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特開2022-138328紫外線硬化型のメタリックインクを用いたインクジェット印刷方法、及び、そのような印刷方法による模様が形成されたスポーツ用品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138328
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】紫外線硬化型のメタリックインクを用いたインクジェット印刷方法、及び、そのような印刷方法による模様が形成されたスポーツ用品
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20220915BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41J2/01 129
B41J2/01 109
B41M5/00 120
B41M5/00 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038143
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(71)【出願人】
【識別番号】392007566
【氏名又は名称】ナトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】坂田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】原 勝巳
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB58
2C056EC69
2C056EE18
2C056FB02
2C056FB09
2C056HA44
2H186AA04
2H186AA17
2H186AB01
2H186AB08
2H186AB11
2H186AB23
2H186DA07
(57)【要約】
【課題】紫外線硬化型のメタリックインクを素材表面に印刷するに際し、光沢性が良好で、模様の輪郭部分をシャープに仕上げることができ、重量を増加させることのない印刷方法を提供する。
【解決手段】本発明は、紫外線硬化型のメタリックインクを用いてインクジェット印刷機で模様を素材表面3Aに印刷する印刷方法において、素材上に前記メタリックインクで模様の外枠10aを印刷する第1の印刷工程と、外枠10aが硬化した後、外枠の内側との間で0.01mm~1.0mmの隙間Gを持たせてメタリックインクで外枠内に印刷する第2の印刷工程と、を有し、第2の印刷工程では、印刷するメタリックインクが外枠10aにせき止められて外枠10aの高さ以下になるようにレベリングする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化型のメタリックインクを用いてインクジェット印刷機で模様を素材の表面に印刷する印刷方法において、
前記素材上に前記メタリックインクで模様の外枠を印刷する第1の印刷工程と、
前記外枠が硬化した後、外枠の内側との間で0.01mm~1.0mmの隙間を持たせて前記メタリックインクで外枠内に印刷する第2の印刷工程と、を有し、
前記第2の印刷工程では、印刷するメタリックインクが前記外枠にせき止められて外枠の高さ以下になるようにレベリングすることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記外枠の高さは、1μm~10000μmであることを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記第2の印刷工程において、インクジェット印刷機で吐出される前記メタリックインクは、濃度が30%以上となるように吐出制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記素材の表面は湾曲面であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記素材の表面は、研磨処理が施されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項6】
素材表面に、紫外線硬化型のメタリックインクで模様が形成されたスポーツ用品であって、
前記模様は、前記メタリックインクで形成された外枠と、前記外枠内において、前記メタリックインクが外枠の高さ以下にせき止められて形成された枠内模様部と、を有することを特徴とするスポーツ用品。
【請求項7】
前記素材は管状体であることを特徴とする請求項6に記載のスポーツ用品。
【請求項8】
