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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138363
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】製本装置
(51)【国際特許分類】
   B42C 11/04 20060101AFI20220915BHJP
   B42C 9/02 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B42C11/04
B42C9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038208
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】木村 武志
(57)【要約】
【課題】くるみ製本により製本した冊子の背表紙の湾曲を抑制する。
【解決手段】用紙束PSを挟むクランプ部39と、表紙用紙P1を乗せて背表紙P1bを形成する成形部43と、用紙束PSの綴じ側の端面に糊付けする糊付け部40と、成形部43にクランプ部39を押し付けるクランプ駆動部と、クランプ部39を開閉する開閉部とを備え、成形部43に乗せた展開状態の表紙用紙P1の糊付け部分に、用紙束PSを挟んでいない空のクランプ部39を接触させた状態で、空のクランプ部39を糊付け部分の範囲内で展開状態の表紙用紙P1に沿って移動させ、空のクランプ部39が接触移動された糊付け部分に、クランプ部39に挟まれた用紙束PSの綴じ側の端面を押し付けて糊付けすることで、用紙束PSを表紙用紙P1の表表紙P1a及び裏表紙P1cの間に配置して冊子Bを作成する。
【選択図】図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冊子の本身となる用紙束を挟むクランプ部と、
前記冊子の表紙用紙を乗せて前記表紙用紙に前記冊子の背表紙を形成する成形部と、
前記用紙束の綴じ側の端面に糊付けする糊付け部と、
前記成形部に前記クランプ部を押し付けるクランプ駆動部と、
前記クランプ部を開閉する開閉部とを備え、
前記成形部に乗せた前記表紙用紙の前記背表紙を形成する糊付け部分に、前記クランプ部に挟まれた前記用紙束の前記綴じ側の端面を押し付けて糊付けすることで、前記用紙束を前記表紙用紙の表表紙及び裏表紙の間に配置して前記冊子を作成する製本装置であって、
前記成形部に乗せた展開状態の前記表紙用紙の前記糊付け部分に、前記用紙束を挟んでいない空の前記クランプ部を接触させた状態で、前記空のクランプ部を前記糊付け部分の範囲内で前記展開状態の前記表紙用紙に沿って移動させ、
前記空のクランプ部が接触移動された前記糊付け部分に、前記クランプ部に挟まれた前記用紙束の前記綴じ側の端面を押し付けて糊付けする、
製本装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製本装置に関する。
【背景技術】
【0002】
くるみ製本と呼ばれる製本方法では、画像を印刷した用紙の束に表紙を取り付けて冊子を成形する。くるみ製本では、用紙束のホットメルト接着剤を塗布した端面を、平らに展開した表紙用紙の背表紙となる部分に内側から押し付ける。この状態で、一対の背折りプレートが用紙束の左右から表紙用紙越しに用紙束を押圧し、表紙用紙の表表紙及び裏表紙となる部分を用紙束側に折り曲げることで、冊子を成形することができる。くるみ製本における冊子の成形工程は、例えば、特許文献1において説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-111900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表紙の紙厚が厚い、冊子のページ数が少なく表紙に押し付ける用紙束の厚みが少ない等、表紙の坪量に対する表紙に押し付ける用紙束の押圧面積の割合が少ない場合は、背折りプレートで表紙用紙を折り曲げる際に、背表紙と表表紙及び裏表紙との境界に折り目がつきにくい。このため、折り曲げた表紙用紙の背表紙が表表紙及び裏表紙に連なって湾曲する可能性がある。
