(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138309
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20220915BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20220915BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20220915BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01C11/02 331D
A01C11/02 322D
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038116
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須山 智典
【テーマコード(参考)】
2B043
2B062
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB11
2B043BA02
2B043BB06
2B043DA15
2B043DA17
2B043EA02
2B043EA04
2B043EA35
2B043EB05
2B043EB15
2B043EB22
2B043EC12
2B043EC15
2B043ED02
2B043ED27
2B062AA02
2B062AA08
2B062AA11
2B062AB01
2B062BA22
2B062CA18
2B062CA25
2B062CB01
5H301BB01
5H301HH18
(57)【要約】
【課題】オペレータが枕地で移植機を旋回操作した場合に、現工程の植え付け終わりの位置に、次工程の植え付け始めの位置をあわせて、植え付け可能な移植機の提供。
【解決手段】オペレータによる左旋回スイッチや右旋回スイッチの操作に応じて、乗用田植機Pが第一直進経路L1から第二直進経路L2に向けて自動旋回を開始する際に、GPS受信機により検出される左旋回スイッチや右旋回スイッチの操作時点における乗用田植機の走行位置(K1)に基づいて、次工程の第二直進経路L2における植付開始位置(Lp)を設定する。そして、走行機体の旋回終了後、設定した植付開始位置(Lp)で植付クラッチが接続されて、第二直進経路L2に沿う直進制御に移行される。これにより、オペレータは枕地で乗用田植機Pを旋回操作した場合に、現工程の植え付け終わりの位置に、次工程の植え付け始めの位置をあわせて、植え付けを開始することが容易にできる。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置に支持される走行機体と、
前記走行機体の走行位置を検出するGPS装置と、
所定の操舵角で前記走行機体を左旋回又は右旋回させる旋回操作手段と、
前記走行機体に支持され圃場へ苗を移植する植付作業機と、
前記植付作業機へ供給する動力を断接する植付クラッチと、
前記GPS装置により検出される前記走行機体の走行位置に基づいて、圃場において複数の直進経路を設定する直進経路設定制御と、前記植付クラッチを植付開始位置で接続して前記直進経路のいずれか1つに沿って前記走行機体を自律的に直進走行させる直進制御と、前記複数の直進経路のうち第一直進経路に沿った前記直進制御中に前記旋回操作手段が操作された場合に、前記植付クラッチを切断して前記第一直進経路に隣接する第二直進経路に向けて旋回を開始すると共に、前記旋回操作手段が操作された時点の走行位置に基づいて前記第二直進経路における前記植付開始位置を設定し、前記走行機体の旋回終了後、前記第二直進経路に沿う前記直進制御に移行する植付自動制御と、を実行可能な制御手段と、を備える、
ことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記植付自動制御の実行時、前記旋回操作手段が操作された時点の走行位置を通る前記第一直進経路に直交する仮想線が、前記第二直進経路に交差する位置を、前記第二直進経路における前記植付開始位置に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記植付作業機を昇降する昇降手段を備え、
前記制御手段は、前記植付自動制御の実行時、前記植付クラッチを切断すると共に前記植付作業機を上昇させ、上昇させた前記植付作業機を前記走行機体が下降開始位置に到達したときに下降開始するように前記昇降手段を制御することが可能であり、
前記制御手段は、前記第二直進経路における前記植付開始位置から前記昇降手段により前記植付作業機を下降させるのに要する距離だけ手前の位置に、前記第一直進経路と前記第二直進経路との間での旋回における前記下降開始位置を設定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の移植機。
【請求項4】
前記旋回操作手段は、旋回方向を選択する左右一対の選択スイッチである、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の移植機。
【請求項5】
前記走行機体は、前記選択スイッチが押下されている間、前記所定の操舵角で旋回される、