前記素材の表面は、研磨処理が施されていることを特徴とする請求項6又は7に記載のスポーツ用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型のメタリックインクを用いてインクジェット印刷機で印刷する印刷方法、及び、そのような印刷方法によって模様が形成された各種のスポーツ用品(例えば、各種の釣具、ゴルフクラブ、ラケットなど)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種のスポーツ用品の表面に、文字、図形、図柄など(以下、模様と総称する)をインクジェット印刷で形成することが行われている。インクジェット印刷は、公知のように、インクジェット印刷機のノズルから吐出されるカラーインク(三原色及び黒色、白色)の各液滴を、ノズルに対して相対移動する印刷対象物(素材表面)に対して、密度が異なるように付着、定着させることでカラー模様を形成する。
【0003】
ところで、最近のスポーツ用品には、ゴールド色、シルバー色のように光輝性のあるメタリックインクを用いて模様を形成することが行なわれており、このようなメタリックインクとして、熱硬化型、或いは、紫外線硬化型が知られている。
熱硬化型のメタリックインクは、熱により硬化が進まないと安定しないため、連続で重ね塗りすることが難しいという性質がある。すなわち、熱硬化型のメタリックインクで重ね塗りをしようとすると、模様を印刷した後、一旦インクジェット印刷機から取り出し、乾燥炉等で硬化する必要があるため、同じ位置に重ね塗りすることは難しい。したがって、熱硬化型のメタリックインクによって形成される模様は、ある程度の肉厚を持たせることが難しく、立体感に欠けるという問題がある。一方、紫外線硬化型のメタリックインク(以下、UVメタリックインクとも称する)については、光を当てるとすぐに硬化するという性質があることから、連続で重ね塗りをすることによって厚みを持たせて立体感を出せると共に、光輝性に優れ(レベリングすることで更に光沢が出せる)、安定性が良いという利点がある。
【0004】
しかし、UVメタリックインクは、温度変化による粘度変化が大きいと共に、粘度も低く転移性が良い、という特徴がある。このため、インクジェット印刷機で印刷すると、UVメタリックインクの液滴が印刷対象物に着弾して面状に広がる時間があるため、エッジ部分でタレが生じ易いという問題がある。この場合、UVメタリックインクが着弾してすぐに硬化させる(光を照射する)と、着弾した状態のドットが残ってしまい、模様の外観が低下するとともに、表面の凹凸によって乱反射が生じ、光沢性が低下するという問題がある。すなわち、UVメタリックインクで光沢を発現させたい場合、着弾してから一定時間、硬化させないようにする必要があり、これにより、前記タレの問題が生じてしまう。特に、管状体のような湾曲面を有する基材表面にUVメタリックインクで印刷を行なうと、よりタレが生じ易く、エッジ部分がシャープにならないという問題が生じる(形成する装飾の輪郭がぼやけてしまう)。更に、研磨処理を施した基材表面に印刷すると、研磨した筋目に沿って滲みが発生するという問題があり、湾曲面では、上記したタレと共に滲みも発生してしまう。
【0005】
インクジェット印刷機を用いて印刷するに際し、タレや滲みを抑制する手法として、例えば、特許文献1には、まずは印刷像の外枠にインク受容層形成用のインクを印刷(外枠印刷;第1の印刷)し、次に、外枠に囲まれた内側領域、及び外枠上に、像形成用のインクを印刷(内側印刷;第2の印刷)することで、滲みの発生を少なくして画像濃度を高くする印刷方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-16533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のインクジェット印刷方法は、エッジ部分で滲みを低減できることが期待できるものの、UVメタリックインクについては考慮されていない。このようなインクジェット印刷方法でUVメタリックインクを用いたとしても、外枠上に第2の印刷を重ねることから、枠の外側にUVメタリックインクがはみ出てしまい(滲み出してしまい)、模様のエッジ部分がシャープにはならない。特に、管状体のような湾曲面に対して、そのような印刷を施すと、枠外にUVメタリックインクがタレ易く、外観も低下してしまう。また、外枠上に第2の印刷が重なってしまうことから、重なった部分の厚さが凸になってしまい、重ね部の塗料増加で印刷対象物の重量が増加してしまう。
【0008】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、インクジェット印刷機を用いて紫外線硬化型のメタリックインクを素材表面に印刷するに際し、光沢性が良好で、模様の輪郭部分をシャープに仕上げることができ、重量を増加させることのない印刷方法、及び、そのような印刷方法によって模様が形成された各種のスポーツ用品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明は、紫外線硬化型のメタリックインクを用いてインクジェット印刷機で模様を素材の表面に印刷する印刷方法において、前記素材上に前記メタリックインクで模様の外枠を印刷する第1の印刷工程と、前記外枠が硬化した後、外枠の内側との間で0.01mm~1.0mmの隙間を持たせて前記メタリックインクで外枠内に印刷する第2の印刷工程と、を有し、前記第2の印刷工程では、印刷するメタリックインクが前記外枠にせき止められて外枠の高さ以下になるようにレベリングすることを特徴とする。