【0005】
背表紙が湾曲すると、背表紙に印刷されている文字を、斜め方向から見たときに背表紙の一部が死角となることがある。その場合は、背表紙に印刷した文字等が見づらくなる。また、背表紙が湾曲すると、用紙束の端面に塗布した接着剤が湾曲した背表紙の中央寄りに流れ込んで、表表紙及び裏表紙に近い用紙束の先頭ページ及び最終ページ寄りの部分の表紙に対する接着力が低くなる。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、くるみ製本により製本した冊子の背表紙の湾曲を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様による製本装置は、
冊子の本身となる用紙束を挟むクランプ部と、
前記冊子の表紙用紙を乗せて前記表紙用紙に前記冊子の背表紙を形成する成形部と、
前記用紙束の綴じ側の端面に糊付けする糊付け部と、
前記成形部に前記クランプ部を押し付けるクランプ駆動部と、
前記クランプ部を開閉する開閉部とを備え、
前記成形部に乗せた前記表紙用紙の前記背表紙を形成する糊付け部分に、前記クランプ部に挟まれた前記用紙束の前記綴じ側の端面を押し付けて糊付けすることで、前記用紙束を前記表紙用紙の表表紙及び裏表紙の間に配置して前記冊子を作成する製本装置であって、
前記成形部に乗せた展開状態の前記表紙用紙の前記糊付け部分に、前記用紙束を挟んでいない空の前記クランプ部を接触させた状態で、前記空のクランプ部を前記糊付け部分の範囲内で前記展開状態の前記表紙用紙に沿って移動させ、
前記空のクランプ部が接触移動された前記糊付け部分に、前記クランプ部に挟まれた前記用紙束の前記綴じ側の端面を押し付けて糊付けする、
製本装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、くるみ製本により製本した冊子の背表紙の湾曲を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る製本装置を有する製本システムの概略構成を示す説明図である。
図2図2は、図1の製本装置でくるみ製本された印刷物の一例を示す説明図である。
図3A図3Aは、一般的な製本装置の成形部における表紙用紙の背表紙の成形工程の説明図である。
図3B図3Bは、一般的な製本装置の成形部における表紙用紙の背表紙の成形工程の説明図である。
図3C図3Cは、一般的な製本装置の成形部における表紙用紙の背表紙の成形工程の説明図である。
図3D図3Dは、一般的な製本装置の成形部における表紙用紙の背表紙の成形工程の説明図である。
図4A図4Aは、図1の製本装置のクランプ部の構成を示す説明図である。
図4B図4Bは、図1の製本装置の成形部の構成を示す説明図である。
図5図1の製本装置でくるみ製本する際の手順の一例を示すフローチャートである。
図6A図6Aは、図5の手順に応じた冊子の製本工程を示す説明図である。
図6B図6Bは、図5の手順に応じた冊子の製本工程を示す説明図である。
図6C図6Cは、図5の手順に応じた冊子の製本工程を示す説明図である。
図6D図6Dは、図5の手順に応じた冊子の製本工程を示す説明図である。
図6E図6Eは、図5の手順に応じた冊子の製本工程を示す説明図である。
図6F図6Fは、図5の手順に応じた冊子の製本工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
以下、本発明に係る製本装置の実施形態について図面を参照しつつ、詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る製本装置を有する製本システムの概略構成を示す説明図である。以下の説明において、ユーザが位置する図1の紙面表方向を前方とする。また、ユーザから視て上下左右を上下左右方向とする。
