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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138375
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】回転弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 5/06 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
F16K5/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038230
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】松村 剛宏
(72)【発明者】
【氏名】角田 真一
(72)【発明者】
【氏名】新籾 聖太
【テーマコード(参考)】
3H054
【Fターム(参考)】
3H054AA03
3H054BB22
3H054CB14
(57)【要約】
【課題】弁体の上流側の流体圧と下流側の流体圧との差圧に基づくアシスト力を精密に制御することで、操作トルクを低減した回転弁を提供する。
【解決手段】流体通路4の通路壁に設けられたシート部11と、シート部11に接触しながら回動する回転体からなる弁体3とを備える。シート部11は、通路壁に移動自在に支持された移動部材26と、移動部材26に固着されて移動部材26が弁体3に向けて移動することにより弁体3に接触するシートリング28とを有する。一端が流体通路4の上流部に開口するともに他端が移動部材26の近傍に開口する導圧孔25を有する。導圧孔25の内部に移動自在に挿入され、導圧孔25に導入された上流側の流体圧とシートリング28より下流側の流体圧との差からなる差圧をアシスト力として移動部材26に加える押圧部材32を有している。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路を形成する通路壁に前記流体通路の一部となるように設けられたシート部と、
前記シート部に接触しながら回動する回転体からなり、前記シート部に接触する回転面に前記流体通路を閉塞する閉塞部と前記流体通路の一部となる穴部とが形成された弁体とを備え、
前記シート部は、
前記通路壁に前記流体通路内で流体が流れる方向と平行な方向に移動自在に支持された移動部材と、
前記移動部材に固着され、前記移動部材が前記弁体に向けて移動することにより前記弁体の前記回転面に接触するシートリングと、
前記通路壁に設けられ、一端が前記流体通路の上流部に開口するともに他端が前記移動部材の近傍に開口する導圧孔と、
前記導圧孔の内部に移動自在に挿入され、前記上流部から前記導圧孔に導入された上流側の流体圧と前記シートリングより下流側の流体圧との差からなる差圧を推力として前記移動部材に押圧力を加える押圧部材とを有していることを特徴とする回転弁。
【請求項2】
請求項1記載の回転弁において、
前記押圧部材と前記移動部材との間に、前記移動部材を前記弁体に向けて付勢する弾性部材が介装されていることを特徴とする回転弁。
【請求項3】
請求項1記載の回転弁において、
前記通路壁と前記移動部材との間に、前記移動部材を前記弁体に向けて付勢する弾性部材が介装されていることを特徴とする回転弁。
【請求項4】
請求項1記載の回転弁において、
前記押圧部材が前記移動部材に直接接触していることを特徴とする回転弁。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一つに記載の回転弁において、
前記導圧孔および前記押圧部材は、前記流体通路を囲む複数の位置にそれぞれ設けられ、複数の前記導圧孔および前記押圧部材が前記流体通路の周囲に等間隔で並んでいることを特徴とする回転弁。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか一つに記載の回転弁において、
前記押圧部材は、前記導圧孔の孔壁面との間をシールするシール部材を備えていることを特徴とする回転弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体通路のシート部に接触しながら回動する弁体を備えた回転弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転弁としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているように、回転体からなる弁体の軸方向の両端部を軸支するトラニオン構造の回転弁がある。
