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  • 特開-電流センサ 図1
  • 特開-電流センサ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138349
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
G01R15/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038184
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(71)【出願人】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】今川 尊雄
(72)【発明者】
【氏名】有松 健司
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA11
2G025AB15
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】
太陽光発電システムの対地静電容量に左右されず、安定かつ高感度な電流センサを提供する。
【解決手段】
主回路導体を流れる直流電流を検出する電流センサであって、第1のセンサ部と第2のセンサ部とを備え、第1のセンサ部は、主回路導体が貫通する環状の第1の磁気コアと、第1の磁気コアに巻回された第1の励磁巻線および第1の検出巻線とを備え、第2のセンサ部は、主回路導体が貫通する環状の第2の磁気コアと、第2の磁気コアに巻回された第2の励磁巻線および第2の検出巻線とを備え、第1の励磁巻線と第2の励磁巻線は同じ巻数であり、第1の励磁巻線と第2の励磁巻線は逆の極性で接続されるとともに、励磁回路に接続され、第1の検出巻線と第2の検出巻線は抵抗器と直列に接続され、抵抗器の両端が二次高調波検出回路に接続されている電流センサ。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主回路導体を流れる直流電流を検出する電流センサであって、
第1のセンサ部と第2のセンサ部とを備え、
前記第1のセンサ部は、
前記主回路導体が貫通する環状の第1の磁気コアと、
前記第1の磁気コアに巻回された第1の励磁巻線および第1の検出巻線とを備え、
前記第2のセンサ部は、
前記主回路導体が貫通する環状の第2の磁気コアと、
前記第2の磁気コアに巻回された第2の励磁巻線および第2の検出巻線とを備え、
前記第1の励磁巻線と前記第2の励磁巻線は同じ巻数であり、前記第1の励磁巻線と前記第2の励磁巻線は逆の極性で接続されるとともに、励磁回路に接続され、前記第1の検出巻線と前記第2の検出巻線は抵抗器と直列に接続され、前記抵抗器の両端が二次高調波検出回路に接続されている電流センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の電流センサにおいて、
前記第1の励磁巻線と前記第2の励磁巻線とは、直列または並列に接続されている電流センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電流センサにおいて、
前記主回路導体は、
往復一対で構成される電流センサ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の電流センサにおいて、
前記主回路導体は、
太陽光発電設備と接続される電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電気設備における漏洩電流検出する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
メガソーラなど太陽光発電設備の普及に伴い、太陽光発電設備における感電保護、火災保護および保守性向上のため、電路への人体の接触、損傷や劣化による漏れ電流の発生を検知する必要がある。
【0003】
このような課題に対し、特許文献1には、環状の磁性体コアにコイルを巻回し、直流電路を往復で貫通させ、巻回したコイルに交流電圧を印加し、漏洩電流によるコアの磁気飽和によって発生する二次高調波を検出することにより、漏洩電流を検出する技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、「直流成分を含む電流を検出する電流センサ素子であって、主センサと、補助センサと、前記主センサの磁気コアと前記補助センサの磁気コアにバイアス磁界を印加する永久磁石と、を備え、前記主センサは、環状の第一の磁気コアと、前記第一の磁気コアに巻回された検出巻線と励磁巻線と、を備え、前記補助センサは、環状の第二の磁気コアと、前記第二の磁気コアに巻回された補償巻線と、を備え、前記永久磁石を間に介在して、前記主センサと前記補助センサとが積層され、前記主センサ、前記永久磁石および前記補助センサの周囲を取り囲む磁性材料のケースを備える」構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-110925号公報
【特許文献2】特開2020-143962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1もしくは特許文献2におけるセンサでは、環状の磁性体コアにコイルを巻回し、交流で励磁するため、漏電検出対象の電路には励磁によって零相電圧が誘起される。一方で太陽光発電設備では、太陽光モジュールを地上もしくは屋上など広い面積で展開することで大きな電力を得ようとするが、これにより一般的な電気設備より大きい対地静電容量を持つことになる。
【0007】
特許文献1もしくは特許文献2におけるセンサを、このような大きい対地静電容量を持つ回路に適用した場合、センサの励磁で誘起された零相電圧により、対地静電容量と接地極を経由したループに電流が流れ、センサの動作が阻害されるという問題があった。また太陽光発電設備の直流回路は多くの場合は高抵抗の接地であり、故障時の漏れ電流が小さく検出が難しいという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、太陽光発電システムの対地静電容量に左右されず、安定かつ高感度な電流検出を可能とする電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい一例としては、主回路導体を流れる直流電流を検出する電流センサであって、