【0013】
本実施形態に係る製本システムAは、通信ネットワークNを介して接続されたユーザ端末1及び印刷装置2と、印刷装置2に機械的に接続され、印刷装置2で印刷された表紙用紙P1及び本身用紙P2に製本処理を施して冊子を作製する製本装置3とを有している。
【0014】
ユーザ端末1は、CPUを備えた演算処理装置であり、例えば、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータにより実現することができる。ユーザ端末1は、印刷データと印刷設定情報とを含む印刷ジョブを作成し、印刷装置2に出力する機能を備えている。
【0015】
ユーザ端末1が出力する印刷ジョブには、製本用のアプリケーションソフトの実行により作成された印刷ジョブが含まれる。この印刷ジョブは、製本装置3においてくるみ製本により作成される冊子Bの表紙と本身の画像を、印刷装置2において印刷用紙に印刷させるためのものである。
【0016】
図2は、製本装置3でくるみ製本された印刷物の一例を示す説明図である。製本装置3は、複数枚重ねた本身用紙P2(用紙束)の綴じ側の端面を表紙用紙P1の背表紙P1bの部分に接着して、表紙用紙P1の表表紙P1aと裏表紙P1cとの間に重ねた本身用紙P2を配置するくるみ製本動作を行うことで、冊子Bを作成する。
【0017】
図1に示すように、印刷装置2は、通信ネットワークNを通じてユーザ端末1から受信した印刷ジョブの印刷設定情報に応じた印刷条件で、印刷データの画像を印刷用紙に印刷するプリンタ装置である。
【0018】
印刷装置2は、印刷装置筐体4(以下、適宜に筐体4という)を備えている。筐体4内には、印刷部5が設けられている。印刷部5は、シアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のインクをそれぞれ吐出するライン型のインクジェットヘッド6C,6K,6M,6Yを備えている。
【0019】
また、筐体4内には、表紙用紙P1及び本身用紙P2を搬送するためのループ状の印刷搬送路7が印刷部5を囲むように設けられている。印刷搬送路7に沿った位置には、印刷用紙を搬送する複数のローラ(図示せず)が配置されている。これらのローラにより印刷用紙は、印刷搬送路7を図中反時計回りに搬送される。
【0020】
筐体4の左側部にはメイン給紙部8が設けられている。メイン給紙部8は、給紙トレイ9に積載された表紙用紙P1を給紙ローラ10により給紙搬送路11に送り出し、不図示の搬送ローラにより給紙搬送路11の表紙用紙P1を印刷部5側へ送り出す。
【0021】
筐体4内における印刷部5の下側にはオプション給紙部12が設けられている。オプション給紙部12は、複数の給紙トレイ13にそれぞれ収容された本身用紙P2を給紙ローラ14により給紙搬送路15に送り出し、不図示の搬送ローラにより給紙搬送路15の本身用紙P2を印刷部5側へ送り出す。
【0022】
印刷搬送路7の左側上部には、表紙用紙P1及び本身用紙P2を一時的に収容するスイッチバック部16が設けられている。スイッチバック部16内には、印刷搬送路7につながるスイッチバック搬送路17が設けられている。スイッチバック搬送路17は、両面印刷時の表紙用紙P1や本身用紙P2を、印刷部5による片面印刷後に印刷搬送路7から受け取り、スイッチバックにより表裏反転させて印刷搬送路7に送り出す。
【0023】
スイッチバック部16の上面には、印刷後の表紙用紙P1や本身用紙P2が必要に応じて排出される排出部18が設けられている。
【0024】
筐体4内の右側部には、片面又は両面印刷後の印刷搬送路7から送り出された表紙用紙P1及び本身用紙P2を製本装置3側(右方向)へ搬送するための連絡搬送路19が設けられている。
【0025】