特許文献1に開示されている回転弁は、弁体と接するシートリングが保持部材を介して通路壁に移動自在に保持されている。保持部材は、シートリングが弁体に所定の押し付け力で接触するように、ばね部材のばね力で弁体に向けて付製されている。
【0003】
また、この回転弁は、操作トルクを小さくするために、保持部材が流体圧で弁体に向けてアシストされることがないように構成されている。保持部材は、通路壁の内周部に移動自在に嵌合する筒部を有している。筒部の外周面と通路壁の内周面との間はOリングによってシールされている。特許文献1に示す回転弁は、シートリングと弁体との接触点の内径と、上述したOリングの接触内径とが同一内径となるように構成されている。この構成を採ることにより、弁体より上流側の流体圧と下流側の流体圧との差からなる差圧によって生じる、シートリングが弁体を押す力(アシスト力)を解消することができる。
【0004】
特許文献2に開示されている回転弁は、シートリングを付勢するばね部材を使用することなく、流体圧のアシスト力のみでシートリーク防止と低トルク化とを両立できるように構成されている。特許文献2に示す回転弁は、弁体とシートリングの接触内径よりも、シートリングの裏漏れを防止するOリングのシール内径を大きくすることで、上述した差圧に基づく押圧力がシートリングに印加されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-232260号公報
【特許文献2】特開2004-204946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トラニオン構造の回転弁においては、一般的に、弁体より上流側の流体圧と下流側の流体圧との差圧が大きくなるにしたがって、シートリークが大きくなることが知られている。特許文献1に示す回転弁の構造では、差圧が最大となるような圧力が弁体に加えられた状態でシートリークが生じることがないように、シートリングに押し付け力を付与するばね部材のばね力を大きくしなければならない。そのため、弁体にかかる最大差圧が異なる場合は、ばね力が異なる複数種類のばね部材を用意するか、または、ばね部材の初期圧縮量を大きくするための部品変更・追加などが必要となる。
【0007】
また、実際のものづくりにおいて、加工のばらつきがあるため、シートリングと弁体との接触点と、保持部材と流体通路との間のOリングの接触内径を同一内径にすることは不可能であり、ばらつき次第でアシスト力が発生しトルクが増加してしまうケースや、差圧によるアシスト力が逆方向(アシストしない方向)にかかってしまうケースが現れる。
【0008】
シートリングを付勢するばね部材を使用することにより生じる上記の不具合は、特許文献2に開示されている構成を採ってばね部材を不要とすることである程度は解消することができる。しかし、大きな口径の回転弁に特許文献2の技術を適用すると、シートリングが大きくなるため、シートリングと弁体との接触内径のばらつきは大きくなる。そのため、差圧によるアシスト力が必要以上に大きくなりトルクが増加してしまうケースや、反対に差圧によるアシスト力が逆方向にかかってしまうケースが現れる恐れがあり、アシスト力を精度良く制御することが困難である。
【0009】
この結果、このような新たな不具合を解消するために、差圧を受ける面積を大きくとらざるを得なくなり、差圧によるアシスト力が過大となる。また、特許文献2に示す構造では、シートリングの摩耗によってシールポイント径が変化することにより、差圧によるアシスト力が使用中に変化する。
このため、大きな口径のバルブにおいて、差圧からなるアシスト力を精密に制御できる構造が要請されている。
【0010】
本発明の目的は、弁体の上流側の流体圧と下流側の流体圧との差圧からなるアシスト力を精密に制御することで操作トルクを低減した回転弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明に係る回転弁は、流体通路を形成する通路壁に前記流体通路の一部となるように設けられたシート部と、前記シート部に接触しながら回動する回転体からなり、前記シート部に接触する回転面に前記流体通路を閉塞する閉塞部と前記流体通路の一部となる穴部とが形成された弁体とを備え、前記シート部は、前記通路壁に前記流体通路内で流体が流れる方向と平行な方向に移動自在に支持された移動部材と、前記移動部材に固着され、前記移動部材が前記弁体に向けて移動することにより前記弁体の前記回転面に接触するシートリングと、前記通路壁に設けられ、一端が前記流体通路の上流部に開口するともに他端が前記移動部材の近傍に開口する導圧孔と、前記導圧孔の内部に移動自在に挿入され、前記上流部から前記導圧孔に導入された上流側の流体圧と前記シートリングより下流側の流体圧との差からなる差圧を推力として前記移動部材に押圧力を加える押圧部材とを有しているものである。