第1のセンサ部と第2のセンサ部とを備え、
前記第1のセンサ部は、
前記主回路導体が貫通する環状の第1の磁気コアと、前記第1の磁気コアに巻回された第1の励磁巻線および第1の検出巻線とを備え、
前記第2のセンサ部は、
前記主回路導体が貫通する環状の第2の磁気コアと、前記第2の磁気コアに巻回された第2の励磁巻線および第2の検出巻線とを備え、
前記第1の励磁巻線と前記第2の励磁巻線は同じ巻数であり、前記第1の励磁巻線と前記第2の励磁巻線は逆の極性で接続されるとともに、励磁回路に接続され、前記第1の検出巻線と前記第2の検出巻線は抵抗器と直列に接続され、前記抵抗器の両端が二次高調波検出回路に接続されている電流センサである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、太陽光発電システムの対地静電容量に左右されず、安定かつ高感度な電流検出を実現する電流センサを得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の電流センサの接続図である。
図2】比較例としての電流センサの接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例の説明に先立って、環状の磁性体を用いた直流漏洩電流を検出する比較例としての電流センサについて説明する。
【0013】
図2は、比較例としての電流センサの接続図である。本比較例としての電流センサは軟磁性材料からなるコア11に往復分一対の主回路導体12を貫通した構造とする。
【0014】
コア11には励磁巻線13と検出巻線14が巻回されており、励磁巻線13には励磁回路15、検出巻線14には二次高調波検出回路16が接続される。主回路に接続された負荷に異常がなく、漏れ電流が流れていない場合は、主回路導体12に流れる電流は互いに逆向きで等しい電流が流れるが、負荷で地絡事故が発生し、漏れ電流が流れることにより主回路導体12に流れる逆方向の電流に差が生じた場合には、コア11の中に電流の差分に応じた磁界が誘起される。
【0015】
このときコア11は励磁回路15と励磁巻線13によって励磁されており、検出巻線14には励磁電流に応じた電圧が誘起されているが、コア11の内部に誘起された漏れ電流に基づく磁界によって磁気特性に偏りが生じ、検出巻線14には二次高調波が誘起される。この二次高調波を二次高調波検出回路16によって検出し、漏洩電流の有無を検出するものである。
【実施例0016】
図1は、本発明の実施例1の電流センサの接続図である。比較例の電流センサと同じ事項の説明は省略する。本実施例の電流センサは、主回路導体を流れる直流電流を検出する電流センサであって、第1のセンサ部と第2のセンサ部とを備え、第1のセンサ部は、主回路導体23が貫通する環状の第1の磁気コア21と、第1の磁気コア21に巻回された第1の励磁巻線24および第1の検出巻線27とを備える。第2のセンサ部は、主回路導体が貫通する環状の第2の磁気コア22と、第2の磁気コア22に巻回された第2の励磁巻線25および第2の検出巻線28とを備える。第1の励磁巻線24と第2の励磁巻線25は逆の極性で接続されるとともに、励磁回路26に接続される。第1の検出巻線27と第2の検出巻線28は抵抗器29と直列に接続され、抵抗器29の両端が二次高調波検出回路2aに接続されている。
【0017】
第1の磁気コア21および第2の磁気コア22は軟磁性材料からなる。また、第1の磁気コア21および第2の磁気コア22のそれぞれの磁気コアには、巻数の等しい第1の励磁巻線24および第2の励磁巻線25を備える。第1の励磁巻線24および第2の励磁巻線25には逆極性の電圧が発生するように、第1の励磁巻線24および第2の励磁巻線25は逆極性で直列に接続され、励磁回路26により励磁する。なお、第1の励磁巻線24および第2の励磁巻線25の接続は逆極性で並列に接続しても良い。
【0018】
第1の磁気コア21および第2の磁気コア22のそれぞれの磁気コアには、第1の検出巻線27および第2の検出巻線28が巻回される。励磁電流によって誘起される電圧を打ち消す極性で、第1の検出巻線27および第2の検出巻線28は直列に接続され、電流検出抵抗29に接続される。本実施例の電流センサでは、電流検出抵抗29の電圧降下を二次高調波検出回路2aに入力し、二次高調波を検出することにより漏洩電流を検出する構成である。
【0019】
本実施例の電流センサは、環状の磁性体コアを二個使用し、それぞれのコアを逆位相で励磁することにより、漏電検出対象の電路に誘起される零相電圧を打ち消し、対地静電容量と接地極を経由したループインピーダンスの影響を受けないようにする。また二つのコアに巻回された検出巻線を励磁電流による誘起電圧を打ち消す極性で直列に接続し、この直列回路に電流検出用の抵抗を挿入して検出巻線に流れる電流を検出することにより、高感度で漏電検出を行うことが出来る。
【0020】
本実施例の電流センサによれば、前述のループインピーダンスの影響を受けなくする効果に加え、パワー半導体素子のスイッチングに起因し、対地静電容量を通じて流れるノイズ電流を、二つの検出巻線を逆並列に接続することで短絡して打ち消してセンサのSN比を改善し、かつ高感度に漏洩電流を検出することが可能となる。
【0021】
また、検出側の巻線から発生する二次高調波は電圧成分よりも電流成分の方が大きい。そのため電圧より電流を検出する方が効率よく、高感度に二次高調波を検出できる。本実施例によれば、第1の検出巻線27および第2の検出巻線28を直列にして抵抗を挿入する構成とするので、第1の検出巻線27および第2の検出巻線28に流れる二次高調波を含む電流を効率よく高感度に検出できる。
【0022】
上記の実施例では、主回路導体23は、往復分一対の2本の場合を例に説明したが、1本の導体であってもよいし、3本以上の導体であってもよい。
【0023】
また、上記の実施例では、太陽光発電設備の直流回路に適用した電流センサを例に説明した。主回路導体23は、太陽光発電設備と接続する場合に限らず、他の設備と接続する場合においても本実施例は適用できる。
【符号の説明】
【0024】
11…コア、12…主回路導体、13…励磁巻線、14…検出巻線、15…励磁回路、16…二次高調波検出回路、21…第1の磁気コア、22…第2の磁気コア、23…主回路導体、24…第1の励磁巻線、25…第2の励磁巻線、26…励磁回路、27…第1の検出巻線、28…第2の検出巻線、29…電流検出抵抗、2a…二次高調波検出回路
図1
図2