ことを特徴とする請求項4に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を往復走行しながら苗を移植する移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を往復走行しながら苗を移植する際に、現工程の植え付け後に枕地で走行機体の旋回が開始されることに応じて、植付クラッチを切断して植付作業機を上昇させ、その後、下降開始位置で植付作業機を下降させて、次工程の植付開始位置で植付クラッチを接続する一連の制御(植付自動制御と呼ぶ)を自動的に行う移植機が提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載の移植機では、走行機体の旋回が開始された場合に、GPSにより検出される走行機体の走行位置に基づいて、移植機がティーチング制御などにより予め設定済みの植付開始位置に到達すると、植付クラッチが接続されて次工程の植え付けが開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オペレータによる枕地での移植機の旋回操作タイミングは、1回の植付工程ごとに多少の変動が生じ得る。それ故に、上述の特許文献1に記載の装置の場合、現工程の植え付け終わりの位置と次工程の植え付け始めの位置とが異なる状況を生じさせやすかった。
【0005】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、オペレータが枕地で移植機を旋回操作した場合に、現工程の植え付け終わりの位置に、次工程の植え付け始めの位置をあわせて、植え付け可能な移植機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様に係る移植機(P)は、
走行装置(9、10)に支持される走行機体(1)と、
前記走行機体の走行位置を検出するGPS装置(42)と、
所定の操舵角で前記走行機体を左旋回又は右旋回させる旋回操作手段(72、73)と、
前記走行機体に支持され圃場へ苗を移植する植付作業機(3)と、
前記植付作業機へ供給する動力を断接する植付クラッチ(8)と、
前記GPS装置により検出される前記走行機体の走行位置に基づいて、圃場において複数の直進経路(L)を設定する直進経路設定制御と、前記植付クラッチを植付開始位置(G2)で接続して前記直進経路のいずれか1つに沿って前記走行機体を自律的に直進走行させる直進制御と、前記複数の直進経路のうち第一直進経路(L1)に沿った前記直進制御中に前記旋回操作手段が操作された場合に、前記植付クラッチを切断して前記第一直進経路に隣接する第二直進経路(L2)に向けて旋回を開始すると共に、前記旋回操作手段が操作された時点の走行位置(K1)に基づいて前記第二直進経路における前記植付開始位置(Lp)を設定し、前記走行機体の旋回終了後、前記第二直進経路に沿う前記直進制御に移行する植付自動制御と、を実行可能な制御手段(50)と、を備える、
ことを特徴とする。
【0007】
前記制御手段(50)は、前記植付自動制御の実行時、前記旋回操作手段が操作された時点の走行位置を通る前記第一直進経路に直交する仮想線(K)が、前記第二直進経路に交差する位置を、前記第二直進経路における前記植付開始位置(Lp)に設定する。
【0008】
前記植付作業機を昇降する昇降手段(25)を備え、前記制御手段は、前記植付自動制御の実行時、前記植付クラッチを切断すると共に前記植付作業機を上昇させ、上昇させた前記植付作業機を前記走行機体が下降開始位置(Ld)に到達したときに下降開始するように前記昇降手段を制御することが可能であり、前記制御手段は、前記第二直進経路における前記植付開始位置から前記昇降手段により前記植付作業機を下降させるのに要する距離だけ手前の位置に、前記第一直進経路と前記第二直進経路との間での旋回における前記下降開始位置を設定する。
【0009】
前記旋回操作手段は、旋回方向を選択する左右一対の選択スイッチ(72、73)である。
【0010】
前記走行機体は、前記選択スイッチが押下されている間、前記所定の操舵角で旋回される。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によると、オペレータによる旋回操作手段の操作に応じて走行機体が自動旋回する場合に、GPS装置により検出される旋回操作手段が操作された時点の走行位置に基づいて、第二直進経路における植付開始位置を設定し、走行機体の旋回終了後、設定した植付開始位置で植付クラッチが接続されて第二直進経路に沿う直進制御に移行される。これにより、オペレータは枕地で移植機を旋回操作した場合に、現工程の植え付け終わりの位置に、次工程の植え付け始めの位置をあわせて、植え付けを開始することが容易にできる。
【0013】
請求項2に係る本発明によると、GPS装置により検出される旋回操作手段が操作された時点の走行位置に基づいて、第二直進経路における植付開始位置を容易に設定することができる。
【0014】
請求項3に係る本発明によると、植付作業機を下降させた状態で、設定した植付開始位置で植付クラッチが接続されることから、現工程の植え付け終わりの位置に、次工程の植え付け始めの位置が適切にあわせられる。
【0015】
請求項4に係る本発明によると、オペレータは選択スイッチを操作するだけで左右の所望の旋回方向に、走行機体を自動旋回させることができる。
【0016】