【0012】
本発明は、前記回転弁において、前記押圧部材と前記移動部材との間に、前記移動部材を前記弁体に向けて付勢する弾性部材が介装されていてもよい。
【0013】
本発明は、前記回転弁において、前記通路壁と前記移動部材との間に、前記移動部材を前記弁体に向けて付勢する弾性部材が介装されていてもよい。
【0014】
本発明は、前記回転弁において、前記押圧部材が前記移動部材に直接接触していてもよい。
【0015】
本発明は、前記回転弁において、前記導圧孔および前記押圧部材は、前記流体通路を囲む複数の位置にそれぞれ設けられ、複数の前記導圧孔および前記押圧部材が流体通路の周囲に等間隔で並んでいてもよい。
【0016】
本発明は、前記回転弁において、前記押圧部材は、前記導圧孔の孔壁面との間をシールするシール部材を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明において、シートリングを弁体に向けて押す押圧力の大きさは、導圧孔の孔径に基づいて決まる。導圧孔は、機械加工によって高い精度で形成することができる。したがって、弁体の上流側の流体圧と下流側の流体圧との差圧からなるアシスト力を精密に制御することで操作トルクを低減した回転弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明に係る回転弁の一部の縦断面図である。
図2図2は、回転弁の上流側から見た正面図である。
図3図3は、回転弁の一部の横断面図である。
図4図4は、要部を拡大して示す断面図である。
図5図5は、要部の一部を破断して示す分解斜視図である。
図6図6は、押圧機構の変形例を示す要部の断面図である。
図7図7は、押圧機構の変形例を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る回転弁の一実施の形態を図1図5を参照して詳細に説明する。図1の破断位置は、図2においてI-I線で示す位置である。図3の破断位置は、図2においてIII-III線で示す位置である。
図1に示す回転弁1は、トラニオン構造のボール弁で、バルブボディ2の内部にボール状を呈する回転体からなる弁体3が回動自在に設けられている。
【0020】
バルブボディ2は、その内部に流体通路4を形成するもので、弁体3より上流側に形成されたパイプ状の上流側通路壁5と、弁体3を収容するパイプ状の下流側通路壁6とを有している。流体通路4は、上流側通路壁5と下流側通路壁6とによって形成されている。上流側通路壁5の上流端には取付用フランジ7が設けられ、下流側通路壁6の下流端には取付用フランジ(図示せず)が設けられている。この回転弁1においては、上流側の取付用フランジ7から下流側の取付用フランジに向かう方向(図1において左から右に向かう方向)が本発明でいう「流体が流れる方向」である。
【0021】
上流側通路壁5には、流体通路4の一部となるようにシート部11が設けられている。シート部11は、上流側通路壁5内の流体通路4が部分的に狭くなるように形成されている。シート部11の詳細な説明は後述する。上流側通路壁5内の流体通路4の開口形状は、図2に示すように、上流側から見て円形である。
下流側通路壁6は、図1において上側に位置する第1の弁体支持部12と、図1において下側に位置する第2の弁体支持部13とを有している。第1の弁体支持部12と第2の弁体支持部13とは、流体通路4が延びる方向とは直交する方向に並ぶように配設されている。
【0022】
第1の弁体支持部12には、筒状の上蓋14が取付けられている。上蓋14には、弁軸15が貫通している。弁軸15の一端は、弁体3の軸方向の一端部(図1においては上側の端部)に一体に回動するように連結されている。弁軸15の他端は、図示していない操作ハンドルや操作用アクチュエータに連結されている。
第2の弁体支持部13には、軸受部材16が取付けられている。軸受部材16には、軸部材17が取付けられている。軸部材17は、弁体3の軸方向の他端部を回動自在に支持している。
【0023】