印刷装置2は、印刷制御部20を備えている。印刷制御部20は、CPU、RAM、ROM等を備えて構成される。印刷制御部20は、印刷装置2の各部の動作を制御するものである。
【0026】
製本装置3は、製本装置筐体31(以下、適宜に筐体31という)を備えている。筐体31内には、印刷装置2の連絡搬送路19から送り出された印刷済みの表紙用紙P1及び本身用紙P2を内部に搬送するための導入搬送路32が設けられている。導入搬送路32は連絡搬送路19に接続されている。
【0027】
筐体31内の右側上部には、印刷済みの本身用紙P2を整合して用紙束PSを形成する整合部33が設けられている。整合部33は、複数の本身用紙P2を積載する整合トレイ34を備えている。整合トレイ34は、例えば水平な軸心周りに回転することによって、用紙束PSを後述するクランプ部39に送り出し可能になっている。
【0028】
また、筐体31内の上部には、導入搬送路32から送り出された印刷済みの表紙用紙P1及び本身用紙P2を整合部33側へ搬送等するための上部製本搬送路35が設けられている。上部製本搬送路35は、フリッパ(図示せず)により導入搬送路32に接続、遮断可能になっている。
【0029】
筐体31の上部中央には、印刷済みの表紙用紙P1を一時的に待機させるストックトレイ36が設けられている。ストックトレイ36は、フリッパ(図示せず)により上部製本搬送路35に接続、遮断可能になっている。また、ストックトレイ36の適宜位置には、印刷済みの表紙用紙P1をストックトレイ36から上部製本搬送路35側へ送り出すローラ(図示せず)が設けられている。ストックトレイ36の表紙用紙P1は、1枚ずつ上部製本搬送路35に取り込まれて製本装置3に給紙される。
【0030】
ストックトレイ36の左側には、断裁部37が設けられている。断裁部37は、印刷済みの表紙用紙P1を用紙束PSの厚さに応じた寸法になるように断裁する。断裁部37は、上部製本搬送路35を間にして表紙用紙P1を挟むように断裁するカッタ38を備えている。
【0031】
筐体31内には、整合トレイ34(整合部33)から送り出された用紙束PSをクランプして(挟んで)移動可能な一対のクランプ部39が設けられている。一対のクランプ部39は、開閉部を兼ねる不図示のクランプ駆動部により移動及び開閉させることができる。クランプ部39には、用紙束PSの厚さを検出する用紙束厚さセンサ(図示せず)が設けられている。
【0032】
筐体31内における整合トレイ34の左下側には、用紙束PSの綴じ側の端面にホットメルト接着剤Gを塗布する接着剤塗布部40(糊付け部)が設けられている。接着剤塗布部40は、ホットメルト接着剤Gを収容する接着剤収容部41を備えている。接着剤収容部41内には、用紙束PSにホットメルト接着剤Gを塗布する塗布ローラ42が設けられている。
【0033】
接着剤塗布部40の左側には、成形部43が設けられている。成形部43は、一対の背折りプレート44と、一対の背折りプレート44の下側に設けられた突き当てプレート45とを備えている。一対の背折りプレート44は、互いに接近、離反するように、突き当てプレート45上で左右方向に移動可能になっている。突き当てプレート45は、左右方向に移動可能になっている。
【0034】
ホットメルト接着剤Gが塗布済みの用紙束PSの綴じ側の端面が表紙用紙P1を介して突き当てプレート45に当接した状態で、左右から一対の背折りプレート44が表紙用紙P1を介して用紙束PSを押圧することで、表紙用紙P1が折り曲げられるようになっている。これにより、表紙用紙P1に表表紙P1a、背表紙P1b及び裏表紙P1cが形成されて、冊子Bが成形される。
【0035】
筐体31内における上部製本搬送路35の下側には、上部製本搬送路35から送り出された印刷済みの表紙用紙P1を成形部43へ搬送するための下部製本搬送路46が設けられている。下部製本搬送路46は、フリッパ(図示せず)により上部製本搬送路35に接続、遮断可能である。
【0036】
