(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138316
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】超音波探傷装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20220915BHJP
G01N 29/28 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038127
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】505204114
【氏名又は名称】東芝検査ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591146893
【氏名又は名称】九州旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 大
(72)【発明者】
【氏名】佐田 康二
(72)【発明者】
【氏名】川羽田 剛
(72)【発明者】
【氏名】新井 良一
(72)【発明者】
【氏名】大倉 一範
(72)【発明者】
【氏名】田神 哲也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌史
(72)【発明者】
【氏名】猿木 雄三
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA06
2G047AC09
2G047BA03
2G047BC07
2G047CA01
2G047EA10
2G047GA05
2G047GB02
2G047GB17
2G047GB28
2G047GE01
2G047GE03
2G047GJ02
(57)【要約】
【課題】曲面や凹凸面を有する被検体を高精度で検査する超音波探傷装置を提供する。
【解決手段】超音波探傷装置10は、超音波の振動素子15を長手方向に配列させたプローブ16と、このプローブ16を収容した状態で液媒17を内部保持し被検体51に外周面が接触する筒状シート18と、フレーム25との固定端側のプローブ16に回転自在に軸承され筒状シート18の一端が固定される第1プレート21と、この第1プレート21の対向位置でフレーム25に回転自在に軸承され筒状シート18の他端が固定される第2プレート22と、フレーム25に対し回転自在に軸承され被検体51と接触し並進運動すると摩擦伝動により回転運動する転動体35と、この転動体の回転運動を第1プーリ31及び第2プーリ32に伝達する回転伝達部材36(36a,36b)とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の振動素子を長手方向に配列させたプローブと、
前記プローブを収容した状態で液媒を内部保持し、被検体に外周面が接触する筒状シートと、を備える超音波探傷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波探傷装置において、
前記プローブの一端が固定されるフレームと、
前記フレームとの固定端側の前記プローブに回転自在に軸承され、前記筒状シートの一端が固定される第1プレートと、
前記第1プレートの対向位置で前記フレームに回転自在に軸承され、前記筒状シートの他端が固定される第2プレートと、を備える超音波探傷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波探傷装置において、
前記第1プレートと同軸に設けられる第1プーリと、
前記第2プレートと同軸に設けられる第2プーリと、
前記フレームに対し回転自在に軸承され、前記被検体に接触し、並進運動すると摩擦伝動により回転運動する転動体と、
前記転動体の回転運動を前記第1プーリ及び前記第2プーリに伝達する回転伝達部材と、を備える超音波探傷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波探傷装置において、
前記第1プレートの外径は前記第2プレートの外径よりも大きく形成される超音波探傷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超音波探傷装置において、
前記被検体の両側面に接触しこの被検体を挟む位置に、二つで一組の前記筒状シートを配置する超音波探傷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波探傷装置において、