弁体3は、後述するシート部11に接触しながら回動する回転体で、シート部11に接触する凸曲面からなる回転面21(図5参照)を有している。回転面21には、図3に示すように、流体通路4を閉塞する閉塞部21aと、流体通路4の一部となる穴部21bとが形成されている。この弁体3は、弁軸15が回されることにより、図1および図3に示すように穴部21bがシート部11と対向する全開位置と、閉塞部21aがシート部11と対向する全閉位置との間で回動する。この回転弁1においては、弁体3が全閉位置に位置している状態では流体通路4が弁体3より上流側と下流側とに仕切られる。弁体3が開くことによって、弁体3より下流側に流体圧が伝播される。以下においては、弁体3より上流側の流体の圧力を上流側流体圧といい、弁体3より下流側の流体の圧力を下流側流体圧という。
【0024】
シート部11は、図4(A)に示すように、バルブボディ2の上流側通路壁5に固着された円筒状の支持部材22に複数の部品を組み付けて構成されている。支持部材22は、上流側通路壁5の穴23に嵌合した状態で固着されている。この支持部材22は、上流側通路壁5に取付けられることにより上流側通路壁5と協働して流体通路4の入口部の通路壁を構成するもので、上流端から下流側に向かうにしたがって次第に内径が小さくなるテーパー面24を有している。テーパー面24には後述する複数の導圧孔25が開口している。
【0025】
支持部材22のテーパー面24より下流側には移動部材26が移動自在に嵌合している。移動部材26が移動する方向は、流体が流れる方向と平行な方向である。移動部材26は、上流側の円筒部26aと、下流側のリング部26bとによって構成されている。円筒部26aは、支持部材22の内周部に移動自在に嵌合している。円筒部26aの外周面と支持部材22の内周面との間は、Oリング27によってシールされている。円筒部26aの内径は、上述したテーパー面24の内周縁部の内径と同一である。
【0026】
リング部26bは、円筒部26aの下流側端部から円筒部26aより径方向の外側に突出するように形成されている。リング部26bの内周面は、円筒部26aの内周面に段差なく接続されている。リング部26bの外周部は、支持部材22の外側円筒部22aの内周部に移動自在に嵌合している。
リング部26bの下流側端部には、シートリング28が固着されているとともに、シートリング28の拡径を防ぐ補強リング29が固着されている。シートリング28は、流体が流れる方向の上流側から見て環状に形成され、移動部材26と同一軸線上に配置されている。このシートリング28は、シート部11の弁体3との接触部となるものである。
【0027】
リング部26bの上流側端部には、移動部材26を弁体3に向けて押すための押圧機構31が接続されている。
この実施の形態による押圧機構31は、支持部材22の導圧孔25と、導圧孔25の内部に設けられた押圧部材32と、押圧部材32とリング部26bとの間に設けられたプレート33および弾性部材34などによって構成されている。
【0028】
導圧孔25は、支持部材22のテーパー面24に開口し、流体が流れる方向と平行な方向に延びて支持部材22を貫通するように形成されている。すなわち、導圧孔25の一端は流体通路4の上流部に開口し、他端は、移動部材26のリング部26bの近傍に開口している。また、導圧孔25は、図2に示すように、流体通路4を囲む複数の位置にそれぞれ設けられている。この実施の形態においては、流体通路4を囲む4箇所にそれぞれ導圧孔25が形成されている。これら4つの導圧孔25は、流体通路4の周囲に等間隔で並んでいる。
【0029】
導圧孔25は、図4(A)に示すように、テーパー面24に開口する小径部25aと、リング部26bの近傍に開口する大径部25bとによって構成されている。これらの小径部25aおよび大径部25bは、図示していないドリルなどの回転ツールによって形成されている。
大径部25bの内部に押圧部材32が移動自在に嵌合している。押圧部材32は、大径部25bに嵌合する金属製のピンによって形成され、4つの導圧孔25の大径部25bにそれぞれ挿入されている。すなわち、導圧孔25および押圧部材32は、流体通路4を囲む4箇所にそれぞれ設けられ、4つずつの導圧孔25および押圧部材32が流体通路4の周囲に等間隔で並んでいる。
【0030】
押圧部材32の長手方向の中央部には、押圧部材32と大径部25bの孔壁面との間をシールするためにOリング35が装着されている。Oリング35は、大径部25b内を小径部25a側と他端側とに仕切り、流体通路4の上流部の流体が導圧孔25を通って下流側に漏洩することを防いでいる。この実施の形態においては、Oリング35が本発明でいう「シール部材」に相当する。