導入搬送路32、上部製本搬送路35、下部製本搬送路46、及びこれらに沿って配置されたローラ、表紙用紙P1をストックトレイ36から上部製本搬送路35側へ送り出すローラ等により、搬送部47が構成される。
【0037】
筐体31内における成形部43の下側には、成形部43から落下する完成した冊子Bをガイドするガイド部材48,49が設けられている。ガイド部材48,49の下側には、成形部43から落下した冊子Bを筐体31外に排出する排出部50が設けられている。
【0038】
排出部50は、成形部43から落下した冊子Bを上側コンベア51で受け取り、下側コンベア56を経て筐体31外の排出トレイ66に排出するものである。排出トレイ66の冊子Bが満杯になると、排出トレイ66の可動板67が下がって図示しない満杯検知スイッチがオンになる。
【0039】
製本装置3の各部の動作は、製本制御部68で制御される。製本制御部68は、CPU、RAM、ROM等を備えて構成される。
【0040】
ここで、参考例として、一般的な製本装置の成形部における表紙用紙の背表紙の成形工程について、図3A図3Dを参照して説明する。
【0041】
一般的な製本装置では、図3Aに示すように、成形部100の左右の背折りプレート110,110の上に展開状態の表紙用紙120を置く。そして、クランプ部130で挟んだ用紙束140の接着剤150を塗布した綴じ側の端面を、図3Bに示すように、表紙用紙120の背表紙160となる部分の上から成形部100の突き当てプレート170に押し付ける。この状態で、図3Cに示すように、左右の背折りプレート110,110を互いに接近、離反させて、表紙用紙120の表表紙170及び裏表紙180となる部分を用紙束140側に折り曲げる。
【0042】
このようにして、表紙用紙120の背表紙160の部分を一般的な製本装置の成形部100で成形すると、図3Dに示すように、背表紙160が湾曲して用紙束140の綴じ側の端面との間に隙間ができることがある。背表紙160の湾曲は、例えば、表紙用紙120の表表紙170及び裏表紙180となる部分を用紙束140側に折り曲げる際に、表表紙170及び裏表紙180と背表紙160との境界にしっかりと折り目がつかない場合に発生する。
【0043】
背表紙160が湾曲すると、用紙束140の綴じ側の端面に塗布した接着剤150が、背表紙160との間隔が大きくなる用紙束140の真ん中のページ付近に流れ込む。すると、用紙束140の先頭ページ寄りの部分や最終ページ寄りの部分において、接着剤150の量が不足して、背表紙160に対する接着力が低くなる。
【0044】
表紙用紙120を用紙束140側に折り曲げる際の折り目は、表紙用紙120の坪量に対する表紙用紙120に押し付ける用紙束140の押圧面積の割合が少ない場合に、つきにくくなる。表紙用紙120の坪量に対する用紙束140の押圧面積の割合は、例えば、表紙用紙120の紙厚が厚い、用紙束140のページ数が少なく表紙用紙120に押し付ける用紙束140の厚みが少ない、等の理由で少なくなる。
【0045】
そこで、図1に示す本実施形態の製本装置3では、クランプ部39及び成形部43の構造と、それらの製本制御部68による動作制御とを、一般的な製本装置におけるそれらと異なる内容に変更している。
【0046】
まず、図4Aに示すように、各クランプ部39の先端部には、クランプ爪39aがそれぞれ取り付けられており、各クランプ爪39aの先端には荒らし面39bがそれぞれ形成されている。
【0047】
クランプ爪39aは、一対のクランプ部39,39が互いに接近、離反する左右方向において、クランプ部39よりも薄肉で形成されている。一対のクランプ部39,39同士を接合させると、各クランプ部39のクランプ爪39a同士も接合される。
【0048】
荒らし面39bは、例えば、ヤスリあるいはおろし金等の凹凸面を有している。荒らし面39bは、例えば、平坦面にクロスカットの溝を設けることで形成することができる。荒らし面39bを表紙用紙P1上で摺動させると、表紙用紙P1の表面に凹凸状の起毛部P1e(図6C参照)が形成される。