請求項5に係る本発明によると、オペレータは走行機体の旋回開始と旋回停止とを、選択スイッチを押下し続けるか、選択スイッチの押下をやめるかといった簡単な操作で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】(a)ステアリングハンドルの近傍を示す斜視図、(b)操作パネルを示す正面図。
【
図5】ティーチング制御による植付開始位置の設定について説明するための図。
【
図12】本実施形態における植付開始位置と下降開始位置の設定について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に沿って、本実施形態の移植機について説明する。
図1、
図2に示すように、移植機としての乗用田植機Pは、走行装置としての一対の前輪9及び一対の後輪10により支持される走行機体1を有しており、走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付作業機3が連結されている。走行機体1と植付作業機3との間には、リフトシリンダ4が介設されており、リフトシリンダ4の油圧伸縮動作に応じて植付作業機3が昇降される。
【0019】
植付作業機3は、マット苗が載置される苗載台5、苗載台5から苗を掻取って圃場に植付ける植付機構6、圃場面を滑降するフロート7などを備えて構成されており、走行機体1から供給される植付動力で植付作業を行う。走行機体1の前部には、エンジン(図示せず)やトランスミッションが搭載されている。トランスミッションは、植付クラッチ8を有している。エンジンが出力する動力は、トランスミッションで変速されて前輪9及び後輪10に伝動されることに加えて、植付クラッチ8を介して植付作業機3にも伝達される。
【0020】
植付クラッチ8は、エンジンからの動力が植付作業機3へ供給されない切断状態と、エンジンからの動力が植付作業機3へ供給される接続状態とに切替えられて、植付作業機3に対する植付動力の伝達が断接される。なお、植付クラッチ8を切断状態から接続状態へ切替えることを植付クラッチ8の接続と呼び、植付クラッチ8を接続状態から切断状態へ切替えることを植付クラッチ8の切断と呼ぶ。
【0021】
走行機体1には、作業者(オペレータ)が乗車して操作する運転部17が配置されており、運転部17には運転席19及び操向装置20が配置されている。操向装置20は、操作手段としてのステアリングハンドル20a、ステアリングコラム20b、操作レバーやタイロッド(不図示)、及びステアリングコラム20bを軸方向を中心に回転させるステアリングモータ60(
図6参照)を有し、オペレータによるステアリングハンドル20aの回転操作またはステアリングモータ60の駆動によりステアリングコラム20bが軸方向を中心に回転し、タイロッドを介して前輪9が操向されて、走行機体1の走行方向が変わる。植付作業機3の左右には使用位置及び格納位置に移動自在に線引きマーカ21が配置され、また走行機体1と植付作業機3の間には整地装置22が配置されている。
【0022】
走行機体1には、植付作業機3の昇降制御を行う油圧コントロール機構25が設けられている。
図3に、昇降手段としての油圧コントロール機構25を示す。
図3に示す油圧コントロール機構25は、植付クラッチ8やリフトシリンダ4(
図1参照)の油圧制御バルブ(不図示)に連繋される作業機操作カム31、回動ピン33を中心に揺動し植付クラッチ8を断接するクラッチアーム35、作業機操作カム31の回動に伴い開閉する油圧コントロールバルブ29、及び作業機操作カム31の回転軸と同軸上に固定されて作業機操作カム31の回動位置を検出する作業機操作カムポテンショ32を備えている。
【0023】
作業機操作カム31は、作業機操作カムモータ30の駆動に基づいて、「上昇」、「固定」、「自動(下降)」、「植付」の各ポジションに回動操作され、各ポジションが作業機操作カムポテンショ32によって検出される。作業機操作カム31の回動に伴い油圧コントロールバルブ29が開閉されると、トランスミッションに設けられた油圧ポンプ(図示せず)の油圧が開放又は遮断され、これに応じてリフトシリンダ4が伸縮して植付作業機3(
図1参照)を昇降させる。作業機操作カム31は、「上昇」ポジションでは植付作業機3を上昇させ、「固定」ポジションでは植付作業機3を任意の高さで固定し、「自動(下降)」ポジションでは植付作業機3をフロート7(
図1参照)が接地するまで下降させる。なお、「自動(下降)」及び「植付」ポジションでは、フロート7による対地高さ検出に基づいた機械的な自動昇降制御が実行される。
【0024】
クラッチアーム35は、上端が作業機操作カム31の外周に追従し、作業機操作カム31の回動に伴って前後方向に揺動する。クラッチアーム35の揺動に伴い、作業機操作カム31が「上昇」、「固定」及び「下降(自動)」の各ポジションに位置している場合は、植付クラッチ8が切断状態となり植付機構6(
図1参照)は作動しない。他方、作業機操作カム31が「植付」ポジションに位置している場合は、植付クラッチ8が接続状態となり植付機構6は作動し得る。
【0025】
また、走行機体1には、
図1に示すように、上方に延びるアンテナステー41が設けられており、このアンテナステー41にはGPS(位置情報計測システム)受信機42が設置されている。GPS装置としてのGPS受信機42は走行機体1の幅方向に所定間隔を空けて2個配置され、これら2個のGPS受信機42がGPS衛星から受信した電波信号に基づいて、乗用田植機P(走行機体1)の走行位置が検出される。なお、2個のGPS受信機42を結んだ直線に直交する直線方向を前後方向とし、この前後方向に対して左右のGPS受信機42が左右何れにあるかにより、乗用田植機Pの走行方向が特定される。