前記被検体の上側面に当接して、少なくとも前記プローブ及び筒状シートの重量を支持する支持車輪を備える超音波探傷装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波探傷装置において、
前記支持車輪が設けられるベース体に固定され、前記支持車輪の進行方向に沿う軸に対し回動自在に前記フレームを支持する支持部材を備える超音波探傷装置。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波探傷装置において、
前記ベース体に固定される前記支持部材の高さ位置を調節する高さ調節部材を備える超音波探傷装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の超音波探傷装置において、
筒状シートの外周面と前記被検体との接触位置に供給する水を収容するタンクを少なくとも載置する載置部と、
前記被検体の上側面に当接し前記載置部の重量を支持する台車輪と、
前記ベース体の周端部に当接し前記載置部の移動に伴って前記ベース体を移動させる当接部材と、を備える超音波探傷装置。
【請求項10】
請求項3から請求項9のいずれか1項に記載の超音波探傷装置において、
前記転動体の回転量を計測し、前記フレームの移動量を導くエンコーダを備える超音波探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波を用いて検査体の欠陥を非破壊検査する超音波探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探傷試験は、電気パルスを超音波の振動素子に入力し、金属材料等の被検体の表面や内部に、パルス状の超音波の機械的振動を伝播させる。そして、音響的に不連続な部分からの反射信号の強度及び伝播時間を測定し、被検体の表面及び内部に存在する欠陥の有無及びその形状等を検査する技術である。このように超音波探傷試験は、被検体の健全性を非破壊で評価する技術であり、様々な分野で利用されている。
【0003】
超音波探傷試験は、上述した計測原理に基づくため、振動素子を被検体の表面に密着させ、超音波を効率的に入射させる必要がある。そして、曲面や凹凸面を有する被検体の探傷試験をする場合は、超音波減衰の少ないハイドロゲル、ゴム、こんにゃく等の弾性媒質を媒介して、隙間ができないように振動素子を被検体の表面に当接させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開特開2015-108523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面の曲率や凹凸のレベルが大きな被検体の場合、上述した弾性媒質では、弾性変形の限界により、被検体の表面に密着できない領域の発生が懸念される。また曲面や凹凸面が広範に連続する被検体の場合、上述した弾性媒質は、被検体の表面を滑り続けることになる。この場合、弾性媒質にせん断応力や摩擦力が付与され続けるため、弾性媒質の劣化に伴い超音波探傷試験の精度の低下が懸念される。
【0006】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、曲面や凹凸面を有する被検体を高精度で検査する超音波探傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る超音波探傷装置において、超音波の振動素子を長手方向に配列させたプローブと、前記プローブを収容した状態で液媒を内部保持し、被検体に外周面が接触する筒状シートと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態により、曲面や凹凸面を有する被検体を高精度で検査する超音波探傷装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る超音波探傷装置の底面視による透視図。
【
図2】第1実施形態に係る超音波探傷装置の側面視による透視図。
【
図3】第2実施形態に係る超音波探傷装置の側面視による透視図。
【
図4】第2実施形態に係る超音波探傷装置のA-A断面図。
【
図5】第2実施形態に係る超音波探傷装置のB-B断面図。
【
図6】第2実施形態に係る超音波探傷装置のC-C断面図。
【
図7】(A)第2実施形態に係る超音波探傷装置のD-D断面図、(B)第2実施形態の変形例に係る超音波探傷装置のD-D断面図。
【
図8】(A)第3実施形態に係る超音波探傷装置の側面視による透視図、(B)第3実施形態においてフレームを上方変位させた図。
【
図9】第3実施形態においてフレームを回転変位させた図。
【