【0049】
図4Bに示すように、成形部43は、突き当てプレート45に立設された4つの位置決め片70を有している。各位置決め片70は、図4Bの紙面の表裏方向に間隔を置いて、一対の背折りプレート44,44の左右の外側に2つずつそれぞれ配置されている。4つの位置決め片70は、一対の背折りプレート44,44上に載せた展開状態の表紙用紙P1の、図4Bの紙面の表裏方向に対向する一対の辺に、表紙用紙P1の外側から2つずつそれぞれ当接し、表紙用紙P1を位置決めすることができる。
【0050】
次に、製本装置3が製本制御部68の制御により行う冊子Bの製本工程について、図5のフローチャートを参照して説明する。まず、製本装置3は、ステップS1において、不図示の用紙束厚さセンサによって、製本する冊子Bの本身(本文)となる用紙束PSの厚さを計測する。次に、ステップS3において、計測した用紙束PSの厚さがクランプ爪39aの左右方向の厚さ(クランプ爪幅)の2倍以上であるか否かを確認する。
【0051】
用紙束PSの厚さがクランプ爪幅の2倍未満の場合は(ステップS3でNO)、一番短い接合時でも、2つのクランプ爪39aの爪幅が用紙束PSの厚さを超えてしまう。この場合は、表紙用紙P1を折り曲げる際に、表紙用紙P1越しに背折りプレート44を押し付ける相手を、用紙束PSよりも剛性が高い2つのクランプ爪39aに変えて、折り曲げる表紙用紙P1にしっかりとした折り目を付けることができない。よって、用紙束PSの厚さがクランプ爪幅)の2倍未満の場合は、ステップS5~ステップS21の手順を行わない。
【0052】
一方、用紙束PSの厚さがクランプ爪幅の2倍以上の場合は(ステップS3でYES)、ステップS5において、製本装置3が、断裁部37で表紙用紙P1をカットして成形部43(成形板)に移動させる。次に、製本装置3は、ステップS7において、クランプ爪39a同士を接合させた(閉じた)一対のクランプ部39,39を、成形部43の上方のオフセット位置に移動させる。
【0053】
続いて、製本装置3は、ステップS9において、閉じたクランプ部39,39の各クランプ爪39aの荒らし面39bを成形部43の表紙用紙P1の背表紙P1bの部分に押し付ける。このとき、一方のクランプ部39のクランプ爪39aは、表紙用紙P1の表表紙P1a及び裏表紙P1cの一方と背表紙P1bとの境界の位置に配置される。
【0054】
そして、製本装置3は、ステップS11において、一方の背折りプレート44を表紙用紙P1越しに一方のクランプ部39のクランプ爪39aに押し当てる。これにより、背折りプレート44とクランプ爪39aとで表紙用紙P1の表表紙P1a及び裏表紙P1cの一方となる部分を挟み込み、表紙用紙P1の挟み込んだ部分を成形部43の上方に折り曲げる。
【0055】
次に、製本装置3は、ステップS13において、他方のクランプ部39のクランプ爪39aを所定の位置まで移動させる。他方のクランプ爪39aを移動させると、クランプ爪39aの荒らし面39bが摺動する表紙用紙P1の背表紙P1bの表面(紙面)を荒らす。所定の位置まで移動させた他方のクランプ爪39aは、表紙用紙P1の表表紙P1a及び裏表紙P1cの他方と背表紙P1bとの境界の位置に配置される。他方のクランプ爪39aの荒らし面39bは、表紙用紙P1の背表紙P1bの表面のうち、一方のクランプ部39のクランプ爪39aの荒らし面39bが接触している部分を除く部分を荒らす。
【0056】
続いて、製本装置3は、ステップS15において、一方のクランプ部39のクランプ爪39aをクランプ爪幅分、他方のクランプ部39のクランプ爪39a側に移動させる。一方のクランプ爪39aを移動させると、クランプ部39のクランプ爪39aの荒らし面39bが、背表紙P1bの表面のうち、移動前に荒らし面39bが接触していた部分を荒らす。これにより、背表紙P1bの表面が全体に亘って荒らされる。
【0057】