【0026】
図示を省略したが、運転部17に設けられる操作レバーは上下方向及び左右方向に揺動操作可能に構成されており、また付勢部材等によって中立位置に付勢されることで、上下方向又は左右方向に揺動操作された後は中立位置に復帰するように設けられている。そして、操向装置20には操作レバーによる操作を、植付作業機3の上昇/下降に設定する上側/下側スイッチと、植付クラッチ8の断接に設定するスイッチと、マーカ21の姿勢切換に設定するスイッチなどが設けられている。これらのスイッチを操作することにより、オペレータは、操作レバーの上方揺動操作によって植付作業機3の上昇や植付クラッチ8の切断を操作でき、下方揺動操作によって植付作業機3の下降や植付クラッチ8の接続を操作できる。また、オペレータは、操作レバーの左右揺動操作によってマーカ21の姿勢切換を操作できる。
【0027】
運転部17にはさらに、上述したステアリングハンドル20aやステアリングコラム20b、図示を省略した操作レバーなどの他、
図4(a)に示すように、操作パネル70が設けられている。操作パネル70は、オペレータが見やすく操作しやすいように、左右方向に展開されたパネル状に形成されて、ステアリングハンドル20aの近傍に配置されている。
【0028】
図4(b)に示すように、操作パネル70において左右一端部側(
図4(b)では左側)には、オペレータが後述する自動直進制御の開始(ON)と停止(OFF)を指示するための自動操舵スイッチ71が設けられている。なお、自動操舵スイッチ71の近傍には、自動直進制御が実行中であることを報知する実行ランプや、自動直進制御が停止中であることを報知する停止ランプが設けられていてよい。
【0029】
操作パネル70において中央部側には、オペレータが後述するティーチング制御によって始点(A点)を登録するための始点登録スイッチ74と、終点(B点)を登録するための終点登録スイッチ75とが左右に並べて配置されている。ティーチング制御(直進経路設定制御)では、
図5に示すように、乗用田植機Pを実際に走行させて、植え付けを行う走行エリアZ(圃場)の情報を取得するとともに、上記の始点登録スイッチ74と終点登録スイッチ75のそれぞれの操作に応じて、それぞれ始点(A点)と終点(B点)とを登録する。そして、登録された始点(A点)と終点(B点)を結ぶ基準線(L0)に所定の間隔を空けて平行する複数の直進経路(L1、L2、・・・)が設定される。これら複数の直進経路(L1、L2、・・・)は、走行エリアZ内で乗用田植機Pを走行させるべき目標ラインとなる経路である。
【0030】
オペレータは、上記したティーチング制御を終えて、次行程となる作業目標経路(
図5の場合、L1)に乗用田植機Pが至ったときに、上記の自動操舵スイッチ71(
図4(b)参照)を「ON」にする。これにより、後述する自動直進制御が開始され、乗用田植機Pが順にティーチング制御によって予め設定された複数の直進経路(L1、L2、・・・)を順に、いずれか1つに沿って自律的に直進走行される。
【0031】
なお、操作パネル70において、上記した始点登録スイッチ74と終点登録スイッチ75の近傍には、始点報知ランプと終点報知ランプが設けられていてよい。始点報知ランプと終点報知ランプは、走行エリアZ内において始点(A点)と終点(B点)とが設定可能な状態で且つ各点が設定されていない場合には点滅し、各点の設定が終了している場合には点灯する。こうして、オペレータに始点と終点の設定状況が報知される。
【0032】
操作パネル70において左右他端部側(
図4(b)では右側)には、自動直進制御の開始に伴い、乗用田植機Pが上記のティーチング制御により設定された複数の直進経路(L1、L2、・・・)に沿って直進走行するように、ステアリングハンドル20aの追従性(応答性)を調整する追従性調整スイッチ76が設けられている。なお、追従性調整スイッチ76の近傍には、オペレータに対して追従性の程度(ランク)を報知する複数の追従性表示ランプが設けられていてよい。
【0033】
また、本実施形態の場合、
図4(b)に示すように、操作パネル70において自動操舵スイッチ71の近傍には、左旋回スイッチ72と右旋回スイッチ73とが左右に並べて配置されている。旋回操作手段としての左旋回スイッチ72と右旋回スイッチ73とは、オペレータがステアリングハンドル20aを操作せずとも、乗用田植機Pを選択した旋回方向に旋回させることが可能な左右一対の選択スイッチである。即ち、左旋回スイッチ72は、ステアリングモータ60を駆動してステアリングコラム20bを軸方向を中心に、前輪9が最大切れ角(所定の操舵角)となるまで左回転させて、走行機体1を自動的に左旋回させるためのスイッチである。右旋回スイッチ73は、ステアリングモータ60を駆動してステアリングコラム20bを軸方向を中心に、前輪9が最大切れ角(所定の操舵角)となるまで右回転させて、走行機体1を自動的に右旋回させるためのスイッチである。
【0034】
なお、これら左旋回スイッチ72と右旋回スイッチ73は、オペレータによる1回の押下操作ごとに、自動旋回開始(ON)と自動旋回終了(OFF)とを切り替えできるスイッチであってよい。あるいは、オペレータにより押下されている間は自動旋回を行い(ON)、オペレータによる押下が解除されると自動旋回を終了(OFF)するスイッチであってもよい。