【0010】
上記した構成の印刷方法では、最初に素材の表面に模様の外枠を印刷し、その外枠が硬化した後に、外枠の内側との間で0.01mm~1.0mmの隙間を持たせて外枠内に印刷し、外枠の高さ以下にレベリングすることから、外枠内に印刷されたメタリックインクは、外枠に重なることはなく、外枠から滲むこともない。すなわち、UVメタリックインクで形成される模様は、レベリングすることで光沢性の向上が図れると共に、エッジ部分では外枠によって切り立った状態にせき止められるため、シャープな輪郭となって立体感が得られるようになる。更に、外枠の高さ以下になるようにレベリングすることから、外枠上に印刷が重ならず、重量が増加することもない。
【0011】
なお、上記した構成において、レベリングは、インクジェット印刷機のノズルからメタリックインクが吐出された後、光を照射することなく一定時間をおくことで、メタリックインクが隙間を埋めるように流動し、表面が平坦化することで得られる。この場合、外枠にせき止められて外枠の高さ以下にレベリングするのに必要とされる時間(光を照射するまでの時間)については、外枠の高さ、使用するメタリックインクの粘度、ノズルから吐出する液滴の量、素材表面にドット状に付着する密度(インクの濃度)、その膜厚等によって、適宜、調整される。
【0012】
また、上記した目的を達成するために、本発明は、素材表面に、紫外線硬化型のメタリックインクで模様が形成されたスポーツ用品であって、前記模様は、前記メタリックインクで形成された外枠と、前記外枠内において、前記メタリックインクが外枠の高さ以下にせき止められて形成された枠内模様部と、を有することを特徴とする。
【0013】
このような模様を有するスポーツ用品は、紫外線硬化型のメタリックインクを用いるため、光沢性のある模様が得られる。また、その輪郭部分は、外枠によってシャープなエッジになることから立体感が得られると共に、エッジ部分では印刷が重ならないため、重量化することもない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インクジェット印刷機を用いて紫外線硬化型のメタリックインクを素材表面に印刷するに際し、光沢性が良好で、模様の輪郭部分をシャープに仕上げることができ、重量を増加させることのない印刷方法が得られる。また、本発明によれば、紫外線硬化型のメタリックインクによって、光沢性が良好で、模様の輪郭部分がシャープで重量が増加することのない模様が形成されたスポーツ用品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のスポーツ用品の一例である釣竿を示し、元竿杆に模様を形成した概略構成を示す図。
図2】レベリング処理工程の概略を示す図。
図3図1に示す模様部分のA-A線に沿った断面図であり、(a)~(c)は、素材の表面に模様を形成する工程を順に説明する概略図。
図4】外枠を形成することなく、平坦な表面に模様形成した例を示しており、下塗り塗装をして表面を平滑化した状態で印刷した模様を示す写真。
図5】外枠を形成することなく、平坦な表面に模様形成した例を示しており、研磨処理して表面に研磨筋が生じた状態で印刷した模様を示す拡大写真。
図6】素材表面を研磨処理した後、外枠を形成した状態を示した拡大写真。
図7図6に示した外枠に隙間を形成することなく、外枠内にUVメタリックインクを印刷すると共に、外枠上にも重ねて印刷した模様を示す拡大写真。
図8】本発明に係る印刷方法に基づく模様を示し、最初に外枠を形成し、外枠を硬化させた後、その内側に隙間を持たせて枠内模様部を形成した模様を示す拡大写真。
図9】(a)及び(b)は、それぞれ枠内模様部にクリア系のインクを被着した例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に係る印刷方法、及び、そのような印刷方法によって模様が形成されたスポーツ用品の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係るスポーツ用品の一例を示しており、元竿杆に本発明の印刷方法に従って模様を形成した釣竿を示す図である。
【0017】
図1に示される釣竿1は、例えば、振出式の釣竿であり、元竿杆3と、元竿杆3内に伸縮自在に収納可能な中竿杆5及び穂先竿杆7とを備えている(継合本数は任意)。元竿杆3には、公知のリールシート4が配設されており、ここに装着されるリールRから繰り出される釣糸は、各竿杆に設けられた釣糸ガイド8A~8Gに挿通される。
【0018】