次に、製本装置3は、ステップS17において、一対の背折りプレート44,44(表紙成形板)は、表紙中心位置がずれない程度、左右に少し開いて、一対のクランプ部39,39を上昇させる。この時点では、表紙用紙P1の表表紙P1a及び裏表紙P1cの他方と背表紙P1bとの境界に折り目がしっかり付けられて、表紙用紙P1がいわゆる「角付け」された状態となる。
【0058】
そこで、製本装置3は、ステップS19において、本身となる用紙束PS(本文)の綴じ側の端面に糊付けし、用紙束PSを挟持した一対のクランプ部39,39により、用紙束PSの糊付けした端面を表紙用紙P1の背表紙P1bに押し付けて接着させる。製本装置3は、ステップS21において、表紙用紙P1に用紙束PS(本文)を糊付けした冊子Bを、排出部50の上側コンベア51(上段の搬送ベルト)に移動する。
【0059】
図5のフローチャートの手順に応じた冊子Bの製本工程は、例えば、次のようなものとすることができる。
【0060】
図1の用紙束PSを表紙用紙P1に接着する際には、まず、図6Aに示すように、位置決め片70で表紙用紙P1をクランプ部39上で位置決めさせる。そして、左側のクランプ部39を右側に移動させて右側のクランプ部39と接合させ、この状態で、一対のクランプ部39,39を降下させて、各クランプ爪39aの荒らし面39bを表紙用紙P1に接触させる。各クランプ爪39aの荒らし面39bは、一対の背折りプレート44,44上に載せた表紙用紙P1に、図6Aの紙面の表裏方向における全長に亘ってそれぞれ接触する。
【0061】
このとき、図6Aの右側のクランプ部39のクランプ爪39aは、一対の背折りプレート44,44が接近、離反する左右方向において、図6Aの線Aで示す、表紙用紙P1の背表紙P1bと裏表紙P1cとの境界となる位置に配置される。そこで、図6Bに示すように、右側の背折りプレート44を、表紙用紙P1越しに右側のクランプ部39のクランプ爪39aに押し付ける。これにより、表紙用紙P1の裏表紙P1cとなる部分がクランプ部39側に折り曲げられて、線A上に位置する背表紙P1bと裏表紙P1cとの境界P1dに折り目が付けられる。
【0062】
なお、右側の背折りプレート44を移動させる際には、左側の背折りプレート44も、右側の背折りプレート44と同じストロークだけ、左右方向のセンターラインCに近づくように移動させる。
【0063】
次に、図6Cに示すように、荒らし面39bを表紙用紙P1に接触させたまま、左側のクランプ部39を左側に移動させて右側のクランプ部39から離反させる。移動後の左側のクランプ部39のクランプ爪39aは、左右方向のセンターラインCを挟んで線Aと対称な線Bで示す、表紙用紙P1の背表紙P1bと表表紙P1aとの境界となる位置に配置される。
【0064】
左側のクランプ部39が移動する間、クランプ爪39aの荒らし面39bは表紙用紙P1上を摺動する。表紙用紙P1の背表紙P1bの用紙束PSを接着する部分の表面のうち、左側のクランプ部39の荒らし面39bが摺動する範囲には、起毛部P1eが形成される。
【0065】
左側のクランプ部39を左側に移動させると、左側のクランプ部39のクランプ爪39aが、表紙用紙P1越しに左側の背折りプレート44に押し付けられる。このため、表紙用紙P1の表表紙P1aとなる部分がクランプ部39側に折り曲げられて、線B上に位置する背表紙P1bと表表紙P1aとの境界P1dに折り目が付けられる。
【0066】
続いて、図6Dに示すように、荒らし面39bを表紙用紙P1に接触させたまま、右側のクランプ部39をクランプ爪39aのクランプ爪幅分だけ右側に移動させる。この移動により、背表紙P1bの用紙束PSを接着する部分の表面のうち、左側のクランプ部39の移動の際に起毛部P1eが形成されなかった残りの部分に、起毛部P1eが形成される。
【0067】
次に、図6Eに示すように、一対の背折りプレート44,44を表紙用紙P1から少し離反させる。また、左側のクランプ部39を、センターラインC側に少し移動させて表紙用紙P1の表表紙P1aから離間させる。そして、一対のクランプ部39,39を上昇させ、各クランプ爪39aの荒らし面39bを表紙用紙P1から離反させる。