押圧部材32は、小径部25aから導入された上流側流体圧を受ける。後述するように上流側流体圧と下流側流体圧との差圧を推力とし、プレート33および弾性部材34を介して移動部材26に押圧力を加える。以下においては、差圧からなる推力を「アシスト力」という。この実施の形態おいては、4本の押圧部材32がそれぞれ移動部材26を押すようになる。
【0031】
プレート33は、全ての押圧部材32と接触するように円環板状に形成され、移動部材26の円筒部26aと支持部材22の外側円筒部22aとの間に移動自在に挿入されている。この実施の形態においては、4本の押圧部材32が流体通路4の周囲に等間隔で並ぶように配置されているから、プレート33は、4本の押圧部材32から均等にアシスト力が加えられる。このプレート33と移動部材26のリング部26bとの間には弾性部材34が介装されている。
【0032】
弾性部材34は、詳細には図示してはいないが、例えば複数の圧縮コイルばねや、リング状の板ばね、ゴム製のリングなどによって形成することができる。この弾性部材34は、押圧部材32がプレート33を押していない状態であってもシートリング28が弁体3に当接するように、支持部材22の背面22bに重なるプレート33と、リング部26bとの間に圧縮状態で設置されている。弾性部材34が圧縮コイルばねによって構成される場合は、円筒部26aの周方向の複数の位置に等間隔で位置するように配置する。この場合、弾性部材34を必ずしも円筒部26aの周方向において押圧部材32と同一の位置に配置する必要はない。
【0033】
このように構成された回転弁1において、図1および図3に示すように弁体3が全開位置にある場合は、流体が上流側通路壁5の内部から下流側通路壁6の内部に大量に流入し、上流側流体圧と下流側流体圧との差は小さくなる。この回転弁1において、下流側流体圧は、シートリング28より上流側の部材に図4(B)中に太線で示す部分が受圧面となるように作用する。すなわち、下流側流体圧は、シートリング28より下流側から支持部材22の外側円筒部22aと移動部材26のリング部26bとの間の微小な隙間を介して弾性部材34側に伝播される。この下流側流体圧は、弾性部材34とリング部26bとの接触面にも作用する。このため、リング部26bとシートリング28とに作用する下流側流体圧は、図4(B)において左右側から作用するようになって相殺される。
【0034】
一方、上流側流体圧は、導圧孔25を通って押圧部材32の一端部に加えられる。押圧部材32の他端部には、プレート33を介して下流側流体圧が加えられる。上流側流体圧と下流側流体圧に差があると、プレート33と支持部材22の背面22bとの間に下流側流体圧が伝播されるようになり、プレート33における押圧部材32の投影面積以外の部分(押圧部材32と接触していない部分)は、図4(B)において左右両側から下流側流体圧が作用する。このため、プレート33についても下流側流体圧が相殺されるので、押圧部材32は、上流側流体圧と下流側流体圧との差圧からなるアシスト力Fでプレート33を押すようになる。
【0035】
弁体3が全開位置から全閉位置に向けて回ると、下流側流体圧が低下し、上流側流体圧と下流側流体圧との差圧が大きくなる。このため、上流側流体圧と下流側流体圧との差圧にからなるアシスト力Fが押圧部材32から弾性部材34を介して移動部材26に付与されるようになる。この場合、押圧部材32のアシスト力Fと弾性部材34のばね力との合力からなる押圧力でシートリング28が弁体3に押し付けられる。アシスト力Fは、差圧の増大に伴って増大するようになる。そして、弁体3が全閉位置に回ることにより、差圧が最大になり、アシスト力Fも最大になる。
【0036】
この回転弁1において、シートリング28を弁体3に向けて押すアシスト力Fの大きさは、押圧部材32の受圧面積の大きさ、すなわち導圧孔25の大径部25bの孔径に基づいて決まる。導圧孔25は、機械加工によって高い精度で形成することができる。したがって、この実施の形態によれば、弁体3の上流側の流体圧と下流側の流体圧との差圧からなるアシスト力を精密に制御することで操作トルクを低減した回転弁を提供することができる。
【0037】
このようにアシスト力Fを精密に制御できるため、弾性部材34による押圧力は必要最小限にすることができる。このため、この回転弁1においては、操作力を低トルク化することが可能となり、弁体3にかかる最大差圧が異なる場合であってもアシスト力Fがそれに追従するように増減して対応できるため、部品追加等の必要がない。さらに、シートリング28が過度に大きなアシスト力Fで弁体3に押し付けられることがないから、シートリング28の摩耗防止を図ることも可能となる。
【0038】
