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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138341
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】磁性ペースト
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20220915BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20220915BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20220915BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/01
H01F27/255
H01F41/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038169
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】冨田 秀司
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CD002
4J002CD012
4J002CD031
4J002CD051
4J002DC007
4J002DK008
4J002EL026
4J002EL138
4J002ET008
4J002EU110
4J002FD142
4J002FD148
4J002FD150
4J002FD207
4J002GR02
(57)【要約】
【課題】 注型可能な流動性を有しながら、磁性粒子の沈降が抑制され、加熱硬化後も軟磁性粉末が上層まで充填された磁性硬化物を与える磁性ペーストを提供すること。
【解決手段】 芳香環を有するエポキシ樹脂(A)、エポキシ化合物(B)、軟磁性粉末(C)、および硬化剤(D)を含有する磁性ペーストであって、前記(A)成分、(B)成分および(D)成分の25℃における粘度の関係が、(A)>(B)および(D)であり、前記軟磁性粉末(C)の含有量が、磁性ペースト全体の90~96質量%であり、前記(A)~(D)成分のみからなる混合物の25℃における粘度が、B型粘度計を用い、ロータNo.4、回転数0.6rpmにて測定開始から5秒後の粘度で100~1000Pa・sである磁性ペースト。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環を有するエポキシ樹脂(A)、エポキシ化合物(B)、軟磁性粉末(C)、および硬化剤(D)を含有する磁性ペーストであって、
前記(A)成分、(B)成分および(D)成分の25℃における粘度の関係が、(A)>(B)および(D)であり、
前記軟磁性粉末(C)の含有量が、磁性ペースト全体の90~96質量%であり、
前記(A)~(D)成分のみからなる混合物の25℃における粘度が、B型粘度計を用い、ロータNo.4、回転数0.6rpmにて測定開始から5秒後の粘度で100~1000Pa・sであることを特徴とする磁性ペースト。
【請求項2】
前記(A)~(D)成分のみからなる混合物が、B型粘度計を用い、100℃で、ロータNo.3、回転数0.6rpmにて測定開始から5秒後の粘度(V1)と、そこから1分間ロータを回転させ続けた後の粘度(V2)の比(V1/V2)で表されるチキソトロピーインデックス(TI値)が、1.0以上である請求項1記載の磁性ペースト。
【請求項3】
溶剤を含まない請求項1または2記載の磁性ペースト。
【請求項4】
前記エポキシ化合物(B)が、芳香環を有しないエポキシ化合物である請求項1~3のいずれか1項記載の磁性ペースト。
【請求項5】
前記エポキシ化合物(B)が、下記式(1)または(2)で表される請求項4記載の磁性ペースト。
【化1】
(式中、R1は、環状構造を含まない1価の有機基を表し、R2は、環状構造を含まない2価の有機基を表す。)
【請求項6】
前記エポキシ樹脂(A)が、25℃で液状であり、かつ、その含有量が、前記(A)成分、(B)成分および(D)成分の合計質量の25質量%以上である請求項1~5のいずれか1項記載の磁性ペースト。
【請求項7】
前記エポキシ化合物(B)の25℃における粘度が、300mPa・s以下である請求項1~6のいずれか1項記載の磁性ペースト。
【請求項8】
