されないが、具体的な例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン、又はオクテンに代表されるオレフィン類の単独重合体、これらオレフィン類の2種以上による共重合体、これらオレフィン類の1種類以上とオレフィン類と共重合可能なコモノマーの1種類以上との共重合体、又はそれらの金属塩が挙げられる。オレフィン類と共重合可能なコモノマーとしては、例えばスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、又はブチル安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニル類;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はアクリロニトリル等のアクリル酸類等が挙げられる。
【0087】
低融点樹脂層は、融点が135℃以下の低融点樹脂を主成分として含有し、融点が135℃以下ではない熱可塑性樹脂を含有してもよい。主成分とは、層中の含有量が50質量%以上の成分をいう。ヒートシール加工の観点からは、低融点樹脂層は、融点が135℃以下の低融点樹脂からなる樹脂フィルムであることが好ましい。
【0088】
基材層との密着性の観点からは、上記のなかでも、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、又はメタロセン触媒系ポリプロピレンのようなメタロセン触媒系ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。低融点かつ良好な成形性の観点からは、低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒系ポリオレフィンがより好ましい。
【0089】
低融点樹脂は、積層フィルムの接着対象によって選択することができる。例えば、低融点樹脂層を介してポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂に積層フィルムを接着させる場合、低融点樹脂として密度(g/cm)が0.900以上0.920未満の低密度ポリエチレン(LDPE)又はメタロセン触媒系ポリエチレンを用いることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂に積層フィルムを接着させる場合の低融点樹脂としては、メタロセン触媒系ポリプロピレンを用いることが好ましい。袋状に密封する場合のように積層フィルムの低融点樹脂層同士を密着させる場合は、使用する低融点樹脂の種類によらず高い密着性が得られる。
【0090】
本発明の積層フィルムは、上述したインク受容層、基材層、ガスバリア層及び低融点樹脂層以外の他の層を有してもよい。例えば、各層の剥がれを抑えるため、接着剤層が設けられてもよい。
【0091】
図1は、接着剤層を設けた場合の積層フィルムの一例を示す。
図1に例示する積層フィルム10Aでは、インク受容層3、基材層1、ガスバリア層2及び低融点樹脂層4がこの順に積層されている。インク受容層3上には印刷によって印刷層7が形成され得る。
積層フィルム10Aは、ガスバリア層2の両面に接着剤層6を有することができる。接着剤層6により、ガスバリア層2と隣接する基材層1及び低融点樹脂層4との密着性を高めることができる。
【0092】
(接着剤層)
接着剤層は、ガスバリア層と、ガスバリア層に隣接する基材層及び低融点樹脂層との密着性の向上を目的として必要に応じて設けられる。接着剤層により、ガスバリア層が剥がれ、露出することによるガスバリア性の低下を抑えることができる。ガスバリア層中のガスバリア性樹脂の含有量が多いほど、ガスバリア層と隣接する層との密着性が低くなるため、両者の間に接着剤層が介在することが好ましい。
【0093】
接着剤層の積層方法は特に限定されない。例えば、複数の押出機により溶融した樹脂とホットメルト型接着剤をフィードブロック又はマルチマニホールドにより1台のダイ内で積層する共押出法を使用できる。また、溶剤系接着剤を塗工又は散布して接着剤層を形成した後、当該接着剤層を介してもう一方の層を接着するドライラミネート法を使用できる。また、一方の層の表面上にホットメルト型接着剤を溶融押出しして接着剤層を形成し、当該接着剤層を介してもう一方の層を接着する溶融押出ラミネート法を使用できる。さらに、ホットメルト型接着剤の熱融着性フィルムを一方の層上に積層し、熱により溶融させて接着剤層を形成し、この接着剤層を介してもう一方の層を接着する熱溶融ラミネート法を使用できる。なかでも、工程数を削減できる共押出法を用いて接着剤層を積層することが好ましい。
【0094】
ホットメルト型接着剤としては、例えば、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブチラール系樹脂、又はウレタン系樹脂等が挙げられる。なかでも、基材層への接着の観点から、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0095】