【0035】
<ブロック図>
さらに、走行機体1には、乗用田植機Pの各部を制御する制御手段としての制御部50が設けられている。
図6は、制御部50を示す制御ブロック図である。
図6に示すように、制御部50の入力側には、植付クラッチ8(
図1参照)の接続を許可するON状態と植付クラッチ8の接続を規制するOFF状態とに切替える作業機準備スイッチ52、植付自動スイッチ54、操作レバー(不図示)の上げ操作により作動する作業機操作スイッチ(上側)51a、操作レバーの下げ操作により作動する作業機操作スイッチ(下側)51b、作業機操作カムポテンショ32、昇降リンク機構2(
図1参照)の角度により植付作業機3の昇降位置を検出するリフト角ポテンショ53、自動操舵スイッチ71、左旋回スイッチ72及び右旋回スイッチ73、始点登録スイッチ74及び終点登録スイッチ75、GPS受信機42が接続されている。
【0036】
制御部50は、作業機準備スイッチ52が入操作(ON操作)されると、植付作業機3を駆動可能な状態とする一方で、作業機準備スイッチ52が切操作(OFF操作)されると、植付作業機3の駆動を規制した状態とする。制御部50は、植付自動スイッチ54が入操作(ON操作)されると、自動的に乗用田植機Pを直進走行させて圃場における苗の植付作業を行う自動直進制御と共に、往復植えによる植付作業の1行程が完了して枕地における乗用田植機Pの旋回中に苗の植付作業を一時停止させる植付自動制御を実行可能な状態とする。また、制御部50は、植付自動スイッチ54が切操作(OFF操作)されると、植付自動制御の実行を規制する一方で、オペレータによる苗の植付作業に関する各種操作を実行可能な状態とする。
【0037】
本実施形態では、自動直進制御中に左旋回スイッチ72や右旋回スイッチ73がON操作された場合、制御部50は自動直進制御を一時的に停止し、その後に、左旋回スイッチ72や右旋回スイッチ73がOFF操作されると、自動直進制御を再開する。そして、左旋回スイッチ72や右旋回スイッチ73の操作による自動旋回中に、オペレータがステアリングハンドル20aを操作した場合、制御部50は自動旋回制御を強制的に終了し、オペレータによるステアリングハンドル20aの操作に応じて乗用田植機Pを走行させる。
【0038】
他方、制御部50の出力側には、植付作業機3の昇降を操作する作業機操作カムモータ30、ステアリングモータ60が接続されている。制御部50は、ステアリングモータ60を駆動することにより、オペレータによるステアリングハンドル20aの操作によらず、前輪9を操向可能である。
【0039】
<作業機制御処理>
次に、走行機体1が圃場端で旋回動作を繰返しながら圃場を往復走行して、植付作業機3により圃場へ苗を移植する植付作業を行う際に、制御部50が実行する作業機制御処理について、
図1乃至
図6を適宜に参照して
図7乃至
図12を用いて説明する。
【0040】
制御部50は、乗用田植機Pの主電源(図示せず)がON状態になると、
図7に示す作業機制御処理を実行する。
図7に示すように、作業機制御処理は、作業機操作制御処理(S1)、自動直進制御処理(S2)、自動旋回制御処理(S3)、植付自動制御処理(S4)を含み、乗用田植機Pの主電源がON状態に維持される限り、制御部50によって繰り返し実行される。なお、制御部50は作業機制御処理の実行中、GPS受信機42が受信した電波信号に基づいて、乗用田植機P(詳しくは走行機体1)の走行位置を検出している。
【0041】
<作業機操作処理>
作業機操作制御処理(
図7のS1参照)について、
図8を用いて説明する。
図8に示すように、まず、操作レバーの下側スイッチによる短時間(長押しでない)の信号があるか否か判定され(S11)、ある場合(S11のあり)、作業機準備スイッチ52のON、OFFが判定される(S12)。作業機準備スイッチ52がONの場合、作業機操作カムポテンショ32により作業機操作カム31のポジション(操作カムポジション)が上昇か否かを判定される(S13)。操作カムポジションが上昇以外の場合、同様に作業機操作カムポテンショ32により自動か自動以外かを判定され(S14)、更に自動以外の場合、固定か固定以外かを判定される(S15)。固定以外、即ち(植付)作業位置の場合、そのまま植付状態が継続され(リターン)、固定の場合、作業機操作カムモータ30を自動(下降)にセットして、植付作業機3は下降してフロート7が接地した自動位置となる(S16)。
【0042】
ステップS12にて、作業機準備スイッチ52がOFFの場合、操作カムポジションが上昇か否か判定され(S17)、上昇以外の場合、操作カムポジションが固定(位置)か否か判定され(S18)、固定にある場合、自動(下降)にセットされ、植付作業機3はフロート7が接地した自動(下降)状態となる(S19)。また、ステップS14にて、操作カムポジションが自動(下降)位置にある場合、リフト角ポテンショ53により植付作業機3が下降動作中か否かを判断され(S20)、下降動作中である場合(S20のNO)、植付クラッチ入待ち状態となり(S21)、停止状態であれば(YES)、作業機操作カム31が植付位置に設定されて植付作業が開始される(S22)。
【0043】
ステップS13、S17にて、植付作業機3が上昇にある場合、作業機操作カム31は固定にセットされて植付作業機3は固定状態となり(S23)、リターンされる。また、ステップS18にて、固定以外と判定された場合にもリターンされる。