各竿杆は、公知のように、繊維強化樹脂材(FRP;プリプレグシート)を巻回して形成されており、元竿杆3の表面(素材表面)には、文字、図形、図柄などで構成される模様10が印刷によって形成されている。この模様10は、インクジェット印刷機を用いて、UVメタリックインクを塗布することで形成されており、図面では、分かりやすいように、平行四辺形状の模様として示されている。この場合、模様については、各種の文字、図形、図柄、又は、これらの結合などで構成することができ、UVメタリックインクを用いることで連続した重ね塗りをすることが可能となり、より立体感のある模様を形成することが可能となる(熱硬化型のメタリックインクでは、塗布した後、熱硬化の過程が必要なため、連続して重ね塗りすることができない)。また、硬化したUVメタリックインク上にUV硬化クリア―(カラークリア―を含む)を積層することで、そのプリズム効果によって、より立体的にすることも可能である。
なお、元竿杆のような管状体にインクジェット印刷機で上記の模様を形成する場合、管状体の両端をチャックし、これを間欠回転しながら、インクジェット印刷機のヘッドを軸方向に走査し、表面に形成する模様形状に応じて、ノズルから吐出されるUVメタリックインクの液滴量、吐出位置、及び、紫外線硬化させるための光源の照射量、照射時間、照射までの時間等が制御される。
【0019】
インクジェット印刷を行なうインクジェット印刷機は、公知であるため図示しないが、UVメタリックインクの吐出ノズルを具備したキャリッジにより走査方向に往復動するヘッドと、キャリッジに搭載されるUV硬化用の光源とを備える。このようなインクジェット印刷機を用いた印刷工程では、吐出ノズルからUVメタリックインクが液滴状になって素材表面に吐出された後、付着したUVメタリックインクは前記光源によって硬化され、その状態で定着する。本発明では、UVメタリックインクを1色(例えば、シルバー系統の光輝色)で用いることから、印刷機のヘッド(吐出ノズル)は、ヘッドの走査と共に1色の吐出制御が成されるよう構成されている。
【0020】
この場合、吐出ノズルからのUVメタリックインクの吐出量を制御すれば、素材表面にドット状に付着する密度(インクの濃度)が変わり、輝度の度合いは変わる。すなわち、インクの濃度が高いと、レベリングした際に表面が平坦状になり易く、光輝性(光沢性)を発現することができ、インクの濃度が低いと、レベリングしても表面に凹凸が生じたり、素材表面に均一に被着しない等、乱反射する傾向となって光輝性が低下(光沢性が得られない)する。実際には、ある程度の光輝性が発現し、かつ、立体的な外観が得られるように、UVメタリックインクの濃度は30%以上にすることが好ましい。実際に、5%,10%の濃度でその模様を視認したところ、以下のようなレベリング処理をしても、光輝性が乏しいという結果が得られている(30%以上にすることで、レベリング処理をした際に平面状となって光輝性及び立体感が得られる)。また、レベリング処理する時間(UVメタリックインクが着弾してから広がり、光を照射して硬化させるまでの時間)を変えることで、模様の表面の光沢性を調整することができる。
【0021】
本発明では、インクジェット印刷機を用いてUVメタリックインクで上記した模様を形成するに際して、図2及び図3に示すような印刷手法が用いられる。
図2は、UVメタリックインクが素材表面3Aに付着した後のレベリング処理工程の概略を示す図、図3(a)~(c)は、図1に示す模様部分のA-A線に沿った断面図であり、素材表面3Aに模様を形成する工程を順に説明する概略図である。
【0022】
インクジェット印刷機を用いて、吐出ノズルからUVメタリックインク30の液滴30aを吐出すると、図2(a)に示すように、素材表面3A上に付着する。この場合、付着して直ちに光を照射すると、表面の凹凸状態31がそのまま硬化するため、硬化した後は表面部分で乱反射が起こってしまい、十分に鏡面性(光沢性のある外観)を発現することはできない。
【0023】
これに対し、液滴が素材表面3Aに着弾した後、一定時間をおくことで、UVメタリックインク30は粘度が低く転移性が良いため、図2(b)に示すように、素材表面3Aに沿って広がることができ、このように平坦状に広がった表面32に光を照射することで、光輝性を発現することが可能となる(光沢性が得られる)。すなわち、UVメタリックインクで光沢を出したい場合、素材表面3Aに液滴30aが着弾した後、一定の馴染ませる時間(レベリングする時間)が必要とされる。ただし、このようなレベリング処理を行なうと、エッジ部分が切り立たないことから、立体感が低下し易くなり、特に、湾曲面では、エッジ部分のシャープさに欠けてしまう可能性があるため、後述するように、最初に外枠を印刷する。
【0024】
次に、図3を参照して、図1に示すような模様10を形成する印刷方法について説明する。