前記硬化剤(D)が、25℃における粘度110mPa・s以下の酸無水物である請求項1~7のいずれか1項記載の磁性ペースト。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の磁性ペーストから得られる磁性硬化物。
【請求項10】
その内部にコイルが配設されたケースと、このケース内に前記コイルを覆う態様で充填された請求項9記載の磁性硬化物とを備える磁性コア。
【請求項11】
表層に占める前記軟磁性粉末(C)の充填割合が、83質量%以上である請求項10記載の磁性コア。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項記載の磁性ペーストを、その内部にコイルが配設されているケースに注入し、硬化させる磁性コアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の電動化に伴って磁性コアが車載されることが多くなり、その信頼性に対する要求がますます高まっている。特に、車載用の磁性コアには、従来よりも高い耐冷熱衝撃性等が求められるようになってきている。
磁性コアのコア部は、フィラーとして軟磁性粉末を含む樹脂成形材料により形成することが一般的であるが、成形材料中に軟磁性粉末を高充填し、かつ、磁性粉が高充填された材料に流動性を持たせるため、従来種々の試みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、磁性粒子を特定のシリコーン化合物で被覆することで、高い充填率と、高い流動性とを両立し得ることが開示されている。
また、特許文献2には、磁性粉とともに所定の平均粒径のフィラーを用いることで、適度な粘度を有し、樹脂垂れが抑制された磁性ペーストが得られることが開示されている。
その他、溶剤の添加や、低粘度樹脂を用いることによる改良も種々検討されている。
【0004】
しかし、材料全体の粘度や樹脂の粘度を下げると軟磁性粉末の沈降が起こり易く、その結果、得られた成形物は、加熱・冷却が繰り返される環境下でクラックが発生する要因となる。
つまり、軟磁性粒子の沈降度合いによって成形物の上下で組成が大きく異なってしまうと、軟磁性粉末と樹脂の線膨張係数の違いから、冷熱衝撃によってクラックが発生する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-114939号公報
【特許文献2】国際公開第2020/105704号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、注型可能な流動性を有しながら、磁性粒子の沈降が抑制され、加熱硬化後も軟磁性粉末が上層まで充填された加熱・冷却が繰り返される環境下においてもクラックが発生しにくい磁性硬化物が得られる磁性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定のエポキシ樹脂を組み合わせて用いるとともに、エポキシ樹脂、硬化剤および軟磁性粉末からなる混合物の粘度が所定範囲を満たす磁性ペーストが、軟磁性粉末の含有量が比較的多いにもかかわらず、注型可能な流動性を有しながら、磁性粒子の沈降が抑制され、加熱硬化後も軟磁性粉末が上層まで充填され、クラックの発生が抑制された磁性硬化物を与えることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. 芳香環を有するエポキシ樹脂(A)、エポキシ化合物(B)、軟磁性粉末(C)、および硬化剤(D)を含有する磁性ペーストであって、
前記(A)成分、(B)成分および(D)成分の25℃における粘度の関係が、(A)>(B)および(D)であり、
前記軟磁性粉末(C)の含有量が、磁性ペースト全体の90~96質量%であり、
前記(A)~(D)成分のみからなる混合物の25℃における粘度が、B型粘度計を用い、ロータNo.4、回転数0.6rpmにて測定開始から5秒後の粘度で100~1000Pa・sであることを特徴とする磁性ペースト、
2. 前記(A)~(D)成分のみからなる混合物が、B型粘度計を用い、100℃で、ロータNo.3、回転数0.6rpmにて測定開始から5秒後の粘度(V1)と、そこから1分間ロータを回転させ続けた後の粘度(V2)の比(V1/V2)で表されるチキソトロピーインデックス(TI値)が、1.0以上である1の磁性ペースト、
3. 溶剤を含まない1または2の磁性ペースト、
4. 前記エポキシ化合物(B)が、芳香環を有しないエポキシ化合物である1~3のいずれかの磁性ペースト、