図10】第4実施形態に係る超音波探傷装置の側面視による透視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る超音波探傷装置10A(10)の底面視による透視図であり、
図2は側面視による透視図である。なお図面において、超音波探傷装置10の走行に伴い、並進運動のみする構成要素は斜線のハッチングがなされ、並進運動も伴う構成要素は白抜きで表されている。
【0011】
このように超音波探傷装置10は、超音波の振動素子15を長手方向に配列させたプローブ16と、このプローブ16を収容した状態で液媒17を内部保持し被検体51に外周面が接触する筒状シート18と、を備えている。
【0012】
さらに超音波探傷装置10は、プローブ16の一端が固定されるフレーム25と、このフレーム25との固定端側のプローブ16に回転自在に軸承され筒状シート18の一端が固定される第1プレート21と、この第1プレート21の対向位置でフレーム25に回転自在に軸承され筒状シート18の他端が固定される第2プレート22と、を備えている。
【0013】
さらに超音波探傷装置10は、第1プレート21と同軸に設けられる第1プーリ31と、第2プレート22と同軸に設けられる第2プーリ32と、フレーム25に対し回転自在に軸承され被検体51と接触し並進運動すると摩擦伝動により回転運動する転動体35と、この転動体の回転運動を第1プーリ31及び第2プーリ32に伝達する回転伝達部材36(36a,36b)と、を備えている。
【0014】
プローブ16は、フレーム25の内側に固定された固定端を有し、その先端は自由端となっている。そしてこのプローブ16の先端から所定の範囲に、複数の振動素子15がプローブ16の長手方向に配列されている。そしてこれら振動素子15は、フレーム25の平面と直交する方向に超音波が進行するようにプローブ16の表面に設けられている。
【0015】
このプローブ16は筒状シート18の内側に収容され、回転する筒状シート18の中心軸となる。また振動素子15が配列する部分のプローブ16は、第1プレート21の外径を超えない範囲で固定端の部分よりも太く形成され、振動素子15が被検体51の表面に近接するように構成される。
【0016】
振動素子15は、パルス状の電圧信号を入力すると励起して超音波を発振する。この超音波は、液媒17を伝播して被検体51に入射し、さらにこの被検体51の内部を伝播する。被検体51の内部を伝播する超音波は、その一部が欠陥53に反射し、逆ルートをたどって伝播して、振動素子15に入力する。このように入力した超音波のエコーは、振動素子15を励起して電圧信号を出力させる。そしてこのエコーの電圧信号の強度及び伝播時間等を解析することにより被検体51の内部における欠陥53の存在位置及び大きさの程度を知ることができる。
【0017】
筒状シート18は、液媒17を内部保持する中空形状を有し、さらに側周面が被検体51に接触したときにこの被検体51の表面形状に倣う充分な可撓性を有している。具体的にこの筒状シート18は、低弾性で伸長性の優れるシリコンゲル等が適用される。この筒状シート18の材質はとくに限定はなく、低応力にて高伸長率で弾性変形し、さらに持続的に応力が付加されてもクリープ変形しないものが適宜採用される。
【0018】
筒状シート18の両端は、切り落し形状を有し、それぞれ直径が同一な第1プレート21及び第2プレート22に固定されている。これら第1プレート21及び第2プレート22は、その外周に立設された側壁27の内周面とリング体28の外周面との間で、筒状シート18の縁端を挟み込むことにより、筒状シート18と水密に接続する。
【0019】
なお、第1プレート21及び第2プレート22と筒状シート18の両端との接続方法は特に限定はなく、液媒17を水密に保持することができれば適宜採用される。このように、液媒17を内部保持する筒状シート18は、被検体51の表面の曲面や凹凸面に合わせて密着することができるので、超音波探傷装置10は高精度で探傷試験を実施することができる。
【0020】
第1プレート21は、その中心を貫通するプローブ16に対し水密に回転するように、シール部材29が設けられている。このシール部材29としては、例えばOリングが挙げられる。第1プレート21には、筒状シート18が接続される面の反対面に、第1プーリ31が同軸に設けられている。この第1プーリ31は軸受11を介してプローブ16に回転自在に軸承されている。その結果、第1プレート21もプローブ16の固定端側において回転自在に軸承されている。なお第1プレート21には、筒状シート18の内部に液媒17を充填させるための注入管23及び空気抜き孔(図示略)が設けられている。
【0021】