[積層フィルムの特性]
(各層の厚み)
ガスバリア層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。ガスバリア層の厚みが上記下限値以上であれは、ガスバリア層のガスバリア性が得られやすく、目的の性能の積層フィルムを得やすい傾向がある。ガスバリア層の厚みは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。ガスバリア層の厚みが上記上限値以下であれば、同層の剛性を小さくすることができるので、積層フィルムの柔軟性が高まりやすく、包装材料として使用しやすい。また、コスト削減の効果も得られる。
【0096】
基材層の厚みは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。基材層の厚みが上記下限値以上であれは、基材としての剛度やコシが得られやすく、また、基材層の防湿性が得られやすく、目的のガスバリア性能の積層フィルムが得られやすい傾向がある。基材層の厚みは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下がより好ましい。基材層の厚みが上記上限値以下であれば、同層の剛性を小さくすることができるので、積層フィルムの柔軟性が高まりやすく、包装材料として使用しやすい。
【0097】
インク受容層の厚みは、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましい一方、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。厚みがこの範囲内であれば、一般的な印刷用紙に似た風合いの積層フィルムを得ることができる。
【0098】
低融点樹脂層の厚みは、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。低融点樹脂層の厚みが上記下限値以上であれば接着力が得られやすく、袋状又は容器状に成形しやすい。また、低融点樹脂層の透湿度を低下させて水バリア性を高めやすい。低融点樹脂層の厚みは、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。低融点樹脂層の厚みが上記上限値以下であれば、ベタツキが減るとともに、積層フィルムをカットしやすくなるため、積層フィルムの加工性が高まる傾向がある。
【0099】
接着剤層の厚みは、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。接着剤層の厚みが上記下限値以上であれば、接着剤層の均一性を高めて、各層のラミネート加工性が向上しやすいとともに、積層フィルムのガスバリア性能の低下を抑えやすい。一方、接着剤層の厚みは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。接着剤層の厚みが上記上限値以下であれば、接着剤層の凝集力が損なわれにくく、各層が剥離しにくくなる。
【0100】
なお、接着剤層の固形分として、接着剤層の坪量が0.5~30g/mであることが好ましく、1~25g/mであることがより好ましい。上記厚み又は坪量となるように接着剤を塗工又は溶融押出することにより、接着剤層を設けることが好ましい。
【0101】
(酸素透過度)
積層フィルムのガスバリア性を意味する酸素透過度は、温度23℃、相対湿度90%の高湿度環境下において、15cm/(m・24h・atm)以下が好ましく、10cm/(m・24h・atm)以下がより好ましい。
同酸素透過度は、0cm/(m・24h・atm)であり得るが、適切な厚み等を考慮すると通常は0.001cm/(m・24h・atm)以上である。
上記酸素透過度は、JIS-K-7126-2に準拠して測定される。
【0102】
(透湿度)
積層フィルムの透湿度は、温度38℃、相対湿度90%RHにおいて、10g/(m・24h)以下が好ましい。透湿度が低いほど、積層フィルムのガスバリア性が高いと評価できる。同透湿度は、0g/(m・24h)でもよいが、適切な厚み等を考慮すると通常は0.01g/(m・24h)以上である。
上記透湿度は、JIS-K-7129-Bに準拠して測定される。
【0103】
[積層フィルムの製造方法]
本発明の積層フィルムは、インク受容層、基材層、ガスバリア層及び低融点樹脂層をこの順に積層することにより製造することができ、その製造方法は特に限定されない。例えば、本発明の積層フィルムは、ガスバリア層、基材層及び低融点樹脂のフィルムを形成して積層し、基材層上にインク受容層形成用の塗工液を塗工してインク受容層を形成することにより、製造することができる。
【0104】
(フィルム成形と積層)
フィルムの成形方法としては、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等を用いることができる。熱可塑性樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することにより、フィルムが成形されてもよい。