【0044】
したがって、オペレータが操作レバーにより下側に短時間(1ショット)操作すると、作業機操作カム31は1段階下側、即ち上昇→固定、固定→自動(下降)、自動(下降)→植付に変更される(植付はそのまま維持)。
【0045】
ステップS11にて下側スイッチの操作がない場合(S11のなし)、操作レバーの上側スイッチの短時間操作があるか否か判定される(S24)。操作がない場合、上記ステップS21の植付クラッチ入待ち状態か否か判定され(S25)、入待ち状態であると(S25のYES)、リフト角ポテンショ53により作業機下降動作停止か否か判定される(S26)。停止中である場合(S26のYES)、ステップS22と同様に、作業機操作カム31が植付位置に設定されて植付作業が開始される(S27)。
【0046】
ステップS24にて上側操作の短時間操作がある場合、植付作業機3が上昇にあるか否か判定される(S28)。植付作業機3が上昇にある場合、そのまま継続されてリターンされる。植付作業機3が上昇以外の場合、操作カムポジションが固定(位置)か否かを検出し(S29)、固定にある場合には作業機操作カム31が上昇位置に設定される(S32)。固定以外である場合には、ステップS30に進む。
【0047】
ステップ30では、植付作業機3が自動(下降)か植付か判定され、自動(下降)である場合、リフト角ポテンショ53により作業機下降動作が停止状態か判定される(S31)。動作停止状態である場合(S31のYES)、作業機操作カム31は上昇位置に設定される(S32)。下降動作中である場合(S31のNO)、作業機操作カム31は固定位置に設定されて植付作業機3は固定状態となる(S33)。ステップ30で作業機操作カム31が植付位置にあると判定された場合、作業機操作カム31が自動(下降)になるようにセットされ、植付クラッチ8は切状態に切換えられる(S34)。
【0048】
<自動直進制御処理>
次に、自動直進制御処理(
図7のS2参照)について、
図9を用いて説明する。本実施形態の自動直進制御処理は、以下に説明するように、ティーチング制御を含む。
図9に示すように、まず、自動操舵スイッチ71がONであるか否か判定され(S41)、自動操舵スイッチ71がOFFであれば(S41のNO)、リターンする。自動操舵スイッチ71がONである場合(S41のYES)、乗用田植機Pが走行エリアZ内を自動直進中に終点登録スイッチ75が操作されたか否かを判定する(S42)。自動直進中に終点登録スイッチ75が操作されていない場合(S42のNO)、乗用田植機Pが走行エリアZ内を自動直進中に始点登録スイッチ74が操作されたか否かを判定する(S43)。
【0049】
自動直進中に始点登録スイッチ74が操作されていない場合(S43のNO)、旋回フラグがOFFか否かを判定する(S44)。旋回フラグは、左旋回スイッチ72や右旋回スイッチ73がON操作されて乗用田植機Pが自動旋回中である場合をONで示し、左旋回スイッチ72や右旋回スイッチ73がON操作されていない場合をOFFで示す。旋回フラグがOFFである場合、つまり乗用田植機Pが自動旋回しておらず直進走行している場合は(S44のYES)、目標ラインである複数の直進経路(L1、L2、・・・、
図5参照)が設定済みであれば(S48参照)、そのうちのいずれか1つに沿って走行機体1を自律的に直進走行させる直進制御を行うように、一方、複数の直進経路が設定済みでなければ、そのまま走行機体1を直進走行させるように、ステアリングモータ60を駆動する(S45)。他方、旋回フラグがONである場合、つまり乗用田植機Pが自動旋回している場合は(S44のNO)、そのまま旋回を続行させる。
【0050】
自動直進中に始点登録スイッチ74が操作された場合には(S43のYES)、始点登録スイッチ74が操作された時点における乗用田植機Pの走行位置を始点(A点、
図5参照)として登録する(S46)。
【0051】
自動直進中に終点登録スイッチ75が操作された場合には(S42のYES)、既に始点(A点)が登録済み(S46参照)であるか否かを判定し(S47)、未だ始点が登録済みでなければ(S47のNO)、リターンする。こうすることで、オペレータが始点登録スイッチ74の操作による始点(A点)の登録を先に行っていないと、終点登録スイッチ75の操作による終点(B点、
図5参照)の登録を行えないようにしている。既に始点が登録済みである場合には(S47のYES)、終点登録スイッチ75が操作された時点における乗用田植機Pの走行位置を終点(B点)として登録し、登録した始点(A点)と終点(B点)とに基づきこれらを通る直線の基準線(基準ライン)L0を決定し、基準線(L0)に平行する複数の直進経路(L1、L2、・・・)を、走行エリアZ内で乗用田植機Pを走行させるべき複数の目標(ターゲット)ラインとして設定する(S48)。
【0052】
<自動旋回制御処理>
次に、自動旋回制御処理(
図7のS3参照)について、
図10を用いて説明する。