最初に、素材表面3A上に、UVメタリックインクで模様の外枠10aを印刷する(第1の印刷工程;図3(a)参照)。この場合、素材表面3Aは、そのままFRP素材であっても良いし、塗装等を施し、表面を平滑状にしておいても良い。或いは、研磨処理することで、表面に研磨筋を形成しておいても良い。例えば、塗装して光沢のある黒色を付すことによって、シルバー等のUVメタリックインクの色を立体的に浮かび上があらせて外観の向上を図ることができる。また、表面を研磨処理することで、印刷されるUVメタリックインクのアンカー効果が高まり、密着強度が向上して剥離し難くすることもできる。特に、本実施形態のように、素材表面3Aが管状体による湾曲面であれば、素材表面3Aを研磨することによって、不純物を取り、かつ、アンカー効果を高めることができ、安定した模様を形成することが可能となる。
【0025】
外枠10aの印刷は、インクジェット印刷機の制御で、模様10のアウトラインを抽出し、模様全体を印刷する前に行なわれる。この外枠10aは、実際の模様10のエッジを規定しており、液滴を吐出した後、直ちに光を照射して硬化させる。この外枠10aの高さHは、模様10について立体感を生じさせるものであり、低すぎると、その枠内に形成される模様10の立体感が乏しくなることから、1μm以上にすることが好ましい。また、高さの上限については、模様の形態、対象物にもよるが、高くし過ぎると重量も増加することから、10000μm以下にすることが好ましい。この場合、吐出量や液滴の大きさを変えることで、外枠10aの高さHを調整することができ、外枠の高さHを高くしたい場合は、複数回、重ね塗りを行なっても良い。
【0026】
次に、外枠10aが硬化した後、外枠の内側との間で隙間Gを持たせて、外枠と同じUVメタリックインク30で外枠内を印刷して枠内模様部を形成する(第2の印刷工程;図3(b)参照)。前記隙間Gは、図2で示したように、レベリング処理するにあたり、着弾したUVメタリックインクが広がって表面が平坦化して外枠10aによってせき止められ、かつ、それを乗り越えない程度に形成される。この隙間Gについては、レベリングする時間(着弾してから光を照射する時間)、使用するUVメタリックインクの粘度、UVメタリックインクの印刷時における膜厚H1、最終的な模様10の膜厚H1´等、に応じて調整されるが、0.01mm~1.0mmあれば良い。
【0027】
具体的には、印刷するUVメタリックインクの粘度が、5mPa・s~20mPa・sであるとして、これをヘッドのノズルから13plの液滴で吐出すると、着弾した後の液滴の直径は60μm程度となり、これが硬化前に広がる(レベリングがなされる)ようになる。レベリング処理する時間(印刷してから光を照射するまでの時間)は、処理速度等を考慮して、1s~60sの範囲内に設定され、前記隙間Gの量については、レベリング処理するに際して、印刷したUVメタリックインクが外枠10aにせき止められて乗り越えないように(外枠に重なることなく、H1´≦Hとなるように)印刷制御される。
【0028】
例えば、粘度が低いUVメタリックインクで膜厚が厚い印刷をするのであれば、レベリング処理時にUVメタリックインクが広がりやすいことから、隙間Gを大きく設定したり、外枠10aを高く設定するのが良い。或いは、粘度が高いUVメタリックインクで膜厚が薄い印刷をするのであれば、レベリング処理時にUVメタリックインクが広がり難いことから、隙間Gを小さく設定したり、外枠10aを低く設定するのが良い。また、印刷時におけるUVメタリックインクの膜厚H1は、レベリング処理すると、広がって最終的な膜厚H1´は、H1よりも低くなる(H1´<H1)ため、その広がり具合を考慮して、隙間Gの大きさ、外枠10aの高さ、及び、膜厚H1を設定すれば良い。
【0029】
実際に、印刷するUVメタリックインクの粘度が5mPa・s~20mPa・sで、ヘッドのノズルから1~100plの液滴で塗布し、その膜厚H1を1μm~500μmにするのであれば、外枠10aの高さHは、1μm~500μm程度、隙間Gは、0.01mm~1mm程度、そして、光を照射するまでの時間を調整することで、印刷される模様10は、隙間Gを埋めた状態で外枠10aを乗り越えることなく(せき止められて)レベリングされ、光沢性及び立体感のある模様を得ることが可能である。
【0030】
上記したUVメタリックインクを用いた印刷方法によれば、模様10のエッジが外枠10aでせき止められて規定され、外枠上に印刷が重ならないため、重量が増加することがなく、輪郭部分が同一色でありながらシャープになり、立体的で光沢性のある模様が容易に得られるようになる。また、素材表面に研磨処理を施しても、第2の印刷工程のUVメタリックインクは外枠10aでせき止められるため、エッジ部分で滲みが生じることもない。また、本実施形態のように、管状体のような表面が湾曲面を有するスポーツ用品であっても、印刷時に液ダレすることが外枠10aでせき止められるため、輪郭部分の外観が低下するようなこともない。
【0031】