【0068】
この後、図6Fに示すように、クランプ部39,39にクランプされた用紙束PSのホットメルト接着剤Gを塗布した綴じ側の端面を、図6Cに示す起毛部P1eが表面に形成された表紙用紙P1の背表紙P1bの部分に押し付ける。これにより、用紙束PSの綴じ側の端面が背表紙P1bに接着される。
【0069】
以上の手順において、表表紙P1a及び裏表紙P1cと背表紙P1bとの境界P1dに位置させた左右のクランプ部39のクランプ爪39aに、表紙用紙P1越しに左右の背折りプレート44を押し付けることで、境界P1dにしっかりと折り目がつく。また、荒らし面39bを摺動させて裏表紙P1cの表面に起毛部P1eを形成することで、裏表紙P1cに押し付けた用紙束PSのホットメルト接着剤Gが裏表紙P1cの表面だけでなく起毛部P1eの内側に浸透し、裏表紙P1cに対する用紙束PSの接着力が増す。
【0070】
また、用紙束PSよりも剛性が高いクランプ爪39aに背折りプレート44を押し付けて境界P1dに折り目をつけるので、表表紙P1a及び裏表紙P1cを背表紙P1bに対して十分に折り曲げて、背表紙P1bが湾曲するのを抑制することができる。このため、用紙束PSの先頭ページや最終ページ寄りの部分を背表紙P1bに高い接着力で接着することができ、また、背表紙P1bに印刷される文字等を斜め方向からでも見えやすくすることができる。
【0071】
なお、本実施形態では、印刷装置2がインクジェット方式である場合について説明したが、本発明は、例えば、孔版印刷方式や電子写真方式等、インクジェットプリント以外の方式の印刷装置と組み合わせて使用する製本装置にも適用可能である。
【0072】
そして、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0073】
[付記]
以上に説明した実施形態によって、以下に示す態様の発明が開示される。
【0074】
即ち、一つの態様の発明として、
冊子の本身となる用紙束を挟むクランプ部と、
前記冊子の表紙用紙を乗せて前記表紙用紙に前記冊子の背表紙を形成する成形部と、
前記用紙束の綴じ側の端面に糊付けする糊付け部と、
前記成形部に前記クランプ部を押し付けるクランプ駆動部と、
前記クランプ部を開閉する開閉部とを備え、
前記成形部に乗せた前記表紙用紙の前記背表紙を形成する糊付け部分に、前記クランプ部に挟まれた前記用紙束の前記綴じ側の端面を押し付けて糊付けすることで、前記用紙束を前記表紙用紙の表表紙及び裏表紙の間に配置して前記冊子を作成する製本装置であって、
前記成形部に乗せた展開状態の前記表紙用紙の前記糊付け部分に、前記用紙束を挟んでいない空の前記クランプ部を接触させた状態で、前記空のクランプ部を前記糊付け部分の範囲内で前記展開状態の前記表紙用紙に沿って移動させ、
前記空のクランプ部が接触移動された前記糊付け部分に、前記クランプ部に挟まれた前記用紙束の前記綴じ側の端面を押し付けて糊付けする、
製本装置が開示される。
【0075】
そして、上記態様による発明によれば、くるみ製本により製本した冊子の背表紙の湾曲を抑制することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 ユーザ端末
2 印刷装置
3 製本装置
5 印刷部
39 クランプ部
39a クランプ爪
39b 荒らし面
40 接着剤塗布部
41 接着剤収容部
42 塗布ローラ
43 成形部
44 背折りプレート
44,44 プレート
45 突き当てプレート
50 排出部
51 上側コンベア
68 製本制御部
A 製本システム
B 冊子
C センターライン
G ホットメルト接着剤
P1 表紙用紙
P1a 表表紙
P1b 背表紙
P1c 裏表紙
P1d 境界
P1e 起毛部
P2 本身用紙
PS 用紙束
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F