【0105】
フィルムの積層方法としては、共押出法、押出ラミネーション法、塗工法等が挙げられ、これらを組み合わせることもできる。共押出法は、別々の押出機において溶融混練された各層の樹脂組成物をフィードブロック又はマルチマニホールド内で積層して押し出し、フィルム成形と積層を並行に行う。押出ラミネーション法は、予め形成されたフィルム上に樹脂組成物を押出成形してフィルムを積層する。塗工法は、樹脂の溶液、エマルジョン又はディスパージョンをフィルム上に塗工して乾燥することにより、フィルムを形成及び積層する。
【0106】
層間密着性の観点から、ガスバリア層は、基材層及び低融点樹脂層と接着剤層を介して積層されることが好ましい。例えば、図1に例示する積層フィルム10Aの場合、基材層を押出成形し、この基材層上に、接着剤層、ガスバリア層、接着剤層及び低融点樹脂層の各樹脂組成物を共押出することによって、各層のフィルムを積層できる。また、基材層を押出成形した後、塗工法により、その一方の面上に接着剤層、ガスバリア層、接着剤層及び低融点樹脂層を順次形成することによっても、積層が可能である。
【0107】
(延伸)
各層は、積層前に個別に延伸されていてもよいし、積層後にともに延伸されてもよい。また、無延伸層と延伸層とが積層された後に再び延伸されてもよい。
【0108】
フィルムを延伸する場合の延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
【0109】
延伸を実施するときの延伸温度は、フィルムに使用する熱可塑性樹脂が、非結晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂の融点よりも2~60℃低い温度が好ましい。
【0110】
延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20~350m/分の範囲内であることが好ましい。
また、延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。例えば、プロピレンの単独重合体又はその共重合体を含む樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、下限が通常は1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、上限が通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、下限が通常は1.5倍以上であり、好ましくは10倍以上である一方、上限が通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。
【0111】
(表面処理)
基材層は、インク受容層との密着性を高める観点から、表面処理が施されて表面が活性化していることが好ましい。
表面処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、又はオゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ処理がより好ましい。
【0112】
コロナ放電処理を実施する場合の放電量は、好ましくは600J/m(10W・分/m)以上であり、より好ましくは1,200J/m(20W・分/m)以上である一方、好ましくは12,000J/m(200W・分/m)以下であり、より好ましくは10,800J/m(180W・分/m)以下である。フレーム処理を実施する場合の放電量は、好ましくは8,000J/m以上であり、より好ましくは20,000J/m以上である一方、好ましくは200,000J/m以下であり、より好ましくは100,000J/m以下である。
【0113】
(インク受容層の形成)
インク受容層は、インク受容層形成用の塗工液を調製し、基材層上に塗工することにより、形成することができる。
【0114】
<塗工液の調製>
インク受容層形成用の塗工液は、上述した樹脂粒子のエマルジョンに必要に応じて添加剤などを配合することにより、調製できる。
【0115】
カチオン性のウレタン系樹脂の樹脂粒子を使用する場合、ポリウレタン樹脂骨格にカチオン性の親水性基を導入した共重合体を水に分散させることにより、エマルジョンを調製できる。具体的には、目的の重合体を構成するモノマーを水に乳化分散させて重合させる方法、塊状重合等により目的の重合体を得たのち、二軸押出機を使用して原料樹脂の溶融混練と乳化を逐次行う方法等が挙げられる。
【0116】
オレフィン系共重合体の樹脂粒子を使用する場合のエマルジョンの調製方法は、特に限定されないが、例えば下記(1)又は(2)の方法を用いることができる。
【0117】
(1)芳香族炭化水素系溶剤にオレフィン系共重合体を投入して加熱溶解し、樹脂溶液を調製する。この樹脂溶液に、分散剤を添加して混合撹拌し、引き続き水を添加しながら相転換させる。その後、芳香族炭化水素系溶剤を留去し、得られた水性分散液をエマルジョンとして使用する。