ここで、上記した印刷方法を用いた場合と、そのような印刷方法を用いることなく同様な模様を形成した場合について、図4から図8の拡大写真(50倍に拡大)を参照して説明する。
【0032】
図4及び図5は、共に外枠を形成することなく、上記した模様10を平坦な表面に形成した例を示しており、図4は、下塗り塗装をして素材表面を平滑化した状態で印刷した模様、図5は、研磨処理して表面に研磨筋が生じた状態で印刷した模様を示す。
【0033】
素材表面を平滑化することで(図4)、UVメタリックインクが図5で示すように、表面の研磨筋に沿って滲むことがないため、エッジ部分で滲みが生じることはないが、表面が湾曲面になると、エッジ部分でタレが生じて輪郭部分の見栄えが低下することが予測できる。また、素材表面を平滑化すると、UVメタリックインクのアンカー効果がないため、密着強度が弱く剥離し易いという問題がある。一方、表面を研磨処理すると、アンカー効果は得られるものの、図5の写真で示すように、研磨筋に沿ってUVメタリックインクが滲み出てしまい、エッジ部分がシャープにならず、輪郭部分の見栄えが低下してしまう。
【0034】
図6は、素材表面を研磨処理した後、外枠を形成した状態を示しており、図7は、この状態で上記したような隙間Gを形成することなく、外枠内にUVメタリックインクを印刷して形成した模様を示している。このように外枠に対して隙間なく印刷をすると、レベリング処理時に、外枠にUVメタリックインクが重なって重量が増加すると共に、エッジ部分で外枠を乗り越えてしまい、これが外枠外方にタレたり滲むことがある。すなわち、隙間Gを有するように印刷制御しないと、模様の重量が増加すると共に、エッジ部分がシャープにならず、輪郭部分の見栄えが低下してしまう可能性がある。
【0035】
図8は、本発明に係る印刷方法によって形成した模様を示しており、素材表面を研磨処理して外枠を印刷し、外枠を硬化させた後、その内側に隙間を持たせて枠内模様部を形成したものである。吐出するUVメタリックインクは、粘度が6.5mPa・sのものを用い、ヘッドのノズルから13plの液滴で塗布して最初に形成する外枠の高さを20μm、前記隙間を0.1mmに設定し、枠内に20μmの膜厚で枠内模様部をインク濃度が30%で印刷した後、レベリングの時間を20sに設定している。この状態で印刷すると、枠内模様部の高さは、外枠の高さ(20μm)以下となり、外枠からはみ出たり滲み出ることが抑制され、エッジ部分をシャープに仕上げることが可能となる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
例えば、枠内模様部については、インクジェット印刷機によって、UVメタリックインクに重ね塗りして厚みを持たせても良い。この場合、重ね塗りするインクは、例えば、紫外線硬化型のクリア系(カラークリアであっても良い)のインクにすることで、プリズム効果によって立体感を高めることが可能となる。或いは、UVメタリックインクやUVインクを重ね塗りしても良い。
【0037】
なお、上記したように、枠内模様部にクリア系のインク40で重ね塗りする場合、図9(a)に示すように、外枠10aからはみ出さないように印刷することが好ましい(枠体よりも高くなるように印刷しても良い)。或いは、図9(b)に示すように、外枠10aに乗るように印刷しても良く、これにより、プリズム効果によって、より立体感のある模様を得ることが可能となる。
【0038】
また、例えば、素材表面(下地層)は、素材そのもので構成しても良いし、素材の表面に、印刷、塗装、メッキなどの表面処理によって、各種の色彩模様(複数色や透明も含む)等を形成したものであっても良い。また、表面研磨についても、方向性を持たせて研磨筋を形成したり、ランダムな凹凸で研磨筋を形成したものであっても良い。
【0039】
また、素材としては、本実施形態のように、強化材として各種の繊維材料を合成樹脂に混入した繊維強化樹脂材(複合材)以外にも、例えば、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、アクリル樹脂などの合成樹脂、ステンレス、アルミニウム、黄銅、真鍮等の金属、無機物であるセラミック、陶器、ガラス等も採用することができる。また、模様については、外枠で囲んだ状態で、その内側に印刷できれば、その形態については限定されることはない。また、UVメタリック以外の紫外線硬化型のインクを用いて、上記したような印刷手法によって模様を形成しても良い。この場合、外枠10aの高さHを高く設定しておけば良い。更に、本発明に係るスポーツ用品は、各種の釣具(釣竿、リール、仕掛け、小物用品等)やゴルフクラブ、テニスラケットなどに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 釣竿(スポーツ用品)
3A 素材表面
10 模様
10a 外枠
30 UVメタリックインク
30a 液滴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9