本発明の回転弁1は、工場等の空調装置に使用される場合は、流体通路の口径が相対的に大きくなって大型となることが多い。一般的に、大型のバルブは、トルクが大きいため、操作器も大きくなって高価なものになる。しかし、本発明を適用することにより、大型のバルブであっても操作トルクを小さくすることができ、操作器を小さくすることが可能になるから、コストダウンを図ることできるようになる。
【0039】
この実施の形態による回転弁1は、押圧部材32と移動部材26との間に、移動部材26を弁体3に向けて付勢する弾性部材34が介装されている。この回転弁1においては、上流側流体圧と下流側流体圧との差圧が小さい場合は、主に弾性部材34のばね力でシートリング28が弁体3に押し付けられる。このため、弾性部材34のばね力を必要最小限とすることができ、開度が大きい状態で使用することが多い回転弁において操作性が向上する。
【0040】
この実施の形態による導圧孔25および押圧部材32は、流体通路4を囲む複数の位置にそれぞれ設けられ、複数の導圧孔25および押圧部材32が流体通路4の周囲に等間隔で並んでいる。このため、上流側流体圧と下流側流体圧との差圧からなるアシスト力Fをシートリング28に伝達するにあたって、周方向に等間隔で並ぶ複数の位置に均等に伝達することができるから、シートリング28を常に正しく弁体3に押し付けることができる。
【0041】
この実施の形態による押圧部材32は、導圧孔25(大径部25b)の孔壁面との間をシールするOリング35を備えている。このため、押圧部材32に流体圧を無駄なく加えることができるから、設計通りの大きさのアシスト力Fを得ることができる。
【0042】
(押圧機構の変形例)
押圧機構は図6および図7に示すように構成することができる。図6および図7において、図1図5によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
図6に示す押圧機構31は、第1の実施の形態を採るときに用いられていたプレート33を備えていない。この実施の形態による押圧部材32は、移動部材26のリング部26bに直接接触している。リング部26bと支持部材22の背面22bとの間には弾性部材34が介装されている。支持部材22は流体通路4の通路壁の一部を構成するものであるから、弾性部材34は通路壁と移動部材26との間に介装されることになる。
【0043】
図6に示す弾性部材34は、移動部材26の径方向において、押圧部材32と移動部材26の円筒部26aとの間に配置されている。弾性部材34が圧縮コイルばねによって構成される場合は、円筒部26aの周方向の複数の位置に周方向において等間隔となるように配置する。この場合、弾性部材34を必ずしも円筒部26aの径方向において押圧部材32と隣り合う位置に配置する必要はない。
図6に示す構成を採る場合であってもシートリング28を弁体3に向けて押すアシスト力Fの大きさが導圧孔25の大径部25bの孔径に基づいて決まるから、アシスト力を精密に制御することで操作トルクを低減した回転弁を提供することができる。特に、この実施の形態によれば、プレート33が不要であるから、部品数が削減されて組立てが容易になる。
【0044】
図7に示す押圧機構31は、第1の実施の形態を採るときに用いられていたプレート33と弾性部材34とを備えていない。この実施の形態による押圧部材32は、移動部材26のリング部26bに直接接触している。
図7に示す構成を採る場合であってもシートリング28を弁体3に向けて押すアシスト力Fの大きさが導圧孔25の大径部25bの孔径に基づいて決まるから、アシスト力Fを精密に制御することで操作トルクを低減した回転弁を提供することができる。この実施の形態によれば、プレート33と弾性部材34が不要であるから、部品数が削減されて組立てが容易になる。
【0045】
上述した各実施の形態においては、本発明を球状の弁体を有するボール弁に適用する例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることなく、他の回転弁にも適用することができる。他の回転弁としては、例えば円柱状の回転式弁体を有するコック、エキセントリックバルブ(偏心構造弁)、セグメントボール弁などがある。
【符号の説明】
【0046】
1…回転弁、3…弁体、4…流体通路、5…上流側通路壁、6…下流側通路壁、11…シート部、21…回転面、21a…閉塞部、21b…穴部、25…導圧孔、26…移動部材、28…シートリング、32…押圧部材、34…弾性部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7