【0118】
(2)オレフィン系共重合体を、二軸押出機を用いて溶融する。次いで、分散剤の水溶液を添加し、混練することで水性分散液を得てエマルジョンとして使用する(特公昭62-29447号公報参照)。
【0119】
これらの方法によりエマルジョンを調製する場合、分散剤としてカチオン系水溶性高分子等の高分子乳化剤を用いることが好ましく、さらに上記(2)の二軸押出機による分散法を用いることが好ましい。これにより、エマルジョン中のオレフィン系共重合体の樹脂粒子の体積平均粒径を、0.01~3.00μmに容易に調整することができる。上記(2)の方法において、エマルジョン中のオレフィン系共重合体の樹脂粒子の体積平均粒径は、例えば、二軸押出機の運転条件のうち、オレフィン系共重合体に対する水の量、シリンダー温度とそのプロフィル、押出機中での樹脂の滞留時間、押出機のバレル回転数等を制御することによって調整することができる。
【0120】
塗工液の固形分濃度は、塗工液全量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、また、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0121】
塗工液の塗工は、例えば、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、サイズプレスコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター等の塗工装置を用いて行うことができる。
【0122】
塗工液の塗工量は、乾燥後の固形分量として0.05g/m以上であることが好ましく、0.10g/m以上であることがより好ましく、0.15g/m以上であることが特に好ましく、また、1.40g/m以下であることが好ましく、0.50g/m以下であることがより好ましく、0.30g/m以下であることがより好ましく、0.24g/m以下であることが特に好ましい。
塗工量が上記下限値以上であることにより、一般的に密着性が乏しいとされるオフセット印刷用紫外線硬化型インクとの密着性が向上しやすい。一方、エマルジョンは粘着性が高くないことから、多すぎる塗工量によるオフセット印刷用インクの密着性の低下を抑えることができる。
【0123】
インク受容層の形成は、ロール・トゥ・ロール法によって連続的に行うことが好ましい。これにより、積層フィルムの生産性を向上させることができる。また、ロール・トゥ・ロール法では、インク受容層の厚さを比較的容易に調整することができるので、印刷適性を維持しながらインク受容層の厚さを薄くするなど、希望する風合いの積層フィルムを容易に製造することができる。
また、インク受容層の形成は、インク受容層以外の各層を形成するためのラインと同じラインで行ってもよいし、別のラインで行ってもよい。
【0124】
(印刷)
本発明の積層フィルムのインク受容層の表面に印刷することにより、印刷層が形成され得る。
使用できる印刷方式としては、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット記録方式、感熱記録方式、熱転写記録方式、又は電子写真記録方式等種々の公知の手法を用いることが可能である。これらのなかでも、耐候性と耐水性が優れた印刷物を得やすいオフセット印刷、グラビア印刷、又はフレキソ印刷方式が好ましく、パッケージ用途としてはグラビア印刷が好ましい。さらに印刷インクとしては、油性インク、水性インク又は紫外線硬化型インク等を用いることが可能である。
【0125】
(積層フィルムの加工)
本発明の積層フィルムは、食品又は化粧品等の内容物を充填し密閉する包装材料として、袋形状又は容器形状に加工して使用することにより、そのガスバリア性を有効利用することができる。
例えば、積層フィルムの低融点樹脂層同士をヒートシール加工することにより、開口部を有する袋形状に加工し、内容物を充填後に開口部の低融点樹脂層同士をさらにヒートシール加工することによりガスバリア性包装袋が得られる。
【0126】
また、積層フィルムに印刷を施してインモールドラベルを形成できる。このインモールドラベルを用いて真空・圧空成形(差圧成形)又は射出成形等のインモールド成形を行うことにより、ガスバリア性包装容器を形成することができる。インモールドラベルは成形体の表面において成形体と一体化する。内容物を充填後に容器の開口を閉じることにより、内容物の密封が可能である。この開口を閉じる蓋材として本発明の積層フィルムを用いることもできる。容器の開口を覆うように本発明の積層フィルムをヒートシール加工することにより、容器への接着を容易に行うことができる。
【実施例0127】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
【0128】
[原料]
実施例及び比較例にて使用した原料は以下のとおりである。