5. 前記エポキシ化合物(B)が、下記式(1)または(2)で表される4の磁性ペースト、
【化1】
(式中、R1は、環状構造を含まない1価の有機基を表し、R2は、環状構造を含まない2価の有機基を表す。)
6. 前記エポキシ樹脂(A)が、25℃で液状であり、かつ、その含有量が、前記(A)成分、(B)成分および(D)成分の合計質量の25質量%以上である1~5のいずれかの磁性ペースト、
7. 前記エポキシ化合物(B)の25℃における粘度が、300mPa・s以下である1~6のいずれかの磁性ペースト、
8. 前記硬化剤(D)が、25℃における粘度110mPa・s以下の酸無水物である1~7のいずれかの磁性ペースト、
9. 1~8のいずれかの磁性ペーストから得られる磁性硬化物、
10. その内部にコイルが配設されたケースと、このケース内に前記コイルを覆う態様で充填された9の磁性硬化物とを備える磁性コア、
11. 表層に占める前記軟磁性粉末(C)の充填割合が、83質量%以上である請求項10の磁性コア、
12. 1~8のいずれかの磁性ペーストを、その内部にコイルが配設されているケースに注入し、硬化させる磁性コアの製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の磁性ペーストは、常温で良好な流動性を有しているため、複雑な形状のケースや、密に巻かれたコイル線内部を軟磁性粉末で満たすことができる。
本発明の磁性ペーストを用いることで、例えば、コイルケース等の注型内の上層部まで軟磁性粉末が充填されるため、得られる磁性コアの耐冷熱衝撃性が向上するとともに、上層部の機械特性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る磁性ペーストは、芳香環を有するエポキシ樹脂(A)、エポキシ化合物(B)、軟磁性粉末(C)、および硬化剤(D)を含有する。
【0011】
(1)(A)芳香環を有するエポキシ樹脂
(A)成分は、分子内に芳香環を有するエポキシ樹脂であれば特に制限はなく、従来公知のものから適宜選択して用いることができるが、磁性ペーストの注型性の観点から、25℃で液状のエポキシ樹脂が好ましい。
その具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、柔軟強靭性エポキシ樹脂として知られる変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0012】
(A)成分のエポキシ樹脂の配合量は、(A)成分、(B)成分および(D)成分からなる樹脂全体の25質量%以上が好ましく、25~49質量%が好ましく、35~45質量%がより好ましい。
また、(A)成分のエポキシ樹脂の粘度は、25℃で1~50Pa・sが好ましく、1~30Pa・sがより好ましく、1~25Pa・sがより一層好ましい。なお、粘度は、B型粘度計による測定値である(以下同様)。
【0013】
(A)成分のエポキシ樹脂は市販品を用いてもよく、その具体例としては、DIC(株)製のナフタレン型エポキシ樹脂(HP4032D)、ビスフェノールA/F型混合エポキシ樹脂(EXA-835LV)、柔軟強靭性エポキシ樹脂(EXA4850-150)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
(2)(B)エポキシ化合物
本発明の磁性ペーストには、上記(A)成分とともに、(B)成分としてエポキシ樹脂(A)とは異なり、エポキシ樹脂(A)よりも粘度の低いエポキシ化合物が含まれる。
一般に多量の軟磁性材料を磁性ペーストに含有させると、磁性ペーストの粘度が増加する。しかし、(A)成分よりも粘度の低いエポキシ化合物を加えることによって、磁性ペーストの粘度を下げることができる。エポキシ化合物の反応性基としてはエポキシ基、アクリル基、メタクリル基、オキセタン基などがあるが、磁性ペーストの粘度をより低下させる観点から、エポキシ基が好ましい。
また、エポキシ基以外に環構造、特に芳香環を有する化合物は一般的に、分子間の共役によって分子構造が安定し、機械強度の高い、剛直な硬化物が得られる一方、硬化物の靭性が低く、金属等と比べると線膨張係数が高いため、強熱、急冷といった熱衝撃に弱いといった特徴を持つ。そこで、本発明の(B)エポキシ化合物は、硬化物の靭性を調整する目的で、芳香環を持たないものが好ましい。
【0015】
本発明の(B)成分として用いられる、芳香環を有しないエポキシ化合物としては、従来公知のものから適宜選択して用いることができるが、芳香環だけでなく、脂肪族環、ヘテロ芳香環、ヘテロ脂肪族環等の環状構造を含まないエポキシ化合物が好ましく、下記式(1)または(2)で表されるエポキシ化合物がより好ましい。