図10に示すように、まず、自動操舵スイッチ71がONであるか否か判定され(S51)、自動操舵スイッチ71がOFFであれば(S51のNO)、リターンする。自動操舵スイッチ71がONである場合(S51のYES)、乗用田植機Pが走行エリアZ内を自動直進中に右旋回スイッチ73がON操作されたか否かを判定する(S52)。自動直進中に右旋回スイッチ73がON操作された場合(S52のYES)、ステアリングモータ60を駆動してステアリングコラム20bを軸方向を中心に、前輪9が最大切れ角(所定の操舵角)となるまで右回転させるように駆動して、走行機体1を自動的に右旋回させる(S61)。この際に、走行エリアZ内で乗用田植機Pを走行させるべき目標ラインを、走行中の第一直進経路(現ライン)に隣接する右隣の第二直進経路に設定することで(S62)、乗用田植機Pは第一直進経路から第二直進経路に向けて右に旋回される。そして、上述した旋回フラグがONに設定される(S63)。
【0053】
右旋回スイッチ73がON操作されていない場合には(S52のNO)、乗用田植機Pが走行エリアZ内を自動直進中に左旋回スイッチ72がON操作されたか否かを判定する(S53)。自動直進中に左旋回スイッチ72がON操作された場合(S53のYES)、ステアリングモータ60を駆動してステアリングコラム20bを軸方向を中心に、前輪9が最大切れ角(所定の操舵角)となるまで左回転させるように駆動して、走行機体1を自動的に左旋回させる(S59)。この際に、例えば
図5に示すように、走行エリアZ内で乗用田植機Pを走行させるべき目標ラインを、走行中の第一直進経路L1(現ライン)に隣接する左隣の第二直進経路L2に設定することで(S60)、乗用田植機Pは第一直進経路L1から第二直進経路L2に向けて左に旋回される。そして、上述した旋回フラグがONに設定される(S63)。こうして、左旋回スイッチ72や右旋回スイッチ73の操作に応じて、乗用田植機Pは自動旋回される。
【0054】
右旋回スイッチ73、左旋回スイッチ72がともにON操作されていない場合(S52とS53が共にNO)、上述した旋回フラグがONであるか否かを判定する(S54)。旋回フラグがONでない場合(S54のNO)、リターンする。旋回フラグがONである場合(S54のYES)、つまり左旋回スイッチ72や右旋回スイッチ73がON操作済みであり、既に乗用田植機Pが自動旋回中である場合には、オペレータによる人為的なステアリングハンドル20aの操作が行われたか否かを判定する(S55)。オペレータによりステアリングハンドル20aの操作が行われた場合には(S55のYES)、旋回フラグがOFFに設定される(S58)。即ち、この場合には、乗用田植機Pの自動旋回を強制的に終了し、オペレータによるステアリングハンドル20aの操作に応じて乗用田植機Pを走行させるようにする。
【0055】
オペレータによりステアリングハンドル20aの操作が行われていない場合には(S55のNO)、自動直進中の走行機体1の走行位置と目標ラインとの距離が所定値以内であるか否か(S56)、また自動直進中の走行機体1の走行方向と目標ラインの方向とが所定角以内であるか否か(S57)を判定する。走行機体1の走行位置と目標ラインとの距離が所定値以内であり(S56のYES)、且つ、走行機体1の走行方向と目標ラインの方向とが所定角以内である場合には(S57のYES)、乗用田植機Pが走行するべき目標ラインに沿って自動直進しているとして、旋回フラグがOFFに設定される(S58)。走行機体1の走行位置と目標ラインとの距離が所定値以内でない場合や(S56のNO)、走行機体1の走行方向と目標ラインの方向とが所定角以内でない場合には(S57のNO)、リターンする。
【0056】
<植付自動制御処理>
次に、植付自動制御処理(
図7のS4参照)について、
図11及び
図12を用いて説明する。なお、ここでは説明を理解しやすくするために、
図12に示すように、植付作業機3における苗の植付位置は乗用田植機Pの走行方向において最後端で行われるものとする。
【0057】
図11に示すように、まず、自動操舵スイッチ71がONであり、且つ、植付自動スイッチ54がONであるか否か判定される(S71)。自動操舵スイッチ71と植付自動スイッチ54の少なくともいずれかがOFFである場合には(S71のNO)、リターンされる。
【0058】
自動操舵スイッチ71がON、且つ、植付自動スイッチ54がONである場合には(S71のYES)、上述した旋回フラグがONであるか否か判定される(S72)。旋回フラグがOFFである場合には(S72のNO)、リターンされる。他方、旋回フラグがONである場合には(S72のYES)、前回の作業機制御処理終了時における旋回フラグ(区別するために、前回旋回フラグと呼ぶ)がOFFか否か判定される(S73)。旋回フラグが前回OFFから今回ONになった場合(S72がYES、S73がYES)、つまりは乗用田植機Pが走行エリアZ内を自動直進中に左旋回スイッチ72あるいは右旋回スイッチ73がON操作された場合には、作業機操作カム31の上昇位置への切換えにより植付作業機3が上昇され、植付自動フラグがONに設定される(S81)。この状態では、作業機操作カム31の上昇位置への切換えにより植付クラッチ8は切となって、圃場における苗の植付作業は一時停止される。
【0059】
上記「植付自動フラグ」は、植付自動制御が開始され実行中であることをONで示し、植付自動制御が解除されたことをOFFで示す。乗用田植機Pの主電源ONに伴う作業機制御処理の開始時(初期段階)には、植付自動フラグがOFFに設定されている。
【0060】
本実施形態では、左旋回スイッチ72あるいは右旋回スイッチ73がON操作された時点で、