(ポリオレフィン系樹脂)
<A1>プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY-4、日本ポリプロ社製、MFR:5.0g/10min(230℃、2.16kg荷重)、融点:164℃(DSCピーク温度)、密度:0.9g/cm
(フィラー)
<A2>重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1800(備北粉化学工業社製)、平均粒径:1.2μm)
(ガスバリア性樹脂)
<B>エチレン・ビニルアルコール共重合体(商品名:エバールE105B(クラレ社製)、エチレン含有量:44モル%、融点:165℃)
(接着剤)
<C>マレイン酸変性ポリプロピレン(商品名:アドマーQF500(三井化学社製))
(低融点樹脂)
<D>低密度ポリエチレン(商品名:ノバテックLD LC540(日本ポリエチレン社製)、融点:112℃)
【0129】
下記表1は、上記材料の一覧を示す。
【表1】
【0130】
インク受容層の材料は、次のようにして調製した。
(分散剤(H))
冷却器、窒素導入管、撹拌機及びモノマー滴下ロート及び加熱用のジャケットを装備した内容積150Lの反応器にイソプロパノール((株)トクヤマ製:商品名トクソーIPA)40kgを仕込んだ。次いで、撹拌しながら、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(三洋化成工業(株)製:商品名メタクリレートDMA)12.6kg、ブチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製:商品名アクリエステルB)12.6kg、及び高級アルコールメタクリル酸エステル(三菱レイヨン(株)製:商品名アクリエステルSL、メタクリル酸ラウリルとメタクリル酸トリデシルの混合物)2.8kgを仕込んだ。窒素置換を行った後、内温を80℃まで上昇させ、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製:商品名V-60(AIBN))0.3kgを添加して重合を開始した。
【0131】
反応温度を80℃に保って4時間重合を行った後、得られた共重合体を、氷酢酸(和光純薬工業(株)製)4.3kgを用いて中和した。次いで、イソプロパノールを留去しながらイオン交換水48.3kgを添加して系内を置換し、(メタ)アクリル酸系共重合体からなるカチオン性高分子乳化剤の中和物の水溶液(固形分濃度35重量%)を分散剤(H)として得た。得られた高分子乳化剤の重量平均分子量は40,000であった。
【0132】
(ウレタン系樹脂のエマルジョン(E1))
カチオン性ポリウレタン水分散体(商品名:ハイドランCP-7050、DIC(株)製)を、エマルジョン(E1)として使用した。このエマルジョン(E1)の固形分は25質量%、エマルジョン(E1)中の樹脂粒子の体積平均粒径は0.07μmであった。
【0133】
(オレフィン系共重合体のエマルジョン(E2))
二軸押出機(日本製鋼所製、TEX30HSS)を使用して、原料樹脂の溶融混練と乳化を以下の手順で行い、平均粒径1.5μmの樹脂粒子を含むエマルジョンを製造した。
具体的には、オレフィン系共重合体としてペレット状のエチレン・メタクリル酸・アクリル酸エステル共重合樹脂(三井・デュポン・ポリケミカル社製、ニュクレルN035C、2.0kg)をホッパーから押出機に供給し、スクリュー回転数270rpm、シリンダー温度160℃~250℃の条件で溶融、混練を行った。続いてシリンダー中間部の注入口から上記分散剤(H)を、エマルジョンの固形分が45質量%となるように供給した。次いで、乳化・分散処理を行って、押出機出口から白色のオレフィン系共重合体からなる樹脂粒子のエマルジョン(E2)を得た。
このエマルジョン(E2)の固形分は45質量%、エマルジョン(E2)中の樹脂粒子の体積平均粒径は1.5μmであった。
【0134】
(オレフィン系共重合体のエマルジョン(E3))
押出機のスクリュー回転数を300rpmにし、樹脂供給量を3倍にしたこと、及び分散剤(H)の使用量を75%に減らしたこと以外は、エマルジョン(E2)と同様にしてオレフィン系共重合体からなる樹脂粒子のエマルジョン(E3)を調製した。
得られたエマルジョン(E3)の固形分は45質量%、体積平均粒径は5.0μmであった。
【0135】
<体積平均粒径>
上記体積平均粒径は、レーザー回折型粒度分布測定装置(島津製作所製:SALD-2200)を用いて測定した。
【0136】
(エチレンイミン系樹脂溶液(F))
撹拌機、環流冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、ポリエチレンイミン(日本触媒(株)製、商品名:エポミン P-1000)25質量%水溶液100質量部、1-クロロブタン(和光純薬工業(株)製、試薬)10質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬)10質量部を導入した。次いで、窒素気流下で撹拌し、80℃の温度で20時間変性反応を行った。この溶液に水を添加して固形分濃度を20質量%に調整し、エチレンイミン系樹脂の溶液(F)を得た。