【0016】
【化2】
【0017】
式(1)において、R1は、環状構造を含まない1価の有機基を表し、式(2)において、R2は、環状構造を含まない2価の有機基を表す。
1の環状構造を含まない1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状アルコキシ基、R3O(R4O)n-基(R3は、水素原子または炭素数1~5の鎖状アルキル基を表し、R4は、炭素数1~20の鎖状アルキレン基を表し、nは、1~20の整数を表す)等が挙げられる。
【0018】
炭素数1~20の鎖状アルコキシ基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、n-ヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、n-ノニルオキシ、n-デシルオキシ、n-ウンデシルオキシ、n-ドデシルオキシ、n-トリデシルオキシ、n-テトラデシルオキシ、n-ペンタデシルオキシ、n-ヘキサデシルオキシ、n-ヘプタデシルオキシ、n-オクタデシルオキシ、n-ノナデシルオキシ、n-イコシルオキシ基等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数4~15の鎖状アルコキシ基が好ましく、炭素数4~14の鎖状アルコキシ基がより好ましい。
【0019】
3の炭素数1~5の鎖状アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル基等が挙げられる。
4の炭素数1~20の鎖状アルキレン基の具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ネオペンチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン基等が挙げられ、これらの中でも、炭素数2~12の鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数2~5のアルキレン基がより好ましく、エチレン基、プロピレン基がより一層好ましい。
nは、1~20の整数であるが、1~10の整数が好ましい。
【0020】
2の環状構造を含まない2価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状アルキレン基、-O(R4O)n-基(R4およびnは、上記と同じ意味を表す。)等が挙げられるが、-O(R4O)n-基が好ましい。
2の鎖状アルキレン基の具体例としては、R4と同様のものが挙げられる。
【0021】
式(1)で表されるエポキシ化合物の具体例としては、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
式(2)で表されるエポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール#200ジグリシジルエーテル(n≒4)、ポリエチレングリコール#400ジグリシジルエーテル(n≒9)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール#400ジグリシジルエーテル(n≒7)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,12-ドデカンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0022】
(B)成分のエポキシ化合物は市販品を用いてもよく、その具体例としては、共栄社化学(株)製の商品名エポライトM-1230(C12、13混合高級アルコールグリシジルエーテル)、エポライト40E(エチレングリコールジグリシジルエーテル)、エポライト100E(ジエチレングリコールジグリシジルエーテル)、エポライト200E(ポリエチレングリコール#200ジグリシジルエーテル)、エポライト400E(ポリエチレングリコール#400ジグリシジルエーテル)、エポライト70P(プロピレングリコールジグリシジルエーテル)、エポライト200P(トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)、エポライト400P(ポリプロピレングリコール#400ジグリシジルエーテル)、エポライト1500NP(ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル)、エポライト1600(1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