図12に示すように、GPS受信機42が受信した電波信号に基づく乗用田植機P(詳しくは走行機体1)の走行位置(K1)が記憶される。そして、左旋回スイッチ72あるいは右旋回スイッチ73がON操作された時点の走行位置(K1)に基づいて、次工程の植付開始位置を設定する。具体的に、植付自動制御の実行時、左旋回スイッチ72あるいは右旋回スイッチ73がON操作された時点の走行位置(K1)を通る第一直進経路L1(植え付けを終了した現工程の直進経路)に直交する仮想線Kが、第二直進経路L2(植え付けを開始する次工程の直進経路)に交差する位置(Lp)を、次工程(第二直進経路L2)における植付開始位置に設定する。
【0061】
また、設定した次工程(第二直進経路L2)における植付開始位置(Lp)を基準に、次工程(第二直進経路L2)における植え付け開始のために前もって下降しておく植付作業機3の下降開始位置(Ld)を設定する。具体的に、第二直進経路L2における植付開始位置(Lp)から油圧コントロール機構25により植付作業機3を下降させるのに要する距離だけ手前の位置に、第一直進経路L1と第二直進経路L2との間での旋回における植付作業機3の下降開始位置(Ld)を設定する。ここで、植付開始位置(Lp)から植付作業機3を下降させるのに要する距離は、乗用田植機Pの車速と油圧コントロール機構25により植付作業機3を下降するのに係る時間との乗算により求めることができる。なお、油圧コントロール機構25による植付作業機3の昇降は、一定の速度で行われる。
【0062】
図11の説明に戻り、旋回フラグが前回ONで今回ONのままである場合(S72がYES、S73がNO)、つまりはON操作済みの左旋回スイッチ72あるいは右旋回スイッチ73が未だOFF操作されていない場合には、オペレータが操作レバー(作業機操作具)を操作したか否か判定される(S74)。オペレータが操作レバーを操作した場合には(S74のYES)、植付自動制御が解除(キャンセル)され、植付自動フラグがOFFに設定されて、上記ステップS81において設定した次工程(第二直進経路L2)における植付開始位置(Lp)と、植付作業機3の下降開始位置(Ld)はリセット(クリア)される(S80)。
【0063】
オペレータが操作レバーを操作していない場合には(S74のNO)、植付自動フラグがONであるか否か判定される(S75)。植付自動フラグがOFFである場合(S75のNO)、リターンされる。植付自動フラグがONである場合には(S75のYES)、乗用田植機Pが枕地で180度旋回して次工程の植付に移りつつある状態で、GPS受信機42により検出される乗用田植機Pの走行位置が、設定した次工程における植付開始位置(Lp)に達したか否かが判定される(S76)。
【0064】
乗用田植機Pの走行位置が次工程における植付開始位置(Lp)に達していない場合には(S76のNO)、乗用田植機Pの走行位置が設定した植付作業機3の下降開始位置(Ld)に達したか否かを判定する(S78)。乗用田植機Pの走行位置が設定した植付作業機3の下降開始位置(Ld)に達していない場合(S78のNO)、リターンする。乗用田植機Pの走行位置が設定した植付作業機3の下降開始位置(Ld)に達した場合(S78のYES)、作業機操作カム31が下降位置に切換えられ、植付作業機3はフロート7が接地するように下降され、植付作業機3の下降開始位置(Ld)はリセット(クリア)される(S79)。
【0065】
乗用田植機Pの走行位置が設定した次工程における植付開始位置(Lp)に達した場合には(S76のYES)、作業機操作カム31が植付位置に切換えられ(植付クラッチ8は接続状態となる)、植付自動フラグはOFFに設定され、次工程における植付開始位置(Lp)はリセット(クリア)される(S77)。即ち、枕地でのUターンが終了したものとして、植付作業機3が植付状態に切換えられて圃場における苗の植付作業が再開される。
【0066】
以上のように、本実施形態の乗用田植機Pは、オペレータによる左旋回スイッチ72や右旋回スイッチ73の操作に応じて、走行機体1が自動旋回される。その際に、GPS受信機42により検出される左旋回スイッチ72や右旋回スイッチ73が操作された時点の乗用田植機Pの走行位置(K1)に基づいて、次工程の第二直進経路(L2)における植付開始位置(Lp)を設定する。そして、走行機体1の旋回終了後、設定した植付開始位置(Lp)で植付クラッチ8が接続されて、第二直進経路L2に沿う直進制御に移行される。これにより、オペレータは枕地で乗用田植機Pを旋回操作した場合に、現工程の植え付け終わりの位置に、次工程の植え付け始めの位置をあわせて、植え付けを開始することが容易にできるようになる。
【0067】
なお、上述した実施形態では、前輪9及び後輪10に支持される走行機体1を備えた乗用田植機Pについて説明をしたが、これに限定されない。移植機は、走行装置としてのクローラに支持された走行機体1を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1・・・走行機体
3・・・植付作業機
8・・・植付クラッチ
9・・・走行装置(前輪)
10・・・走行装置(後輪)
25・・・昇降手段(油圧コントロール機構)
42・・・GPS装置(GPS受信機)
50・・・制御手段(制御部)
72・・・旋回操作手段(選択スイッチ、左旋回スイッチ)
73・・・旋回操作手段(選択スイッチ、右旋回スイッチ)
G2・・・植付開始位置
K・・・仮想線
K1・・・走行位置
L・・・直進経路
L1・・・第一直進経路
L2・・・第二直進経路
Ld・・・下降開始位置
Lp・・・植付開始位置
P・・・移植機(乗用田植機)