第2プレート22には、筒状シート18が接続される面の反対面に、第2プーリ32が同軸に設けられている。この第2プーリ32は軸受12を介してフレーム25に回転自在に軸承されている。その結果、第2プレート22もフレーム25に回転自在に軸承されている。
【0022】
転動体35は、その回転対称軸に沿って回転軸37が貫通している。そして、この回転軸37の両端は、軸受38(38a,38b)を介してフレーム25に接続され、転動体35を回転自在に軸承している。さらにこの回転軸37は、回転伝達部材36aを介して第1プーリ31に連結する第3プーリ33、及び回転伝達部材36bを介して第2プーリ32に連結する第4プーリ34の各々の回転対称軸を貫通している。
【0023】
これにより転動体35が並進運動すると、接触する被検体51の表面からの摩擦伝動により、この転動体35が回転運動する。その結果、この転動体35の回転運動が、回転伝達部材36(36a,36b)を介して、第1プーリ31及び第2プーリ32に伝達される。
【0024】
これにより、第1プーリ31、第2プーリ32及び筒状シート18は、転動体35と同期して回転することになり、筒状シート18の側周面は、被検体51の表面を滑ることなく転がる。なお回転伝達部材36として、タイミングベルトを例示したが、歯車を採用することもできる。このように筒状シート18は、被検体51の表面を回転運動しながら並進運動するため、筒状シート18にせん断応力や摩擦力が付与されることがなく、筒状シート18の劣化が進みにくく安定した探傷試験を実施できる。
【0025】
さらに超音波探傷装置10は、転動体35の回転量を計測し、フレーム25の移動量を導くエンコーダ41を備えている。このエンコーダ41の回転軸に設けられたプーリ42は、転動体35の回転軸37に設けられたプーリ43に連結し、転動体35の並進運動による移動量に応じて回転する。これにより、エンコーダ41で計測された回転量から転動体35の回転量を導き、さらにフレーム25の移動量を導くことができる。
【0026】
第1実施形態の超音波探傷装置10Aは、フレーム25に設けられたハンドル26を作業員が把持して、被検体51の表面上を並進移動させる。これにより、転動体35が被検体51の表面に接触しながら転がる。すると、この転動体35に連動して筒状シート18も接触しながら転がる。このとき筒状シート18の側周面は、被検体51の表面の曲面又は凹凸面に密着するように弾性変形する。これにより振動素子15から発振した超音波は、液媒17を伝播した後に、空気層を介さず被検体51に入射される。これにより減衰が少ない状態で、超音波を被検体51中の欠陥53に到達させることができる。
【0027】
ところで、フレーム25の構造は、平面が四角形の枠体に天板を有するものが例示されている。しかし、フレーム25の形状に特に限定はなく、転動体35の回転軸37及び筒状シート18の両端を両側において支持できるものであれば適宜採用される。
【0028】
なお実施形態の変形例として、転動体35を省略した構成も考えられる。この場合、フレーム25に対し回転自在に軸承された筒状シート18は、被検体51に接触して並進運動すると、摩擦伝動により回転運動する。さらに、フレーム25に対して、第1プレート21及び第2プレート22を回転させず固定させた構成も考えられる。この場合、フレーム25に対し固定された筒状シート18は、被検体51に接触して並進運動すると、滑り運動する。
【0029】
(第2実施形態)
次に
図3から
図6を参照して本発明における第2実施形態について説明する。
図3は第2実施形態に係る超音波探傷装置10Bの側面視による透視図である。
図4は超音波探傷装置10B(
図3)のA-A断面図である。
図5は超音波探傷装置10B(
図3)のB-B断面図である。
図6は超音波探傷装置10B(
図3)のC-C断面図である。
図7(A)は超音波探傷装置10B(
図3)のD-D断面図であり、
図7(B)は第2実施形態の変形例に係る超音波探傷装置10BのD-D断面図である。なお、
図3から
図7において
図1及び
図2と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0030】
第2実施形態の超音波探傷装置10Bが試験対象にする被検体51は、例示する鉄道レールのヘッド部のように、凸状に突起して連続する側面を有するものである。重量物である車両が断続的に走行する鉄道レールは、経年使用により、車輪に接触するヘッド部の表面の摩耗が進行するとともに、このヘッド部の内部でき裂が進展し、破損のおそれがある。このため、簡単に、高精度で、効率的に広範囲の探傷評価の実施ができる超音波探傷装置10Bの製品化が求められている。
【0031】