なお、(B)成分は、式(1)または(2)で表されるエポキシ化合物を1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよく、式(1)で表されるエポキシ化合物の1種以上と式(2)で表されるエポキシ化合物の1種以上とを併用してもよい。
【0024】
(B)成分のエポキシ化合物の粘度は、特に限定されるものではないが、磁性ペーストの注型性の観点から、25℃において、300mPa・s以下が好ましく、280mPa・s以下がより好ましく、260mPa・s以下がより一層好ましい。
【0025】
本発明の磁性ペーストでは、上述のとおり、熱に対する安定性を調整する観点から、(A)成分および(B)成分を併用するものであるが、(B)成分の配合量が多すぎると、磁性ペーストの粘度が低くなりすぎて磁性粉末が沈降したり、得られる硬化物の強度が低下したりする場合があるため、(A)成分と(B)成分の配合比は、質量比で(A):(B)=99:1~50:50が好ましく、85:15~70:30がより好ましい。
【0026】
(3)(C)軟磁性粉末
軟磁性粉末は、外部の磁界を取り除くと速やかに磁気が消失して元の状態に戻る材料からなる粉末であれば特に制限はなく、例えば、鉄系金属粉、鉄合金系金属粉、フェライト粉末、アモルファス合金等挙げられる。
その具体例としては、純鉄粉末等の鉄系金属粉;Mg-Zn系フェライト、Fe-Mn系フェライト、Mn-Zn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Cu-Zn系フェライト、Mg-Mn-Sr系フェライト、Ni-Zn系フェライト、Ba-Zn系フェライト、Ba-Mg系フェライト、Ba-Ni系フェライト、Ba-Co系フェライト、Ba-Ni-Co系フェライト、Y系フェライト等のフェライト系粉末;Fe-Si系合金粉末、Fe-Si-Al系合金粉末、Fe-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Si系合金粉末、Fe-Ni-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Al系合金粉末、Fe-Ni系合金粉末、Fe-Ni-Mo系合金粉末、Fe-Ni-Mo-Cu系合金粉末、Fe-Co系合金粉末、Fe-Ni-Co系合金粉末等の鉄合金系金属粉;Fe基アモルファス、Co基アモルファス等のアモルファス合金などが挙げられる。
これらの軟磁性粉末は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
(C)成分の軟磁性粉末は市販品を用いてもよく、その具体例としては、パウダーテック(株)製M05S;山陽特殊製鋼(株)製PST-S;エプソンアトミックス(株)製AW2-08、AW2-08PF20F、AW2-08PF10F、AW2-08PF3F、Fe-3.5Si-4.5CrPF20F、Fe-50NiPF20F、Fe-80Ni-4MoPF20F、KUAMET(登録商標)6B2;JFEケミカル(株)製LD-M、LD-MH、KNI-106、KNI-106GSM、KNI-106GS、KNI-109、KNI-109GSM、KNI-109GS;戸田工業(株)製KNS-415、BSF-547、BSF-029、BSN-125、BSN-714、BSN-828;キンセイマテック(株)製JEMK-S、JEMK-H等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
軟磁性粉末の平均粒径D50は、特に限定されるものではないが、充填性等を考慮すると、1~100μmが好ましく、10~80μmがより好ましい。なお、D50とは、体積基準の累積分布における50%累積時の粒径を意味する。
【0029】
本発明において、軟磁性粉末の含有量は、磁性ペースト全体の90~96質量%であるが、90~95質量%が好ましい。上記(A)成分および(B)成分を用いるとともに、軟磁性粉末の含有量をこの範囲とすることで、注型可能な流動性を有しつつも、軟磁性粉末の沈降が抑制し、加熱硬化後も軟磁性粉末が上層まで充填された磁性硬化物を得ることができる。
【0030】
(4)(D)硬化剤
本発明の磁性ペーストは、エポキシ樹脂の硬化剤を含む。