【0137】
(帯電防止剤(G))
N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(三菱ガス化学(株)製)35質量部、エチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20質量部、シクロヘキシルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20質量部、ステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)25質量部、エチルアルコール150質量部と、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製、試薬)1質量部を、撹拌装置、還流冷却管(コンデンサー)、温度計、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに導入した。系内を窒素置換し、窒素気流下にて80℃で6時間重合反応を行った。次いで3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの50質量%水溶液85質量部(和光純薬工業(株)製、試薬)を加えた。更に80℃で15時間反応させた後、水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、固形分濃度20質量%の第四級アンモニウム塩型共重合体からなる帯電防止剤の溶液を得た。
【0138】
下記表2は、各塗工液の材料の一覧を示す。
【表2】
【0139】
(塗工液(1))
上記ウレタン系樹脂のエマルジョン(E1)を13質量%、エチレンイミン系樹脂溶液(F)を0.5質量%、帯電防止剤(G)を0.5質量%を含む水溶液を調製し、塗工液(1)として用いた。なお、上記各成分の濃度は、塗工液全体に対する各成分の固形分濃度を表す。
【0140】
(塗工液(2)及び(3))
塗工液(1)において、ウレタン系樹脂のエマルジョン(E1)の代わりにオレフィン系共重合体のエマルジョン(E2)及び(E3)をそれぞれ用いた以外は、塗工液(1)と同様にして塗工液(2)及び(3)をそれぞれ調製した。
【0141】
(塗工液(4))
上記エチレンイミン系樹脂溶液(F)を塗工液(4)として用いた。
【0142】
[積層フィルムの製造]
(実施例1)
80質量部のポリオレフィン樹脂(A1)(ノバテックPP FY-4)と、20質量部の重質炭酸カルシウム(A2)(ソフトン1800)とからなる樹脂組成物を、230℃に設定した押出機にて溶融混練した。その後、250℃に設定した押出ダイに供給してシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、基材層を形成した。
【0143】
次いで、それぞれ100質量部のガスバリア性樹脂(B)、接着剤(C)及び低融点樹脂(D)を250℃に設定した3台の押出機においてそれぞれ溶融混練した後、各樹脂を接着剤(C)、ガスバリア性樹脂(B)、接着剤(C)、低融点樹脂(D)の順に重ねてシート状に4層共押出ししながら、基材層上にシート状に押し出した。これにより、接着剤(C)からなる接着剤層、ガスバリア性樹脂(B)からなるガスバリア層、接着剤(C)からなる接着剤層及び低融点樹脂(D)からなる低融点樹脂層が形成され、接着剤層側が基材層と接するようにこの順に基材層上に積層された。これにより、基材層/接着剤層/ガスバリア層/接着剤層/低融点樹脂層の順に積層された5層シートが得られた。
【0144】
得られた5層シートを冷却装置により60℃まで冷却した後、テンターオーブンを用いて積層シートを約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した。160℃まで加熱して熱処理を行った後、60℃まで冷却し、耳部をスリットした。
【0145】
次に、連続塗工設備を用い、5層シートの基材層表面にコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理には、コロナ放電処理装置(春日電気社製、HF400F)を用いた。長さ0.8mのアルミニウム製放電電極と絶縁ロールとのギャップを5mm、ライン処理速度を15m/分、印加エネルギー密度を4200J/mに設定した。次いで、基材層上に塗工液(1)を塗工し、60℃の熱風送風乾燥設備において乾燥し、インク受容層を形成した。乾燥後のインク受容層の固形分は、0.23g/mであった。
【0146】
次いで、ロール巻取装置により巻き取り、インク受容層/基材層/接着剤層/ガスバリア層/接着剤層/低融点樹脂層の順に積層された6層の積層フィルム(全層厚み:72μm、各層厚み:-/55μm/2μm/10μm/2μm/3μm)、各層の延伸軸数:-/2軸/1軸/1軸/1軸/1軸)を得た。