図3に示すように超音波探傷装置10Bは、第1プレート21の外径が第2プレート22の外径よりも大きく形成されている。これにより、筒状シート18の外周面が接触する被検体51(鉄道レール)のヘッド側面に対し、筒状シート18を平行方向に挿入することができる。そして、側方に突起する被検体51(鉄道レール)のヘッド側面の両端の曲面も含めて筒状シート18の外周面を密着させることができる。
【0032】
また、筒状シート18は、無負荷の自然状態では、両端が同一外径の円筒形状であるため、小径の第2プレート22の外径は、この自然状態の筒状シート18の外径に合わせる。そして第2プレート22では、その側壁27の内周面とリング体28の外周面との間で、筒状シート18の縁端を挟み込むことにより、筒状シート18が水密に接続される。そして大径の第1プレート21では、筒状シート18の開口を押し広げ、その側壁27の外周面に被せる。そして側壁27の外周面に被された筒状シート18の縁端の外周をバンド39で締め込むことにより、第1プレート21と筒状シート18とが水密に接続される。
【0033】
さらに
図4に示されるように、二つで一組の筒状シート18(18a,18b)は、被検体51の両側面に接触し、この被検体51を挟む位置に配置されている。同様に
図5に示すように、それぞれの筒状シート18(18a,18b)に対応する転動体35(35a,35b)が、被検体51の両側面に接触し、この被検体51を挟む位置に配置されている。さらに
図6に示すように超音波探傷装置10Bは、被検体51の上側面に当接して、プローブ16、筒状シート18及びその他の構造物の重量を支持する支持車輪52を備えている。
【0034】
図3に戻って説明を続ける。第2実施形態においては、筒状シート18及び転動体35等を支持するフレーム25(25a,25b)の各々は、支持部材56(56a,56b)を介してベース体55に接続されている。このベース体55は、作業員が手押しするためのハンドル(図示略)が設けられ、支持車輪52を回転させながら被検体51の上面を移動する。
【0035】
また支持部材56(56a,56b)は、簡略化して図示されているが、ベース体55に対するフレーム25(25a,25b)の位置調整、フレーム25同士の間隔調整をする機構を有し、さらに被検体51の上方からフレーム25(25a,25b)をセットする際のアジャスト機構を有している。
【0036】
図4を参照して説明を続ける。第2実施形態においては、一方のフレーム25aには超音波発信専用の振動素子15aが装着され、他方のフレーム25bには超音波受信専用の振動素子15bが装着されている。このように、被検体51の片側面に置いた振動素子15aで発信した超音波を反対面に置いた振動素子15aで受信する透過法を採用している。この透過法によれば、被検体51の内部に存在する欠陥53により透過する超音波の強さが変わることにより、欠陥53の存在を知ることができる。なお、第2実施形態においても上述したエコー検出方式を採用することもできる。
【0037】
なお第2実施形態において、
図7(A)に示すように筒状シート18(18a,18b)及び転動体35(35a,35b)は、被検体51を上面視して、同じものが互いに正対する位置に配置されたものを例示している。他方において、変形例として
図7(B)に示すようにクロスする位置に配置される場合もあるし、被検体51の長手方向に沿ってずらした位置に配置される場合もある。なお
図7(B)に示すように、それぞれのプローブ16の角度を調整し、超音波の伝播経路に対し、振動素子15a及び振動素子15bの開口が直交するようにする。
【0038】
また第2実施形態において、鉄道レールを被検体51として適用しているがこれは例示であり、他のものを被検体51として適用することもできる。さらに二つで一組のフレーム25(25a,25b)が被検体51の両側を挟むように、支持車輪52を備えたベース体55に接続される形態を例示しているが、被検体51の片側のみに一つのフレーム25がベース体55に接続される形態も取り得る。
【0039】
(第3実施形態)
次に
図8及び
図9を参照して本発明における第3実施形態について説明する。
図8(A)は第3実施形態に係る超音波探傷装置10Cの側面視による透視図である。
図8(B)第3実施形態においてフレーム25を上方変位させた図である。
図9は第3実施形態においてフレーム25を回転変位させた図である。なお、
図8及び
図9において
図3から
図7と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0040】
図8に示すように第3実施形態の超音波探傷装置10Cにおけるフレーム25cは、回動軸57を介して支持部材56c(56)により回動自在に支持されている。この回動軸57は、支持車輪52の進行方向に沿うように設けられている。そして、支持部材56cは、高さ調節部材60を介してベース体55に固定されている。