硬化剤としては、従来公知のエポキシ樹脂硬化剤から適宜選択して用いることができる。
その具体例としては、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、ノボラックフェノール樹脂、クレゾールノボラックフェノール樹脂、無水フタル酸誘導体、ジシアンジアミド、アルミニウムキレート、トリフルオロボラン(BF3)等のルイス酸のアミン錯体などが挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本発明では、特に、磁性ペーストの注型性の観点から、エポキシ樹脂(A)よりも粘度の低いものが用いられるが、25℃で液状の硬化剤が好ましく、25℃における粘度110mPa・s以下の硬化剤がより好ましく、25℃における粘度70mPa・s以下の酸無水物がより一層好ましく、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物がさらに好ましい。
これらの液状硬化剤は市販品を用いてもよく、その具体例としては、新日本理化(株)製の商品名リカシッドMH-700、リカシッドMH-700G、リカシッドMH、リカシッドMH-T、リカシッドHNA-100、日本化薬(株)製KAYAHARD-MCD等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明の磁性ペーストでは、上述した(A)~(D)成分のみからなる混合物の25℃における粘度が、B型粘度計を用い、ロータNo.4、回転数0.6rpmにて測定開始から5秒後の粘度で100~1000Pa・s、好ましくは100~400Pa・s、より好ましくは200~380Pa・sであるものを用いる。上記混合物の粘度をこの範囲に調節することで、注型可能な流動性を有しつつも、軟磁性粉末の沈降が抑制し、加熱硬化後も軟磁性粉末が上層まで充填された磁性硬化物を得ることができる。
【0033】
また、本発明の磁性ペーストは、(A)~(D)成分のみからなる混合物が、B型粘度計を用い、100℃で、ロータNo.3、回転数0.6rpmにて測定開始から5秒後の粘度(V1)と、そこから1分間ロータを回転させ続けた後の粘度(V2)の比(V1/V2)で表されるチキソトロピーインデックス(TI値)が、1.0以上であることが好ましく、1.4以上がより好ましい。
なお、粘度(V1)は、上記混合物が常温から100℃に加熱された際の粘度であり、この粘度は、硬化直前の加熱された磁性ペーストの静置状態における粘度とみなすことができる。一方、粘度(V2)は、上記混合物が常温から100℃に加温された状態で、一定のせん断力を加えられた後の粘度であり、加熱された磁性ペーストの流動状態における粘度とみなすことができる。これらの比(V1/V2)で表されるTI値は、100℃における磁性ペーストのチキソ性を表すものであり、磁性ペーストの成形性や軟磁性粉末の沈降に関する指標となる。
【0034】
(5)(E)硬化促進剤
本発明の磁性ペーストには、エポキシ樹脂の硬化を促進させる目的で(E)成分として硬化促進剤を含んでいてもよい。
(E)成分の硬化促進剤としては、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられるが、磁性ペーストの粘度を低下させる観点から、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、イミダゾール系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
アミン系硬化促進剤の具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。
アミン系硬化促進剤は市販品を用いてもよく、その具体例としては、旭化成(株)製のノバキュアHX3088、HX4732等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
イミダゾール系硬化促進剤の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0037】
イミダゾール系硬化促進剤は市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、四国化成工業(株)製の2PHZ-PW、2MZA-PW等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本発明の磁性ペーストは、粘度調整等の目的で溶剤を含んでいてもよいが、磁性ペーストの硬化時におけるひびの発生や、気泡や気化熱による膨らみの発生等を防止する観点から、溶剤を含まないことが好ましい。