【0147】
(実施例2及び比較例1~3)
インク受容層を形成する塗工液(1)をそれぞれ塗工液(2)~(4)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2、比較例1及び2の積層フィルムを得た。また、実施例1においてインク受容層を設けずに、比較例3の積層フィルムを得た。実施例2及び比較例1~3の積層フィルムの全層及び各層の厚み、延伸軸数は、実施例1と同じである。
【0148】
(比較例4)
それぞれ100質量部のガスバリア性樹脂(B)、接着剤(C)及び低融点樹脂(D)を250℃に設定した3台の押出機においてそれぞれ溶融混練した。次いで、各樹脂をガスバリア性樹脂(B)、接着剤(C)、低融点樹脂(D)の順に重ねてシート状に3層共押出しした。
【0149】
得られた3層シートを冷却装置により60℃まで冷却した後、テンターオーブンを用いて積層シートを約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した。160℃まで加熱して熱処理を行った後、60℃まで冷却し、耳部をスリットした。次いで、ロール巻取装置により巻き取り、ガスバリア層/接着剤層/低融点樹脂層の順に積層された3層の積層フィルム(全層厚み:15μm、各層厚み:10μm/2μm/3μm)、各層の延伸軸数:1軸/1軸/1軸)を得た。
【0150】
[評価]
各実施例及び比較例の積層フィルムについて、ガスバリア性及びインク密着性を次のようにして評価した。
【0151】
(ガスバリア性)
積層フィルムの酸素透過度を測定し、積層フィルムのガスバリア性として評価した。
【0152】
<通常環境での評価>
各実施例及び比較例で得られた積層フィルムを温度23℃、相対湿度50%RHの環境下に48時間置き、調湿した。調湿済みの積層フィルムのサンプルを使用して、モダンコントロ-ル社製のMOCONOX-TRAN2/2 2Lを用い、JIS-K7126(等圧法)に記載の方法に準じて、酸素透過度を測定した(単位:cm/m・24h・atm)。
【0153】
<高湿度環境での評価>
各実施例及び比較例で得られた積層フィルムを、温度23℃、相対湿度90%RHの環境下に48時間置き、調湿した。調湿済みのサンプルを用いて、上記低湿度下での評価と同様に酸素透過度を測定した。
【0154】
(インク密着性)
実施例及び比較例の各積層フィルムのインク受容層の表面にインキ盛り量2.0g/mにてベタ印刷を実施した。印刷には、フレキソ印刷機(エムティーテック社製、機器名:FC11B)とUVフレキソ用インク((株)T&KTOKA製、製品名:フレキソ500)を用いた。次いで、UV照射機を用いて、照射強度が100mJ/cmになるようにUV照射を実施し、インク密着性評価用サンプルを得た。
【0155】
<通常環境での評価>
得られたサンプルを、23℃、50%RHで1日間調湿した。調湿後のサンプルの印刷画像の上に18mmのセロハンテープ(株式会社ニチバン製、製品名:CT-18)を貼り、指で密着させた。その後、180度の剥離角度及び50m/minの剥離速度によりテープを剥離した。剥離後のインクの剥がれを観察し、加湿促進前のインク密着性を以下の基準で評価した。
○:インクの剥がれなし
×:インクが剥離し、フィルム表面が露出する
【0156】
<加湿促進後の評価>
上記サンプルを、温度60℃、相対湿度90%RHの環境下に7日間置いた後、23℃、50%RHで1日間調湿した。この調湿後のサンプルを用いて、上記通常環境での評価と同様にインクの密着性を評価した。
【0157】
表3は、評価結果を示す。
【表3】
【0158】
実施例1及び2は、通常環境と変わらず高湿度下においても、優れたガスバリア性を維持している。また、樹脂粒子のエマルジョンを用いてインク受容層が形成された実施例1及び2によれば、高湿度下でもインク密着性が良好であり、印刷性に優れた積層フィルムが得られている。実施例1及び2と比較例2及び3を対比すると、樹脂粒子のエマルジョンを用いて形成したインク受容層によってガスバリア性も向上することが分かる。
【0159】
一方、ガスバリア層が最表面に位置する比較例4は、ガスバリア層が覆われておらず、高湿度環境下ではガスバリア性が大きく低下した。また、比較例1は、エマルジョン中の樹脂粒子の粒子径が大きく、インク密着性が低かった。エマルジョンではなくエチレンイミン系樹脂溶液によりインク受容層を形成した比較例2は、通常環境ではインク密着性が良好であるものの、高湿度下ではそのインク密着性を維持できていない。また、樹脂粒子のエマルジョンを用いて形成したインク受容層とは異なり、比較例2によってガスバリア性を向上させる効果は得られなかった。一方、印刷受容層がない比較例3は、インク密着性が低いだけでなく、ガスバリア性まで低下した。
【符号の説明】
【0160】
10A・・・積層フィルム、1・・・基材層、2・・・ガスバリア層、3・・・インク受容層、4・・・低融点樹脂層、6・・・接着剤層

図1