【0041】
高さ調節部材60は、支持部材56cとベース体55との相対変位を上下方向のみに限定する案内部材61と、支持部材56cの一部に螺合するとともにベース体55の一部に回転自在に保持される螺子部材62と、この螺子部材62を回転操作し支持部材56cとベース体55との間隔を設定する操作手段63とから構成されている。この操作手段63を操作することにより、
図8(A)(B)に示すように、ベース体55に固定される支持部材56cの高さ位置を調節し、プローブ16で送受信される超音波が伝搬する被検体51の位置を変化させることができる。
【0042】
図9に示すように、被検体51の片側において摩滅が進行している場合は、フレーム25cが回動軸57を中心に傾斜することで、転動体35の被検体51への接触状態及び超音波の入射方向を最適化にすることができる。また図示を省略するが、このようにフレーム25cを傾斜させた状態で、さらに、プローブ16の長手方向の位置を調節し超音波の入射位置を最適化することができる。
【0043】
(第4実施形態)
次に
図10を参照して本発明における第4実施形態について説明する。
図10は第4実施形態に係る超音波探傷装置10Dの側面視による透視図である。なお、
図10において
図3から
図9と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0044】
第4実施形態の超音波探傷装置10Dは、第3実施形態の構成に加えてさらに、筒状シート18の外周面と被検体51との接触位置に供給する水を収容するタンク71を少なくとも載置する載置部72と、被検体51の上側面に当接し載置部72の重量を支持する台車輪65と、ベース体55の周端部58に当接し載置部72の移動に伴ってベース体55を移動させる当接部材66と、を備えている。
【0045】
タンク71は、ベース体55に設けられている給水ノズル67に、ホース(図示略)で繋がれている。そして、このホースを伝って供給された水は、給水ノズル67の先端から噴射され、筒状シート18の外周面と被検体51とが接触する界面を濡らす。これにより、界面における音響インピーダンスを低下させ、界面における反射を抑えて超音波を被検体51に効率的に入射させることができる。
【0046】
載置部72には、タンク71の他に、超音波の振動素子15に送受信される信号を処理する信号処理部75や、この処理された信号を可視化して表示するモニタ76等が載置されている。そして、載置部72に載置された重力物は、当接して摩擦回転する台車輪65を介して、被検体51の上側面に支持される。
【0047】
載置部72には、さらにハンドル77が設けられており、このハンドル77を検査者が水平方向に押すことで台車輪65が回転し、載置部72が被検体51に沿って並進移動する。すると載置部72に連結している当接部材66がベース体55の周端部58に当接し、載置部72に直接的又は間接的に連結している支持車輪52を摩擦回転させる。これにより、ハンドル77を押して載置部72を移動させ、これに伴ってベース体55に支持された超音波の振動素子15を被検体51に沿って移動させることができる。
【0048】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の超音波探傷装置によれば、振動素子を配列させたプローブを収容した状態で液媒を内部保持する筒状シートを持つことにより、曲面や凹凸面を有する被検体を高精度で検査することが可能となる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0050】
10(10A,10B)…超音波探傷装置、11…軸受、12…軸受、15(15a,15b)…振動素子、16…プローブ、17…液媒、18…筒状シート、21…第1プレート、22…第2プレート、23…注入管、25(25a,25b,25c)…フレーム、26…ハンドル、27…側壁、28…リング体、29…シール部材、31…第1プーリ、32…第2プーリ、33…第3プーリ、34…第4プーリ、35…転動体、36(36a,36b)…回転伝達部材、37…回転軸、38(38a,38b)…軸受、39…バンド、41…エンコーダ、42…プーリ、43…プーリ、51…被検体、52…支持車輪、53…欠陥、55…ベース体、56(56a,56b,56c)…支持部材、57…回動軸、58…周端部、60…高さ調節部材、61…案内部材、62…螺子部材、63…操作手段,65…台車輪、66…当接部材、67…給水ノズル、71…タンク、72…載置部、75…信号処理部、76…モニタ、77…ハンドル。