【0039】
本発明の磁性ペーストは、本発明の効果が奏される限りにおいて、さらに必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤の具体例としては、分散剤、硬化遅延剤、熱可塑性樹脂、難燃剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、着色剤等が挙げられる。
【0040】
本発明の磁性ペーストは、上述した(A)~(E)成分を任意の順序で配合し、それを混合して得ることができる。混合方法としては、例えば、3本ロール、回転ミキサー、遊星式撹拌脱泡装置等の公知の撹拌装置を用いる手法が挙げられる。
【0041】
本発明の磁性ペーストを加熱硬化させることで磁性硬化物を得ることができる。
また、本発明の磁性ペーストは、無溶剤でも注入成形可能な流動性を有しているため、これを、内部にコイルが配設されたケース内に注入し、これを加熱硬化させることで磁性コアを得ることができる。
【0042】
上述したとおり、本発明の磁性ペーストは、軟磁性粉末の含有量が高く、比較的高い粘度を有しているため、成形後も充填面(上面)の表層に軟磁性粉末が残ることから、得られた磁性コアは、冷熱衝撃試験でクラックが生じにくく、良好な耐ヒートサイクル性を発揮する。
本発明の磁性コアにおいて、表層に占める軟磁性粉末の充填割合は、好ましくは83質量%以上、より好ましくは85質量%以上、より一層好ましくは87質量%である。磁性粉末の充填割合の測定法は、後述の実施例に記載のとおりである。
【0043】
加熱温度は、使用する硬化促進剤の種類等に応じて変動するものであるため一概には規定できないが、通常100℃以上であり、例えば、アミン系硬化促進剤を用いる場合には120℃以上が好ましく、イミダゾール系硬化促進剤を用いる場合には150℃以上が好ましい。
加熱手段に特に制限はなく、従来公知の加熱手段から適宜選択すればよい。
なお、本発明の磁性ペーストが無溶剤ペーストの場合、真空引きを行うことなく、静圧で硬化させることができる。
【実施例0044】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で使用した材料の詳細は以下のとおりである。
〔エポキシ樹脂(A)〕
エポキシ樹脂A1:DIC(株)製 ビスフェノールA/F型混合エポキシ樹脂EXA-835LV、粘度(25℃)2000~2500mPa・s
エポキシ樹脂A2:DIC(株)製 ナフタレン型エポキシ樹脂HP4032D
〔エポキシ化合物(B)〕
エポキシ化合物B1:ナガセケムテックス(株)製 デナコールEX-201 粘度(25℃)250mPa・s
エポキシ化合物B2:共栄社化学(株)製 エポライト100E 粘度(25℃)19~25mPa・s
エポキシ化合物B3:共栄社化学(株)製 エポライト400E 粘度(25℃)60~110mPa・s
〔軟磁性粉末(C)〕
Fe基アモルファス合金粉末
〔硬化剤(D)〕
新日本理化(株)製リカシッドMH-700 粘度(25℃)約60mPa・s
〔硬化促進剤〕
四国化成(株)製2PHZ-PW
〔有機溶剤〕
n-ブタノール
【0045】
[実施例1~5、比較例1~7]
表1に示す割合(質量%)となるように、エポキシ樹脂A、エポキシ化合物B、硬化剤、硬化促進剤を規格瓶に加え、マグネチックスターラーを用いて室温で1時間撹拌し、硬化促進剤が分散した樹脂液を調製した。なお、硬化促進剤の量は樹脂全体に対し、一律で0.5質量部加えた。
次に、調製した樹脂液をデスカップに移し、軟磁性粉末を表1に示す割合になるように加え、手混ぜによりスラリーを調製した。その後、遊星式撹拌脱泡装置(クラボウ(株)製KK-V350W)を用い、下記条件1で撹拌後、条件2で真空に引きながら撹拌脱泡することで、磁性ペーストを調製した。
条件1
自転:3、公転:5で30秒撹拌→自転:3、公転:7で60秒撹拌→自転:3、公転:9で30秒撹拌
条件2
自転:7、公転:5で120秒撹拌
【0046】
得られた磁性ペーストを、内部にコイルが配設されたケースに、空気を噛まないよう端からゆっくりと注型し、半分ほど注型した所で対角側から残りを注型した。注型したケースを、10回程タッピングし、液面を均した後に定温乾燥機(ヤマト科学(株)製DX-402)に入れ、120℃で1時間、150℃で1時間加熱して硬化させ、磁性コアを得た。
【0047】
上記実施例および比較例で得られた磁性ペーストまたは磁性コアを用いて以下の評価を行った。結果を併せて表1に示す。なお、硬化反応が始まると粘度測定ができないため、下記(1)および(2)の測定は、硬化促進剤を抜いた状態(A~Dのみ)で行った。
(1)室温粘度測定
50mLのサンプル管に、磁性ペーストを6cmの高さまで入れ、スパチュラ等で十分に分散させた後、B型回転粘度計(東機産業(株)製TVB-10M、以下同様)を用いて、25℃、ロータNo.4、回転数0.6rpmにて5秒回転させた後に粘度を測定した。
(2)チキソトロピーインデックス(TI値)測定
50mLのサンプル管に、磁性ペーストを6cmの高さまで入れ、サンプル管外周をシリコンラバーヒーター(アズワン(株)製、以下同様)で覆い、加温した。加温したペーストをスパチュラ等で十分に分散させた後、100℃に保温した状態でB型回転粘度計を用いて、ロータNo.3、回転数0.6rpmにて5秒回転させた後に粘度(V1)を測定し、さらに、そこから1分間ロータを回転させ続けた後の粘度(V2)を測定し、比(V1/V2)で表されるTI値を算出した。
なお、V1、V2の測定に際し、温度測定はK型熱電対をラバーヒーターとサンプル管の間に設置し、サンプル管外表面の温度を測定することで行い、温度保持については、ラバーヒーターとK型熱電対をデジタル温度調節器(アズワン(株)製TR-K)に接続して温度制御を行った。
(3)充填率測定
磁性コアの充填面から全体高さの5%分をやすりで削り出し、そのうち約200mgを熱重量示差熱分析装置(ネッチ・ジャパン(株)製STA2500)を用いて、昇温速度20℃/min、最高到達温度800℃に設定し、25℃~600℃までの重量減少率から軟磁性粉末の充填率を算出した。
(4)耐冷熱衝撃性
冷熱衝撃試験装置(エスペック(株)製TSA-71S-A)を用い、低温到達温度-55℃、高温到達温度125℃、温度保持時間30分に設定し、100サイクルの冷熱衝撃を磁性コアに与え、試験後のコア表面を目視でクラックの有無を確認した。目視でクラックが見られないものに関しては、ズーム実体顕微鏡(アズワン(株)製CP745)によって微小クラックの有無について確認した。表1において、顕微鏡でクラックが見られないものを〇、ケースへの注型不可、あるいは目視でクラックが見られたものを×、目視でクラックは見られないが、顕微鏡によって微小クラックが見られたものは△とした。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示されるように、実施例1~5で調製した磁性ペーストは、所定範囲に粘度が調整されているため、室温で注型可能な流動性を有しており、また、軟磁性粉末を90~96質量%という割合で高密度に含んでいながら、その沈降が抑制され、加熱硬化後も軟磁性粉末が上層まで充填された磁性コアが得られる。また、(B)成分であるエポキシ化合物を含んでいるため、硬化物に適度な靭性が付与され、耐冷熱衝撃試験において表層にクラックが発生しないことがわかる。
一方、粘度が本発明の範囲より小さい比較例1の磁性ペーストは、TI値が1.0以下であり、軟磁性粉末の沈降が起こりやすく、硬化時わずかに樹脂の層が析出しており、耐冷熱衝撃試験後に樹脂層に微小クラックが発生することがわかる。
磁性粉の添加量が本発明の範囲より小さい比較例2の磁性ペーストは、TI値が0.5と低く、磁性粉の沈降が顕著に見られ、硬化時に樹脂層が全体高さの5%以上析出しており、耐冷熱衝撃試験後には、目視で判断可能なクラックが発生することがわかる。
比較例3,5,7の磁性ペーストは、所定の樹脂の組み合わせ以外、あるいは所定の軟磁性粉末の添加量の範囲外であるため、ペーストの粘度が増大し、コイルが配設されたケースへの注型が不可となる。また、粘度を下げるために比較例3のペーストに溶媒を添加した比較例4の磁性ペーストは、実施例と近い磁性ペーストの粘度を持つが、耐冷熱衝撃試験後に樹脂層からクラックが発生することがわかる。
(A)成分を含まない比較例6の磁性ペーストは、硬化物の強度が十分に得られないため、耐冷熱衝撃試験後に樹脂層だけでなく磁性粉層にもクラックが発生することがわかる。
【0050】
実施例4で得られた磁性コアについて、コイル線の両端に電極を繋ぎ、18mA、1.0V、100kHzの交流をかけ、その際のインダクタンスをLCRメーター(日置電機(株)製 LCRハイテスタ 3522)を用いて測定した所、約350μHとなり、磁性コアとして十分なコイル特性を発現することを確認した。